説明

サクションロール及びサクションロール装置

【課題】
本発明の目的は、サクションロールの真円度・円筒度及び振れの精度を高くして、吸引口の径を小さくすることができるサクションロール及びサクションロール装置を提供することにある。
【解決手段】
サクションロール2はサクションロール外筒11により構成され、密閉空間12に負圧を供給される。サクションロール筒11は円筒形状に構成されて周面に複数の装着口14が穿設されている。サクションロール筒11の装着口14の外周面側に吸引部材(単管)が嵌着固定される。吸引部材の長さはサクションロール筒11の板厚より短く、長さ方向に貫通する吸引口が穿設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂フィルムやシートを吸引しながら移送するサクションロール及びこのサクションロールを用いたサクションロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サクションロール装置は樹脂フィルムやシートの製造装置及び表面加工装置に用いられている。サクションロール装置はサクションロールを構成する回転自在な円筒状のロール本体に複数の吸引口を均一分布で穿設して、吸引口に負圧を供給することによりロール本体に吸引力を生じてフィルムを吸引して移送する。通常、遮蔽部材(負圧域規制部材)をサクションロールと非接触で設け、サクションロールの所定回転角範囲をサクション作用域にしている。
【0003】
ところで、サクションロール装置においては、サクションロール外周面における吸引口・吸引面が不連続であると、移送するフィルムに張力ムラを生じる。そのため、フィルムの吸着力の変動,移送速度のバラツキや吸着面での浮動現象をきたし、高精度な移送が困難であった。このことを解決するために、金属製板材のパンチングメタルにパンチにより吸引口を形成し、吸引穴の外周面側に向けて拡張するテーパー面を設けるということが提案されている。このことは、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−189454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によるプラスチックフィルム移送用のサクションロールは、移送材料への吸着マーク付着防止の観点から、微細穴加工を施した円筒形状ネットや円筒形状パンチングメタルを外周表面に装着したものが用いられている。円筒上のネットやパンチングメタルは板厚が0.4mm程の薄板であり研磨加工できないので、真円度・円筒度及び振れの精度が50μm以下の高精度のサクションロールを製作することができない欠点があった。
【0006】
また、近年、従来のバッチ式生産方式をロールtoロール式生産方式に改善することで、画期的に生産性を上げる試みが始まっており、高精度移送が可能なサクションロール及びサクションロール装置が求められている。さらに、サクションロールの真円度・円筒度及び振れのロール精度が低下すると、サクションロールに吸着されているフィルムの平坦度が低下する。このため、例えば、フィルムにサクションロールでの移送過程で、直接描画しようとすると描画位置がずれることになる。
【0007】
一方、研磨加工を可能とするため、サクションロールの板厚を大きくすると、吸引口の径は板厚に略比例するので吸引口の径を小さくすることが困難になる。
【0008】
このように、従来技術はサクションロールの真円度・円筒度及び振れの精度を高くして、吸引口の径を小さくすることができないという問題点を有する。
【0009】
本発明の目的は、サクションロールの真円度・円筒度及び振れの精度を高くして、吸引口の径を小さくすることができるサクションロール及びサクションロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のサクションロールは、円筒形状の両開口を回転軸端に連設された側板によりそれぞれ密閉された密閉空間に負圧を供給され、周面に複数の装着口が穿設されているサクションロール筒と、サクションロール筒の板厚より長さが短い円柱形状に構成されて長さ方向に貫通する吸引口が穿設されている吸引部材とを具備し、サクションロール筒の装着穴が内周面側を負圧域に位置するように穿設されており、吸引部材はサクションロール外筒に穿設した装着穴の外周面側に嵌着固定して構成されている。
【0011】
本発明の他のサクションロールは、円筒形状の両開口を回転軸端に連設された側板によ
りそれぞれ密閉された密閉空間に負圧を供給され、周面に複数の貫通口が穿設されているサクションロール内筒と、円筒形状に構成されてサクションロール内筒を囲うように配設され、周面に複数の装着口が穿設されているサクションロール外筒と、サクションロール外筒の板厚より長さが短い円柱形状に構成されて長さ方向に貫通する吸引口が穿設されている吸引部材とを具備し、サクションロール内筒は貫通口を穿設した外周面の全周に溝を設けて形成した負圧空隙域を有し、サクションロール内筒とサクションロール外筒が長さ方向の両側端で密着固定され、サクションロール外筒の装着穴が内周面側を負圧空隙域に位置するように穿設されており、吸引部材はサクションロール外筒に穿設した装着穴の外周面側に嵌着固定して構成されている。
【0012】
また、本発明のサクションロール装置は、上述のサクションロールと、サクションロールの所定回転角範囲をサクション作用域とするためにサクションロールと非接触で設けられている負圧域規制部材と、サクションロールのサクション作用域にフィルムを案内する第1のニップロールと、サクションロールのサクション作用域からフィルムを送出する第2のニップロールとを具備している。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、周面に複数の装着口が穿設されているサクションロール筒と、サクションロール筒の厚さより長さが短い円柱形状に構成されて長さ方向に貫通する吸引口が穿設されている吸引部材とを有し、吸引部材をサクションロール筒に穿設した装着穴の外周面側に嵌着固定している。サクションロール筒の板厚を研磨加工できる大きさにできるのでサクションロールの真円度・円筒度及び振れの精度を5μm以下と高くでき、また、吸引部材の構造を微細穴パイプ構造としているので吸引口の径を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は一部破断した本発明の一実施例を示す全体構成図、図2はサクションロールの断
面図、図3はサクションロール筒の部分拡大図で、図3(a)は表面図、図3(b)は縦断面図である。なお、図1,図2において断面部分のハッチングは図示が細かくなり理解しずらくなるので省略している。
【0016】
図1,図2において、サクションロール装置1は、サクションロール2,回転軸3,4、回転軸3,4の軸端に連設された側板5,6、サクションロール2の負圧域規制部材7,サクションロール2のサクション作用域にフィルム10を案内する第1のニップロール8,サクションロール2のサクション作用域からフィルム10を送出する第2のニップロール9から構成されている。
【0017】
サクションロール2は回転軸3,4、回転軸3,4の軸端に連設された側板5,6、サクションロール筒11から構成される。サクションロール筒11は円筒形状の両開口を回転軸3,4の軸端に連設された側板5,6によりそれぞれ密閉されて密閉空間12を形成している。回転軸4には密閉空間12に負圧を供給する空気流路13が設けられている。密閉空間12には図示しない負圧供給源から空気流路13を介して負圧を供給される。
【0018】
サクションロール筒11の周面には複数の装着口14が穿設されている。複数の装着口14は図3(a)に示すように千鳥状に均一分布で穿設されている。サクションロール筒11は側板5,6にボルトで固定される。サクションロール外筒11の装着口14は図1に示すように内周面側を負圧密閉空間12に位置するように穿設されている。
【0019】
サクションロール筒11に穿設した装着口14には図3(b)に示すようにその外周面側に円柱形状の吸引部材15が嵌着固定されている。吸引部材15は装着口14に嵌挿してサクションロール筒11の外周面に一致する位置で嵌着固定される。吸引部材15の長さはサクションロール外筒の板厚より短い円柱形状に構成され、長さ方向に貫通する吸引口16が穿設されている。吸引部材15は円筒の単管を用いることもできる。
【0020】
サクションロール筒11の板厚、装着口14の径と吸引部材15の長さ、吸引口16の径の一例は次のようになっている。サクションロール筒11の板厚が20mm、装着口14の径が2.5mm、吸引部材15の長さが5mm、吸引口の径が0.5mmとなる。なお、真円度・円筒度及び振れの精度を5μm以下と高精度に研磨加工できる厚さは概ね10mm以上と云われている。
【0021】
サクションロール筒11(サクションロール2)の下部には所定回転角範囲をサクション作用域とするためにサクションロール2と非接触で遮蔽部材7が設けられている。遮蔽部材7は図2に示すように、サクション作用域Bと非サクション作用域Aに区分する負圧域規制部材となる。本遮蔽部材7は接触従動式のベルト式とすることでよりサクション効率を向上させることも可能となる。
【0022】
回転軸3は軸箱17に設けた軸受19により回転自在に軸支され、また、回転軸4は軸箱18に設けた軸受20により回転自在に軸支されている。回転軸4の一端には密閉空間12に負圧を供給するためのロータリジョイント21が設けられている。また、回転軸3の一端はカップリング22を介して駆動モータ23に連結されている。サクションロール2は駆動モータ23により直接駆動される。
【0023】
この構成において、サクションロール2は駆動モータ23により回転駆動される。また、サクションロール筒11の密閉空間12には図示しない負圧供給源から空気流路13を介して負圧を供給される。負圧はサクションロール筒11の装着口14に供給され、吸引部材15の吸引口16を負圧にする。吸引部材15に穿設した各吸引口16を負圧にすることによってフィルム10を吸引して移送する。
【0024】
このようにしてフィルムを吸引して移送するのであるが、サクションロール筒の板厚を研磨加工できる大きさにできるのでサクションロールの真円度・円筒度及び振れの精度を5μm以下と高くでき、また、吸引部材の構造を微細穴パイプ構造としているので吸引口の径を小さくすることができる。
【0025】
また、上述の実施例はサクションロールの下部の一部を遮蔽部材で非サクション作用域にしているので、サクションロールの中心の水平軸をX軸とすると、カメラを0度,90度,180度などの位置に配置することによりフィルムに直接描画することもできるという効果を奏し得る。
【実施例2】
【0026】
図4は一部破断した本発明の他の実施例を示す全体構成図、図5はサクションロールの断面図である。なお、図4,図5において断面部分のハッチングは図示が細かくなり理解しずらくなるので省略している。
【0027】
図4,図5に示す実施例2が実施例1と異なるところは、サクションロール2がサクションロール筒11の内側にサクションロール内筒24を設けられていることである。実施例1におけるサクションロール筒11はサクションロール外筒11となる。サクションロール外筒11はサクションロール内筒24を囲うように配設されている。サクションロール内筒24は円筒形状の両開口を回転軸3,4の軸端に連設された側板5,6によりそれぞれ密閉されて密閉空間25を形成している。密閉空間25には回転軸4に設けた空気流路13を介して図示しない負圧供給源から負圧を供給される。
【0028】
サクションロール内筒24は周面に複数の貫通口26が穿設されている。サクションロール内筒24は貫通口26を穿設した外周面の全周に周溝を設けて負圧空隙域27を形成している。サクションロール内筒24とサクションロール外筒11は固定フランジ28,29にボルトで固定される。
【0029】
サクションロール外筒11はサクションロール内筒24と長さ方向の両側端で密着固定される。サクションロール外筒11の装着口14は図4に示すように内周面側を負圧空隙域27に位置するように穿設されている。
【0030】
この構成において、サクションロール内筒24の密閉空間25には図示しない負圧供給源から空気流路13を介して負圧を供給される。密閉空間25の負圧は複数の貫通口26を介してサクションロール内筒24の外周面に全周に亘り形成した周溝の負圧空隙域27に供給される。負圧空隙域27の負圧はサクションロール外筒11の装着口14に供給され、吸引部材15の吸引口16を負圧にする。負圧空隙域27には全周に亘り負圧が均一に供給されているので、複数の吸引部材15に穿設した各吸引口16の負圧も均一になる。吸引部材15に穿設した各吸引口16を負圧にすることによってフィルム10を吸引して移送する。
【0031】
このようにしてフィルムを吸引して移送するのであるが、実施例1と同様に、サクションロール外筒の板厚を研磨加工できる大きさにできるのでサクションロールの真円度・円筒度及び振れの精度を5μm以下と高くでき、また、吸引部材の構造を微細穴パイプ構造としているので吸引口の径を小さくすることができる。
【0032】
また、上述の実施例2は、サクションロール内筒を設けて負圧空隙域を形成しているので、複数の吸引部材に穿設した各吸引口の吸引力を、幅方向,周方向により一層均等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施例を示す一部破断した全体構成図である。
【図2】本発明におけるサクションロールの断面図である。
【図3】本発明におけるサクションロール筒の部分拡大図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す一部破断した全体構成図である。
【図5】本発明の第2の実施例におけるサクションロールの断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 サクションロール装置
2 サクションロール
3,4 回転軸
5,6 側板
7 遮蔽部材(負圧域規制部材)
8,9 ニップロール
10 フィルム
11 サクションロール筒(サクションロール外筒)
12,25 密閉空間
13 空気流路
14 装着口
15 吸引部材(単管)
16 吸引口
17,18 軸箱
19,20 軸受
21 ロータリジョイント
22 カップリング
23 駆動モータ
24 サクションロール内筒
26 貫通口
27 負圧空隙域
28,29 固定フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の両開口を回転軸端に連設された側板によりそれぞれ密閉されて密閉空間に負圧を供給され、周面に複数の貫通口が穿設されているサクションロール外筒と、円柱形状に構成されて長さ方向に貫通する吸引口が穿設されている吸引部材とを具備し、前記吸引部材は前記サクションロール筒に穿設した装着穴の外周面側に嵌着固定して構成されていることを特徴とするサクションロール。
【請求項2】
円筒形状の両開口を回転軸端に連設された側板によりそれぞれ密閉されて密閉空間に負圧を供給され、周面に複数の貫通口が穿設されているサクションロール内筒と、円筒形状に構成されて前記サクションロール内筒を囲うように配設され、周面に複数の装着口が穿設されているサクションロール外筒と、前記サクションロール外筒の板厚より長さが短い円柱形状に構成されて長さ方向に貫通する吸引口が穿設されている吸引部材とを具備し、前記サクションロール内筒は前記貫通口を穿設した外周面の全周に溝を設けて形成した負圧空隙域を有し、前記サクションロール内筒と前記サクションロール外筒が長さ方向の両側端で密着固定され、前記サクションロール外筒の装着穴が内周面側を前記負圧空隙域に位置するように穿設されており、前記吸引部材は前記サクションロール外筒に穿設した装着穴の外周面側に嵌着固定して構成されていることを特徴とするサクションロール。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のサクションロールと、前記サクションロールの所定回転角範囲をサクション作用域とするために前記サクションロールと非接触で設けられている負圧域規制部材と、前記サクションロールのサクション作用域にフィルムを案内する第1のニップロールと、前記サクションロールのサクション作用域からフィルムを送出する第2のニップロールとを具備することを特徴とするサクションロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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