説明

サスペンションを有する自転車

【課題】簡単な構造で、フロントサスペンションとリアーサスペンションを設ける。
【解決手段】自転車は、前後の車輪1と、シートチューブ9と、フロントフォーク10を連結しているヘッドチューブ11と、クランク軸受15と、前端をヘッドチューブ11に、後端を後輪1Bの車軸1bに、中間をシートチューブ9に固定している弾性フレーム30と、後端をクランク軸受15に連結して前端をヘッドチューブ11に固定しているフロントアンダーフレーム6と、後端を後輪1Bの車軸1bに連結して前端をクランク軸受15に連結しているリアーアンダーフレーム8とを備える。弾性フレーム30は2本の弾性ロッド30Aを備え、2本の弾性ロッド30Aをシートチューブ9の両側に配置して、中間をシートチューブ9に固定している。自転車は、シートチューブ9を、クランク軸受15に固定している上下フレーム29に、上下に移動できるように連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションを有する自転車に関し、特にフレーム自体を弾性変形させてサスペンションを実現する自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションを有する自転車は開発されている。(特許文献1ないし3参照)
特許文献1に記載される自転車は、図1に示すように、上下に伸縮できるフロントフォーク110でフロントサスペンション103を構成し、さらにヘッドチューブ111に弾性変形するアンダーフレーム106を固定し、アンダーフレーム106の後端に後輪101を連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−330866号公報
【特許文献2】特許第2635442号公報
【特許文献3】特許第3018289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1の自転車は、アンダーフレーム106を弾性変形させてリアーサスペンション104を実現できる。しかしながら、フレームの弾性ではフロントサスペンションを実現できないので、フロントフォークを上下方向に伸縮できる複雑な構造とする必要がある。上下に伸縮できるフロントフォークは、シリンダ内にロッドを出し入れして伸縮できる構造とし、さらにコイルスプリングを内蔵して、弾性的に伸縮できる構造としている。この構造のフロントフォークは、シリンダとロッドとの摩擦抵抗がスムーズな上下動を阻害する。摩擦抵抗を小さくしてスムーズに上下に移動する快適なサスペンションを実現するには、シリンダとロッドに極めて高い加工精度が要求されて製造コストが高くなる。また、フロントフォークは、自転車の直進性を良くするためにキャスター角(α)を設けているが、このこともフロントフォークのスムーズな上下動を阻害する原因となる。フロントフォークが傾斜することで、シリンダとロッドとの面圧が増加し、面圧に比例して大きくなる摩擦抵抗が増加するからである。このため、微少振動をも効率よく吸収する衝撃吸収作用を向上させて、快適な乗り心地を実現するが極めて難しい欠点がある。
【0005】
さらに、リアーサスペンションは、ヘッドチューブから後輪に延びる相当に長いアンダーフレームの弾性で実現するので、後輪の横方向の変形や捻れを阻止するのが難しい欠点がある。リアーサスペンションは、上下にスムーズに移動して、左右には移動せず、また捻れないのを理想とするが、長いアンダーフレームでは横方向の変位や捻れを少なくするのが難しい。とくに、1本のアンダーフレームでは横方向の変位や捻れを阻止するのが極めて難しい。さらに、長いアンダーフレームが横方向に変形すると、これがシートチューブに接触してスムーズな上下動を実現できなくなる。また、長いアンダーフレームの捻れは、ペタルを強い力で踏んで加速するときに、後輪が垂直姿勢から傾斜する欠点もある。
【0006】
さらに、特許文献2及び3に記載される自転車は、後端にサドルを固定しているアームの先端を、傾動できるようにヘッドチューブに連結してサドルのサスペンションを実現している。この自転車は、傾動アームを傾動させてサドルのクッションを実現する。この構造は、アームの一端をヘッドチューブに連結して後端にサドルを固定するので、アームをしっかりとフレームに連結するのが難しく、サドルが横方向にずれやすい欠点がある。また、重い体重のかかるサドルをヘッドチューブで支持するので、アームとヘッドチューブとの連結部に極めて強い連結強度が要求される。
【0007】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、極めて簡単な構造でとしながら、サドルのサスペンションを実現でき、また必要であれば、サドルのサスペンションを実現する弾性体でもって、フロントサスペンションやリアーサスペンションを実現することもできるサスペンションを有する自転車を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、サドルの荷重をヘッドチューブと後輪とにバランスして支持でき、サドルの横方向の変位と捻れとを少なくしながら快適な乗り心地を実現できるサスペンションを有する自転車を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の大切な目的は、サドルの上下の衝撃をフレームで吸収して快適な乗り心地を実現できるサスペンションを有する自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明のサスペンションを有する自転車は、前後の車輪1と、上端にサドル2を有するシートチューブ9と、下端に前輪1Aを連結しているフロントフォーク10を水平面内で回転できるように連結しているヘッドチューブ11と、フロントフォーク10にハンドルポスト12を介して固定しているハンドルバー13と、チェーン16とスプロケット17を介して後輪1Bを回転させるペタルクランク14と、このペタルクランク14を回転できるように支持しているクランク軸受15と、前端をヘッドチューブ11に、後端を後輪1Bの車軸1bに、中間をシートチューブ9に固定してなる弾性フレーム30と、後端をクランク軸受15に連結して前端をヘッドチューブ11に固定しているフロントアンダーフレーム6と、後端を後輪1Bの車軸1bに連結して前端をクランク軸受15に連結しているリアーアンダーフレーム8とを備えている。弾性フレーム30は2本の弾性ロッド30Aを備え、2本の弾性ロッド30Aは、シートチューブ9の両側にあって、その前端をヘッドチューブ11に、後端を後輪1Bの車軸1bに、中間をシートチューブ9に固定している。自転車は、シートチューブ9を、クランク軸受15に固定している上下フレーム29に、上下に移動できるように連結している。
【0009】
以上の自転車は、極めて簡単な構造としながら、サドルのサスペンションを実現でき、また必要であれば、サドルのサスペンションを実現する弾性体でもって、フロントサスペンションやリアーサスペンションを実現することもできる特徴がある。
さらに、以上の自転車は、サドルの荷重をヘッドチューブと後輪とにバランスして支持でき、サドルの横方向の変位と捻れとを少なくしながら快適な乗り心地を実現できる特徴がある。また、サドルの上下の衝撃を弾性フレームで吸収しながら快適な乗り心地を実現できる特徴もある。
【0010】
以上の特徴は、ヘッドチューブと後輪とに両端を連結して、中間にサドルを設けている弾性フレームを弾性変形させて、サドルのサスペンションを実現する独特の構造で実現する。この構造の自転車は、従来の自転車のようにアームの先端をヘッドチューブに連結してサドルのサスペンションを実現することなく、両端をフレームに連結している弾性フレームの中間を上下に弾性変形させて、サドルのクッションを実現できる。とくに、以上の自転車は、ヘッドチューブと後輪とに両端を固定している2本の弾性ロッドからなる弾性フレームの中間をシートチューブに連結し、この弾性ロッドを弾性変形させてサドルのクッションを実現するので、フレームの横方向の変位や捻れを少なくしながら、快適な乗り心地を実現できる。
【0011】
また、以上の自転車は、クランク軸受に固定している上下フレームに上下に移動できるようにシートチューブを連結することで、上下フレームでシートチューブを上下方向にガイドしながら、弾性フレームを弾性変形させてシートチューブトを上下に移動させるので、サドルの横ずれを防止しながら、上下方向の衝撃を弾性フレームで吸収してより快適な乗り心地を実現できる特徴もある。
【0012】
本発明のサスペンションを有する自転車は、シートチューブ9を、上下フレーム29を上下に移動できるように挿入してなる円筒状とすることができる。
【0013】
本発明のサスペンションを有する自転車は、フロントアンダーフレーム8を、上下に傾動できるようにクランク軸受15に連結することができる。
以上の自転車は、フロントアンダーフレームを傾動させると共に、弾性フレームを弾性変形させてフロントサスペンションを実現するので、前輪の衝撃をフロントサスペンションで吸収しながらサドルのクッションを実現して、より快適な乗り心地を実現できる。とくに、この自転車は、フロントサスペンションを支持する弾性を、サドルのクッションを実現する弾性フレームで支持するので、フロントサスペンションを支持するために専用のバネなどを設ける必要がなく、フレーム構造で簡単にフロントサスペンションとサドルのクッションとを実現できる特徴がある。
【0014】
本発明のサスペンションを有する自転車は、リアーアンダーフレーム8を、上下に傾動できるようにクランク軸受15に連結することができる。
以上の自転車は、リアーアンダーフレームを傾動させると共に、弾性フレームを弾性変形させてリアーサスペンションを実現するので、後輪の衝撃をリアーサスペンションで吸収しながらサドルのクッションを実現して、より快適な乗り心地を実現できる。とくに、この自転車は、リアーサスペンションを支持する弾性を、サドルのクッションを実現する弾性フレームで支持するので、リアーサスペンションを支持するために専用のバネなどを設ける必要がなく、フレーム構造で簡単にリアーサスペンションとサドルのクッションとを実現できる特徴がある。
【0015】
本発明のサスペンションを有する自転車は、フロントアンダーフレーム6を、上下に傾動できるようにクランク軸受15に連結すると共に、リアーアンダーフレーム8を、上下に傾動できるようにクランク軸受15に連結することができる。
以上の自転車は、フロントアンダーフレームとリアーアンダーフレームを傾動させると共に、弾性フレームを弾性変形させてフロントサスペンションとリアーサスペンションを実現するので、前輪の衝撃をフロントサスペンションで吸収し、また後輪の衝撃をリアーサスペンションで吸収しながらサドルのクッションを実現して、より快適な乗り心地を実現する。とくに、この自転車は、フロントサスペンションとリアーサスペンションを支持する弾性を、サドルのクッションを実現する弾性フレームで支持するので、フロントサスペンションとリアーサスペンションを支持するために専用のバネなどを設ける必要がなく、フレーム構造で簡単にフロントサスペンションとリアーサスペンションとサドルのクッションとを実現できる特徴がある。
【0016】
本発明のサスペンションを有する自転車は、上下フレーム29とシートチューブ9との間に弾性体39を設けて、この弾性体39で弾性的にシートチューブ9を押し上げることができる。
【0017】
本発明のサスペンションを有する自転車は、弾性フレーム30である2本の弾性ロッド30Aを金属ロッドとして、金属ロッドを、山形の連結ロッド31を介してシートチューブ9に固定し、山形の連結ロッド31は、両端を金属ロッドに固定して、突出部をシートチューブ9に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の自転車の側面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるサスペンションを有する自転車の側面図である。
【図3】図2に示す自転車の要部拡大斜視図である。
【図4】図2に示す自転車の後輪の取付部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのサスペンションを有する自転車を例示するものであって、本発明はサスペンションを有する自転車を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0020】
図2に示すスペンションを有する自転車は、前後の車輪1と、上端にサドル2を有するシートチューブ9と、下端に前輪1Aを連結しているフロントフォーク10を水平面内で回転できるように連結しているヘッドチューブ11と、フロントフォーク10にハンドルポスト12を介して固定しているハンドルバー13と、チェーン16とスプロケット17を介して後輪1Bを回転させるペタルクランク14と、このペタルクランク14を回転できるように支持しているクランク軸受15と、前端をヘッドチューブ11に、後端を後輪1Bの車軸1bに、中間をシートチューブ9に固定してなる弾性フレーム30と、後端をクランク軸受15に連結して前端をヘッドチューブ11に固定しているフロントアンダーフレーム6と、後端を後輪1Bの車軸1bに連結して前端をクランク軸受15に連結しているリアーアンダーフレーム8とを備えている。
【0021】
シートチューブ9は弾性変形しない円筒状の金属パイプで、上端にサドル2を固定しているシートポスト19を挿入して連結している。シートチューブ9は、弾性フレーム30の中間に固定している。この弾性フレーム30は、前端をヘッドチューブ11に固定して、後端を後輪1Bの車軸1bに連結している。シートチューブ11は、弾性アーム30の弾性変形によって上下に移動する。また、シートチューブ9は、クランク軸受15に上向きに固定している上下フレーム29を下端に挿入して、これに上下に移動できるように連結している。すなわち、円筒状のシートチューブ9の下端部には、上下フレーム29を上下に移動できるように挿入している。シートチューブ19は、自転車の進行方向に対して左右に傾斜することなくほぼ垂直姿勢を保持して上下に移動できるように、上下フレーム29に連結し、かつ弾性フレーム30の中間に固定している。シートチューブ9は、上端にシートポスト19を連結している。シートポスト19をシートチューブ9に固定するために、シートチューブ9は、上端部を後方に移動させる姿勢でわずかに傾斜している。シートチューブ9は、上端をシートポスト19に固定するために締め付けバンド21を設けている。この締め付けバンド21で、シートチューブ9をシートポスト19に固定するために、シートチューブ9は、その上端の開口部に、上下にスリット(図示せず)を設けている。このスリットを設けている部分に締め付けバンド21を設けている。この締め付けバンド21は、緩めてシートポスト19を上下に移動でき、締め付けてシートチューブ9にシートポスト19を固定する。
【0022】
さらに、図2の自転車は、シートチューブ9の下端にストッパ40を設けている。ストッパ40は、シートチューブ9を上下フレーム29に固定するロック状態で、シートチューブ9の弾性フレーム30による弾性的な上下移動を停止させる。ストッパ40は、通常の使用状態では、シートチューブ9を上下フレーム29に固定しない、いわゆる解放状態に保持される。ストッパ40の解放状態において、弾性フレーム30は弾性変形するが、ストッパ40のロック状態において、弾性フレーム30は弾性変形しない。体重が極めて思いユーザーが使用するとき、あるいはサスペンションを必要としないユーザーを使用するときに限って、ストッパ40はロック状態に保持される。
【0023】
ストッパ40は、シートチューブ9の下端部を上下フレーム29の外周面に締め付けて、シートチューブ9を上下フレーム29に固定する。ストッパ40を設けているシートチューブ9は、下端部にスリット(図示せず)を設けている。ストッパ40は、シートチューブ9のスリット部分を外側から締め付けるU字状の締め付け具41と、この締め付け具41の両端に連結している挿入ピン42と、この挿入ピン42で締め付け具41を締め付けるカムレバー43とを備えている。カムレバー43は、一端にカムを設けて、カムにレバーを連結する形状としている。カムは、挿入ピン42の周囲に回転されて、締め付け具41を締め付けするカムを設けている。このストッパ40は、カムレバー43を回転させて、締め付け具41でシートチューブ9を上下フレーム29に固定してロック状態とし、またカムレバー43を回転させてカムで締め付け具41を締め付けない解放状態とする。
【0024】
弾性フレーム30は、図3に示すように、2本の弾性ロッド30Aを備えており、2本の弾性ロッド30Aをシートチューブ9の両側に配置している。弾性ロッド30Aは、弾性を有する金属ロッドで、その前端をヘッドチューブ11に溶接して固定して、後端を後輪1Bの車軸1bに連結すると共に、中間をシートチューブ9に固定している。
【0025】
図4は、弾性フレーム30の後端を後輪に連結する好ましい構造を示している。この図の弾性フレーム30は、弾性ロッド30Aの後端に固定プレート30Bを固定して、固定プレート30Bを介して後輪の車軸1bに固定している。固定プレート30Bは、後輪の車軸1bを挿入する長孔30Cを設けている。長孔30Cには車軸1bの両端が挿入され、車軸1bの両端部にねじ込まれるナット44で車軸1bに固定される。この構造の弾性フレーム30は、簡単に後輪の車軸1bに固定できると共に、前後に移動する後輪に無理なく簡単に固定できる特徴がある。自転車の後輪は、チェーンの張りを調整するために前後に移動できるようにリアーアンダーフレームに固定されるが、図4の弾性フレームは、後輪を前後に移動して、その車軸に簡単で確実に固定できる。
【0026】
弾性ロッド30Aは、直線状の金属ロッドとしているが、弾性ロッドは、湾曲形状とし、あるいは弾性変形しやすい種々の形状とすることもできる。図3に示すように、2本の弾性ロッド30Aからなる弾性フレーム30の中間をシートチューブ9の両側に固定する構造は、シートチューブ9に作用する下向きの荷重をシートチューブ9の両側に固定される左右の弾性ロッド30Aでバランスしながら支持するので、弾性変形する弾性フレーム30の横方向の変位や捻れを少なくできる特徴がある。
【0027】
図の弾性フレーム30は、金属ロッドである弾性ロッド30Aの中間を、連結ロッド31を介してシートチューブ9に溶接して固定している。図の連結ロッド31は、金属ロッドを山形に折曲したもので、両端を弾性ロッド30Aに固定して、中間の突出部を上方に突出させてシートチューブ9に固定している。この構造の連結ロッド31は、中間の突出部がシートチューブ9から受ける荷重を、両端の連結部を介して弾性ロッド30Aに作用させるので、シートチューブ9の荷重を分散しながら弾性ロッド30Aに作用させることができる。さらに、連結ロッド31の両端と弾性ロッド30Aとの固定位置を調整することで、弾性変形する弾性ロッド30Aのストロークや変形方向をコントロールしている。ただ、連結ロッドは以上の構造には特定せず、弾性ロッドをシートチューブに固定できる他の全ての構造とすることができる。金属ロッドである連結ロッド31は、溶着して弾性ロッド30Aとシートチューブ9に固定している。ただ、弾性ロッドは、連結ロッドを介することなく、直接にシートチューブに固定することもできる。さらに、図に示す弾性フレーム30は、シートチューブ9の前後において、固定ロッド32を介して2本の弾性ロッド30Aを連結している。この弾性フレーム30は、2本の弾性ロッド30Aを一体構造として、さらに横方向の変位や捻れを少なくできる。
【0028】
フロントフォーク10は、先端に向かって次第に細くなる金属パイプ、又はカーボンチューブである。図のフロントフォーク10は、所定のキャスター角(α)として直進性を向上するために、下端に向かって前方に湾曲する形状としている。さらに、フロントフォーク10は、ヘッドチューブ11に挿入される部分を円筒状とし、ヘッドチューブ11から下方に突出する部分は、その上端部で左右に2分割して、下端を前輪1Aの車軸1aに固定している。
【0029】
ヘッドチューブ11は、上部に弾性フレーム30の前端を固定して、下部にフロントアンダーフレーム6の前端を固定している。図のヘッドチューブ11は、弾性フレーム30とフロントアンダーフレーム6とを上下に離して固定している。ヘッドチューブ11は、フロントフォーク10の円筒部を回転できるように挿入している金属パイプで、弾性フレーム30とフロントアンダーフレーム6の前端を固定している。ヘッドチューブ11も、フロントフォーク10を所定のキャスター角(α)とするように、前後に傾斜して、すなわち、上方に向かって後方に移動するように傾斜して、弾性フレーム30とフロントアンダーフレーム6の前端に固定している。このヘッドチューブ11には、フロントフォーク10を回転できるが上下には移動しないように連結している。
【0030】
ハンドルバー13は、ハンドルポスト12の上端にT字状に固定され、ハンドルポスト12をフロントフォーク10に固定することで、ハンドルポスト12を介してフロントフォーク10に連結している。ハンドルバー13には、前後のブレーキレバー(図示せず)が設けられ、またその両端部には、ハンドルグリップ22を設けている。
【0031】
ペタルクランク14は、クランク軸14Aの両端にクランクアーム14Bを固定して、クランクアーム14Bの先端に連結しているクランクピン14Cにペタル23を回転できるように連結している。ペタルクランク14のクランク軸14Aは、クランク軸受15に回転できるが軸方向には移動しないように連結している。さらに、ペタルクランク14は、クランク軸受15の外側にスプロケット17Aを固定している。スプロケット17Aは、チェーン16を介して、後輪1Bの車軸1bに固定しているスプロケット17Bにチェーン16で連結しており、ペタルクランク14を回転させて後輪1Bを駆動する構造としている。
なお、図3においては、クランク軸受15とこれに連結されるフロントアンダーフレーム6及びリアーアンダーフレーム8の連結構造をわかりやすくするために、スプロケット17Aとチェーン16を省略している。
【0032】
フロントアンダーフレーム6は、金属パイプやカーボンチューブで、後端をクランク軸受15に連結して、前端をヘッドチューブ11に固定している。フロントアンダーフレーム6は、弾性変形しない金属パイプやカーボンチューブが使用できるが、多少は弾性変形する金属パイプやカーボンチューブとすることもできる。フロントアンダーフレーム6の後端は、上下に傾動できるようにクランク軸受15に連結している。図に示すフロントアンダーフレーム6は、その後端部を、クランク軸14Aに平行な姿勢で貫通する傾動軸33を介してクランク軸受15に連結している。図のクランク軸受15は、垂直姿勢で前方に突出する一対の連結片34を備えており、この一対の連結片34の間にフロントアンダーフレーム6の後端部を配置している。フロントアンダーフレーム6は、一対の連結片34とフロントアンダーフレーム6の後端部とを貫通する傾動軸33を介して、クランク軸受15に傾動自在に連結している。
【0033】
以上の構造は、フロントアンダーフレーム6を傾動させると共に、弾性フレーム30を弾性変形させてフロントサスペンション3を実現する。すなわち、この自転車は、前輪1Aに衝撃が加えられると、弾性フレーム30がヘッドチューブ11を上下に移動させるように弾性変形すると共に、フロントアンダーフレーム6がヘッドチューブ11を上下に移動させるように傾動してフロントサスペンション3を実現する。
【0034】
フロントサスペンション3がヘッドチューブ11を上下に移動させるサスペンションストロークは、弾性フレーム30の弾性と、フロントアンダーフレーム6の全長(正確には、フロントアンダーフレーム6の前端から傾動軸33までの直線距離)でコントロールできる。フロントサスペンション3のサスペンションストロークは、前輪1Aに加えられる衝撃やユーザーの体重により変化するが、たとえば、1cm〜5cm、好ましくは2cm〜3cmとなるように、弾性フレーム30の弾性とフロントアンダーフレーム6の全長を設定する。フロントサスペンション3は、弾性フレーム30を弾性変形させると共に、フロントアンダーフレーム6を傾動させて、ヘッドチューブ11、すなわち前輪1Aを上下に移動させる。弾性フレーム30の弾性変形によるフロントサスペンション3は、従来の摩擦抵抗による弊害を皆無にできる。このため、前輪1Aが衝撃を受けるときには、極めてスムーズに前輪1Aを上下にストロークできる。したがって、本発明の自転車は、フロントサスペンション3のストロークを小さくしながら、極めて快適な乗り心地を実現する。
【0035】
リアーアンダーフレーム8も、金属パイプやカーボンチューブで、後端を後輪1Bの車軸1bに連結して、前端をクランク軸受15に連結している。リアーアンダーフレーム8も、弾性変形しない金属パイプやカーボンチューブが使用できるが、多少は弾性変形する金属パイプやカーボンチューブとすることもできる。リアーアンダーフレーム8の前端は、上下に傾動できるようにクランク軸受15に連結している。図のリアーアンダーフレーム8は、2本の金属パイプを後輪1Bの両側に配置しており、各々の後端を後輪1Bの車軸1bの両端に連結すると共に、その前端を、クランク軸14Aに平行な傾動軸35を介してクランク軸受15に連結している。図3のリアーアンダーフレーム8は、2本の金属パイプの前端部を連結パイプ8Aで互いに連結すると共に、連結された2本の金属パイプの前端部の間には、クランク軸受15の後方に突出する連結部36を配置している。リアーアンダーフレーム8は、2本の金属パイプの前端部とクランク軸受15の連結部36とを貫通する傾動軸35を介して、クランク軸受15に傾動自在に連結している。
【0036】
以上の構造は、リアーアンダーフレーム8を傾動させると共に、弾性フレーム30を弾性変形させてリアーサスペンション4を実現する。すなわち、この自転車は、後輪1Bに衝撃が加えられる状態で、弾性フレーム30が弾性変形すると共に、リアーアンダーフレーム8が後輪1Bを上下に移動させるように、いいかえるとクランク軸受15を上下に移動させるように傾動してリアーサスペンション4を実現する。
【0037】
リアーサスペンション4が後輪1Bを上下に移動させるサスペンションストロークは、弾性フレーム30の弾性と、リアーアンダーフレーム8の全長(正確には、後輪1Bの車軸1bから傾動軸35までの直線距離)でコントロールできる。リアーサスペンション4のサスペンションストロークは、後輪1Bに加えられる衝撃やユーザーの体重により変化するが、たとえば、2cm〜10cm、好ましくは3cm〜5cmとなるように弾性フレーム30の弾性とリアーアンダーフレーム8の全長を設定する。リアーサスペンション4は、弾性フレーム30を弾性変形させると共に、リアーアンダーフレーム8を傾動させて、後輪1Bを上下に移動させる。弾性フレーム30の弾性変形によるリアーサスペンション4も、フロントサスペンション3と同じように、従来の摩擦抵抗による弊害を皆無にできる。このため、後輪1Bが衝撃を受けるときには、極めてスムーズに後輪1Bを上下にストロークできる。したがって、本発明の自転車は、リアーサスペンション4のストロークを小さくしても、極めて快適な乗り心地を実現することができる。
【0038】
上下フレーム29は金属パイプで、クランク軸受15に固定している。図3に示す上下フレーム29は、クランク軸受15から上方に突出する起立姿勢で、クランク軸受15の上面に固定している。この上下フレーム29は、シートチューブ9の下端部に、上下に移動できるように挿入している。上下フレーム29とシートチューブ9は、低抵抗な状態で相対的に移動できるように、シートチューブ9と同軸に配置している。さらに、図2に示す自転車は、図の鎖線で示すように、上下フレーム29とシートチューブ9との間に弾性体39を設けて、この弾性体39で弾性的にシートチューブ9を押し上げるようにしている。図に示す弾性体39は、コイルスプリングからなる押しバネで、シートチューブ9の内部に配置されて、下端から挿入される上下フレーム30を押し出す方向に付勢するようにしている。この自転車は、サドル2にかかる荷重を弾性体39と弾性フレーム30の両方で支持するので、体重の重いユーザーにも使用できる。ただ、弾性体は、シートチューブを弾性的に押し上げる他の全ての構造とすることができる。さらに、本発明の自転車は、必ずしも弾性体を備えることなく、弾性体を省略することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1…車輪 1A…前輪
1a…車軸
1B…後輪
1b…車軸
2…サドル
3…フロントサスペンション
4…リアーサスペンション
6…フロントアンダーフレーム
8…リアーアンダーフレーム 8A…連結パイプ
9…シートチューブ
10…フロントフォーク
11…ヘッドチューブ
12…ハンドルポスト
13…ハンドルバー
14…ペタルクランク 14A…クランク軸
14B…クランクアーム
14C…クランクピン
15…クランク軸受
16…チェーン
17…スプロケット 17A…スプロケット
17B…スプロケット
19…シートポスト
21…締め付けバンド
22…ハンドルグリップ
23…ペタル
29…上下フレーム
30…弾性フレーム 30A…弾性ロッド
30B…固定プレート 30C…長孔
31…連結ロッド
32…固定ロッド
33…傾動軸
34…連結片
35…傾動軸
36…連結部
39…弾性体
40…ストッパ
41…締め付け具
42…挿入ピン
43…カムレバー
44…ナット
101…後輪
103…フロントサスペンション
104…リアーサスペンション
106…アンダーフレーム
110…フロントフォーク
111…ヘッドチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の車輪(1)と、上端にサドル(2)を有するシートチューブ(9)と、下端に前輪(1A)を連結しているフロントフォーク(10)を水平面内で回転できるように連結しているヘッドチューブ(11)と、フロントフォーク(10)にハンドルポスト(12)を介して固定しているハンドルバー(13)と、チェーン(16)とスプロケット(17)を介して後輪(1B)を回転させるペタルクランク(14)と、このペタルクランク(14)を回転できるように支持しているクランク軸受(15)と、
前端を前記ヘッドチューブ(11)に、後端を後輪(1B)の車軸(1b)に、中間を前記シートチューブ(9)に固定してなる弾性フレーム(30)と、後端を前記クランク軸受(15)に連結して前端を前記ヘッドチューブ(11)に固定しているフロントアンダーフレーム(6)と、後端を後輪(1B)の車軸(1b)に連結して前端を前記クランク軸受(15)に連結しているリアーアンダーフレーム(8)とを備え、
前記弾性フレーム(30)は2本の弾性ロッド(30A)を備え、2本の弾性ロッド(30A)は前記シートチューブ(9)の両側にあって、その先端を前記ヘッドチューブ(11)に、後端を後輪(1B)の車軸(1b)に、中間を前記シートチューブ(9)に固定しており、
前記シートチューブ(9)が前記クランク軸受(15)に固定している上下フレーム(29)に上下に移動できるように連結してなるサスペンションを有する自転車。
【請求項2】
前記シートチューブ(9)が、前記上下フレーム(29)を上下に移動できるように挿入してなる円筒状である請求項1に記載されるサスペンションを有する自転車。
【請求項3】
前記フロントアンダーフレーム(6)が、上下に傾動できるように前記クランク軸受(15)に連結されてなる請求項1または2に記載されるサスペンションを有する自転車。
【請求項4】
前記リアーアンダーフレーム(8)が、上下に傾動できるように前記クランク軸受(15)に連結されてなる請求項1または2に記載されるサスペンションを有する自転車。
【請求項5】
前記フロントアンダーフレーム(6)が、上下に傾動できるように前記クランク軸受(15)に連結されると共に、前記リアーアンダーフレーム(8)が、上下に傾動できるように前記クランク軸受(15)に連結されてなる請求項1または2に記載されるサスペンションを有する自転車。
【請求項6】
前記上下フレーム(29)と前記シートチューブ(9)との間に弾性体(39)を設けており、この弾性体(39)が弾性的にシートチューブ(9)を押し上げてなる請求項1ないし5のいずれかに記載されるサスペンションを有する自転車。
【請求項7】
前記弾性フレーム(30)である2本の弾性ロッド(30A)が金属ロッドであって、金属ロッドが、山形の連結ロッド(31)を介してシートチューブ(9)に固定され、山形の連結ロッド(31)は両端を金属ロッドに固定して、突出部をシートチューブ(9)に固定してなる請求項1ないし6のいずれかに記載されるサスペンションを有する自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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