サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法
【課題】本発明は、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記配線層は、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層は、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記配線層は、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層は、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。それに伴い、HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャ―)にも、高機能化が求められている。
【0003】
このようなサスペンション用基板に形成される配線層は、例えば特許文献1に示すように、絶縁層の同一表面上に一対で形成される(平面配列の配線層)。通常は、一対の配線層からなる読取用配線層と、一対の配線層からなる書込用配線層とが、それぞれ絶縁層の同一表面上に形成される。一方、このような一対の配線層を、絶縁性の部材を介して、縦に配列するサスペンション用基板が知られている(積層配列の配線層)。例えば、特許文献2、3には、一対の配線層を積層配列したサスペンション用基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−11387号公報
【特許文献2】特開平9−022570号公報
【特許文献3】特開平10−003632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サスペンション用基板の高機能化に伴い、配線層間のノイズが大きな問題となっている。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0008】
本発明によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。
【0009】
上記発明においては、上記第一配線層および上記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、上記局所的に配線間距離が広い部分に、上記カバー層切れ込み部が形成されていることが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0010】
上記発明においては、上記絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、絶縁層切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0011】
上記発明においては、上記金属支持基板が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。
【0012】
上記発明においては、上記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、上記第二配線層がその他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。
【0013】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0014】
本発明によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。
【0015】
上記発明においては、上記第一配線層および上記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、上記局所的に配線間距離が広い部分に、上記カバー層切れ込み部が形成されていることが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0016】
上記発明においては、上記ミドル絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0017】
上記発明においては、上記ベース絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0018】
上記発明においては、上記ミドル絶縁層切れ込み部および上記ベース絶縁層切れ込み部において、上記ミドル絶縁層および上記ベース絶縁層の端面が一致していることが好ましい。切れ込み部全体の幅を細くすることができ、デザインルール自由度が向上するからである。
【0019】
上記発明においては、上記金属支持基板が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。
【0020】
上記発明においては、上記第一配線層が、上記下部配線層および上記上部配線層の両方、上記下部配線層のみ、または、上記上部配線層のみから構成されていることが好ましい。
【0021】
上記発明においては、上記第二配線層が、上記下部配線層および上記上部配線層の両方、上記下部配線層のみ、または、上記上部配線層のみから構成されていることが好ましい。
【0022】
上記発明においては、上記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、上記第二配線層がその他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。
【0023】
また、本発明においては、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするサスペンションを提供する。
【0024】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、配線層間のノイズを抑制したサスペンションとすることができる。
【0025】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0026】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、配線層間のノイズを抑制した素子付サスペンションとすることができる。
【0027】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0028】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0029】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層を形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0030】
本発明によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0031】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記下部配線層および上記上部配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0032】
本発明によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0033】
また、上記発明においては、上記ミドル絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有し、上記ミドル絶縁層切れ込み部から露出する上記ベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有する上記ベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成工程を有することが好ましい。ミドル絶縁層切れ込み部およびベース絶縁層切れ込み部において、ミドル絶縁層およびベース絶縁層の端面が一致したサスペンション用基板を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0034】
本発明のサスペンション用基板は、配線層間のノイズを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】平面配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図2】第一実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図3】第一実施態様におけるカバー層切れ込み部を例示する模式図である。
【図4】金属支持基板切れ込み部の形状を例示する概略平面図である。
【図5】第一実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図6】インターリーブ構造を説明する概略平面図である。
【図7】積層配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図8】第二実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図9】第二実施態様におけるカバー層切れ込み部を例示する模式図である。
【図10】ミドル絶縁層切れ込み部およびベース絶縁層切れ込み部を説明する概略断面図である。
【図11】第二実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図12】第二実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図13】第二実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図14】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図15】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図16】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図17】第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図18】第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0037】
A.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板は、2つの実施態様に大別できる。以下、本発明のサスペンション用基板について、第一実施態様と第二実施態様とに分けて説明する。
【0038】
1.第一実施態様
第一実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするものである。
【0039】
図1は、平面配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図1(a)は一般的なサスペンション用基板の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。なお、図1(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。図1(a)に示されるサスペンション用基板20は、一方の先端部分に形成された素子実装領域11と、他方の先端部分に形成された外部回路基板接続領域12と、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12を電気的に接続する複数の配線層13a〜13dとを有するものである。配線層13aおよび配線層13bは一対の配線層であり、同様に、配線層13cおよび配線層13dも一対の配線層である。これらの2つの配線層は、一方が書込用配線層であり、他方が読取用配線層である。また、図1(b)に示すように、サスペンション用基板20は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成された配線層3と、配線層3を覆うように形成されたカバー層4とを有する。
【0040】
図2は、第一実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図2(a)は配線層のみを示す概略平面図であり、図2(b)は配線層上に形成されたカバー層を示す概略平面図であり、図2(c)は図2(b)のA−A断面図である。図2(a)に示すように、4本の配線層3のうち、内側の2本を第一配線層31および第二配線層32とする。また、図2(b)、(c)に示すように、4本の配線層3には、これらの配線層を覆うようにカバー層4が形成されている。第一実施態様においては、カバー層4が、第一配線層31および第二配線層32の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部4sを有することを大きな特徴とする。また、図2(a)〜(c)に示すように、本発明においては、隣り合う第一配線層31および第二配線層32の間に、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、この部分にカバー層切れ込み部4sが形成されていることが好ましい。
【0041】
第一実施態様によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。通常、カバー層の材料は空気よりも比誘電率が高いため、第一配線層および第二配線層の間のカバー層を除去することにより、配線層間のノイズを抑制できる。さらに、カバー層がカバー層切れ込み部を有することで、サスペンション用基板に反りが生じることを抑制できる。
以下、第一実施態様のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0042】
(1)サスペンション用基板の部材
まず、第一実施態様のサスペンション用基板の部材について説明する。第一実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板、絶縁層、配線層およびカバー層を少なくとも有するものである。
【0043】
第一実施態様における金属支持基板は、サスペンション用基板の支持体として機能するものである。金属支持基板の材料は、ばね性を有する金属であることが好ましく、具体的にはSUS等を挙げることができる。また、金属支持基板の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内である。
【0044】
第一実施態様における絶縁層は、金属支持基板上に形成されるものである。絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば樹脂を挙げることができる。上記樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。絶縁層の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。絶縁層が薄すぎると金属支持基板との距離が近いため高周波特性の悪化を招きやすくなり、絶縁層が厚すぎるとサスペンション用基板の剛性が上がりすぎてしまうからである。
【0045】
第一実施態様における配線層は、絶縁層上に形成されるものである。配線層の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、配線層の材料は、圧延銅であっても良く、電解銅であっても良い。配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、9μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。また、配線層の一部の表面には、配線めっき部が形成されていることが好ましい。配線めっき部を設けることにより、配線層の劣化(腐食等)を防止できるからである。中でも、第一実施態様においては、素子や外部回路基板との接続を行う端子部に配線めっき部が形成されていることが好ましい。配線めっき部の種類は特に限定されるものではないが、例えば、Auめっき、Niめっき、Agめっき等を挙げることができる。中でも、第一実施態様においては、配線層の表面側から、NiめっきおよびAuめっきが形成されていることが好ましい。配線めっき部の厚さは、例えば0.1μm〜4μmの範囲内である。また、第一実施態様における配線層は、通常、書込用配線層および読取用配線層を有し、さらに必要に応じて、ノイズシールド用配線層、クロストーク防止用配線層、電源用配線層、グランド用配線層、フライトハイトコントロール用配線層、センサー用配線層、アクチュエータ用配線層、熱アシスト用配線層を有していても良い。また、通常は、これらの配線層のいずれかが、後述する第一配線層および第二配線層となる。
【0046】
第一実施態様におけるカバー層は、配線層を覆うように形成されるものである。カバー層を設けることにより、配線層の劣化(腐食等)を防止できる。カバー層の材料としては、例えば、上述した絶縁層の材料として記載した樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。配線層上(配線層の上面で)のカバー層の厚さは、例えば2μm〜30μmの範囲内であり、中でも2μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。カバー層が薄すぎるとピンホールなどによる配線露出の不良が増加し、カバー層が厚すぎるとサスペンション用基板の剛性が上がりすぎてしまうからである。
【0047】
(2)サスペンション用基板の構成
次に、第一実施態様のサスペンション用基板の構成について説明する。第一実施態様のサスペンション用基板は、カバー層が、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを大きな特徴とする。カバー層切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えばスリット状を挙げることができる。
【0048】
図2に示すように、カバー層切れ込み部4sの長手方向の長さをLとした場合、Lの値は特に限定されるものではないが、例えば500μm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。Lの値が小さすぎると、配線間のノイズを抑制できない可能性があるからである。一方、Lの値は、より大きいことが好ましいが、配線層が密集しているところには、カバー層切れ込み部を形成することが難しい。このような観点から、Lの値は、通常8mm以下である。
【0049】
また、図2に示すように、カバー層切れ込み部4sの短手方向の幅をWとした場合、Wの値は特に限定されるものではないが、例えば50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、110μm以上であることがさらに好ましい。Wの値が小さすぎると、配線間のノイズを抑制できない可能性があるからである。一方、Wの値の上限は、特に限定されるものではないが、Wの値を大きくしすぎると、カバー層が配線層の保護という本来の機能を奏し得なくなる可能性がある。図2に示すように、カバー層切れ込み部4sと、第一配線層31または第二配線層32との距離(値がより小さくなる距離)をD1とした場合、D1の値は、30μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、40μm〜70μmの範囲内であることがより好ましい。
【0050】
カバー層切れ込み部の形成位置は、第一配線層および第二配線層の間であれば特に限定されるものではない。中でも、第一実施態様においては、図2に示したように、第一配線層および第二配線層の間に、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、その部分に、カバー層切れ込み部4sが形成されていることが好ましい。カバー層切れ込み部を形成しやすいからである。局所的に広い部分の配線間距離をD2とした場合、D2の値は、130μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、200μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0051】
図3は、第一実施態様におけるカバー層切れ込み部を例示する模式図である。図3(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図3(b)〜(d)は図3(a)のA−A断面図である。第一実施態様のサスペンション用基板は、図3(b)に示すように、カバー層4が、カバー層切れ込み部4sを有することを大きな特徴とする。また、第一実施態様のサスペンション用基板は、図3(c)に示すように、絶縁層2が、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、絶縁層切れ込み部2sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。絶縁層切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、スリット状を挙げることができる。絶縁層切れ込み部は、例えば、カバー層切れ込み部と同一形状または相似形状であることが好ましい。なお、「カバー層切れ込み部に対応した位置」とは、平面視上、カバー層切れ込み部と少なくとも一部で重複する位置をいう。
【0052】
また、第一実施態様のサスペンション用基板は、図3(d)に示すように、金属支持基板1が、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。金属支持基板切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば図4(a)に示すようにスリット状を挙げることができる。また、図4(b)に示すように、金属支持基板切れ込み部は、複数の孔部を直線状に配置したものであっても良い。なお、孔部の形状としては、例えば円、楕円、多角形状等を挙げることができる。
【0053】
また、第一実施態様においては、平面視上、カバー層切れ込み部を挟むように、第一配線層および第二配線層が配置される。この第一配線層および第二配線層は、上述したように、任意の機能を有する配線層であれば良いが、中でも、第一配線層は書込用配線層および読取用配線層の一方であり、かつ、第二配線層は書込用配線層および読取用配線層の他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。このような具体例としては、図5(a)に示すように、第一配線層31が書込用配線層W2であり、第二配線層32が読取用配線層R1であるサスペンション用基板を挙げることができる。書込用配線層W1、W2、および、読取用配線層R1、R2は、それぞれ一対の差動配線である。
【0054】
また、別の具体例としては、図5(b)に示すように、第一配線層31がインターリーブ型の書込用配線層W2bであり、第二配線層32が読取用配線層R1であるサスペンション用基板を挙げることができる。ここで、インターリーブ構造について、図6を用いて説明する。図6(a)は、インターリーブ構造を有する配線層の概略平面図であり、図6(b)は、図6(a)を金属支持基板側から観察した概略平面図である。なお、図6(a)のA−A断面図が図5(b)の書込用配線層に相当する。図6(a)に示すように、書込用配線層W1aは分岐配線層W1bを有し、W1aおよびW1bはそれぞれ絶縁層を貫通するビア14を有する。その2つのビア14は、図6(b)に示すように、金属支持基板1の一部であるジャンパー部15により電気的に接続されている。同様に、書込用配線層W2aも分岐配線層W2bを有し、W2aおよびW2bはそれぞれ絶縁層を貫通するビア14を有し、その2つのビア14は、金属支持基板1の一部を配線に用いたジャンパー部15により電気的に接続されている。また、図6(a)に示すように、書込用配線層W1に属する配線層(W1a、W1b)と、書込用配線層W2に属する配線層(W2a、W2b)とは、交互に配置されている。このインターリーブ構造をとることにより、高周波特性が良好になるほか、低インピーダンス化を図ることができる。
【0055】
さらに別の具体例としては、図5(c)に示すように、第一配線層31がインターリーブ型の書込用配線層W2bであり、第二配線層32がインターリーブ型の読取用配線層R1aであるサスペンション用基板を挙げることができる。
【0056】
2.第二実施態様
次に、第二実施態様のサスペンション用基板について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするものである。
【0057】
図7は、積層配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図7(a)は一般的なサスペンション用基板の概略平面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。なお、図7(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。図7(a)に示されるサスペンション用基板20は、一方の先端部分に形成された素子実装領域11と、他方の先端部分に形成された外部回路基板接続領域12と、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12を電気的に接続する複数の配線層13とを有するものである。また、図7(b)に示すように、サスペンション用基板20は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成されたベース絶縁層2xと、ベース絶縁層2x上に形成された下部配線層3xと、下部配線層3x上に形成されたミドル絶縁層2yと、ミドル絶縁層2y上に形成された上部配線層3yと、上部配線層3yを覆うように形成されたカバー層4とを有する。
【0058】
図8は、第二実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図8(a)は配線層のみを示す概略平面図であり、図8(b)は配線層上に形成されたカバー層を示す概略平面図であり、図8(c)は図8(b)のA−A断面図である。図8(a)に示すように、2本の配線層3を、第一配線層31および第二配線層32とする。この隣り合う第一配線層31および第二配線層32の間には、配線デザインとして、局所的に広がった空間が形成されている。なお、図8(c)に示すように、第一配線層31および第二配線層32は、それぞれ、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されている。また、図8(b)、(c)に示すように、上部配線層3yには、これらの配線層を覆うようにカバー層4が形成されている。第二実施態様においては、カバー層4が、第一配線層31および第二配線層32の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部4sを有することを大きな特徴とする。
【0059】
第二実施態様によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。通常、カバー層の材料は空気よりも比誘電率が高いため、第一配線層および第二配線層の間のカバー層を除去することにより、配線層間のノイズを抑制できる。さらに、カバー層がカバー層切れ込み部を有することで、サスペンション用基板に反りが生じることを抑制できる。
以下、第二実施態様のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0060】
(1)サスペンション用基板の部材
まず、第二実施態様のサスペンション用基板の部材について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板、ベース絶縁層、下部配線層、ミドル絶縁層、上部配線層およびカバー層を少なくとも有するものである。なお、金属支持基板およびカバー層については、上述した第一実施態様と同様である。また、第二実施態様におけるベース絶縁層は、第一実施態様における絶縁層に相当するものであり、第一実施態様における絶縁層の記載と同様である。また、第二実施態様における下部配線層および上部配線層についても、第一実施態様における配線層と同様である。
【0061】
第二実施態様におけるミドル絶縁層は、下部配線層を覆うように形成されるものである。ミドル絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、第一実施態様における絶縁層の材料として記載したものを用いることができる。中でも、ミドル絶縁層の材料は、ポリイミド樹脂であることが好ましい。また、下部配線層の頂面から上部配線層の底面までのミドル絶縁層の厚さ(配線層間のミドル絶縁層の厚さ)は、例えば5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、7μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。配線層間のミドル絶縁層の厚さが小さすぎると、十分な絶縁性を発揮できない可能性があり、配線層間のミドル絶縁層の厚さが大きすぎると、反りが生じやすくなるからである。
【0062】
(2)サスペンション用基板の構成
次に、第二実施態様のサスペンション用基板の構成について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、カバー層が、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを大きな特徴とする。カバー層切れ込み部の形状、形成位置等については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0063】
第二実施態様のサスペンション用基板は、下部配線層および上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有することを一つの特徴とする。具体的には、第二実施態様における第一配線層は、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合、下部配線層のみから構成されている場合、上部配線層のみから構成されている場合の3つの態様がある。また、第二配線層も同様の3つの態様がある。第二実施態様においては、それぞれの態様を任意に組み合わせることができる。以下、第一配線層の態様ごとに説明する。
【0064】
(i)第一配線層が、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合
図9(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図9(b)〜(g)は図9(a)のA−A断面図である。図9(b)〜(d)は、いずれも、第一配線層31が下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されており、第二配線層32は、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されていても良く(図9(b))、下部配線層3xのみから構成されていても良く(図9(c))、上部配線層3yのみから構成されていても良い図9(d))。なお、「下部配線層のみ」とは、下部配線層が存在し、上部配線層が存在しない状態をいい、「上部配線層のみ」とは、上部配線層が存在し、下部配線層が存在しない状態をいう。
【0065】
また、第二実施態様のサスペンション用基板は、図9(e)、図9(f)に示すように、ミドル絶縁層2yが、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部2ysを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。なお、図9(e)は図9(b)と同様に、第二配線層32が下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されている形態であり、図9(f)は図9(c)と同様に、第二配線層32が下部配線層3xのみから構成されている形態である。ミドル絶縁層切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、スリット状を挙げることができる。ミドル絶縁層切れ込み部は、例えば、カバー層切れ込み部と同一形状または相似形状であることが好ましい。
【0066】
また、第二実施態様のサスペンション用基板は、図9(g)に示すように、ベース絶縁層2xが、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部2xsを有することが好ましい。同様に、第二実施態様のサスペンション用基板は、図9(h)に示すように、金属支持基板1が、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。ベース絶縁層切れ込み部については、第一実施態様における絶縁層切れ込み部と同様であり、金属支持基板切れ込み部についても、第一実施態様における金属支持基板切れ込み部と同様であるので、ここでの記載は省略する。なお、図9(e)、(g)、(h)では、各切れ込み部について、図9(b)に示す配線層を有するサスペンション用基板を用いて説明したが、図9(b)のみに限定されるものではなく、図9(c)、(d)においても同様である。
【0067】
また、第二実施態様においては、図10(a)に示すように、ミドル絶縁層切れ込み部2ysおよびベース絶縁層切れ込み部2xsにおいて、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致していることが好ましい。切れ込み部全体の幅を細くすることができ、デザインルール自由度が向上するからである。従来、例えばアディティブ法で同様の切れ込み部を作製する場合、ベース絶縁層およびミドル絶縁層を順に形成するため、ベース絶縁層切れ込み部の幅よりもミドル絶縁層切れ込み部の幅が大きくなり、切れ込み部の断面形状は階段状になってしまう。その結果、切れ込み部全体の幅が大きくなり、デザインルール自由度が低くなる。これに対して、後述するように、所定のプロセスでベース絶縁層切れ込み部を形成することで、ミドル絶縁層およびベース絶縁層の端面を一致させることができ、切れ込み部全体の幅が小さくなり、切れ込み部の機能(ノイズ抑制機能)を維持しつつ、デザインルール自由度を高くすることができる。
【0068】
ここで、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致しているとは、図10(b)に示すように、切れ込み部におけるミドル絶縁層2yの底面とベース絶縁層2xの頂面との差D3が、8μm以下(好ましくは5μm以下)であることをいう。すなわち、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致しているとは、例えば図10(b)に示すように、製造プロセスにおいて通常発生する寸法ばらつきD3を有する場合をも含むものである。なお、図10(b)では、ベース絶縁層2xがミドル絶縁層2yよりも突出しているが、ミドル絶縁層2yがベース絶縁層2xよりも突出していても良い。その場合においてもD3の値が、上記の値以下であれば、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致していると判断できる。
【0069】
また、第二実施態様においては、平面視上、カバー層切れ込み部を挟むように、第一配線層および第二配線層が配置される。この第一配線層および第二配線層は、上述したように、任意の機能を有する配線層であれば良いが、中でも、第一配線層は書込用配線層および読取用配線層の一方であり、かつ、第二配線層は書込用配線層および読取用配線層の他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。このような具体例としては、図11(a)に示すように、第一配線層31が書込用配線層W1およびW2であるサスペンション用基板を挙げることができる。書込用配線層W1、W2は、一対の差動配線である。
【0070】
一方、図11(b)、(d)に示すように、第二配線層32は読取用配線層R1であっても良い。読取用配線層R1、R2は、それぞれ一対の差動配線である。また、図11(c)、(e)に示すように、第二配線層32はインターリーブ型の読取用配線層R1aであっても良い。なお、図11には図示していないが、第一配線層31として、図11(a)に示す書込用配線層を読取用配線層に代えたものを用いても良い。同様に、図11には図示していないが、第二配線層32として図11(b)〜(e)に示す読取用配線層を書込用配線層に代えたものを用いても良い。
【0071】
(ii)第一配線層が、下部配線層のみから構成されている場合
図12(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図12(b)〜(g)は図12(a)のA−A断面図である。図12(b)〜(d)は、いずれも、第一配線層31が下部配線層3xのみから構成されており、第二配線層32は、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されていても良く(図12(b))、下部配線層3xのみから構成されていても良く(図12(c))、上部配線層3yのみから構成されていても良い図12(d))。
【0072】
第二実施態様のサスペンション用基板は、図12(e)〜(g)に示すように、ミドル絶縁層切れ込み部2ys、ベース絶縁層切れ込み部2xs、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。また、図12(e)〜(g)では、各切れ込み部について、図12(c)に示す配線層を有するサスペンション用基板を用いて説明したが、図12(c)のみに限定されるものではなく、図12(b)、(d)においても同様である。
【0073】
また、第一配線層が下部配線層のみから構成されている場合、その具体例としては、図11(b)、(c)に示す読取用配線層を書込用配線層に代えたもの挙げることができる。なお、その他の事項については、「(i)第一配線層が、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0074】
(iii)第一配線層が、上部配線層のみから構成されている場合
図13(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図13(b)〜(g)は図13(a)のA−A断面図である。図13(b)〜(d)は、いずれも、第一配線層31が上部配線層3yのみから構成されており、第二配線層32は、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されていても良く(図13(b))、下部配線層3xのみから構成されていても良く(図13(c))、上部配線層3yのみから構成されていても良い図13(d))。特に、図13(d)に示すサスペンション用基板は、第一配線層31および第二配線層32がミドル絶縁層2y上に形成されているため、例えば図12(c)に示すサスペンション用基板に比べて、金属支持基板1の影響(金属支持基板1に吸収されるエネルギー損失)を受けにくくなるという利点がある。
【0075】
第二実施態様のサスペンション用基板は、図13(e)〜(g)に示すように、ミドル絶縁層切れ込み部2ys、ベース絶縁層切れ込み部2xs、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。また、図13(e)〜(g)では、各切れ込み部について、図13(d)に示す配線層を有するサスペンション用基板を用いて説明したが、図13(d)のみに限定されるものではなく、図13(b)、(c)においても同様である。
【0076】
また、第一配線層が上部配線層のみから構成されている場合、その具体例としては、図11(d)、(e)に示す読取用配線層を書込用配線層に代えたもの挙げることができる。なお、その他の事項については、「(i)第一配線層が、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0077】
B.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするものである。
【0078】
図14は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図14に示されるサスペンション40は、上述したサスペンション用基板20と、サスペンション用基板20の金属支持基板側の表面に設けられたロードビーム21とを有するものである。
【0079】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、配線層間のノイズを抑制したサスペンションとすることができる。
【0080】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板およびロードビームを有する。本発明におけるサスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。一方、本発明におけるロードビームは、サスペンション用基板の金属支持基板側の表面に設けられるものである。ロードビームの材料は、特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、SUSであることが好ましい。
【0081】
C.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とするものである。
【0082】
図15は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図15に示される素子付サスペンション50は、上述したサスペンション40と、サスペンション40(サスペンション用基板20の素子実装領域11)に実装された素子41とを有するものである。
【0083】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、配線層間のノイズを抑制した素子付サスペンションとすることができる。
【0084】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子を有する。本発明におけるサスペンションについては、上記「B.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本発明における素子としては、例えば、磁気ヘッドスライダ、アクチュエータ、半導体等を挙げることができる。また、上記アクチュエータは、磁気ヘッドを有するものであっても良く、磁気ヘッドを有しないものであっても良い。また、本発明における素子は、磁気ヘッドスライダのように、ディスクに対して記録再生を行う素子(記録再生用素子)であることが好ましい。
【0085】
D.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするものである。
【0086】
図16は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図16に示されるハードディスクドライブ60は、上述した素子付サスペンション50と、素子付サスペンション50がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク51と、ディスク51を回転させるスピンドルモータ52と、素子付サスペンション50の素子を移動させるアーム53およびボイスコイルモータ54と、上記の部材を密閉するケース55とを有するものである。
【0087】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0088】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「C.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0089】
E.サスペンション用基板の製造方法
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明のサスペンション用基板の製造方法は、2つの実施態様に大別できる。以下、本発明のサスペンション用基板について、第一実施態様と第二実施態様とに分けて説明する。
【0090】
1.第一実施態様
第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層を形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0091】
図17は、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。なお、図17は、図2(c)と同様に、図2(b)のA−A断面図に相当するものである。図17においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図17(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、配線層3を形成する(図17(b))。次に、配線層3を覆うようにカバー層4を形成する(図17(c))。なお、カバー層4の形成と同時に、カバー層切れ込み部4sを形成する。
【0092】
次に、絶縁部材2Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、絶縁層2を形成する(図17(d))。絶縁層2の形成と同時に、絶縁層切れ込み部2sを形成する。次に、金属支持部材1Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、金属支持基板1を形成する(図17(e))。金属支持基板1の形成と同時に、金属支持基板切れ込み部1sを形成する。なお、図17においては、カバー層切れ込み部4sの他に、絶縁層切れ込み部2sおよび金属支持基板切れ込み部1sの形成方法を示しているが、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、少なくともカバー層切れ込み部を形成する工程を有していれば良い。
【0093】
第一実施態様によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0094】
また、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、第一配線層および第二配線層を形成する工程と、カバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、いわゆるアディティブ法を用いても良く、サブトラクティブ法を用いても良い。
以下、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例として、サブトラクティブ法による製造方法について、工程ごとに説明する。
【0095】
(1)積層部材準備工程
積層部材準備工程は、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する工程である。
【0096】
積層部材の金属支持部材をエッチングすることにより金属支持基板が得られ、積層部材の絶縁部材をエッチングすることにより絶縁層が得られ、積層体の導体部材をエッチングすることにより配線層が得られる。積層部材は、市販の三層材であっても良く、金属支持部材に対して絶縁層および導体部材を順次形成して得られたものであっても良い。
【0097】
(2)配線層形成工程
配線層形成工程は、上記導体部材をエッチングし、配線層を形成する工程である。第一実施態様においては、配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、配線層を形成する。
【0098】
配線層の形成方法としては、例えば、積層部材の導体部材上に、ドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する導体部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液の種類は、導体部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば導体部材の材料がCuである場合には、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0099】
また、第一実施態様においては、導体部材のエッチングと同時に、金属支持部材のエッチングを行っても良い。金属支持部材のエッチングは、例えば、治具孔の形成のためのエッチングを挙げることができる。また、必要であれば、後述する金属支持基板形成工程で行う加工の少なくとも一部を、導体部材のエッチングと同時に行っても良い。
【0100】
(3)カバー層形成工程
カバー層形成工程は、上記配線層を覆うようにカバー層を形成する工程である。第一実施態様においては、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する。
【0101】
カバー層の形成方法は、特に限定されるものではなく、カバー層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバー層の材料が感光性材料である場合には、全面形成したカバー層に露光現像を行うことによりパターン状のカバー層を得ることができる。また、カバー層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成したカバー層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状のカバー層を得ることができる。
【0102】
また、カバー層切れ込み部の形成は、カバー層の形成と同時であっても良く、カバー層の形成後であっても良いが、カバー層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0103】
(4)絶縁層形成工程
絶縁層形成工程は、上記絶縁部材をエッチングし、絶縁層を形成する工程である。
【0104】
絶縁層の形成方法としては、例えば、絶縁部材に対して、ドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する絶縁部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、絶縁部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば絶縁部材の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。
【0105】
また、第一実施態様においては、絶縁層に、絶縁層切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。絶縁層切れ込み部の形成は、絶縁層の形成と同時であっても良く、絶縁層の形成後であっても良いが、絶縁層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0106】
(5)金属支持基板形成工程
金属支持基板形成工程は、上記金属支持部材をエッチングし金属支持基板を形成する工程である。また、本工程において、通常は、金属支持基板の外形加工を行う。
【0107】
金属支持部材をエッチングする方法は特に限定されるものでないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、金属支持部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば金属支持部材の材料がSUSである場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0108】
また、第一実施態様においては、金属支持基板に、金属支持基板切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。金属支持基板切れ込み部の形成は、金属支持基板の形成と同時であっても良く、金属支持基板の形成後であっても良いが、金属支持基板の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0109】
(6)その他の工程
第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、配線層の一部に配線めっき部を形成する配線めっき部形成工程を有していても良い。配線めっき部を形成する方法としては、具体的には、電解めっき法を挙げることができる。また、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、配線層および金属支持基板(金属支持部材)を電気的に接続するビアを形成するビア形成工程を有していても良い。ビアを形成する方法としては、具体的には、電解めっき法を挙げることができる。
【0110】
2.第二実施態様
第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記下部配線層および上記上部配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0111】
第二実施態様によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0112】
図18は、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。なお、図18は、図8(c)と同様に、図8(b)のA−A断面図に相当するものである。図18においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図18(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、下部配線層3xを形成する(図18(b))。次に、下部配線層3xを覆うようにミドル絶縁層2yを形成する(図18(c))。なお、ミドル絶縁層2yの形成と同時に、ミドル絶縁層切れ込み部2ysを形成する。次に、図示しないが、ミドル絶縁層2yの表面上に、スパッタリング法等によりシード層を形成し、そのシード層の表面に、DFR等を用いて所定のパターンを形成する。次に、得られたパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により上部配線層3yを形成する(図18(d))。シード層の除去後、上部配線層3yを覆うようにカバー層4を形成する(図18(e))。なお、カバー層4の形成と同時に、カバー層切れ込み部4sを形成する。
【0113】
次に、絶縁部材2Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、ベース絶縁層2xを形成する(図18(f))。ベース絶縁層2xの形成と同時に、ベース絶縁層切れ込み部2xsを形成する。次に、金属支持部材1Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、金属支持基板1を形成する(図18(g))。金属支持基板1の形成と同時に、金属支持基板切れ込み部1sを形成する。なお、図18においては、カバー層切れ込み部4sの他に、ミドル絶縁層切れ込み部2ys、ベース絶縁層切れ込み部2xsおよび金属支持基板切れ込み部1sの形成方法を示しているが、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、少なくともカバー層切れ込み部を形成する工程を有していれば良い。
【0114】
第二実施態様によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0115】
また、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、第一配線層および第二配線層を形成する工程と、カバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、いわゆるアディティブ法を用いても良く、サブトラクティブ法を用いても良い。
以下、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例として、サブトラクティブ法による製造方法について、工程ごとに説明する。
【0116】
(1)積層部材準備工程
積層部材準備工程は、第一実施態様における積層部材準備工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0117】
(2)下部配線層形成工程
下部配線層形成工程は、第一実施態様における配線層形成工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0118】
(3)ミドル絶縁層形成工程
ミドル絶縁層形成工程は、下部配線層を覆うようにミドル絶縁層を形成する工程である。ミドル絶縁層の形成方法は、特に限定されるものではなく、ミドル絶縁層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、ミドル絶縁層の材料が感光性材料である場合には、全面形成したミドル絶縁層に露光現像を行うことによりパターン状のミドル絶縁層を得ることができる。また、ミドル絶縁層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成したミドル絶縁層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状のミドル絶縁層を得ることができる。
【0119】
また、第二実施態様においては、ミドル絶縁層に、ミドル絶縁層切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。ミドル絶縁層切れ込み部の形成は、ミドル絶縁層の形成と同時であっても良く、ミドル絶縁層の形成後であっても良いが、ミドル絶縁層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0120】
(4)上部配線層形成工程
上部配線層形成工程は、ミドル絶縁層上に上部配線層を形成する工程である。上部配線層の形成方法としては、例えば電解めっき法等を挙げることができる。また、第二実施態様においては、下部配線層および上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、下部配線層および上部配線層を形成する。この具体的な態様については、「A.サスペンション用基板 2.第二実施態様」で説明した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0121】
(5)カバー層形成工程
カバー層形成工程は、上記上部配線層を覆うようにカバー層を形成する工程である。第二実施態様においては、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する。なお、カバー層の形成方法等については、第一実施態様におけるカバー層形成工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0122】
また、カバー層切れ込み部の形成は、カバー層の形成と同時であっても良く、カバー層の形成後であっても良いが、カバー層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0123】
(6)ベース絶縁層形成工程
ベース絶縁層形成工程は、第一実施態様における絶縁層形成工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0124】
第二実施態様においては、ベース絶縁層に、ベース絶縁層切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。ベース絶縁層切れ込み部の形成は、ベース絶縁層の形成と同時であっても良く、ベース絶縁層の形成後であっても良いが、ベース絶縁層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0125】
特に、第二実施態様においては、ミドル絶縁層切れ込み部から露出するベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有するベース絶縁層を形成することが好ましい。ミドル絶縁層切れ込み部およびベース絶縁層切れ込み部において、ミドル絶縁層およびベース絶縁層の端面が一致したサスペンション用基板を得ることができるからである。特に、ミドル絶縁層2yをレジストとして用いて、ベース絶縁層2xのエッチングを行い、ベース絶縁層切れ込み部2xsを形成することが好ましい。なお、ミドル絶縁層2yをレジストとして用いる場合、ミドル絶縁層2yは、ベース絶縁層2xよりもエッチングレートの遅い材料から構成されていることが好ましい。なお、両者のエッチングレートが大きく変わらない場合には、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そこから露出するベース絶縁層2xをエッチングすることが好ましい。
【0126】
(7)金属支持基板形成工程
金属支持基板形成工程は、第一実施態様における金属支持基板形工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。なお、第二実施態様においては、金属支持基板に、金属支持基板切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。また、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。金属支持基板切れ込み部の形成は、金属支持基板の形成と同時であっても良く、金属支持基板の形成後であっても良いが、金属支持基板の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0127】
(8)その他の工程
第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、上述した第一実施態様と同様に、配線めっき部形成工程、ビア形成工程等を有していても良い。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0130】
[実施例1]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持部材)、厚さ10μmのポリイミド樹脂層(絶縁部材)、厚さ9μmの電解銅層(導体部材)を有する積層部材を準備した(図17(a))。次に、ドライフィルムレジストを積層部材の両面にラミネートし、レジストパターンを形成した。次に、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。これにより、導体部材から配線層を形成した(図17(b))。なお、図示しないが、金属支持部材には治具孔を形成した。
【0131】
その後、パターニングされた配線層を覆うように、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングした。乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下で加熱することにより硬化(イミド化)させ、カバー層を形成した(図17(c))。この際、同時にカバー層切れ込み部(長さ2.2mm、幅150μm)を形成した。次に、絶縁部材をパターニングするために、レジスト製版し、露出する部位のポリイミド樹脂をウェットエッチングで除去し、絶縁層を形成した(図17(d))。この際、同時に絶縁層切れ込み部を形成した。
【0132】
最後に、金属支持部材にウェットエッチングを行い、外形加工を行うことで、金属支持基板を形成した(図17(e))。この際、同時に金属支持基板切れ込み部を形成した。このようにして、サスペンション用基板を得た。
【0133】
[実施例2]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持部材)、厚さ10μmのポリイミド樹脂層(絶縁部材)、厚さ9μmの電解銅層(導体部材)を有する積層部材を準備した(図18(a))。次に、ドライフィルムレジストを積層部材の両面にラミネートし、レジストパターンを形成した。次に、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。これにより、導体部材から下部配線層を形成した(図18(b))。なお、図示しないが、金属支持部材には治具孔を形成した。
【0134】
その後、パターニングされた下部配線層を覆うように、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングした。乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下、加熱することにより硬化(イミド化)させ、ミドル絶縁層を形成した(図18(c))。この際、同時にミドル絶縁層切れ込み部を形成した。次に、スパッタリング法によりクロム(Cr)および銅(Cu)からなるシード層を形成した。次に、シード層表面にドライフィルムレジストを貼付し、露光・現像を行うことにより、レジストパターンを形成した。そのレジストパターンから露出するシード層の表面に、電解Cuめっき法を行い、上部配線層を形成した(図18(d))。
【0135】
その後、レジストパターンを剥離し、不要なシード層を除去した後、パターニングされた上部配線層を覆うように、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングした。乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下、加熱することにより硬化(イミド化)させ、カバー層を形成した(図18(e))。この際、同時にカバー層切れ込み部(長さ1.3mm、幅170μm)を形成した。さらに、絶縁部材をパターニングするために、レジスト製版し、露出する部位のポリイミド樹脂をウェットエッチングで除去し、ベース絶縁層を形成した。この際、同時にベース絶縁層切れ込み部を形成した(図18(f))。
【0136】
最後に、金属支持部材にウェットエッチングを行い、外形加工を行うことで、金属支持基板を形成した(図18(g))。この際、同時に金属支持基板切れ込み部を形成した。このようにして、サスペンション用基板を得た。なお、実施例2では、ミドル絶縁層を形成した後に第一絶縁部材をエッチングしてベース絶縁層を形成するため、ミドル絶縁層とベース絶縁層の端面を一致させることができた。一方、ベース絶縁層を形成した後に、アディティブ法によりミドル絶縁層を形成する場合、端面間の距離(図10(b)のD3)を5μm以下に形成することが困難であった。
【符号の説明】
【0137】
1…金属支持基板、 1s…金属支持基板切れ込み部、 2…絶縁層、 2x…ベース絶縁層、 2y…ミドル絶縁層、 2s…絶縁層切れ込み部、 2xs…ベース絶縁層切れ込み部、 2ys…ミドル絶縁層切れ込み部、 3…配線層、 3x…下部配線層、 3y…上部配線層、 4…カバー層、 4s…カバー層切れ込み部、 11…素子実装領域、 12…外部回路基板接続領域、 13…配線層、 20…サスペンション用基板、 31…第一配線層、 32…第二配線層
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。それに伴い、HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャ―)にも、高機能化が求められている。
【0003】
このようなサスペンション用基板に形成される配線層は、例えば特許文献1に示すように、絶縁層の同一表面上に一対で形成される(平面配列の配線層)。通常は、一対の配線層からなる読取用配線層と、一対の配線層からなる書込用配線層とが、それぞれ絶縁層の同一表面上に形成される。一方、このような一対の配線層を、絶縁性の部材を介して、縦に配列するサスペンション用基板が知られている(積層配列の配線層)。例えば、特許文献2、3には、一対の配線層を積層配列したサスペンション用基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−11387号公報
【特許文献2】特開平9−022570号公報
【特許文献3】特開平10−003632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サスペンション用基板の高機能化に伴い、配線層間のノイズが大きな問題となっている。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0008】
本発明によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。
【0009】
上記発明においては、上記第一配線層および上記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、上記局所的に配線間距離が広い部分に、上記カバー層切れ込み部が形成されていることが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0010】
上記発明においては、上記絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、絶縁層切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0011】
上記発明においては、上記金属支持基板が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。
【0012】
上記発明においては、上記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、上記第二配線層がその他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。
【0013】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0014】
本発明によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。
【0015】
上記発明においては、上記第一配線層および上記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、上記局所的に配線間距離が広い部分に、上記カバー層切れ込み部が形成されていることが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0016】
上記発明においては、上記ミドル絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0017】
上記発明においては、上記ベース絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。
【0018】
上記発明においては、上記ミドル絶縁層切れ込み部および上記ベース絶縁層切れ込み部において、上記ミドル絶縁層および上記ベース絶縁層の端面が一致していることが好ましい。切れ込み部全体の幅を細くすることができ、デザインルール自由度が向上するからである。
【0019】
上記発明においては、上記金属支持基板が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。
【0020】
上記発明においては、上記第一配線層が、上記下部配線層および上記上部配線層の両方、上記下部配線層のみ、または、上記上部配線層のみから構成されていることが好ましい。
【0021】
上記発明においては、上記第二配線層が、上記下部配線層および上記上部配線層の両方、上記下部配線層のみ、または、上記上部配線層のみから構成されていることが好ましい。
【0022】
上記発明においては、上記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、上記第二配線層がその他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。
【0023】
また、本発明においては、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするサスペンションを提供する。
【0024】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、配線層間のノイズを抑制したサスペンションとすることができる。
【0025】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0026】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、配線層間のノイズを抑制した素子付サスペンションとすることができる。
【0027】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0028】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0029】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層を形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0030】
本発明によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0031】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記下部配線層および上記上部配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0032】
本発明によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0033】
また、上記発明においては、上記ミドル絶縁層が、上記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有し、上記ミドル絶縁層切れ込み部から露出する上記ベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有する上記ベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成工程を有することが好ましい。ミドル絶縁層切れ込み部およびベース絶縁層切れ込み部において、ミドル絶縁層およびベース絶縁層の端面が一致したサスペンション用基板を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0034】
本発明のサスペンション用基板は、配線層間のノイズを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】平面配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図2】第一実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図3】第一実施態様におけるカバー層切れ込み部を例示する模式図である。
【図4】金属支持基板切れ込み部の形状を例示する概略平面図である。
【図5】第一実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図6】インターリーブ構造を説明する概略平面図である。
【図7】積層配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図8】第二実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図9】第二実施態様におけるカバー層切れ込み部を例示する模式図である。
【図10】ミドル絶縁層切れ込み部およびベース絶縁層切れ込み部を説明する概略断面図である。
【図11】第二実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図12】第二実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図13】第二実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。
【図14】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図15】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図16】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図17】第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図18】第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0037】
A.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板は、2つの実施態様に大別できる。以下、本発明のサスペンション用基板について、第一実施態様と第二実施態様とに分けて説明する。
【0038】
1.第一実施態様
第一実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするものである。
【0039】
図1は、平面配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図1(a)は一般的なサスペンション用基板の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。なお、図1(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。図1(a)に示されるサスペンション用基板20は、一方の先端部分に形成された素子実装領域11と、他方の先端部分に形成された外部回路基板接続領域12と、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12を電気的に接続する複数の配線層13a〜13dとを有するものである。配線層13aおよび配線層13bは一対の配線層であり、同様に、配線層13cおよび配線層13dも一対の配線層である。これらの2つの配線層は、一方が書込用配線層であり、他方が読取用配線層である。また、図1(b)に示すように、サスペンション用基板20は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成された配線層3と、配線層3を覆うように形成されたカバー層4とを有する。
【0040】
図2は、第一実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図2(a)は配線層のみを示す概略平面図であり、図2(b)は配線層上に形成されたカバー層を示す概略平面図であり、図2(c)は図2(b)のA−A断面図である。図2(a)に示すように、4本の配線層3のうち、内側の2本を第一配線層31および第二配線層32とする。また、図2(b)、(c)に示すように、4本の配線層3には、これらの配線層を覆うようにカバー層4が形成されている。第一実施態様においては、カバー層4が、第一配線層31および第二配線層32の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部4sを有することを大きな特徴とする。また、図2(a)〜(c)に示すように、本発明においては、隣り合う第一配線層31および第二配線層32の間に、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、この部分にカバー層切れ込み部4sが形成されていることが好ましい。
【0041】
第一実施態様によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。通常、カバー層の材料は空気よりも比誘電率が高いため、第一配線層および第二配線層の間のカバー層を除去することにより、配線層間のノイズを抑制できる。さらに、カバー層がカバー層切れ込み部を有することで、サスペンション用基板に反りが生じることを抑制できる。
以下、第一実施態様のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0042】
(1)サスペンション用基板の部材
まず、第一実施態様のサスペンション用基板の部材について説明する。第一実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板、絶縁層、配線層およびカバー層を少なくとも有するものである。
【0043】
第一実施態様における金属支持基板は、サスペンション用基板の支持体として機能するものである。金属支持基板の材料は、ばね性を有する金属であることが好ましく、具体的にはSUS等を挙げることができる。また、金属支持基板の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内である。
【0044】
第一実施態様における絶縁層は、金属支持基板上に形成されるものである。絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば樹脂を挙げることができる。上記樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。絶縁層の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。絶縁層が薄すぎると金属支持基板との距離が近いため高周波特性の悪化を招きやすくなり、絶縁層が厚すぎるとサスペンション用基板の剛性が上がりすぎてしまうからである。
【0045】
第一実施態様における配線層は、絶縁層上に形成されるものである。配線層の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、配線層の材料は、圧延銅であっても良く、電解銅であっても良い。配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、9μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。また、配線層の一部の表面には、配線めっき部が形成されていることが好ましい。配線めっき部を設けることにより、配線層の劣化(腐食等)を防止できるからである。中でも、第一実施態様においては、素子や外部回路基板との接続を行う端子部に配線めっき部が形成されていることが好ましい。配線めっき部の種類は特に限定されるものではないが、例えば、Auめっき、Niめっき、Agめっき等を挙げることができる。中でも、第一実施態様においては、配線層の表面側から、NiめっきおよびAuめっきが形成されていることが好ましい。配線めっき部の厚さは、例えば0.1μm〜4μmの範囲内である。また、第一実施態様における配線層は、通常、書込用配線層および読取用配線層を有し、さらに必要に応じて、ノイズシールド用配線層、クロストーク防止用配線層、電源用配線層、グランド用配線層、フライトハイトコントロール用配線層、センサー用配線層、アクチュエータ用配線層、熱アシスト用配線層を有していても良い。また、通常は、これらの配線層のいずれかが、後述する第一配線層および第二配線層となる。
【0046】
第一実施態様におけるカバー層は、配線層を覆うように形成されるものである。カバー層を設けることにより、配線層の劣化(腐食等)を防止できる。カバー層の材料としては、例えば、上述した絶縁層の材料として記載した樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。配線層上(配線層の上面で)のカバー層の厚さは、例えば2μm〜30μmの範囲内であり、中でも2μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。カバー層が薄すぎるとピンホールなどによる配線露出の不良が増加し、カバー層が厚すぎるとサスペンション用基板の剛性が上がりすぎてしまうからである。
【0047】
(2)サスペンション用基板の構成
次に、第一実施態様のサスペンション用基板の構成について説明する。第一実施態様のサスペンション用基板は、カバー層が、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを大きな特徴とする。カバー層切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えばスリット状を挙げることができる。
【0048】
図2に示すように、カバー層切れ込み部4sの長手方向の長さをLとした場合、Lの値は特に限定されるものではないが、例えば500μm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。Lの値が小さすぎると、配線間のノイズを抑制できない可能性があるからである。一方、Lの値は、より大きいことが好ましいが、配線層が密集しているところには、カバー層切れ込み部を形成することが難しい。このような観点から、Lの値は、通常8mm以下である。
【0049】
また、図2に示すように、カバー層切れ込み部4sの短手方向の幅をWとした場合、Wの値は特に限定されるものではないが、例えば50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、110μm以上であることがさらに好ましい。Wの値が小さすぎると、配線間のノイズを抑制できない可能性があるからである。一方、Wの値の上限は、特に限定されるものではないが、Wの値を大きくしすぎると、カバー層が配線層の保護という本来の機能を奏し得なくなる可能性がある。図2に示すように、カバー層切れ込み部4sと、第一配線層31または第二配線層32との距離(値がより小さくなる距離)をD1とした場合、D1の値は、30μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、40μm〜70μmの範囲内であることがより好ましい。
【0050】
カバー層切れ込み部の形成位置は、第一配線層および第二配線層の間であれば特に限定されるものではない。中でも、第一実施態様においては、図2に示したように、第一配線層および第二配線層の間に、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、その部分に、カバー層切れ込み部4sが形成されていることが好ましい。カバー層切れ込み部を形成しやすいからである。局所的に広い部分の配線間距離をD2とした場合、D2の値は、130μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、200μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0051】
図3は、第一実施態様におけるカバー層切れ込み部を例示する模式図である。図3(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図3(b)〜(d)は図3(a)のA−A断面図である。第一実施態様のサスペンション用基板は、図3(b)に示すように、カバー層4が、カバー層切れ込み部4sを有することを大きな特徴とする。また、第一実施態様のサスペンション用基板は、図3(c)に示すように、絶縁層2が、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、絶縁層切れ込み部2sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。絶縁層切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、スリット状を挙げることができる。絶縁層切れ込み部は、例えば、カバー層切れ込み部と同一形状または相似形状であることが好ましい。なお、「カバー層切れ込み部に対応した位置」とは、平面視上、カバー層切れ込み部と少なくとも一部で重複する位置をいう。
【0052】
また、第一実施態様のサスペンション用基板は、図3(d)に示すように、金属支持基板1が、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。金属支持基板切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば図4(a)に示すようにスリット状を挙げることができる。また、図4(b)に示すように、金属支持基板切れ込み部は、複数の孔部を直線状に配置したものであっても良い。なお、孔部の形状としては、例えば円、楕円、多角形状等を挙げることができる。
【0053】
また、第一実施態様においては、平面視上、カバー層切れ込み部を挟むように、第一配線層および第二配線層が配置される。この第一配線層および第二配線層は、上述したように、任意の機能を有する配線層であれば良いが、中でも、第一配線層は書込用配線層および読取用配線層の一方であり、かつ、第二配線層は書込用配線層および読取用配線層の他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。このような具体例としては、図5(a)に示すように、第一配線層31が書込用配線層W2であり、第二配線層32が読取用配線層R1であるサスペンション用基板を挙げることができる。書込用配線層W1、W2、および、読取用配線層R1、R2は、それぞれ一対の差動配線である。
【0054】
また、別の具体例としては、図5(b)に示すように、第一配線層31がインターリーブ型の書込用配線層W2bであり、第二配線層32が読取用配線層R1であるサスペンション用基板を挙げることができる。ここで、インターリーブ構造について、図6を用いて説明する。図6(a)は、インターリーブ構造を有する配線層の概略平面図であり、図6(b)は、図6(a)を金属支持基板側から観察した概略平面図である。なお、図6(a)のA−A断面図が図5(b)の書込用配線層に相当する。図6(a)に示すように、書込用配線層W1aは分岐配線層W1bを有し、W1aおよびW1bはそれぞれ絶縁層を貫通するビア14を有する。その2つのビア14は、図6(b)に示すように、金属支持基板1の一部であるジャンパー部15により電気的に接続されている。同様に、書込用配線層W2aも分岐配線層W2bを有し、W2aおよびW2bはそれぞれ絶縁層を貫通するビア14を有し、その2つのビア14は、金属支持基板1の一部を配線に用いたジャンパー部15により電気的に接続されている。また、図6(a)に示すように、書込用配線層W1に属する配線層(W1a、W1b)と、書込用配線層W2に属する配線層(W2a、W2b)とは、交互に配置されている。このインターリーブ構造をとることにより、高周波特性が良好になるほか、低インピーダンス化を図ることができる。
【0055】
さらに別の具体例としては、図5(c)に示すように、第一配線層31がインターリーブ型の書込用配線層W2bであり、第二配線層32がインターリーブ型の読取用配線層R1aであるサスペンション用基板を挙げることができる。
【0056】
2.第二実施態様
次に、第二実施態様のサスペンション用基板について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、上記カバー層が、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするものである。
【0057】
図7は、積層配列の配線層を有する、一般的なサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図7(a)は一般的なサスペンション用基板の概略平面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。なお、図7(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。図7(a)に示されるサスペンション用基板20は、一方の先端部分に形成された素子実装領域11と、他方の先端部分に形成された外部回路基板接続領域12と、素子実装領域11および外部回路基板接続領域12を電気的に接続する複数の配線層13とを有するものである。また、図7(b)に示すように、サスペンション用基板20は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成されたベース絶縁層2xと、ベース絶縁層2x上に形成された下部配線層3xと、下部配線層3x上に形成されたミドル絶縁層2yと、ミドル絶縁層2y上に形成された上部配線層3yと、上部配線層3yを覆うように形成されたカバー層4とを有する。
【0058】
図8は、第二実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図8(a)は配線層のみを示す概略平面図であり、図8(b)は配線層上に形成されたカバー層を示す概略平面図であり、図8(c)は図8(b)のA−A断面図である。図8(a)に示すように、2本の配線層3を、第一配線層31および第二配線層32とする。この隣り合う第一配線層31および第二配線層32の間には、配線デザインとして、局所的に広がった空間が形成されている。なお、図8(c)に示すように、第一配線層31および第二配線層32は、それぞれ、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されている。また、図8(b)、(c)に示すように、上部配線層3yには、これらの配線層を覆うようにカバー層4が形成されている。第二実施態様においては、カバー層4が、第一配線層31および第二配線層32の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部4sを有することを大きな特徴とする。
【0059】
第二実施態様によれば、カバー層がカバー層切れ込み部を有することから、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板とすることができる。通常、カバー層の材料は空気よりも比誘電率が高いため、第一配線層および第二配線層の間のカバー層を除去することにより、配線層間のノイズを抑制できる。さらに、カバー層がカバー層切れ込み部を有することで、サスペンション用基板に反りが生じることを抑制できる。
以下、第二実施態様のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0060】
(1)サスペンション用基板の部材
まず、第二実施態様のサスペンション用基板の部材について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板、ベース絶縁層、下部配線層、ミドル絶縁層、上部配線層およびカバー層を少なくとも有するものである。なお、金属支持基板およびカバー層については、上述した第一実施態様と同様である。また、第二実施態様におけるベース絶縁層は、第一実施態様における絶縁層に相当するものであり、第一実施態様における絶縁層の記載と同様である。また、第二実施態様における下部配線層および上部配線層についても、第一実施態様における配線層と同様である。
【0061】
第二実施態様におけるミドル絶縁層は、下部配線層を覆うように形成されるものである。ミドル絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、第一実施態様における絶縁層の材料として記載したものを用いることができる。中でも、ミドル絶縁層の材料は、ポリイミド樹脂であることが好ましい。また、下部配線層の頂面から上部配線層の底面までのミドル絶縁層の厚さ(配線層間のミドル絶縁層の厚さ)は、例えば5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、7μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。配線層間のミドル絶縁層の厚さが小さすぎると、十分な絶縁性を発揮できない可能性があり、配線層間のミドル絶縁層の厚さが大きすぎると、反りが生じやすくなるからである。
【0062】
(2)サスペンション用基板の構成
次に、第二実施態様のサスペンション用基板の構成について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、カバー層が、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを大きな特徴とする。カバー層切れ込み部の形状、形成位置等については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0063】
第二実施態様のサスペンション用基板は、下部配線層および上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有することを一つの特徴とする。具体的には、第二実施態様における第一配線層は、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合、下部配線層のみから構成されている場合、上部配線層のみから構成されている場合の3つの態様がある。また、第二配線層も同様の3つの態様がある。第二実施態様においては、それぞれの態様を任意に組み合わせることができる。以下、第一配線層の態様ごとに説明する。
【0064】
(i)第一配線層が、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合
図9(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図9(b)〜(g)は図9(a)のA−A断面図である。図9(b)〜(d)は、いずれも、第一配線層31が下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されており、第二配線層32は、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されていても良く(図9(b))、下部配線層3xのみから構成されていても良く(図9(c))、上部配線層3yのみから構成されていても良い図9(d))。なお、「下部配線層のみ」とは、下部配線層が存在し、上部配線層が存在しない状態をいい、「上部配線層のみ」とは、上部配線層が存在し、下部配線層が存在しない状態をいう。
【0065】
また、第二実施態様のサスペンション用基板は、図9(e)、図9(f)に示すように、ミドル絶縁層2yが、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部2ysを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。なお、図9(e)は図9(b)と同様に、第二配線層32が下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されている形態であり、図9(f)は図9(c)と同様に、第二配線層32が下部配線層3xのみから構成されている形態である。ミドル絶縁層切れ込み部の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、スリット状を挙げることができる。ミドル絶縁層切れ込み部は、例えば、カバー層切れ込み部と同一形状または相似形状であることが好ましい。
【0066】
また、第二実施態様のサスペンション用基板は、図9(g)に示すように、ベース絶縁層2xが、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部2xsを有することが好ましい。同様に、第二実施態様のサスペンション用基板は、図9(h)に示すように、金属支持基板1が、カバー層切れ込み部4sに対応した位置に、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。ベース絶縁層切れ込み部については、第一実施態様における絶縁層切れ込み部と同様であり、金属支持基板切れ込み部についても、第一実施態様における金属支持基板切れ込み部と同様であるので、ここでの記載は省略する。なお、図9(e)、(g)、(h)では、各切れ込み部について、図9(b)に示す配線層を有するサスペンション用基板を用いて説明したが、図9(b)のみに限定されるものではなく、図9(c)、(d)においても同様である。
【0067】
また、第二実施態様においては、図10(a)に示すように、ミドル絶縁層切れ込み部2ysおよびベース絶縁層切れ込み部2xsにおいて、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致していることが好ましい。切れ込み部全体の幅を細くすることができ、デザインルール自由度が向上するからである。従来、例えばアディティブ法で同様の切れ込み部を作製する場合、ベース絶縁層およびミドル絶縁層を順に形成するため、ベース絶縁層切れ込み部の幅よりもミドル絶縁層切れ込み部の幅が大きくなり、切れ込み部の断面形状は階段状になってしまう。その結果、切れ込み部全体の幅が大きくなり、デザインルール自由度が低くなる。これに対して、後述するように、所定のプロセスでベース絶縁層切れ込み部を形成することで、ミドル絶縁層およびベース絶縁層の端面を一致させることができ、切れ込み部全体の幅が小さくなり、切れ込み部の機能(ノイズ抑制機能)を維持しつつ、デザインルール自由度を高くすることができる。
【0068】
ここで、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致しているとは、図10(b)に示すように、切れ込み部におけるミドル絶縁層2yの底面とベース絶縁層2xの頂面との差D3が、8μm以下(好ましくは5μm以下)であることをいう。すなわち、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致しているとは、例えば図10(b)に示すように、製造プロセスにおいて通常発生する寸法ばらつきD3を有する場合をも含むものである。なお、図10(b)では、ベース絶縁層2xがミドル絶縁層2yよりも突出しているが、ミドル絶縁層2yがベース絶縁層2xよりも突出していても良い。その場合においてもD3の値が、上記の値以下であれば、ミドル絶縁層2yおよびベース絶縁層2xの端面が一致していると判断できる。
【0069】
また、第二実施態様においては、平面視上、カバー層切れ込み部を挟むように、第一配線層および第二配線層が配置される。この第一配線層および第二配線層は、上述したように、任意の機能を有する配線層であれば良いが、中でも、第一配線層は書込用配線層および読取用配線層の一方であり、かつ、第二配線層は書込用配線層および読取用配線層の他方であることが好ましい。配線間のクロストークを効果的に抑制できるからである。このような具体例としては、図11(a)に示すように、第一配線層31が書込用配線層W1およびW2であるサスペンション用基板を挙げることができる。書込用配線層W1、W2は、一対の差動配線である。
【0070】
一方、図11(b)、(d)に示すように、第二配線層32は読取用配線層R1であっても良い。読取用配線層R1、R2は、それぞれ一対の差動配線である。また、図11(c)、(e)に示すように、第二配線層32はインターリーブ型の読取用配線層R1aであっても良い。なお、図11には図示していないが、第一配線層31として、図11(a)に示す書込用配線層を読取用配線層に代えたものを用いても良い。同様に、図11には図示していないが、第二配線層32として図11(b)〜(e)に示す読取用配線層を書込用配線層に代えたものを用いても良い。
【0071】
(ii)第一配線層が、下部配線層のみから構成されている場合
図12(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図12(b)〜(g)は図12(a)のA−A断面図である。図12(b)〜(d)は、いずれも、第一配線層31が下部配線層3xのみから構成されており、第二配線層32は、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されていても良く(図12(b))、下部配線層3xのみから構成されていても良く(図12(c))、上部配線層3yのみから構成されていても良い図12(d))。
【0072】
第二実施態様のサスペンション用基板は、図12(e)〜(g)に示すように、ミドル絶縁層切れ込み部2ys、ベース絶縁層切れ込み部2xs、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。また、図12(e)〜(g)では、各切れ込み部について、図12(c)に示す配線層を有するサスペンション用基板を用いて説明したが、図12(c)のみに限定されるものではなく、図12(b)、(d)においても同様である。
【0073】
また、第一配線層が下部配線層のみから構成されている場合、その具体例としては、図11(b)、(c)に示す読取用配線層を書込用配線層に代えたもの挙げることができる。なお、その他の事項については、「(i)第一配線層が、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0074】
(iii)第一配線層が、上部配線層のみから構成されている場合
図13(a)はカバー層切れ込み部を示す概略平面図であり、図13(b)〜(g)は図13(a)のA−A断面図である。図13(b)〜(d)は、いずれも、第一配線層31が上部配線層3yのみから構成されており、第二配線層32は、下部配線層3xおよび上部配線層3yの両方から構成されていても良く(図13(b))、下部配線層3xのみから構成されていても良く(図13(c))、上部配線層3yのみから構成されていても良い図13(d))。特に、図13(d)に示すサスペンション用基板は、第一配線層31および第二配線層32がミドル絶縁層2y上に形成されているため、例えば図12(c)に示すサスペンション用基板に比べて、金属支持基板1の影響(金属支持基板1に吸収されるエネルギー損失)を受けにくくなるという利点がある。
【0075】
第二実施態様のサスペンション用基板は、図13(e)〜(g)に示すように、ミドル絶縁層切れ込み部2ys、ベース絶縁層切れ込み部2xs、金属支持基板切れ込み部1sを有することが好ましい。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。また、図13(e)〜(g)では、各切れ込み部について、図13(d)に示す配線層を有するサスペンション用基板を用いて説明したが、図13(d)のみに限定されるものではなく、図13(b)、(c)においても同様である。
【0076】
また、第一配線層が上部配線層のみから構成されている場合、その具体例としては、図11(d)、(e)に示す読取用配線層を書込用配線層に代えたもの挙げることができる。なお、その他の事項については、「(i)第一配線層が、下部配線層および上部配線層の両方から構成されている場合」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0077】
B.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするものである。
【0078】
図14は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図14に示されるサスペンション40は、上述したサスペンション用基板20と、サスペンション用基板20の金属支持基板側の表面に設けられたロードビーム21とを有するものである。
【0079】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、配線層間のノイズを抑制したサスペンションとすることができる。
【0080】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板およびロードビームを有する。本発明におけるサスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。一方、本発明におけるロードビームは、サスペンション用基板の金属支持基板側の表面に設けられるものである。ロードビームの材料は、特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、SUSであることが好ましい。
【0081】
C.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とするものである。
【0082】
図15は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図15に示される素子付サスペンション50は、上述したサスペンション40と、サスペンション40(サスペンション用基板20の素子実装領域11)に実装された素子41とを有するものである。
【0083】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、配線層間のノイズを抑制した素子付サスペンションとすることができる。
【0084】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子を有する。本発明におけるサスペンションについては、上記「B.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本発明における素子としては、例えば、磁気ヘッドスライダ、アクチュエータ、半導体等を挙げることができる。また、上記アクチュエータは、磁気ヘッドを有するものであっても良く、磁気ヘッドを有しないものであっても良い。また、本発明における素子は、磁気ヘッドスライダのように、ディスクに対して記録再生を行う素子(記録再生用素子)であることが好ましい。
【0085】
D.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするものである。
【0086】
図16は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図16に示されるハードディスクドライブ60は、上述した素子付サスペンション50と、素子付サスペンション50がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク51と、ディスク51を回転させるスピンドルモータ52と、素子付サスペンション50の素子を移動させるアーム53およびボイスコイルモータ54と、上記の部材を密閉するケース55とを有するものである。
【0087】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0088】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「C.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0089】
E.サスペンション用基板の製造方法
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明のサスペンション用基板の製造方法は、2つの実施態様に大別できる。以下、本発明のサスペンション用基板について、第一実施態様と第二実施態様とに分けて説明する。
【0090】
1.第一実施態様
第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、上記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層を形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0091】
図17は、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。なお、図17は、図2(c)と同様に、図2(b)のA−A断面図に相当するものである。図17においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図17(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、配線層3を形成する(図17(b))。次に、配線層3を覆うようにカバー層4を形成する(図17(c))。なお、カバー層4の形成と同時に、カバー層切れ込み部4sを形成する。
【0092】
次に、絶縁部材2Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、絶縁層2を形成する(図17(d))。絶縁層2の形成と同時に、絶縁層切れ込み部2sを形成する。次に、金属支持部材1Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、金属支持基板1を形成する(図17(e))。金属支持基板1の形成と同時に、金属支持基板切れ込み部1sを形成する。なお、図17においては、カバー層切れ込み部4sの他に、絶縁層切れ込み部2sおよび金属支持基板切れ込み部1sの形成方法を示しているが、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、少なくともカバー層切れ込み部を形成する工程を有していれば良い。
【0093】
第一実施態様によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0094】
また、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、第一配線層および第二配線層を形成する工程と、カバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、いわゆるアディティブ法を用いても良く、サブトラクティブ法を用いても良い。
以下、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例として、サブトラクティブ法による製造方法について、工程ごとに説明する。
【0095】
(1)積層部材準備工程
積層部材準備工程は、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する工程である。
【0096】
積層部材の金属支持部材をエッチングすることにより金属支持基板が得られ、積層部材の絶縁部材をエッチングすることにより絶縁層が得られ、積層体の導体部材をエッチングすることにより配線層が得られる。積層部材は、市販の三層材であっても良く、金属支持部材に対して絶縁層および導体部材を順次形成して得られたものであっても良い。
【0097】
(2)配線層形成工程
配線層形成工程は、上記導体部材をエッチングし、配線層を形成する工程である。第一実施態様においては、配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、配線層を形成する。
【0098】
配線層の形成方法としては、例えば、積層部材の導体部材上に、ドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する導体部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液の種類は、導体部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば導体部材の材料がCuである場合には、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0099】
また、第一実施態様においては、導体部材のエッチングと同時に、金属支持部材のエッチングを行っても良い。金属支持部材のエッチングは、例えば、治具孔の形成のためのエッチングを挙げることができる。また、必要であれば、後述する金属支持基板形成工程で行う加工の少なくとも一部を、導体部材のエッチングと同時に行っても良い。
【0100】
(3)カバー層形成工程
カバー層形成工程は、上記配線層を覆うようにカバー層を形成する工程である。第一実施態様においては、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する。
【0101】
カバー層の形成方法は、特に限定されるものではなく、カバー層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバー層の材料が感光性材料である場合には、全面形成したカバー層に露光現像を行うことによりパターン状のカバー層を得ることができる。また、カバー層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成したカバー層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状のカバー層を得ることができる。
【0102】
また、カバー層切れ込み部の形成は、カバー層の形成と同時であっても良く、カバー層の形成後であっても良いが、カバー層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0103】
(4)絶縁層形成工程
絶縁層形成工程は、上記絶縁部材をエッチングし、絶縁層を形成する工程である。
【0104】
絶縁層の形成方法としては、例えば、絶縁部材に対して、ドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する絶縁部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、絶縁部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば絶縁部材の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。
【0105】
また、第一実施態様においては、絶縁層に、絶縁層切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。絶縁層切れ込み部の形成は、絶縁層の形成と同時であっても良く、絶縁層の形成後であっても良いが、絶縁層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0106】
(5)金属支持基板形成工程
金属支持基板形成工程は、上記金属支持部材をエッチングし金属支持基板を形成する工程である。また、本工程において、通常は、金属支持基板の外形加工を行う。
【0107】
金属支持部材をエッチングする方法は特に限定されるものでないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、金属支持部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば金属支持部材の材料がSUSである場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0108】
また、第一実施態様においては、金属支持基板に、金属支持基板切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。さらに、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。金属支持基板切れ込み部の形成は、金属支持基板の形成と同時であっても良く、金属支持基板の形成後であっても良いが、金属支持基板の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0109】
(6)その他の工程
第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、配線層の一部に配線めっき部を形成する配線めっき部形成工程を有していても良い。配線めっき部を形成する方法としては、具体的には、電解めっき法を挙げることができる。また、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、配線層および金属支持基板(金属支持部材)を電気的に接続するビアを形成するビア形成工程を有していても良い。ビアを形成する方法としては、具体的には、電解めっき法を挙げることができる。
【0110】
2.第二実施態様
第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、上記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、上記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、上記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、上記下部配線層および上記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、上記下部配線層および上記上部配線層を形成する配線層形成工程と、上記第一配線層および上記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する上記カバー層形成するカバー層形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0111】
第二実施態様によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0112】
図18は、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。なお、図18は、図8(c)と同様に、図8(b)のA−A断面図に相当するものである。図18においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図18(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、下部配線層3xを形成する(図18(b))。次に、下部配線層3xを覆うようにミドル絶縁層2yを形成する(図18(c))。なお、ミドル絶縁層2yの形成と同時に、ミドル絶縁層切れ込み部2ysを形成する。次に、図示しないが、ミドル絶縁層2yの表面上に、スパッタリング法等によりシード層を形成し、そのシード層の表面に、DFR等を用いて所定のパターンを形成する。次に、得られたパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により上部配線層3yを形成する(図18(d))。シード層の除去後、上部配線層3yを覆うようにカバー層4を形成する(図18(e))。なお、カバー層4の形成と同時に、カバー層切れ込み部4sを形成する。
【0113】
次に、絶縁部材2Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、ベース絶縁層2xを形成する(図18(f))。ベース絶縁層2xの形成と同時に、ベース絶縁層切れ込み部2xsを形成する。次に、金属支持部材1Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、金属支持基板1を形成する(図18(g))。金属支持基板1の形成と同時に、金属支持基板切れ込み部1sを形成する。なお、図18においては、カバー層切れ込み部4sの他に、ミドル絶縁層切れ込み部2ys、ベース絶縁層切れ込み部2xsおよび金属支持基板切れ込み部1sの形成方法を示しているが、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、少なくともカバー層切れ込み部を形成する工程を有していれば良い。
【0114】
第二実施態様によれば、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成することにより、配線層間のノイズを抑制したサスペンション用基板を得ることができる。
【0115】
また、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、第一配線層および第二配線層を形成する工程と、カバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、いわゆるアディティブ法を用いても良く、サブトラクティブ法を用いても良い。
以下、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例として、サブトラクティブ法による製造方法について、工程ごとに説明する。
【0116】
(1)積層部材準備工程
積層部材準備工程は、第一実施態様における積層部材準備工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0117】
(2)下部配線層形成工程
下部配線層形成工程は、第一実施態様における配線層形成工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0118】
(3)ミドル絶縁層形成工程
ミドル絶縁層形成工程は、下部配線層を覆うようにミドル絶縁層を形成する工程である。ミドル絶縁層の形成方法は、特に限定されるものではなく、ミドル絶縁層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、ミドル絶縁層の材料が感光性材料である場合には、全面形成したミドル絶縁層に露光現像を行うことによりパターン状のミドル絶縁層を得ることができる。また、ミドル絶縁層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成したミドル絶縁層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状のミドル絶縁層を得ることができる。
【0119】
また、第二実施態様においては、ミドル絶縁層に、ミドル絶縁層切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。ミドル絶縁層切れ込み部の形成は、ミドル絶縁層の形成と同時であっても良く、ミドル絶縁層の形成後であっても良いが、ミドル絶縁層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0120】
(4)上部配線層形成工程
上部配線層形成工程は、ミドル絶縁層上に上部配線層を形成する工程である。上部配線層の形成方法としては、例えば電解めっき法等を挙げることができる。また、第二実施態様においては、下部配線層および上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、下部配線層および上部配線層を形成する。この具体的な態様については、「A.サスペンション用基板 2.第二実施態様」で説明した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0121】
(5)カバー層形成工程
カバー層形成工程は、上記上部配線層を覆うようにカバー層を形成する工程である。第二実施態様においては、第一配線層および第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有するカバー層を形成する。なお、カバー層の形成方法等については、第一実施態様におけるカバー層形成工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0122】
また、カバー層切れ込み部の形成は、カバー層の形成と同時であっても良く、カバー層の形成後であっても良いが、カバー層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0123】
(6)ベース絶縁層形成工程
ベース絶縁層形成工程は、第一実施態様における絶縁層形成工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0124】
第二実施態様においては、ベース絶縁層に、ベース絶縁層切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。ベース絶縁層切れ込み部の形成は、ベース絶縁層の形成と同時であっても良く、ベース絶縁層の形成後であっても良いが、ベース絶縁層の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0125】
特に、第二実施態様においては、ミドル絶縁層切れ込み部から露出するベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有するベース絶縁層を形成することが好ましい。ミドル絶縁層切れ込み部およびベース絶縁層切れ込み部において、ミドル絶縁層およびベース絶縁層の端面が一致したサスペンション用基板を得ることができるからである。特に、ミドル絶縁層2yをレジストとして用いて、ベース絶縁層2xのエッチングを行い、ベース絶縁層切れ込み部2xsを形成することが好ましい。なお、ミドル絶縁層2yをレジストとして用いる場合、ミドル絶縁層2yは、ベース絶縁層2xよりもエッチングレートの遅い材料から構成されていることが好ましい。なお、両者のエッチングレートが大きく変わらない場合には、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そこから露出するベース絶縁層2xをエッチングすることが好ましい。
【0126】
(7)金属支持基板形成工程
金属支持基板形成工程は、第一実施態様における金属支持基板形工程と同様であるので、ここでの記載は省略する。なお、第二実施態様においては、金属支持基板に、金属支持基板切れ込み部を形成しても良い。配線間のノイズをさらに抑制できるからである。また、サスペンション用基板の軽量化や剛性調整が可能になるという利点もある。金属支持基板切れ込み部の形成は、金属支持基板の形成と同時であっても良く、金属支持基板の形成後であっても良いが、金属支持基板の形成と同時であることが好ましい。工程の簡略化を図ることができるからである。
【0127】
(8)その他の工程
第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、上述した第一実施態様と同様に、配線めっき部形成工程、ビア形成工程等を有していても良い。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0130】
[実施例1]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持部材)、厚さ10μmのポリイミド樹脂層(絶縁部材)、厚さ9μmの電解銅層(導体部材)を有する積層部材を準備した(図17(a))。次に、ドライフィルムレジストを積層部材の両面にラミネートし、レジストパターンを形成した。次に、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。これにより、導体部材から配線層を形成した(図17(b))。なお、図示しないが、金属支持部材には治具孔を形成した。
【0131】
その後、パターニングされた配線層を覆うように、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングした。乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下で加熱することにより硬化(イミド化)させ、カバー層を形成した(図17(c))。この際、同時にカバー層切れ込み部(長さ2.2mm、幅150μm)を形成した。次に、絶縁部材をパターニングするために、レジスト製版し、露出する部位のポリイミド樹脂をウェットエッチングで除去し、絶縁層を形成した(図17(d))。この際、同時に絶縁層切れ込み部を形成した。
【0132】
最後に、金属支持部材にウェットエッチングを行い、外形加工を行うことで、金属支持基板を形成した(図17(e))。この際、同時に金属支持基板切れ込み部を形成した。このようにして、サスペンション用基板を得た。
【0133】
[実施例2]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持部材)、厚さ10μmのポリイミド樹脂層(絶縁部材)、厚さ9μmの電解銅層(導体部材)を有する積層部材を準備した(図18(a))。次に、ドライフィルムレジストを積層部材の両面にラミネートし、レジストパターンを形成した。次に、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。これにより、導体部材から下部配線層を形成した(図18(b))。なお、図示しないが、金属支持部材には治具孔を形成した。
【0134】
その後、パターニングされた下部配線層を覆うように、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングした。乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下、加熱することにより硬化(イミド化)させ、ミドル絶縁層を形成した(図18(c))。この際、同時にミドル絶縁層切れ込み部を形成した。次に、スパッタリング法によりクロム(Cr)および銅(Cu)からなるシード層を形成した。次に、シード層表面にドライフィルムレジストを貼付し、露光・現像を行うことにより、レジストパターンを形成した。そのレジストパターンから露出するシード層の表面に、電解Cuめっき法を行い、上部配線層を形成した(図18(d))。
【0135】
その後、レジストパターンを剥離し、不要なシード層を除去した後、パターニングされた上部配線層を覆うように、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングした。乾燥後、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜をエッチングし、その後、窒素雰囲気下、加熱することにより硬化(イミド化)させ、カバー層を形成した(図18(e))。この際、同時にカバー層切れ込み部(長さ1.3mm、幅170μm)を形成した。さらに、絶縁部材をパターニングするために、レジスト製版し、露出する部位のポリイミド樹脂をウェットエッチングで除去し、ベース絶縁層を形成した。この際、同時にベース絶縁層切れ込み部を形成した(図18(f))。
【0136】
最後に、金属支持部材にウェットエッチングを行い、外形加工を行うことで、金属支持基板を形成した(図18(g))。この際、同時に金属支持基板切れ込み部を形成した。このようにして、サスペンション用基板を得た。なお、実施例2では、ミドル絶縁層を形成した後に第一絶縁部材をエッチングしてベース絶縁層を形成するため、ミドル絶縁層とベース絶縁層の端面を一致させることができた。一方、ベース絶縁層を形成した後に、アディティブ法によりミドル絶縁層を形成する場合、端面間の距離(図10(b)のD3)を5μm以下に形成することが困難であった。
【符号の説明】
【0137】
1…金属支持基板、 1s…金属支持基板切れ込み部、 2…絶縁層、 2x…ベース絶縁層、 2y…ミドル絶縁層、 2s…絶縁層切れ込み部、 2xs…ベース絶縁層切れ込み部、 2ys…ミドル絶縁層切れ込み部、 3…配線層、 3x…下部配線層、 3y…上部配線層、 4…カバー層、 4s…カバー層切れ込み部、 11…素子実装領域、 12…外部回路基板接続領域、 13…配線層、 20…サスペンション用基板、 31…第一配線層、 32…第二配線層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、
前記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、
前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記金属支持基板が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
前記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、前記第二配線層がその他方であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、前記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、前記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、前記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、
前記下部配線層および前記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、
前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項7】
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のサスペンション用基板。
【請求項8】
前記ミドル絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のサスペンション用基板。
【請求項9】
前記ベース絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項8に記載のサスペンション用基板。
【請求項10】
前記ミドル絶縁層切れ込み部および前記ベース絶縁層切れ込み部において、前記ミドル絶縁層および前記ベース絶縁層の端面が一致していることを特徴とする請求項9に記載のサスペンション用基板。
【請求項11】
前記金属支持基板が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項12】
前記第一配線層が、前記下部配線層および前記上部配線層の両方、前記下部配線層のみ、または、前記上部配線層のみから構成されていることを特徴とする請求項6から請求項11までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項13】
前記第二配線層が、前記下部配線層および前記上部配線層の両方、前記下部配線層のみ、または、前記上部配線層のみから構成されていることを特徴とする請求項6から請求項12までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項14】
前記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、前記第二配線層がその他方であることを特徴とする請求項6から請求項13までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板と、
前記サスペンション用基板の前記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、
を有することを特徴とするサスペンション。
【請求項16】
請求項15に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項17】
請求項16に記載の素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項18】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
前記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、前記配線層を形成する配線層形成工程と、
前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する前記カバー層を形成するカバー層形成工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項19】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、前記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、前記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、前記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
前記下部配線層および前記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、前記下部配線層および前記上部配線層を形成する配線層形成工程と、
前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する前記カバー層形成するカバー層形成工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項20】
前記ミドル絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有し、
前記ミドル絶縁層切れ込み部から露出する前記ベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有する前記ベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成工程を有することを特徴とする請求項19に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、
前記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、
前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記金属支持基板が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
前記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、前記第二配線層がその他方であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、前記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、前記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、前記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、
前記下部配線層および前記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、
前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有することを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項7】
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のサスペンション用基板。
【請求項8】
前記ミドル絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のサスペンション用基板。
【請求項9】
前記ベース絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項8に記載のサスペンション用基板。
【請求項10】
前記ミドル絶縁層切れ込み部および前記ベース絶縁層切れ込み部において、前記ミドル絶縁層および前記ベース絶縁層の端面が一致していることを特徴とする請求項9に記載のサスペンション用基板。
【請求項11】
前記金属支持基板が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項12】
前記第一配線層が、前記下部配線層および前記上部配線層の両方、前記下部配線層のみ、または、前記上部配線層のみから構成されていることを特徴とする請求項6から請求項11までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項13】
前記第二配線層が、前記下部配線層および前記上部配線層の両方、前記下部配線層のみ、または、前記上部配線層のみから構成されていることを特徴とする請求項6から請求項12までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項14】
前記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、前記第二配線層がその他方であることを特徴とする請求項6から請求項13までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板と、
前記サスペンション用基板の前記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、
を有することを特徴とするサスペンション。
【請求項16】
請求項15に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項17】
請求項16に記載の素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項18】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
前記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、前記配線層を形成する配線層形成工程と、
前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する前記カバー層を形成するカバー層形成工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項19】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、前記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、前記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、前記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
前記下部配線層および前記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、前記下部配線層および前記上部配線層を形成する配線層形成工程と、
前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する前記カバー層形成するカバー層形成工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項20】
前記ミドル絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有し、
前記ミドル絶縁層切れ込み部から露出する前記ベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有する前記ベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成工程を有することを特徴とする請求項19に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−54811(P2013−54811A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193972(P2011−193972)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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