サッシの取付け構造
【課題】地震発生時の層間変位にともなうサッシと壁パネルの相対変位を低減することができて、サッシやガラスの損壊だけでなく、壁パネルとサッシとの間のシール破断のおそれを抑制することができるサッシの取付け構造を提供する。
【解決手段】建物の階層の下側の梁21には上方に突出する下ブラケット28を剛接合するとともに、上側の梁21には下方に突出する上ブラケット29を剛接合する。その下ブラケット28と上ブラケット29との間に、窓用のサッシ23を取付ける。
【解決手段】建物の階層の下側の梁21には上方に突出する下ブラケット28を剛接合するとともに、上側の梁21には下方に突出する上ブラケット29を剛接合する。その下ブラケット28と上ブラケット29との間に、窓用のサッシ23を取付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層階ビル等の建物における窓用のサッシの取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサッシの取付け構造としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成は、サッシが損壊することなく建物の層間変位に追従できるようにすることを意図している。そのため、この特許文献1において、サッシは、躯体にブラケットを介して複数本のボルトにより取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3011558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この特許文献1のサッシの取付け構造においては、サッシを支持するブラケットがボルト締めにより、いわゆるピン接合によって固定されている。このため、地震発生時に上側の梁と下側の梁との間に層間変位が生じると、サッシとその両側の壁パネルとの変位が大きくなる。すなわち、図10に示すように、特許文献1に記載された従来のサッシの取付け構造においては、サッシ123を支持する下ブラケット128及び上ブラケット129が、上下の梁21に対して支持点123aにおいてピン接合状態で取付けられている。一方、図12に示す壁パネル122は梁21にブラケットによって直接的に固定されている。従って、梁21に対する壁パネル122の支持点122aとサッシ123の支持点123aの位置が大きく異なる。このため、図12に示すように、前記層間変位が生じると、壁パネル122とサッシ123との間の相対変位が大きくなり、壁パネル122とサッシ123との間のシールが破断しやすくなる。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、地震発生時の層間変位にともなう壁パネルとサッシとの間の相対変位や変形を低減することが可能なサッシの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、建物の階層の下部側および上部側の梁間に壁パネルを固定し、下部側の梁には上方に突出するブラケットを剛接合するとともに、上部側の梁には下方に突出するブラケットを剛接合し、それらのブラケットにサッシを取付けたことを特徴としている。
【0007】
この発明のサッシの取付け構造においては、地震発生時に上下の梁間に層間変位が生じた場合、壁パネルとサッシとの間の変位を低減することができて、サッシと壁パネルとの間のシールが損壊したり、サッシやサッシ内のガラスが損壊したりするおそれを抑制することができる。
【0008】
各壁パネルとサッシとの間にシールを介在させることが好ましい。
鉛直方向に並ぶ壁パネル間に間隔を設けるとともに、その間隔に対応して前記サッシを配置するとよい。
【0009】
各壁パネルは、その上下両端部が水平方向に隣接する他の壁パネルの上下両端部と互い違いに重なるように配列されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明のサッシの取付け構造によれば、地震発生時の層間変位にともなうサッシと壁パネルとの相対の変位を低減することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態を示す建物の斜視図。
【図2】図1の建物における外壁部の一部を拡大して示す部分正面図。
【図3】図2において壁パネルを除いて示す断面図。
【図4】図2の外壁部における壁パネルを拡大して示す斜視図。
【図5】図4の壁パネルの下端部をさらに拡大して示す部分斜視図。
【図6】図2の6−6線におけるサッシの取付け構造を拡大して示す部分断面図。
【図7】図6の7部分を拡大して示す要部断面図。
【図8】図6の8部分を拡大して示す要部断面図。
【図9】実施形態のサッシの取付け構造について層間変位にともなう動作を説明する説明図。
【図10】従来のサッシの取付け構造について層間変位にともなう動作を説明する説明図。
【図11】実施形態のサッシの取付け構造について層間変位にともなう相対変位を説明する説明図。
【図12】従来のサッシの取付け構造について層間変位にともなう相対変位を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明を具体化したサッシの取付け構造の一実施形態を、図面に従って説明する。
図2及び図3に示すように、建物の各階層には、梁21がそれぞれ配置されている。図6に示すように、梁21の上部には各階層の床スラブ26が設置されるとともに、下部には天井パネル27が設置されている。
【0013】
図1及び図2に示すように、この実施形態の建物の外壁は、多数枚の壁パネル22を配列することにより構成されている。各壁パネル22は、その上下両端部が水平方向に隣接する他の壁パネル22の上下両端部と互い違いに重なるように、かつ鉛直方向に並ぶ他の壁パネル22との間に窓用の開口が形成されるように間隔Sをおいて配置されている。図4及び図5に示すように、前記壁パネル22はコンクリート材により縦長四角板状に構成され、その前面が上下方向の中央部ほどが凸状となるように円弧状に湾曲形成されている。壁パネル22の裏面を除く表面には、タイル22cが埋設されている。図3及び図11に示すように、前記壁パネル22は、その裏面の上下両端部の支持点22aにおいて前記梁21にブラケット22bを介して剛接合されている。ここで、壁パネル22の下部側のブラケット22bは梁21の上面に固定され、上部側のブラケット22bは梁21の下面に固定されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、前記各間隔Sには、窓用のサッシ23が配置されている。図3及び図12に示すように、各サッシ23の下辺は、下ブラケット28を介して下側の梁21の上面に剛接合されている。各サッシ23の上辺は、上ブラケット29を介して上側の梁21の下面に剛接合されている。各サッシ23には、ガラス24,25が嵌め込まれている。
【0015】
従って、図3に示すように、前記サッシ23のブラケット28,29と、その両側に隣接する壁パネル22のブラケット22bとは、水平方向に対応する高さに設定されている。
【0016】
次に、前記建物の各階層の梁21に対するサッシ23の下ブラケット28及び上ブラケット29よりなる取付け構造について詳細に説明する。
まず、下ブラケット28について説明すると、図3,図6及び図7に示すように、前記建物の各階層において下側の梁21の上面には、左右一対の第1下ブラケット片30が上方に突出した状態で溶接により剛接合されている。図7に示すように、各第1下ブラケット片30の上端には、板材よりなる第2下ブラケット片31が剛接合されている。この第2下ブラケット片31の剛接合は、ボルト32及びナット33と、溶接とにより達成されている。各第2下ブラケット片31には、下支持板34が取付けられている。下支持板34には組み付け誤差吸収用の上下方向に延びる長孔34aが形成され、その長孔34aと第2下ブラケット片31の孔に挿通したボルト35及びナット(図示しない)とにより、下支持板34は上下方向の位置を調整して組み付け誤差を吸収できるようになっている。前記サッシ23の下端部はボルト39及びナット40によって下支持板34に固定されている。そして、前記ボルト35,39は、その軸線が鉛直方向になるように配置されている。従って、サッシ23の下部及び下支持板34は、第2下ブラケット片31に剛接合され、その結果サッシ23の下部は梁21に剛接合されている。
【0017】
次に、上ブラケット29について説明すると、図3,図6及び図8に示すように、前記建物の各階層において上側の梁21の下面には、左右一対の第1上ブラケット41片が下方に突出した状態で溶接により剛接合されている。図8に示すように、各第1上ブラケット片41の下端には、第2上ブラケット片42が剛接合されている。この第2上ブラケット片42の剛接合は、ボルト43及びナット44と、溶接とにより達成されている。各第2上ブラケット片42には、上支持板45が取付けられている。上支持板45には組み付け誤差吸収用の上下方向に延びる長孔45aが形成され、この長孔45aと第2上ブラケット片42に挿通したボルト46及びナット(図示しない)とにより、上支持板45の上下位置を調整して組み付け誤差を吸収できるようになっている。前記サッシ23の上端部はボルト50及びナット51によって上支持板45に固定されている。そして、前記ボルト46,50は、その軸線が鉛直方向になるように配置されている。従って、サッシ23の上部及び上支持板45は、第2上ブラケット片42に剛接合され、その結果サッシ23の下部は梁21に剛接合されている。
【0018】
各サッシ23は壁パネル22の内側の位置に配置され、サッシ23と壁パネル22との間の位置にはシール52が充填によって介在されている。
次に、前記のように構成されたサッシの取付け構造について作用を説明する。
【0019】
さて、この実施形態のサッシの取付け構造を備えた建物において、地震が発生すると、図9に示すように、各階層の上下の梁21間に層間変位が生じる。この場合、窓用のサッシ23が、上下の梁21に剛接合された下ブラケット28と上ブラケット29との間に取付けられている。
【0020】
そして、図11に示すように、サッシ23の支持点23aと壁パネル22の支持点22aの高さがほとんど変わらないため、サッシ23及び壁パネル22は水平方向においてほとんど同じ動きをすることができる。従って、上下の梁21間の層間変位にともなうサッシ23と壁パネル22との相対変位を最小にすることができ、シール52の破断のおそれを抑制できる。
【0021】
これに対し、図10及び図12に示すように、前述の特許文献1に記載された従来のサッシの取付け構造においては、壁パネル122の支持点122aとサッシ123の支持点123aとが実施形態の構造に比較して鉛直方向に離れているため、サッシ123の支持点123aがピン接合であることも相まって、壁パネル122とサッシ123のとの相対変位が大きくなり、シール破断が生じやすくなる。なお、図11及び図12は、動作を誇張した模式図であり、各部の変形を無視するとともに、寸法誤差を許容して描いてある。
【0022】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態のサッシの取付け構造では、建物の階層の下側の梁21に上方へ突出する下ブラケット28が剛接合されるとともに、上側の梁21に下方へ突出する上ブラケット29が剛接合されている。そして、この下ブラケット28と上ブラケット29との間にサッシ23が取付けられている。このため、サッシ23の上下寸法が短い場合であって、地震発生時に上下の梁21間に層間変位が生じても、サッシ23と壁パネル22との相対変位を小さくできるので、シール破断の問題をより確実に少なくできる。
【0023】
(2) この実施形態のサッシの取付け構造では、サッシ23と壁パネル22との間の相対変位を小さくできるため、サッシ23に無理な外力が作用することは少ない。このため、サッシ23や、サッシ23内のガラス等の損壊を抑制できる。
【0024】
(3) このサッシの取付け構造においては、サッシ23のブラケット48,49を梁21に剛接合しただけであるから、部品点数が増えることはなく、構成が簡単である。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0025】
・ 本発明を複数階層の建物だけではなく、単一階層の建物に適用すること。
・ 第1,第2下ブラケット片30,31、第1,第2上ブラケット片41,42をそれぞれ一体化すること。
【0026】
・ 壁パネル22が互い違いにされていない建物に本発明を適用すること。
【符号の説明】
【0027】
21…梁、22…壁パネル、23…サッシ、28…下ブラケット、29…上ブラケット、S…間隔、52…シール。
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層階ビル等の建物における窓用のサッシの取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサッシの取付け構造としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成は、サッシが損壊することなく建物の層間変位に追従できるようにすることを意図している。そのため、この特許文献1において、サッシは、躯体にブラケットを介して複数本のボルトにより取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3011558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この特許文献1のサッシの取付け構造においては、サッシを支持するブラケットがボルト締めにより、いわゆるピン接合によって固定されている。このため、地震発生時に上側の梁と下側の梁との間に層間変位が生じると、サッシとその両側の壁パネルとの変位が大きくなる。すなわち、図10に示すように、特許文献1に記載された従来のサッシの取付け構造においては、サッシ123を支持する下ブラケット128及び上ブラケット129が、上下の梁21に対して支持点123aにおいてピン接合状態で取付けられている。一方、図12に示す壁パネル122は梁21にブラケットによって直接的に固定されている。従って、梁21に対する壁パネル122の支持点122aとサッシ123の支持点123aの位置が大きく異なる。このため、図12に示すように、前記層間変位が生じると、壁パネル122とサッシ123との間の相対変位が大きくなり、壁パネル122とサッシ123との間のシールが破断しやすくなる。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、地震発生時の層間変位にともなう壁パネルとサッシとの間の相対変位や変形を低減することが可能なサッシの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、建物の階層の下部側および上部側の梁間に壁パネルを固定し、下部側の梁には上方に突出するブラケットを剛接合するとともに、上部側の梁には下方に突出するブラケットを剛接合し、それらのブラケットにサッシを取付けたことを特徴としている。
【0007】
この発明のサッシの取付け構造においては、地震発生時に上下の梁間に層間変位が生じた場合、壁パネルとサッシとの間の変位を低減することができて、サッシと壁パネルとの間のシールが損壊したり、サッシやサッシ内のガラスが損壊したりするおそれを抑制することができる。
【0008】
各壁パネルとサッシとの間にシールを介在させることが好ましい。
鉛直方向に並ぶ壁パネル間に間隔を設けるとともに、その間隔に対応して前記サッシを配置するとよい。
【0009】
各壁パネルは、その上下両端部が水平方向に隣接する他の壁パネルの上下両端部と互い違いに重なるように配列されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明のサッシの取付け構造によれば、地震発生時の層間変位にともなうサッシと壁パネルとの相対の変位を低減することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態を示す建物の斜視図。
【図2】図1の建物における外壁部の一部を拡大して示す部分正面図。
【図3】図2において壁パネルを除いて示す断面図。
【図4】図2の外壁部における壁パネルを拡大して示す斜視図。
【図5】図4の壁パネルの下端部をさらに拡大して示す部分斜視図。
【図6】図2の6−6線におけるサッシの取付け構造を拡大して示す部分断面図。
【図7】図6の7部分を拡大して示す要部断面図。
【図8】図6の8部分を拡大して示す要部断面図。
【図9】実施形態のサッシの取付け構造について層間変位にともなう動作を説明する説明図。
【図10】従来のサッシの取付け構造について層間変位にともなう動作を説明する説明図。
【図11】実施形態のサッシの取付け構造について層間変位にともなう相対変位を説明する説明図。
【図12】従来のサッシの取付け構造について層間変位にともなう相対変位を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明を具体化したサッシの取付け構造の一実施形態を、図面に従って説明する。
図2及び図3に示すように、建物の各階層には、梁21がそれぞれ配置されている。図6に示すように、梁21の上部には各階層の床スラブ26が設置されるとともに、下部には天井パネル27が設置されている。
【0013】
図1及び図2に示すように、この実施形態の建物の外壁は、多数枚の壁パネル22を配列することにより構成されている。各壁パネル22は、その上下両端部が水平方向に隣接する他の壁パネル22の上下両端部と互い違いに重なるように、かつ鉛直方向に並ぶ他の壁パネル22との間に窓用の開口が形成されるように間隔Sをおいて配置されている。図4及び図5に示すように、前記壁パネル22はコンクリート材により縦長四角板状に構成され、その前面が上下方向の中央部ほどが凸状となるように円弧状に湾曲形成されている。壁パネル22の裏面を除く表面には、タイル22cが埋設されている。図3及び図11に示すように、前記壁パネル22は、その裏面の上下両端部の支持点22aにおいて前記梁21にブラケット22bを介して剛接合されている。ここで、壁パネル22の下部側のブラケット22bは梁21の上面に固定され、上部側のブラケット22bは梁21の下面に固定されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、前記各間隔Sには、窓用のサッシ23が配置されている。図3及び図12に示すように、各サッシ23の下辺は、下ブラケット28を介して下側の梁21の上面に剛接合されている。各サッシ23の上辺は、上ブラケット29を介して上側の梁21の下面に剛接合されている。各サッシ23には、ガラス24,25が嵌め込まれている。
【0015】
従って、図3に示すように、前記サッシ23のブラケット28,29と、その両側に隣接する壁パネル22のブラケット22bとは、水平方向に対応する高さに設定されている。
【0016】
次に、前記建物の各階層の梁21に対するサッシ23の下ブラケット28及び上ブラケット29よりなる取付け構造について詳細に説明する。
まず、下ブラケット28について説明すると、図3,図6及び図7に示すように、前記建物の各階層において下側の梁21の上面には、左右一対の第1下ブラケット片30が上方に突出した状態で溶接により剛接合されている。図7に示すように、各第1下ブラケット片30の上端には、板材よりなる第2下ブラケット片31が剛接合されている。この第2下ブラケット片31の剛接合は、ボルト32及びナット33と、溶接とにより達成されている。各第2下ブラケット片31には、下支持板34が取付けられている。下支持板34には組み付け誤差吸収用の上下方向に延びる長孔34aが形成され、その長孔34aと第2下ブラケット片31の孔に挿通したボルト35及びナット(図示しない)とにより、下支持板34は上下方向の位置を調整して組み付け誤差を吸収できるようになっている。前記サッシ23の下端部はボルト39及びナット40によって下支持板34に固定されている。そして、前記ボルト35,39は、その軸線が鉛直方向になるように配置されている。従って、サッシ23の下部及び下支持板34は、第2下ブラケット片31に剛接合され、その結果サッシ23の下部は梁21に剛接合されている。
【0017】
次に、上ブラケット29について説明すると、図3,図6及び図8に示すように、前記建物の各階層において上側の梁21の下面には、左右一対の第1上ブラケット41片が下方に突出した状態で溶接により剛接合されている。図8に示すように、各第1上ブラケット片41の下端には、第2上ブラケット片42が剛接合されている。この第2上ブラケット片42の剛接合は、ボルト43及びナット44と、溶接とにより達成されている。各第2上ブラケット片42には、上支持板45が取付けられている。上支持板45には組み付け誤差吸収用の上下方向に延びる長孔45aが形成され、この長孔45aと第2上ブラケット片42に挿通したボルト46及びナット(図示しない)とにより、上支持板45の上下位置を調整して組み付け誤差を吸収できるようになっている。前記サッシ23の上端部はボルト50及びナット51によって上支持板45に固定されている。そして、前記ボルト46,50は、その軸線が鉛直方向になるように配置されている。従って、サッシ23の上部及び上支持板45は、第2上ブラケット片42に剛接合され、その結果サッシ23の下部は梁21に剛接合されている。
【0018】
各サッシ23は壁パネル22の内側の位置に配置され、サッシ23と壁パネル22との間の位置にはシール52が充填によって介在されている。
次に、前記のように構成されたサッシの取付け構造について作用を説明する。
【0019】
さて、この実施形態のサッシの取付け構造を備えた建物において、地震が発生すると、図9に示すように、各階層の上下の梁21間に層間変位が生じる。この場合、窓用のサッシ23が、上下の梁21に剛接合された下ブラケット28と上ブラケット29との間に取付けられている。
【0020】
そして、図11に示すように、サッシ23の支持点23aと壁パネル22の支持点22aの高さがほとんど変わらないため、サッシ23及び壁パネル22は水平方向においてほとんど同じ動きをすることができる。従って、上下の梁21間の層間変位にともなうサッシ23と壁パネル22との相対変位を最小にすることができ、シール52の破断のおそれを抑制できる。
【0021】
これに対し、図10及び図12に示すように、前述の特許文献1に記載された従来のサッシの取付け構造においては、壁パネル122の支持点122aとサッシ123の支持点123aとが実施形態の構造に比較して鉛直方向に離れているため、サッシ123の支持点123aがピン接合であることも相まって、壁パネル122とサッシ123のとの相対変位が大きくなり、シール破断が生じやすくなる。なお、図11及び図12は、動作を誇張した模式図であり、各部の変形を無視するとともに、寸法誤差を許容して描いてある。
【0022】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態のサッシの取付け構造では、建物の階層の下側の梁21に上方へ突出する下ブラケット28が剛接合されるとともに、上側の梁21に下方へ突出する上ブラケット29が剛接合されている。そして、この下ブラケット28と上ブラケット29との間にサッシ23が取付けられている。このため、サッシ23の上下寸法が短い場合であって、地震発生時に上下の梁21間に層間変位が生じても、サッシ23と壁パネル22との相対変位を小さくできるので、シール破断の問題をより確実に少なくできる。
【0023】
(2) この実施形態のサッシの取付け構造では、サッシ23と壁パネル22との間の相対変位を小さくできるため、サッシ23に無理な外力が作用することは少ない。このため、サッシ23や、サッシ23内のガラス等の損壊を抑制できる。
【0024】
(3) このサッシの取付け構造においては、サッシ23のブラケット48,49を梁21に剛接合しただけであるから、部品点数が増えることはなく、構成が簡単である。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0025】
・ 本発明を複数階層の建物だけではなく、単一階層の建物に適用すること。
・ 第1,第2下ブラケット片30,31、第1,第2上ブラケット片41,42をそれぞれ一体化すること。
【0026】
・ 壁パネル22が互い違いにされていない建物に本発明を適用すること。
【符号の説明】
【0027】
21…梁、22…壁パネル、23…サッシ、28…下ブラケット、29…上ブラケット、S…間隔、52…シール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の階層の下部側および上部側の梁間に壁パネルを固定し、下部側の梁には上方に突出するブラケットを剛接合するとともに、上部側の梁には下方に突出するブラケットを剛接合し、それらのブラケットにサッシを取付けたことを特徴とするサッシの取付け構造。
【請求項2】
各壁パネルとサッシとの間にシールを介在させたことを特徴とする請求項1に記載のサッシの取付け構造。
【請求項3】
鉛直方向に並ぶ壁パネル間に間隔を設けるとともに、その間隔に対応して前記サッシを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のサッシの取付け構造。
【請求項4】
各壁パネルは、その上下両端部が水平方向に隣接する他の壁パネルの上下両端部と互い違いに重なるように配列されていることを特徴とする請求項3に記載のサッシの取付け構造。
【請求項1】
建物の階層の下部側および上部側の梁間に壁パネルを固定し、下部側の梁には上方に突出するブラケットを剛接合するとともに、上部側の梁には下方に突出するブラケットを剛接合し、それらのブラケットにサッシを取付けたことを特徴とするサッシの取付け構造。
【請求項2】
各壁パネルとサッシとの間にシールを介在させたことを特徴とする請求項1に記載のサッシの取付け構造。
【請求項3】
鉛直方向に並ぶ壁パネル間に間隔を設けるとともに、その間隔に対応して前記サッシを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のサッシの取付け構造。
【請求項4】
各壁パネルは、その上下両端部が水平方向に隣接する他の壁パネルの上下両端部と互い違いに重なるように配列されていることを特徴とする請求項3に記載のサッシの取付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−46983(P2012−46983A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190784(P2010−190784)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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