説明

サッシ

【課題】外観及び断熱性能の選択性が高く、できるだけ部品の共用化を図ってコストを低くしたサッシを提供する。
【解決手段】枠体1は、金属下枠11の室内側に室内樹脂下枠12が設けられ、金属縦枠31の室内側に室内樹脂縦枠32が設けられ、金属縦枠の室内障子が配される側には突出部31bが、室外障子が配される側には第1係合部と、突出部と見込方向略同位置に第2係合部とが、それぞれ形成され、金属障子と低断熱障子のいずれか1種を選択して枠体に納め、金属障子の場合の室内樹脂縦枠32は、室外障子が配される側で室外側端部が第2係合部に係合し、低断熱障子の場合の室内樹脂縦枠32は、室外障子が配される側では金属縦枠に固定される固定部と、固定部より室外側に延出し第2係合部を跨ぐと共に室外側端部が第1係合部に係合される延長部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物躯体の開口部に取付けられ引き違い状の障子を納めたサッシに関し、特に外観及び断熱性能を選択できるサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物躯体の開口部に取付けられるサッシは、地域ごとに使い分けがなされている。樹脂は金属に比べて断熱性が高いため、樹脂材を用いたサッシは断熱性が高く、したがって寒い地域ほど樹脂材を用いたサッシを採用することが省エネルギーの観点から好ましい。また、樹脂材は腐食することがなく、成形や加工が容易であることから、木製の部材に比べて広く用いられている。そこで、断熱性を必要とする寒冷な地域向けには、全て樹脂材からなる樹脂サッシまたは金属材と樹脂材を組み合わせた複合サッシが用いられる。樹脂サッシは断熱性が非常に高く、複合サッシは樹脂サッシに比べると安価であると共に、金属部分があるために防火性を高くすることができる。一方、断熱性をそれほど必要としない地域向けには、全てアルミなどの金属材からなる金属サッシが用いられる。
【0003】
ここで、複合サッシとしてはアルミ熱遮断構造サッシと、アルミ樹脂複合サッシとが知られている。アルミ熱遮断構造サッシは、金属材を室内側と室外側に分離し、その間に樹脂材を挟み込んだものである。アルミ樹脂複合サッシは、室外側に金属材を設け、その室内側露出面を樹脂材で被覆したものである。
【0004】
アルミ熱遮断構造サッシは、樹脂材が室内側と室内側の金属材を連結した構成となっているため、樹脂材と金属材を強固に固定する必要がある。そこで、カシメによる固定がなされている。しかし、カシメにより金属材と樹脂材を固定した場合、後で両者を分離することは困難であるため、リサイクルしにくいという問題がある。
【0005】
一方、アルミ樹脂複合サッシは、金属材の室内側に樹脂材を配設したものであるため、両者の固定は必ずしもカシメによる必要はなく、樹脂材を金属材から容易に分離できるように構成することができる。このため、リサイクルしやすいものであると共に、樹脂材のみの交換が可能であるとの利点を有している。また、樹脂材には様々な色や模様を付けることができるので、室内側からの意匠性を高めることができる。
【0006】
近年、サッシに対してはリサイクルの容易さや意匠性についての要請が強く、このため複合サッシとしてはアルミ樹脂複合サッシを用いる方が有利である。本発明は、このアルミ樹脂複合サッシを含むものであり、従来例として例えば特許文献1に挙げるようなものがある。また、アルミ熱遮断構造サッシの従来例としては特許文献2に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3507031号公報
【特許文献2】特開平8−135311号公報
【0008】
サッシの材質については、地域ごとに省エネルギー基準が定められており、この基準を満たすサッシを用いることにより、住宅を建設する際の融資額が増額されるなどの優遇を受けることができる。また、住宅完成後は地域に応じた断熱性により光熱費を節約することができる。
【0009】
サッシの省エネルギー基準としては、例えば次世代省エネルギー基準(平成11年建設省告示第998号)がある。この基準について一部抜粋したものを表1に示す。表2には、各地域区分に該当する都道府県名を示している。表1には、各地域区分での(1)熱貫流率の基準と、(2)建具及びガラスの仕様の基準とを示しており、次世代省エネルギー基準としては、(1)または(2)のいずれかの基準を満たせばよい。すなわち、建具及びガラスの仕様にかかわらず、熱貫流率を基準値以下とするか、熱貫流率の値にかかわらず、建具及びガラスを所定の仕様とすることにより、省エネルギー基準をクリアすることになる。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
表2に示すように、地域区分I及びIIは、最も寒冷な地域のことであり、北海道及び東北北部地域である。また、地域区分IIIは、次に寒冷な地域のことであり、東北南部と上信越、北関東及び北陸地域である。さらに、地域区分IV及びVは、温暖な地域のことであり、関東南部、東海、近畿、中国、四国、及び九州地域である。そして、地域区分VIは、さらに温暖な地域のことであり、沖縄県である。
【0013】
表1において建具の仕様及びガラスの仕様に着目すると、一重のサッシの場合、地域区分I及びIIでは、全て樹脂材から構成される樹脂サッシまたは全て木材から構成される木製サッシ、及び上述のアルミ樹脂複合サッシのいずれかを採用することができる。この地域では主に樹脂サッシまたは空気層の大きな複合サッシが用いられる。そして、ガラスについては低放射複層ガラスが採用される。
【0014】
地域区分IIIでは、樹脂サッシ、木製サッシ、アルミ樹脂複合サッシ、及びアルミ熱遮断構造サッシのいずれかを採用することができる。この地域では、樹脂サッシや木製サッシは断熱性能が過剰気味であるため、主に後2つのサッシが用いられる。そしてこの場合、アルミ樹脂複合サッシの方がリサイクルの容易さ及び意匠性の点において有利であることは上述のとおりである。ガラスについては単板2枚と複層ガラスのいずれかを選択できるが、通常複層ガラスが用いられる。
【0015】
地域区分IV及びVでは、サッシの材質は問われない。このため主として低コストで製造できる金属材のみから構成される金属サッシが用いられる。ガラスについては単板2枚と複層ガラスのいずれかを選択できるが、通常複層ガラスが用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のサッシは、各地域毎に別々の仕様で構成されていた。そのため、金属材からなる部材と樹脂材からなる部材は、それぞれ異なる形状、寸法で形成されていた。
ところで、地域区分IV及びVの地域においては、サッシの意匠性を重視するために、室内側を樹脂材から構成するアルミ樹脂複合サッシを設けたいとのニーズがある一方で、最低限の断熱基準を満たすことを条件にできるだけコストを抑えるために、金属サッシを設けたいとのニーズもある。
【0017】
前者の場合には地域区分III用のアルミ樹脂複合サッシを採用することもできるが、地域区分IV及びVの地域で用いるには断熱性能が過剰であり、コストが大幅に増加する。また、後者のニーズもあるために金属サッシも製造する必要があって、これらがそれぞれ別々の仕様であることから、製造コストが高くなっていた。
【0018】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、外観及び断熱性能の選択性が高く、できるだけ部品の共用化を図ってコストを低くしたサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するため、本発明に係るサッシは、上下枠及び左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に室内外障子を走行自在に納めてなるサッシにおいて、
上記枠体は、金属材からなり上面に上記室内外障子をそれぞれ案内する室内外レールが形成された金属下枠と、該金属下枠に形成される上記室内レールの室内側に設けられ金属下枠を覆う室内樹脂下枠とから構成される下枠と、金属材からなる金属縦枠と、該金属縦枠の上記室内外障子が配される位置よりも室内寄りに設けられ金属縦枠を覆う室内樹脂縦枠とから構成される縦枠とを有し、
上記金属縦枠は、上記室内障子が配される側には上記室内障子の側面に跨がれる突出部が形成され、上記室外障子が配される側には上記室外障子の室内面近傍位置に第1係合部を備え、該第1係合部よりも室内側であって上記突出部と見込方向略同位置に第2係合部を備え、
金属框体に複層ガラスを納めて構成される金属障子と、
室外側の金属框体と、該金属框体の室内側面を覆い板状に形成される樹脂框体とからなる低断熱框体に複層ガラスを納めて構成される低断熱障子と、
のいずれか1種を選択して上記枠体に納め、
上記金属障子を選択した場合の室内樹脂縦枠は、上記室内障子が配される側では室外側端部が上記突出部に係合し、上記室外障子が配される側では室外側端部が上記第2係合部に係合し、
上記低断熱障子を選択した場合の室内樹脂縦枠は、上記室内障子が配される側では室外側端部が上記突出部に係合し、上記室外障子が配される側では上記金属縦枠に固定される固定部と、該固定部より室外側に延出し上記第2係合部を跨ぐと共に室外側端部が上記第1係合部に係合される延長部とを有することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るサッシによれば、枠体に対し金属障子と低断熱障子のいずれかを選択して納めることができ、地域に応じた断熱性能を有したサッシとすることができる。また、第2係合部を有する金属縦枠をいずれの場合にも共用化でき、さらには金属障子を選択した場合に室内樹脂縦枠を左右同形状とすることができ、部品の共用化を図ることができるので、さらに低コスト化することができると共に、低断熱障子を選択した場合に室内樹脂縦枠を第2係合部と干渉することなく取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態における枠体及び障子の組み合わせを示した図である。
【図2】低断熱枠体に金属障子を納めたサッシの縦断面図である。
【図3】図2のサッシの横断面図である。
【図4】低断熱枠体に低断熱障子を納めたサッシの縦断面図である。
【図5】図4のサッシの横断面図である。
【図6】高断熱枠体に高断熱障子を納めたサッシの縦断面図である。
【図7】図6のサッシの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1は本実施形態における枠体及び障子の組み合わせを示した図である。本実施形態におけるサッシの基本構成は、建物開口部に取付けられる枠体1内に、外障子4と内障子5を引き違い状に納め、さらにその室外側には網戸6を納めてなるものである。枠体1は、下枠10と上枠20及び左右の縦枠30、30を方形状に枠組みして構成されるものであり、また外障子4と内障子5は、下框40と上框50及び左右の縦框60、60を方形状に框組みして框体2を構成し、その内部にガラス体3を納めてなるものである。
【0023】
図1の左側は、3種類の枠体1の下枠10を示している。また、図1の右側は、3種類の外障子4と内障子5を示している。図1(A)に示す下枠10は、金属材からなる金属下枠11と、その室内側端部を覆う室内樹脂下枠13とから構成される低断熱下枠である。図1(B)に示す下枠10は、低断熱下枠の上面に中間樹脂下枠12aを設けて構成される中断熱下枠である。図1(C)に示す下枠10は、中断熱下枠の室内側面に端面樹脂下枠12bを設けて構成される高断熱下枠である。
【0024】
図1(A)に示す低断熱下枠を有する低断熱枠体は、低コストであるが断熱性能は低い。この低断熱枠体は、主にサッシ室内側部の結露を防止することができる。図1(B)に示す中断熱下枠を有する中断熱枠体は、中程度のコストで中程度の断熱性能が得られる。図1(C)に示す高断熱下枠を有する高断熱枠体は、高コストであるが断熱性能は高い。このため、図1(A)の低断熱枠体は、地域区分IV及びV向けのサッシとして採用することができ、図1(B)の中断熱枠体及び図1(C)の高断熱枠体は、地域区分III向けのサッシとして採用することができる。
【0025】
図1(a)に示す外障子4と内障子5は、金属材からなる框体2に複層ガラスからなるガラス体3を納めて構成された金属障子である。図1(b)に示す外障子4と内障子5は、金属材の室内露出面に板状の樹脂材を配設してなる框体2に、複層ガラスからなるガラス体3を納めて構成された低断熱障子である。図1(c)に示す外障子4と内障子5は、金属材の室内露出面に断面中空状の樹脂材を配設してなる框体2に、複層ガラスからなるガラス体3を納めて構成された高断熱障子である。したがって、図1(a)に示す金属障子は断熱性能が低く、図1(b)に示す低断熱障子は中間的な断熱性能を有し、図1(c)に示す高断熱障子は断熱性能が高い。
【0026】
ここで、それぞれの外障子4と内障子5は、各障子の下端部に設けられる戸車43、43の間の寸法が、相互に同一である。また、それぞれの枠体1は、その下枠10上面に形成される外レール11aと内レール11bのレール芯間の寸法が、相互に同一であり、かつ上記各障子の戸車43、43の間の寸法と同一である。したがって、各障子はいずれの枠体1にも納めることができるようにされている。
【0027】
図1(A)の低断熱枠体には図1(a)の金属障子または図1(b)の低断熱障子が選択的に納められる。また、図1(B)の中断熱枠体には図1(c)の高断熱障子が納められる。さらに、図1(C)の高断熱枠体には図1(c)の高断熱障子が納められる。サッシを設置する地域に応じて図1(A)の枠体1または図1(B)ないし図1(C)の枠体1を選択し、図1(A)を選択した場合にはさらに、金属障子ないし低断熱障子を選択することで外観を選択し、これにより全4パターンのサッシを構成することができる。
【0028】
これら4パターンのサッシについて、それぞれ詳細に説明する。図2には地域区分IVないしV向けのサッシの縦断面図を、図3にはその横断面図を示す。図2と図3に示すサッシは、図1(A)の低断熱枠体を選択し、それに図1(a)の金属障子を選択して納めて構成されるものである。
【0029】
枠体1は、金属材からなる金属下枠11と金属上枠21及び左右の金属縦枠31、31を方形状に枠組みしてなり、それが建物開口部に対して固定されている。枠体1は、その見込方向中間位置に四周に渡って設けられるフィン8が建物躯体に当接し、ビス止めされることで固定されている。すなわち、このサッシはいわゆる半外付けサッシである。また、金属下枠11の室内面下端部には、室内側に向かって突出する固定部11dが形成されており、この固定部11dも建物躯体に対してビス止めされる。
【0030】
金属下枠11の上面には、その長手方向略全長に渡って外レール11aと内レール11b及び網戸レール11cが形成されており、外レール11aは外障子4を、内レール11bは内障子5を、網戸レール11cは網戸6を、それぞれサッシの長手方向に案内する。また、金属上枠21の下面には、その長手方向略全長に渡って外レール21aと内レール21b及び網戸レール21cが形成されている。これらは金属下枠11の各レールと対応した位置に形成されており、それぞれ外障子4と内障子5及び網戸6をサッシの長手方向に案内する。
【0031】
金属縦枠31の内周面には、外障子4を閉じた状態でその側面と対向する位置に外突出部31aが長手方向略全長に渡って設けられる。また、内障子5を閉じた状態でその側面と対向する位置に内突出部31bが長手方向略全長に渡って設けられる。これらは、外障子4及び内障子5を閉じた際にサッシの気密性及び水密性を確保するために設けられている。
【0032】
枠体1の室内側端部には、四周に渡って室内樹脂枠が設けられている。金属下枠11の室内側端部には、室内樹脂下枠13が設けられる。この室内樹脂下枠13は、内レール11bと金属下枠11の室内面との間に形成される凹部内に納められ、さらに金属下枠11の室内面よりも室内側に向かって延出する室内延出部13aを有してなるものである。
【0033】
金属上枠21の室内側端部に設けられる室内樹脂上枠23も、同様に内レール21bと金属上枠21の室内面との間に形成される凹部内に納められ、さらに金属上枠21の室内面よりも室内側に向かって延出する室内延出部23aを有してなる。また、金属縦枠31の室内側端部に設けられる室内樹脂縦枠33は、内障子5が閉じた状態でそれと対向する側の金属縦枠31に対しては、内突出部31bよりも室内側に設けられ、さらに室内側に向かって延出する室内延出部33aを有してなる。外障子4が閉じた状態でそれと対向する側の金属縦枠31に対しても、同形状の室内樹脂縦枠33が設けられる。
【0034】
このサッシでは、枠体1の内周面の一部は金属材が室内側に露出した状態となることから、断熱性については十分に確保されないものの、室内樹脂枠が枠体1の四周に渡って設けられることで、枠体1が金属材のみから構成される場合に比べれば断熱性はやや高く、また室内側から見た意匠性を良好にすることができる。
【0035】
このサッシにおいて框体2は、金属材からなる金属下框41と金属上框51及び左右の金属縦框61、61を方形状に框組みし、内部に複層ガラスからなるガラス体3をグレチャン7を介し納めて構成される。金属下框41の下端部には戸車43が設けられ、外レール11aまたは内レール11bに載置されることで、障子を下枠10のレール上で走行自在とする。
【0036】
低断熱枠体に金属障子を納めたサッシは、以上のような構成からなるものである。框体2に納められるガラス体3には複層ガラスを採用することにより、地域区分IVないしV向けの断熱基準を満たしつつ、できるだけコストを抑えたサッシとすることができる。
【0037】
次に、地域区分IVないしV向けであっても、室内側に樹脂材を配設して意匠性の向上を図るため、低断熱枠体に低断熱障子を納めて構成したサッシについて説明する。図4には、この場合のサッシの縦断面図を、図5にはその横断面図を示す。これら各図のサッシは、図1(A)の低断熱枠体を選択し、それに図1(b)の低断熱障子を選択し納めて構成したものである。
【0038】
この場合、枠体1は図1(A)を選択しているから、上述した図2及び図3のサッシの枠体1と基本的には共通している。ただし、図5に示すように外障子4が配置される側の金属縦枠31に取付けられる室内樹脂縦枠33は、金属材ができるだけ室内側に露出しないように、内障子5が配置される側の金属縦枠31に取付けられる室内樹脂縦枠33よりも室外側に延長した延長部33bを有して構成される。延長部33bは、外障子4を閉じた状態におけるその室内面の近傍位置まで延長されている。枠体1のこれ以外の構成については、図2及び図3で説明したサッシと共通である。
【0039】
次に、外障子4と内障子5について説明する。これらを構成する框体2は、室外側に金属材を配し、室内側に樹脂材を配した複合材からなるものである。複合材は通常、室内側から見たサッシの意匠性の向上と、断熱性を向上させるために用いられる。しかし、地域区分IVないしV向けの断熱基準は、上述のように複層ガラスを用いればよく、通常の複合材を用いた場合には、断熱性能が過剰となってコストが高くなる。したがって、地域区分IVないしV向けのサッシに用いる複合材は、室内側から見た意匠性を向上させる機能さえ有していればよい。このため、この場合の框体2に設けられる樹脂材は、板状に形成されている。
【0040】
ここで、サッシの断熱基準を示した表1によれば、樹脂材が板状であってもアルミ樹脂複合サッシであれば、地域区分III向けの建具の仕様を満たすことになる。しかし、樹脂材が板状の場合には、同じく表1に示す地域区分III向けのサッシ熱貫流率の基準を満たさないので、結局地域区分III向けには用いることは望ましくない。一方でこのサッシは、地域区分IV向けの建具の仕様及び熱貫流率の基準はいずれも満たしているので、地域区分IV向けとしては好適に用いることができる。
【0041】
下框40は、室外側の金属下框41と、その室内面に取付けられる板状の樹脂下框42とから構成されている。樹脂下框42は、金属下框41に係合し固定される。下框40の上部は、グレチャン7を挟持しガラス体3を納めることができるように、凹形状とされており、その室外側は金属下框41、室内側は樹脂下框42により構成されている。すなわち、ガラス体3の室外面は金属下框41により支持され、室内面は樹脂下框42により支持されている。また、下框40の下端部には、戸車43が設けられて、外障子4は外レール11aに、内障子5は内レール11bに、それぞれ載置される。
【0042】
上框50は、室外側の金属上框51と、その室内面に取付けられる板状の樹脂上框52とから構成されている。樹脂上框52は、金属上框51に係合し固定される。上框50においても、それに納められるガラス体3は、室外面を金属上框51により、室内面を樹脂上框52により、それぞれ支持される。
【0043】
縦框60は、枠側縦框60aと召合せ框60bとで形状が異なる。枠側縦框60aは、左右いずれも室外側の金属縦框61と、その室内面に取付けられる板状の樹脂縦框62とから構成されている。召合せ框60bは、外障子4側は金属材からなる召合せ金属框63のみから構成され、内障子5側は召合せ金属框63と、その室内露出面に取付けられる板状の召合せ樹脂框64とから構成される。召合せ金属框63、63は、互いに対向する面にそれぞれ煙返し部63a、63aを有し、それらが互い違いとなってサッシの気密性を確保している。
【0044】
また、内障子5の召合せ金属框63における室内露出面は、その室内面及び側面の二面あるため、召合せ樹脂框64はそれらの面を覆うように断面略L字状とされている。また、召合せ樹脂框64は召合せ金属框63の室内面及びその背面となる室外面にそれぞれ係合し固定される。そのため、召合せ樹脂框64の室外端部には略鉛直方向に突出する係合部64aが形成されている。
【0045】
金属縦框61は、グレチャン7を挟持しガラス体3を納める内周面を凹形状とされており、樹脂縦框62はその先端に係合してグレチャン7に圧接する。したがって、縦框60においても、ガラス体3の室外面は金属縦框61により、室内面は樹脂縦框62により、それぞれ支持される。これによって、樹脂縦框62とグレチャン7とが連続状となって、金属縦框61を室内側に露出させない美観のよいサッシとすることができる。
【0046】
低断熱枠体に低断熱障子を納めてなるサッシについては、以上のような構成からなるものである。枠体1については、低断熱枠体を用いて低コストに抑える一方で、障子には板状の樹脂材で金属材の室内面を覆った複合材を用いた低断熱障子を選択しているため、断熱性はそれほど高くないものの室内側から見た場合の意匠性は通常の複合材と差異がなく、コストを抑えつつも意匠性の高いサッシとすることができる。さらに、図2及び図3のサッシと枠体1をほぼ共用しているため、部品の共用化を進めてさらなる低コスト化を図ることができる。
【0047】
次に、地域区分III向けのサッシについて説明する。図6には、高断熱枠体に高断熱障子を納めたサッシの縦断面図を、図7にはその横断面図を示す。これら各図のサッシは、図1(C)の高断熱枠体を選択し、それに図1(c)の高断熱障子を選択し納めて構成したものである。また、図6及び図7は、サッシを建物開口部に取付けた納まり図として示している。前2パターンのサッシについても、図示していないものの図6及び図7と同様の納まりで建物開口部に取付けられている。
【0048】
枠体1は、金属材からなる金属下枠11と金属上枠21及び左右の金属縦枠31、31を方形状に枠組みしてそれが建物躯体に対して固定され、金属下枠11の室内側には樹脂下枠12を、金属上枠21の室内側には樹脂上枠22を、金属縦枠31の室内側には樹脂縦枠32を、それぞれ配設している。ここで、金属下枠11及び金属縦枠31については、前2パターンにおける枠体1の金属下枠11及び金属縦枠31と同一であり、部品を共用化している。
【0049】
下枠10については、金属下枠11は上述のとおり前2パターンの金属下枠11と同一である。また、室内端部に室内延出部13aを有した室内樹脂下枠13を設けている点も同様である。樹脂下枠12は、金属下枠11の外レール11aと内レール11bの間を覆う中間樹脂下枠12aと、金属下枠11の室内面及び固定部11dの室内面を覆う端面樹脂下枠12bとから構成されている。
【0050】
中間樹脂下枠12aは、外レール11aと内レール11bの間のうち、外障子4と内障子5を閉じた状態で室内側に露出する部分のみに設けられる。すなわち、金属下枠11の外障子4が配される図7では左半分の領域に中間樹脂下枠12aが設けられる。
【0051】
端面樹脂下枠12bは、上端部が室内樹脂下枠13に当接しており、また下端部は固定部11dの端部に係合固定されている。また、端面樹脂下枠12bは金属下枠11の長手方向略全長に渡って設けられる。このようにして端面樹脂下枠12bは金属下枠11の室内面の断熱性を向上させると共に結露を防止している。
【0052】
上枠20については、金属上枠21をはじめ4つの部材から構成している。最も室外側には、金属上枠21が設けられる。金属上枠21には、建物躯体に対する固定部であるフィン8が形成され、また室外端部に網戸レール21cが形成されると共に、網戸レール11cより室内側に下枠10の外レール11aに対応する外レール21aが形成される。
【0053】
金属上枠21の室内側には樹脂上枠22が配設される。樹脂上枠22は、金属上枠21の外レール21aの下端部に係合して、外レール21aの室内側を構成すると共に、金属上枠21の外レール11aより室内側の面を略覆っている。特に、金属上枠21のフィン8より室内側では、金属上枠21と樹脂上枠22は重合状態とされている。
【0054】
金属上枠21と樹脂上枠22の重合部分にさらに重合するように内レール金属材24が設けられる。内レール金属材24は、上枠20の内レール21bを有する断面略T字状に形成されてなるものである。そして、内レール金属材24の室内面を覆うように室内樹脂上枠23が設けられる。室内樹脂上枠23は、金属上枠21と樹脂上枠22及び内レール金属材24の重合部分にさらに重合し、また内レール金属材24の内レール21bを両面とも被覆し、さらに内レール金属材24の室内側部をも被覆すると共に、室内側に延出する室内延出部23aを有してなるものである。
【0055】
金属上枠21と樹脂上枠22、内レール金属材24及び室内樹脂上枠23の重合部分は、ネジ止めによりこれら4部材が固定される。また、内レール21bより室内側において、内レール金属材24と室内樹脂上枠23とが重合状態で建物躯体に対し固定される。上枠22はこれら4部材から構成されることで、金属材により外レール21aと内レール21bの強度を確保しつつ、室内面を樹脂材で被覆できるので、サッシの断熱性及び意匠性を向上させることができる。
【0056】
縦枠30については、金属縦枠31は上述のとおり前2パターンの金属縦枠31と同一である。また、室内端部に室内延出部33aを有した室内樹脂縦枠33を設けている点も同様である。この室内樹脂縦枠33は、地域区分IVないしVにおいて複合材を用いたサッシにおける室内樹脂縦枠33と同一のものである。そして、この室内樹脂縦枠33が樹脂縦枠32に相当する。
【0057】
次に、サッシの建物開口部に対する納まりについて説明する。図6に示すように、下枠10については、金属下枠11のフィン8と、端面樹脂下枠12bと固定部11dの重合部分にて建物躯体70に対してビス止めがなされる。金属下枠11は、端面樹脂下枠12bを設けることなく固定部11dだけの状態でも建物躯体70に対して固定することができる。すなわち、中断熱枠体や低断熱枠体の場合でも、同じ金属下枠11を用いることができ、部品の共用化を図ることができる。
【0058】
また、下枠10の室内面より室内側には、木製の下額縁材73が設けられる。下額縁材73は、平板状であってその上面が室内樹脂下枠13の室内延出部13aの上面と同一平面状とされている。そして、室内樹脂下枠13の室内延出部13aと下額縁材73はネジ止めにより固定されている。端面樹脂下枠12bは、金属下枠11の室内側面を覆うと共に、その上端部が下額縁材73に当接している。すなわち、端面樹脂下枠12bは金属下枠11が下額縁材73に触れないように被覆しており、下枠10の断熱性を高める機能を有している。
【0059】
建物躯体70の室外側であって下枠10の室外部下方には、外壁71が配置される。また、建物躯体70の室内側であって下額縁材73の下方には、下額縁材73と当接するように内壁72が配置される。
【0060】
上枠20については、金属上枠21のフィン8が建物躯体70に対してビス止めされると共に、内レール21bより室内側であって内レール金属材24と室内樹脂上枠23とが重合状態となっている部分において建物躯体70に対してビス止めがなされている。また、下枠10と同様に、室内樹脂上枠23の室内側には上額縁材74が設けられ、室内延出部23aの下面と上額縁材74の下面とが同一平面状とされている。
【0061】
図7に示すように、縦枠30については、金属縦枠31のフィン8が建物躯体70に対してビス止めされ、室内樹脂縦枠33と金属縦枠31とが重合状態で建物躯体70に対してビス止めされている。また、室内樹脂縦枠33の室内側には縦額縁材75が設けられ、室内延出部33aの内側面と縦額縁材75の内側面とが同一平面状とされている。
【0062】
次に、外障子4と内障子5について説明する。これらを構成する框体2は、室外側に金属材を配し、室内側に樹脂材を配した複合材からなるものである。この場合の樹脂下框42と樹脂上框52は、それぞれ内部に中空部を有するように形成されたもので、断熱性に優れたものである。また、枠側縦框60aの召合せ樹脂框64も断面中空状に形成される。内障子5における召合せ框60bの召合せ樹脂框64はその内面側に立ち上がり片を有し、召合せ金属框63との間に空間部を生じるようにしているので、これも他の樹脂縦框62と同様の断熱性能を有している。
【0063】
ガラス体3が室外面は金属材により、室内面は樹脂材により、それぞれ挟持されている点は、温暖地域向けであって障子に複合材を用いた図4、図5記載のサッシと同様である。また、金属下枠11は前2パターンのサッシと同一のものを用いているので、外障子4と内障子5の戸車43、43間の寸法は、前2パターンのサッシと同じである。このサッシの框体2では、中空部を有する樹脂材、すなわち厚みの大きい樹脂材を用いていることにより、金属材の部分は厚みを小さく形成することで、戸車43、43間の寸法を前2パターンのサッシと合わせている。
【0064】
高断熱枠体に高断熱障子を納めてなるサッシは、以上のような構成からなるものである。枠体1と框体2のいずれについても、金属材の室内側に樹脂材を配設した複合材を用いているので、断熱性が高く、また室内側から見た意匠性もよい。特に、枠体1に樹脂材を設け、また框体2に中空部を有した樹脂材を配設しているので、寒冷地域における断熱基準を満たしたサッシとすることができる。その一方で、金属下枠11や金属縦枠31は前2パターンのサッシに用いたものと同一であるため、部品を共用化し低コスト化を図ることができる。
【0065】
図1(B)に示す中断熱枠体は、図6及び図7に示す高断熱枠体の金属下枠11室内側面に取付けられている端面樹脂下枠12bを取り外したもので、それ以外の構成は高断熱枠体と同一である。中断熱枠体は地域区分III向けであり、高断熱枠体に比べると金属下枠11の断熱性が低くなるものの、コストは抑えることができるので、中断熱枠体と高断熱枠体は選択的に採用することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこの実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内であれば様々に適用されうる。
【符号の説明】
【0067】
1 枠体
2 框体
3 ガラス体
4 外障子
5 内障子
7 グレチャン
10 下枠
11 金属下枠
11a 外レール
11b 内レール
11d 固定部
12 樹脂下枠
12a 中間樹脂体
12b 防露体
13 樹脂片
13a 室内延出部
20 上枠
30 縦枠
40 下框
41 金属下框
42 樹脂下框
43 戸車
50 上框
60 縦框

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下枠及び左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に室内外障子を走行自在に納めてなるサッシにおいて、
上記枠体は、金属材からなり上面に上記室内外障子をそれぞれ案内する室内外レールが形成された金属下枠と、該金属下枠に形成される上記室内レールの室内側に設けられ金属下枠を覆う室内樹脂下枠とから構成される下枠と、金属材からなる金属縦枠と、該金属縦枠の上記室内外障子が配される位置よりも室内寄りに設けられ金属縦枠を覆う室内樹脂縦枠とから構成される縦枠とを有し、
上記金属縦枠は、上記室内障子が配される側には上記室内障子の側面に跨がれる突出部が形成され、上記室外障子が配される側には上記室外障子の室内面近傍位置に第1係合部を備え、該第1係合部よりも室内側であって上記突出部と見込方向略同位置に第2係合部を備え、
金属框体に複層ガラスを納めて構成される金属障子と、
室外側の金属框体と、該金属框体の室内側面を覆い板状に形成される樹脂框体とからなる低断熱框体に複層ガラスを納めて構成される低断熱障子と、
のいずれか1種を選択して上記枠体に納め、
上記金属障子を選択した場合の室内樹脂縦枠は、上記室内障子が配される側では室外側端部が上記突出部に係合し、上記室外障子が配される側では室外側端部が上記第2係合部に係合し、
上記低断熱障子を選択した場合の室内樹脂縦枠は、上記室内障子が配される側では室外側端部が上記突出部に係合し、上記室外障子が配される側では上記金属縦枠に固定される固定部と、該固定部より室外側に延出し上記第2係合部を跨ぐと共に室外側端部が上記第1係合部に係合される延長部とを有することを特徴とするサッシ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−281200(P2010−281200A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183629(P2010−183629)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【分割の表示】特願2005−3037(P2005−3037)の分割
【原出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】