説明

サポウイルスRNAの検出方法および検出試薬

【課題】 サポウイルスRNAを迅速かつ高感度に検出すること。
【解決手段】 サポウイルスRNA中の特定塩基配列に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一のプライマーおよび第二のプライマー(該プライマーのいずれか一方はその5’末端にプロモーター配列が付加されている)からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせを用い、逆転写酵素により、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成し、該2本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメラーゼによりRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記逆転写酵素によるDNA合成の鋳型となって前記2本鎖DNAを生成する工程からなるRNA増幅工程において、増幅されたRNA産物量を、増幅されたRNAと相補的2本鎖を形成するとシグナル特性が変化するように設計された核酸プローブにて測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迅速、かつ高感度にサポウイルスRNAを検出する方法、および該方法を用いた検出試薬に関する。本発明は、臨床検査、公衆衛生、食品検査、食中毒検査の分野に有用である。
【背景技術】
【0002】
サポウイルスはヒトカリシウイルス科に属するウイルスであり、約7000塩基の1本鎖RNAをゲノムに持つノンエンベロープウイルスである。ヒトカリシウイルス科には、サポウイルスの他にノロウイルスが含まれている。
我が国で届け出されている食中毒の約20%はウイルスが原因と推定されており、これらのウイルス性食中毒例の大半からノロウイルスが検出されている。一方、サポウイルスは、主に乳幼児の散発性下痢症の起因ウイルスとして知られてきたが、ノロウイルスと比較して検出数が少なく、これまであまり重要視されてこなかった。
しかしながら、近年、サポウイルスを原因とする集団食中毒の発生が相次いで報告されており(非特許文献1および2)、発生件数が増加傾向にある。また、ヒトからヒトへの伝播が強く示唆されており、食中毒、および感染性胃腸炎の起因ウイルスとしての重要性が認識されつつある。
ノロウイルスと同様に、サポウイルスの流行を阻止するためにはできる限り迅速な対応が必要であり、サポウイルスの迅速検査は、公衆衛生上および食品の品質管理上大きな課題となりつつある。
そのため、サポウイルスの高感度、かつ迅速な検査法の開発が望まれている。これに対し、現在、サポウイルスの検出は、電子顕微鏡による観察が基本である。この方法では、あらゆる遺伝子型の検出か可能であるが、検出するには10個/mL以上のウイルス量が必要で感度が低いために、検体は患者糞便に限られている。また、ノロウイルスで開発されているウイルス様中空粒子を用いた、特異抗体検出ELISAの試薬は、サポウイルスでは開発されていない。
サポウイルスを高感度に測定する手段としてサポウイルスRNAをRT−PCRで増幅し、電気泳動により増幅産物を検出する方法があげられる(非特許文献3)。該方法の場合、一般的には逆転写(RT)工程およびPCR工程の二段階の工程が必要であり、このことは操作を煩雑にして再現性を悪化させる要因となるだけでなく、コンタミネーションの危険性をも増加させることになる。また、コンタミネーションの危険性が極めて高い操作である、増幅産物の電気泳動による検出操作が必要である。さらに、前記RT工程およびPCR工程、さらには増幅産物の検出工程を合わせると通例4〜5時間以上の時間を要し、迅速であるとはいえず、また、多数検体処理や検査コストの低減には不向きであった。
標的RNAの定量法としては、RT工程に引き続いて実施されるPCR工程をTaqManプローブといったハイブリダイゼーションプローブを用いたReal−time RT−PCR法(特許文献1および非特許文献4)があげられる。
該方法は、PCR工程と増幅産物の検出工程が同時に行なわれるため、増幅産物の電気泳動によるコンタミネーションリスクを回避し、かつ、検査時間の短縮を実現した優れた検出方法である。しかしながら、該方法でも一般的にはRT工程およびPCR工程の二段階の工程が必要であり、操作の煩雑性とコンタミネーションのリスクが完全に解決されてはいない。また、検査時間は短縮できるものの、RT工程およびPCR工程を合わせると通例3時間以上の時間を要し、迅速検査とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−68530号
【特許文献2】特許2650159号公報
【特許文献3】特許3152927号公報
【特許文献4】特許3241717号公報
【特許文献5】特開2000−14400号
【特許文献6】特開2001−37500号
【特許文献7】特開2001−353000
【特許文献8】特開平8−211050号公報
【特許文献9】特開2001−13147号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】病原微生物検出情報、Vol.28、No.10(No.332)、October 2007
【非特許文献2】病原微生物検出情報、Vol.29、No.7(No.341)、July 2008
【非特許文献3】Okada,M.,et al.(2006)Arch.Virol.,151,2503−2509.
【非特許文献4】Oka,T.,et al.(2006)J.Med.Virol.,78,1347−1353.
【非特許文献5】Ishiguro,T.,et al.(2003)Anal. Biochem.,314,1247−1252.
【非特許文献6】Hansman, G.S.,et al.(2007)Emerging Infectious Diseases,13(10),1519−1525.
【非特許文献7】Ishiguro T.et al.(2003)Anal.Biochem.,314,77−86
【非特許文献8】Ishiguro T.et al.(1996)Nucleic Acids Res.,24,4992−4997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サポウイルスを検出する方法には、従来から用いられてきた方法として、電子顕微鏡による観察がある。この方法は、あらゆる遺伝子型の検出が可能であるが、検出するには10個/mL以上のウイルス量が必要で感度が低いという問題があった。そのため、極めて高濃度にウイルスを含む試料でなければ検出することができないため、高感度な検出方法の開発が望まれていた。
そこで、サポウイルスを高感度に検出する方法として、前述したRT−PCR法が開発された。この方法は、サポウイルスのRNAを鋳型に逆転写(RT)反応を行い、RNAに相補的なDNA鎖を合成し、該DNA鎖を鋳型としてPCR反応を行なうことにより、高感度にサポウイルスを検出する方法である。
該方法では、従来の電子顕微鏡観察と比較して、極めて高感度にサポウイルスを検出することが可能であるため、検査方法として広まりつつある。
しかしながら、一般的なRT−PCR法は、RT工程とPCR工程、さらには電気泳動による増幅産物の検出工程と、三つの工程から成り立っている。それぞれの工程の間には、反応産物を移し替える操作が要求されるため、操作が煩雑となり、かつ、コンタミネーションの可能性が増大するという問題点がある。また、上記の全工程を終了し、検査結果を得るまでには約4〜5時間程度要するため、迅速性に課題がある検査であるといえる。
RT−PCR法における、上記した課題の一部を解決した方法として、Taqmanプローブといったハイブリダイゼーションプローブを用いたReal−time RT−PCR法(特許文献1および非特許文献4)があげられる。該方法は、PCR工程と増幅産物の検出工程が同時であるため、増幅産物の電気泳動によるコンタミネーションリスクを回避し、かつ、検査時間の短縮を実現した優れた検出方法である。しかしながら、該方法でも一般的にはRT工程およびPCR工程の二段階の工程が必要であり、操作の煩雑性とコンタミネーションの可能性を完全に克服した検査方法であるとはいえない。また、検査時間も、一般的に3時間程度要するため、迅速検査であるともいえない。
また、PCR工程は、原則的に熱変性、プライマー・アニール、伸長反応からなる急激な温度サイクルを必要とし、システム化を考える場合に簡素化および低コスト化のための大きな障壁となっていた。
一方、一定温度でRNAのみを増幅する方法として、NASBA法(特許文献2および3)、TMA法(特許文献4)およびTRC法(特許文献5および6、非特許文献5)などが報告されている。これらのRNA増幅方法は、標的となるRNAに対してプロモーター配列を含むプライマー、逆転写酵素及び必要に応じてリボヌクレアーゼH(RNaseH)により、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成し、この2本鎖DNAを鋳型としRNAポリメラーゼによって標的RNA由来の特定塩基配列を含むRNAを生産し、このRNAが引き続きプロモーター配列を含む2本鎖DNA合成の鋳型となる連鎖反応を行うものである。そして、RNA増幅後、電気泳動または検出可能な標識を結合させた核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション法などにより増幅されたRNAを検出する。
前記RNA増幅法は一定温度、一段階でRNAのみを増幅することから簡便なRNA測定に適しているが、ハイブリダイゼーション法などによる検出は煩雑な操作を必要とするため、多数検体処理や自動化に不適であるばかりでなく、結果として再現性不良や増幅核酸の二次汚染を招きやすいという課題がある。また、結果が出るまでに通常、NASBA、TMA共に90分以上必要であり、迅速な結果を得るには至っていない。さらに、増幅工程は一定温度であるものの、通例は増幅工程前に変性のための加温(例えば、65℃)が必要であり(特許文献3実施例1および特許文献4実施例1に記載)、反応装置の省力化や低コスト化のための課題となっていた。
一方、簡便に、一定温度・一段階でRNAを増幅・測定する方法としてはTRC法(特許文献5〜7、非特許文献5)が挙げられる。当該方法は、インターカレーター性蛍光色素で標識され、標的核酸と相補的に2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分が前記2本鎖部分にインターカレートすることによって、蛍光特性が変化するように設計されたオリゴヌクレオチドプローブ存在下、前記RNA増幅法を実施し、蛍光特性の変化を測定するもので、プライマーなどの結合領域を標的RNAの(二次構造を計算して推定した)高次構造フリー領域に設定することで、一定温度、一段階かつ密閉容器内でRNA増幅および測定を、同時にかつ迅速(30分以内)・簡便に実施することが可能である(非特許文献5)。
このRNA増幅測定法は、前記RNA検出法の中で、迅速性、簡便性、信頼性の点から、特に好適な方法といえる。ただし、該RNA増幅測定法は、比較的低温度(35〜60℃)一定温度で実施し、変性工程をまったく行わないため、標的RNAの高次構造の影響だけでなく、プライマーダイマー等の非特異的増幅の影響も受けやすいため、そのプライマーセットの設計には細心の配慮が必要で、汎用されているPCRプライマー用の設計手法では不十分なことが明らかである。
サポウイルスには多様な遺伝子群(ジェノグループ)が存在することが知られており、現在、ジェノグループ(以降Gと標記する)I、II、III,IV、Vの5種類が報告されている。この中で、ヒトに対する感染性が認められているものは、GI,GII,GIV,GVである。さらに、非特許文献6によれば、GIとGIIには、それぞれ複数の遺伝子型(ジェノタイプ)への分類が提唱されている。
また、それぞれの遺伝子群/遺伝子型ごとの病原性の相違について詳細は調べられていないものの、GI、GII,GIV,GVはどれもヒトに対する病原性を有するため、これらの多様な遺伝子群を検出する必要である。
このように、サポウイルスの多様な遺伝子群/遺伝子型を、高感度、かつ簡便、迅速に測定することが可能な検出方法を提供することが、本発明が解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一度の測定でサポウイルスの多様な遺伝子群/遺伝子型を迅速、かつ高感度に検出することが可能となった。
本発明中の第一の発明は、試料中のサポウイルスRNAの特定塩基配列を増幅し検出する方法であって、前記特定塩基配列の増幅が、配列番号1から6に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上の第一のプライマー、および、配列番号7から12に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上の第二のプライマーを用いてなされることを特徴とする、サポウイルスRNAの検出方法である。
第二の発明は、第一の発明における特定塩基配列の増幅において、第一のプライマーとして、配列番号19から24に記載の塩基配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチド、および、第二のプライマーとして、配列番号25から30に記載の塩基配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする、サポウイルスRNAの検出方法である。
第三の発明は、第一の発明あるいは第二の発明における特定塩基配列の増幅において、第一のプライマーとして、配列番号37、38、40、42に記載の塩基配列であるオリゴヌクレオチド、および、第二のプライマーとして、配列番号43から48に記載の塩基配列であるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする、サポウイルスRNAの検出方法である。
第四の発明は、第一の発明から第三の発明における第一のプライマーおよび第二のプライマーの少なくとも一方は、RNAポリメラーゼのプロモーター配列、転写調節部位、制限酵素部位、ステム・ループ構造などから選ばれた機能的配列が、その末端にさらに付加されてなることを特徴とする、サポウイルスRNAの検出方法である。
第五の発明は、試料中のサポウイルスRNAの特定塩基配列を増幅し検出する方法であって、
(1)サポウイルスRNA中の特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第二のプライマーが前記RNAにハイブリダイズし、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列に相補的なcDNAを合成し、前記RNAとのRNA−DNA2本鎖を生成する工程、
(2)リボヌクレアーゼH(RNaseH)活性を有する酵素により、前記RNA−DNA2本鎖のRNAを分解する工程(1本鎖DNAの生成)、
(3)該1本鎖DNAに、前記特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第一のプライマーがハイブリダイズし(ここで前記第二または第一のプライマーのいずれか一方はその5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されてなる)、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列または特定塩基配列に相補的な配列のRNAを転写可能なプロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成する工程、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素により前記2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物を生産する工程、
(5)該RNA転写産物が、前記(1)の反応におけるcDNA合成の鋳型となることで、連鎖的にRNA転写産物を生成する工程、
(6)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなることを特徴とする、第一の発明から第五の発明に記載のサポウイルスRNAの検出方法である。
第六の発明は、第五の発明におけるRNA転写産物量の測定が、標的RNAと相補的な2本鎖を形成すると蛍光特性が変化するように設計された蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ共存下で前記蛍光特性の変化を測定することによってなされることを特徴とする検出方法である。
第七の発明は、第六の発明における蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが、インターカレーター性蛍光色素をリンカーを介して結合させたインターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブであることを特徴とする検出方法である。
第八の発明は、第七の発明におけるインターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号37に示された配列、あるいはその相補的配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能である配列からなることを特徴とする検出方法である。
第九の発明は、第五の発明におけるサポウイルスRNAの検出方法において、前記特定塩基配列中の第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位と重複して該部位から5’方向に隣接する領域に相補的な切断用オリゴヌクレオチドとRNase Hにより前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する工程を、5’末端にプロモーター配列を付加した前記第一のプライマー、前記第二のプライマー、さらにRNA依存性DNAポリメラーゼ、RNase H、およびDNA依存性DNAポリメラーゼにより、プロモーター配列と該プロモーター配列下流に前記特定塩基配列を含む2本鎖DNAを生成する工程の前に行なうことを特徴とし、
前記切断用オリゴヌクレオチドが、配列番号13から18記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする検出方法である。
【0007】
第十の発明は、第九の発明における切断用オリゴヌクレオチドが、配列番号31から36に記載の塩基配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、サポウイルスRNAの検出方法である。
【0008】
第十一の発明は、第九および第十の発明における切断用オリゴヌクレオチドは、3’末端からの伸長反応を妨げるために、その3’末端水酸基が化学的に修飾されていることを特徴とするサポウイルスの検出方法である。
【0009】
第十二の発明は、試料中のサポウイルスRNAの特定塩基配列を増幅し検出するための試薬であって、少なくとも、前記第一のプライマーが配列番号1から6に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチド、および前記第二のプライマーが配列番号7から12に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチド、を含むことを特徴とするサポウイルスRNAの検出試薬である。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明中の試料とは、食品、飲料水、環境水、糞便および嘔吐物、鼻腔および咽頭等のぬぐい液、血液、その他の分泌液、体液、組織洗浄液などである。
本発明中の特定塩基配列とは、サポウイルス ゲノムRNA上で、第一のプライマーと相同領域の5’末端から第二のプライマーと相補領域の3’末端までの塩基配列に相同なRNAまたはDNAの塩基配列を示す。すなわち、本発明では前記特定塩基配列あるいはその相補配列に由来するRNA転写産物が増幅されることになる。該RNA転写産物を転写するための鋳型となる2本鎖DNAは、RNAポリメラーゼのプロモーター配列下流のセンス鎖あるいはアンチセンス鎖に特定塩基配列を有する。
本発明中の第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位とは、特定塩基配列内で該相同領域の5’末端を含む部分配列からなり、該部位は後述する切断用オリゴヌクレオチドとの相補領域と第一のプライマーとの相同領域が重複する部位である。
本発明中のサポウイルスRNAを増幅し検出する工程における、RNA増幅法としては、RT−PCR、RT−LAMP、NASBA、TMA、TRCなどが使用可能であり、特に限定されないが、混入するDNAの影響を受けず、一定温度で実施可能なRNA増幅法であるNASBA、TMA、TRCなどが好ましい。
検出方法としては既知の核酸検出方法が使用可能であるが、ハイブリダイズすることによって蛍光特性が変化するように設計された蛍光物質標識プローブを使用することが好ましい。該蛍光物質標識プローブとしては、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用した蛍光標識プローブやインターカレーター標識プローブなどが挙げられる。前記サポウイルスRNAを増幅し検出する工程における最も好適な方法は、他法に比して顕著に迅速で、一定温度・一段階でRNAを増幅し、同時に増幅産物をモニタリングする特許文献5に記載の方法であるが、本願以前にサポウイルスを迅速に検出する方法は提示されていなかった。
本発明中のストリンジェントな条件とは特に限定されるものではないが、例えば、42℃における50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%のポリビニルピロリドン、50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、150mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム、や本明細書の実施例に記載のRNA増幅条件など、あるいはこれらの適宜改変された条件が挙げられる。本明細書中で単にハイブリダイズすると記載された場合、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることを指す。また、該条件におけるハイブリダイゼーションの十分な特異性や効率が得られる範囲内で、塩基の置換、欠失、付加、修飾等が可能であり、長さも任意に設定できる。
本発明の好適な態様では、配列番号1から6で示された塩基配列の少なくとも連続する15塩基にハイブリダイズ可能な配列、配列番号7〜12に示された塩基配列の少なくとも連続する15塩基にハイブリダイズ可能な配列を選定することができる。本発明中の、少なくとも連続する15塩基とは、機能的なプライマーとして常識の範囲内で設定可能であることを示すものであり、通例は連続する15塩基以上50塩基未満を指す。
本発明中のRNAポリメラーゼあるいはRNAポリメラーゼ活性を有する酵素は特定のプロモーター配列が既知のものなら特に限定されないが、分子生物学の分野で汎用されるバクテリアファージ由来の、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼなどを使用することができる。本発明中のプロモーター配列としては、前記RNAポリメラーゼに対応するプロモーター配列を使用する。また前記プロモーター配列には、転写効率に影響を及ぼすことが知られている転写開始領域が付加されていても良い。
【0011】
本発明中の、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、リボヌクレアーゼH(RNaseH)活性を有する酵素、およびDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、それぞれ別個あるいは種々の組合せで添加することもできるが、前記活性を併せ持つレトロウイルス由来の逆転写酵素を使用することもできる。該逆転写酵素は特に限定されないが、分子生物学の分野で汎用される、AMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素、MMLV(Molony Murine Leukemia Virus)逆転写酵素、RAV(Rous Associated Virus)逆転写酵素、HIV(Human Immunodeficiency Virus)逆転写酵素などが使用可能である。
前述したように、現時点でヒトに感染性のあるサポウイルスはGI、GII、GIV、GVの4種の遺伝子群が存在し、GI、とGIIに関しては、それぞれ5種、6種の遺伝子型に分類されることが提唱されている(非特許文献6)。
非特許文献6において系統樹解析されているサポウイルス株の塩基配列情報を入手し、遺伝子群間の塩基配列の相同性を確認した結果、塩基配列が高度に保存されている領域は非常に限られていることが分かった。
そのため、第一のプライマー、第二のプライマーをそれぞれ一種類ずつ用いたオリゴヌクレオチドの組み合わせにより、サポウイルスRNAを遺伝子群/遺伝子型を問わず迅速、かつ高感度に検出することは極めて困難であると考えられた。
そこで発明者らは、多様な遺伝子群/遺伝子型を測定するために、第一のプライマー、第二のプライマーをそれぞれ二種類以上用いたオリゴヌクレオチドの最適な組み合わせについて鋭意研究を重ねた結果、一度の測定でサポウイルスの多様な遺伝子群/遺伝子型を迅速、かつ高感度に検出する方法を見出した。
すなわち、本発明において第一のプライマーはサポウイルス GI/1 RNAの一部に相補的な配列番号1に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GI/2 RNAの一部に相補的な配列番号2に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GI/5 RNAの一部に相補的な配列番号3に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GII RNAの一部に相補的な配列番号4に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GIV RNAの一部に相補的な配列番号5に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GV RNAの一部に相補的な配列番号6に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、の中から選ばれる一種類以上のオリゴヌクレオチドからなり、かつ第二のプライマーはサポウイルス GI/1 RNAの一部に相同な配列番号7に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GI/2 RNAの一部に相同な配列番号8に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GI/5 RNAの一部に相同な配列番号9に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GII RNAの一部に相同な配列番号10に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GIV RNAの一部に相同な配列番号11に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GV RNAの一部に相同な配列番号12に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、の中から選ばれる一種類以上のオリゴヌクレオチドからなる。
本発明の一態様は、第一のプライマーが配列番号19から24に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなり、かつ第二のプライマーが配列番号25から30に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドからなる。
本発明のより好ましい一態様は、第一のプライマーが配列番号37、38、40、42に記載の配列のオリゴヌクレオチドの混合物からなり、かつ第二のプライマーが配列番号43から48に記載の配列のオリゴヌクレオチドの混合物からなる。
さらに、本発明の別の一態様としては、サポウイルス ゲノムRNA中の特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第二のプライマーが前記RNAにハイブリダイズし、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列に相補的なcDNAを合成し、前記RNAとのRNA−DNA2本鎖を生成する工程、
(2)リボヌクレアーゼH(RNaseH)活性を有する酵素により、前記RNA−DNA2本鎖のRNAを分解する工程(1本鎖DNAの生成)、
(3)該1本鎖DNAに、前記特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第一のプライマーがハイブリダイズし(ここで前記第二または第一のプライマーのいずれか一方はその5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されてなる)、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列または特定塩基配列に相補的な配列のRNAを転写可能なプロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成する工程、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素により前記2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物を生産する工程、
(5)該RNA転写産物が、前記(1)の反応におけるcDNA合成の鋳型となることで、連鎖的にRNA転写産物を生成する工程、
(6)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなるサポウイルスRNAの検出方法である。
前期した態様において、第一のプライマーにプロモーター配列が付加されている場合は、サポウイルスRNAがcDNA合成の鋳型となる前に該RNA内の特定塩基配列の前記5’末端部位で切断されることが好ましい。特定塩基配列の5’末端部位で切断されることで、cDNA合成後に、cDNAにハイブリダイズした第一のプライマーのプロモーター配列に相補的なDNA鎖を、前記cDNAの3’末端を伸長することにより効率的に合成することができ、結果として機能的な2本鎖DNAプロモーター構造を形成する。
このような切断方法として、サポウイルスRNA内の特定塩基配列の5’末端部位(該特定塩基配列内で5’末端を含む部分配列)に重複して5’方向に隣接する領域に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、切断用オリゴヌクレオチドとする)を添加することによって形成されたRNA−DNAハイブリッドのRNA部分をリボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素などにより切断する方法があげられる。該切断用オリゴヌクレオチドの3’末端にある水酸基は伸長反応を防止するために適当な修飾を施されたもの、例えばアミノ化などされているものを使用するのが好ましい。
【0012】
本発明の好ましい一態様では、切断用オリゴヌクレオチドとして、サポウイルス GI/1 RNAの一部に相補的な配列番号13に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GI/2 RNAの一部に相補的な配列番号14に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GI/5 RNAの一部に相補的な配列番号15に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GII RNAの一部に相補的な配列番号16に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GIV RNAの一部に相補的な配列番号17に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、および、サポウイルス GV RNAの一部に相補的な配列番号18に記載の塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列、の中から選ばれる一種類以上のオリゴヌクレオチドを用いることができる。
本発明のより好ましい一態様では、切断用オリゴヌクレオチドが配列番号31から36に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。
【0013】
なお、本発明中の配列番号1、7および13はManchester(GI/1)(GenBank No.X86560)の部分配列、配列番号2、8および14はHouston90(GI/2)(GenBank No.U95644)の部分配列、配列番号3、9および15はEhime643(GI/5)(GenBank No.DQ366345)の部分配列、配列番号4、10および16はMc10(GII)(GenBank No.AY237420)の部分配列、配列番号5、11および16はEhime1107(GIV)(GenBank No.DQ058829)の部分配列、配列番号6、12および18はNongKhai24(GV)(GenBank No.AY646856)の部分配列、である。
本発明中の標的RNAとは、RNA転写産物上の特定塩基配列のうち、前記プライマーとの相同あるいは相補領域以外の配列を示し、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブとの相補的結合が可能である配列を有する。よって、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブは、本発明中の特定塩基配列の一部と相補的な配列となる。
本発明の一態様として、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブが、サポウイルス GIV RNAの一部に相同な配列番号37に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列のオリゴヌクレオチドを用いることができる。
【0014】
本発明の一態様として、切断用オリゴヌクレオチドは、配列番号13から18に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。また、第一のプライマーは、その5’末端にプロモーター配列を有しており、配列番号1から6に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。そして、第二のプライマーは配列番号7から12に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。さらに、インターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブは、配列番号37に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
【0015】
より好ましくは、前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号31から36に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。また、第一のプライマーは、配列番号19から24に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。そして、第二のプライマーは配列番号25から30に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも一種のオリゴヌクレオチドからなる。
【0016】
さらに、好ましくは、前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号49、50、52,53,54に記載の配列であるオリゴヌクレオチドの混合物からなり、第一のプライマーは、配列番号37、38、40、42に記載の配列であるオリゴヌクレオチドの混合物からなり、さらに、第二のプライマーは配列番号43から48に記載の配列であるオリゴヌクレオチドの混合物からなる。
【0017】
本発明のサポウイルスRNAの検出方法において、各酵素(1本鎖RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素(逆転写酵素)、RNase H活性を有する酵素、1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、およびRNAポリメラーゼ活性を有する酵素))が必要となる。各酵素は、いくつかの活性を合わせ持つ酵素を使用してもよいし、それぞれの活性を持つ複数の酵素を使用してもよい。また、1本鎖RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性、RNase H活性、および1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を合わせ持つ逆転写酵素に、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素を添加するだけでなく、必要に応じてRNase H活性を有する酵素をさらに添加して補足することなども可能である。前記逆転写酵素は、分子生物学的実験で汎用されているAMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、HIV逆転写酵素、あるいはこれらの誘導体が好ましく、AMV逆転写酵素とその誘導体が最も好ましい。また、前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素としては、分子生物学的実験などで汎用されているバクテリオファージ由来のT7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、およびこれらの誘導体が使用可能である。
【0018】
本発明の一態様では、試料中のサポウイルスRNAに前記切断用オリゴヌクレオチドを添加し、前記逆転写酵素のRNase H活性により前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する。切断された前記RNAを鋳型として前記第一のプライマーおよび第二のプライマーの存在下で前記逆転写酵素による逆転写反応を実施すると、第二のプライマーがサポウイルスRNA内の特定塩基配列に結合し、前記逆転写酵素のRNA依存性DNAポリメラーゼ活性によりcDNA合成が行われる。得られたRNA−DNAハイブリッドは前記逆転写酵素のRNase H活性によってRNA部分が分解され、解離することによって第一のプライマーが前記cDNAに結合する。引き続いて、前記逆転写酵素のDNA依存性DNAポリメラーゼ活性により特定塩基配列由来で5’末端にプロモーター配列を有する2本鎖DNAが生成される。該2本鎖DNAは、プロモーター配列下流に特定塩基配列を含み、前記RNAポリメラーゼにより特定塩基配列に由来するRNA転写産物を生産する。該RNA転写産物は、前記第一および第二のプライマーによる前記2本鎖DNA合成のための鋳型となって、一連の反応が連鎖的に進行し、前記RNA転写産物が増幅されていく。
【0019】
このような連鎖反応を進行させるために、前記各酵素に必須な既知の要素として、少なくとも、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸を含むことはいうまでもない。また、反応効率を調節するための添加剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジチオスレイトール(DTT)、ウシ血清アルブミン(BSA)、糖などを添加することも可能である。
【0020】
たとえば、AMV逆転写酵素およびT7 RNAポリメラーゼを用いる場合は35から65℃の範囲で反応温度を設定することが好ましく、40から50℃の範囲で設定することが特に好ましい。前記RNA増幅工程は一定温度で進行し、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼが活性を示す任意の温度に反応温度を設定することが可能である。
【0021】
増幅されたRNA転写産物量は、既知の核酸測定法により測定することが可能である。このような測定法としては、電気泳動や液体クロマトグラフィーを用いた方法、検出可能な標識で標識された核酸プローブによるハイブリダイゼーション法などが利用できる。しかし、これらは操作が多工程であり、また増幅産物を系外に取り出して分析するため二次汚染の原因となる増幅産物の環境への飛散の危険性が大きい。これらの課題を克服するためには標的核酸と相補結合することによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブを用いることが好ましい。さらに好ましい方法として、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブで、かつ標的核酸と相補的2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分が前記相補的2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブの存在下、前記核酸増幅工程を実施し、蛍光特性の変化を測定する方法があげられる(特許文献5および非特許文献7)。
【0022】
前記インターカレーター性蛍光色素としては特に限定されないが汎用されているオキサゾールイエロー、チアゾールオレンジ、エチジウムブロマイド、およびこれらの誘導体などが利用できる。前記蛍光特性の変化としては蛍光強度の変化があげられる。たとえばオキサゾールイエローの場合、2本鎖DNAにインターカレートすることによって510nmの蛍光(励起波長490nm)が顕著に増加することが既知である。前記インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブは、前記RNA転写産物上の標的RNAに対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドで、末端あるいはリン酸ジエステル部あるいは塩基部分に適当なリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素が結合され、さらに、3’末端の水酸基からの伸長を防止する目的で該3’末端の水酸基が適当な修飾をなされている構造を有する(特許文献8および非特許文献8)。
【0023】
オリゴヌクレオチドへのインターカレーター性蛍光色素の標識は、既知の方法でオリゴヌクレオチドに官能基を導入し、インターカレーター性蛍光色素を結合させることが可能である(特許文献9および非特許文献8)。また、前記官能基の導入方法としては、汎用されているLabel−ON Reagents(Clontech製)などを用いることも可能である。
【0024】
本発明の一態様として、試料に少なくとも、5’末端にT7プロモーター配列を有する第一のプライマー(配列番号1から6に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの5’末端にT7プロモーター配列(配列番号58)を付加した配列、第二のプライマー(配列番号7から12に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド)、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(配列番号55に示す配列、あるいはその相補的配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能である配列)、切断用オリゴヌクレオチド(配列番号13から18に記載の配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド)、AMV逆転写酵素、T7 RNAポリメラーゼ、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む増幅試薬を添加し、反応温度35から65℃(好ましくは40から50℃)の一定温度で反応させると同時に反応液の蛍光強度を経時的に測定する方法を提供する。
【0025】
前記態様において、最も好ましくは、前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号49、50、52,53,54に記載の塩基配列であるオリゴヌクレオチドの混合物からなり、第一のプライマーは、配列番号37、38、40、42に記載の塩基であるオリゴヌクレオチドの混合物からなり、さらに、第二のプライマーは配列番号43から48に記載の塩基であるオリゴヌクレオチドの混合物からなる。
【0026】
前記態様においては、蛍光強度を経時的に測定することから有意な蛍光増加が認められた任意の時間で測定を終了することが可能であり、核酸増幅および測定をあわせて通例30分以内で終了することが可能である。
【0027】
また、前記測定試薬に含まれる全ての試料を単一の容器に封入可能な点は特筆すべきである。即ち、一定量の試料をかかる単一の容器に分注するという操作さえ実施すれば、その後は自動的にサポウイルスRNAを増幅し検出することができる。この容器は、例えば蛍光色素が発する信号を外部から測定可能なように、少なくともその一部分が透明な材料で構成されてさえいれば良く、試料を分注した後に密閉することが可能なものはコンタミネーションの防止のうえで特に好ましい。
【0028】
前記態様のRNA増幅・測定方法は、一段階、一定温度で実施可能であるため、RT−PCRに比べて簡便で自動化に適した方法であるといえる。本発明によりサポウイルスRNAを遺伝子群/遺伝子型を問わず高特異性、高感度、迅速、簡便、一定温度、かつ一段階の同時測定が可能となった。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、
(1)サポウイルスRNA中の特定塩基配列を鋳型とし、第一のプライマー及び第二のプライマー、DNAポリメラーゼなどの核酸重合酵素を用いて、前記特定塩基配列を含む核酸を増幅する工程、
(2)該核酸増幅産物を測定する工程、
からなるサポウイルスRNAの検出方法において、前記第一のプライマー配列番号1から6に記載の配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた少なくとも1種類以上のオリゴヌクレトチドからなり、かつ第二のプライマーが配列番号7から12に記載の配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた少なくとも1種類以上のオリゴヌクレトチドからなることを特徴としている。
本発明により、試料中に含まれる微量なサポウイルスRNAを遺伝子群/遺伝子型を問わず迅速、かつ高感度に増幅、検出することが可能となった。
【0030】
さらに、プロモーター配列を有する第一のプライマー、または第二のプライマーを用いて得られるRNA転写産物量を測定する工程において、標的RNAと相補的2本鎖を形成するとシグナル特性が変化するように設計された核酸プローブを共存させ、増幅されたサポウイルスRNAの特定核酸に由来する蛍光強度の増加を経時的に測定することにより、サポウイルスRNAの検出を簡便、迅速、かつ高感度に行なうことが可能となった。
【0031】
本発明の検出方法を用いたサポウイルスRNAの検出試薬は、一度の測定でサポウイルスRNAの多くの遺伝子群/遺伝子型を迅速、かつ高感度に検出することができる。特に、従来技術と比較すると圧倒的に迅速である、という特徴を有しているため、臨床現場において、糞便や吐瀉物といった臨床検体中にサポウイルスが存在するかを迅速、かつ簡便に判定することが可能となった。そのため、その後のサポウイルス感染の蔓延の防止、およびサポウイルス感染経路の調査研究などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例2で作製したインターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブの構造。B1、B2、B3、B4は塩基を示す。Ishiguroら(非特許文献8)の方法に従いリン酸ジエステル部分にリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素(オキサゾールイエロー)を結合させたプローブ。なお、3’末端の水酸基からの伸長反応を防止するために3’末端の水酸基はグリコール酸修飾がなされている。
【図2】図2は、実施例で使用した配列番号1から20の配列を示す図である。
【図3】図3は、実施例で使用した配列番号21から40の配列を示す図である。
【図4】図4は、実施例で使用した配列番号41から60の配列を示す図である。
【図5】図5は、実施例で使用した配列番号61から80の配列を示す図である。
【図6】図6は、実施例で使用した配列番号81から93の配列を示す図である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0034】
実施例1 標準RNAの調製
後述の実施例で使用したサポウイルスRNA(以降、標準RNAと表記)は(1)から(2)に示す方法で調製した。
(1)GenBankに登録されているサポウイルスcDNA配列のうち、表1に示す遺伝子型、および塩基配列領域の2本鎖DNAを調製した(なお、該DNAの5’末端側にはSP6プロモーターを付加している)。
(2)(1)で調整したDNAを鋳型として、SP6 RNAポリメラーゼを用いてインビトロ転写を実施し、引き続きDNase I処理により前記2本鎖DNAを完全消化した後、RNAを精製して調製した。該RNAは260nmにおける吸光度を測定して定量した。
【0035】
【表1】

なお、標準RNAの全長は457−733塩基(該RNAの5’末端にはSP6プロモーターに由来する8塩基が付加されている)と、サポウイルスRNAの全長(約7000塩基)の一部ではあるが、本発明の測定対象であるサポウイルスRNAの測定には十分適用可能である。
【0036】
実施例2 インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブの調製
インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブを調製した。非特許文献8に記載の方法で、配列番号55に記載の配列の5’末端から11番目のCと12番目のAの間、配列番号56に記載の配列の5’末端から11番目のCと12番目のAの間、配列番号57に記載の配列の5’末端側から10番目のCと11番目のAとの間のリン酸ジエステル部分に、それぞれリンカーを介してオキサゾールイエローを結合させたオキサゾールイエロー標識核酸プローブを調製した(図1)。
【0037】
実施例3 サポウイルスRNA検出用プライマーセットの検討
表2に示す組み合わせの第一のプライマー、第二のプライマー、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(以降、INAFプローブと表記)、切断用オリゴヌクレオチドを用いて、(1)から(4)に示す方法で、標準RNAの測定を行なった。
【0038】
【表2】

(1)前記標準RNAをRNA希釈液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA、0.25U/μL リボヌクレアーゼインヒビター、5.0mM DTT)を用いて、GIV標準RNAは50コピー/5μL、10コピー/5μL、300コピー/5μL、または、10コピー/5μLになるよう希釈し、これらをRNA試料として用いた。
(2)以下の組成の反応液20μLを0.5mL容量PCR用チューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI製)に分注し、これに前記RNA試料5μLを添加した。
【0039】
反応液の組成:濃度は酵素液添加後(30μL中)の最終濃度
60mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)
17mM 塩化マグネシウム
100mM 塩化カリウム
1mM DTT
各0.25mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各3mM ATP、CTP、UTP、GTP
3.6mM ITP
各0.75μM 第一のプライマー:該プライマーは、各配列番号記載の塩基配列の5’末端にT7プロモータ配列(配列番号40)が付加されている
各0.75μM 第二のプライマー
30nM INAFプローブ:該プローブは実施例2で調製したもの
各0.16μM 切断用オリゴヌクレオチド:該オリゴヌクレオチドの3’末端の水酸基はアミノ基で修飾されている
6U リボヌクレアーゼインヒビター(タカラバイオ製)
13% DMSO
(3)上記の反応液を、43℃で5分間保温後、以下の組成で、予め43℃で2分間保温した酵素液5μLを添加した。
【0040】
酵素液の組成:反応時(30μL中)の最終濃度
2.0% ソルビトール
6.4U AMV逆転写酵素 (ライフサイエンス製)
142U T7 RNAポリメラーゼ (インビトロジェン製)
3.6μg 牛血清アルブミン
(4)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、43℃で反応させると同時に反応溶液の蛍光強度(励起波長470nm、蛍光波長520nm)を経時的に30分間測定した。
【0041】
酵素添加時を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度比で割った値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表2から7に示した。
【0042】
表2のAからPの組合せは、表1に示したGIVの塩基配列領域4811−5293を持つ標準RNAを、QからTの組合せは、表1に示したGIVの塩基配列領域3855−4588を持つ標準RNAをそれぞれ使用した。また、それぞれの標準RNAは10コピー/5μLのものを使用した。
表3は、表2の組合せの中で、検出時間が早く良好な性能であると判断したE、F、K、L、M、N、O、Pに示すオリゴヌクレオチドの組合せを用い、10コピーのGIV標準RNAを測定したときの結果を示した。
表4は、表3の組み合わせの中で、検出時間が早く良好な性能であると判断したKおよびNに示すオリゴヌクレオチドの組み合わせを基本とし、切断用オリゴヌクレオチドの5’末端を延長し、第一のプライマーとの重なり塩基数を検討したものであり、10コピーのGIV標準RNAを測定したときの結果を示した。
表5は、表4の組み合わせの中で、検出時間が早く良好な性能であると判断したK8およびN10に示すオリゴヌクレオチドの組み合わせを基本とし、第二のプライマーを検討したものであり、10コピーのGIV標準RNAを測定したときの結果を示した。
表6は、表5の組み合わせの中で、検出時間が早く良好な性能であると判断したK83に示すオリゴヌクレオチドの組み合わせを基本とし、第一のプライマーを検討したものであり、10コピーコピーのGIV標準RNAを測定したときの結果を示した。
表7は、表6の組み合わせの中で、検出時間が早く良好な性能であると判断したK834に示すオリゴヌクレオチドの組み合わせを基本とし、第二のプライマーを検討したものであり、50コピーのGIV標準RNAを測定したときの結果を示している。また、N.D.とは酵素を添加して30分後の蛍光強度比が1.2未満(陰性判定)であった試料を意味する。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

表2から表7に示した検討結果より、サポウイルスを検出するのに好適なオリゴヌクレオチド配列が明らかになったとともに、迅速かつ高感度に検出することが可能なオリゴヌクレオチドの組合せを見出した。
【0048】
表2の組合わせAからPを用いた場合の検出時間の結果より、第一のプライマーは配列番号59から62であり、かつ第二のプライマーは配列番号73または74である組合せを用いれば、RNAを比較的迅速に増幅し検出することが可能であることが分かった。
一方、組合せQからTでは、いずれの組合せを用いても、サポウイルスを迅速に検出することができなかった。
組合せA、B、C、Dおよび、G、H、I、Jは、特許文献1に記載されている、PCR法におけるサポウイルスの検出に好適なプライマーセットと同様な配列のオリゴヌクレオチドの組合せであるものの、本検討においては、好適なオリゴヌクレオチドの組合せであるとは言えないことが分かった。
これらのことから、本発明によってサポウイルスを検出するのに好適なオリゴヌクレオチド配列が初めて明らかになったとともに、迅速かつ高感度に検出できるオリゴヌクレオチドの組合せを見出すことに成功した。
また、表2から表7に示した結果より、第一のプライマーが配列番号1から6に記載した配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であり、第二のプライマーが配列番号7から12に記載した配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるならば、サポウイルスを検出するための好適なオリゴヌクレオチドとして機能することが分かった。
また、切断用オリゴヌクレオチドは、配列番号13から18に記載した配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列であるならば、サポウイルスを検出するためのオリゴヌクレオチドとして機能することが分かった。
実施例4 遺伝子型ごとのサポウイルスRNAの検出
実施例3で明らかになった、サポウイルスを迅速かつ高感度に検出できるオリゴヌクレオチドの組合せを用い、サポウイルスの各種の遺伝子型の個別での測定を試みた。
それぞれの遺伝子群/遺伝子型の標準RNAは10^3コピー/testの濃度で使用した。
表8に示す組み合わせの第一のプライマー、第二のプライマー、INAFプローブ、切断用オリゴヌクレオチドを用いて、実施例3の(1)から(4)に示す方法で、標準RNAの測定を行なった。
その結果、それぞれの組合せにおける検出時間は表8に示した通りとなり、実施例3で明らかとなったオリゴヌクレオチドの組合せは、それぞれの遺伝子型を迅速かつ高感度に検出できることが分かった。
【0049】
【表8】

実施例5 サポウイルスRNAの検出試薬
表8に示したサポウイルスを検出するのに好適なオリゴヌクレオチドを用い、多くの遺伝子群/遺伝子型のサポウイルスのRNAを一度に測定可能な検出試薬の作製を試みた。
【0050】
まずは、表8に示したオリゴヌクレオチドの全てを混合した系(表9の組合せA)で標準RNAの検出感度および10コピーの検出時間を測定した。その結果、表10に示したように全ての遺伝子型を検出することは可能であったものの、遺伝子型別のオリゴヌクレオチドの組合せで測定した場合と比較して、標準RNAの検出感度の低下、および検出時間の遅延が顕著であった。
試料中のRNA量が等しい場合、検出時間が早いほど増幅効率が高いため、全てのオリゴヌクレオチドを混合した系では、増幅効率が低下してしまったといえる。これは、系中に存在するオリゴヌクレオチドの種類が多いため、プライマーダイマーといった非特異的な増幅が起こり易くなってしまったためであると考えられる。
そこで、非特的増幅が起こりにくいオリゴヌクレオチドの組み合わせを鋭意検討するこにより得られた本発明の系(表9の組合せB)にて、標準RNAの検出感度および10コピーの検出時間を測定したところ、10コピーの標準RNA全てを25分以内に検出でき、かつ、全てのオリゴヌクレオチドを混合した系よりも検出感度を向上させることに成功した。
非特許文献4に記載された従来の検出方法では、サポウイルスの核酸を抽出してから、サポウイルスRNAの検出が終了するまでに約180分を要する。
一方、本実施例の表9の組合せBによると、サポウイルスの核酸を抽出してから、サポウイルスRNAの検出が終了するまでに要する時間は3よ0分以内であり、極めて迅速である。このことから、本実施例に示した方法により、サポウイルスRNAの迅速かつ高感度な測定を実現するのに成功したと言える。本実施例が、本発明における最も好ましい系であるといえる。
【0051】
【表9】

【0052】
【表110】

【0053】
【表11】

【0054】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のサポウイルスRNAの特定塩基配列を増幅し検出する方法であって、前記特定塩基配列の増幅が、配列番号1から6に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上の第一のプライマー、および、配列番号7から12に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上の第二のプライマーを用いてなされることを特徴とする、サポウイルスRNAの検出方法。
【請求項2】
前記特定塩基配列の増幅において、第一のプライマーとして、配列番号19から24に記載の塩基配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチド、および、第二のプライマーとして、配列番号25から30に記載の塩基配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする、請求項第一に記載のサポウイルスRNAの検出方法。
【請求項3】
前記特定塩基配列の増幅において、第一のプライマーとして、配列番号37、38、40、42に記載の塩基配列であるオリゴヌクレオチド、および、第二のプライマーとして、配列番号43から48に記載の塩基配列であるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載のサポウイルスRNAの検出方法。
【請求項4】
前記第一のプライマーおよび第二のプライマーの少なくとも一方は、RNAポリメラーゼのプロモーター配列、転写調節部位、制限酵素部位、ステム・ループ構造などから選ばれた機能的配列が、その末端にさらに付加されてなることを特徴とする、請求項1から3に記載のサポウイルスRNAの検出方法。
【請求項5】
試料中のサポウイルスRNAの特定塩基配列を増幅し検出する方法であって、
(1)サポウイルスRNA中の特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第二のプライマーが前記RNAにハイブリダイズし、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列に相補的なcDNAを合成し、前記RNAとのRNA−DNA2本鎖を生成する工程、
(2)リボヌクレアーゼH(RNaseH)活性を有する酵素により、前記RNA−DNA2本鎖のRNAを分解する工程(1本鎖DNAの生成)、
(3)該1本鎖DNAに、前記特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第一のプライマーがハイブリダイズし(ここで前記第二または第一のプライマーのいずれか一方はその5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されてなる)、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列または特定塩基配列に相補的な配列のRNAを転写可能なプロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成する工程、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素により前記2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物を生産する工程、
(5)該RNA転写産物が、前記(1)の反応におけるcDNA合成の鋳型となることで、連鎖的にRNA転写産物を生成する工程、
(6)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなることを特徴とする請求項1から4に記載のサポウイルスRNAの検出方法。
【請求項6】
前記RNA転写産物量の測定が、標的RNAと相補的な2本鎖を形成すると蛍光特性が変化するように設計された蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ共存下で前記蛍光特性の変化を測定することによってなされることを特徴とする請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
前記蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが、インターカレーター性蛍光色素をリンカーを介して結合させたインターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブであることを特徴とする請求項6に記載の検出方法。
【請求項8】
前記インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号55に示された配列、あるいはその相補的配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能である配列からなることを特徴とする請求項7に記載の検出方法。
【請求項9】
前記サポウイルスRNAの検出方法において、前記特定塩基配列中の第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位と重複して該部位から5’方向に隣接する領域に相補的な切断用オリゴヌクレオチドとRNase Hにより前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する工程を、5’末端にプロモーター配列を付加した前記第一のプライマー、前記第二のプライマー、さらにRNA依存性DNAポリメラーゼ、RNase H、およびDNA依存性DNAポリメラーゼにより、プロモーター配列と該プロモーター配列下流に前記特定塩基配列を含む2本鎖DNAを生成する工程の前に行なうことを特徴とし、
前記切断用オリゴヌクレオチドが、配列番号13から18記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項5に記載の検出方法。
【請求項10】
前記切断用オリゴヌクレオチドが、配列番号31から36に記載の塩基配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項9に記載のサポウイルスRNAの検出方法。
【請求項11】
前記切断用オリゴヌクレオチドは、3’末端からの伸長反応を妨げるために、その3’末端水酸基が化学的に修飾されていることを特徴とする請求項9あるいは10に記載のサポウイルスの検出方法。
【請求項12】
試料中のサポウイルスRNAの特定塩基配列を増幅し検出するための試薬であって、少なくとも、前記第一のプライマーが配列番号1から6に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチド、および前記第二のプライマーが配列番号7から12に記載の塩基配列の少なくとも連続する15塩基にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能な配列から選ばれた1種類以上のオリゴヌクレオチド、を含むことを特徴とするサポウイルスRNAの検出試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78389(P2011−78389A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235667(P2009−235667)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】