説明

サルアデノウイルスの核酸配列及びアミノ酸配列、それを含有するベクター、並びにその使用

本発明は、血清陽性率が改善された新規のアデノウイルス株に関する。一態様では、本発明はヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質等のアデノウイルスカプシドタンパク質の単離ポリペプチド、及びその断片、並びにそれをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクター、及び本発明による単離ポリヌクレオチド又は単離ポリペプチドを含むアデノウイルス、並びに上記ベクター、アデノウイルス、ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含む医薬組成物も提供される。本発明は、疾患の療法又は予防法への単離ポリヌクレオチド、単離ポリペプチド、ベクター、アデノウイルス及び/又は医薬組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清陽性率が改善された新規のアデノウイルス株に関する。一態様では、本発明はヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質等のアデノウイルスカプシドタンパク質の単離ポリペプチド、並びにその断片、並びにそれをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクター、並びに本発明による単離ポリヌクレオチド又は単離ポリペプチドを含むアデノウイルス、並びに上記ベクター、アデノウイルス、ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含む医薬組成物も提供される。本発明は、疾患の療法又は予防法への単離ポリヌクレオチド、単離ポリペプチド、ベクター、アデノウイルス及び/又は医薬組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アデノウイルス(Ad)は、非エンベロープ正20面体カプシド構造を有する、両生類、鳥類及び哺乳類に見られる二重鎖DNAウイルスの大きなファミリーを構成している(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。レトロウイルスとは対照的に、アデノウイルスは宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく、幾つかの哺乳動物種の多数の細胞型(分裂細胞及び非分裂細胞の両方を含む)に形質導入することができる。
【0003】
概して、アデノウイルスDNAは典型的には非常に安定であり、形質転換又は腫瘍形成が起こらない限り、エピソーム性(例えば染色体外性)であり続ける。加えて、アデノウイルスベクターは、臨床グレードの組成物の製薬規模の生産に容易に適用可能である、明確に定義された生産システムにおいて高収率で増殖させることができる。これらの特性及びよく特徴付けられたその分子遺伝学のために、組換えアデノウイルスベクターはワクチン担体としての使用に対する有力な候補である。組換えアデノウイルスベクターの生産は、機能しないように欠失させた又は改変したアデノウイルス遺伝子産物の機能を補完することが可能なパッケージング細胞株の使用に依存し得る。
【0004】
現在、よく特徴付けられた2つのヒト亜群Cアデノウイルス血清型(すなわち、hAd2及びhAd5)が、遺伝子療法に使用される大半のアデノウイルスベクターのウイルス骨格の供給源として広く使用されている。複製欠損ヒトアデノウイルスベクターも、様々な感染因子に由来する様々な免疫原の送達のためのワクチン担体として試験されている。実験動物(例えば齧歯類、イヌ及び非ヒト霊長類)において行われた研究から、免疫原及び他の抗原をコードする導入遺伝子を運搬する組換え複製欠損ヒトアデノウイルスベクターが、導入遺伝子産物に対する体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方を引き起こすことが示される。概して、研究者らは、免疫応答を引き起こすことが予想される組換えアデノウイルスベクターを高用量で利用する免疫化プロトコルを用いるか、又は異なる血清型に由来するが、同じ導入遺伝子産物を運搬するアデノウイルスベクターの連続投与をブースト免疫化として採用する免疫化プロトコルを用いることにより、非ヒト実験系においてヒトアデノウイルスベクターをワクチン担体として使用することの成功を報告している(非特許文献5)。
【0005】
ヒトアデノウイルス5型(Ad5)ベースのウイルスベクターが、種々の遺伝子療法及びワクチン適用に対して開発されている。Ad5ベースのベクターは動物モデルにおいては極めて効率的であるが、ヒトにおいてAd5野生型ウイルスに対する既存の免疫が存在することが、遺伝子形質導入の効率を低下させることが臨床試験において実証されている。特に、Ad5ベクターに基づくワクチン臨床試験に参加する被験体において、200を超える中和抗体力価で、免疫化効率の明らかな低下が実証された。Ad5ベクターワクチン(vectored vaccine)の最も広範な特性化は、Merckによって行われたHIVワクチンのSTEP試験において得られた(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Straus, Adenovirus infections in humans; The Adenoviruses, 451-498,1984
【非特許文献2】Hierholzer et al.,J. Infect. Dis., 158: 804-813, 1988
【非特許文献3】Schnurr and Dondero, Intervirology., 36:79-83, 1993
【非特許文献4】Jong et al., J. Clin. Microbiol., 37: 3940-3945: 1999
【非特許文献5】Mastrangeli, et.al., Human Gene Therapy, 7: 79-87 (1996)
【非特許文献6】Moore JP et al. Science. 2008 May 9; 320(5877): 753-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このワクチン研究は、HIV感染リスクの高い被験体における概念研究を証明するものとして、異なるHIV抗原を発現する3つのAd5ベクターの同時注入に基づいていた。このデータによって驚くべきことに、予防効果ではなく、ワクチン接種した被験体(Ad5に対する既存の免疫を有する)におけるHIV感染率の増加が明らかとなった。この矛盾した観察結果についての機構は未だ明らかではないが、この結果から、健常な被験体におけるワクチン適用に対して、ヒト起源のアデノウイルスをベースとするベクターの安全性及び効率に関するさらなる問題が提起された。種々のワクチン療法及び遺伝子療法においてこれまでに得られた全ての結果を総合すると、Ad5ベクターを用いた試験等の臨床試験において、ヒトにおける既存の免疫が非常に低いか、又は存在しないことを特徴とするアデノウイルスの必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、アデノウイルスファイバータンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれかに記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれかのアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、アデノウイルスヘキソンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドに関する:
(a)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれかに記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれかのアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0010】
本発明によりアデノウイルスペントンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドも提供される:
(a)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれかに記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれかのアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0011】
本発明はまた、上で概説した本発明による単離ポリヌクレオチドを少なくとも1つ含むポリヌクレオチドにも関する。本発明はさらに、本発明による単離ポリヌクレオチド、又はその機能的誘導体によってコードされる単離アデノウイルスカプシドポリペプチドを提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0013】
本発明による単離ポリヌクレオチド、及び/又は少なくとも1つの本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチドを含む組換えアデノウイルス、好ましくは複製不全アデノウイルスも提供される。
【0014】
本発明のさらなる態様は、アジュバント及び以下の(i)〜(iv)の少なくとも1つを含む組成物である:
(i)1つ又は複数の本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)本発明による単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス;及び、
任意で、薬学的に許容可能な賦形剤。
【0015】
本発明はさらに、以下のものの少なくとも1つを含む細胞に関する:
(i)1つ又は複数の本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)本発明によるの単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス。
【0016】
本発明のさらなる態様は、疾患の療法又は予防法への、本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;本発明による単離ポリヌクレオチド;本発明によるベクター;本発明による組換えアデノウイルス;及び/又は本発明による組成物の使用に関する。
【0017】
以下の図面は本発明の一例にすぎず、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−1】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
【図1−2】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
【図1−3】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
【図1−4】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、本発明の様々なアデノウイルス分離株のヘキソンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。上記新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のヘキソンタンパク質が示される。超可変ドメイン1〜7が、それぞれ「HVR1〜6」及び「HVR7」として表される。
【図2−1】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のファイバータンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
【図2−2】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のファイバータンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
【図2−3】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のファイバータンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
【図3−1】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のペントンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
【図3−2】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のペントンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
【図3−3】Clustal−Wをデフォルト設定で用いた、アデノウイルスChAd55及びさらなる新規のチンパンジーアデノウイルス分離株(PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147として表される)のペントンタンパク質間の多重配列アラインメントを示す図である。
【図4】野生型ウイルスゲノム及び対応するシャトルプラスミドとの相同組換えによる複製欠損アデノウイルスベクターの構成図である。実施例2も参照されたい。
【図5−1】HIV gagタンパク質の発現のための発現カセット(配列番号1)を含む、組換えアデノウイルスをワクチン接種したマウスにおける細胞性免疫応答を示す図である。組換えヒトAd5及びチンパンジーChAd55のワクチン接種効力を比較した。免疫応答は、Balb/CマウスにおいてマッピングされたCD8 HIV gagエピトープを有する細胞をインキュベートすることによる、インターフェロン−γ ELIspotアッセイによって測定した。結果は、脾細胞10個当たりのスポット形成細胞の数として報告した。
【図5−2】HIV gagタンパク質の発現のための発現カセット(配列番号1)を含む、組換えアデノウイルスをワクチン接種したマウスにおける細胞性免疫応答を示す図である。組換えヒトAd5並びにボノボPanAd1、PanAd2及びPanAd3アデノウイルスのワクチン接種効力を比較した。免疫応答は、Balb/CマウスにおいてマッピングされたCD8 HIV gagエピトープを有する細胞をインキュベートすることによる、インターフェロン−γ ELIspotアッセイによって測定した。結果は、脾細胞10個当たりのスポット形成細胞の数として報告した。
【図6】ヨーロッパ人起源のヒト血清のパネルに対し、新規のアデノウイルスベクターの血清陽性率を評価した結果を示す図である。ヒトアデノウイルス5型(Ad5)及びチンパンジーアデノウイルスChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2、PanAd3及びCV−68の血清陽性率を、同じパネルに対し並行して評価した。データは免疫発生(immunoprevalence)を示す被験体の%として表す。中和抗体はAd5及びCV−68アデノウイルスについてのみ検出され、本発明の新規のアデノウイルスのいずれについても検出されなかった。
【図7−1】BALB/cマウスのPanAd HSV免疫化を示す図である。
【図7−2】BALB/cマウスのPanAd癌Ag免疫化を示す図である。
【図8】プライミング/ブーストワクチン接種実験における、カニクイザル(Macaca fascicularis)のPanAd HIV gag免疫化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を下記で詳細に説明する前に、本明細書中に記載される特定の方法論、プロトコル及び試薬は変わることがあるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書中で使用される専門用語が、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。特に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPACRecommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B.and Klbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel,Switzerland)に記載されるように、"Pharmaceutical Substances:Syntheses, Patents, Applications" Axel Kleemannand Jurgen Engelによる, Thieme Medical Publishing, 1999、"MerckIndex: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals",Susan Budavari et al.編, CRCPress, 1996、及びUnited States Pharmacopeia-25/NationalFormulary-20, the United States PharmcopeialConvention, Inc., Rockville Md.により出版, 2001に記載されるように定義される。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変化形は、記載の特徴、整数若しくは工程、又は特徴、整数若しくは工程の群を含むが、任意の他の特徴、整数若しくは工程、又は特徴、整数若しくは工程の群を排除することを意味しないことが理解されよう。以下の節では、本発明の種々の態様がより詳細に定義される。そのように定義される各々の態様は、そうではないことが明らかに示されない限り、任意の他の態様(単数又は複数)と組み合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴を、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴(単数又は複数)と組み合わせてもよい。
【0022】
幾つかの文献が本明細書の本文全体を通して引用される。上記又は下記を問わず本明細書中に引用される各々の文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含む)は、その全体が参照により本明細書中に援用される。本明細書中の記載のいずれも、本発明が先行発明に基づいてかかる開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるものではない。
【0023】
以下で、本明細書中で頻繁に使用される用語の定義を幾つか提示する。これらの用語は、その使用の各々の例において、本明細書の残りの部分で、それぞれ定義される意味及び好ましい意味を有するものとする。
【0024】
概して、アデノウイルスゲノムはよく特徴付けられている。同様に位置した特異的オープンリーディングフレーム、例えば各々のウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子の位置に関して、アデノウイルスゲノムの全体構成の全体的保存が見られる。アデノウイルスゲノムの各々の末端(extremity)は、ウイルス複製に必要とされる逆方向末端反復(ITR)として知られる配列を含む。ウイルスは、感染性ビリオンを産生するのに必要とされる一部の構造タンパク質のプロセシングに必要とされるウイルスコードプロテアーゼも含んでいる。アデノウイルスゲノムの構造は、宿主細胞への形質導入に続いてウイルス遺伝子が発現される順序に基づいて記載される。より具体的には、ウイルス遺伝子は、転写がDNA複製の開始の前に起こるか、又は後に起こるかに応じて初期(E)遺伝子又は後期(L)遺伝子と称される。形質導入の初期段階では、アデノウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4遺伝子がウイルス複製に向けた宿主細胞の準備をするために発現される。感染の後期においては、ウイルス粒子の構造成分をコードする後期遺伝子L1〜L5の発現が活性化される。
【0025】
以下の表1は、本明細書中で言及される配列の概要を提示するものである:
【0026】
【表1】


【0027】
本明細書中で使用される場合、「単離(isolated)」分子という用語は、それが天然に関連する他の分子を実質的に含まない分子を指す。単離した分子はしたがって、天然で、すなわち実験的状況の外部で生きている動物においてそれが接近又は接触し得る他の分子を含まない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「ペプチド(peptides)」及び「ポリペプチド(polypeptides)」という用語は、全体を通して区別なく使用される。これらの用語は天然ペプチド、例えば天然タンパク質、及び天然アミノ酸又は非天然アミノ酸を含み得る合成ペプチドの両方を指す。ペプチドは、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸の側鎖又は遊離アミノ末端若しくはカルボキシ末端を修飾することによって化学修飾されていてもよい。この化学修飾には、さらなる化学的部分の付加及びアミノ酸の側鎖中の官能基の修飾(グリコシル化等)が含まれる。ペプチドは、好ましくは少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個又は少なくとも100個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも8個又は少なくとも30個のアミノ酸を有する重合体である。本明細書中で開示されるポリペプチド及びタンパク質はアデノウイルスに由来するため、本明細書中で使用される単離ポリペプチド又は単離タンパク質の分子量は200kDaを超えないことが好ましい。
【0029】
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用される場合、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージ等のファージベクター、アデノウイルス(Ad)ベクター(例えば、従来技術、例えば国際公開第2005/071093号から知られる非複製Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63及びChAd82ベクター又は複製可能Ad4及びAd7ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えばAAV5型)、αウイルスベクター(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林熱ウイルス(SFV)及びVEE−SINキメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えばワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC(ワクシニアウイルスコペンハーゲン株に由来する)、並びにアビポックスウイルスベクター:カナリア痘ウイルス(ALVAC)ベクター及び鶏痘ウイルス(FPV)ベクター)及び水疱性口内炎ウイルスベクター等のウイルスベクター、ウイルス様粒子又は細菌胞子を含む当業者に既知の任意のベクターを含む。ベクターには、発現ベクター、クローニングベクター、及び宿主細胞において組換えアデノウイルスを生成するのに有用なベクターも含まれる。
【0030】
「発現カセット」という用語は、その転写調節配列及び翻訳調節配列と共に発現される少なくとも1つの核酸配列を含む核酸分子を指す。発現カセットを変更することによって、それが組み込まれるベクターに別の配列又は配列の組み合わせの発現を指示させる。制限部位(5’末端及び3’末端に存在するように改変することが好ましい)のために、カセットは容易に挿入、除去するか、又は別のカセットと置き換えることができる。好ましくは、発現カセットは、下記でさらに記載されるプロモーター、開始部位及び/又はポリアデニル化部位等の所与の遺伝子の効率的な発現のためのcis調節要素を含む。
【0031】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方、すなわち、抗原又はハプテンに結合することが可能な任意の免疫グロブリンタンパク質又はその一部分を指す。抗原結合部分は組換えDNA技法、又は無傷抗体の酵素的切断若しくは化学的切断によって作製することができる。幾つかの実施形態では、抗原結合部分はFab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、及び相補性決定領域(CDR)変異体、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体(diabodies)、及びポリペプチドに特異的抗原結合をもたらすのに十分な抗体の少なくとも一部分を含有するポリペプチドを含む。
【0032】
本発明の文脈内で哺乳動物において免疫応答を誘発する/発生させるための免疫原/抗原の投与は「プライミング」と称され、哺乳動物において上記免疫原/抗原に対する免疫応答を増強するための免疫原/抗原、例えば特定の病原体(ビリオン又はウイルス病原体、病原性細菌の抗原又は腫瘍抗原等)の投与は「ブースト」と称される。「異種プライム−ブースト」という表現は、哺乳動物において免疫応答を誘発する/発生させる(プライミング)ためのベクターと、哺乳動物において免疫応答を増強する(ブースト)ためのベクターとが異なることを意味する。「異種プライム−ブースト」は被験体、例えば患者が第1のベクターに対する抗体を既に生じており、ブーストが必要とされる場合に有用である。したがって、異種プライム−ブーストの好ましい実施形態では、例えばワクチン接種及び/又は遺伝子療法のために2つの異なるアデノウイルスが使用され得る。この文脈においては、第1のアデノウイルスによるプライミングにおいて誘発される抗体応答によって、ブーストのために投与される第2のアデノウイルス粒子の70%超、又は好ましくは80%超が、プライミング及びブーストを受けた動物の細胞の核内に侵入することが妨げられない場合、第1及び第2のアデノウイルスは十分に異なるとされる。
【0033】
「複製可能」組換えアデノウイルス(AdV)という用語は、細胞中に含まれる任意の組換えヘルパータンパク質の非存在下で、宿主細胞において複製することのできるアデノウイルスを指す。好ましくは、「複製可能」アデノウイルスは、以下の無傷の又は機能的に必須の(functional essential)初期遺伝子を含む:E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4。特定の動物から単離した野生型アデノウイルスは、その動物において複製可能である。
【0034】
「複製欠損」組換えAdVという用語は、少なくとも機能的欠失、すなわち遺伝子を完全に除去することなくその遺伝子の機能を損なう欠失、例えば人工停止コドンの導入、活性部位若しくは相互作用ドメインの欠失若しくは突然変異、遺伝子の調節配列の突然変異若しくは欠失等、又はウイルス複製に必須の遺伝子産物をコードする遺伝子(E1、E2、E3及びE4から選択されるアデノウイルス遺伝子の1つ又は複数等)の完全除去を含むように改変されたために複製不能となったアデノウイルスを指す。本発明の組換えチンパンジーアデノウイルスベクターは好ましくは複製欠損である。
【0035】
「同一性」又は「同一な」という用語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はタンパク質の配列との関連では、最大一致でアラインメントした場合に2つの配列中の残基数が同一であることを指す。具体的には、2つの配列の配列同一度(percent sequence identity)は、核酸配列であるか又はアミノ酸配列であるかを問わず、アラインメントした2つの配列間の完全な一致の数を短い方の配列の長さで除し、100を乗じたものである。2つの配列をアラインメントするために使用することのできるアラインメントツールは当業者に既知であり、例えばワールドワイドウェブ、例えばClustalW(www.ebi.ac.uk/clustalw)又はAlign(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.html)上で得ることができる。2つの配列間のアラインメントは標準的な設定、AlignについてはEMBOSS::needle、好ましくはMatrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を用いて実行することができる。満足のいくアラインメントを得るには、いずれかの配列にギャップを挿入する必要があり得ることが、当業者には理解される。2つのポリペプチド間の「最良の配列アラインメント」は、最大数のアラインメントした同一残基をもたらすアラインメントとして定義される。
【0036】
アデノウイルス
アデノウイルス(Ad)は、幾つかの鳥類及び哺乳類の宿主において同定された非エンベロープ正20面体ウイルスである。ヒトアデノウイルス(hAd)は、既知の全てのヒトAd及び動物(例えばウシ、ブタ、イヌ、マウス、ウマ、サル及びヒツジ)起源の多くのAdを含むマストアデノウイルス属に属する。ヒトアデノウイルスは概して、ラット赤血球及びアカゲザル赤血球の血球凝集特性、DNA相同性、制限酵素切断パターン、G+C含有率並びに発癌性を含む多数の生物学的、化学的、免疫学的及び構造的基準に基づいて、6つの亜群(A〜F)に分けられる(Straus, 1984, The Adenoviruses中, ed. H.Ginsberg, pps. 451-498, New York: PlenusPress、及びHorwitz, 1990; Virology中, eds. B. N. Fields and D.M. Knipe, pps. 1679-1721)。
【0037】
アデノウイルスビリオンは正20面体対称性を有し、その直径は血清型に応じて60nm〜90nmである。正20面体カプシドは、ヘキソン(II)、ペントンベース(III)及び突出した(knobbed)ファイバー(IV)タンパク質という3つの主要タンパク質から構成される(W.C. Russel, J. Gen.Virol.,81: 2573-2604 (2000))。ヒトにおいて観察される既存の免疫の一態様は体液性免疫であり、アデノウイルスタンパク質に特異的な抗体の産生及び存続をもたらし得る。アデノウイルスによって引き起こされる体液性応答は、主に3つの主要構造タンパク質:ヘキソン、ペントン及びファイバーに向けられる。
【0038】
これまでに51個の異なるヒトアデノウイルス血清型が認識され、それらの血球凝集特性、並びに生物物理学的及び生化学的基準に基づいて亜群に分類されている。公表された報告によって、複数の血清型に対する抗体を含む力価が一般的であり(Dambrosio, E.(1982) J. Hyg. (London) 89: 209-219)、力価の大部分が中和活性を有することが確立されている。
【0039】
先述のように、組換えアデノウイルスは遺伝子療法において、また、ワクチンとして有用である。チンパンジーアデノウイルスベースのウイルスベクターは、遺伝子ワクチンの開発のためのヒト由来Adベクターの使用に代わるものである(Farina SF, J Virol. 2001 Dec; 75(23): 11603-13.、Fattori E, Gene Ther. 2006 Jul; 13(14): 1088-96)。チンパンジーから単離したアデノウイルスは、ヒト起源の細胞におけるそれらの効率的な増殖によって実証されるように、ヒトから単離したアデノウイルスと近縁関係にある。しかしながら、ヒト及びチンパンジーのアデノウイルスは近縁であるために、この2つのウイルス種間の血清学的交差反応性が予想され得る。
【0040】
この仮説はチンパンジーアデノウイルスを単離し、特性化することで確認された。それでもなお、チンパンジーに由来するアデノウイルス分離株は、共通するヒトアデノウイルスエピトープの血清型との交差反応性の低減を示した。したがって、チンパンジーアデノウイルス(本明細書中でナミチンパンジー(common chimpanzee)アデノウイルスについては「ChAd」、ボノボチンパンジーアデノウイルスについては「PanAd」とも略記される)は、共通するヒトアデノウイルスの血清型に対するヒトの既存の免疫に関連した有害作用を低減することの基礎をもたらす。しかしながら、これまでに単離されたチンパンジーアデノウイルスに対して、低度から中程度の中和力価がヒト血清サブセットにおいて検出され、したがってチンパンジーアデノウイルスの既知の全ての血清型は、依存としてヒト血清によって或る程度中和される。
【0041】
本発明は、新規のチンパンジーアデノウイルス株、すなわちナミチンパンジー(Pan troglodytes)から単離されるChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、並びにボノボ(Pan paniscus)から単離されるPanAd1、PanAd2及びPanAd3を単離することができたという予想外の発見を含む。これら新規の株は全て、ヒトにおいて測定可能な血清陽性率を示さない。すなわち、これらのアデノウイルス株は、試験した全てのヒト血清が中和抗体の存在について完全に陰性であったという点で、これまでに記載されたチンパンジーアデノウイルスの中で例外的なものである。この文脈で中和抗体とは、アデノウイルスのエピトープに結合し、それが宿主細胞において増殖感染を生じるのを防ぐか、又は形質導入遺伝子を発現する複製欠損ベクターによる標的細胞への形質導入を防ぐ(例えば、アデノウイルスDNAは宿主細胞に侵入することが可能である)抗体を指す。従来技術の全てのチンパンジー由来アデノウイルスについて中和抗体が観察されたが、新規のアデノウイルス型ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及びPanAd3は、ヒトにおいてこれらのアデノウイルス型に対する既存の中和抗体が完全に存在しないことを特徴とする。したがって、これらのアデノウイルスによって、例えば免疫化及び/又は遺伝子療法に使用することのできる有益な医学的ツールが提供される。
【0042】
下記でさらに詳述するように、本発明は一態様において、最も表面露出したアデノウイルスエピトープを示すアデノウイルスカプシドタンパク質、すなわちヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質の新規の配列を提供する。既に述べたように、本発明によるウイルスに特異的な中和抗体はヒト血清中に含まれない。したがって、上述した新規のチンパンジーヘキソン、ペントン及びファイバータンパク質配列の利点の1つは、これらのタンパク質の配列を、例えば医療目的で改変された従来技術のアデノウイルスを増強するために使用することができるということである。例えば、本発明のカプシドタンパク質又はその機能的断片は、例えば主要構造カプシドタンパク質又はその機能的断片の1つ又は複数を、それぞれ異なるアデノウイルス、例えば従来技術のアデノウイルスのものに置き換え/置換して、ヒトにおける血清陽性率が低減した、改良された組換えアデノウイルスを得るために使用することができる。本発明の新規のアデノウイルスは(記載のように再設計したアデノウイルスも)、投与した場合にヒトにおいて有意な抑制性免疫応答を生じることがなく、それらの全体的な導入効率及び感染性は増強される。そのため、このように改良されたアデノウイルスは、宿主細胞への侵入及び抗原カセットの発現が中和抗体の任意の有意な力価によって妨げられないため、例えばより効果的なワクチンであることが予想される。加えて、実施例において示されるように、HIV gagに対する強力な免疫応答がChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2又はPanAd3分離株のヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質を含む組換えHIV−gagコードアデノウイルスをワクチン接種した未処置(naive)マウスにおいても引き起こされた。ChAd55−gag、ChAd73−gag、ChAd83−gag、ChAd146−gag、ChAd147−gag、PanAd1−gag、PanAd2−gag及びPanAd3−gagアデノウイルスによって引き起こされた免疫応答は、HIV gagタンパク質を発現する従来技術の組換えヒトAd5ベクターをベースとしてこれまでに開発された最も強力なベクターを用いて観察された応答に匹敵する(図5A、図5B、図5C中のELIspotアッセイのデータを参照されたい)。
【0043】
先に述べたように、アデノウイルスによって引き起こされる体液性応答は、主に3つの主要アデノウイルス構造タンパク質:ヘキソン、ペントン及びファイバー(これらは全てアデノウイルスカプシドの一部であり、ウイルス粒子の外部に露出したポリペプチド配列を含む)に向けられる(Madisch I, et al.,J. Virol. 2005 Dec; 79(24): 15265-76、及びMadisch I, et al.,J Virol. 2007 Aug; 81(15): 8270-81、及びPichla-Gollon SL,et al., J. Virol. 2007 Feb; 81(4): 1680-9も参照されたい)。
【0044】
図1に示した多重配列アラインメントにおいて示されるように、本発明のPanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147群の新規のアデノウイルス分離株は、非常によく似たヘキソンタンパク質配列を有する。このアラインメントにおいては、ビリオンの外側に位置し、その表面の大部分を覆うヘキソン分子の最上部にあるループ中に生じる超可変領域(HVR)も標識される(Jophn J. Rux et. Al, J. of Virology, Sept 2003, vol. 77, no.17を参照されたい)。新規のチンパンジーアデノウイルスのさらなるカプシドタンパク質ファイバー及びペントンの配列関連性が、それぞれ図2及び図3中に提示される。3つ全ての構造カプシドタンパク質が低い血清陽性率に寄与することが予想され、したがってアデノウイルスと既存の中和抗体との親和性を抑制するため、例えば血清陽性率の低減した組換えキメラアデノウイルスを製造するために相互に独立して、又は組み合わせて使用することができる。
【0045】
それゆえ、第1の態様では、本発明は、アデノウイルスファイバータンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれか、すなわち、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号50、又は配列番号53に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれか、すなわち、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号50、又は配列番号53に記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び配列番号53のいずれか、すなわち、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号50、又は配列番号53のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0046】
「アデノウイルスファイバータンパク質」とは、アデノウイルス中に含まれる突出したファイバー(IV)タンパク質を意味する。好ましい実施形態では、本発明の第1の態様及び下記に記載されるその好ましい実施形態に含まれる単離ポリヌクレオチドは、ファイバータンパク質、又は感染性アデノウイルスビリオンにおいてファイバータンパク質若しくはその断片と同じ機能を有するその機能的誘導体をコードする。したがって、上記ファイバー又は機能的ファイバー誘導体を好ましくはカプシドタンパク質として含む組換えアデノウイルスは、宿主細胞に侵入することが可能である。組換えアデノウイルスが宿主細胞に侵入することができるか否かは、容易に決定することができる。例えば、宿主細胞をアデノウイルスと接触させた後、組換え宿主細胞を洗浄して溶解し、例えばアデノウイルスRNA及び/又はDNAに特異的な適切なハイブリダイゼーションプローブを用いて、アデノウイルスRNA及び/又はDNAが宿主細胞中に見られるか否かを決定することができる。代替的又は付加的には、宿主細胞を組換えアデノウイルスと接触させた後、洗浄して溶解し、例えばウエスタンブロットを用いてアデノウイルス特異的抗体によって調べてもよい。さらに別の代替形態では、例えばin vivoで、宿主細胞において遺伝子産物を発現するのに好適な発現カセットを含む組換えアデノウイルスを感染させた際に、宿主細胞が遺伝子産物、例えば蛍光タンパク質を発現するか否かを観察する。
【0047】
ファイバータンパク質及びその機能的誘導体が、アデノウイルスペントンタンパク質(配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び/又は配列番号55等)に対して親和性を有することがさらに好ましい。タンパク質間親和性を試験する方法は当業者には十分理解される。第1のタンパク質が第2のタンパク質(チンパンジー由来アデノウイルスのペントンタンパク質等)に結合することが可能であるか否かを決定するためには、例えば遺伝学的な酵母ツーハイブリッド法、又はプルダウン法、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)ベースのアッセイ若しくはプラズモン共鳴アッセイ等の生化学的アッセイを使用することができる。プルダウン法又はプラズモン共鳴アッセイを用いる場合、生化学の技術分野でよく知られているように、タンパク質の少なくとも1つをHISタグ、GSTタグ等のアフィニティータグと融合させることが有用である。そのグリコシル化形態のアデノウイルスファイバータンパク質は、さらに三量化することが可能である。したがって、本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドによってコードされるファイバータンパク質又はその断片が、グリコシル化する及び/又は三量体を形成することが可能であることも好ましい。
【0048】
本願全体を通して使用される場合、タンパク質又はポリペプチドの「機能的誘導体」という表現は概して、修飾型のタンパク質又はポリペプチド(例えばタンパク質又はポリペプチドの1つ又は複数のアミノ酸が欠失、挿入、修飾及び/又は置換され得る)を指す。誘導体は、上記でも言及したように、そのカプシド中にこの誘導体を含むキメラアデノウイルスが宿主細胞に感染することが可能な場合、機能的である。さらに、「機能的誘導体」との関連では、挿入とは元のポリペプチド又はタンパク質への1つ又は複数のアミノ酸の挿入を指す。機能的誘導体が1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個又は100個を超えるアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸)を含まないことが好ましい。別の実施形態では、タンパク質又はポリペプチドの全アミノ酸の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%又は20%以下(最も好ましくは5%以下)しか変化しない(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸である)ことが好ましい。タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸は、修飾、例えば化学修飾されていてもよい。例えば、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸の側鎖又は遊離アミノ末端若しくはカルボキシ末端は、例えばグリコシル化、アミド化、リン酸化、ユビキチン化等によって修飾されていてもよい。当該技術分野でよく知られているように、化学修飾をin vivo、例えば宿主細胞中で行ってもよい。例えば、タンパク質のアミノ酸配列中に存在する好適な化学修飾モチーフ、例えばグリコシル化配列モチーフによってタンパク質をグリコシル化する。誘導体における置換は保存的置換であっても又は非保存的置換であってもよいが、保存的置換が好ましい。幾つかの実施形態では、天然アミノ酸と非天然アミノ酸との交換も置換に含まれる。保存的置換には、アミノ酸を置換されるアミノ酸によく似た化学的性質を有する別のアミノ酸に置換することが含まれる。好ましくは、保存的置換は以下のものからなる群から選択される置換である:
(i)別の異なる塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換;
(ii)別の異なる酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換;
(iii)別の異なる芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換;
(iv)別の異なる非極性脂肪族アミノ酸による非極性脂肪族アミノ酸の置換;及び
(v)別の異なる極性非荷電アミノ酸による極性非荷電アミノ酸の置換。
【0049】
塩基性アミノ酸は好ましくはアルギニン、ヒスチジン及びリシンからなる群から選択される。酸性アミノ酸は好ましくはアスパラギン酸又はグルタミン酸である。芳香族アミノ酸は好ましくはフェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択される。非極性脂肪族アミノ酸は好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン及びイソロイシンからなる群から選択される。極性非荷電アミノ酸は好ましくはセリン、トレオニン、システイン、プロリン、アスパラギン及びグルタミンからなる群から選択される。保存的アミノ酸置換に対して、非保存的アミノ酸置換は、上記で概説される保存的置換(i)〜(v)に該当しない或るアミノ酸と任意のアミノ酸との交換である。
【0050】
機能的誘導体が欠失を含む場合には、誘導体において、参照ポリペプチド又はタンパク質配列中に存在する1つ又は幾つかのアミノ酸が除去されている。しかしながら、欠失は、誘導体が含むアミノ酸が全体で200個未満になるほど広範囲ではない。
【0051】
配列同一性を決定する手段は既に上記に記載している。加えて、2つの配列間の同一度は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877の数学アルゴリズムを用いることによっても決定することができる。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.(1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のBLASTNプログラム及びBLASTPプログラムにも組み込まれている。BLASTN及びBLASTPを利用する場合、これらのプログラムのデフォルトのパラメータを使用することが好ましい。
【0052】
先に述べたように、アデノウイルスヘキソンタンパク質の超可変ドメインはアデノウイルスの外部に露出している。そのため中和抗体は、アデノウイルスカプシドのこれらの領域を認識し、結合することができる。したがって、本発明の新規のアデノウイルス分離株の1つに由来するヘキソンタンパク質を含むカプシドを有するアデノウイルスは、ヒトにおける血清陽性率が改善されている、すなわちより低くなっている。それゆえ、第2の態様では、本発明は、アデノウイルスヘキソンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれか、すなわち、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号51、又は配列番号54に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれか、すなわち、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号51、又は配列番号54に記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号20〜配列番号25、配列番号51及び配列番号54のいずれか、すなわち、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号51、又は配列番号54のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%又は少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99.95%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明の第2の態様及び下記に記載されるその好ましい実施形態に含まれる単離ポリヌクレオチドは、ヘキソンタンパク質、又は感染性アデノウイルスビリオンにおいてヘキソンタンパク質若しくはその断片と同じ機能を有するその機能的誘導体をコードする。したがって、上記ヘキソン又は機能的ヘキソンー誘導体を好ましくはカプシドタンパク質として含む組換えアデノウイルスは、宿主細胞に侵入することが可能である。ヘキソンタンパク質の機能的誘導体を生成するのに好適な方法の1つが、米国特許第5,922,315号(参照により援用される)に記載されている。この方法では、アデノウイルスヘキソンの少なくとも1つのループ領域を、別のアデノウイルス血清型の少なくとも1つのループ領域に変更する。例えば、本発明のヘキソンタンパク質のループ領域を用いて、従来技術のアデノウイルスの対応するヘキソンループを置換して、改良されたハイブリッドアデノウイルスを生成することができる。同様に(Analogously)、本発明のペントンタンパク質及びファイバータンパク質の誘導体も生成することができる。
【0054】
第3の態様では、本発明は、アデノウイルスペントンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれか、すなわち、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号52、又は配列番号55に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれか、すなわち、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号52、又は配列番号55に記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、上記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号26〜配列番号31、配列番号52及び配列番号55のいずれか、すなわち、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号52、又は配列番号55のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【0055】
ペントンタンパク質及びその機能的誘導体が、アデノウイルスファイバータンパク質(配列番号14〜配列番号19、配列番号50及び/又は配列番号53等)に対する親和性を有することが好ましい。上記に記載されるように、タンパク質間親和性を試験する方法は当業者には十分理解される。「アデノウイルスペントンタンパク質」とは、アデノウイルス中に含まれるペントンベース(III)タンパク質を意味する。アデノウイルスペントンタンパク質は、正20面体対称のカプシドの角に局在することを特徴とする。先述のように、本発明の第1、第2及び/又は第3の態様並びに本明細書中で下記に記載されるその好ましい実施形態のポリヌクレオチドの好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは1つ又は複数のポリペプチドをコードし、上記1つ又は複数のポリペプチドを好ましくはカプシドタンパク質(複数可)として含む組換えアデノウイルスは、宿主細胞に感染する、すなわち侵入することが可能である。
【0056】
以下で、本発明の第1、第2及び第3の態様の好ましい実施形態を、本明細書中で開示される新規のチンパンジーアデノウイルス分離株の各々について明記する。
【0057】
アデノウイルスChAd55
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号14のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0058】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号20に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号20のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する。
【0059】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号26に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号26のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99.9%同一なアミノ酸配列を有する。
【0060】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0061】
アデノウイルスChAd73
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号15のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%若しくは少なくとも99.9%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.9%同一なアミノ酸配列を有する。
【0062】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号21のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する。
【0063】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号27のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0064】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0065】
アデノウイルスChAd83
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号16のアミノ酸配列を有する。
【0066】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号22のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する。
【0067】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号28のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0068】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号65からなる配列、又は配列番号65からなるが、配列番号65のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号65のゲノム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好ましくは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む。
【0069】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号65に示されるChAd83ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0070】
アデノウイルスChAd146
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号17のアミノ酸配列を有する。
【0071】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号23のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する。
【0072】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号29に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号29のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0073】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0074】
アデノウイルスChAd147
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号18に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号18のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0075】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号24のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する。
【0076】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号30に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号30のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくと98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0077】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えばAd5ゲノムを参照として用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0078】
アデノウイルスPanAd1
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号19のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0079】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号25のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0080】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号31に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号31のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0081】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号13からなる配列、又は配列番号13からなるが、配列番号13のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号13のゲノム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好ましくは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む。
【0082】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号13に示されるPanAd1ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0083】
アデノウイルスPanAd2
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号50に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号50のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0084】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号51に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号51のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0085】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号52に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号52のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0086】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号62からなる配列、又は配列番号62からなるが、配列番号62のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号62のゲノム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好ましくは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む。
【0087】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号62に示されるPanAd1ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0088】
アデノウイルスPanAd3
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号53に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスファイバータンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号53のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0089】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号54に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号54のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは少なくとも99.95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0090】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号55に記載のアミノ酸配列を有するアデノウイルスペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードし、機能的誘導体は(i)1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個若しくは100個を超える、好ましくは10個を超える欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含まないか、又は(ii)配列番号55のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する。
【0091】
最も好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号63からなる配列、又は配列番号63からなるが、配列番号63のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4のいずれかを欠いている、最も好ましくは配列番号63のゲノム領域E1、E3及びE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%同一な、最も好ましくは少なくとも99%又は100%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む。
【0092】
さらなる態様では、本発明は第1の、第2の、第3の、第1及び第2の、第1及び第3の、第2及び第3の、又は第1、第2及び第3の態様を含むポリヌクレオチドに関する。この又はこれらのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、例えば配列番号63に示されるPanAd1ゲノムを用いた場合に、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバー遺伝子に隣接する他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを含むことが好ましい。ポリヌクレオチドが、アデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列も含むことが好ましい。
【0093】
組換えアデノウイルスでは、本発明の第1、第2及び第3の態様、及び本明細書中に開示されるそれぞれの好ましい実施形態によるファイバータンパク質、ヘキソンタンパク質及びペントンタンパク質は各々、個々に上記組換えアデノウイルスと、ヒト及び/又は齧歯類の中和抗体との相互作用の低減に寄与する。したがって、上記本発明のファイバータンパク質、ヘキソンタンパク質及び/又はペントンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、増強された組換えアデノウイルスを構築するのに有用である。したがって、さらなる第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、本発明の第2の態様及び本発明の第3の態様によるポリヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの群から選択される、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは3つの単離ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。したがって、最も好ましくは第4の態様は、本発明の第1、第2及び第3の態様を含む単離ポリヌクレオチドである。好ましい実施形態では、本発明の第4の態様によるポリヌクレオチドは:
(i)本発明の第1、第2又は第3の態様による1つのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(ii)本発明の第1の態様によるポリヌクレオチド及び本発明の第2の態様によるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(iii)本発明の第1の態様によるポリヌクレオチド及び本発明の第3の態様によるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;
(iv)本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド及び本発明の第3の態様によるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;並びに
(v)本発明の第1、第2及び第3の態様によるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドであり、
(i)〜(v)によるポリヌクレオチド中に含まれる上記ポリヌクレオチドが、同じアデノウイルス分離株から選択される、例えばファイバータンパク質、ヘキソンタンパク質及びペントンタンパク質又はその機能的誘導体をそれぞれコードする3つ全てのポリヌクレオチドが、以下のアデノウイルスのうち1つのみに由来することが好ましい:ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2又はPanAd3。さらに、本発明の第4の態様又はその好ましい実施形態において、例えば上記に概説されるように、各々の「機能的誘導体」が、10個、5個又は3個を超えるアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸)を含まないことが好ましい。
【0094】
下記表2では、上記で概説される本発明の第4の態様のポリヌクレオチドの多数の特に好ましい実施形態を挙げている。表2中に示されるポリヌクレオチドA1〜AF1から選択されるポリヌクレオチドが好ましく、この場合、ポリヌクレオチドは本発明の第1、第2及び第3の態様の代替形態(c)による3つのポリヌクレオチドを含み、その各々がアデノウイルスファイバー、ヘキソン及びペントンタンパク質又はその機能的誘導体をそれぞれコードする。下記表2に、上記3つのコードされるタンパク質の各々が、その全長にわたって、同様に表2中に示される配列番号に記載のアミノ酸配列に対して有する必要のある最小配列同一性(すなわち、少なくとも表示の配列同一性)を示す:
【0095】
【表2】

【0096】
例えば、上記表1中に示されるような好ましいポリヌクレオチドA1は以下のものを含む:
(i)配列番号14と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(ii)配列番号20と、その全長にわたって少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(iii)配列番号26と、その全長にわたって少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0097】
上記で言及したように、表2に挙げられるポリヌクレオチドの上記「機能的誘導体」が、10個を超えるアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸)を含まないことが最も好ましい。
【0098】
下記表3には、本発明の第4の態様のポリヌクレオチドのさらに好ましい実施形態を挙げている。表3から選択されるポリヌクレオチドA2〜J2から選択されるポリヌクレオチドが好ましく、この場合、ポリヌクレオチドは「ポリヌクレオチド1」、「ポリヌクレオチド2」及び「ポリヌクレオチド3」と表される3つのポリヌクレオチドを含み、それぞれのポリヌクレオチドは各々、その全長にわたって、表3中に示される配列番号に記載の対応するポリヌクレオチドに対して少なくとも表示の配列同一性を有する:
【0099】
【表3】

【0100】
したがって、例としては、上記表3の好ましい実施形態A2(「A2−ChAd55」)は以下のものを含むポリヌクレオチドである:
(i)配列番号32と、その全長にわたって少なくとも98%同一なポリヌクレオチド;
(ii)配列番号38と、その全長にわたって少なくとも98%同一なポリヌクレオチド;及び
(iii)配列番号44と、その全長にわたって少なくとも98%同一なポリヌクレオチド。
【0101】
下記表4には、上記で概説される本発明の第4の態様のポリヌクレオチドの多数のさらなる特に好ましい実施形態を挙げている。表4中に示されるポリヌクレオチドA3〜H3から選択されるポリヌクレオチドが好ましく、この場合、ポリヌクレオチドは表示の配列番号に記載のアデノウイルスファイバー、ヘキソン及びペントンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、3つ全てのタンパク質及び/又はコードされる機能的誘導体は合計して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個以下、又は100個を超える、好ましくは20個以下の欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含む:
【0102】
【表4】

【0103】
本発明の第4の態様のポリヌクレオチドの別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、表4中に示されるそれぞれの配列番号に記載の同じ株のアデノウイルスファイバー及びヘキソンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードする。本発明の第4の態様のポリヌクレオチドのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、表4中に示されるそれぞれの配列番号に記載の同じ株のアデノウイルスファイバー及びペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードする。本発明の第4の態様のポリヌクレオチドのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、表4中に示されるそれぞれの配列番号に記載の同じ株のアデノウイルスヘキソン及びペントンタンパク質、又はその機能的誘導体をコードする。この文脈では、上記機能的誘導体は各々の場合において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個未満、最も好ましくは3個未満の欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸を含む。
【0104】
本発明の第4の態様のさらに好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、(i)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つからなる配列、又は(ii)ゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及び/又はE4 ORF1の1つ又は複数を欠いている配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つからなる配列と、その全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%又は100%、好ましくは98%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む。したがって、上述した1つ又は複数のゲノム領域は、好ましくはアラインメントにおいて同一度を決定する際に考慮されない。本発明の単離ポリヌクレオチドの別の好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65を含むか、又はそれらからなり、この場合、ゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1の1つ又は複数が、配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のそれぞれから欠失しているか、又は本明細書中で記載されるような異種タンパク質をコードする形質導入遺伝子若しくは発現カセットで置換されている。最も好ましい実施形態では、アデノウイルス領域E1、E3及び/又はE4は、実施例2においても例示されるように欠失している。表示のゲノム領域の1つ又は複数を欠いている上述の好ましいポリヌクレオチドは、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、又は異種タンパク質をコードするかかるポリヌクレオチド配列を含む発現カセットをさらに含んでいてもよい。異種タンパク質をコードする上記ポリヌクレオチド配列、及び異種タンパク質をコードするかかるポリヌクレオチド配列を含む上記発現カセットは、当該技術分野でよく知られ、下記実施例においても記載されるように、例えば本発明のポリヌクレオチドの欠失領域に挿入されていてもよい。上記異種タンパク質は、本明細書中で記載されるような標的細胞への送達のための分子、例えば抗原タンパク質若しくはその断片、好ましくはHIV gagタンパク質等の病原体の抗原タンパク質若しくは断片、腫瘍抗原、又は実施例で記載されるように単純ヘルペスウイルスのタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり得る。したがって、好ましい実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチドは、ウイルス抗原、病原性細菌の抗原及び腫瘍抗原からなる群から選択される抗原をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。一実施形態では、上記異種タンパク質はしたがって、RNAウイルス抗原、病原性細菌の抗原及び腫瘍抗原からなる群から選択される抗原であってもよい。抗原とは、哺乳動物において免疫応答を引き起こすことが可能な任意のタンパク質又はペプチドを指す。抗原は、好ましくは少なくとも8個のアミノ酸、最も好ましくは8個〜12個のアミノ酸を含む。したがって、配列同一性を決定する際には、ゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4は好ましくはアラインメントにおいて考慮されない。すなわち、アラインメントは、配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65の全配列からなるが、ゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、及び/又は異種ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチド、若しくはかかるポリヌクレオチドを含む発現カセットを除外した配列を用いて行われる。上記でも言及されるように、本発明の第4の態様及びその全ての好ましい実施形態によるポリヌクレオチドは、機能的ヘキソン、ペントン及び/又はファイバーカプシドタンパク質、又はその機能的誘導体をコードする(例えば、コードされるタンパク質が、感染性アデノウイルスビリオンにおいてそれぞれのカプシドタンパク質又はその断片と同じ機能を有する)ことが好ましい。したがって、そのカプシド内に上記コードされる組換えペントン、ヘキソン及び/又はファイバータンパク質、又はその機能的誘導体を含む組換えアデノウイルスは、宿主細胞に侵入することが可能である。本発明による、又は本発明のポリヌクレオチドによってコードされるカプシドタンパク質又はその機能的誘導体は、ヒトにおいて血清陽性率を有しないことがさらに好ましい。
【0105】
本発明は、本発明による単離ポリヌクレオチドによって単離タンパク質、すなわち本発明の第1、第2及び/又は第3の態様による単離ポリヌクレオチド又はその機能的誘導体によってコードされる単離アデノウイルスカプシドポリペプチドをさらに提供する。この文脈においては、「機能的誘導体」は一実施形態では、5個、10個又は25個以下のアミノ酸変化(すなわち欠失、挿入、修飾及び/又は置換されたアミノ酸)を含む。
【0106】
本発明は、本発明による単離ポリヌクレオチドを含むベクターにさらに関する。
【0107】
好ましくは、ベクターはE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4からなるゲノム領域の群から選択されるゲノム領域に遺伝子を含まない、及び/又はE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4の群から選択されるゲノム領域の少なくとも1つの遺伝子を含み、この場合、上記少なくとも1つの遺伝子は、少なくとも1つの遺伝子を非機能的にする欠失及び/又は突然変異を含む。これらの遺伝子産物の1つを非機能的にする可能性の1つは、1つ又は複数の人工停止コドン(例えばTAA)をこれらの遺伝子内のオープンリーディングフレームに導入することである。ウイルスを複製欠損にする方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Brody et al, 1994 Ann NY Acad Sci., 716:90-101を参照されたい)。
【0108】
幾つかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のヘキソンタンパク質;ペントンタンパク質;ファイバータンパク質;ヘキソンタンパク質及びペントンタンパク質;ヘキソンタンパク質及びファイバータンパク質;ペントンタンパク質及びファイバータンパク質;又はヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、さらなるアデノウイルスポリヌクレオチドをさらに含む。このため、好ましい一実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチドは、以下のものの少なくとも1つを含む:
(a)アデノウイルス5’逆方向末端反復(ITR);
(b)アデノウイルスE1a領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から選択されるその断片;
(c)アデノウイルスE1b領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域からなる群の中から選択されるその断片;
(d)アデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びIVa2領域からなる群の中から選択されるその断片;
(e)アデノウイルスL1領域、又は28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノタンパク質、52/55kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(f)アデノウイルスL2領域、又は本発明のペントンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むL2領域、又はペントンタンパク質若しくは本発明のペントンタンパク質、VIIタンパク質、Vタンパク質及びMuタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(g)アデノウイルスL3領域、又は本発明のヘキソンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むL3領域、又はVIタンパク質、ヘキソンタンパク質若しくは本発明のヘキソンタンパク質、及びエンドプロテアーゼからなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(h)アデノウイルスE2a領域;
(i)アデノウイルスL4領域、又は100kDタンパク質、33kDホモログ及びVIIIタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(j)アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9からなる群から選択されるその断片;
(k)アデノウイルスL5領域、又は本発明のファイバータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むL5領域、ファイバータンパク質又は本発明のファイバータンパク質をコードするその断片;
(l)アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群から選択されるその断片;特に、上記E4領域のORF6、及び/又は
(m)アデノウイルス3’−ITR。
【0109】
上述したポリヌクレオチドの幾つかの実施形態では、上記でも記載したように、好ましくはポリヌクレオチドが上記に概説されるゲノム領域のORF(例えば、実施例2において規定されるような領域E3及び/又はE4等)を含まない、及び/又は少なくとも1つの遺伝子を非機能的にする欠失及び/又は突然変異を含むアデノウイルス遺伝子を含むことが望ましい場合がある。これらの好ましい実施形態では、好適なアデノウイルス領域は上述した遺伝子(複数可)を含まないように、又は選択された遺伝子(複数可)を非機能的にするように修飾される。任意のアデノウイルス遺伝子の欠失は、本明細書中で記載されるようなミニ遺伝子カセット等の形質導入遺伝子を挿入する空間を作り出す。さらに、当該技術分野でよく知られているように、遺伝子の欠失を用いて、パッケージング細胞株又はヘルパーウイルスを使用しない限り複製することが不可能なアデノウイルスベクターを生成することができる。したがって、特定の遺伝子/領域の欠失又は機能喪失突然変異の1つ又は複数を含む、上記に概説されるポリヌクレオチドを含む最終的な組換えアデノウイルスは、例えば遺伝子療法又はワクチン接種に対してより安全な組換えアデノウイルスを提供することができる。
【0110】
特に好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは以下のものの少なくとも1つを含む:
(a)配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つの5’−逆方向末端反復(ITR)領域;
(b)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスE1a領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から選択されるその断片;
(c)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスE1b領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域からなる群の中から選択されるその断片;
(d)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びIVa2領域からなる群の中から選択されるその断片;
(e)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスL1領域、又は28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノタンパク質、52/55kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(f)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスL2領域、又は配列番号31、配列番号52若しくは配列番号55のアミノ酸配列を有するペントンタンパク質、VIIタンパク質、Vタンパク質及びMuタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(g)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスL3領域、又はVIタンパク質、配列番号25、配列番号51若しくは配列番号54のアミノ酸配列を有するヘキソンタンパク質、及びエンドプロテアーゼからなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(h)配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスE2a領域;
(i)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスL4領域、又は100kDタンパク質、33kDホモログ及びVIIIタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(j)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9からなる群から選択されるその断片;
(k)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスL5領域、又は配列番号19、配列番号50若しくは配列番号53のアミノ酸配列を有するファイバータンパク質をコードするその断片;
(l)配列番号13、配列番号62、配列番号63若しくは配列番号65のいずれか1つのアデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群から選択されるその断片、又はAd5 E4領域のORF6(配列番号64);並びに
(m)配列番号13、配列番号62、配列番号63又は配列番号65のいずれか1つの3’−ITR。
【0111】
一実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、以下のアデノウイルスタンパク質の1つ又は複数、好ましくは全てをさらにコードする:VIタンパク質、VIIIタンパク質、IXタンパク質、IIIaタンパク質及びIVa2タンパク質。好ましくは、これらのタンパク質は、本明細書中で開示されるPanAd1、PanAd2又はPanAd3ゲノム配列のそれぞれのオープンリーディングフレームによって(by from)コードされる。上記で明記したアデノウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを決定する方法は、組換えアデノウイルスの技術分野の当業者には十分理解される。当業者はアデノウイルスゲノムの構造も知っており、過度の負担なく、本明細書中で概説される個々のアデノウイルス領域及びORFを、例えば本発明の新規のアデノウイルスゲノムPanAd1、PanAd2又はPanAd3のいずれかにマッピングすることができる。
【0112】
本発明の1つ又は複数のアデノウイルスタンパク質をコードするポリヌクレオチド、好ましくはcDNAを発現させるために、上記ポリヌクレオチドを、転写を指示する強いプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、及び翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含有する発現ベクターにサブクローニングすることができる。好適な細菌プロモーターは当該技術分野で既知であり(例えば大腸菌、バシラス属及びサルモネラ)、かかる発現系のためのキットは市販されている。同様に、哺乳動物細胞、酵母及び昆虫細胞用の真核細胞発現系が当該技術分野で既知であり、これも市販されている。
【0113】
プロモーターに加えて、発現ベクターは典型的には、宿主細胞におけるアデノウイルスタンパク質をコードする核酸の発現に必要とされるさらなる要素の全てを含有する転写ユニット又は発現カセットを含有する。典型的な発現カセットはしたがって、アデノウイルスタンパク質/ポリペプチドをコードする核酸配列に操作可能に連結したプロモーター、及び転写産物の効率的なポリアデニル化に必要とされるシグナル、リボソーム結合部位、及び翻訳終止コドンを含有する。カセットのさらなる要素としては、例えばエンハンサーを挙げることができる。発現カセットは、効率的な終結をもたらすために構造遺伝子の下流に転写終結領域も含有しなくてはならない。終結領域はプロモーター配列と同じ遺伝子から得ても、又は異なる遺伝子から得てもよい。
【0114】
遺伝子情報を細胞へと輸送するのに使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核細胞又は原核細胞における発現に使用される従来のベクターをいずれも使用することができる。標準的な細菌発現ベクターとしては、pBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23D等のプラスミド、並びにGST及びLacZ等の融合発現系が挙げられるが、効果的に採用することのできる、当該技術分野で当業者に既知のさらに多くの細菌発現ベクターが存在する。
【0115】
真核細胞ウイルスに由来する調節要素を含有する発現ベクターは、典型的には真核細胞発現ベクター、例えばSV40ベクター、乳頭腫ウイルスベクター、及びエプスタインバーウイルスに由来するベクター中で使用される。他の例示的な真核細胞ベクターとしては、pMSG、pAV009/A、pMTO10/A、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、pcDNA3.1、pIRES、及び例えばHCMV前初期プロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核細胞における発現に効果的であることが示される他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0116】
幾つかの発現系は、チミジンキナーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、及びジヒドロ葉酸レダクターゼ等の遺伝子増幅をもたらすマーカーを有する。代替的には、遺伝子増幅を伴わない高収率発現系も好適である。
【0117】
同様に発現ベクター中に含まれ得る要素としては、大腸菌において機能するレプリコン、組換えプラスミドを保有する細菌の選択を可能にする薬剤耐性マーカーをコードする遺伝子、及び真核細胞配列の挿入を可能にするプラスミドの非必須領域中の特有の制限部位が挙げられる。選択される特定の薬剤耐性遺伝子は重要ではなく、当該技術分野で既知の多くの薬剤耐性遺伝子のいずれも好適である。必要に応じて、原核細胞配列が任意で、真核細胞におけるDNAの複製を干渉しないよう選択される。
【0118】
標準的なトランスフェクション方法を、細菌細胞株、哺乳動物細胞株、酵母細胞株又は昆虫細胞株を作製するために使用することができる。外来ポリヌクレオチド配列を宿主細胞に導入する既知の手順をいずれも使用することができる。例えば、市販のリポソームベースのトランスフェクションキット(Lipofectamine(商標)(Invitrogen)等)、市販の脂質ベースのトランスフェクションキット(Fugene(Roche Diagnostics)等)、ポリエチレングリコールベースのトランスフェクションキット、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃(バイオリスティック)、エレクトロポレーション又はウイルス感染、及びクローニングしたゲノムDNA、cDNA、合成DNA若しくは他の外来遺伝子物質を宿主細胞に導入する他の既知の方法のいずれかが使用され得る。使用される特定の遺伝子工学手順は、少なくとも1つの遺伝子を、受容体を発現することが可能な宿主細胞に首尾よく導入することが可能であればよい。
【0119】
発現されたアデノウイルスタンパク質を、任意で標準的な技法を用いて精製することができる。例えば、沈殿工程及びクロマトグラフィー工程(その内容及び順序は回収される特定の組換え物質によって異なる)を行う前に、細胞を機械的に又は浸透圧衝撃によって溶解してもよい。代替的には、タンパク質発現の技術分野で既知のように、組換えタンパク質を分泌させて、組換え細胞を培養した培養培地から回収してもよい。
【0120】
好ましい一実施形態では、本発明のベクターはプラスミドベクター、例えば発現ベクターである。本発明によるプラスミドベクターも、組換えアデノウイルスの作製に使用することができる。
【0121】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による単離ポリヌクレオチド及び/又は少なくとも1つの本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチドを含む組換えアデノウイルス、好ましくは複製不全アデノウイルスである。好ましくは、本発明の組換えアデノウイルスは、本発明のヘキソンタンパク質、ファイバータンパク質及びペントンタンパク質、例えば上記表2中で概説されるような組み合わせを含む。好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスはヒト細胞に感染することが可能であること、好ましくは先にチンパンジーアデノウイルスに曝露していないヒトに由来するヒト血清中で、上記アデノウイルスを1時間インキュベートした後にヒト細胞に感染することが可能であることを特徴とする。
【0122】
本発明の新規のヘキソンタンパク質、ペントンタンパク質及びファイバータンパク質の配列情報を提示するが、上記組換えアデノウイルスは、例えば通常のアデノウイルスタンパク質から構成されるが、少なくとも1つの本発明による単離アデノウイルスカプシドポリペプチド又はその機能的誘導体を含むカプシドを有する組換えアデノウイルスを構築することによって得ることができる。この点で、組換えアデノウイルスが、本発明のペントンタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むL2領域、本発明のヘキソンタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むL3領域、及び/又は本発明のファイバータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むL5領域を含むことが好ましい。最も好ましくは、上記組換えアデノウイルスは、少なくとも本発明のペントンタンパク質、ヘキソンタンパク質及びファイバータンパク質をそれぞれコードするL2領域、L3領域及びL5領域を含む。
【0123】
組換えアデノウイルスを構築する方法は当該技術分野で既知である。組換えアデノウイルスの作製に有用な技法は、例えばGraham & Prevec, 1991 Methods inMolecular Biology: Gene Transfer and Expression Protocols, (Ed. Murray, EJ.),p. 109、及びHitt et al., 1997 "Human Adenovirus Vectors for Gene Transfer intoMammalian Cells" Advances in Pharmacology 40: 137-206に概説されている。さらなる方法は国際公開第2006/086284号に記載されている。複製欠損アデノウイルスの作製については、E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4遺伝子産物の1つ又は幾つかを、それらのウイルスは、例えば上述した遺伝子産物のうち1つを欠いているため、複製不全である組換えアデノウイルスの増殖及びレスキューに使用することのできる補完細胞株において発現させてもよい。かかる細胞株の使用は上記で概説される参照文献にも記載されている。
【0124】
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチド(又は本明細書中に記載される上記本発明のポリヌクレオチドを含むベクター)は、組換えアデノウイルス粒子を作製するために使用される。組換えアデノウイルスは好ましくは、例えばE1a領域又はE1b領域等の1つ又は複数のアデノウイルス領域において上記で言及したように機能的に欠失しており、任意で他の突然変異、例えば他のアデノウイルス遺伝子での温度感受性突然変異又は欠失を有する。他の実施形態では、組換えアデノウイルスにおいて無傷のE1a領域及び/又はE1b領域を保持することが望ましい。このような無傷E1領域は、アデノウイルスゲノムにおけるその固有の位置に位置していても、又は固有のアデノウイルスゲノムの欠失部位(例えばE3領域)に置かれてもよい。
【0125】
宿主、例えばヒト(又は他の哺乳動物)細胞への遺伝子の送達のためのアデノウイルスベクターの構築においては、様々なアデノウイルス核酸配列を本発明のベクターにおいて採用することができる。例えば、アデノウイルス後初期(delayed early)遺伝子E3の全部又は一部を、組換えウイルスの一部を形成するアデノウイルス配列から取り除いてもよい。サルE3の機能は、組換えウイルス粒子の機能及び作製とは無関係であると考えられる。幾つかの実施形態では、少なくともE4遺伝子のORF6領域、より望ましくはこの領域の機能が余分であることから、全E4領域の欠失を有するアデノウイルスベクターも構築することができる。本発明のさらに別のベクターは、後初期遺伝子E2aにおいて欠失を有する。欠失は、サルアデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1〜L5のいずれにおいても作り出すことができる。同様に、中期遺伝子IX及びIVa2における欠失は幾つかの目的にとって有用であり得る。他の欠失を他の構造又は非構造アデノウイルス遺伝子において作り出してもよい。上記で論考した欠失は個々に使用することができる。すなわち、本発明に使用されるアデノウイルス配列は単一の領域にのみ欠失を含有し得る。代替的には、それらの生物活性を破壊するのに効果的な全遺伝子又はその一部分の欠失を任意の組み合わせで使用してもよい。例えば、本発明によるベクターの一例においては、アデノウイルス配列はE1領域及びE4領域、又はE1領域、E2a領域及びE3領域、又はE1領域及びE3領域、又はE3の欠失の有無を問わず、E1領域、E2a領域及びE4領域の欠失等を有し得る。上記で論考したように、かかる欠失を温度感受性突然変異等の他のアデノウイルス遺伝子突然変異と組み合わせて用いて、所望の結果を達成することができる。
【0126】
任意の必須アデノウイルス配列(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、E4 ORF6、L1又はL4から選択される領域)を欠いているアデノウイルスベクターを、アデノウイルス粒子のウイルス感染及び増殖に必要とされる失われたアデノウイルス遺伝子の産物の存在下で培養することができる。これらのヘルパー機能は、アデノウイルスベクターを、1つ又は複数のヘルパー構築物(例えば、プラスミド又はウイルス)又はパッケージング宿主細胞(上記でも記載した補完細胞株)の存在下で培養することによってもたらされ得る。例えば、本明細書中に含まれる実施例、及び1996年5月9日付けで公開された国際公開第96/13597号(参照により本明細書中に援用される)において「最小の」ヒトアデノウイルスベクターの作製について記載された技法を参照されたい。
【0127】
有用なヘルパーウイルスは、本発明のアデノウイルスベクターの好ましい実施形態において欠失した、及び/又はベクターをトランスフェクトするパッケージング細胞株によって発現されないそれぞれの遺伝子を補完する、選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含有する。一実施形態では、ヘルパーウイルスは複製欠損であり、上記で記載した配列に加えて様々なアデノウイルス遺伝子を含有する。
【0128】
ヘルパーウイルスは、Wu et al, J. Biol. Chem., 264: 16985-16987 (1989)、K. J. Fisher and J. M. Wilson, Biochem.J., 299: 49 (April 1, 1994)に記載されるように、ポリカチオン複合体に形成してもよい。ヘルパーウイルスは任意で第2のレポーターミニ遺伝子を含有し得る。多くのかかるレポーター遺伝子が当該技術分野で既知である。ヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子(アデノウイルスベクター上の形質導入遺伝子とは異なる)の存在によって、Adベクター及びヘルパーウイルスの両方を独立してモニタリングすることが可能となる。この第2のレポーターは、得られる組換えウイルスとヘルパーウイルスとを精製の際に分離することを容易にするために使用され得る。
【0129】
本明細書中の好ましい実施形態との関連で記載される遺伝子のいずれかにおいて欠失した組換えアデノウイルス(Ad)を生成するには、欠失した遺伝子領域の機能を、ウイルスの複製及び感染性に必須である場合に、ヘルパーウイルス又は細胞株、すなわち補完細胞株又はパッケージング細胞株によって組換えウイルスに与えることが好ましい。多くの場合、ヒトE1を発現する細胞株を用いて、組換えアデノウイルスを生成するのに使用されるベクターをトランス補完する(transcomplement)ことができる。このことは、本発明のポリヌクレオチド配列及び現在利用可能なパッケージング細胞に見られるヒトアデノウイルスE1配列の間の多様性のために、現在のヒトE1含有細胞の使用によって、複製及び産生プロセスにおいて複製可能アデノウイルスの生成が妨げられるため、特に有利である。しかしながら、或る特定の状況では、E1を欠失した組換えアデノウイルスの作製のためにE1遺伝子産物を発現する細胞株を利用することが望ましい。
【0130】
所望に応じて、本明細書中で提示される配列を、選択された親細胞株(例えばHeLa細胞等)における発現のためのプロモーターの転写調節下で、最低でもChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2又はPanAd3アデノウイルスに由来するアデノウイルスE1遺伝子を発現するパッケージング細胞又は細胞株を生成するために利用してもよい。誘導性プロモーター又は構成的プロモーターをこの目的で採用することができる。プロモーターの例は、例えば本明細書中に記載される実施例において提示される。かかるE1発現細胞株は、組換えアデノウイルスE1欠失ベクターの生成において有用である。付加的又は代替的には、本発明は、組換えアデノウイルスベクターの生成に使用されるものと基本的に同じ手順を用いて構築することのできる、1つ又は複数のアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1b、E2a及び/又はE4 ORF6、好ましくはAd5 E4 ORF6(下記実施例も参照されたい)を発現する細胞株を提供する。かかる細胞株は、これらの産物をコードする必須遺伝子において欠失したアデノウイルスベクターをトランス補完するか、又はヘルパー依存ウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)のパッケージングに必要とされるヘルパー機能をもたらすために利用することができる。
【0131】
概して、例えばミニ遺伝子を含む本発明のベクターをトランスフェクションによって送達する場合、ベクターは、約1×10個〜約1×10個の細胞、好ましくは約1×10個の細胞につき約0.1μg〜約100μgのDNA、好ましくは約10μg〜約50μgのDNAという量で送達される。しかしながら、宿主細胞に対するベクターDNAの相対量は、選択されたベクター、送達方法及び選択された宿主細胞といった因子を考慮して調整され得る。宿主細胞へのベクターの導入は、トランスフェクション及び感染を含む当該技術分野で既知であるか、又は本明細書中で開示される任意の手段によって、例えばCaPOトランスフェクション又はエレクトロポレーションを用いて達成することができる。
【0132】
所望のミニ遺伝子含有組換えアデノウイルスの構築及び組み立てについては、一例では当該技術分野でよく知られているように、ベクターをヘルパーウイルスの存在下で、パッケージング細胞株にin vitroでトランスフェクトして、ヘルパー配列とベクター配列との間で相同組換えを起こし、それによりベクターにおいてアデノウイルス−導入遺伝子配列を複製させ、ビリオンカプシド内にパッケージングさせて、組換えウイルスベクター粒子を得ることができる。本発明の組換えアデノウイルスは、例えば選択された形質導入遺伝子を選択された宿主細胞内に移入するのに有用である。
【0133】
本発明のアデノウイルスの好ましい実施形態では、アデノウイルスはヒト被験体において5%未満の血清陽性率を有し、好ましくはヒト被験体において血清陽性率を有さず、最も好ましくは先にチンパンジーアデノウイルスと接触させていないヒト被験体において血清陽性率を有しない。この文脈では、ヒト被験体はヨーロッパ人、アフリカの先住民、アジア人、アメリカの先住民及びオセアニアの先住民から選択される民族集団に属することが好ましい。ヒト被験体の民族起源を特定する方法は、当該技術分野に含まれる(例えば、国際公開第2003/102236号を参照されたい)。
【0134】
本発明による組換えアデノウイルスのさらに好ましい実施形態では、アデノウイルスDNAは、哺乳動物標的細胞に侵入することが可能である、すなわち感染性である。本発明の感染性組換えアデノウイルスは、下記でも記載されるように、ワクチンとして、また、遺伝子療法に使用することができる。したがって、別の実施形態では、組換えアデノウイルスが標的細胞への送達のための分子を含むことが好ましい。好ましくは、標的細胞は哺乳動物細胞、例えばチンパンジー細胞、齧歯類細胞又はヒト細胞である。例えば、標的細胞への送達のための分子は、本明細書中で定義される発現カセットであり得る。発現カセットをアデノウイルスのゲノムに導入する方法は、当該技術分野で既知である(例えば、上記で提示される文献引用を参照されたい)。一例では、例えばミニ遺伝子又はアンチジーンをコードする発現カセットを含む本発明の組換えアデノウイルスは、E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4から選択されるアデノウイルスのゲノム領域を上記発現カセットに置き換えることによって生成することができる。本発明のアデノウイルスのゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4は、ヒトAd5に由来するもののような既知のアデノウイルスゲノム及び注釈されたアデノウイルスゲノムとのアラインメントによって容易に同定することができる(Birgitt Tauber and Thomas Dobner, Oncogene (2001) 20, p. 7847-7854、及び同様にAndrew J. Davison, et al., "Genetic content and evolution ofadenoviruses", Journal of General Virology (2003), 84, p. 2895-2908を参照されたい)。標的細胞への送達のための分子を含む改変アデノウイルスを生成する方法の非限定的な例は、下記の実施例1及び実施例2並びに図4にも提示される。
【0135】
標的細胞への送達のための分子は好ましくはポリヌクレオチドであるが、好ましくは治療活性又は診断活性を有するポリペプチド又は小分子化合物(small chemical compound)であってもよい。特に好ましい一実施形態では、標的細胞への送達のための分子は、アデノウイルス5’逆方向末端反復配列(ITR)、遺伝子(例えば配列番号1)及び3’ITRを含むポリヌクレオチドである。組換えアデノウイルスが、例えばパッケージング細胞株内で産生された場合に、カプシドが分子を取り囲み、パッケージングすることができるような分子の分子サイズを選択する必要があることは当業者には明らかである。したがって、遺伝子は、例えば7000個まで、最大で8000個までの塩基対を有し得るミニ遺伝子であるのが好ましい。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明による組換えアデノウイルスに含まれる標的細胞への送達のための分子は、抗原タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドである。抗原タンパク質又はその断片は、哺乳動物において免疫応答を引き起こすことが可能であり、特に好ましい実施形態では、実施例に示されるように、配列番号1に記載のポリヌクレオチドによってコードされるHIVのgagタンパク質であり得る。
【0137】
特に好ましい実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、ECACC(European Collection of Cell Culture,Porton Down,Salisbury,SP4 OJG,UK)に寄託された、08110601(ChAd83)、08110602(ChAd73)、08110603(ChAd55)、08110604(ChAd147)及び08110605(ChAd146)からなる群から選択される受託番号を有するアデノウイルスである。上述したアデノウイルス株(ラテン名:Mastadenovirus, Adenoviridae)の寄託は、2008年11月6日付けでOkairos AG(Elisabethenstr. 3,4051 Basel,Switzerland)によって行われた。
【0138】
これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に従って維持される。これらの寄託は、単に当業者の便宜を図るために行ったものであり、米国特許法第112条に基づいて寄託が必要とされることを認めるものではない。米国特許法施行規則1.808条(b)項に明記される要件を除いて、寄託されている材料の公衆への提供可能性に関する制限は全て、特許が付与されたとき、取消不能の条件で撤回される。
【0139】
本発明の組換えアデノウイルスの別の好ましい実施形態は、08110601(ChAd83)、08110602(ChAd73)、08110603(ChAd55)、08110604(ChAd147)及び08110605(ChAd146)からなる群から選択されるアデノウイルスに由来するアデノウイルスである。好ましくは、上述の寄託されたアデノウイルスの1つに由来するアデノウイルスは、そのゲノムに機能的欠失、欠失又は修飾を導入することによって、例えば複製不全アデノウイルス及び/又は宿主細胞において形質導入遺伝子を発現することが可能なアデノウイルスが得られるように変更されている。例えば、E1A遺伝子、E1B遺伝子、E2A遺伝子、E2B遺伝子、E3遺伝子及びE4遺伝子からなる群から選択される1つ又は複数の遺伝子は欠失させる、非機能的にする、及び/又は上記に概説される発現カセットと置き換えることができる。さらに、別のアデノウイルスの1つ又は複数の遺伝子を、好ましくは欠失した遺伝子に導入してもよい。寄託された株にこれらのゲノム変化を導入する方法は、当業者には十分理解される。この点において、寄託された株の好ましい修飾形態である、標的細胞への送達のための分子を含む修飾アデノウイルスを生成する方法は上記で記載した。
【0140】
さらなる態様では、免疫学的アジュバント及び以下の(i)〜(iv)の少なくとも1つを含む組成物が提供される:
(i)本発明による単離タンパク質;
(ii)本発明による単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス;及び、
任意で、薬学的に許容可能な賦形剤。
【0141】
アジュバントを含む本発明による組成物は、例えばヒト被験体に対するワクチンとして使用することができる。本明細書中で簡潔に「アジュバント」とも称される免疫学的アジュバントは、抗原単独での投与と比較して、抗原/免疫原に対する免疫応答を加速し、延長し、及び/又はその質及び/又は強度を増強し、したがって、所与の任意のワクチンに必要とされる抗原/免疫原の量、及び/又は対象の抗原/免疫原に対する適切な免疫応答を生じさせるのに必要とされる注射の頻度を低減する。
【0142】
本発明による組成物との関連で使用され得るアジュバントの例は、水酸化アルミニウムのゲル状沈殿(水酸化アルミニウムゲル(alum));AlPO;アルハイドロゲル;グラム陰性菌の外膜に由来する細菌産物、特にモノホスホリルリピドA(MPLA)、リポ多糖類(LPS)、ムラミルジペプチド及びその誘導体;フロイント不完全アジュバント;リポソーム、特に中性リポソーム、組成物及び任意でサイトカインを含有するリポソーム;非イオン性ブロック共重合体;ISCOMATRIXアジュバント(Drane et al., 2007);CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)、特にホスホロチオエート(PTO)骨格(CpG PTO ODN)又はホスホジエステル(PO)骨格(CpG PO ODN)を有するCpG ODNを含む非メチル化DNA;合成リポペプチド誘導体、特にPamCys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;二本鎖RNA及びその合成誘導体、特にPoly I:poly C;ポリカチオン性ペプチド、特にポリ−L−アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM−CSF、インターロイキン−(IL−)2、IL−6、IL−7、IL−18、I型及びII型インターフェロン、特にインターフェロン−γ、TNF−α;25−ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);及び合成オリゴペプチド、特にMHCII提示ペプチドである。POE−POP−POEブロック共重合体等といったポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)を含有する非イオン性ブロック共重合体を、アジュバントとして使用することができる(Newman et al., 1998)。このタイプのアジュバントは活性成分として核酸を含む組成物に特に有用である。
【0143】
任意で、様々な薬学的に許容可能な賦形剤を使用してもよい。好ましい薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明による使用を論考する際に下記で言及される。
【0144】
特異的受容体の活性化は免疫応答を刺激し得る。かかる受容体は当業者に既知であり、例えばサイトカイン受容体、特にI型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体;並びに転写因子として作用するビタミンD受容体;並びにToll様受容体1(TLR1)、TLR−2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR−6、TLR7及びTLR9が挙げられる。かかる受容体に対する作動薬はアジュバント活性を有する、すなわち免疫賦活性である。好ましい実施形態では、本発明の組成物のアジュバントは、1つ又は複数のToll様受容体作動薬であり得る。より好ましい実施形態では、アジュバントはToll様受容体4作動薬である。特定の好ましい実施形態では、アジュバントはToll様受容体9作動薬であり、好ましくはヌクレオチドtccatgacgttcctgacgtt(配列番号2)によってコードされる。
【0145】
さらなる態様では、本発明は、以下のものの少なくとも1つを含む細胞、好ましくは非サル細胞を提供する:
(i)本発明による単離タンパク質;
(ii)本発明による単離ポリヌクレオチド;
(iii)本発明によるベクター;
(iv)本発明による組換えアデノウイルス。
【0146】
細胞は、大腸菌細胞等の細菌細胞、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)若しくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母細胞、植物細胞、SF9細胞若しくはHi5細胞等の昆虫細胞、又は哺乳動物細胞から選択され得る。哺乳動物細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞、HELA細胞、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHuh7.5)、Hep G2ヒト肝細胞癌細胞、Hep 3Bヒト肝細胞癌細胞等である。
【0147】
細胞が、(ii)に記載の単離ポリヌクレオチドを含む場合、このポリヌクレオチドは、(i)それ自体が自由に分散するか、又は(ii)宿主細胞ゲノム又はミトコンドリアDNAに組み込まれて細胞中に存在し得る。
【0148】
さらなる好ましい実施形態では、細胞は好ましくは293細胞、又はPER.C6(商標)である、E1a、E1b、E2a、E2b、E4、L1、L2、L3、L4及びL5からなる群から選択されるアデノウイルス遺伝子を少なくとも1つ発現する宿主細胞である。
【0149】
疾患の療法又は予防法への、本発明による単離ポリペプチド、本発明による単離タンパク質、本発明によるベクター、本発明による組換えアデノウイルス、及び/又は本発明による組成物の使用も提供される。
【0150】
アデノウイルスベクターはワクチンベクターとしての大きな可能性が実証されている。前臨床研究及び臨床研究から、ベクター設計、確実な抗原発現及びこの系を用いた予防免疫の実現可能性が実証されている。したがって、好ましい実施形態は、療法又は予防法が、例えばヒト被験体に対するワクチン接種である本発明による使用である。アデノウイルスをワクチン接種に対して使用及び作製する方法の詳細な指示は、当該技術分野に含まれ、当業者に既知の十分な文献に提示されている。
【0151】
使用がワクチン接種である場合、本発明の組換えアデノウイルスは、好ましくは1×10個〜1×1011個のウイルス粒子(すなわち1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×1010個、2.5×1010個又は5×1010個の粒子)という免疫学的及び/又は予防的に効果的な用量で投与することができる。さらに、ブーストを必要とするワクチン接種については、上記で定義される「異種プライム−ブースト」方法を適用することが好ましい。さらに、本発明による単離ポリヌクレオチド、本発明による単離タンパク質、本発明によるベクター、本発明による組換えアデノウイルス及び/又は本発明による医薬組成物をワクチン中で用いる場合、ワクチンがアジュバントを含むことが好ましい。好ましい免疫学的アジュバントは本明細書中で言及されており、かかるワクチン中で使用することができる。
【0152】
本発明によるポリヌクレオチド又は組換えアデノウイルスタンパク質又はそれらの断片を用いて作製される組換えアデノウイルスは、ポリヌクレオチド、例えばDNAを宿主細胞に形質導入するために使用することができる。したがって、好ましくは感染性、すなわち宿主細胞に侵入することが可能ではあるが複製欠損のアデノウイルスを、任意の特別なタンパク質又はポリペプチドを宿主細胞において発現させるために作製することができる。したがって、好ましい実施形態では、本発明による使用において挙げられる療法は遺伝子療法である。本発明による単離ポリヌクレオチド、単離タンパク質、ベクター、組換えアデノウイルス及び/又は医薬組成物を遺伝子療法に使用し、治療を受ける被験体に投与する場合、治療によって患者の1つ又は複数の細胞がトランスフェクトされる、すなわち形質導入されるように十分に大きな用量で投与することが好ましい。本発明による組換えアデノウイルス及び/又は医薬組成物は、本明細書中で開示される好ましい投与手段のいずれかによって投与される場合、好ましくは1×10個〜5×1011個のウイルス粒子(すなわち1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×1010個、2.5×1010個、5×1010個、1×1011個、又は最も好ましくは5×1011個の粒子)という効果的な用量で投与することが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の組換えアデノウイルス中に含まれる好ましくは異種のポリヌクレオチドは、被験体の宿主細胞においてタンパク質又はポリペプチドを発現させることが可能であり、この場合、タンパク質又はポリペプチドが、上記宿主細胞からのタンパク質又はポリペプチドの分泌をもたらすシグナルペプチドを含む。例えば、或る特定のタンパク質を必要とする患者は、分泌可能な形態のそのタンパク質をコードするcDNAを含む本発明のアデノウイルスを用いて治療することができる。
【0153】
本発明の使用のさらなる実施形態では、本発明による単離ポリヌクレオチド、単離タンパク質、ベクター、アデノウイルス及び/又は医薬組成物(以下で本発明による医薬品と称される)は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な希釈剤;担体;増量剤、結合剤、滑剤、流動促進剤、崩壊剤及び吸着剤を含む賦形剤;及び/又は防腐剤をさらに含むように配合される。
【0154】
本発明による医薬品は、経口投与、直腸投与、胃内(intragastrical)投与、及び非経口投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、皮内投与、皮下投与、及び同様の投与経路を含む既知の様々な経路によって投与することができる。非経口投与、筋肉内投与及び静脈内投与が好ましい。好ましくは、本発明による医薬品はシロップ剤、注入液又は注射液、錠剤、カプセル、キャプレット、舐剤、リポソーム、坐薬、硬膏、バンドエイド、徐放性カプセル、粉末剤又は徐放製剤として調剤される。好ましくは、希釈剤は水、緩衝液、緩衝塩溶液又は塩溶液であり、担体は好ましくはカカオバター及びビテベソールからなる群から選択される。
【0155】
本発明の使用における本発明による医薬品の投与に特に好ましい医薬品形態は、注射用途(injectable use)に好適な形態であり、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。典型的には、かかる溶液又は分散液は、例えば水緩衝水溶液、例えば生体適合性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオール、それらの好適な混合物、界面活性剤又は植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。
【0156】
注入液又は注射液の調製は、抗菌剤又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸又はチメロサールのような防腐剤の添加が挙げられるが、これに限定されない、当該技術分野において承認されている様々な技法によって達成することができる。さらに、糖又は塩、特に塩化ナトリウム等の等張剤を注入液又は注射液に加えてもよい。
【0157】
本発明の好ましい希釈剤は、水、生理学的に(physiological)許容可能な緩衝液、生理学的に許容可能な緩衝塩溶液又は塩溶液である。好ましい担体はカカオバター及びビテベソールである。様々な医薬品形態の本発明による医薬品と共に使用することのできる賦形剤は、以下の非限定的なリストから選択することができる:
a)ラクトース、マンニトール、結晶性ソルビトール、リン酸水素二カリウム(dibasic phosphates)、リン酸カルシウム、糖類、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;
b)ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化植物油、ロイシン、グリセリド及びフマル酸ステアリルナトリウム等の滑剤;
c)デンプン、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の崩壊剤。
【0158】
他の好適な賦形剤は、米国薬剤師会により出版された医薬品添加物ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)(参照により本明細書中に援用される)に見ることができる。
【0159】
一定量の本発明による医薬品が疾患の療法又は予防法に好ましい。しかしながら、疾患の重症度、疾患の種類、及び治療を受けるそれぞれの患者(例えば患者の全身健康状態等)に応じて、異なる用量の本発明による医薬品が治療効果又は予防効果を引き起こすのに必要とされることが理解される。適切な用量の決定は主治医の裁量による。
【0160】
本発明による医薬品が予防的に使用される場合、ワクチンとして調剤することができる。この場合、本発明による医薬品は、上記で概説される好ましい用量及び特に好ましい用量で投与するのが好ましい。好ましくは、ワクチンの投与は、ワクチン接種した被験体が、十分な抗体を本発明による医薬品に対して生成するまで、規定の期間にわたって少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は少なくとも10回繰り返し、それぞれの疾患を発症するリスクを減少させる。この場合の期間は通常、ワクチンの抗原性に応じて変化する。この期間は4週間、3ヶ月、6ヶ月又は3年間を超えないのが好ましい。一実施形態では、本発明によるアデノウイルスがワクチン接種を目的として使用される場合、ヘキソンタンパク質の超可変ドメインの少なくとも1つを、ワクチン接種が対象とするそれぞれの病因物質の免疫原性エピトープによって置き換えることができる。ワクチンは典型的には、上記に概説される1つ又は複数のアジュバントを含有する。ワクチン接種及びそれに関する方法の使用についての詳細な概要は、Bangari DS and Mittal SK (2006) Vaccine, 24(7), p. 849-862(Zhou D, et al., Expert Opin Biol Ther. 2006 Jan;6(1):63-72も参照されたい)、及びFolgori A, et al.,Nat Med. 2006 Feb;12(2):190-7(Draper SJ, et al., NatMed. 2008 Aug;14(8):819-21. Epub 2008 Jul 27も参照されたい)に提示されている。
【0161】
本発明の様々な変更形態及び変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、クレームされる本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるものではないことが理解されよう。実際に、関連分野の当業者に明らかな本発明を実施する記載の形態の様々な変更形態は、本発明に包含されることが意図される。
【実施例】
【0162】
実施例1:アデノウイルスの単離及び特性化
ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147は、欧州及び米国の様々な施設に収容された健常な動物から得られたチンパンジーアデノウイルスの群である。ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147には、ヒト血清との検出可能な反応性を有しないという性質がある。PanAd1、PanAd2及びPanAd3は、欧州及び米国の様々な施設に収容された健常なボノボ(Pan Paniscus)から単離した新たなアデノウイルスである。PanAd1、PanAd2及びPanAd3には、ヒト血清との検出可能な反応性を有しないという性質がある。
【0163】
ナミチンパンジー及びボノボのアデノウイルスストックを、最初の継代増幅の後に、96ウェルプレートに播種した293細胞に感染させることによってクローニングした。このウイルスクローニングは、最初の継代ウイルス増幅の後に得られる細胞溶解物の限界希釈によって行った。5つの単離したクローンを取り、連続的に増殖させた。3回〜4回の連続継代増幅の後、アデノウイルスの大規模調製を、5つの二層セルファクトリー(cell-facties)(NUNC)上に播種した(planted)細胞(1つのセルファクトリーにつき2億個の細胞)について行った。2回の塩化セシウム密度勾配超遠心分離工程によって、細胞溶解物から精製ウイルス粒子を得た。
【0164】
ゲノムDNAを、3×1012ppの精製ウイルス調製物から、1%SDS−TEN中でのプロテイナーゼK(0.5mg/ml)を用いた消化(55℃で2時間)によって単離した。フェノール・クロロホルム抽出及びエタノール沈殿の後、ゲノムDNAを水中に再懸濁し、ゲノムシークエンシングを行った。
【0165】
この新たな分離株の初期分類は、ヘキソン遺伝子の超可変領域7(HVR7)の配列分析によって得られた。この目的で、HVR7に隣接する高度に保存された領域について2つのプライマーを設計した:TGTCCTACCARCTCTTGCTTGA(配列番号3)及びGTGGAARGGCACGTAGCG(配列番号4)。HVR7を精製ウイルスDNA又は粗293溶解物を鋳型として用いたPCRによって増幅した後、シークエンシングした。分離株に関するより詳細な情報は、超可変領域1〜6をシークエンシングすることによって得た。HVR1〜HVR6を含有するDNA領域を、オリゴヌクレオチドHVR1−6fd、CAYGATGTGACCACCGACCG(配列番号5)及びHVR1-6rev、GTGTTYCTGTCYTGCAAGTC(配列番号6)を用いたPCRによって増幅した。HVRの配列分析に基づくと、新たな単離ウイルスは、ヒトAdウイルス分類(Horowitz, MS (1990), Adenoviridae and theirreplication. In Virology B.N. Fields and D.M. Knipe, eds (raven Press, New York) pp.1679-1740)の亜群E(ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147)と、亜群C(PanAd1、PanAd2及びPanAd3)とに分類された。
【0166】
ヒト及びチンパンジーのアデノウイルスヘキソンアミノ酸配列のアラインメントによって系統樹を得た。この結果は、Align Xプログラム(Informax, Inc)を用いることによる、ヘキソンHVR1〜HVR6及びHVR7に限局したヌクレオチド配列アラインメントに基づく初期分類と一致しており、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147分離株と、ヒトAd4(亜群E)との緊密な系統発生的関係が実証され、ボノボアデノウイルス分離株PanAd1、PanAd2及びPanAd3はヒトAd1、Ad2、Ad5、Ad6(亜群C)に関連している。
【0167】
実施例2:ベクター構築
PanAd1、PanAd2及びPanAd3、並びにChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147ウイルスゲノムを、下記に詳述する戦略に従ってプラスミドベクターにクローニングした。ベクターゲノムの全ての操作は、標準的な技法に従って大腸菌において行った。ベクター系は、ChAd及びPanAdの骨格からE1領域及びE3領域を欠失させることによって開発した。E1領域を、動物モデルにおける免疫学的効力の評価のために、ヒトCMV IEプロモーター及びBGHpAシグナル含有HCV非構造領域(HCV NS)及びHIV gag(配列番号1)遺伝子に基づく発現カセットに置換した。加えて、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子(SEAP)を発現するChAdベクター及びPanAdベクターを、中和アッセイのために構築した。ベクターを293細胞中で増殖させて、標準的なプロトコルに従ったCsCl勾配によって精製した。
【0168】
PanAd1、PanAd2及びPanAd3 ΔE1ベクターの構築は、下記に示す工程によって行った。
【0169】
I.PanAdシャトルベクターの構築
PanAd1ゲノムを使用して、PanAd1、PanAd2及びPanAd3の全ゲノムの相同組換えによるクローニングのためのシャトルベクターを構築した。簡潔に述べると、ボノボアデノウイルス1のクローニングに使用されるシャトルベクター(本明細書中でpBAd1RLD_EGFPと称される)を以下のように構築した:
PanAd1左端(nt 1〜nt 450)を、SpeI及びEcoRIで消化したオリゴヌクレオチド5’−ATCTGGAATTCGTTTAAACCATCATCAATAATATACCTTATTTTG−3’(配列番号7)及び5’−TCAGGAACTAGTTCCGTATACCTATAATAATAAAACGGAGACTTTG−3’(配列番号8)を用いたPCRによって増幅した後、pBAd1−Lを生成することによってHCMV−EGFP−bgh polyAカセットを既に含有するプラスミドベクターにライゲーションした。次いで、PanAd1右端(nt 37362〜nt 37772)を、オリゴヌクレオチド5’−TCCAGCGGCGCGCCAGACCCGAGTCTTACCAGGA−3’(配列番号9)及び5’−ATTCAGGATCCGAATTCGTTTAAACCATCATCAATAATATACCTTATTTTG−3’(配列番号10)を用いたPCRによって増幅し、pBAd1−Lにクローニングすることにより、プラスミドpBAd1−RLを作製した。
【0170】
続いて、pIXコード領域を含有するPanAd1 DNA断片(nt 3498〜nt 4039)を、オリゴヌクレオチド5’−TATTCTGCGATCGCTGAGGTGGGTGAGTGGGCG−3’(配列番号11)及び5’−TTACTGGCGCGCCTGCCTCGAGTAAACGGCATTTGCAGGAGAAG−3’(配列番号12)を用いたPCRによって増幅した後、pBAd1−RLにクローニングして、プラスミドpBAd1RLD EGFPシャトルを得た。分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)に対する発現カセット、HIV gag、HCV非構造領域(NS)遺伝子を含有するシャトルプラスミドも、pBAd1RLD EGFPシャトル中のEGFP遺伝子を置換することによって構築した。
【0171】
HIV gag HCV NS領域、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(Bgh polyA)をベースとするSEAP及びEGFP発現カセットを、Emini et al.の国際公開第03/031588号に記載されるように構築した。ウイルスDNAカセットは、両方のITRの末端のみに存在する制限酵素部位(PmeI)を含有し、プラスミドDNAからのウイルスDNAの放出が可能となるように設計した。
【0172】
II.ΔE1 PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターの構築
PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターを、大腸菌株BJ5183における相同組換えによって構築した。BJ5183細胞を、PanAd1、PanAd2及びPanAd3の精製ウイルスDNA及びpBAd1RLD−EGFP又はpBAd1RLD−Gagによって同時形質転換させた。pIX遺伝子、線状化pBAd1RLD−EGFP又はpBAd1RLD−Gagの末端に存在する右側のITR DNA配列、及びウイルスゲノムDNAの間の相同組換えでは、発現カセットにより置換されたE1領域を同時に欠失させることによってプラスミドベクターへのその挿入が可能となった。この戦略によって、EGFP又はHIV gag形質導入遺伝子を発現するプレアデノプラスミドpPanAd1、pPanAd2及びpPanAd3の構築が可能となった。次いで、SEAP又はHCV−NS発現カセットを、EGFP又はGag発現カセットを置き換えることによってpPanAd1、pPanAd2及びpPanAd3ベクターにクローニングした。
【0173】
III.E3領域の欠失
E3領域の欠失を、大腸菌におけるクローニング及び相同組換えの幾つかの工程を含む戦略を用いることによって、PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクター骨格に導入した。PanAd1 E3欠失は、ゲノムPanAd1配列のヌクレオチド28636からヌクレオチド32596までにわたり(配列番号13)、PanAd2 E3欠失は、ゲノムPanAd2配列のヌクレオチド28653からヌクレオチド32599までにわたり(配列番号62)、PanAd3 E3欠失は、ゲノムPanAd3配列のヌクレオチド28684からヌクレオチド32640までにわたる(配列番号63)。
【0174】
IV.E4領域の欠失
PanAd1、PanAd2及びPanAd3の固有のE4領域を欠失させ、Ad5 E4 ORF6コード配列(配列番号64)と置き換えた。PanAd1、PanAd2及びPanAd3骨格中に導入されたE4欠失の座標は以下である:
PanAd1 E4欠失は、ヌクレオチド34690から37369までにわたり(配列番号13);
PanAd2 E4欠失は、ヌクレオチド34696から37400までにわたり(配列番号62);
PanAd3 E4欠失は、ヌクレオチド34690から37369までにわたる(配列番号63)。
【0175】
欠失領域は全てのPanAd E4 orfを含有する一方で、E4固有のプロモーター及びポリアデニル化シグナルは欠失していなかった。
【0176】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(Bgh polyA)をベースとするHIV gag及びHCV NS領域発現カセットを、Emini et al.の国際公開第03/031588号に記載されるように構築し、HCMV及びBgh polyAのDNA配列間の相同性を利用した大腸菌株BJ5183における相同組換えによってPanAd1、PanAd2及びPanAd3 ΔE1 EGFPベクターに挿入した。
【0177】
V.ChAd55 DE1発現ベクターの構築及びレスキュー
ChAd55のクローニングのためのシャトルベクターの構築
ChAd55シャトルを、PanAdベクターについて上記で記載したものと同じ戦略に従うことによって構築した後、ChAd55ウイルスゲノムのクローニングに使用した。この目的で、ウイルスゲノムの右端及び左端を含有するシャトルベクターpARS ChAd55(ITR遺伝子からpIX遺伝子までの左端からE1領域を欠失させ、発現カセットで置換した)を、AscI制限酵素で線状化し、ChAd55精製ウイルスDNAと共に大腸菌株BJ5183に同時形質転換した。pIX遺伝子から、線状化pARS ChAd55及びChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147精製ウイルスゲノムDNAの末端に存在する右側のITRまでのDNA配列間の相同組換えによって、E1領域を同時に欠失させることによるプラスミドベクターへのそれらの挿入が可能となった。チンパンジーアデノウイルス55(ChAd55)ゲノムのクローニング戦略の図を図4に提示する。
【0178】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(Bgh polyA)をベースとする発現カセットを、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子、EGFP遺伝子、HIV gag遺伝子、HCV NS遺伝子を発現するように構築した。全ての発現カセットを、相同組換えによってΔE1アデノウイルスプレプラスミドに移動するようにpARS ChAd55ベクターの単一のSnaBI部位に挿入した。
【0179】
実施例3:免疫化実験
ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターの潜在的組換えワクチンとしての有効性を、マウスにおいてHIV gag形質導入遺伝子を発現するベクターを用いて評価した。ChAd55 gagのベクター効力を、並行して行った免疫化実験においてヒトAd5 gagと比較した。10匹の動物の群について、大腿四頭筋に10vp/マウスのベクター用量でAd5 gag又はChAd55 gagを注射した(図5A)。別個の実験においては、5匹の動物の群に、10vp/マウスのベクター用量でAd5 gag又はPanAd1 gag、PanAd2 gag及びPanAd3 gagを注射した(図5B)。ChAd73 gag、ChAd83 gag、ChAd146 gag及びChad147 gagの効力を、ChAd55 gagと並行して、5匹のマウスの群を10vp/マウスのベクター用量で免疫化することによって同様に決定した(図5C)。HIV gagに対して引き起こされる免疫応答を、脾細胞に対するインターフェロン−γ Elispotアッセイによって測定した。ヒトAd5 gagベクターと比較した、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、並びにPanAd1、PanAd2及びPanAd3を用いた免疫化実験の結果から、本発明の新規のアデノウイルスが、特異的免疫応答を引き起こす上で、従来技術の組換えアデノウイルスAd5と少なくとも同程度効果的であることが示される。
【0180】
実施例4:中和研究
ヒト血清におけるナミチンパンジーアデノウイルス55、73、83、146、147並びにボノボアデノウイルス1型、2型及び3型に対する中和抗体の陽性率を評価するために中和アッセイを行った。このアッセイによって、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子を運搬して、ヒト293細胞に形質導入するChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及びPanAd3の能力に対する血清プレインキュベーションの影響を評価した。中和力価は、血清の非存在下でウイルスを有する陽性対照において観察される、SEAP活性の50%の低減をもたらす血清の希釈率として定義される。各々の血清試料を様々な希釈率(18倍希釈から始め、4倍ずつ増加させて4608倍までの5つ)で試験した。試料を37℃で1時間プレインキュベートした後、96ウェルプレートに播種した293細胞(3×10細胞/ウェル)に添加した。ヒト血清パネルを中和活性について試験した。並行して、同じパネルをAd5、並びにチンパンジー及びボノボAd SEAPベクターについて試験した。結果を図6に提示する。この結果から、チンパンジーアデノウイルスに対する血清陽性率が、ヒトアデノウイルスAd5よりも低いことが示される。しかしながら、概して、既に記載されたChAd(CV−68)に対する中和抗体の存在を、被験体のサブセットにおいて検出することができる。対照的に、これまでに試験された全てのヒト血清は、ChAd55、並びにPanAd1、PanAd2及びPanAd3を非常に低い力価であっても中和することができなかった。同じことがChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147についても観察された。したがって、新規のアデノウイルス分離株ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、並びにPanAd1、PanAd2及びPanAd3は、一般的なヒトAd血清型(Ad5等)ベースのウイルスベクターの投与を制限する、既存の抗ヒトAd免疫の問題に対する理想的な解決策を示す。
【0181】
実施例5:Ad5ベクターと比較したPanAd1ベクター及びPanAd3ベクターの免疫化効率
PanAd1ベクター及びPanAd3ベクターの潜在的な組換えワクチンとしての有効性を、BALB/cマウスにおいて単純ヘルペスウイルス(HSV)抗原を発現するベクター及び癌抗原を発現するベクターを用いて評価した。HSV Ag及び癌Agを発現するPanAd1及びPanAd3のベクター効力を、ヒトAd5ベースの対応するベクターと比較した。
【0182】
抗ウイルス効力を評価するために、9つのBALB/cマウス群について、漸増用量(10vp/マウスから始めて10vp/マウスまで)のベクターを、PanAd1−HSV、PanAd3−HSV及びAd5−HSVと並行して大腿四頭筋に注射した(図7Aを参照されたい)。HSV抗原に対して引き起こされる免疫応答を、抗原の全アミノ酸配列を含むペプチドプールと共にインキュベートしたマウス脾細胞に対するインターフェロン−γ Elispotアッセイによって測定した。ヒトAd5ベクターと比較した、PanAd1、PanAd2及びPanAd3を用いた免疫化実験の結果を図7に報告するが、本発明の新規のアデノウイルスが試験した各々の濃度で、特異的免疫応答を引き起こす上で従来技術の組換えアデノウイルスAd5よりも効果的であることが示された。このことは、PanAd1ベクター及びPanAd3ベクターで免疫化したマウスにおいて観察される抗原特異的T細胞が、より高頻度であることによって明らかに実証される。
【0183】
PanAdベクターが抗腫瘍T細胞応答を引き起こす効率を、漸増用量(10vp/マウスから始めて10vp/マウスまで)のベクターを大腿四頭筋に注射することによってBALB/cマウスの群を免疫化することで評価した。2つのBALB/Cマウス群に、10vp/マウス及び10vp/マウスで腫瘍抗原を発現するAd5ベクターを注射した。並行して、3つのBALB/cマウス群を、同じ腫瘍抗原を運搬する10vp、10vp、10vpのPanAd1ベクター又はPanAd3ベクターで免疫化した。T細胞応答を、マッピングされたCD8エピトープを示す単一のペプチドを用いて、脾細胞に対するインターフェロン−γ Elispotアッセイによって測定した。図7Bに示される結果から、PanAdベクターで免疫化した動物群において、Ad5ベクターで免疫化した動物群と比較して、最も低いワクチン用量で応答する動物の頻度がより高く、抗原特異的T細胞の頻度がより高いことが実証される。
【0184】
実施例6:PanAdベクターでのカニクイザルの免疫化
3匹のカニクイザルの2つの群を、異種プライム/ブースト計画でCsCl精製PanAd1及びPanAd3を筋肉内注射することによって免疫化した。群1の各々の動物には10vpの用量、群2の動物には1010vpの用量のPanAd3 Gagベクターを、0週目に三角筋に注射した。次いで、13週目に両群の全ての動物を、1010vpのPanAd1 Gagの単回投与によってブーストした。
【0185】
IFN−γ ELISPOTアッセイによって種々の時点でCMIを測定した。このアッセイによって、HIV抗原特異的CD8+及びCD4+Tリンパ球応答が測定される。HIV Gagタンパク質のアミノ酸配列に基づくペプチドを、これらのアッセイに使用するために調製し、アデノウイルスベクターをワクチン接種したサルにおける免疫応答を測定した。個々のペプチドは、10個のアミノ酸によって相殺される重複する20merである。
【0186】
IFNγ−ELISPOTアッセイによって、抗原特異的Tリンパ球応答の定量的決定がもたらされる。PBMCを段階希釈し、抗アカゲザルIFN−γ抗体(MD−1,U-Cytech)をコーティングしたマイクロプレートのウェルに入れた。これをHIV Gagペプチドプールと共に20時間培養すると、前駆細胞の再刺激及びIFN−γの分泌が得られる。細胞を洗い流して、細胞が位置する集中領域において抗体コーティングウェルに結合した分泌IFNを残した。捕捉されたIFNは、ビオチン化抗アカゲザルIFN抗体(検出Ab、U-Cytech)、続いてアルカリフォスファターゼ結合ストレプトアビジン(Pharmingen,13043E)を用いて検出される。不溶性アルカリフォスファターゼ基質の添加によって、細胞が位置していた部位のウェルに暗いスポットが生じ、IFN−γを分泌したT細胞と同じ数のスポットが残る。
【0187】
ウェル当たりのスポットの数は、抗原特異的T細胞の前駆体頻度と直接関係する。γインターフェロンは最も一般的であり、活性化Tリンパ球によって合成及び分泌される最も豊富なサイトカインの1つであるため、このアッセイにおいて(特異的抗γインターフェロンモノクローナル抗体を用いて)可視化するサイトカインとして選択した。このアッセイについては、PBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)の数を、ペプチド抗原の存在下及び非存在下(媒体対照)で試料について決定する。1回目の投与後及び2回目の投与後の種々の時点で得られる、PBMCに対するカニクイザルによるデータを図8に示す。両方の投与の時点でPanAd3によってプライミングした全ての動物が、HIV Gagに対するT細胞応答を示し、2回目のPanAd1の注射によって効率的にブーストされ、ヘキソン、ペントン及びファイバーの配列アラインメントによって既に示唆されているように、PanAd1及びPanAd3が、異種プライム−ブースト免疫化計画において組み合わせることのできる異なる血清型であることが実証される。したがって、本発明の別の態様では、異種プライム−ブースト免疫化への本発明の2つの組換えアデノウイルスの使用が提供され、この場合、本発明の2つの組換えアデノウイルスは異なるアデノウイルス血清型、最も好ましくは本明細書中で記載されるPanAd1及びPanAd3である。
【0188】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルスファイバータンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチド:
(a)配列番号14〜19、50及び53のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号14〜19、50及び53のいずれかに記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、前記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号14〜19、50及び53のいずれかのアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項2】
アデノウイルスヘキソンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチド:
(a)配列番号20〜25、51及び54のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号20〜25、51及び54のいずれかに記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、前記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号20〜25、51及び54のいずれかのアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
アデノウイルスペントンタンパク質又はその機能的誘導体をコードし、かつ以下のものからなる群から選択される単離ポリヌクレオチド:
(a)配列番号26〜31、52及び55のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号26〜31、52及び55のいずれかに記載のポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、前記機能的誘導体が1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む、ポリヌクレオチド;並びに
(c)配列番号26〜31、52及び55のいずれかのアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有する機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチドを少なくとも1つ含むポリヌクレオチド。
【請求項5】
以下のものを少なくとも1つ含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド:
(a)アデノウイルス5’末端、好ましくはアデノウイルス5’逆方向末端反復;
(b)アデノウイルスE1a領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から選択されるその断片;
(c)アデノウイルスE1b領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域からなる群の中から選択されるその断片;
(d)アデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びIVa2領域からなる群の中から選択されるその断片;
(e)アデノウイルスL1領域、又は28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノタンパク質、52/55kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(f)アデノウイルスL2領域、又は請求項3に記載のペントンタンパク質、VIIタンパク質、Vタンパク質及びMuタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(g)アデノウイルスL3領域、又はVIタンパク質、請求項2に記載のヘキソンタンパク質及びエンドプロテアーゼからなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(h)アデノウイルスE2a領域;
(i)アデノウイルスL4領域、又は100kDタンパク質、33kDホモログ及びVIIIタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
(j)アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9からなる群から選択されるその断片;
(k)アデノウイルスL5領域、又は請求項1に記載のファイバータンパク質をコードするその断片;
(l)アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群から選択されるその断片;及び/又は
(m)アデノウイルス3’末端、好ましくはアデノウイルス3’逆方向末端反復。
【請求項6】
基本的に配列番号13、62、63若しくは65のいずれか1つからなる配列と、又は配列番号13、62、63若しくは65のいずれか1つからなるが、配列番号13、62、63若しくは65のゲノム領域E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4を欠いている配列と、その全長にわたって少なくとも90%同一なポリヌクレオチドからなるか、又はそれらを含む、請求項4に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド、又はその機能的誘導体によってコードされる単離アデノウイルスカプシドポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
ベクターがE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4からなるゲノム領域の群から選択されるゲノム領域に遺伝子を含まないか、及び/又はE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4の群から選択されるゲノム領域の少なくとも1つの遺伝子を含み、前記少なくとも1つの遺伝子が、該少なくとも1つの遺伝子を非機能的にする欠失及び/又は突然変異を含む、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド、及び/又は少なくとも1つの請求項7に記載の単離アデノウイルスカプシドポリペプチドを含む組換えアデノウイルス、好ましくは複製不全アデノウイルス。
【請求項11】
標的細胞への送達のための分子を含む、請求項10に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項12】
ヒト被験体における血清陽性率が5%未満であり、好ましくはヒト被験体において血清陽性率を有しない、請求項10又は11に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項13】
哺乳動物細胞に感染することが可能である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項14】
標的細胞への送達のための分子が、抗原タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項15】
寄託されており、08110601(ChAd83)、08110602(ChAd73)、08110603(ChAd55)、08110604(ChAd147)及び08110605(ChAd146)からなる群から選択される受託番号を有するアデノウイルスである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項16】
アジュバント及び以下の(i)〜(iv)の少なくとも1つを含む組成物:
(i)1つ又は複数の請求項7に記載の単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド;
(iii)請求項8又は9に記載のベクター;
(iv)請求項10〜15のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス;及び、
任意で、薬学的に許容可能な賦形剤。
【請求項17】
アジュバントが、I型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体、転写因子として作用するビタミンD受容体、並びにToll様受容体1(TLR1)、TLR−2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR−6、TLR7及びTLR9からなる群から選択される受容体の作動薬である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
アジュバントがToll様受容体4又は9の作動薬である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
以下のものの少なくとも1つを含む細胞:
(i)1つ又は複数の請求項7に記載の単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;
(ii)請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド;
(iii)請求項8又は9に記載のベクター;
(iv)請求項10〜15のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項20】
E1a、E1b、E2a、E2b、E4、L1、L2、L3、L4及びL5からなる群から選択されるアデノウイルス遺伝子を少なくとも1つ発現する宿主細胞である、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
疾患の療法又は予防法への、請求項7に記載の単離アデノウイルスカプシドポリペプチド;請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド;請求項8又は9に記載のベクター;請求項10〜15のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス;及び/又は請求項18に記載の組成物の使用。
【請求項22】
療法又は予防法がワクチン接種である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
療法が遺伝子療法である、請求項21に記載の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図4】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−516679(P2012−516679A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546719(P2011−546719)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000616
【国際公開番号】WO2010/086189
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(509280453)オカイロス アーゲー (3)
【Fターム(参考)】