説明

サルモネラの検出のためのオリゴヌクレオチド

【課題】サルモネラ エンテリカまたはサルモネラ ボンゴリのDNAまたはcDNAの、特に増幅後における検出のための、ヌクレオチド配列を具備する新規な手段を提供する。
【解決手段】サルモネラ エンテリカまたはサルモネラ ボンゴリ由来のIagA配列またはIagB配列。少なくとも9ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列。該オリゴヌクレオチド配列は、グループIからVIの他のグループ、またはこれらのグループの一部に属するサルモネラ属のゲノムDNAまたはcDNAを増幅後に検出するためのプライマーとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
サルモネラ属は、種であるサルモネラ・エンテリカ( Salmonella enterica )、並びにサルモネラ・ボンゴリ( Salmonella bongori ) の2種を含み、これらは生化学的特徴およびDNAレベルでの相同性に基づいて6亜種に分割される。この属は、菌体抗原および鞭毛抗原によって定義される、2000を超える血清変種(serovarieties) に細分される。一般的にサルモネラ属の細菌は、動物およびヒトに対して病原性を有する。そのような訳で、サルモネラ菌は、発展途上国における食中毒の最も一般的な事例の原因となる病原体の一つであることが知られているため、サルモネラ菌の亜種の高速かつ信頼性の高い検出方法は重要である。
【0002】
食物の毒性感染(toxi-infections) の原因となるサルモネラ属菌は、主に、S.エンテリカの亜種I(グループIとも称される)に属する。しかしながら、毒性感染は、サルモネラ感染が原因となる病状だけではない。
【0003】
例えば、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清変種タイフィ(typhi) (以後、タイフィ(Typhi) と称する)は、ヒト腸チフスの病原体である。
【0004】
サルモネラ属菌により引き起こされる感染の性質と、特に、患者または食物から採られた生物学的試料中におけるそれらの存在を調査する必要性とを考慮すれば、該試料中におけるこれら菌の存在を検出するための高速かつ高感度の利用可能な手段を得ることが、恐らく不可欠であろう。サルモネラ属菌を検出するために現在まで広範に用いられている標準的な培養方法は、相当な長さの時間を必要とし、例えば、食品の汚染をモニターするためには適切ではない。これらの方法の欠点を克服するために、ハイブリダイゼーションテストおよびポリメラーゼ連鎖反応に基づく試験のような、分子生物学的技術に基礎を有する幾つかの方法がすでに提案されている。飲食物中のサルモネラ亜種を検出するために、幾つかのハイブリダイゼーションおよびPCRの手順において様々なDNAプローブが用いられてきた。しかしながら、それらの技術はいずれも完全に満足し得るものではない。何故なら、使用される配列が完全には知られていないか、またはサルモネラ属にのみ存在するものではないために、該プローブと他の腸内細菌からのDNA配列との間の交差反応を導き、または多数の陰性誤認もしくは陽性誤認を導き得るからである。
【0005】
本発明者は、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの種に属するすべてのサルモネラ属菌を特異的かつ高感度で検出できる手段を探索した。この目的のために、我々発明者は、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清変種タイフィ(S.タイフィ)株およびS.タイフィによる細胞の侵入に関連する遺伝子に注目した。
【0006】
さらに、我々発明者は、限定されたグループのサルモネラ属菌(例えばグループIの細菌)の特異的検出を許容する特定の条件を定義した。
【0007】
タイフィ株が単層のヒーラ(HeLa)細胞に付着し、それらの細胞に侵入し得ることは、従来の技術水準においてすでに示されていた(Yabuuchiet al, 1986)。しかしながら現在に至るまで、細胞に付着して侵入するこのプロセスに関与する遺伝子としての決定基(determinants)は、明確には同定されていなかった。エルジングホルスト(Elsinghorst) ら(1989)は、大腸菌型の細菌に対してヘンル(Henle)407細胞を貫通する能力を与える、タイフィ染色体断片をクローン化した。最近、タイフィのTy2株によるヒーラ細胞への侵入に関与する別の染色体領域が同定され、クローン化された(Popoff and Dion,1990)。
【0008】
本出願の発明者は、ポポフとディオン(1990)により記載された7.9kbのHindIII配列に含まれる2.4kbのS.タイフィのDNA断片上に、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清変種タイフィが細胞に侵入する活性に関与し得る領域を同定した。これらの領域は特にヒーラ・タイプの培養細胞においては、更にS.エンテリカ種及び/またはS.ボンゴリ種のすべての検体(the representatives) についての一般化された診断または任意の特別な検出条件下であれば、S.エンテリカのグループIの特異的な診断のための反応に用いることが可能である。
【0009】
本発明者は、IagAと称する配列およびIagBと称する配列を同定し、これを、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清変種タイフィによる感染の間に出現する、細胞侵入に関与するものとして特徴付けした。S.タイフィ中のそれら配列の特異性に導かれて、発明者は、S.タイフィによる感染を診断するための手段、またはさらにS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの種のサルモネラ属による感染を診断するための手段、または場合によっては特定のグループのS.エンテリカを検出するための手段を定義するためのそれらの使用を提案して来た。
【0010】
サルモネラ・エンテリカおよび/またはサルモネラ・ボンゴリによる感染を診断するために用いることができるこれらの手段は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応のようなヌクレオチド配列を増幅させるための反応において用いることが可能なオリゴヌクレオチドを包含するものである。本発明は、S.エンテリカの、またはS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの特定の亜種の核酸を検出するためのプローブにも関するものであり、これらの核酸は、適切であれば増幅された断片であり得る。生物学的試料中において、並びに例えば食品中もしくは臨床的診断の対象となるいずれかの試料中において、サルモネラ・エンテリカおよび/またはサルモネラ・ボンゴリの存在を検出するためのキットおよび方法もまた、本発明の課題である。それらの検出キットおよび検出方法は、本発明の特定の態様によれば、S.エンテリカのグループI株に特異的である。
【0011】
本発明の別の態様に従えば、一方では、それらの方法によりサルモネラ属の細菌であるS.エンテリカまたはS.ボンゴリの存在を調査することが可能となる。かように、サルモネラ属は6亜種、即ちグループI、II、III、IV、VまたはVIを含む。亜種I、II、III、IV、およびVIは、S.エンテリカ種に属し、亜種Vは、S.ボンゴリ種に属する。本発明は、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清変種タイフィによる細胞への侵入に関与するヌクレオチド配列であって、それぞれ、図1および図2に示されている配列のヌクレオチド97とヌクレオチド1755との間(IagA)、並びに図2に示されている配列のヌクレオチド1776とヌクレオチド2255との間(IagB)である、配列iagAまたは配列iagBのひとつであることを特徴とするものにも関する。
【0012】
本発明は、iagAまたはiagBについて改変されているが、それにもかかわらず細胞への侵入に関して同じ特性を示すか、または厳格な条件の下では上記配列の一つとハイブリッドを形成するようなヌクレオチド配列にも関する。図1および図2において示される配列に一致するIagAタンパク質およびIagBタンパク質、または得られた配列が上記のIagA配列またはIagB配列の一つに対する抗体により認識されるかぎり、アミノ酸の突然変異、欠失もしくは付加により得られるそれらの配列の変異体もまた、本出願の課題である。
【0013】
一般的に、本発明の課題は、図1および図2において示されるiagA遺伝子およびiagB遺伝子によりコードされる、いずれかのアミノ酸配列である。
さらに、本発明は何れかの断片、とりわけ細胞(特に培養ヒーラ細胞)に付着し感染するという特性をS.タイフィに保持させるのに十分な配列の一つであるいずれかの精製断片に関する。培養中のヒーラ細胞に感染させるための方法は、特にWO92/01056の番号で公開された国際特許出願に記載された標準的方法である。
【0014】
別の側面によれば、本発明は、生物学的試料中のS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの存在を検出し、適切であれば、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリを定量するための手段に関する。生物学的試料とは、動物もしくはヒトにおいてインビトロ分析を実施するために採集されたか、またはその性質に関わりなく食品から採集されたか、または所望の病原体を含む可能性が高い液体、固体もしくは気体の媒質から採集されたいずれかの試料を意味するものと理解される。
【0015】
これに関連する本発明の課題は、上記のIagA配列またはIagB配列の1つとハイブリッド化することを特徴とする、少なくとも9ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列である。上記のハイブリダイゼーションの条件は、ハイブリダイゼーションにおける所望の特異性にしたがって定義され、本出願の実施例には指針として適切な条件が与えられている。
【0016】
好ましくは、本発明は、図1から図2において表されるIagA配列のC末端部分に由来するオリゴヌクレオチドに関する。オリゴヌクレオチド型の配列は、グループIからVIの他のグループ、またはこれらのグループの一部に属するサルモネラ属(S.エンテリカ種および/またはS.ボンゴリ種)のゲノムDNAまたはcDNAを増幅後に検出するため、あるいは別の条件下においてS.エンテリカのグループIの特異的な検出のためのプライマーとして用いるために選択することができる。これは特に、当業者公知の方法にしたがって化学合成により得られたヌクレオチド配列でもよい。
【0017】
サルモネラ属のグループI、II、IIIa、IIIb、IV、VまたはVIの1つに属する細菌に特有な核酸、特にS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたはcDNAの増幅に用いることができる好ましいオリゴヌクレオチドは、例えば以下の通りである(図1から図2に示したIagA配列内におけるそれらの位置をも示す):
Iag1:5´−TATTAAGTATGCAG GTTATG−3´(位置)1424−1443
Iag2:5´−AGAGAATTTCTGCAA AGTGAA−3´(位置)1585−1605
Iag3:5´−ATATCCACGCAGGAA ATAACAGGACTT−3´(位置)1495−1521
Iag4:5´−GAGCGTGCCTTACCG ACGATA−3´(位置)1564−1584
Iag5:5´−GCAGGGATCACTAAG CTGTG−3´(位置)1318−1337
Iag6:5´−CGTGGGCAACCAGCA CTAACG−3´(位置)1637−1657
slm1:5´−CGGGTTAAAGGTTAT CACCT−3´(位置)709−728
slm2:5´−AGCATGGCGCAAAT GGG−3´(位置)1014−1031
slm3:5´−GCACCAGGAAAGCAT TAAGTTGATAGAACA C−3´(位置)732−762
slm4:5´−CTTCGCTGGGACACA AAGCA−3´(位置)823−842
SS28:5´−TAATGCTTTCCTGGT GC−3´。
【0018】
S.エンテリカ種および/またはS.ボンゴリ種の全サルモネラ菌株のiagB遺伝子からDNAまたはcDNAを増幅するためのプライマーとして用いることができるその他のオリゴヌクレオチドは、図2に示されるiagB配列から定義された。
それゆえに、以下のヌクレオチド鎖に一致するオリゴヌクレオチドは、本発明の主題である:
Iag7:5´−TACGGCATGGGCTGATTGCT−3´
Iag8:5´−TTACGCTATCGCCCAGCAGCAGGA−3´
Iag9:5´−TGGTCATAACCGAGATGGTTCAAACGATC−3´
Iag10:5´−ACAGTTGTTACAGGATCCCT−3´。
【0019】
これらのオリゴヌクレオチドはまた、例えば、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのDNAおよび/またはcDNAの増幅産生物の検出のためのプローブとしても用いることができる。
【0020】
細菌が属するグループに関係なく、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの核酸の増幅を実施する上で好ましいプライマー対は、例えば、プライマーのIag5(センス)およびIag6(アンチセンス)からなっている。
このプライマー対は、340bpの核酸断片の増幅を指示する。
【0021】
もう一つの好ましいプライマー対は、プライマーのSlm1(センス)およびSlm2(アンチセンス)からなっている。これらのプライマーは、グループI、II、III、IV、VまたはVIの1つであるS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの細菌のDNAまたはcDNAとのハイブリッド形成が可能である。
【0022】
別の好ましい態様によれば、本発明は、DNAまたはcDNAの増幅後の検出条件が実施例Iに記載されているものであるときに、サルモネラ・エンテリカ・グループIの特異的検出のためのプライマーとして用い得るオリゴヌクレオチドに関する。
【0023】
そのようなプライマーは、グループI、II、III、IV、VおよびVIを代表するS.エンテリカまたはS.ボンゴリの株由来の核酸配列を増殖する能力を特徴とする。但し、その検出条件は、グループIの細菌単独の検出を許容する実施例Iに記載した条件である。
【0024】
S.エンテリカ・グループI由来のDNA配列またはcDNA配列の検出について特異的なプライマーとして、これらの目的のために用い得る1対のオリゴヌクレオチドは、例えば、次の配列からなる:
SS2 5´−CCGGGCAGATGATACCC−3´および
SS28 ´−TAATGCTTTCCTGGTGC−3´。
【0025】
本発明者が定義するオリゴヌクレオチドにより、感度、速度、簡便性および特異性において十分な条件の下で、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの診断を考察することが可能となる。
【0026】
S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたは相補的DNAの増幅による、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの検出のためのキットもまた本発明の主題であり、該キットは、
−厳格な条件の下で、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたは相補的DNAとハイブリッド化することができる、上記のオリゴヌクレオチドと、
−前出のページにおいて与えられた定義の1つに一致する、増幅された断片の検出のためのプローブと、
−増幅反応を実施するために必要な試薬と
を具備することを特徴とする。
【0027】
従って、本発明の主題は特に、前出のページにおいて記載されたiagA配列もしくはiagB配列の1つに含まれているか、またはその様な配列に対して相補的である、サルモネラ・エンテリカおよび/またはサルモネラ・ボンゴリからのDNA配列またはcDNA配列の増幅のためのプライマーとしての上記のオリゴヌクレオチドの使用であり、或いは増幅されたヌクレオチド配列の検出のためのプローブとしてのこれらのオリゴヌクレオチドの使用である。
【0028】
例えば、グループI、II、III、IV、VまたはVIの、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの検出のために、それぞれをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして、オリゴヌクレオチドiag5およびiag6を用いることができる。
【0029】
同様に、生物学的試料中において、これらのグループの1つに由来するS.エンテリカ種および/またはS.ボンゴリ種の細菌を検出するために、Slm1とSlm2とのプライマー対を用いることができる。
【0030】
本発明はまた、生物学的試料中において、S.エンテリカ・グループIのインビトロでの特異的検出のために、オリゴヌクレオチドSS2およびSS28を使用することに関する。
【0031】
所望のヌクレオチド配列の増幅のために用いられるプライマーが、他のグループII、III、IV、VまたはVIの1つに属するS.エンテリカ菌および/またはS.ボンゴリ菌についての該増幅を許容するけれども、採用される実験条件が、検体である生物学的試料中に存在し得る同じグループの細菌または異なる生物の検出を許容しないとすれば、上記の検出は特異的である。
【0032】
したがって本発明は、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたは相補的DNAの増幅後に、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの細菌の検出のために用い得るオリゴヌクレオチドのセットに関するものであって、該セットは、
−S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたはcDNAとの間で、厳格な条件の下に、ハイブリッド化することが可能な上記で与えられた定義に一致する1対のオリゴヌクレオチドと、
−上記で与えられた特徴に一致するプローブと
を具備することを特徴とする。
【0033】
生物学的試料中において、グループI、II、III、IV、VまたはVIの1つに属するサルモネラ・エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの株のインビトロ検出のために用い得る第1のオリゴヌクレオチドセットは、
−増幅のためのプライマーとして用い得る、配列Iag5(5´−GCAGGGATCACTAAGCTGTG−3´)および配列Iag6(5´−CGTGGGCAACCAGCACTAACG−3´)と、
−表示プローブ(revealing probe) として用い得る配列Iag3(5´−ATATCCACGCAGGAAATAACAGGACTT−3´)および捕獲プローブ(capture probe) として用い得る配列Iag4(5´−GAGCGTGCCTTACCGACGATA−3´)と
を含むことを特徴とする。
【0034】
生物学的試料中において、S.エンテリカ・グループIのインビトロでの特異的検出のために用い得るもう一つのオリゴヌクレオチドセットは、
SS2 (5´−CCGGGCAGATGATACCC−3´)と、
SS28 (‘−TAATCGTTTCCTGGTGC−3´)と
を含むことを特徴とする。
【0035】
さらに、図1から図2に示されるヌクレオチド配列iagAによりコードされたiagAタンパク質、並びに図2において示されるヌクレオチド配列iagBによりコードされたiagBタンパク質も本出願の主題である。
【0036】
iagAタンパク質およびiagBタンパク質のそれぞれは、図1および図2に示されるアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0037】
また、例えば、PCRにより前もって増幅された、生物学的試料中のサルモネラ・エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのヌクレオチド配列をインビトロで検出するための方法も本発明の範囲内に入るものであり、この方法は、
−増幅されたS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの配列を変性させる工程と、
−このS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリからの増幅され変性されたヌクレオチド配列と、上記に定義されたヌクレオチドから得られる捕獲プローブおよび表示プローブとを、前記の捕獲プローブおよび表示プローブがS.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリ由来の上記の増幅されたヌクレオチド配列とハイブリッド化することを許容する条件下で接触させる(なお捕獲プローブはマイクロタイタープレートのウェル表面に付着させ、表示プローブはラベルして、適切なハイブリダイゼーション用緩衝液中に遊離させておく)工程と;
−ハイブリダイゼーション反応をさせるために十分な時間、反応混合物をインキュベートする工程と;
−未反応のオリゴヌクレオチドを除去するために洗浄する工程と、
−増幅されたヌクレオチド配列にハイブリッド化した表示プローブを顕在化させる工程と
を具備することを特徴とする。
【0038】
上記の検出方法は、有利には、
−等容量の(volume for volume) 200mM NaOH,40mM EDTA溶液を添加することにより、10μl容量の増幅配列を変性させる工程と、
−適切なハイブリダイゼーション用緩衝液中において、ウェル表面が捕獲プローブにより被覆されたマイクロプレートのプレハイブリダイゼーションを行う工程と、
−マイクロプレートを空にして、変性された増幅断片及び10ng/μlの濃度のペルオキシダーゼでラベル化された表示プローブを含む200μlのハイブリダイゼーション用緩衝液を、それぞれのウェルに充填する工程と、
−この混合物を、攪拌しながら37℃での1時間のインキュベーションを行う工程と、
−10X洗浄溶液(100mMのトリス,3MのNaCl,1%のトゥイーン20,pH7.4)を用いて、反応した混合物を洗浄する工程と、−発色基質の存在下での比色定量によって、プローブに結合したペルオキシダーゼの活性を検出する工程と
にしたがって検出が行われることを特徴とする。
【0039】
表示プローブに存在するペルオキシダーゼの活性は、次の工程、即ち、
−反応混合物を含むそれぞれのウェルに、200μlの、40mMのクエン酸三ナトリウム溶液,0.03% H2 O 30%,7.5mg/mlのオルソフェニレンジアミン(OPD)を入れる工程と、
−暗室内において37℃で30分間、マイクロプレートのインキュベーションを行う工程と、
−4NのH2 SO4 溶液を50μl/ウェル添加することにより、反応のブロッキングを行う工程と、
−492nmの波長での光学密度を定量(レファレンスの波長は620nm)する工程と
によって行うことができる。
【0040】
使用する捕獲プローブはオリゴヌクレオチドIag4であり、表示プローブはオリゴヌクレオチドIag3であるのが有利である。
こうして、本発明の範囲において定義された手段は、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのグループI、II、III、IV、VまたはVIのひとつにおける非特異的検出であっても、S.エンテリカ型および/またはS.ボンゴリ型の細菌の存在の定性的または定量的な検出を可能にする。
他方、実施例Iに記載したような検出工程を実施するための特定の条件下では、プライマーSS2、SS28およびプローブSS40は、S.エンテリカ・グループIの細菌の特異的な検出を可能にする。
本発明の他の特徴および長所を、以下の実施例および図において示す。
【実施例】
【0041】
実施例1:2.4kbのDNA断片のクローン化および配列決定
ポポフおよびディオン(1990)による刊行物中に記載された7.9kbのHindIII配列から、HindIII酵素を用いて切断することにより得られた制限断片を用いることにより、このDNA断片をベクターm13の誘導体(メッシングおよびビエイラ(Messing and Vieira)、1982)にサブクローン化した。
このクローニングの実施後に、改変T7DNAポリメラーゼ(シーケナーゼ(Sequenase) 、USB Corp.)とプライマーとしての万能型合成オリゴヌクレオチドとを用いて、読み終わり式(chain termination) ジデオキシ法を実施した。使用した制限断片の末端は、すべて互いに重複し合う。DNAの配列決定を、それぞれの鎖ごとに少なくとも2回実施した。リパンおよびピアソン(Lipan and Pearson) によるプログラム(1985)を用いて、ヌクレオチド配列を解析した。
【0042】
図1から図3に掲載された配列が示すように、配列決定された断片中には2つのオープン・リーディング・フレームが含まれる;それらを、iagA(侵入関連遺伝子(invasion associate gene) の略語)およびiagBの術語で称する。その2つのオープン・リーディング・フレームを、同じ配向(orientation) で転写する。配列5´−AGAGA−3´に続くiagAのオープン・リーディング・フレームの最初のATGコドン(bp97)が、iagA遺伝子の翻訳開始部位に一致すると考えられる。このiagA遺伝子は、553アミノ酸残基を含む算出分子量63026Daのポリペプチドをコードする。IagAタンパク質のN末端側ドメインと、転写制御のためのタンパク質PhoBに対応するドメイン(108アミノ酸の重複について、24%の同一性と52%の類似性)および大腸菌のタンパク質PhoPに対応するドメイン(100のアミノ酸の配列について、25%の同一性と69%の類似性)との間に、有意な相同性が検出された。iagB遺伝子の開始のためのATGコドン(bp1776)にもまた、潜在的なリボゾーム結合部位(5´−AGGAAG−3´)が先行する。iagB遺伝子は、160アミノ酸残基を含み且つ18369Daの算定分子量を有するポリペプチドをコードする。IagBタンパク質の配列をジェンバンク(Genbank) のデータバンクに含まれる翻訳配列と比較したところ、IpgFタンパク質との有意な相同性(151のアミノ酸の配列について、43%の同一性と66%の類似性)を示した。
【0043】
シゲラ・フレクスネリ( Shigella flexneri) の病原性に関連したプラスミド上のmxi−spi遺伝子座の5´末端に位置するipgF遺伝子が、IpgFタンパク質をコードする(アラウイ(Allaoui) ら、1993)。それゆえに、検出されたサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清変種タイフィのタンパク質は、これらの細菌による感染、特に細胞への付着および貫通において働くと考えられる。
【0044】
実施例2:S.エンテリカ・グループIの特異的検出
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるサルモネラ属の亜種を検出するための手順を開発した。プライマーとして用いる一組のオリゴヌクレオチドを定義して、S.タイフィのTy2株によるヒーラ(HeLa)細胞の侵入に必要な遺伝子の93bp断片を増幅した。シュブリエ(Chevrier)らにより1993,Mol.Cell.Probes 7,187−197に記載された手順にしたがい、2つの異なるオリゴヌクレヌクレオチドを用いて、マイクロタイタープレート上での非放射性サンドウィッチ・ハイブリダイゼーションにより増幅産生物を分析した。捕獲用オリゴヌクレヌクレオチドをその5´末端でリン酸化し、マイクロタイタープレートの、アミノ含有基を有するウェルに共有結合させた。検出用オリゴヌクレヌクレオチドをその5´末端でアミノ化し、次いでビオチニル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルでラベル化した。ハイブリダイゼーションの後、アルカリホスファターゼおよび色素原基質と複合体を形成したアビジンにより、そのハイブリッド分子を検出した。この方法は、周期的加熱器(a thermal cycler)および従来型のマイクロタイター読取り機(a conventional microtitrereader)だけの使用を必要とし、大きな規模で実施できる。
【0045】
〔材料および方法〕
「細菌の菌株」
この研究において、S.ボンゴリ[サムブルックら、1989、モレキュラークローニングの実験マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Sambrook et al,1989,Molecular cloning, a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)]、S.エンテリカの亜種I(116)、II(56)、IIIa(11)IIIb(30)IV(5)およびVI(5)を含む228の臨床単離株(表1および表2)、並びに9の異なる属を代表する16の非サルモネラ腸内細菌株(表3)を用いた。PCRテストにおいては、S.血清変種タイフィムリウム( Typhimurium ) C53株を陽性対照として用い、E.coli(大腸菌)HB101株を陰性対照として用いた。
【0046】
「DNAの抽出」
LB培地中において、37℃で菌株を培養した。DNAの高速抽出を実施するために、一夜保存した2mlの培養物を遠心分離し、1mlのTE(1mMのEDTAを含むpH8の10mMトリスHCl緩衝液)で再懸濁した。その細胞を遠心分離し、遠心分離して得たペレットを500μlの滅菌蒸留水で再懸濁し、100℃で10分間加熱した。最終的に、溶液を遠心分離し、上清をPCR実験のために貯蔵した。
【0047】
「オリゴヌクレオチドのプライマーおよびプローブ」
ホスホラミダイト技術を用いて、サイクロンDNAシンセサイザー(ミリポア−ウォーターズ社(Millipore-Waters))でオリゴヌクレオチドを合成した。
オリゴヌクレオチドプライマーの配列は、
SS2: 5´−CCGGGCAGATGATACCC−3´および
SS28: 5´−TAATGCTTTCCTGGTGC−3´
であった。
【0048】
オリゴヌクレオチド捕獲プローブとしての、
SS40: 5´−CCCGAACTATCTCGATCTGTACAATATTATCATT−3´
を、サムブルックら、1989、(モレキュラークローニングの実験マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー)によりなされた記載にしたがって、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(ベーリンガー(Boehringer))により、その5´末端でリン酸化した。オクタデカヌクレオチド検出プローブのSS41(5´−GCAGGTGATAACCTTTAA−3´)を、その5´末端のアミノ官能基を利用して、アプライド・バイオシステム(Applied Biosystem) の380B DNAシンセサイザーにおいて固相ホスホラミダイト法を用いることにより合成し、次いで、タム(Tham)ら、1990、(FEMS Microbiol. Lett.69, 109−116)によりなされた記載にしたがってD−ビオチニル−Σ−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(ベーリンガー)でラベルした。捕獲用オリゴヌクレオチドおよび検出用オリゴヌクレオチドの両方を、FPLCシステム(ファーマシア(Pharmacia) )により高速HR 10/10脱塩カラム上で精製した。
【0049】
「PCR実験」
ウェルごとに、95μlの蒸留水、5μlのPCR試料、40μlの検出プローブおよび14μlの1N NaOHを順次連続して加えることにより、PCR反応に用いるDNA断片をウェルの中で直接変性させた。10分後、1%サルコシル(sarkosyl)を含有する1M NaH2 PO4 を21μl添加することにより中和を行った。試料はすべて2重に調製した。中和後、金属表面上でバンドを沈殿させ、40℃で一夜オーブン中に保存した。ビオチニル化された検出プローブSS41の最終濃度は、0.5nMであった。オーブン内でのインキュベーションの間、使われていないウェルを空のままにして置かず、水で満たして均質な熱交換が得られるようにすることが好ましい。室温でTBS−Tw(0.15MのNaCl、pH8の10mMのトリス−HCl緩衝液、1%のトゥイーン20)ーにより、マイクロウェルを5回洗浄した。ウェル当り、1%のウシ血清アルブミンを含有するTBS−Tw中において1μg/mlとなるように希釈されたアルカリホスファターゼ−エクストラビジン(extravidine) 複合体(シグマ(Sigma) )を、100μl加えた。次いで、バンドを室温で1時間インキュベートし、TBS−Twで5回洗浄し、最終的に、1mMのMgCl2 および1mMのパラニトロフェニルリン酸塩を含有するpH9.8の1M ジエタノールアミンを200μl加えた。30分間から2時間、酵素反応を実施した。マイクロプレート読取り機(ダイナテック(Dynatech))を用いて405nmで吸光度を測定した。S.血清変種タイフィムリウム( S. ser. Typhimurium ) C53株の増幅DNA断片(800fm/ウェル)の標準溶液で得られたシグナルを、100%を表すものと考え、それぞれのハイブリダイゼーションテストにとっての参照値として用いた。ブランク値は、0.5nMのビオチニル化されたオリゴヌクレオチドプローブSS41のみをインキュベートした、オリゴヌクレオチドSS40で被覆されたウェルにおいて測定された平均吸光度に対応する。
【0050】
〔結果〕
「方法の最適化」
プライマーとプローブとをiagA配列中において選択した。様々なプライマーの組を試験することにより、コバリンク(CovaLink)マイクロプレート上でのサンドウィッチ・ハイブリダイゼーション技術を最適化させた。選ばれたプライマーの組(SS2およびSS28)により、サルモネラ属菌のゲノムDNAの93bp領域の特異的増幅がなされる。このプライマーの組を用いることにより、標準的なMgCl2 濃度(1.5−2mM)では、相対的に不利な増幅結果が導かれ、効率の良い増幅を得るためには、4mMのMgCl2 濃度を必要としたことが示された。非放射性ハイブリダイゼーション・テストにおいて、それぞれを捕獲プローブおよび検出プローブとして、内部(Internal)オリゴヌクレオチドのSS40およびSS41を用いた。
【0051】
「当該技術の特異性」
サルモネラ属の228株(表1および表2)並びに相異する細菌の16株(表3)について、サルモネラ属菌の検出のための方法の特異性を評価した。結果を表4において要約する。エドワルドシエラ・タルダ( Edwardsiella tarda) 、クレブシエラ・プネウモニアック( Klebsiella pneumoniac ) 、エンテロバクター( Enterobacter) およびアシネトバクター( Acinetobacter ) の種、パストゥーレラ( Pasteurella ) 、ビブリオ・ハルベイイ( Vibrio harveyi) 、セラチア・マルケセンス( Serratia marcescens ) およびシトロバクター( Citrobacter )のより多くの種、並びにすべての大腸菌は、20%未満のハイブリダイゼーション・シグナルを示した。この値に基づいて、この方法により亜種Iに属するすべてのサルモネラ属の菌株を検出し得たと結論を下した。さらにその上、亜種IIの56株中の1株(3975−83株)のみおよび亜種IIIaの11株中の3株は、陽性のシグナルを示した。サルモネラ・ボンゴリならびに亜種IIIb、亜種IVおよび亜種VIに属する株は、検出されなかった。
【0052】
「細菌全体についての当該技術の検出レベル」
S.血清変種タイフィムリウムC53株の懸濁液の10分の1希釈系列(109 細胞/mlから10-2細胞/mlまで)を調製することにより、PCRとそれに続く非放射性ハイブリダイゼーション技術により検出することが可能な細菌の最小数を推定した。煮沸による高速抽出技術を用いて、それぞれの校正された懸濁液からDNAを抽出した。PCR反応の前に単に懸濁液を煮沸することによるDNAの高速抽出技術が効率の良い技術であることを、得られた結果は明らかに示している。実際に、それはたった1cfu単位の検出を許容する。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0053】
「精製されたゲノムDNAでの定量的ハイブリダイゼーション」ここで報告される試験において用いられる非放射性ハイブリダイゼーションの手順は、定量的な研究において容易に実施し得る。様々なサルモネラ属の菌株について得られたハイブリダイゼーション・シグナルを比較するために、サルモネラ・エンテリカの6亜種とサルモネラ・ボンゴリ種とを代表する10株からDNAを抽出し、次いで、校正された量のDNAを、PCR反応とそれに続くサンドウィッチ・ハイブリダイゼーションに用いた。その結果を図2において報告する
(a:S.エンテリカ亜種エンテリカ(I)、参照:C53
b:S.エンテリカ亜種サラマエ(salamae) (II)、参照:975−71
c:S.エンテリカ亜種サラマエ(II)、参照:3975−83
d:S.エンテリカ亜種アリゾナエ(arizonae)(IIIa)、参照:1600K
e:S.エンテリカ亜種アリゾナエ(IIIa)、参照:So20−20
f:S.エンテリカ亜種ジアリゾナエ(diarizonae)(II)、(参照:5250−85
g:S.エンテリカ亜種ジアリゾナエ(IIIb)、参照:8013−93
h:S.エンテリカ亜種ホウテナエ(houtenae)(IV)、参照:1357−73
i:S.ボンゴリ、参照:2790−79
k:S.エンテリカ亜種インディカ(indica)(VI)、参照:4355−84−7、6、5、4および3:DNA分子の量の対数)。サルモネラ・ボンゴリまたはサルモネラ・エンテリカの亜種II、IIIa、IIIb、IVおよびVIについて107 分子のDNAで得られるハイブリダイゼーション・シグナルは、亜種Iの株について103 分子のDNAで観察されるハイブリダイゼーション・シグナルよりも低いことが例証された。しかしながら、3975−83単離体(亜種II)は、亜種Iに属する菌株と同等のハイブリダイゼーション・シグナルを示すことに留意することが必要である。
【0054】
〔考察〕
PCR増幅は、特定のDNA配列についての極めて高感度の検出を可能とする。増幅の感度は、基本的に、標的DNAの複製の数、分析される試料の純度、DNAの抽出方法、およびPCR生成物を検出するために用いられる方法の感度に依存する。電気泳動ゲル中で染色するエチジウムブロマイドによるPCR生成物の可視化は、この技術での日常的な使用には向かないものであり、また、感度が十分ではない。ダブルPCRの使用、またはドットブロット・ハイブリダイゼーションもしくはサザンブロット・ハイブリダイゼーションでのDNAプローブの使用により、感度を増強し得る。しかしながら、ダブルPCRはDNAによる汚染に対して極めて高感度であり、ドットブロット・ハイブリダイゼーションもしくはサザンブロット・ハイブリダイゼーションの技術は、自動化に不適である。それゆえに、マイクロプレート・ハイブリダイゼーションは、PCRにより増幅された断片の検出および定量について適切な技術を提供する。マイクロウェルへの核酸の単純な共有結合による付着は、受動的な吸着の有益な変形であり、且つマイクロウェル上でPCRにより増幅された断片の検出にとっての重要な改善である。
【0055】
ヒトにおける感染の原因となるサルモネラ属の菌株は、基本的に亜種Iに属することが知られている。実際に、ヒトの臨床的単離株の95%より多くがこの亜種に属する(ロウ(Rowe),B.、1987、サルモネラ属の監視。WHOプログラムに参加するセンターから受け取った報告。世界保健機構、ロンドン)。さらにその上、1991年には、パリ(フランス)の「獣医学および栄養学についての国立研究センター("Centre National d'Etudes Veterinaires et Alimentaires") 」が、以前の年においては、1988年および1989年に飼育動物(animals in the diet) または野生の(in the environment)動物において単離された菌株のほとんど(すなわち18832株)が亜種Iに属する(99.2%)と報告した[コルビオン(Corbion) ,B.ら、1991年、サルモネラ菌の調査(Inventory of Salmonella) ]。
【0056】
ここに報告された結果から、サルモネラ属の病原性株の検出のためのPCR増幅に基づく方法を定義することが可能となった。一組のプライマーのSS2およびSS28ならびに一組のプローブのSS40およびSS41を、サルモネラ血清変種タイフィTy2株によるヒーラ細胞の侵入に必要な遺伝子から選択した。PCR技術とマイクロプレート非放射性サンドウィッチ・ハイブリダイゼーションを組み合わせて用いることにより、亜種Iのサルモネラ属菌すべてを検出した。他の同様なPCR技術により得られた結果に従うものである、PCR試験管当り10細胞として表されたしきい値(a threshold) よりも、検出限界は低かった。腸内細菌の成員間の核酸の類似を考慮したとき、「陽性誤認」型反応("false-positive" type reactions) に導く可能性が極めて高い属の腸内細菌についての、これら新規のプライマーおよびプローブの特異性を検査することは重要であった。得られた結果からは、上記のPCRおよびハイブリダイゼーションの条件を遵守するときには、陽性誤認反応は起こり得ないと結論し得る。
【0057】
亜種Iに属する単離株で得られたものと同一のハイブリダイゼーション・シグナルを、サルモネラ属菌株3975−83(亜種II)が有していたことに留意することは有益である。イギリスにおいてヒト患者の便から1983年にこの株を単離した。生化学的特徴に基づいて、この新規な血清変種を亜種IIに分類したが、しかし、ゼラチナーゼ中ではその存在が検出されなかったことから、非典型的な菌株と考えられた(Le Minor,L.et al,1984,Supplement No.XXVII,1983,to Kauffmann−White Scheme, Ann. Microbiol. (Institut Pasteur)135 B,45−51)。今回報告された結果の観点から、DNA−DNAハイブリダイゼーション技術を用いて、3975−83株の分類学上の位置を再検討すべきである。
【0058】
ここに示すデータは、サルモネラ血清変種タイフィTy2株によるヒーラ細胞の侵入に必要な遺伝子の使用に基づくハイブリダイゼーション方法により、大腸菌も含めてその他の腸の細菌から亜種Iのサルモネラ属の菌株を区別しうることを示唆する。コバリンクのNHマイクロプレート上での非放射性ハイブリダイゼーションは高感度であり、多数の試料の分析に適切である。
【0059】
実施例3:サンドウィッチ・ハイブリダイゼーションにより増幅されたサルモネラ菌DNAの検出
「オリゴヌクレオチドの配列」
選択されたDNA断片は以下の通りである(図1の配列上の位置を参照):
C末端部 位置
Iag1:5´−TATTAAGTATGCAG GTTATG−3´ 1424−1443
Iag2:5´−AGAGAATTTCTGGAA AGTGAA−3´ 1585−1605
Iag3:5´−ATATCCACGCAGGAA ATAACAGGACTT−3´ 1495−1521
Iag4:5´−GAGCGTGCCTTACCG ACGATA−3´ 1564−1584
Iag5:5´−GCAGGGATCACTAAG CTGTG−3´ 1318−1337
Iag6:5´−CGTGGGCAACCAGCA CTAACG−3´ 1637−1657
slm1:5´−CGGGTTAAAGGTTAT CACCT−3´ 709−728
slm2:5´−AGCATGGCGCAAAT GGG−3´ 1014−1031
slm3:5´−GCACCAGGAAAGCAT TAAGTTGATAGAACA C−3´ 732−762
slm4:5´−CTTCGCTGGGACACA AAGCA−3´ 823−842。
【0060】
Iag5(センス)とIag6(アンチセンス)とのプライマーの組を340bp断片の増幅に用い、slm1(センス)とslm2(アンチセンス)との組を323bp断片の増幅に用いることが好ましい(図5)。サルモネラ属菌のそれぞれのグループの2つの代表株についての、Iag5とIag6とのプライマーの組での増幅の効率を、図6に示す。
【0061】
「検出方法」
サンドウィッチ・ハイブリダイゼーションによる検出のためのフォーマットを採用した。
2つのオリゴヌクレオチドは、変性されて増幅された断片と、同時にハイブリッド化する。捕獲プローブと称するそのうちの1つは、96ウェルのマイクロタイタープレートのウェルの表面に受動的に付着する(しかし、共有結合的にも付着し得る)。表示プローブと称する他方は、検出することが容易な成分でラベルされる。表示プローブは、ハイブリダイゼーション用緩衝液中に遊離している。
【0062】
捕獲プローブおよび表示プローブは、増幅された断片の内部に位置する2つの異なる領域に対して相補的である。ここに記載される事例における検出プローブは、特にペルオキシダーゼである酵素マーカーに連結されており、表示プローブとして有用であろう。これは、オリゴヌクレオチドIag3およびslm3について好ましい事例である。他のオリゴヌクレオチドはマイクロプレート型の固相支持体、微粒子または膜支持体に接着可能であり、且つ捕獲プローブとして働き、これは特にオリゴヌクレオチドIag4およびslm4について言えることである。
【0063】
実験条件:
1)サルモネラ属菌のDNAの調製
シェレックス(Chelex)(6%のシェレックス,0.1%のSDS,1%のNP40,1%のトゥイーン20)の存在下で煮沸する方法を用いることにより、DNA配列を得る。この試薬はバイオラッドより市販され、製造者の教示する手順に従って用いる(Walsh et al.1991.BioTechniques 10:506−513を参照)。
【0064】
2)増幅
サイキ(Saiki) により最初に記載された方法に従い、例えば欧州特許EP 0,201,184において為されたようにする。
次に示す反応混合液を使用してPCRを実施する:
50mMのKCl10mMのトリス−HCl(pH8.3)
1.5mMのMgCl2
125μMのデオキシリボヌクレオチド(dCTP,dATP,dGTP)
250μMのUTP
25pmolのそれぞれのプライマー
10ngのDNA
1単位のウラシルNグリコシラーゼ(Uracyl N Glycosylase)
1単位のTaqポリメラーゼ。
【0065】
100μl容量中に増幅がなされるDNAを10μl含有する溶液を用いて、反応混合液を調製した。dUTPおよびUNGを、汚染除去系で用いる(ブレベ・ライフ・テクノロジーズ(Brevet Life Technologies)欧州特許出願第0401037号)。用いられる周期的加熱器(The thermocycler)は、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)9600である。
UNGを作用させ、95℃で5分間変性させるために、50℃で2分間のインキュベーション後に採用された温度周期は以下の通りである:−5サイクル(95℃で15秒、50℃で15秒、72℃で15秒)
−35サイクル(95℃で15秒、57℃で15秒、72℃で15秒)。
【0066】
3)増幅反応の可視化
3−1)表示プローブのラベリング
プローブをセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼでラベル化し(PCRプロトコール:方法及び応用についての手引き(a guide to methodes and application);アカデミック・プレス(Academic press)(1990)、15、p4513−4534を参照)、その酵素活性を比色定量により明らかにする。
【0067】
3−2)BETにより染色されたアガロースゲルおよびメンブレン・ハイブリダイゼーション
増幅後、10μlの増幅生成物をアガロースゲルで集積し、従来の技術(マニアティス(Maniatis))に従って膜上に該DNAを移し取る。ハイブリダイゼーション用緩衝液(10× デンハート(Denhart) 、6× SSC、0.1%のSDS)中において68℃で30分、膜をプレハイブリッド化し、次いで、mlのハイブリダイゼーション用緩衝液当り60ngのプローブにより、42℃で3時間ハイブリッド化する。
【0068】
次いで、次の工程にしたがって洗浄を実施する:
−室温で、2×SSC−0.1%SDS中において、10分間を2回、
−42℃で、0.1×SSC−0.1%SDS中において、30分間を1回、
−室温で、2×SSC中において、10分間を2回。
表示(Revealing) :2枚の吸水紙(ホワットマン(Whatman) 3MMペーパー)の間で膜(メンブレン)は移写(ブロット)され、清浄で乾燥した貯蔵器中に配置された。
【0069】
試料と等量で(volume for volume) 用いる直前に、アマーシャム(Amershan)検出試薬(ECL RPN 2105検出試薬)を調製する;5×8cmの膜に対して、全量は30mlである。底部で、1枚の吸水紙(ホワットマン3MMペーパー)を固定することにより、オートラジオグラフィーのためのカセットを得る。これらの工程すべては光の下で実施し得るものであり、次いで暗室内に置く。
膜を1分間検出試薬中に浸し、DNA側を上にし、速やかに膜の水を除き、それをカセット内に置き、DNA側を上にし、その上に透明なプラスチックのシートを重ね(さもなければ、その膜がフィルムに貼り付く)、その上にX線フィルム(X−OMAT KODAKフィルム)を重ねる。室温で30分間露光を行い、次いで、従来の現像技術(現像液、水、固着剤)によりそのフィルムを現像する。
【0070】
3−3)マイクロプレート
3−3−1)捕獲オリゴヌクレオチドでの被覆
吸着により(Cook et al,NAR,16:4077−4095(1988))、または共有結合により(Rasmussen,S.R. et al,1991.Analytical Biochemistry 198,138−142)実施し得る。
【0071】
3−3−2)マイクロプレート・ハイブリダイゼーションおよび読取り
等容量の200mM NaOH,40mM EDTA溶液を加えることにより、10μlの増幅生成物を変性した。ウェルの表面を捕獲プローブで被覆したマイクロプレートを、10×デンハート,6×SSC,0.1%のSDSを含有するハイブリダイゼーション用緩衝液でハイブリダイゼーションの前処理(プレハイブリッド化)をした。
【0072】
次いで、そのマイクロプレートを空にして、それぞれのウェルに変性された増幅断片と10ng/μl濃度の表示プローブとを含むハイブリダイゼーション用緩衝液を200μl供給した。攪拌しながら、37℃で1時間のインキュベーションを行った。
洗浄(10×洗浄溶液:100mMのトリス、3MのNaCl、1%のトゥイーン20、pH7.4)の後、発色基質の存在下での比色定量により、プローブに連結したペルオキシダーゼの活性を検出した。
【0073】
これを行うために、200μlの、40mMのクエン酸三ナトリウム溶液,0.03% H2 O 30%,7.5mg/mlのオルソフェニレンジアミン(OPD)をそれぞれのウェル中に分布させた。そのマイクロプレートを、暗室中に37℃で30分間インキュベートした。反応を止めるために、4NのH2 SO4溶液を50μl/ウェル添加した。
492nmの波長で光学密度を定量した(レファレンスの波長は620nm)。
【0074】
4)PCR生成物の配列決定およびその配列の手動によるアラインメント従来の技術に従って、例えばアプライド・バイオシステム(Applied Biosystem) 社の“373 DNAシーケンサー”自動装置および同じくアプライド社の“ダイ・ターミネター(dye terminator)”キットを用いることによる。
【0075】
「結果」
例示されるモデルは、以下のオリゴヌクレオチド系が好ましい:
Iag5センスプライマー−Iag6アンチセンスプライマー
Iag3表示プローブおよびIag4捕獲プローブ。
(Iag4は、同様に良好にラベル化でき、表示プローブとして使用し得ることに注意すべきである)。
【0076】
「特異性の研究」
表5および表6において一覧されたすべての細菌株について行われた。
45のサルモネラ菌株検体より抽出されたDNAを増幅することにより、予測されたサイズの断片を産生した(図7を参照。)。すべての増幅生成物のサザンブロットを、ペルオキシダーゼによりラベル化した内部(internal)オリゴヌクレオチド・プローブIag3とハイブリッド化する。上記の手順にしたがって膜上において得られる、ペルオキシダーゼ・プローブとのハイブリダイゼーションは、非サルモネラ属菌株においては起こらなかった。
同じ増幅生成物を、マイクロプレート方式で試験した。
カットオフ値を、任意に、0.050に設定した。それぞれのサルモネラ属グループの代表菌株は、すべて0.050よりも大きい光学密度値を与えた(表7)。
【0077】
「感度」
検出可能なサルモネラ属菌の染色体DNAの最小分子数を定量するために、精製された染色体DNAの一定範囲の希釈系列を増幅させた。5分子は、サザンブロットオートラジオグラフィー上で可視的であり、マイクロプレート・ハイブリダイゼーションにより検出される:比色定量により得られた値は、上記のカットオフ値よりも大きい(図8)。
この実施例を行うために選択されたオリゴヌクレオチドは、IagA遺伝子の配列上に位置する(図9)。
【表5】

【表6】

【表7】

【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、サルモネラ血清変種タイフィの侵入領域(tie invasion region)の2.4 kbのDNA断片のヌクレオチド配列を示す。リボソームへの結合についてのポテンシャル部位に下線を付す。
【図2】図2は、サルモネラ血清変種タイフィの侵入領域の2.4 kbのDNA断片のヌクレオチド配列を示す。リボソームへの結合についてのポテンシャル部位に下線を付す。
【図3】図3は、サルモネラ血清変種タイフィの侵入領域の2.4 kbのDNA断片のヌクレオチド配列を示す。
【図4】図4は、サンドウィッチ・ハイブリダイゼーションにより様々な血清変種に属する様々な株のサルモネラ属菌で得られた活性のパーセンテージを示す。様々なサルモネラ属菌の血清変種の単離株が試験された。
【図5】図5は、サルモネラ属菌の6グループの増幅された断片(1345から1644までのヌクレオチド)の配列の図を示す。
【図6】図6は、サルモネラ属菌のそれぞれのグループの2つの代表株における、Iag5およびIag6のプライマーによる増幅を示す。
【図7】図7は、サルモネラ属菌での増幅産生物のサザン・ブロットのオートラジオグラフィーを示す。
【図8】図8は、検出し得る染色体DNA分子の最小数の定量結果を示す。サザンブロットおよびマイクロプレート・ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィーである。
【図9】図9は、IagA遺伝子の範囲内において選択されたオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【図10】図10は、本発明によるオリゴヌクレオチドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルモネラ・エンテリカ( Salmonella enterica ) 種の亜種エンテリカ血清変種タイフィ(S.タイフィと称する)によるヒーラ(HeLa)培養細胞への侵入に関与するヌクレオチド配列であって、図1および図2において示されている配列のヌクレオチド97とヌクレオチド1755との間のiagA配列または図2において示されている配列のヌクレオチド1776とヌクレオチド2255との間のiagB配列であることを特徴とするヌクレオチド配列。
【請求項2】
請求項1の記載にしたがった配列に由来するオリゴヌクレオチドであって、以下の配列、
Iag1:5´−TATTAAGTATGCAGGTTATG−3´
Iag2:5´−AGAGAATTTCTGCAAAGTGAA−3´
Iag3:5´−ATATCCACGCAGGAAATAACAGGACTT−3´
Iag4:5´−GAGCGTGCCTTACCGACGATA−3´
Iag5:5´−GCAGGGATCACTAAGCTGTG−3´
Iag6:5´−CGTGGGCAACCAGCACTAACG−3´
slm1:5´−CGGGTTAAAGGTTATCACCT−3´
slm2:5´−AGCATGGCGCAAATGGG−3´
slm3:5´−GCACCAGGAAAGCATTAAGTTGATAGAACAC−3´
slm4:5´−CTTCGCTGGGACACAAAGCA−3´
SS28:5´−TAATGCTTTCCTGGTGC−3´
Iag7:5´−TACGGCATGGGCTGATTGCT−3´
Iag8:5´−TTACGCTATCGCCCAGCAGCAGGA−3´
Iag9:5´−TGGTCATAACCGAGATGGTTCAAACGATC−3´
Iag10:5´−ACAGTTGTTACAGGATCCCT−3´
の1つに対応することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1の記載にしたがったヌクレオチド配列IagAに由来し、且つサルモネラ・エンテリカ・グループIの特異的検出、またはこうして増幅されたヌクレオチド配列の検出のためのプライマーとして用い得る配列より選択されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3の記載にしたがったオリゴヌクレオチドであって、次の配列、即ち、SS28:5´−TAATGCTTTCCTGGTGC−3´に対応することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
請求項2の記載にしたがったオリゴヌクレオチド対であって、
Iag5(センス):5´−GCAGGGATCACTAAGCTGTC−3´と
Iag6(アンチセンス):5´−CGTGGGCAACCAGCACTAACG−3´との対、または
slm1(センス):5´−CGGGTTAAAGGTTATCACCT−3´と
slm2(アンチセンス):5´−AGCATGGCGCAAATGGG−3´との対
のうちの1つであることを特徴とするオリゴヌクレオチド対。
【請求項6】
サルモネラ・エンテリカおよび/またはサルモネラ・ボンゴリ( Salmonella bongori) とのハイブリッド化が可能なヌクレオチド配列であって、以下の配列、
Iag3:5´−ATATCCACGCAGGAAATAACAGGACTT−3´もしくは
Iag4:5´−GAGCGTGCCTTACCGACGATA−3´、または
slm3:5´−GCACCAGGAAAGCATTAAGTTGATAGAACAC−3´もしくは
slm4:5´−CTTCGCTGGGACACAAAGCA−3´
の1つに対応し、且つラベル化されていることを特徴とするヌクレオチド配列。
【請求項7】
請求項6の記載にしたがったヌクレオチド配列(またはプローブ)であって、プローブIag3もしくはプローブslm3は増幅されたヌクレオチド配列の存在を表示するためのプローブであり、且つプローブIag4およびプローブslm4は増幅されたヌクレオチド配列を捕獲するためのプローブであることを特徴とするヌクレオチド配列。
【請求項8】
請求項2のオリゴヌクレオチドの使用であって、サルモネラ・エンテリカおよび/またはサルモネラ・ボンゴリ由来のDNA配列またはcDNA配列(請求項1のヌクレオチド配列に含まれるか、またはそのような配列に対して相補的である)を増幅するためのプライマーとして、または増幅されたヌクレオチド配列を検出するためのプローブとしての使用。
【請求項9】
請求項5のオリゴヌクレオチド対の使用であって、S.エンテリカ種および/またはS.ボンゴリ種のグループI、II、III、IV、VもしくはVIの細菌由来のヌクレオチド配列を増幅するためのプライマーとしての使用。
【請求項10】
S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたは相補的DNAの増幅後に、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリの細菌を検出するために用い得るオリゴヌクレオチドのセットであって、
厳格な条件の下で、S.エンテリカおよび/またはS.ボンゴリのゲノムDNAまたはcDNAとハイブリッド化することが可能な、請求項4または5のいずれか1項のオリゴヌクレオチド対と、
請求項6のプローブと
を具備することを特徴とするオリゴヌクレオチドのセット。
【請求項11】
生物学的試料中において、グループI、II、III、IV、VもしくはVIの1つに属するサルモネラ・エンテリカおよび/またはサルモネラ・ボンゴリの菌株のインビトロ検出のために用い得るオリゴヌクレオチドのセットであって、次のオリゴヌクレオチド、即ち、
増幅のためのプライマーとして用い得る配列Iag5(5´−GCAGGGATCACTAAGCTGTG−3´)および配列Iag6(5´−CGTGGGCAACCAGCACTAACG−3´)と、
表示プローブとして用い得る配列Iag3(5´−ATATCCACGCAGGAAATAACAGGACTT−3´)および捕獲プローブとして用い得る配列Iag4(5´−GAGCGTGCCTTACCGACGATA−3´)とを含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドのセット。
【請求項12】
生物学的試料中において、S.エンテリカのグループIのインビトロでの特異的検出のために用い得るオリゴヌクレオチドのセットであって、次のオリゴヌクレオチド、即ち、
SS2 (5´−CCGGGCAGATGATACCC−3´と、
SS28 (‘−TAATCGTTTCCTGGTGC−3´)と
を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドのセット。
【請求項13】
請求項1のヌクレオチド配列iagAによりコードされることを特徴とするIagAタンパク質。
【請求項14】
図1および図2におけるアミノ酸1からアミノ酸553までのアミノ酸鎖に対応することを特徴とする、請求項13に記載のIagAタンパク質。
【請求項15】
請求項1のヌクレオチド配列iagBによりコードされることを特徴とするIagBタンパク質。
【請求項16】
図2におけるアミノ酸554からアミノ酸713までのアミノ酸鎖に対応することを特徴とする、請求項15に記載のIagBタンパク質。
【請求項17】
前もって、例えばPCRにより増幅され且つ変性されたサルモネラ・エンテリカのヌクレオチド配列を、生物学的試料中においてインビトロ検出するための方法であって、
増幅されたS.エンテリカの配列を変性させる工程と、
このS.エンテリカ由来の増幅され変性されたヌクレオチド配列と、請求項2、6または7のいずれか1項のオリゴヌクレオチドから得られる捕獲プローブおよび表示プローブとを、前記の捕獲プローブおよび表示プローブがS.エンテリカ由来の上記の増幅されたヌクレオチド配列とハイブリッド化することを許容する条件下で接触させる(なお捕獲プローブはマイクロタイタープレートのウェル表面に付着させ、表示プローブはラベルして、ハイブリダイゼーション用緩衝液中に遊離させておく)工程と、
ハイブリダイゼーション反応をさせるために十分な時間、反応混合物をインキュベートする工程と、
未反応のオリゴヌクレオチドを除去するために洗浄する工程と、
増幅されたヌクレオチド配列にハイブリッド化した表示プローブを顕在化させる工程と、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の検出方法であって、
捕獲プローブがオリゴヌクレオチドIag4であり、表示プローブがオリゴヌクレオチドIag3であることと、前記検出が
等容量の(volume for volume) 200mM NaOH,40mM EDTA溶液を添加することにより、10μl容量の増幅配列を変性させる工程と、
適切なハイブリダイゼーション用緩衝液中において、ウェル表面が捕獲プローブにより被覆されたマイクロプレートのプレハイブリダイゼーションを行う工程と、
マイクロプレートを空にして、変性された増幅断片及び10ng/μlの濃度のペルオキシダーゼでラベル化された表示プローブを含む200μlのハイブリダイゼーション用緩衝液を、それぞれのウェルに充填する工程と、
この混合物を、攪拌しながら37℃での1時間のインキュベーションを行う工程と、
10X洗浄溶液(100mMのトリス,3MのNaCl,1%のトゥイーン20,pH7.4)を用いて、反応した混合物を洗浄する工程と、
発色基質の存在下での比色定量によって、プローブに結合したペルオキシダーゼの活性を検出する工程と、
にしたがって行われることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の検出方法であって、前記ペルオキシダーゼの活性が下記の工程、即ち、
反応混合物を含むそれぞれのウェルに、200μlの、40mMのクエン酸三ナトリウム溶液,0.03% H2 O 30%,7.5mg/mlのオルソフェニレンジアミン(OPD)を入れる工程と、
暗室内において37℃で30分間、マイクロプレートのインキュベーションを行う工程と、
4NのH2 SO4 溶液を50μl/ウェル添加することにより、反応のブロッキングを行う工程と、
492nmの波長での光学密度を定量(レファレンスの波長は620nm)する工程と
により行われることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−67706(P2008−67706A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−237206(P2007−237206)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【分割の表示】特願平8−4622の分割
【原出願日】平成8年1月16日(1996.1.16)
【出願人】(596009674)アンスティテュ・パストゥール (23)
【出願人】(596005872)アンスティテュ・ナシオナル・デゥ・ラ・サンテ・エ・デゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル (8)
【Fターム(参考)】