説明

サルモネラO9群の検出法

【課題】
サルモネラO9群を特異的、高感度かつ迅速に検出する方法を提供すること。
【解決手段】
サルモネラO9群のインサーション・エレメント(Insertion Element)遺伝子に由来する塩基配列に着目し、サルモネラO9群の塩基配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーの塩基配列と、その組み合わせを見いだした。このプライマーを用いて、特異的、高感度かつ迅速にサルモネラO9群を検出する方法を確立し、サルモネラO9群検出用キットを開発した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の高感度な検出法を利用したサルモネラO9群の検出方法と検出用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成16年のサルモネラによる食中毒事件数及び患者数は、厚労省食中毒統計によると、それぞれ225件、3,788人であり、国内第一位である(除ノロウイルス)が、その内、Salmonella Enteritidis(サルモネラ・エンテリディス、以下S.Enteritidis)が半数以上を占めると考えられる(2002年では62%)。また、S.Enteritidis食中毒においては、原因食品に鶏卵が使用されていた事例が多い。S.Enteritidisは鶏の盲腸、肝臓、卵管、卵胞から分離されるので、鶏卵内への汚染リスクがあり、鶏飼育のS.Enteritidis管理の重要性が指摘されている。農水省は、鶏卵のサルモネラ総合対策指針において、養鶏場の環境、鶏、鶏卵からのサルモネラの分離同定及び血清型別を求めている。また、輸入初生ひなのサルモネラ検査要領の制定では、S.Pullorum(サルモネラ・プローラム)、S.Gallinarum(サルモネラ・ガリナルム)、S.Dublin(サルモネラ・ダブリン)、S.Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス)、S.Typhimurium(サルモネラ・ティフィムリウム)、S.Choleraesuis(サルモネラ・コレラエスイス)が分離された場合、初生ひなを処置するように指示が記載されている。
【0003】
サルモネラは、Kauffmann-Whiteの様式によって血清型を菌種名としており、現在、2,500種類以上が知られている。この血清型別は、OおよびH抗原を決定して抗原構造表に基づいて同定を行うが、煩雑であり、技術を要する(非特許文献1)。
【0004】
一方、遺伝子検査法の発達でサルモネラ属菌に良く保存されている遺伝子配列を特異的に認識するオリゴヌクレオチドを用いたDNAプローブ法、あるいはハイブリダイゼーション法が試みられるようになってきた(特許文献1〜3)。しかしこの方法では、十分な検出感度と選択性を得るのが難しい。
【0005】
またサルモネラ属菌に特異的な遺伝子領域を認識し、結合する2種類のプライマーに挟まれる塩基配列を増幅し、増幅産物をアガロース電気泳動で確認するPCR法も行われている(非特許文献2、特許文献4〜6)。PCR法は確定培養法およびハイブリダイゼーション法と比較して、高い感度と簡便な操作性を実現しているが、増幅反応やアガロース電気泳動に長時間を要し、検体数が多くなると煩雑なゲル電気泳動を行うため多大な労力と時間の浪費を伴い、効率良い検出操作を行う上での障害となっている。また、正確な温度制御が不可欠であり、専用の反応装置を使用しなければならなず、したがって設備の整った実験室でなければ実施できない。
【0006】
本発明者らは、現在知られている方法、免疫学的測定法やPCR法より高感度で特異的かつ所要時間が短い検出方法、すなわちLAMP法を用いることで、本発明の目的を達成できた。
【0007】
【非特許文献1】防菌防黴 Vol.29、No.9、pp587〜594、2001
【非特許文献2】Letters in Applied Microbiology 34 (6), 422-427.
【特許文献1】特開平06-090797
【特許文献2】特許第2780773
【特許文献3】特公平06-038759
【特許文献4】特許第2792462
【特許文献5】特開2000-093181
【特許文献6】特開2001-245677
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サルモネラO9群を高感度に検出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、サルモネラO9群インサーション・エレメント(Insertion Element、以下IE)遺伝子に特異的な塩基配列と選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、LAMP法によりサルモネラO9群IE遺伝子に特異的な塩基配列を増幅することで、サルモネラO9群を高感度に検出できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)サルモネラO9群を特異的に増幅、および検出するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーであって、配列番号1で示されるサルモネラO9群IE遺伝子配列の812番〜1082番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列から設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(2)サルモネラO9群IE遺伝子に由来する塩基配列から選ばれた配列番号2〜9で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列から選ばれた、少なくとも連続する15塩基を含む(1)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(3)サルモネラO9群IE遺伝子の標的核酸上の3'末端側からF3c、F2c、F1cという塩基配列領域を、5'末端側からB3、B2、B1という塩基配列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列をF3、F2、F1、そしてB3c、B2c、B1cとしたときに、以下の(a)〜(d)から選ばれた少なくとも1種の塩基配列からなることを特徴とする(1)〜(2)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸のF2領域を3'末端側に有し、5'末端側に標的核酸のF1c領域を有する塩基配列。
(b)標的核酸のF3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸のB2領域を3'末端側に有し、5'末端側に標的核酸のB1c領域を有する塩基配列。
(d)標的核酸のB3領域を有する塩基配列。
(4)サルモネラO9群IE遺伝子に特異的な塩基配列を増幅でき、5'末端から3'末端に向かい以下の(a)および/または(b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする(1)〜(3)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)5'-(配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号3の塩基配列)-3'
(b)5'-(配列番号6の塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号7の塩基配列に相補的な塩基配列)-3'
(5)(1)〜(4)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、サルモネラO9群のIE遺伝子の標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とするサルモネラO9群の検出方法。
(6)サルモネラO9群IE遺伝子の標的核酸領域の増幅反応がLAMP法であることを特徴とする(5)のサルモネラO9群IE遺伝子の検出方法。
(7)(1)〜(4)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いサルモネラO9群IE遺伝子の標的核酸領域の増幅を検出することにより、サルモネラO9群の存在の有無を検出することを特徴とするサルモネラO9群IEによるサルモネラO9群の検出方法。
(8)サルモネラO9群IEによるのサルモネラO9群の検出方法において、(1)〜(4)記載のオリゴヌクレオチドプライマーを含むことを特徴とするキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、特異的、高感度かつ迅速にサルモネラO9群遺伝子を検出できる。以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において使用される試料としては、鶏、鶏卵、養鶏場環境検体あるいは食品検体を接種した増菌培養液などが挙げられる。
【0013】
増菌培養液などを試料とする場合、タンパク質分解酵素等による組織細胞由来タンパク質を分解後、フェノールおよびクロロホルムを用いた方法など一般的なDNA抽出・精製法はもちろん、既に市販されている抽出キットを用いて得られた抽出核酸を検体とする。もしくは、迅速な検出のため、未精製の状態のままの試料処理液を検体として使用できる場合も含む。
【0014】
このような細菌の核酸を増幅するためには、近年、納富らが開発した、PCR法で不可欠とされる温度制御が不要な新しい核酸増幅法:LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法と呼ばれるループ媒介等温増幅法(特許公報国際公開第00/28082号パンフレット)で達成させられる。この方法は、鋳型となるヌクレオチドに自身の3'末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とした核酸増幅法である。また、LAMP法では、プライマーの3'末端が常に試料に由来する領域に対してアニールするために、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能し、その結果として、高感度にかつ特異性の高い核酸増幅反応を可能としている。
【0015】
LAMP法の増幅反応には鋳型となるヌクレオチドの6領域を認識する少なくとも4種類のプライマー(2種類インナープライマーFとB;IPFとIPB、2種類のアウタープライマー;OPFとOPB)を使用し、さらにこれとは別のプライマーであるループプライマー(Loop Primer)を用いる事ができる。ループプライマーは、LAMP増幅反応中に出現するダンベル構造を持ったオリゴヌクレオチドを認識するプライマーで、5'末端側ループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。このプライマーを用いることにより、核酸合成の起点が増加し、反応時間の短縮と検出感度の上昇が可能となる(特許文献国際公開第02/24902号パンフレット)。ループプライマーの塩基配列は、上述のダンベル構造における5'末端側のループ構造の一本鎖部分を形成する塩基配列に相補的であれば、標的遺伝子の塩基配列あるいはその相補鎖から選ばれても良く、他の塩基配列でも良い。また、ループプライマーは1種類でも2種類でも良い。なお、各プライマーにおけるFとは、標的塩基配列のセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー表示であり、一方Bとは、標的塩基配列のアンチセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー表示である。ここで、プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドの長さは、10塩基以上、好ましくは15塩基以上で、化学合成あるいは天然のどちらでも良く、各プライマーは単一のオリゴヌクレオチドであってもよく、複数のオリゴヌクレオチドの混合物であってもよい。
【0016】
本発明者らは、サルモネラO9群を特異的に検出するため、サルモネラO9群のIE遺伝子に由来する塩基配列に着目した。IEの塩基配列(Z83734、配列番号1)は、トランスポゾンの一種であるInsertion SequenceのIS200とIS1351の組み合わせ配列である。IS200とIS1351は、O9群以外のサルモネラや大腸菌にも存在するが、サルモネラO9群のIE配列は、IS200の配列間にIS1351の配列が挿入された特有の配列になっている。プライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結果、IS200側をF領域、IS1351の領域をB領域になるようにLAMPプライマー配列を設定することにより、サルモネラO9群に特異的な塩基配列を迅速に増幅できることを見いだし、下記のプライマーセットを選定した。
IPF:5'-GTAGGGCAGTAGGCAGCATATTCTGCACAACATTCTGCTTCCAG-3' (配列番号10)
OPF:5'-AACTCGACACACTCATCTTCGG-3' (配列番号4)
IPB:5'-GTAAGTATCCCGCATAATCGTGCCGCATAGCGATCTCCTTCGTTG-3' (配列番号11)
OPB:5'-CACAGTGATGATCTGATGCTCAG-3' (配列番号12)
LPF:5'-AATTGTGTGAATGGAAAAACGTACG-3' (配列番号13)
LPB:5'-CACATTTAGAGATCATCCGGCATAA-3' (配列番号9)
【0017】
核酸合成で使用する酵素は、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント等が挙げられ、好ましくはBst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)が挙げられる。
【0018】
LAMP反応による核酸増幅産物の検出には公知の技術が適用できる。例えば、増幅された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドや蛍光性インターカレーター法(特許文献特開2001-242169号公報)を用いたり、あるいは反応終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかけても容易に検出できる。アガロースゲル電気泳動では、LAMP増幅産物は、塩基長の異なる多数のバンドがラダー(はしご)状に検出される。また、LAMP法では核酸の合成により基質が大量に消費され、副産物であるピロリン酸が、共存するマグネシウムと反応してピロリン酸マグネシウムとなり、反応液が肉眼で確認できる程度に白濁する。したがって、反応中の濁度上昇経過や反応終了後の濁度を光学的に観察できる分光光度計等の測定機器を用いて確認することも可能である(特許文献国際公開第01/83817号パンフレット)。
【0019】
本発明のプライマーを用いて核酸増幅の検出を行う際に必要な各種の試薬類は、あらかじめパッケージングしてキット化する事ができる。具体的には、本発明のプライマーあるいはループプライマーとして必要な各種のオリゴヌクレオチド、核酸合成の基質となる4種類のdNTP、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液や塩類、酵素や鋳型を安定化する保護剤、さらに必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類がキットとして提供される。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1:検出感度の確認
LAMP法と、PCR法の検出感度の比較を行った。
1.試料及び試薬の調製
1)サルモネラO9群培養液
検討には、栄研化学(株)保存S.Enteritidis EKN5785株を用いた。発育コロニーを滅菌生理食塩水でMcFarland#4(1.2x109cfu/mL)に懸濁し、懸濁液を10倍ずつTE緩衝液(ニッポンジーン社製)で段階的に希釈を行い、95℃・5分間加熱処理したものを鋳型DNAを含む検体として用いた。
【0022】
2)PCR法に用いるプライマー
PCR法で使用するプライマーとして、Wangらが開発したIE2L-IE3Rセットを用いた。
3)LAMP法に用いるプライマー
プライマーとしてIPF(配列番号10)、OPF(配列番号4)、IPB(配列番号11)、OPB(配列番号12)、LPF(配列番号13)、LPB(配列番号9)を用いた。
【0023】
2.核酸増幅法による反応
1)PCR法による反応
PCR反応は、非特許文献2に記載の方法で行った。
反応あたり各試薬が下記になるよう調製した。
<IE2L-IE3Rセット反応溶液組成および反応条件>
・IE2Lプライマー(配列番号14)、IE3Rプライマー(配列番号15)各1μM
・dNTPs各250μM
・1 x reaction buffer(1.5mM MgCl2)
・Taq Polymerase 2.5U

反応溶液に各希釈段階の検体5.0μLを加え、最終反応液量50.0uLとして各PCR反応を行った。PCR反応の温度サイクル条件は、94℃2分静置後、熱変性94℃40秒、アニーリング55℃50秒、ポリメラーゼ伸長反応72℃50秒を1サイクルとして計35サイクル行い、反応を終了した。所要時間は約2時間であった。反応終了後の反応溶液10μLを2%アガロースゲルで電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色した。
【0024】
2)LAMP法による反応
LAMP法による増幅のため、最終反応溶液25μL中の各試薬濃度が下記になるよう調製した。なお、プライマーの合成はオペロンバイオテクノロジー社に依頼し、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)精製したものを使用した。
反応溶液組成
・20mM Tris-HCl pH8.8
・10mM KCl
・8mM MgSO4
・1.4mM dNTPs
・10mM (NH4)2SO4
・0.8M Betaine(SIGMA)
・0.1% Tween20
・1.6μM IPF (配列番号10)
・1.6μM IPB (配列番号11)
・0.4μM OPF (配列番号4)
・0.4μM OPB (配列番号12)
・0.8μM LPF (配列番号13)
・0.8μM LPB (配列番号9)
・8U Bst DNA polymerase (NEB)
【0025】
LAMP反応は上記試薬20μLに、各濃度の試料溶液5μLを加え、最終反応溶液25μLとして、0.2mLの専用チューブ内で65℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA-200(栄研化学)を用いて、濁度を測定した。
【0026】
図1に示したように、LAMP法では、IE遺伝子を保有したS.Enteritidis EKN5785株を60分以内に6cfu/testまで検出することが可能であった。比較としたPCRの検出感度は6x103CFU/testであり、約2時間の増幅時間の他に電気泳動分析が必要であった(図2)。検出感度及び迅速性において、PCR法より今回のLAMP法の方が優れていた。
【0027】
実施例2:プライマーの特異性試験(各血清型)
サルモネラO9群以外のサルモネラとの交差反応性を確認するため、サルモネラO9群5血清型108菌株及びO9群以外のサルモネラ54血清型93菌株を用いてLAMP法の特異性試験を行った。その結果、表1に示すように試験したS.Enteritidis102株はすべてLAMP反応が陽性であった。S.Enteritidis以外でLAMP反応陽性を示した血清型S.Dublin、S.Gallinarum、S.Hillington、S.Pullorumの4種の菌株はいずれもS.Enteritidisと同一のサルモネラO9群に分類されたものであった。O9群以外のサルモネラ54血清型93菌株では、すべてLAMP反応陰性であった。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例3:プライマーの特異性試験(サルモネラ以外の菌株)
サルモネラ以外との交差反応性を確認するため24菌種1菌属78菌株についてLAMP法の特異試験を行った。その結果、表2に示すようにすべて反応せず、陰性であった。
以上のように、設計したプライマーセットはサルモネラO9群を特異的に認識し、近縁菌種をふくめ、他菌種とは交差性を示さないことが明らかとなった
【0030】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、サルモネラO9群のIE遺伝子に特異的な塩基配列と選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、LAMP法によりサルモネラO9群IE遺伝子に特異的な塩基配列を増幅することで、サルモネラO9群を特異的、高感度かつ迅速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】リアルタイム濁度法によるLAMP法の検出感度を示す。横軸は時間(分)、縦軸は650nmでの吸光度(濁度)である。
【図2】IE2L-IE3RセットPCR法による検出感度を示す電気泳動図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルモネラO9群を特異的に増幅、および検出するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーであって、配列番号1で示されるサルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子配列の812番〜1082番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列から設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項2】
サルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子に由来する塩基配列から選ばれた配列番号2〜9で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列から選ばれた、少なくとも連続する15塩基を含む請求項1記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項3】
サルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子の標的核酸上の3'末端側からF3c、F2c、F1cという塩基配列領域を、5'末端側からB3、B2、B1という塩基配列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列をF3、F2、F1、そしてB3c、B2c、B1cとしたときに、以下の(a)〜(d)から選ばれた少なくとも1種の塩基配列からなることを特徴とする請求項1〜2記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸のF2領域を3'末端側に有し、5'末端側に標的核酸のF1c領域を有する塩基配列。
(b)標的核酸のF3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸のB2領域を3'末端側に有し、5'末端側に標的核酸のB1c領域を有する塩基配列。
(d)標的核酸のB3領域を有する塩基配列。
【請求項4】
サルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子に特異的な塩基配列を増幅でき、5'末端から3'末端に向かい以下の(a)および/または(b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする請求項1〜3記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)5'-(配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号3の塩基配列)-3'
(b)5'-(配列番号6の塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号7の塩基配列に相補的な塩基配列)-3'
【請求項5】
請求項1〜4記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、サルモネラO9群のインサーション・エレメント遺伝子の標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とするサルモネラO9群の検出方法。
【請求項6】
サルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子の標的核酸領域の増幅反応がLAMP法であることを特徴とする請求項5記載のサルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子の検出方法。
【請求項7】
請求項1〜4記載のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてサルモネラO9群インサーション・エレメント遺伝子の標的核酸領域の増幅を検出することにより、サルモネラO9群の存在の有無を検出することを特徴とするサルモネラO9群インサーション・エレメントによるサルモネラO9群の検出方法。
【請求項8】
サルモネラO9群インサーション・エレメントによるサルモネラO9群の検出方法において、請求項1〜4記載のオリゴヌクレオチドプライマーを含むことを特徴とするキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−135499(P2007−135499A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335378(P2005−335378)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年8月31日 第140回日本獣医学会学術集会会長 坂本 紘、国立大学法人鹿児島大学農学部獣医学科発行の「第140回 日本獣医学会学術集会講演要旨集」に発表
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】