サンドイッチ板階段状蹴上部
【課題】より軽量で、より単純な構造であり、より良好に減衰する改良型の座席蹴上部を提供する。
【解決手段】スポーツスタジアム用の2段式座席蹴上部は、中実のエラストマーコア12によって互いに接合された上部10および下部金属板11によるサンドイッチ構造を備える。エラストマーコア12は、踏板および蹴上板で異なる厚さを有する。下側踏板は、下の蹴上部との位置合わせを容易にするように金属板が開かれているリップ部分45,46を有する。
【解決手段】スポーツスタジアム用の2段式座席蹴上部は、中実のエラストマーコア12によって互いに接合された上部10および下部金属板11によるサンドイッチ構造を備える。エラストマーコア12は、踏板および蹴上板で異なる厚さを有する。下側踏板は、下の蹴上部との位置合わせを容易にするように金属板が開かれているリップ部分45,46を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段状蹴上部、特にスポーツスタジアムおよびその他の娯楽会場用の座席蹴上部に関する。
【0002】
スポーツおよびその他のイベントによる収益を増加させるために、スポーツスタジアムまたはその他の会場内に収容することができる観客数を最大にすることが望ましい。このためには、追加の座席列を提供することが必要であり、その結果、上側の円形座席のかなりの部分が他の構造部分上に片持梁状に突き出した構造となることがよくある。したがって、支持構造のサイズおよびコストを減少させるためにこのような座席を支持する蹴上部の重量を最小化すべきである。スポーツおよび娯楽イベントに付随する過渡振動および共振を減少させるために、蹴上部は剛性であり、十分な質量を有しなければならない、もしくは良好な減衰特性を有する材料で製造されなければならない。
【背景技術】
【0003】
座席蹴上部の既存の設計は、プレストレストまたはプレキャストコンクリート製または鋼製である。知られている蹴上部部分は、コンクリートが0.2の減衰係数と良好な耐火性を有し、比較的低い維持コストを有するためほどよい共振制御を有する傾斜梁間の長いクリアスパン(通常12,200mm)を可能にするので、一般にコンクリートから製造される。コンクリート構造の主要な欠点は、蹴上部部分が重く、たとえば2段蹴上部で約10トンなどであり、自重(死荷重)が使用および占有による設計積載活荷重と等しいことである。したがって、蹴上部部分を支持するための、より重く、強く、剛性であり、コスト効果のより高い、上部構造および基礎を提供することが必要であり、特に大きな片持ち座席部分用の場合はこれが必要となる。
【0004】
自重を最小にし、したがって上部構造および基礎のコストを低減するために、蹴上部部分は、中間傾斜梁および補助的な鋼製枠組によって支持された、折り曲げ加工された鋼板で製造されてもよい。通常、このタイプの構造の最大スパンは、約6100mmであり、自重は、それと等価なコンクリート構造の約40%である。しかし、鋼製の蹴上部は、音響および振動の問題をより受けやすく、0.1の減衰係数を有し、また中間傾斜梁および補助的な鋼製枠組の製造組立てに関連する追加のコストを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、たとえばより軽量で、より単純な構造であり、かつ/またはより良好に減衰する改良型の座席蹴上部を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
本発明によると、上部および下部金属板と、その間でせん断力を伝達するように前記金属板に接合されたプラスチックまたはポリマー材料の中間層とを有するサンドイッチ構造を備える階段状蹴上部が提供される。
【0007】
階段状蹴上部の形成で使用されるサンドイッチ構造板は、それに匹敵する厚さの鋼板と比べて大きい剛性を有し、補剛要素を設ける必要性を避ける、または低減する。これによって、溶接部がより少ないまたは溶接部が1つもないかなり単純な構造になり、簡単化された製造と共に、疲労または腐食を受けやすい領域の減少という結果を導く。本発明での使用に適したサンドイッチ板構造のさらなる詳細は、米国特許第5,778,813号およびイギリス国特許出願GB−A−2 337 022で見出すことができる。中間層は、イギリス国特許出願第9926333.7号に記載のような複合材料コアであってもよい。
【0008】
上部および下部の外側の金属板は、好ましくは2から10mmの範囲の厚さを有し、中間層は10から100mmの範囲の厚さである。座席用の空間を提供するために、蹴上部の走程(深さ)は、好ましくは600から1200mmの範囲にある。蹴上部の傾斜は、好ましくは20°から45°の範囲である。外側の金属板は、好ましくは平行であるが、必ずしもそうである必要はない。
【0009】
本発明は、1つまたは複数、通常2つの段(階段)を有する蹴上部を提供し、プレストレストまたはプレキャストコンクリートに匹敵するが重量は約70%少ない、たとえば長さ6から20mの長いクリアスパンを提供することによって、および同じスパンの総て鋼製の蹴上部に付随する補助的な鋼製部材を必要としない、複雑さを減少させた構造を提供することによって、従来タイプの構造に対する独特な利点を提供する。プラスチックまたはポリマー(たとえばポリウレタンエラストマー)のコアは、天然の減衰器として働き、振動を減少させ(本発明による蹴上部に対する減衰係数を0.4から0.5の間にすることができる)、優れた防音を提供し、快適性と安全性の両方を改善する。また、本発明によって提供される構造は、異種の金属を溶接なしで使用することが可能である。したがって、維持作業を減少させ、寿命を改善し、その視覚的魅力を維持する耐腐食性ステンレス鋼を、下側表面用のより低価格な構造鋼を伴って、摩擦を受ける表面用に使用することができ、これを傾斜梁にボルト留めされたTスタブ部分を通して溶接またはボルト留めすることができる。構造鋼は、適切な腐食保護を提供するために、亜鉛めっきされても、またはエポキシまたは亜鉛の濃度が高いペイントで被覆されてもよい。
【0010】
蹴上部部分は、良好な寸法精度を有する高品質な構造部分を提供するために制御された条件下で製造することができる。手すり、座席に対する接続部および長手方向の接合密封部は、プレストレストまたはプレキャストコンクリートのものと同様にすることができる。水の流出および組立てを容易にし、蹴上部の水平方向のたわみを制限するために、ドリップリップおよび交互にかみ合う長手方向継ぎ目を備えることができる。
【0011】
本発明の実施形態における、一体型ガイド、互いにかみ合う、ドリップを付けられた蹴上部板、ならびにボルト留めされた接続部は、蹴上部の配置および設置を簡単にする。2段蹴上部は、ガイド板を介して下部部分と一列に並べられ、傾斜梁にボルト留めされる。たとえば1000mmごとにガイド縁に沿って設けられた追加のボルトが、移送または設置中2つの板の一方が偶発的に押し開かれた場合に離脱を防止する。
【0012】
別法として、サンドイッチ板の蹴上部は、プラスチックコアを完全に内包するように閉じた状態で溶接されてもよい。このことは、プラスチックコアの鍛造用の囲枠を形成するためのより複雑な可調整ジグの必要をなくすことによって、たとえばボウルの端部の楔状部分などの形をとる部分の製造を簡単にする。また、このタイプの部分は、縁部に沿って露出したプラスチックが1つもないため優れた耐火性を有し、火に耐えるように設計しなければならないスタジアムの部分で使用することができる。
【0013】
本発明による蹴上部は、関連する実用性基準、および振動およびたわみ制御、および板の取扱いに関する製造制約条件に適合するように設計することができる。踏板および蹴上部の強度および剛性は、2つの異なるコア厚さを特定することによって、コストおよび重量を最小にしながら性能を改善するように整えることができる。結果としての構造は、軽量で剛性であり、コアの固有の緩衝特性を有することで、補剛された鋼板と圧延された部分(補助的な鋼部材)で建造された蹴上部、またはプレストレストコンクリートで建造された蹴上部から改善された構造および振動応答性能を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の座席蹴上部が使用されることがあるスポーツスタジアムの平面図である。
【図2】本発明による座席蹴上部が使用される図1のスタジアムの部分の断面図である。
【図3】溶接なしで製造された本発明の第1の実施形態による座席蹴上部の透視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による溶接された座席蹴上部の端面図である。
【図5】上側の傾斜梁との、および隣接する蹴上部との接続を示す図3の座席蹴上部の部分断面図である。
【図6】図4の座席蹴上部の図5と類似の図である。
【図7】蹴上部が傾斜梁ブラケットに固定される方法を示す図3の座席蹴上部の部分拡大透視図である。
【図8】代替となる傾斜梁ブラケットの透視図である。
【図9】代替となる傾斜梁ブラケットの透視図である。
【図10】本発明による座席蹴上部に溶接された図8の取付けブラケットの上面図である。
【図11】手すりを本発明の座席蹴上部に取り付けるための構成を示す透視図である。
【図12】手すりを本発明の座席蹴上部に取り付けるための代替となる構成を示す透視図である。
【図13】座席ブラケットを本発明の座席蹴上部に取り付けるための構成を示す透視図である。
【図14】本発明による2つの座席蹴上部間の密封構成を示す断面図である。
【図15】本発明による2つの座席蹴上部間の代替となる密封構成を示す断面図である。
【図16】蹴上部の代替となる形状の平面図である。
【図17】蹴上部の代替となる形状の平面図である。
【図18】蹴上部の代替となる形状の平面図である。
【図19】本発明による蹴上部の代替形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の以下の説明、および添付の概略図面を参照にして、本発明を以下でさらに説明する。
【0016】
様々な図面で、類似の部品を類似の参照番号によって示す。
【0017】
図1は、片側に、傾斜した座席部分3を備える高いスタンド(上部ボウル)2を有するスポーツスタジアム1を示す。これらの座席部分は、スタンド縁部で平面が台形状(楔状)になるように、中盤がほぼ矩形であり、外側へ広がっている。座席部分3は通常、下端で約36フィート(約11m)、上縁または外縁で約40フィート(約12.5m)の幅を有する。このような座席部分の断面を図2に示す。図を見ればわかるように、スタンドの上部ボウルは、傾斜梁5に取り付けられた一連の座席蹴上部4から成り、傾斜梁5はスタジアムの他の部分の上で片持ち支持されている。座席蹴上部は、最適な観覧位置となる座席の数を最大にするようにいくつかの高さに配置されてもよい。
【0018】
2段蹴上部4が、図3で透視図で示されており、第1の蹴上板43によって接合された上側および下側踏板41、42を備える。第2の蹴上板44が、第1の踏板41の背縁から上側に突き出しており、リップ45が踏板42の前縁から下向きに突き出している。
【0019】
2段蹴上部は、たとえば厚さ4mmの2枚の折り曲げ加工された板10、11と、図4に示すように、踏板でたとえば40mmの、蹴上板でたとえば20mmの厚さを有する構造用ポリウレタンエラストマーのプラスチックコア12とによって形成することができる。11m蹴上部は約3トンの重量であり、すなわち水平投影面積の1平方フィート当たり30ポンド(約145kgm−2)である。鋼製部分は、1枚の圧延板で作製することができるが、折曲げ加工または圧延形成の前に、板のサイズ調整をするために、制限された切断を必要とする。折り曲げ加工された板は、適切なスペーサ群(たとえばせん断スタッド群またはプラスチック(エラストマー)スペーサ群)および側部成形型部分とともに鋼製の成形型(ジグ)内に配置される。成形型が閉じられ、ポリウレタンエラストマーコアが、たとえば1つまたは複数のPuromatPU150高圧計量機を介して閉じたキャビティ内に約200から400秒間射出される。ゲル化および凝結は、射出が完了したあとに開始するように選択される。この部分は、1時間以内に成形型から取り外すことができる。成形型(ジグ)の使用によって、比較的薄い折り曲げ鋼板を正確に配置し、支持されるようにして、寸法精度が得られるようにする。穿孔されたボルト穴が、冷間切断(必要に応じて楔状部分のみ)によって最終的にサイズ調整され、構造鋼板へのエポキシ被膜塗布が、蹴上部部分を完成させる。現場製造および仕上げによって、高品質の構造製品が確実になる。この部分を事前製造して、必要になるまで現場以外で保管することができる。蹴上部部分を傾斜梁に接合するボルト接続部での局部曲げ応力を減少させるために、コア材料の射出前に2重板を構造板に溶接することができる。
【0020】
蹴上部部分は、持ち上げを容易にし、配置および設置を容易にするための適切な細部品(位置合わせ用の開いた縁を有する一体型ガイド、ドリップリップ、コーキングジョイント、引き上げ装置)を備える。剛性であり、コンクリート部分に比べて比較的軽量である蹴上部部分は、容易に持ち上げて、適切な位置にボルト留めすることができる。本発明による蹴上部部分は、より頑丈であり、配置中部分が手荒く扱われた場合、欠けおよびひび割れを受けにくいため、コンクリート蹴上部よりも迅速に組み立ててもよい。長手方向の接合シーラントが付着され、事前製造されたステンレス鋼の階段部分が適切な位置にボルト留めされる。座席および手すりの設置は、プレストレストコンクリート蹴上部に使用した方法と同様の方法、たとえばHilti(登録商標)エクスパンションまたはエポキシボルトまたはアンカを用いて、穿孔およびボルト留めすることによって完了することができる。必要に応じて特別な取付け装置および排水細部品を設けることができる。
【0021】
図4は、蹴上部4’がプラスチックコアを完全に包囲するように溶接された、代替となる構造の端面図である。上側板10’および下側板11’が長縁を閉じるように折り曲げられて、単純な溶接部を提供し、図6に示すような隣接する蹴上部部分をボルト留めするのに適した、ぴったりはまりあう雄型および雌型の縁部61、62を形成する。端部板100がこの部分を閉じるように形状をつくって切断され、両端で嵌合および溶接される。
【0022】
図5および6は、第1の蹴上部4−1と第2の蹴上部4−2または4’−2の間の接続、ならびに第1の蹴上部4−1または4’−1の傾斜梁5への取付けの詳細を示す。第1の蹴上部4−1、4’−1の第2の蹴上板44は、上側の蹴上部4−2、4’−2のリップ部分45内に係合する。リップ部分45は、開いた縁部47を有し、ドリップリップとして働き、溶接されない構造については、ボルト46が内側および外側の板10、11およびコア12を互いに保持して、移送中の雑な取扱いまたは取付け不良の場合の層間剥離を防止する。溶接される実施形態では、ボルト46’が、蹴上部4’−1の雄型端部61を蹴上部4’−2の雌型端部62と接合する。各蹴上部を傾斜梁5に取り付けるために、T字型ブラケット6が設けられる。これらは、ボルト62、61によって座席蹴上部4の蹴上板44、43に、および傾斜梁5にもボルト留めされる。
【0023】
図5および6は、2つの長手方向に隣接する蹴上部が1つのブラケット6にボルト留めされるように、座席蹴上部の縁部でT字型ブラケット6を位置決めすることを示す。ブラケット6は、図7に示すように、蹴上部部分の配置の前に傾斜梁5にボルト留めされ、設置の際、事前製造された蹴上部の配置を補助するための位置合わせガイドとして働く。
【0024】
代替となるブラケット6’は、図8に示すように、蹴上板43、44の背面に溶接するように準備された平坦な前面63を有する。これを図10に示す。図9に示した別の代替となるボルト留めされたブラケット6”は、組立てを容易にするための座席アングル101を含む。
【0025】
図11および12は、手すり柱7、7’の取付けのための代替となる構成を示す。図4に示すように、手すり柱7は、水平方向および鉛直方向に隣接する蹴上部4−2、4−3および4−4のその分岐部の近くで、ブラケット71を介して第1の蹴上部4−1の蹴上板44にボルト留めまたはアンカ留めすることができる。図12では、手すり柱7’が、蹴上部4−2の下側踏板42から上向きに延びるようにL字型ブラケット73に溶接される。ブラケット73は、蹴上部4−2の縁部を覆って広がり、リップ部分45の周りで曲げられて、蹴上部4−1の上側蹴上板44に、さらに蹴上部4−2の下側踏板42とのボルトまたはアンカ接続部に、ボルト留めまたアンカ留めされる。
【0026】
図13は、座席ブラケット8を取り付けるための構成を示す。これは、蹴上部4−1の上側蹴上板44にボルト留めまたはアンカ留めすることができる。
【0027】
2つの蹴上部部分の端部間での水の浸透を防止するための、可能な2つの長手方向接合シーラント細部品50、50’を図14および15に示す。第1のもの(図14)は、コーキング50(プレストレストコンクリート蹴上部と同様)を使用しており、第2のもの(図15)は、ストリップをあたかも溶接されたかのように4mmステンレス鋼板に接着する両面構造テープ52によって各蹴上部4の外側板10に接着することができる、可撓性の膜51または波型の可撓性ステンレス鋼ストリップを使用している。追加の保護ステンレス鋼薄板53を、膜51の、蹴上部に接着される上面に設けることができる。コーキングまたは可撓性のストリップは、季節的な温度変化による蹴上部部分の長さの変化による接合部全体にわたる膨張または収縮を可能とさせ、段部分が適切な位置にボルト留めされたあとで、容易に設置することができる。
【0028】
本発明の2段蹴上部は、自重、0.14kPa(3psf)の座席死荷重、水平投影面積上に一様に分散された(踏板、100psf)、または座席ブラケットを通して加えられた4.8kPaの使用および占有活荷重、1.92kPaの風荷重(吸入または圧力)、1.2kPaの雪荷重、および適切な荷重因子による適切な手すり荷重のうちの、1つまたは複数を含む限界荷重の組合せに耐えることができる。すべてのボルト留めおよび溶接接続部は、鋼構造限界状態設計(Limit States Design of Steel Structures)CAN/CSA S16.1−94に従っている。最初の3つの基本モードに対する最大振動振幅は、1Hzに制限することができる。また、各段は、+/−40℃(72°F)の温度変動による長さの変化に対応するように設計することができる。温度変化による長さ変化に対応するように両端のボルト接続用の穴を正規寸法よりも大きくすることによって、このことが達成される。
【0029】
本実施形態の変形形態では、折り曲げ加工された板が、エラストマースペーサおよび側部成形型部分を有する成形型(ジグ)内に配置される。成形型は、様々な幅または楔形状の部分の作製を可能にするために、片側または両側の成形型部分の様々な位置に対応するように製造することができる。成形型は、様々な蹴上部高さおよび踏板長さに対応するための固定式の調節部を備えることもできる。勾配の付いた、または傾斜した踏板によって排水に容易に対応することができる。たとえば、上側板10用に市松模様型の輪郭を描いた板を用いて、耐滑性の磨耗表面を組み入れることができる。
【0030】
(たとえば開いた座席部分内などの、隣接する傾斜梁間の留め継ぎ縁が必要なところで使用するための)楔形状部分は、正確な設計寸法に作製されるか、最も長い設計寸法で正方形に作製されて目の細かい帯鋸で正確な楔形状に切削されるかのいずれかである。
【0031】
図16から18は、蹴上部の代替となる形状の平面図を示す。図16に示す蹴上部110の基本形状は、平面が矩形であり、6から20mの範囲の長さLを有する。スタンドの曲線状または多角形の部分に対して、図17に示すような台形平面の蹴上部111を使用してもよい。このような蹴上部で、最大長さLを6から20mの範囲にし、最小長さlをいくらか短くしてもよい。隅部部分に対して、図18に示すような三角形平面の蹴上部112を使用してもよい。このような蹴上部の最大長さLは、必要な限り短くしてもよい。特定の目的用に、より複雑な形状が提供されてもよい。
【0032】
図19は、蹴上部113の代替となる形状の断面を示す。この蹴上部113は、下側踏板42の外縁に直立する壁部分114を有し、それによって、壁部分114、踏板42および蹴上板43が「バスタブ型」部分を形成する。壁部分114は、この部分が段の底部または密封部分で使用されるとき、縁辺フェンスを形成する。壁部分114の上部は、観客が飲み物などの物体を上に置くのを防ぐために、角度を付ける、または曲線状にすることができる。
【0033】
材料
上部および下部金属板10、11および上記で説明した蹴上部部分の他の金属部分は、好ましくは上述のような構造鋼であるが、軽量性、耐腐食性やその他の特定の特性が不可欠である用途では、これらは、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、またはその他の構造合金であってもよい。金属は、好ましくは240MPaの最小降伏強度および少なくとも10%の伸び率を有するべきである。
【0034】
中間層(構造プラスチックコア)は、部材が使用される予定の環境での最大予想温度で少なくとも250MPa、好ましくは275MPaの弾性係数Eを有するべきである。都市用途では、この温度は100℃まで高くなることがある。
【0035】
最低稼働温度でのコア材料(プラスチックまたはポリマー)の延性は、金属層の延性よりも大きくなければならず、約20%である。最低稼働温度でのコア材料の延性の好ましい値は50%である。コア材料の熱係数はまた、予想される稼働範囲全体にわたって、および溶接中の温度変動が層間剥離を引き起こさないように、鋼の熱係数に十分近くなければならない。2つの材料の熱係数の相異することができる範囲は、コア材料の弾性に一部依存することになり、コア材料の熱膨張係数は金属層の熱膨張係数の約10倍であると考えられる。充填剤の追加によって熱膨張係数を制御してもよい。
【0036】
コア層と金属層の間の結合強度は、全稼働範囲にわたって、少なくとも0.5、好ましくは6MPaでなければならない。これは、好ましくは、コア材料の金属との本来の接着性によって達成されるが、追加の接着剤を提供してもよい。
【0037】
コア材料は、好ましくは、ポリウレタンエラストマーであり、本質的にイソシアネートまたはジイソシアネートを伴うポリオール(たとえばポリエステルまたはポリエーテル)、連鎖延長剤および充填剤を含んでもよい。中間層の熱係数を減少し、そのコストを削減するほか、エラストマーの物理特性を制御するために、必要に応じて充填剤が提供される。たとえば機械的特性またはその他の特性(たとえば接着性または耐水、耐油性)を変更するための別の添加剤および防火剤が含まれてもよい。
【0038】
本発明の1つの実施形態を上記で説明してきたが、これは例示的なものであり、頭記の特許請求の範囲で定義したような本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。特に、所与の寸法は指針として意図されたものであり、規定するものではない。また、本発明を座席蹴上部の説明によって例示したが、本発明は階段状構造の他の形態にも適用可能であることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段状蹴上部、特にスポーツスタジアムおよびその他の娯楽会場用の座席蹴上部に関する。
【0002】
スポーツおよびその他のイベントによる収益を増加させるために、スポーツスタジアムまたはその他の会場内に収容することができる観客数を最大にすることが望ましい。このためには、追加の座席列を提供することが必要であり、その結果、上側の円形座席のかなりの部分が他の構造部分上に片持梁状に突き出した構造となることがよくある。したがって、支持構造のサイズおよびコストを減少させるためにこのような座席を支持する蹴上部の重量を最小化すべきである。スポーツおよび娯楽イベントに付随する過渡振動および共振を減少させるために、蹴上部は剛性であり、十分な質量を有しなければならない、もしくは良好な減衰特性を有する材料で製造されなければならない。
【背景技術】
【0003】
座席蹴上部の既存の設計は、プレストレストまたはプレキャストコンクリート製または鋼製である。知られている蹴上部部分は、コンクリートが0.2の減衰係数と良好な耐火性を有し、比較的低い維持コストを有するためほどよい共振制御を有する傾斜梁間の長いクリアスパン(通常12,200mm)を可能にするので、一般にコンクリートから製造される。コンクリート構造の主要な欠点は、蹴上部部分が重く、たとえば2段蹴上部で約10トンなどであり、自重(死荷重)が使用および占有による設計積載活荷重と等しいことである。したがって、蹴上部部分を支持するための、より重く、強く、剛性であり、コスト効果のより高い、上部構造および基礎を提供することが必要であり、特に大きな片持ち座席部分用の場合はこれが必要となる。
【0004】
自重を最小にし、したがって上部構造および基礎のコストを低減するために、蹴上部部分は、中間傾斜梁および補助的な鋼製枠組によって支持された、折り曲げ加工された鋼板で製造されてもよい。通常、このタイプの構造の最大スパンは、約6100mmであり、自重は、それと等価なコンクリート構造の約40%である。しかし、鋼製の蹴上部は、音響および振動の問題をより受けやすく、0.1の減衰係数を有し、また中間傾斜梁および補助的な鋼製枠組の製造組立てに関連する追加のコストを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、たとえばより軽量で、より単純な構造であり、かつ/またはより良好に減衰する改良型の座席蹴上部を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
本発明によると、上部および下部金属板と、その間でせん断力を伝達するように前記金属板に接合されたプラスチックまたはポリマー材料の中間層とを有するサンドイッチ構造を備える階段状蹴上部が提供される。
【0007】
階段状蹴上部の形成で使用されるサンドイッチ構造板は、それに匹敵する厚さの鋼板と比べて大きい剛性を有し、補剛要素を設ける必要性を避ける、または低減する。これによって、溶接部がより少ないまたは溶接部が1つもないかなり単純な構造になり、簡単化された製造と共に、疲労または腐食を受けやすい領域の減少という結果を導く。本発明での使用に適したサンドイッチ板構造のさらなる詳細は、米国特許第5,778,813号およびイギリス国特許出願GB−A−2 337 022で見出すことができる。中間層は、イギリス国特許出願第9926333.7号に記載のような複合材料コアであってもよい。
【0008】
上部および下部の外側の金属板は、好ましくは2から10mmの範囲の厚さを有し、中間層は10から100mmの範囲の厚さである。座席用の空間を提供するために、蹴上部の走程(深さ)は、好ましくは600から1200mmの範囲にある。蹴上部の傾斜は、好ましくは20°から45°の範囲である。外側の金属板は、好ましくは平行であるが、必ずしもそうである必要はない。
【0009】
本発明は、1つまたは複数、通常2つの段(階段)を有する蹴上部を提供し、プレストレストまたはプレキャストコンクリートに匹敵するが重量は約70%少ない、たとえば長さ6から20mの長いクリアスパンを提供することによって、および同じスパンの総て鋼製の蹴上部に付随する補助的な鋼製部材を必要としない、複雑さを減少させた構造を提供することによって、従来タイプの構造に対する独特な利点を提供する。プラスチックまたはポリマー(たとえばポリウレタンエラストマー)のコアは、天然の減衰器として働き、振動を減少させ(本発明による蹴上部に対する減衰係数を0.4から0.5の間にすることができる)、優れた防音を提供し、快適性と安全性の両方を改善する。また、本発明によって提供される構造は、異種の金属を溶接なしで使用することが可能である。したがって、維持作業を減少させ、寿命を改善し、その視覚的魅力を維持する耐腐食性ステンレス鋼を、下側表面用のより低価格な構造鋼を伴って、摩擦を受ける表面用に使用することができ、これを傾斜梁にボルト留めされたTスタブ部分を通して溶接またはボルト留めすることができる。構造鋼は、適切な腐食保護を提供するために、亜鉛めっきされても、またはエポキシまたは亜鉛の濃度が高いペイントで被覆されてもよい。
【0010】
蹴上部部分は、良好な寸法精度を有する高品質な構造部分を提供するために制御された条件下で製造することができる。手すり、座席に対する接続部および長手方向の接合密封部は、プレストレストまたはプレキャストコンクリートのものと同様にすることができる。水の流出および組立てを容易にし、蹴上部の水平方向のたわみを制限するために、ドリップリップおよび交互にかみ合う長手方向継ぎ目を備えることができる。
【0011】
本発明の実施形態における、一体型ガイド、互いにかみ合う、ドリップを付けられた蹴上部板、ならびにボルト留めされた接続部は、蹴上部の配置および設置を簡単にする。2段蹴上部は、ガイド板を介して下部部分と一列に並べられ、傾斜梁にボルト留めされる。たとえば1000mmごとにガイド縁に沿って設けられた追加のボルトが、移送または設置中2つの板の一方が偶発的に押し開かれた場合に離脱を防止する。
【0012】
別法として、サンドイッチ板の蹴上部は、プラスチックコアを完全に内包するように閉じた状態で溶接されてもよい。このことは、プラスチックコアの鍛造用の囲枠を形成するためのより複雑な可調整ジグの必要をなくすことによって、たとえばボウルの端部の楔状部分などの形をとる部分の製造を簡単にする。また、このタイプの部分は、縁部に沿って露出したプラスチックが1つもないため優れた耐火性を有し、火に耐えるように設計しなければならないスタジアムの部分で使用することができる。
【0013】
本発明による蹴上部は、関連する実用性基準、および振動およびたわみ制御、および板の取扱いに関する製造制約条件に適合するように設計することができる。踏板および蹴上部の強度および剛性は、2つの異なるコア厚さを特定することによって、コストおよび重量を最小にしながら性能を改善するように整えることができる。結果としての構造は、軽量で剛性であり、コアの固有の緩衝特性を有することで、補剛された鋼板と圧延された部分(補助的な鋼部材)で建造された蹴上部、またはプレストレストコンクリートで建造された蹴上部から改善された構造および振動応答性能を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の座席蹴上部が使用されることがあるスポーツスタジアムの平面図である。
【図2】本発明による座席蹴上部が使用される図1のスタジアムの部分の断面図である。
【図3】溶接なしで製造された本発明の第1の実施形態による座席蹴上部の透視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による溶接された座席蹴上部の端面図である。
【図5】上側の傾斜梁との、および隣接する蹴上部との接続を示す図3の座席蹴上部の部分断面図である。
【図6】図4の座席蹴上部の図5と類似の図である。
【図7】蹴上部が傾斜梁ブラケットに固定される方法を示す図3の座席蹴上部の部分拡大透視図である。
【図8】代替となる傾斜梁ブラケットの透視図である。
【図9】代替となる傾斜梁ブラケットの透視図である。
【図10】本発明による座席蹴上部に溶接された図8の取付けブラケットの上面図である。
【図11】手すりを本発明の座席蹴上部に取り付けるための構成を示す透視図である。
【図12】手すりを本発明の座席蹴上部に取り付けるための代替となる構成を示す透視図である。
【図13】座席ブラケットを本発明の座席蹴上部に取り付けるための構成を示す透視図である。
【図14】本発明による2つの座席蹴上部間の密封構成を示す断面図である。
【図15】本発明による2つの座席蹴上部間の代替となる密封構成を示す断面図である。
【図16】蹴上部の代替となる形状の平面図である。
【図17】蹴上部の代替となる形状の平面図である。
【図18】蹴上部の代替となる形状の平面図である。
【図19】本発明による蹴上部の代替形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の以下の説明、および添付の概略図面を参照にして、本発明を以下でさらに説明する。
【0016】
様々な図面で、類似の部品を類似の参照番号によって示す。
【0017】
図1は、片側に、傾斜した座席部分3を備える高いスタンド(上部ボウル)2を有するスポーツスタジアム1を示す。これらの座席部分は、スタンド縁部で平面が台形状(楔状)になるように、中盤がほぼ矩形であり、外側へ広がっている。座席部分3は通常、下端で約36フィート(約11m)、上縁または外縁で約40フィート(約12.5m)の幅を有する。このような座席部分の断面を図2に示す。図を見ればわかるように、スタンドの上部ボウルは、傾斜梁5に取り付けられた一連の座席蹴上部4から成り、傾斜梁5はスタジアムの他の部分の上で片持ち支持されている。座席蹴上部は、最適な観覧位置となる座席の数を最大にするようにいくつかの高さに配置されてもよい。
【0018】
2段蹴上部4が、図3で透視図で示されており、第1の蹴上板43によって接合された上側および下側踏板41、42を備える。第2の蹴上板44が、第1の踏板41の背縁から上側に突き出しており、リップ45が踏板42の前縁から下向きに突き出している。
【0019】
2段蹴上部は、たとえば厚さ4mmの2枚の折り曲げ加工された板10、11と、図4に示すように、踏板でたとえば40mmの、蹴上板でたとえば20mmの厚さを有する構造用ポリウレタンエラストマーのプラスチックコア12とによって形成することができる。11m蹴上部は約3トンの重量であり、すなわち水平投影面積の1平方フィート当たり30ポンド(約145kgm−2)である。鋼製部分は、1枚の圧延板で作製することができるが、折曲げ加工または圧延形成の前に、板のサイズ調整をするために、制限された切断を必要とする。折り曲げ加工された板は、適切なスペーサ群(たとえばせん断スタッド群またはプラスチック(エラストマー)スペーサ群)および側部成形型部分とともに鋼製の成形型(ジグ)内に配置される。成形型が閉じられ、ポリウレタンエラストマーコアが、たとえば1つまたは複数のPuromatPU150高圧計量機を介して閉じたキャビティ内に約200から400秒間射出される。ゲル化および凝結は、射出が完了したあとに開始するように選択される。この部分は、1時間以内に成形型から取り外すことができる。成形型(ジグ)の使用によって、比較的薄い折り曲げ鋼板を正確に配置し、支持されるようにして、寸法精度が得られるようにする。穿孔されたボルト穴が、冷間切断(必要に応じて楔状部分のみ)によって最終的にサイズ調整され、構造鋼板へのエポキシ被膜塗布が、蹴上部部分を完成させる。現場製造および仕上げによって、高品質の構造製品が確実になる。この部分を事前製造して、必要になるまで現場以外で保管することができる。蹴上部部分を傾斜梁に接合するボルト接続部での局部曲げ応力を減少させるために、コア材料の射出前に2重板を構造板に溶接することができる。
【0020】
蹴上部部分は、持ち上げを容易にし、配置および設置を容易にするための適切な細部品(位置合わせ用の開いた縁を有する一体型ガイド、ドリップリップ、コーキングジョイント、引き上げ装置)を備える。剛性であり、コンクリート部分に比べて比較的軽量である蹴上部部分は、容易に持ち上げて、適切な位置にボルト留めすることができる。本発明による蹴上部部分は、より頑丈であり、配置中部分が手荒く扱われた場合、欠けおよびひび割れを受けにくいため、コンクリート蹴上部よりも迅速に組み立ててもよい。長手方向の接合シーラントが付着され、事前製造されたステンレス鋼の階段部分が適切な位置にボルト留めされる。座席および手すりの設置は、プレストレストコンクリート蹴上部に使用した方法と同様の方法、たとえばHilti(登録商標)エクスパンションまたはエポキシボルトまたはアンカを用いて、穿孔およびボルト留めすることによって完了することができる。必要に応じて特別な取付け装置および排水細部品を設けることができる。
【0021】
図4は、蹴上部4’がプラスチックコアを完全に包囲するように溶接された、代替となる構造の端面図である。上側板10’および下側板11’が長縁を閉じるように折り曲げられて、単純な溶接部を提供し、図6に示すような隣接する蹴上部部分をボルト留めするのに適した、ぴったりはまりあう雄型および雌型の縁部61、62を形成する。端部板100がこの部分を閉じるように形状をつくって切断され、両端で嵌合および溶接される。
【0022】
図5および6は、第1の蹴上部4−1と第2の蹴上部4−2または4’−2の間の接続、ならびに第1の蹴上部4−1または4’−1の傾斜梁5への取付けの詳細を示す。第1の蹴上部4−1、4’−1の第2の蹴上板44は、上側の蹴上部4−2、4’−2のリップ部分45内に係合する。リップ部分45は、開いた縁部47を有し、ドリップリップとして働き、溶接されない構造については、ボルト46が内側および外側の板10、11およびコア12を互いに保持して、移送中の雑な取扱いまたは取付け不良の場合の層間剥離を防止する。溶接される実施形態では、ボルト46’が、蹴上部4’−1の雄型端部61を蹴上部4’−2の雌型端部62と接合する。各蹴上部を傾斜梁5に取り付けるために、T字型ブラケット6が設けられる。これらは、ボルト62、61によって座席蹴上部4の蹴上板44、43に、および傾斜梁5にもボルト留めされる。
【0023】
図5および6は、2つの長手方向に隣接する蹴上部が1つのブラケット6にボルト留めされるように、座席蹴上部の縁部でT字型ブラケット6を位置決めすることを示す。ブラケット6は、図7に示すように、蹴上部部分の配置の前に傾斜梁5にボルト留めされ、設置の際、事前製造された蹴上部の配置を補助するための位置合わせガイドとして働く。
【0024】
代替となるブラケット6’は、図8に示すように、蹴上板43、44の背面に溶接するように準備された平坦な前面63を有する。これを図10に示す。図9に示した別の代替となるボルト留めされたブラケット6”は、組立てを容易にするための座席アングル101を含む。
【0025】
図11および12は、手すり柱7、7’の取付けのための代替となる構成を示す。図4に示すように、手すり柱7は、水平方向および鉛直方向に隣接する蹴上部4−2、4−3および4−4のその分岐部の近くで、ブラケット71を介して第1の蹴上部4−1の蹴上板44にボルト留めまたはアンカ留めすることができる。図12では、手すり柱7’が、蹴上部4−2の下側踏板42から上向きに延びるようにL字型ブラケット73に溶接される。ブラケット73は、蹴上部4−2の縁部を覆って広がり、リップ部分45の周りで曲げられて、蹴上部4−1の上側蹴上板44に、さらに蹴上部4−2の下側踏板42とのボルトまたはアンカ接続部に、ボルト留めまたアンカ留めされる。
【0026】
図13は、座席ブラケット8を取り付けるための構成を示す。これは、蹴上部4−1の上側蹴上板44にボルト留めまたはアンカ留めすることができる。
【0027】
2つの蹴上部部分の端部間での水の浸透を防止するための、可能な2つの長手方向接合シーラント細部品50、50’を図14および15に示す。第1のもの(図14)は、コーキング50(プレストレストコンクリート蹴上部と同様)を使用しており、第2のもの(図15)は、ストリップをあたかも溶接されたかのように4mmステンレス鋼板に接着する両面構造テープ52によって各蹴上部4の外側板10に接着することができる、可撓性の膜51または波型の可撓性ステンレス鋼ストリップを使用している。追加の保護ステンレス鋼薄板53を、膜51の、蹴上部に接着される上面に設けることができる。コーキングまたは可撓性のストリップは、季節的な温度変化による蹴上部部分の長さの変化による接合部全体にわたる膨張または収縮を可能とさせ、段部分が適切な位置にボルト留めされたあとで、容易に設置することができる。
【0028】
本発明の2段蹴上部は、自重、0.14kPa(3psf)の座席死荷重、水平投影面積上に一様に分散された(踏板、100psf)、または座席ブラケットを通して加えられた4.8kPaの使用および占有活荷重、1.92kPaの風荷重(吸入または圧力)、1.2kPaの雪荷重、および適切な荷重因子による適切な手すり荷重のうちの、1つまたは複数を含む限界荷重の組合せに耐えることができる。すべてのボルト留めおよび溶接接続部は、鋼構造限界状態設計(Limit States Design of Steel Structures)CAN/CSA S16.1−94に従っている。最初の3つの基本モードに対する最大振動振幅は、1Hzに制限することができる。また、各段は、+/−40℃(72°F)の温度変動による長さの変化に対応するように設計することができる。温度変化による長さ変化に対応するように両端のボルト接続用の穴を正規寸法よりも大きくすることによって、このことが達成される。
【0029】
本実施形態の変形形態では、折り曲げ加工された板が、エラストマースペーサおよび側部成形型部分を有する成形型(ジグ)内に配置される。成形型は、様々な幅または楔形状の部分の作製を可能にするために、片側または両側の成形型部分の様々な位置に対応するように製造することができる。成形型は、様々な蹴上部高さおよび踏板長さに対応するための固定式の調節部を備えることもできる。勾配の付いた、または傾斜した踏板によって排水に容易に対応することができる。たとえば、上側板10用に市松模様型の輪郭を描いた板を用いて、耐滑性の磨耗表面を組み入れることができる。
【0030】
(たとえば開いた座席部分内などの、隣接する傾斜梁間の留め継ぎ縁が必要なところで使用するための)楔形状部分は、正確な設計寸法に作製されるか、最も長い設計寸法で正方形に作製されて目の細かい帯鋸で正確な楔形状に切削されるかのいずれかである。
【0031】
図16から18は、蹴上部の代替となる形状の平面図を示す。図16に示す蹴上部110の基本形状は、平面が矩形であり、6から20mの範囲の長さLを有する。スタンドの曲線状または多角形の部分に対して、図17に示すような台形平面の蹴上部111を使用してもよい。このような蹴上部で、最大長さLを6から20mの範囲にし、最小長さlをいくらか短くしてもよい。隅部部分に対して、図18に示すような三角形平面の蹴上部112を使用してもよい。このような蹴上部の最大長さLは、必要な限り短くしてもよい。特定の目的用に、より複雑な形状が提供されてもよい。
【0032】
図19は、蹴上部113の代替となる形状の断面を示す。この蹴上部113は、下側踏板42の外縁に直立する壁部分114を有し、それによって、壁部分114、踏板42および蹴上板43が「バスタブ型」部分を形成する。壁部分114は、この部分が段の底部または密封部分で使用されるとき、縁辺フェンスを形成する。壁部分114の上部は、観客が飲み物などの物体を上に置くのを防ぐために、角度を付ける、または曲線状にすることができる。
【0033】
材料
上部および下部金属板10、11および上記で説明した蹴上部部分の他の金属部分は、好ましくは上述のような構造鋼であるが、軽量性、耐腐食性やその他の特定の特性が不可欠である用途では、これらは、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、またはその他の構造合金であってもよい。金属は、好ましくは240MPaの最小降伏強度および少なくとも10%の伸び率を有するべきである。
【0034】
中間層(構造プラスチックコア)は、部材が使用される予定の環境での最大予想温度で少なくとも250MPa、好ましくは275MPaの弾性係数Eを有するべきである。都市用途では、この温度は100℃まで高くなることがある。
【0035】
最低稼働温度でのコア材料(プラスチックまたはポリマー)の延性は、金属層の延性よりも大きくなければならず、約20%である。最低稼働温度でのコア材料の延性の好ましい値は50%である。コア材料の熱係数はまた、予想される稼働範囲全体にわたって、および溶接中の温度変動が層間剥離を引き起こさないように、鋼の熱係数に十分近くなければならない。2つの材料の熱係数の相異することができる範囲は、コア材料の弾性に一部依存することになり、コア材料の熱膨張係数は金属層の熱膨張係数の約10倍であると考えられる。充填剤の追加によって熱膨張係数を制御してもよい。
【0036】
コア層と金属層の間の結合強度は、全稼働範囲にわたって、少なくとも0.5、好ましくは6MPaでなければならない。これは、好ましくは、コア材料の金属との本来の接着性によって達成されるが、追加の接着剤を提供してもよい。
【0037】
コア材料は、好ましくは、ポリウレタンエラストマーであり、本質的にイソシアネートまたはジイソシアネートを伴うポリオール(たとえばポリエステルまたはポリエーテル)、連鎖延長剤および充填剤を含んでもよい。中間層の熱係数を減少し、そのコストを削減するほか、エラストマーの物理特性を制御するために、必要に応じて充填剤が提供される。たとえば機械的特性またはその他の特性(たとえば接着性または耐水、耐油性)を変更するための別の添加剤および防火剤が含まれてもよい。
【0038】
本発明の1つの実施形態を上記で説明してきたが、これは例示的なものであり、頭記の特許請求の範囲で定義したような本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。特に、所与の寸法は指針として意図されたものであり、規定するものではない。また、本発明を座席蹴上部の説明によって例示したが、本発明は階段状構造の他の形態にも適用可能であることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部および下部金属板と、その間でせん断力を伝達するように前記金属板に接合されたプラスチックまたはポリマー材料の中間層とを有するサンドイッチ構造を備える階段状蹴上部。
【請求項2】
前記蹴上部が座席蹴上部である請求項1に記載の階段状蹴上部。
【請求項3】
少なくとも1つの座席および/または手すり用の、取付け細部品をさらに備える請求項2に記載の階段状蹴上部。
【請求項4】
前記蹴上部が6から20mの最大長さを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項5】
前記階段状蹴上部が600から1200mm引き続いている請求項1から4のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項6】
前記上部および下部金属板が、それぞれの平坦な板を折り曲げ加工または圧延形成することによって形成される請求項1から5のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項7】
前記中間層が、前記階段状蹴上部の蹴上板よりも踏板のほうが厚い請求項1から6のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項8】
前記階段状蹴上部が、1つまたは複数のほぼ水平方向の踏板と、1つまたは複数のほぼ鉛直方向の蹴上板を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項9】
前記蹴上板の1つが、前記踏板の上側のものの前縁を前記踏板の下側のものの後縁と接合し、前記第2の蹴上板が、前記上側の踏板の後縁から上向きに突き出し、前記下側の踏板の前縁が下向きに突き出したリップ部分を有する請求項8に記載の階段状蹴上部。
【請求項10】
前記上部および下部板が、類似の階段状蹴上部の上側蹴上板の上縁を受けるように、前記リップ部分で開いている請求項9に記載の階段状蹴上部。
【請求項11】
前記上部板が、前記下部板と異なる金属または合金製である請求項1から10のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項12】
前記上部板が、前記下部板よりも耐腐食性である請求項11に記載の階段状蹴上部。
【請求項13】
前記上部板が、前記下部板よりも薄い請求項1から12のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項14】
前記上部板が、亜鉛の比率が濃厚なペイント、エポキシペイントまたは亜鉛めっきなどの耐腐食処理を有する請求項1から13のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項15】
前記上部板が2から10mmの範囲の厚さを有し、前記下部板が2から10mmの範囲の厚さを有し、前記中間層が10から100mmの範囲の厚さを有する請求項1から14のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項16】
前記中間層が、プラスチック材料、好ましくは高密度エラストマーで形成される請求項1から15のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項17】
前記中間層が、型板と、前記型板に占有されていない前記上部および下部金属板の間の空間を占有する前記プラスチックまたはポリマー材料とを備える請求項1から16のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項18】
前記型板がフォームを備え、前記プラスチックまたはポリマー材料がエラストマーである請求項17に記載の階段状蹴上部。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の少なくとも1つの階段状蹴上部を有する観客スタンド。
【請求項1】
上部および下部金属板と、その間でせん断力を伝達するように前記金属板に接合されたプラスチックまたはポリマー材料の中間層とを有するサンドイッチ構造を備える階段状蹴上部。
【請求項2】
前記蹴上部が座席蹴上部である請求項1に記載の階段状蹴上部。
【請求項3】
少なくとも1つの座席および/または手すり用の、取付け細部品をさらに備える請求項2に記載の階段状蹴上部。
【請求項4】
前記蹴上部が6から20mの最大長さを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項5】
前記階段状蹴上部が600から1200mm引き続いている請求項1から4のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項6】
前記上部および下部金属板が、それぞれの平坦な板を折り曲げ加工または圧延形成することによって形成される請求項1から5のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項7】
前記中間層が、前記階段状蹴上部の蹴上板よりも踏板のほうが厚い請求項1から6のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項8】
前記階段状蹴上部が、1つまたは複数のほぼ水平方向の踏板と、1つまたは複数のほぼ鉛直方向の蹴上板を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項9】
前記蹴上板の1つが、前記踏板の上側のものの前縁を前記踏板の下側のものの後縁と接合し、前記第2の蹴上板が、前記上側の踏板の後縁から上向きに突き出し、前記下側の踏板の前縁が下向きに突き出したリップ部分を有する請求項8に記載の階段状蹴上部。
【請求項10】
前記上部および下部板が、類似の階段状蹴上部の上側蹴上板の上縁を受けるように、前記リップ部分で開いている請求項9に記載の階段状蹴上部。
【請求項11】
前記上部板が、前記下部板と異なる金属または合金製である請求項1から10のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項12】
前記上部板が、前記下部板よりも耐腐食性である請求項11に記載の階段状蹴上部。
【請求項13】
前記上部板が、前記下部板よりも薄い請求項1から12のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項14】
前記上部板が、亜鉛の比率が濃厚なペイント、エポキシペイントまたは亜鉛めっきなどの耐腐食処理を有する請求項1から13のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項15】
前記上部板が2から10mmの範囲の厚さを有し、前記下部板が2から10mmの範囲の厚さを有し、前記中間層が10から100mmの範囲の厚さを有する請求項1から14のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項16】
前記中間層が、プラスチック材料、好ましくは高密度エラストマーで形成される請求項1から15のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項17】
前記中間層が、型板と、前記型板に占有されていない前記上部および下部金属板の間の空間を占有する前記プラスチックまたはポリマー材料とを備える請求項1から16のいずれか一項に記載の階段状蹴上部。
【請求項18】
前記型板がフォームを備え、前記プラスチックまたはポリマー材料がエラストマーである請求項17に記載の階段状蹴上部。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の少なくとも1つの階段状蹴上部を有する観客スタンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−162982(P2012−162982A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−95645(P2012−95645)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2002−536161(P2002−536161)の分割
【原出願日】平成13年9月13日(2001.9.13)
【出願人】(500513712)インテリジエント・エンジニアリング(バハマズ)リミテツド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95645(P2012−95645)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2002−536161(P2002−536161)の分割
【原出願日】平成13年9月13日(2001.9.13)
【出願人】(500513712)インテリジエント・エンジニアリング(バハマズ)リミテツド (3)
【Fターム(参考)】
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