説明

サンプル分析方法及びそのための装置

サンプルを処理及び分析するための方法及び装置。本発明は、1種以上の試薬によるサンプル処理を必要とする任意のサンプル分析に関連して用いることができる。本発明は、生物学的材料のDNA分析に特別な関連性を有する。該方法は、該サンプルを導管10に入れること、導管10は、1種以上のサンプル処理用試薬の少なくとも1種の封入された水溶液13を有し、各封入された水溶液13は固体又は半固体疎水性材料に封入されている;熱を加えて該固体又は半固体材料12を液化し、該サンプル及び/又は少なくとも1種の封入された水溶液13を導管10に沿って移動させること;1種以上のサンプル処理用試薬の水溶液13を該サンプルと接触させ、及び該サンプルと反応させて生成混合物を形成すること;及び該生成混合物における生成物の存在を検出し、及び任意にその濃度を測定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを処理及び分析するための方法、及び該方法を行うための装置に関する。特に、本発明は、ハウジング内に内蔵される逐次処理工程の組み合わせに関する。本発明は、1種以上の試薬によるサンプルの処理が必要とされるいかなるサンプル分析にも関連して用いることができる。本発明はDNA分析に特別な関連性を有する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術分野では、材料のサンプルは原料から取り除いて分析しなければならず、これはしばしば1種以上の化学的試薬による処理又は特定の物理的条件への露出に続く。例えば、広い種類の技術分野及び産業では、生物学的サンプルのDNA分析が大いに必要である。
サンプルをまずはその原料から製造し、該サンプルを化学的且つ物理的に処理して該サンプルに含有されるDNAを調製し、続いて該DNAを試薬と混合してDNA特異反応(例えば標準的なPCR方法)を開始させ、及び該反応の生成物を物理的又は化学的な方法によって分析しなければならない。個々の工程を達成するのに有用な多くの公知な実験室方法及び装置があるが、どれも実験室環境外の単一装置内では必要且つ複雑な方法を行うことができない。
さらに、しばしば、例えば食品加工製造ラインにおいて大量のサンプルを分析する必要がある。従って、少なくとも一部を自動化することのできるサンプリング及び分析方法を用いることが望ましい。
【0003】
一部のサンプル処理及び分析技術に関連する一つの問題は、分析結果を得るのに必要な時間である。例えば、生物学的サンプルの標準的なPCR分析は、典型的に2〜6時間かかる。多くの産業に用いられるシステム及び方法の要求を満たすために、迅速なサンプリング及び分析方法が必要とされる。
特にヒトの健康及び食品産業における健康及び安全の厳しい要求は、サンプル間の交差汚染が起こってはいけないことを意味している。従って、再利用不可能且つ使い捨てのサンプリング及び分析装置を用いるのが望ましい。
さらに、技師に必要とされる高水準の技術的スキル及び訓練を用いずにサンプルを分析するのが望ましい。内蔵された装置及び材料を有する完全な内蔵型装置は、公知のサンプリング及び処理装置の技師によって必要とされる高いスキル及び経験水準に対する必要性を取り除く。完全な内蔵型装置はまた、長期間の保存を可能にするという利点を有する。
従って、本発明の目的は、上記問題又は不都合の少なくとも一部を克服するサンプル分析方法を提供すること、又は有用な代案を少なくとも提供することである。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一つの特徴では、サンプルを分析するための方法であって、
a)該サンプルを導管に入れること、該導管は、固体又は半固体疎水性材料に封入されている少なくとも1種のサンプル処理用試薬を有する;
b)熱を加えて該固体又は半固体材料を液化すること;
c)該サンプル処理用試薬を該導管に沿って移動させ、該サンプル処理用試薬を該サンプルと接触させ、及び該サンプルと反応させて生成混合物を形成すること、及び
d)該生成混合物における生成物の存在を検出し、及び任意にその濃度を測定すること、
を含む方法が提供される。
該サンプルは、他の試薬による処理が検出又は測定の前に必要とされる生物学的又は非生物学的化学物質の任意のサンプルでよい。
【0005】
本発明の好ましい実施態様では、サンプルがDNAを含有している。本発明は、DNAのPCR分析に特に適する。サンプルの典型例は、製造されたDNAサンプル及び血液、血清、唾液、尿、及び乳のサンプル、及び骨、糞、脂肪、肉、毛、皮膚、植物質、微生物、又は微生物生息環境から得られた抽出物を含む。
少なくとも1種のサンプル処理用試薬は、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、三リン酸塩及び耐熱性DNAポリメラーゼを含むDNA分析に必要とされる1種以上の化学的又は生物学的な試薬の封入された水溶液でよい。
好ましくは、該固体又は半固体材料は、サンプル、試薬、又は生成物のいかなる水溶液からも相分離されるワックス又はグリース、例えばパラフィンである。
【0006】
検出工程は、該生成物の濃度を検出又は測定するための任意の好適な手段を用いてよいが、好ましくは光電子手段を用いる。
好ましくは、該光電子手段は、該サンプル及びマイクロプロセッサーに接続されている光学的検出器の間の光路である。
少なくとも1種のサンプル処理用試薬は、好ましくは該導管への加圧又は減圧の適用によって該導管に沿って移動する。
【0007】
本発明の好ましい実施態様では、DNAを含有する生物学的サンプルが、以下の工程によって分析される:
1)該サンプルを該導管の一端に入れ、固体又は半固体疎水性材料によって封入されている試薬の水溶液及びPCR試薬の凍結乾燥混合物を、該導管内に含有させる工程、
2)該導管を加熱して、該固体又は半固体疎水性材料を液化させて試薬の水溶液を放出し、該試薬の水溶液をPCR試薬の凍結乾燥混合物と接触させ、及び該PCR試薬を再水和させ、PCR試薬の水性混合物を形成する工程;
3)PCR試薬の水性混合物を、該導管への圧力の適用により該導管に沿って順方向に移動させ、PCR試薬の水性混合物を該サンプルと接触させ、及び該サンプルと混合してサンプル混合物を形成する工程;
4)該サンプル混合物を、続いて該導管への減圧の適用により該導管に沿って逆方向に移動させ、該サンプル混合物が、該混合物を加熱して該サンプルに含有されるDNAを変性させる変性領域に存在する工程;
5)変性DNA及びPCR試薬を含有する該混合物を、続いて該導管への減圧の適用によりさらに該導管に沿って逆方向に焼きなまし領域まで移動させ、及び熱を該混合物から除去して該混合物内に含有されるオリゴヌクレオチドプライマーを該変性DNAに焼きなます工程;
6)焼きなまされたDNAを含有する溶液を、該導管への圧力又は減圧の適用により該導管に沿って検出領域まで移動させ、及び該DNA濃度を光電子工学的に測定する工程;
7)焼きなまされたDNA及びPCR試薬を含有する該混合物を、続いて該導管への圧力の適用により該導管に沿って順方向に伸展領域まで移動させ、及び加熱して酵素触媒DNA重合によって該焼きなまされたDNAの伸展を引き起こす工程;
8)該混合物を、続いて該導管への減圧の適用により該導管に沿って逆方向に移動させ、該混合物が、該混合物を加熱して該サンプルに含有されるDNAを変性させる変性領域に存在する工程;
9)該混合物を、続いて該導管への減圧の適用によりさらに該導管に沿って逆方向に焼きなまし領域まで移動させ、及び熱除去してオリゴヌクレオチドプライマーを該変性DNAに焼きなます工程;及び
10)該混合物を、続いて該導管への圧力又は減圧の適用により該導管に沿って検出領域まで移動させ、及び該DNA濃度を光電子工学的に測定する工程。
好ましくは、上記工程7〜10を1回以上、典型的には20〜40回繰り返す。
【0008】
本発明の第二の特徴では、サンプルを分析するための装置であって:
a)シャフトと該シャフトに配置される導管を有するサンプリング装置、使用すると、該サンプルが1種以上のサンプル処理用試薬と接触して生成混合物を与える;
b)該サンプリング装置の該シャフトを収容するように成形された容器を有するサンプル処理用装置;
c)該サンプリング装置の1つ以上の領域を加熱するために該サンプル処理用装置に配置される1種以上の加熱用素子、使用すると、該サンプルと1種以上の該サンプル処理用試薬の反応を可能にし、該生成混合物を与える;及び
d)該生成混合物における生成物の1つ以上の特徴を検出又は測定するための検出手段、
を含む装置が提供される。
【0009】
本発明の好ましい実施態様では、該サンプリング装置が、ソケット内に保持されている固定されていない回転ボールを含み、該ボールの外表面の一部が表面と接触し、該ボールを該表面に渡って回転させることによってその表面からサンプルを得ることができる。
好ましくは、該サンプリング装置のシャフトが先細な縦長の軸針であり、該ソケットと隙間をあけて連結しているサンプル入口及び該軸針の長さを延長する導管を有する。
本発明はさらに、本発明の第二の特徴の装置における使用に適合するサンプリング装置を提供する。本発明はまた、本発明の第二の特徴の装置における使用に適合するサンプル処理用装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0010】
本発明は、サンプル分析方法及び該方法を行うための装置の開発に基づき、サンプルが1種以上の試薬で処理され、及びその生成物が、該サンプル及び試薬及び生成物が制御された方法で加熱することのできる種々の領域への導管に沿った移動によって操作することができ、且つ該反応生成物が検出可能な手法で検出される。
【0011】
該方法は:
a)該サンプルを導管に入れる工程、該導管は固体又は半固体疎水性材料によって封入されている少なくとも1種のサンプル処理用試薬を有する;
b)熱を加えて該固体又は半固体材料を液化する工程;
c)該サンプル処理用試薬を該導管に沿って移動させ、該サンプル処理用試薬を該サンプルと接触させ、及び該サンプルと反応させて生成混合物を形成する工程、及び
d)該生成混合物における生成物の存在を検出し、及び任意にその濃度を測定する工程、
を含む。
【0012】
該方法は、広い種類のサンプルタイプの分析に有用であり、特に該サンプルが1種以上の化学転換を受けなければならない場合に有用である。本発明は、サンプルのDNA分析に最も適するが、この使用に限定されない。
該サンプルは、任意の好適な手段によって該導管に入れてよい。しかし、好ましい手段は、ソケットに保持されている固定されていない回転ボールを用い、及びそこから該サンプルが得られる表面に渡って該ボールを回転させることによる。この性質のサンプリング装置は、本出願人のPCT特許出願第PCT/NZ04/000191号明細書の主題である。
【0013】
該導管は、好ましくは直線的で枝分かれしていない経路の内部形態を有し、先細りしていてもよいが、物理的な障害を有さない。しかし、該導管は非直線的でも枝分かれしていてもよい。
該サンプリング装置は、任意の好適な材料から構成してよいが、好ましくはアクリル樹脂から構成される。あるいは、該サンプリング装置は、炭化水素又はペルフルオロカーボンプラスチック、ポリマー樹脂、ケイ酸塩(ガラス)、ケイ素、ドープド(doped)ケイ素、又は他の半導体系材料、金属、又は金属合金から構成してもよい。該ボールは、好ましくは同一の材料から構成される。
該導管は、好ましくは、サンプル処理過程の前又は最中のいずれかに、炭化水素、ペルフルオロカーボン、又はシリコーンワックス、オイル又はグリースなどの不活性材料でコーティングされる内表面を有する。
【0014】
該ボールの表面は滑らかでよく、又は粗くてもざらざらしていてもよく、又は化学的改質剤でコーティングして、使用するときに表面における該ボールの滑りを最小化する及び/又はサンプル接着を最大化又は制御してもよい。
ローラーボールは、サンプルを得て該サンプルを該導管に送るための好ましい手段であるが、他の装置を用いてもよく、例えばホイール、バルブ、孔、灯心、毛細管、シリンジ、ピペット、ピンセット、プローブ、自動サンプラー、ブラシ、小刀、針、及び指でよい。
該サンプルは、大気圧下、又は適当な圧力下、又は該サンプルが該導管に吸引される減圧によって該導管に入り得る。
【0015】
該サンプルは、好ましくは、限定はしないが、血液、血清、唾液、尿、乳、及び骨、糞、脂肪、肉、毛、皮膚、植物質、微生物又は微生物生息環境から得られた抽出物を含む群から選択される実験室で調製されたサンプル又は生物学的材料である。あるいは、該サンプルは、限定はしないが、水路からの水、工業用廃棄物、及び放射性物質を含む有害又は無害な化学物質を含む群から選択される非生物学的サンプルでよい。
1種以上のサンプル処理用試薬は、該サンプルの処理及び/又は分析に好適な任意の固体、液体又はガス状試薬でよい。好ましい実施態様では、1種以上の試薬が、限定はしないが、炭化水素、ペルフルオロカーボン又はシリコーングリースワックス及びオイル;水性緩衝液及び水溶性有機及び無機化学的試薬、トリスマ(trisma)、塩化マグネシウム、塩化カリウム、ウシ血清アルブミン(BSA)、トレハロース、フィコール、メリジトース(melizitose)、スクロース、アガロース;オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、三リン酸塩及び耐熱性DNAポリメラーゼを含む酵素DNA分析に必要な生物化学的試薬の群から選択される。
【0016】
該1種以上の試薬の一部又は全ては、限定はしないが、凍結乾燥、蒸発、フリーズドライなどを含む方法によって水和又は脱水してよい。例えば、DNA分析の場合、PCR試薬を、該サンプル装置の導管において凍結乾燥プラグの形態にし、該試薬の安定性を最大化させることができる。サンプル処理中、該凍結乾燥プラグは、該プラグを再水和し且つサンプル分析に用いられる水溶液と接触する。
好ましい実施態様では、該導管の端が開いており、サンプル、試薬の溶液及び生成物の含気性、静水学的、浸透圧性又は電気浸透圧性の制御、並びに解析的探求を可能にする。
【0017】
該導管の構成は、押出又は引出のために、機械加工(きりもみを含む)、射出成形、射出圧縮成形、石版術方法(光子、電気又は他の粒子に基づく石版術を含む)、化学エッチング、接触又は非接触印刷(浮き彫りスタンピングを含む)、又はスクラッチング、切り抜き又は彫刻により、例えばチューブ形態でよい。当業者によって理解されるように、本発明の装置の製造は、大量生産、自動化及び小型化によく適する。
該導管は、1種以上の温度調節された領域を通り、それによって該サンプル及び化学的試薬の温度依存処理を容易にする。無極性熱不安定性化学物質(例えばワックス及びグリース)の使用は、温度変化によって材料の扱いを容易にし、該導管の内腔内の化学活性を遅延又は開始させる。該材料の適切な配置は、組立式装置の長期間保存を可能にする。
【0018】
該導管内腔の監視及び分析は、電気的方法(容量性、誘導性、抵抗性)、光電子工学的方法(光散乱、屈折率、反射率、吸光度、蛍光、発光)、強磁性体及び常磁性体方法、共鳴方法(核磁気、陽子磁気など)によって行うことができる。該内腔のそのような探求は、横方向(該内腔壁を介して)、軸方向(該内腔のコアの下方へ)、又は両方の組み合わせによって行うことができる。
処理されたサンプルはまた、より詳細な分析のために該導管の内腔から回収することができる。該分析は、クロマトグラフィー、電気泳動法、分光学的技術(質量、原子、吸収など)、生物学的検定法、核酸を含む巨大分子配列分析及び蛋白質配列決定を含み得る。
本発明は、多くの重要な利点を有する。完全に内蔵された化学反応は、装置使用者による特別な技術的知識を必要としない。他のいかなる物質、例えば他の試薬も必要としない。本発明は、実験室環境外での使用によく適する。また、遠隔自動化を含む自動化に容易に適合できる。材料移動工程の除去は、サンプル損失が最小化されることを意味する。
【0019】
該装置の構成は、サンプリング装置及びサンプル処理用装置の2部分である。これは、高性能処理及び検出能力を該サンプル処理用装置に与え、一端使用されてサンプルで汚染された該サンプリング装置を使い捨てにすることができる。該サンプリング装置におけるサンプル処理用試薬の包含は、製造、配給及び保存を容易にする長い保存期間を提供する。さらに、本発明は、小型化及び大量生産に従順である。
本発明はまた、サンプル処理速度の利点を有する。PCR分析の場合、サンプリングから最終結果までかかる時間は、典型的に30分より少ない。
他の利点は、本明細書を読むことで明らかとなる。
【0020】
ここで、本発明を例証するために図1〜4を参照して記載する。図1〜4に示される装置は本発明の一つの実施例であり、本発明は該実施例に限定されないことを理解すべきである。
【0021】
カートリッジ装置1は、ソケット内に収容されているサンプリングボール2を含む。ボール2は、自由に任意の方向に回転し、実質的に滑らでも粗くてもよい表面を有する。ソケット3は、シャフト4の末端に取り付けるか、又は一体化して形成する。シャフト4は先細りさせ、分析のために使用される容器5(図2、3及び4で示す)への簡単な出入りを容易にする。サンプルの処理は加熱を必要とするので、装置1は加熱されるときに該容器の内壁に対して伸びることが理解される。シャフト4の先細りはまた、装置1が容器5に入れられるときに空気の捕捉を最小化するという利点を有する。
【0022】
該シャフトをハンドルとしても用いる。シャフト4をさらに、例えば技師による手動操作中の保持のため、又はロボット操作による使用のために用いられる手法に適するように成形又は形成してよい。
装置1及びボール2は、任意の好適な材料から構成してよく、典型的にはアクリル樹脂又は数種の他の好適なプラスチック材料である。
ソケット3は、それによってボールが露出され、且つそこからサンプルが得られ得る表面に接近しやすい開口6を含む。ボール2及びソケット3の間の狭い隙間は、サンプル入口7を表す。ソケット3の開口の直径はボール2の直径より小さく、従ってボール2がソケット3の外に落ちるのを防ぐ。
【0023】
ソケット3の内壁8は、ボール2の後ろ側で開いてサンプル出口9を形成し、これはシャフト4の内腔10に接続されている。内腔10はシャフト4の全長を延長し、それを介して該サンプルがシャフト4の遠位端11において内腔10に減圧(真空)又は加圧を与えることによって移動することのできる導管となる。
一連のパラフィンのプラグ12は、内腔10内に配置される。当業者に理解されるように、パラフィンのプラグ12は内腔10の内表面を湿らす。パラフィンのプラグ12は、一定分量の水性材料13の周囲に領域を形成する。パラフィン、例えばワックス又はグリースは室温では固体として、高温では液体として用いることができることが理解される。
【0024】
凍結乾燥された一定分量の試薬14は、内腔10内に配置される。PCR分析のために、凍結乾燥された一定分量の試薬14は、トリスマ、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ウシ血清アルブミン(BSA)、トレハロース、スクロース、メリジトース(melizitose)、フィコール、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、三リン酸塩及び耐熱性DNAポリメラーゼを含む必要な生物化学的試薬の反応混液を含有する。
エアロゾル濾過器15はまた、シャフト4の遠位端11における内腔10内に配置される。エアロゾル濾過器15の外直径は、内腔10内に強く適合し、且つ堅く保持されるようなものである。エアロゾル濾過器15は十分に多孔性であり、内腔10内のサンプル及び流体の移動のために空気を流さなければならない。エアロゾル濾過器15は、典型的に高分子量ポリプロピレンからなる。
【0025】
ここで図2及び3を参照すると、処理用装置16は、形状が装置1のシャフト4の先細りした外壁に対応している先細りした内壁17を有する容器5を有する。従って、容器5は、装置1をぴったり受け止めるように成形される。容器5は任意の好適な材料から構成してよいが、典型的にはテフロン(登録商標)からなり、これは自己潤滑性であるために装置1の容易な挿入及び除去を助ける。
該処理用装置16はまた、3つの空間的に離れた熱領域18、19、及び20を有する。該熱領域は、容器5の壁と接触しており、該処理用装置16に挿入されたときに装置1に熱を移動することができる。
【0026】
熱領域18、19、及び20は、任意の好適な材料から構成してよいが、好ましくはアルミニウムである。熱領域18、19、及び20は、内蔵された加熱素子及び温度測定素子を有し、各熱領域18、19、及び20の温度の設定、監視及び制御を互いに独立に可能にする。
熱領域18、19、及び20は、それらの温度調節が互いに連動しないように十分離れている。言い換えれば、1つの領域の温度は、別の領域の温度にいかなる有意な程度の影響も与えない。このスペースは任意の適切なサイズでよいが、典型的には3mmである。
【0027】
PCR分析を用いるDNA含有サンプルの処理では、熱領域18を95℃に設定し、変性領域として設計する。熱領域19を72℃に設定し、伸展領域として設計する。熱領域20を45〜60℃の間に設定し、焼きなまし領域として設計する。
熱領域18、19、及び20は、容器5に熱を移動し、容器5の内側の先細りした壁17に対応する熱領域を作成する。続いて、熱は装置1のシャフト4及び内腔10に移動する。
熱領域18、19、及び20はまた、内腔10における液体プラグの存在を検出するための手段と適合される。これは任意の好適な機構でよいが、好ましくは光電子工学的手段による。
【0028】
装置16はベースユニット21も有し、これは空気圧力制御器、バルブ及び分光学的光電子工学的検出器を収容する。装置16はさらにマイクロプロセッサーを含むか、又はそれに連結されている。
操作中、装置1のシャフト4は保持され、サンプリングボール2は、そこから関心のある生物学的材料を含有するサンプルが分析される表面に渡って回転する。ソケット3内でのボール2の回転は、サンプルをボール2からサンプル入口6まで移動させる。さらに、ボール2及びソケット3の間の剪断力は、該サンプルにおける細胞の分裂を容易にするのに役立ち得る。
【0029】
続いて、装置1を、図3に示すように処理用装置16の容器5内に挿入する。挿入することで、一連のマイクロプロセッサーで制御された時限イベントが、適切なPCR化学反応によるDNAの処理、及びDNA化学反応の生成物の検出を容易にする。
まず、熱領域18、19、及び20が、シャフト4の内腔10に熱を移動させる。続いて、パラフィン12のプラグが融解して封入された一定分量の水性材料13を遊離し、且つ凍結乾燥された一定分量の試薬14を該遊離した水性材料13と接触させ、それによって該凍結乾燥された一定分量の試薬14を再水和して試薬混合物22を形成する。
【0030】
工程1
サンプル処理の第一工程では、圧力制御器が、定量パルスの圧力を試薬混合物22に内腔10を垂直に介して送る。試薬混合物22の位置は、それが熱領域18、19、及び20を通ることで光電子工学的に検出される。試薬混合物22は、それがサンプル出口8で該サンプルと接触してサンプル及び試薬22の混合物を形成するまでシャントされる。
工程2
該サンプルと試薬混合物22の接触に続き、圧力制御器が、サンプル及び試薬の混合物が内腔10の下方へ変性ブロックの領域18まで引き出されるまで定量パルスの減圧を内腔10に送る。マイクロプロセッサーは、サンプル及び試薬の混合物が、長期間変性ブロックの領域18内に残ることを保証する。該混合物はこの間、約95℃まで加熱される。これは任意の適切な時間でよいが、典型的には1〜2分である。この工程は、大量のDNAを細胞物質から遊離するのに役立つ。PCR変性が起こる。
【0031】
工程3
変性工程が完了した後、圧力制御器が、変性DNAの溶液が焼きなましブロック20の領域に存在するまで定量パルスの減圧を内腔10に送る。マイクロプロセッサーは、この領域での時間を典型的に8秒であることを保証する。これは、PCR方法の焼きなまし工程を構成する。この期間中、分光学的光電子工学測定法が、放射される蛍光のフルオロフォア励起、検出及び定量化によってDNA濃度を決定する。
工程4
DNA濃度測定に続き、圧力制御器が、該溶液が伸展ブロックの領域19に存在するまで定量パルスの圧力を内腔10に送る。マイクロプロセッサーは、該溶液が長期間この領域内に残ることを保証する。これは任意の適切な時間でよいが、好ましくは16秒である。これはPCR方法の伸展工程を構成する。
工程5
続いて、圧力制御器が、該溶液が変性ブロックの領域18に存在するまで定量パルスの圧力を内腔9に送る。この変性工程の時間は、典型的には8秒である。
【0032】
工程3〜5は、PCRの全なサイクル及び標的DNA配列の有効な倍増を構成する。任意の数のサイクルを用いてよいが、典型的には35サイクルが用いられる。リアルタイム分析は、焼きなまし段階における各サイクル中に達成される。
PCR分析のために、凍結乾燥された一定量の試薬14が、トリスマ、塩化カリウム、ウシ血清アルブミン(BSA)、トレハロース、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、三リン酸塩及び耐熱性DNAポリメラーゼを含有する。
本発明を例証するために記載したが、請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することの無い変形及び改良がなされ得ることを理解すべきである。さらに、公知の同等物が特定の特徴に対して存在する場合、そのような同等物は本明細書で特に言及されているかのように組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の方法及び装置は、広い範囲の用途に有用である。本発明は、特にPCR技術を用いるサンプルのDNA試験に有用である。しかし、本発明は、試薬との混合がサンプル分析の前に必要とされる任意のサンプル処理に用いられ得る。本発明は産業上の利用を増強し、実験室環境の外で用いることができ、高度な技術的に熟練した技師を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のサンプリング装置の該略図。
【図2】図1のサンプリング装置を収容することを目的とするサンプル処理用装置。
【図3】加熱前の図2のサンプル処理用装置に配置された図1のサンプリング装置。
【図4】加熱後の図2のサンプル処理用装置に配置された図1のサンプリング装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを分析するための方法であって、
a. 該サンプルを導管に入れること、該導管は、固体又は半固体疎水性材料に封入されている少なくとも1種のサンプル処理用試薬を有する;
b. 熱を加えて該固体又は半固体材料を液化すること;
c. 該サンプル処理用試薬を該導管に沿って移動させ、該サンプル処理用試薬を該サンプルと接触させ、及び該サンプルと反応させて生成混合物を形成すること、及び
d. 該生成混合物における生成物の存在を検出し、及び任意にその濃度を測定すること、
を含む方法。
【請求項2】
サンプルがDNAを含有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
サンプルが、血液、血清、唾液、尿、又は乳であるか、又は骨、糞、脂肪、肉、毛、皮膚、植物質、微生物、又は微生物生息環境から得られた抽出物である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のサンプル処理用試薬が水溶液である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種のサンプル処理用試薬が固形物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のサンプル処理用試薬が化学的試薬の混合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のサンプル処理用試薬が、化学的及び/又は生物学的試薬の混合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のサンプル処理用試薬が、酵素アッセイに必要な化学的及び/又は生物学的試薬の混合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種のサンプル処理用試薬が、DNA分析に必要な化学的及び/又は生物学的試薬の混合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
DNA分析に必要な試薬が、1種以上の無機塩、トリス緩衝液、ウシ血清アルブミン(BSA)、オリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、三リン酸塩、フィコール、スクロース、アガロース、メリジトース及び耐熱性DNAポリメラーゼを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
サンプル処理用試薬が凍結乾燥された固形物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
固体又は半固体材料がワックス又はグリースである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
固体又は半固体材料がパラフィンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
生成混合物における生成物の濃度を検出又は測定することが、光電子工学的手段による、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
光電子工学的手段が、生成混合物及び光学的検出器の間の光路を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
光電子工学的手段が、光学的検出器内に突出している光路を含み、光学的検出器がマイクロプロセッサーに接続されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
サンプル及び/又はサンプル処理用試薬が、導管に与えられた圧力により導管に沿って移動させられる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
DNAを含有する生物学的サンプルの分析方法であって、
1)該サンプルを導管の一端に入れ、固体又は半固体疎水性材料によって封入されている試薬の水溶液及びPCR試薬の凍結乾燥混合物を、該導管内に含有させる工程、
2)該導管を加熱して、該固体又は半固体疎水性材料を液化させて試薬の水溶液を放出し、該試薬の水溶液をPCR試薬の凍結乾燥混合物と接触させ、及び該PCR試薬を再水和させ、PCR試薬の水性混合物を形成する工程;
3)PCR試薬の水性混合物を、該導管への圧力の適用により該導管に沿って順方向に移動させ、PCR試薬の水性混合物を該サンプルと接触させ、及び該サンプルと混合してサンプル混合物を形成する工程;
4)該サンプル混合物を、続いて該導管への減圧の適用により該導管に沿って逆方向に移動させ、該サンプル混合物が、該混合物を加熱して該サンプルに含有されるDNAを変性させる変性領域に存在する工程;
5)変性DNA及びPCR試薬を含有する該混合物を、続いて該導管への減圧の適用によりさらに該導管に沿って逆方向に焼きなまし領域まで移動させ、及び熱が該混合物から除去されて該混合物内に含有されるオリゴヌクレオチドプライマーを該変性DNAに焼きなます工程;
6)焼きなまされたDNAを含有する溶液を、該導管への圧力又は減圧の適用により該導管に沿って検出領域まで移動させ、及び該DNA濃度を光電子工学的に測定する工程;
7)焼きなまされたDNA及びPCR試薬を含有する該サンプル混合物を、続いて該導管への圧力の適用により該導管に沿って順方向に伸展領域まで移動させ、及び熱を与えて酵素触媒DNA重合により該焼きなまされたDNAの伸展を引き起こす工程;
8)該混合物を、続いて該導管への減圧の適用により該導管に沿って逆方向に移動させ、該混合物が、該混合物を加熱して該サンプルに含有されるDNAを変性させる変性領域に存在する工程;
9)該混合物を、続いて該導管への減圧の適用によりさらに該導管に沿って逆方向に焼きなまし領域まで移動させ、及び熱を除去してオリゴヌクレオチドプライマーを該変性DNAに焼きなます工程;及び
10)該混合物を、続いて該導管への圧力又は減圧の適用により該導管に沿って移動させ、及び該DNA濃度を光電子工学的に測定する工程、
による、方法。
【請求項19】
上記工程7〜10を1回以上繰り返す、請求項18記載の方法。
【請求項20】
工程7〜10を10〜40回繰り返す、請求項19記載の方法。
【請求項21】
サンプルを分析するための装置であって、
a)シャフトと該シャフトに配置される導管を有するサンプリング装置、使用すると、該サンプルが1種以上のサンプル処理用試薬と接触して生成混合物を与える;
b)該サンプリング装置の該シャフトを収容するように成形された容器を有するサンプル処理用装置;
c)該サンプリング装置の1つ以上の領域を加熱するために該サンプル処理用装置に配置される1種以上の加熱用素子、使用すると、該サンプルと1種以上の該サンプル処理用試薬の反応を可能にし、該生成混合物を与える;及び
d)該生成混合物における生成物の1つ以上の特徴を検出又は測定するための検出手段、
を含む、装置。
【請求項22】
サンプリング装置が、ソケット内に保持されている固定されていない回転ボールを含み、該ボールの外表面の一部が表面と接触し、該ボールを該表面に渡って回転させることによってその表面からサンプルを得ることができる、請求項21記載の装置。
【請求項23】
サンプリング装置のシャフトが先細な縦長の軸針であり、ソケットと隙間をあけて連結しているサンプル入口及び該軸針の長さを延長する導管を有する、請求項21又は22記載の装置。
【請求項24】
サンプリング装置のシャフトが、生成物を分析するための光路を与える、請求項21〜23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
検出手段が、サンプリング装置の壁に透明な窓を含む、請求項21〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
請求項21〜25のいずれか1項に記載の装置における使用に適合された、サンプリング装置。
【請求項27】
請求項21〜25のいずれか1項に記載の装置における使用に適合された、サンプル処理用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−521432(P2008−521432A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544295(P2007−544295)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/NZ2004/000311
【国際公開番号】WO2006/059911
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507177582)グローバル テクノロジーズ (エヌゼット) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】