説明

サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法

本発明は、サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法に関するものである。本発明による方法においては、サンプルガスを収容した容器と、容器ポート付きの例えばサンプリングニードルといったようなレセプタクルと、を準備し;レセプタクルの容器ポートを容器内に位置させた状態で、キャリアガスによって容器を加圧するとともに、キャリアガスのフロー経路内へと所定容積の標準ガスを導入する。いくつかの実施形態においては、回転バルブに対して標準ガスを供給し、容器ポートを容器内に位置させた状態で、バルブを、キャリアガスのフロー経路に対して連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル容器へ標準ガスを導入するための方法に関するものである。より詳細には、本発明は、サンプリング時にヘッドスペース蒸気を含有している容器内へと、所定容積の標準ガスを自動的に導入するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーは、実質的に物理的な分離方法であり、この方法においては、キャリアガス中において試験サンプルをなす構成要素が、吸着されまたは吸収され、その後、カラム内の固定相材料によって脱離される。サンプルのパルスは、安定したキャリアガス流内へと導入され、このキャリアガス流が、サンプルをクロマトグラフィーカラム内へと搬送する。カラムの内部は、液体によってライニングされており、液体と、構成要素の分散係数に応じて様々に変化し得るようなサンプル内の様々な構成要素と、の間の相互作用が、サンプルを、様々な構成要素へと分離させる。カラムの端部のところにおいては、個々の構成要素が、時間経過とともに分離される。ガスの検出は、典型的にはクロマトグラムと称されるような、時間スケールパターンを提供する。この時間スケールパターンは、校正によりあるいは既知サンプルとの比較により、試験サンプル内に存在する構成要素とその濃度とを示す。これが行われるプロセスの一例は、Hinshaw 氏による米国特許第5,545,252号明細書に開示されている。
【0003】
多くの場合、サンプルは、まず最初に、サンプリングデバイスを使用して得られ、その後、クロマトグラフへとサンプルを移送する。サンプルを得るための、および、サンプルをクロマトグラフィーカラム内へと導入するための、1つの手法は、『ヘッドスペースサンプリング』として公知である。従来のヘッドスペースサンプリングにおいては、サンプル材料を、サンプル瓶の中に密封し、特定の時間にわたって一定の温度条件下に放置する。サンプル瓶内の気相中における分析対象物の濃度は、この恒温時間内において、液相および/または固相に対して平衡状態へと到達しているべきである。サンプル瓶は、その後、恒温状態および平衡状態に起因する『自然的な』内部圧力より大きな圧力値へと、キャリアガスによって加圧される。その後、加圧されたサンプル瓶は、クロマトグラフィーカラムへと接続され、これにより、サンプル瓶内の気相の一部を、短時間でもってカラム内へと移送し得るものとされる。このようなサンプリングデバイスの一例は、Riegger 氏他による米国特許第4,484,483号明細書に開示されている。そのようなサンプリングデバイスを使用したクロマトグラフィーシステムの一例は、Hinshaw 氏による米国特許第5,711,786号明細書に開示されている。この文献においては、サンプル瓶とクロマトグラフィーカラムとの間において、クロマトグラフィー注射器が使用される。
【0004】
多くの場合、分析においては、しばしば『内部標準』と称されるような既知量の既知物質を含有していることが望ましい。この内部標準は、サンプル中には存在しないことが既知でありかつかつサンプル化合物と同様の濃度および化学特性のものであることが既知であるような1つまたは複数の化合物を含有しているものであって、クロマトグラフィー分析時には参照ピークを提供し得るものであり、これにより、ピーク識別を補助したり、あるいは、定量的精度を改良したり、することができる。例えば、最終クロマトグラフィー分析においては、これら標準ガス化合物に起因するピークを、認識することができ、定量化することができ、分析対象化合物に関する定量的結果に対しての比率補正を行うために使用することができる。この技術は、標準ガス化合物と各分析対象物との双方が同じ変動を受けることのために、分析結果に影響を与え得るような機器的変動を補償する。これにより、標準ガス化合物と各分析対象物との相対的レスポンスは、存在する分析対象物の量に関して、より正確な定量的測定結果をもたらす。
【0005】
多くの理由のために、サンプル瓶からのヘッドスペース蒸気の抽出に先立って、サンプル容器自体内へと内部標準を導入することが、有効なものとなり得る。例えば、典型的には、ヘッドスペースサンプラーが使用され、これにより、多数のサンプル瓶を順次的にテストすることができる。多数のサンプル瓶は、通常、回転カルーセル内に保持される、あるいは、ある種の移動ラック内に保持される。与えられた自動サンプリングシーケンス内において多数のサンプル瓶を取り扱う場合には、1つまたは複数のサンプル瓶に漏れが発生することがあり得る。そのような場合には、明らかに、分析データに誤差が引き起こされる。したがって、サンプル瓶の完全性に関する問題点を検出し得るよう、ヘッドスペース抽出に先立って、サンプル瓶内に内部標準を予め収容させておくことが有利である。
【0006】
同様に、多くの場合、クロマトグラフィーカラム内へとサンプルを導入するに先立って、サンプル内の分析対象物を予め濃縮することが要望され、場合によっては、サンプル内から水分を除去することが要望される。したがって、Markelov氏による米国特許第5,792,423号明細書および米国特許第6,395,560号明細書に開示されているように、これらシステムは、典型的には、この目的のために何らかの『トラップ』を備えている。分析対象物がトラップを通過する際には、分析対象物がトラップに保持される。分析対象物は、その後、通常は加熱によって、トラップから解放され、クロマトグラフィーカラム内へと搬送される。一例は、吸着性のトラップである。吸着性トラップは、分析対象物を吸着し、その後、吸着した分析対象物を、クロマトグラフィーカラム内において脱離する。このような構成の例は、Markelov氏による米国特許第5,932,482号明細書および Tipler 氏による米国特許第6,652,625号明細書に開示されている。したがって、多くの場合、トラップの効率をテストし得るよう、トラップ内への導入前に、内部標準をサンプルと混合することが有利である。
【0007】
サンプル容器内へと標準物質を導入するために、様々なシステムが提案されている。そのような構成の例は、 Neal 氏他による米国特許第6,706,245号明細書、および、Rao 氏他による米国特許第5,998,217号明細書に開示されている。しかしながら、これらシステムの各々は、多数の搬送ラインおよび複雑なニードルアセンブリを備えるものであって、いささか複雑なものである。
【0008】
したがって、要望されているものは、複雑なフロー経路も複雑なニードルアセンブリも必要とすることなく、サンプル容器内へと標準ガスを導入するためのシステムおよび方法である。また、要望されているものは、追加的なステップを行う追加的な時間を必要とすることなく、サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法である。
【特許文献1】米国特許第5,545,252号明細書
【特許文献2】米国特許第4,484,483号明細書
【特許文献3】米国特許第5,711,786号明細書
【特許文献4】米国特許第5,792,423号明細書
【特許文献5】米国特許第6,395,560号明細書
【特許文献6】米国特許第5,932,482号明細書
【特許文献7】米国特許第6,652,625号明細書
【特許文献8】米国特許第6,706,245号明細書
【特許文献9】米国特許第5,998,217号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、標準物質の導入を容易なものとし得るよう、ヘッドスペースサンプリングを行うための複数の基本的ステップを利用しつつ、サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、ヘッドスペースサンプリングのために必要とされる基本的ハードウェアに対しての修正あるいは追加を最小なものとしつつ、サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法を提供することである。
【0011】
従来技術における様々な欠点を克服し得るよう、また、上述した様々な目的や利点の少なくともいくつかを達成し得るよう、本発明は、サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法であって、キャリアガスを供給するためのキャリアガス導入口を準備し;サンプルガスを保持するためのサンプル容器を準備し;このサンプル容器内へと少なくとも部分的に挿入され得るよう構成されなおかつサンプル容器から引き抜き得るよう構成されたレセプタクルであるとともに、容器ポートを有したレセプタクルを準備し;容器内へとレセプタクルを少なくとも部分的に挿入し;容器ポートを容器内に位置させた状態で、キャリアガス導入口から容器ポートへとフロー経路に沿ってキャリアガスを供給することにより、容器を加圧し;容器を加圧する際に、キャリアガスのフロー経路内へと所定容積の標準ガスを導入する。
【0012】
いくつかの実施形態においては、本発明は、サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法であって、内部標準物質のためのバルブを駆動することによって、キャリアガスのフロー経路内へと所定容積の標準ガスを導入する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によるサンプリング容器内へと標準ガスを導入するためのシステムの一実施形態の基本的な構成部材が、図1に示されている。本明細書においては、『頂』、『底』、『上』、『下』、『上方』、『下方』、『上に』、『下に』、『上へ』、『下へ』、『上側』、『下側』、『前面』、『背面』、『前向き』、『後向き』といったような用語は、図面に図示された向きを示している。このような向きは、本発明においては、必須ではない。
【0014】
図1においては、システム10が待機モードで示されている。例えばヘッドスペースサンプラーといったようなサンプリングデバイスは、抽出されて分析されることとなるサンプルを収容している複数の容器(すなわち、複数のヘッドスペースサンプル瓶)20を保持している。典型的には、ヘッドスペースサンプラーは、サンプリングヘッド24内に配置された例えばサンプリングニードルといったようなレセプタクル22を備えている。このニードル22は、容器20内へと挿入され得るように、かつ、容器20から引き抜き得るように、構成されている。サンプリングヘッド24は、サンプルチャンバ26を有している。サンプリングニードル22は、容器ポート28を有している。この容器ポート28を通して、流体は、ニードル22とサンプル瓶20の内部との間にわたって連通する。サンプリングニードル22は、さらに、サンプルチャンバポート30を有している。このサンプルチャンバポート30を通して、流体は、ニードル22とサンプルチャンバ26との間にわたって連通する。
【0015】
内部に吸着剤34が配置されている吸着性ハウジング32(一般に、吸着性トラップと称される)と、フローコントローラ72と、固定された絞り弁74と、ベント穴36とが、サンプルチャンバ26に対して流体連通可能に連結されている。したがって、ヘッドスペース蒸気がサンプル瓶20から抽出され、キャリアガスと混合された際には、このサンプル混合ガスは、吸着剤34を通って流れることができる。吸着剤34は、測定対象をなす分析対象物を吸着し、ベント穴36から残部を周囲雰囲気へと排出する。ある有利な実施形態においては、後述するように、吸着剤34が疎水性のものとされ、これにより、キャリアガスによって水分をシステムから容易にパージすることができる。吸着剤34は、この目的のために適切であるような任意の材料を有することができる。例えば、グラファイト化されたカーボンブラックや、ポリマー製吸着剤や、炭素製モレキュラーシーブ、を有することができる。
【0016】
吸着性ハウジング32は、ガスクロマトグラフに対して流体連通可能に連結されている。ガスクロマトグラフの基本的な構成部材は、クロマトグラフィーカラム36と、検出器(図示せず)と、である。したがって、吸着剤34によって既に吸着されている分析対象物を、脱離させて、カラム36内へと導入することができる。この理由のために、ある種の有利な実施形態においては、吸着性ハウジング32は、温度制御可能なものとされる。これにより、吸着剤34を加熱することによって、吸着剤34によって保持された分析対象物を脱離させることができ、その後、キャリアガスを流すことによって、分析対象物をハウジング32から追い出して、カラム36内へと導入することができる。
【0017】
システム10に対しての流体供給と、システム10全体にわたっての流体流通の制御と、を行い得るよう、複数のガス導入口が設けられている。例えば、システムは、システムによって必要とされるキャリアガスを一般に供給するためのキャリアガス用第1導入口42を備えている。例えば、導入口42は、操作の様々なステージにおいてシステム10の様々な部分に対してキャリアガスを供給することができる。例えば、サンプリングヘッド24に対して流体を供給することにより容器20を加圧することができる。あるいは、他の例として、吸着性ハウジング32に対してキャリアガスを供給することにより、キャリアガスに付随させつつ分析対象物を含有しているサンプルを搬送することができる、あるいは、内部に含まれた水分を追い出すことができる。システム10は、さらに、第2ガス導入口44を備えている。この導入口44は、様々なステージにおいてシステムの様々な部分によって使用され得るガスを供給するためのものであるものの、主には、システムの残部からクロマトグラフィーカラム36を分離するために使用される。これにより、分析対象物を内部に導入することが特に要望された時まで、汚染された流体がカラム36に入るのを防止することができる。システムは、さらに、第3導入口46を備えている。この第3導入口46は、主には、吸着性ハウジング32に対してキャリアガスを供給するためのものである。これにより、分析対象物が吸着剤34から脱離する際に、分析対象物をカラム36へと導入することができる。導入口42,44,46を開閉させ得るよう、それぞれ対応するバルブ52,54,56が設けられている。
【0018】
バルブ80が、システム内へと標準ガスを導入するために、設けられている。このバルブは、例えば、サンプリングループ82も含めて、6個のポートを有したガスサンプリングバルブとすることができる。したがって、バルブ80は、回転することができ、個の回転により、ループ82を、図1および図4に示すように、また、後述するように、標準ガスの流通に連通した状態と、システム内においてキャリアガスの流通に連通した状態と、にわたって、交互に配置することができる。その結果、ループ82は、標準ガス供給源から標準ガスを受領することと、システムのキャリアガスフロー内へと標準ガスを導入することと、を交互に行うことができる。
【0019】
上述したシステムの動作が、図2〜図8に、順を追って図示されている。ループ負荷ステップが図2に示されている。バルブ80は、ループ82が、導入口42からのキャリアガスの流通を行わないような状態に、配置されている。そうではなく、バルブは、図9A〜図9Cにおいてより詳細に示すように、ループ82が、バルブ86を介しての標準ガス供給源84に対しての連通を行い得るような状態であるように、配置されている。このようにして、所定容積の標準ガスを、ループ82内へと導入される。
【0020】
ループ82内へと標準ガスを導入した後に、バルブ86を閉塞する。これにより、システムは、実質的に、図1に示す待機モードへと実質的に復帰する。この時点においては、ループ内の圧力は平衡化される。この平衡化は、図9A〜図9Cに示すように、様々な手法で行うことができる。例えば、図9Aに示すように、ループ82からの標準ガスは、ニードルバルブ88を介して、液体を含有している容器90内へと、単純に供給することができる。図9Bに示すように、他の実施形態においては、雰囲気圧力の変化によって引き起こされ得る変動を低減し得るよう、古典的な液体圧力計92を容器90の代わりに使用することができる。図9Cに示すように、さらに他の実施形態においては、非常に速い平衡化時間を達成し得るよう、背圧制御装置94を使用することができる。これにより、ループ82内において、適切な一定の背圧を提供することができる。
【0021】
容器貫通ステップが、図3に示されている。サンプリングニードル22は、サンプル瓶20へと向けて下降し始め、サンプル瓶の隔壁を穿孔する。容器ポート28がサンプリングヘッド24から延出して、周囲エアに曝されると、キャリアガスが、雰囲気へと放出される。したがって、後述するように、サンプルループ82は、適切な時間までオフラインのままとされる。
【0022】
加圧と標準ガスの導入とを行うステップが、図4に示されている。図4に示すように、サンプリングニードル22を、サンプル瓶20内へとさらに降下させ、容器ポート28を、サンプル瓶20の内部に対して流体連通させる。導入口42,44,46のすべてを開放し、チャンバポート30を通して、サンプルチャンバ26内へと流体を供給し、これにより、ニードル22を通して下向きに、さらには、サンプル瓶20内へと(矢印Aによって示されている)、流体を供給する。このようにして、サンプル瓶が加圧される。この時点で容器ポート28がサンプル瓶20の内部と流体連通していることのために、バルブ80を駆動することにより、サンプルループ82を、サンプル瓶20内へと向けて流通するキャリアガスのフロー経路に連通させることができる。これにより、サンプル瓶20を加圧することができる。したがって、キャリアガスがサンプル瓶20内へと向けて流通している際には、キャリアガスは、サンプルループ82内の標準ガスと一緒に、サンプリングニードル22を介してサンプル瓶20内へと、流入する。
【0023】
抽出ステージ(あるいは、トラップ負荷ステージ)が、図5に示されている。図5に示すように、導入口バルブ52を閉じることにより、導入口42からの流体供給を停止させる。同様に、バルブ56を閉じることにより、導入口46からの流体供給を停止させる。その結果、測定されるべき分析対象物を含有している流体を、サンプル瓶20から導出し、容器ポート28を通してさらにニードル22を通してチャンバポート30から導出し、吸着性ハウジング32へと案内する。吸着性ハウジング32のところにおいては、吸着剤34によって分析対象物を吸着させ、残部を、ベント穴36を通して外部に排出する(矢印Bによって示されている)。導入口バルブ54は、開放状態のままとし、これにより、導入口44を通しての流体供給を継続させて、カラム36の分離を継続させる(矢印Cによって示されている)。バルブ80は、初期位置へと復帰させる。これにより、ループ82は、キャリアガスのフロー経路と連通しなくなる。ループ82は、上述したように、再度標準ガスが導入されることによって、待受状態となる。
【0024】
サンプル瓶20中の圧力が、サンプル瓶20内のサンプル量に比例することにより、ヘッドスペース蒸気がサンプル瓶20から抽出されるにつれて、圧力が低下する。このため、通常は、抽出ステージにおいては、流速が徐々に低下する。したがって、ある種の有利な実施形態においては、この傾向に抗し得るよう、フローコントローラ72が設けられている。フローコントローラ72は、圧力低下に応答して、流速を漸次的に増大させる。これにより、サンプル瓶20内のヘッドスペース蒸気の減少が流速を減少させた際でも、流速を効果的に増大させることができる。ある種の有利な実施形態においては、フローコントローラ72は、圧力減少に直接的に比例させた量でもって流速を増大させ得るよう構成されている。これにより、流速を一定に維持することができる。このようにして、サンプル瓶20からヘッドスペース蒸気を抽出するプロセスにおいては、抽出ステージが進行する場合に、流速が徐々に低下し始めることがない。これにより、抽出時間を、短縮することができる。いくつかの実施形態においては、フローコントローラ72は、前方圧力制御器を備えている。しかしながら、他の実施形態においては、フローコントローラは、流量を適切に制御し得るような任意のデバイスを備えることができる。例えば、マスフローコントローラや、あるいは電子的コントローラ、といったようなデバイスを備えることができる。
【0025】
しかしながら、測定用サンプル瓶20を加圧する上記ステージ、および、ヘッドスペース蒸気を吸着性ハウジング32を通してベント穴36から排出する上記ステージにおいては、サンプル瓶20からすべてのヘッドスペース抽出するものではない。そうではなく、初期ヘッドスペース蒸気のある割合は、大気圧でもってサンプル瓶20内に残留する。したがって、ある有利な実施形態においては、複数回にわたって多数の加圧サイクル/抽出サイクルを行う。加圧抽出サイクルを行うに際して要する時間は、フローコントローラ72を使用することによって、一定のフロー速度に維持されている。このため、複数のサイクルを連続して行うことができる。典型的には、プロセッサ70が、行われる加圧−抽出サイクル数を自動的に制御する。したがって、システム10の操作者は、抽出されるべき蒸気量と、追加のサイクルを行う場合に消費される時間と、の間の適切なバランスを決めることにより、どれだけのサイクル数が所望であるかを決めることができる。また、操作者は、その後、この値を、プロセッサ70へと入力することができる。これに代えて、操作者は、残留蒸気の割合がどの程度であれば許容可能であるかを決定することができ、この値を、プロセッサ70へと入力することができる。この場合、プロセッサ70は、必要とされる加圧−抽出サイクル数を計算することができる。操作者によって入力された回数にわたって、あるいは、プロセッサ70によって計算された回数にわたって、加圧抽出サイクルが行われる。その後、システム10は、後述するような残りのステップを行う。
【0026】
ある種の有利な実施形態においては、システム10は、ヘッドスペースサンプル瓶20内の圧力の決定のためにゲージを備えている。これは、サンプル瓶20内の圧力を測定し得るとともにシステムあるいはシステムの操作者のいずれかに対してこの情報を伝え得るような任意のデバイスとすることができるけれども、ある種の実施形態においては、このゲージは、サンプル瓶20に対して流体連通した圧力トランスデューサ62とされる。したがって、ヘッドスペース蒸気を付帯したキャリアガスがトランスデューサ62を通して流れる際に、サンプル瓶20内の条件が望ましくないものであることが検出された場合には、即座に、操作者に対して、例えばLEDや可聴アラームや視覚的ディスプレイスクリーン上における記録やプロファイルといったようなものによって、警告が発せられる。
【0027】
フローコントローラ72を使用することに基づいて流速が一定に維持されることにより、例えば、サンプル瓶の漏れや、不適切な開始圧力や、サンプル瓶が欠損してサンプル瓶の容量が異常なものとなってしまうことや、サンプル瓶内に存在するサンプル量が多すぎるとか少なすぎるとか、といったような、様々な望ましくない条件は、トランスデューサ62を使用して圧力を観測することによって、容易に検出することができる。上述したように、圧力低下は、サンプル瓶20から抽出されるサンプル量に比例する。流通時間(あるいは、抽出時間)が、通常は、容器内のサンプル容積と圧力との双方に比例することにより、時間の関数としての圧力低下のプロットは、通常は、指数関数的なプロファイルとなり、圧力の測定や比較を困難なものとする。しかしながら、フローコントローラ72が流速を一定に維持していることにより、時間の関数としての圧力低下のプロットは、線形的なプロファイルとなる。したがって、圧力低下の測定は、サンプル瓶が漏れを有しているかどうかあるいは他の望ましくない状況となっているかどうかを決定するに際して、非常に有効なものとなる。
【0028】
トランスデューサ62は、フローコントローラの影響を受ける前の位置であれば、圧力を測定するのに適切な任意の位置に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、トランスデューサは、フローコントローラ72の直前位置において、流通経路内に配置することができる。しかしながら、ある種の有利な実施形態においては、サンプリングヘッド24に近い位置が使用される。例えば、圧力トランスデューサ62は、ニードルパージ66のところに配置される。これにより、例えば吸着剤34を通ってのわずかな圧力低下といったような可能な外部要因が正確な圧力測定に悪影響を及ぼしてしまうことを、回避することができる。
【0029】
次に、分析対象をなすサンプル内に有意な量の水分が存在しているようなある種の実施形態においては、乾燥パージステップを行うことが、望ましい。図6に示すように、まず最初に、ニードル22を、サンプル瓶20から引き抜き、容器ポート28を、シール60よりも上方に配置する。次に、図7に示すように、導入口バルブ52を再び開放し、これにより、導入口42を通してのシステム内への流体の導入を可能とする。流体は、吸着性ハウジング32内を通って下向きに流れ、吸着性ハウジング32内に残留しているすべての水分をベント穴36を通して追い出す(矢印Dによって示されている)。この場合にも、導入口バルブ54は、開放状態のままとされ、これにより、導入口44を通しての流体供給を継続させて、カラム36の分離を継続させる(矢印Eによって示されている)。
【0030】
脱離ステップは、図8に示されている。図8に示されるように、バルブ52,54を閉塞することにより、導入口42,44からの流体供給を停止させる。バルブ56を開放し、これにより、導入口46を通して流体を導入する。吸着性ハウジング32を加熱することにより、吸着剤34によって保持された分析対象物を脱離させることができる。キャリアガスを、導入口46を通して吸着性ハウジング32内へと導入し、脱離させた分析対象物をクロマトグラフィーカラム36内へと案内する(矢印Fによって示されている)。
【0031】
上記説明が例示に過ぎないものであって本発明を何ら限定するものでないことは、理解されるであろう。また、当業者であれば、本発明の精神を逸脱することなく、自明な修正を行い得ることは、理解されるであろう。したがって、本発明の範囲を決定するに際しては、上記説明ではなく、特許請求の範囲を参照するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるヘッドスペースのサンプリングを行うためのシステムを、待機モードにおいて、概略的に示す図である。
【図2】本発明によるヘッドスペースのサンプリングを行うためのシステムを、ループ負荷モードにおいて、概略的に示す図である。
【図3】図1のヘッドスペースサンプリングシステムを、容器貫通ステージにおいて、概略的に示す図である。
【図4】図1のヘッドスペースサンプリングシステムを、サンプル瓶加圧/標準物質導入ステージにおいて、概略的に示す図である。
【図5】図1のヘッドスペースサンプリングシステムを、抽出ステージ(トラップ負荷ステージ)において、概略的に示す図である。
【図6】図1のヘッドスペースサンプリングシステムを、ニードル引抜ステージにおいて、概略的に示す図である。
【図7】図1のヘッドスペース蒸気を抽出するためのシステムを、トラップパージステージにおいて、概略的に示す図である。
【図8】図1のヘッドスペース蒸気を抽出するためのシステムを、トラップ脱離ステージにおいて、概略的に示す図である。
【図9A】図1におけるサンプリングループを、圧力平衡化ステージにおいて、概略的に示す図である。
【図9B】図1におけるサンプリングループを、圧力平衡化ステージにおいて、概略的に示す図である。
【図9C】図1におけるサンプリングループを、圧力平衡化ステージにおいて、概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 システム
20 容器
22 サンプリングニードル(レセプタクル)
28 容器ポート
32 吸着性ハウジング
34 吸着剤
36 ベント穴
42 第1導入口(キャリアガス導入口)
70 プロセッサ
72 フローコントローラ
80 バルブ
82 サンプルループ(バルブループ)
90 液体を含有している容器
92 液体圧力計
94 背圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル容器内へと標準ガスを導入するための方法であって、
キャリアガスを供給するためのキャリアガス導入口を準備し;
サンプルガスを保持するためのサンプル容器を準備し;
このサンプル容器内へと少なくとも部分的に挿入され得るよう構成されなおかつ前記サンプル容器から引き抜き得るよう構成されたレセプタクルであるとともに、容器ポートを有したレセプタクルを準備し;
前記容器内へと前記レセプタクルを少なくとも部分的に挿入し;
前記容器ポートを前記容器内に位置させた状態で、前記キャリアガス導入口から前記容器ポートへとフロー経路に沿ってキャリアガスを供給することにより、前記容器を加圧し;
前記容器を加圧する際に、キャリアガスの前記フロー経路内へと所定容積の標準ガスを導入する;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
さらに、前記容器からサンプルとキャリアガスと標準ガスとを抽出する、というステップを行うことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記容器から抽出したサンプルとキャリアガスと標準ガスとを吸着剤にわたって通過させ、これにより、サンプルガス内のおよび標準ガス内の分析対象物を前記吸着剤に吸着させ、残部をベント穴から排出する、というステップを行うことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、
さらに、内部標準物質のためのバルブを準備するというステップを行い、
キャリアガスの前記フロー経路内へと所定容積の標準ガスを導入するという前記ステップを行うに際しては、前記バルブを駆動することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
内部標準物質のための前記バルブを、バルブループを備えたものとし、
前記バルブを駆動させるという前記ステップにおいては、前記バルブループを、キャリアガスのフロー経路に対して連通させることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
さらに、前記バルブの駆動に先立って前記バルブループに所定容積の標準ガスを供給しておく、というステップを行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
さらに、キャリアガスの前記フロー経路内へと所定容積の標準ガスを導入するという前記ステップに先立って前記バルブループ内の圧力を平衡化させる、というステップを行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
前記バルブループ内の圧力を平衡化させるという前記ステップに際しては、
平衡化時間を決定し;
この決定された平衡化時間にわたってニードルバルブを介して前記バルブループ内へと標準ガスを導入する;
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、
前記バルブループ内の圧力を平衡化させるという前記ステップに際しては、前記バルブループへと既に供給されている標準ガスのうちのいくらかを、液体を含有している容器内へと放出することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7記載の方法において、
前記バルブループ内の圧力を平衡化させるという前記ステップに際しては、前記バルブループへと既に供給されている標準ガスのうちのいくらかを、液体圧力計内へと放出することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7記載の方法において、
前記バルブループ内の圧力を平衡化させるという前記ステップに際しては、背圧前記バルブループへと既に供給されている標準ガスのうちのいくらかを、背圧制御装置を使用して放出することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、
前記サンプル容器を、隔壁を有したものとし、
前記レセプタクルを、サンプリングニードルを備えたものとし、
このサンプリングニードルを、このサンプリングニードルの下端のところに、前記隔壁を穿孔し得る尖端を有したものとし、
前記容器ポートを、前記ニードルの下部に位置したオリフィスとすることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2007−509323(P2007−509323A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535454(P2006−535454)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/034793
【国際公開番号】WO2005/038450
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・エルエーエス・インコーポレーテッド (28)