説明

サーボ制御装置、サーボ制御方法、およびサーボ制御プログラム

【課題】本発明の目的とするところは、安定性が高く、高速な制御が可能な高性能かつ安価なサーボ制御装置、サーボ制御方法、およびサーボ制御プログラムを提供することにある。
【解決手段】本実施形態に記載のサーボ制御装置は、トラッキングサーボループを開いた状態から閉じてトラッキングサーボ制御を引き込む場合に、トラッキングエラーゼロクロス信号の周期または周波数の変動に応じて、ピックアップを駆動するトラッキングドライブ信号の極性、振幅および出力間隔を変化させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光ディスク情報記録再生装置のサーボ制御分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信技術の進展に伴い、高密度・大容量の情報記録媒体の研究開発が活発に進められている。このような記録媒体としては、光学式記録媒体、磁気記録媒体等がある。例えば、光学式記録媒体としては、CD(Compact disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクが知られている。次世代大容量光ディスクとしては、青色レーザを光源に用いた光ディスクおよびトラック間隔を狭めた光ディスクの研究開発が精力的に進められている。
【0003】
上述した記録媒体の高密度化に応じて、記録再生装置の高性能化が必要とされている。特に、記録位置及び読取位置の制御を行うためのサーボ制御を含む記録読取位置制御装置の高性能化が重要である。
【0004】
例えば、光記録ディスクを用いる記録・読取装置においては、記録及び読取に用いられる光ビームを目標とする記録位置又は読取位置への移動及びフォーカス合わせをし、その後もトラッキング制御及びフォーカス制御を行いつつ記録又は読取を行う必要がある。すなわち、トラッキング制御、フォーカシング制御等のサーボ制御を含む、ピックアップの記録読取位置制御装置の高速化、高精度化、高安定化などが求められている。
【0005】
しかし、光ディスク自体の中心と光ディスクに形成されたトラックの中心とのずれであるいわゆる偏芯および光ディスク自体の中心と記録再生装置との装着ずれによる偏芯等の存在のために、ピックアップによる情報読取位置である照射スポットとトラックとのディスク半径方向の相対位置が常にずれることになる。
【0006】
そのために、光ディスクプレーヤの動作開始時等に偏芯したディスクを回転させた場合には、トラッキングサーボ制御をかけていないピックアップのビームスポットと光ディスクとの相対速度は非常に大きくなり、ピックアップから見た光ディスクに形成されたトラックとの横切り周波数は10KHzを越す周波数となる場合がある。これに対し、トラッキングサーボ制御帯域は数KHz程度であり、トラッキングサーボ制御への引き込みが困難になる場合もある。
【0007】
そこで、ディスク1回転に2回は光ディスクに形成されたトラックとビームスポットとの相対速度が遅くなる(横切り周波数が低くなる)ことを利用して、トラッキングエラー信号の周波数を監視してその周波数が低くなるのを待ってトラッキングサーボ制御への引き込みを行なう方法、または半波ブレーキ等の光ディスクに形成されたトラックとビームスポットとの相対速度を減速する制御を行いトラッキングサーボ制御への引き込みを行なう方法がある。
【0008】
しかし、トラックとビームスポットとの相対速度が遅くなるのを待つ場合には、通常、トラックとビームスポットとの相対速度が遅くなるディスクの回転角を待つために待ち時間が長くなる。さらに、ピックアップを移動した直後においては、何らかの要因でアクチュエータが振動している場合にはさらに待ち時間が長くなる。
【0009】
また、トラックとビームスポットとの相対速度を減速する制御を行う場合には、記録型ディスクの未記録領域においては、ピックアップの制御方向を決定する信号を得ることが困難である場合が多く、安定した制御を行うことが困難であるという課題があった。
【特許文献1】特開平7−129974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、安定性が高く、高速な制御が可能な高性能かつ安価なサーボ制御装置、サーボ制御方法およびサーボ制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載のサーボ制御装置は、情報記録媒体から記録情報を読取って読取信号を生成する光ピックアップのサーボ制御装置において、サーボ制御ループを開閉するスイッチ手段と、前記光ピックアップのサーボ目標値からの変位量を示す誤差信号を前記読取信号から抽出する誤差信号抽出手段と、前記誤差信号が変動する変動間隔の値を演算する演算手段と、前記変動間隔の値に基づいて、前記光ピックアップの加速度を変更する駆動信号を生成するとともに前記駆動信号を出力するピックアップ駆動手段と、前記変動間隔の値が予め定められた範囲の値であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記変動間隔の値が予め定められた範囲の値であると判断された場合に、前記スイッチ手段を開いた状態から閉じた状態とする制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本願に最適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
(I)全体構成及び動作
始めに、実施形態に係る光ディスクサーボ制御装置を含む情報記録再生装置の全体構成及び動作について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る光ディスク再生装置の概要構成例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、ピックアップ(PUとも略称する)部2から照射されたレーザビームLBが光ディスク1において反射され、反射されたレーザビームLBは光ディスク1の情報層における情報、および光ディスク1に設けられたランド若しくはグルーブ等の凹凸に応じて変化しており、その変化がピックアップ部2において電気信号Siに変換される。変換された電気信号Siを基に、誤差信号抽出手段を含む信号処理部3においてトラッキングサーボ情報およびフォーカスサーボ情報など(トラッキングサーボ情報およびフォーカスサーボ情報を総称してサーボ情報とも称する)を解析する。ピックアップ部2から出力された電気信号Siは、信号処理部3で解析され、ピックアップ部2の位置を制御するための誤差信号であるトラッキングエラー信号(Ste信号)およびフォーカスエラー信号(Sfe信号)、並びに制御信号(Sc信号)をスイッチ手段、演算手段、ピックアップ駆動手段、判断手段および制御手段を含むピックアップ制御部(PU制御部とも称する)4に出力する。
【0015】
ピックアップ(PU)制御部4は、入力されたトラッキングエラー信号Ste、フォーカスエラー信号Sfeおよび制御信号Scに基づき演算処理を行い、ピックアップ部2を駆動するための駆動信号であるトラッキングドライブ信号(Std信号)およびフォーカシングドライブ信号(Sfd信号)、並びにスピンドル部7を駆動するためのスピンドルドライブ信号(Spd信号)を生成する。
【0016】
ピックアップドライブ部6は、入力されたトラッキングドライブ信号Std、またはフォーカスドライブ信号Sfdに基づいて、ピックアップ部2の光ディスク1の半径方向、またはフォーカス方向への移動及び静止を制御するピックアップ制御信号Spmをピックアップ部2へ出力する。また、ピックアップドライブ部6は、信号処理部3から入力されたスピンドルドライブ信号Spdに基づいて、スピンドル制御信号Sscをスピンドル7に出力する。スピンドル部7は、スピンドル制御信号Sscに基づいて、光ディスク1を回転させる。
【0017】
次に各構成部について具体的に説明する。
【0018】
電気信号Siには、光ディスク1の情報層に記録された情報およびレーザビームLBの集光位置に関するフォーカスサーボ情報およびトラッキングサーボ情報等のサーボ情報が含まれている。
【0019】
例えば、電気信号Siには、トラッキングエラー信号Steが含まれており、ピックアップ部2が光ディスク1の情報層の情報を読み出すためにトラッキング方向に適切な位置にあるか否かを判断するための情報が含まれている。また、電気信号Siには、フォーカスエラー信号Sfeが含まれており、ピックアップ部2が光ディスク1の情報層の情報を読み出すためにフォーカス方向に適切な位置にあるか否かを判断するための情報が含まれている。
【0020】
また、ピックアップ部2をトラッキングサーボ制御をかけない状態にした場合には、トラッキングエラー信号Steには、光ディスク1の偏芯等によりレーザビームLBの集光位置を横切る光ディスク1のトラックおよびグルーブに応じた波形が含まれる(図2のトラッキングエラー信号Ste)。
【0021】
信号処理部3には、電気信号Siが入力される。信号処理部3は、電気信号Siに含まれる各種情報を演算処理し、ピックアップ部2が光ディスク1のトラッキング方向に対して適切な位置にあるか否かをあらわすトラッキングエラー信号Steおよびピックアップ部2が光ディスク1のフォーカス方向に対して適切な位置にあるか否かをあらわすフォーカスエラー信号Sfeを出力する。また、光ディスク1の回転速度情報等の制御情報を含む制御信号Scを出力する。
【0022】
また、信号処理部3は、符号化されて光ディスク1に記録された情報を含む電気信号Siに対して復号化処理を行うことにより、デジタル映像/音声信号(図示せず)を生成し、出力する。
【0023】
ピックアップ(PU)制御部4は、光ディスク1を光ディスク再生装置または光ディスク記録再生装置に装着した後に光ディスク1を回転させてトラッキングサーボ制御をかける場合には、スピンドルドライブ信号Spdを生成して、スピンドルドライブ信号Spdをピックアップドライブ部6に出力して光ディスク1を回転させる。その後に、ピックアップ制御部4は、フォーカスエラー信号Sfeに基づいてフォーカスドライブ信号Sfdを生成して、フォーカスドライブ信号Sfdをピックアップドライブ部6に出力することによりフォーカスサーボ制御をかける(フォーカスサーボを引き込む。またはフォーカスサーボループを閉じる。)。さらに、フォーカスサーボ制御がかかった場合に、トラッキングエラー信号Steに基づいてトラッキングドライブ信号Stdを生成して、トラッキングドライブ信号Stdをピックアップドライブ部6に出力することによりトラッキングサーボ制御をかける(トラッキングサーボ制御を引き込む。またはトラッキングサーボループを閉じる。)。
【0024】
トラッキングサーボ制御を引き込む場合には、ピックアップ制御部4は、トラッキングエラー信号Steを基に、トラッキングゼロクロス信号(Stz信号)を生成する。トラッキングゼロクロス信号Stzは、トラッキングエラー信号Steの各信号振幅の中点を基準に信号の極性を反転させた信号である。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzは、トラッキングエラー信号Steの信号振幅の中点を基準に作成されているので、トラッキングエラー信号SteがDCドリフトしている場合にも生成することができる。すなわち、光ディスク1が光磁気ディスク以外の相変化ディスク等において、情報層の反射率が変化している場合(情報層に情報が書き込まれている以外の要因で反射率が変化している場合)又は情報層の反射率が小さい場合においても、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzを生成することが可能である。従って、記録型ディスクにおける未記録ディスクにおいても、ピックアップ制御部4は、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzを生成することが可能である。
【0025】
また、ピックアップ制御部4は、生成されたトラッキングゼロクロス信号Stzを基にその周期(又は、周波数)を演算する。演算された周期(又は周波数)に基づいてピックアップ部2の対物レンズを移動させて、レーザビームLBの集光位置を移動させるためのトラッキングドライブ信号Stdを生成し、トラッキングドライブ信号Stdをピックアップドライブ部6に出力する。
【0026】
その後、ピックアップ制御部4は、トラッキングゼロクロス信号Stzの周期が予め定められた周期(例えば、0.3ms)以下になった場合にトラッキングの引き込み動作を開始してトラッキングサーボ制御をかける。
【0027】
また、ピックアップ制御部4は、光ディスク1においてトラッキングサーボループを開いた状態で、ピックアップ部2またはピックアップ部2の対物レンズを移動させてシーク動作をした後に、再びトラッキングサーボ制御をかける場合においても、トラッキングゼロクロス信号Stzを基にトラッキングサーボ制御をかける(トラッキングサーボループ閉じる)。
【0028】
つまり、ピックアップ制御部4は、ピックアップ部2またはピックアップ部2の対物レンズのシーク動作が終了した後に、トラッキングゼロクロス信号Stzの周期(又は、周波数)に基づいてレーザビームLBの集光位置を移動させるためのトラッキングドライブ信号Stdを生成し、ピックアップ部2の対物レンズを移動させるためのトラッキングドライブ信号Stdをピックアップドライブ部6に出力する。その後、トラッキングゼロクロス信号Stzの周期が予め定められた周期(例えば、0.3ms)以下になった場合にトラッキングの引き込み動作を開始してトラッキングサーボ制御をかける。
【0029】
ピックアップドライブ部6は、入力されたスピンドルドライブ信号Spdを基にスピンドル部7を駆動するために必要な電圧まで増幅してからスピンドル制御信号Sscを出力する。また、ピックアップドライブ部6は、入力されたトラッキングドライブ信号Stdおよびフォーカスドライブ信号Sfdをピックアップ部2(またはピックアップ内部の対物レンズ)を駆動させるために必要な電流まで増幅してからピックアップ制御信号Spmを出力する。
【0030】
スピンドル部7は、入力されたスピンドル制御信号Sscに基づいて、光ディスク1を回転させる。
【0031】
(II)本願の実施形態
次に、図2、図3および図4を用いて、本実施形態について説明する。本実施形態は、光ディスクの起動時または動作中においてトラッキングサーボ制御がかかっていない状態から、適切にトラッキングサーボ制御をかける動作を説明した実施形態である。
【0032】
図2は、図1におけるトラッキングエラー信号Ste、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzおよびトラッキングドライブ信号Stdのタイミングチャートである。図3および図4は、本実施形態におけるトラッキングサーボ制御の動作をあらわすフローチャートである。
【0033】
最初に図2の信号波形のタイミングチャートについて説明する。
【0034】
図2の上段には、トラッキングエラー信号Steの波形変化を示している。図2の中段には、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの波形変化を示している。図2の下段には、トラッキングドライブ信号Stdの波形変化を示している。
【0035】
タイミングt13以前はトラッキングサーボ制御がかかっていない状態の各信号波形を示しており、タイミングt13以降はトラッキングサーボ制御がかかっている状態の各信号波形を示している。
【0036】
トラッキングエラー信号Steとトラッキングエラーゼロクロス信号Stzとの関係をタイミングt11およびタイミングt12におけるそれぞれの波形に基づいて説明する。
【0037】
トラッキングエラー信号Steはタイミングt11に対応する点aにおいてトラッキングエラー信号振幅の中点となっている。また、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzは、タイミングt11に対応する点cにおいて、信号が立ち上がっている。すなわち、トラッキングエラー信号Ste振幅の中点においてトラッキングエラーゼロクロス信号Stzが矩形状に変化している。
【0038】
また、トラッキングエラー信号Steはタイミングt12に対応する点bにおいてトラッキングエラー信号振幅の中点となっている。また、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzは、タイミングt12に対応する点dにおいて、信号が立ち下がっている。すなわち、トラッキングエラー信号Ste振幅の中点においてトラッキングエラーゼロクロス信号Stzが矩形状に変化している。
【0039】
このように、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzは、トラッキングエラー信号Ste波形の交流成分がその信号波形の中点を通るたび(ゼロクロスするたび)に、立ち上がり動作と立下り動作を繰り返す矩形波となる。
【0040】
従って、本願のトラッキングサーボ制御は、制御の基準となる信号を連続する信号であるトラッキングエラー信号Steではなく、矩形波であるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzとしている。
【0041】
次に、トラッキングドライブ信号Stdの波形とトラッキングエラー信号Steまたはトラッキングエラーゼロクロス信号Stzとの関係について説明する。
【0042】
タイミングt1において、ピックアップ制御部4は、時間領域A1におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。
【0043】
時間領域A1におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、予め定められた周期(例えば0.3ms)よりも短いとすると、タイミングt1において、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdをピックアップ制御部6に出力する。この時、トラッキングドライブ信号Stdの振幅値は、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が短いほど大きくなるように予め設定されている。
【0044】
例えば、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期の逆数であるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周波数にトラッキングドライブ信号Stdの振幅値を比例させても良いし、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周波数の累乗に比例させてトラッキングドライブ信号Stdの振幅値を変化させても良い。
【0045】
次に、所定の期間経過後のタイミングt2において、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdの出力値を0に戻す。タイミングt1とタイミングt2との間隔は任意に定めることが可能である。
【0046】
ただし、タイミングt1とタイミングt2で囲まれるトラッキングドライブ信号Stdの面積S1は、ピックアップ部2の対物レンズを移動させる加速度と比例するのでタイミングt1とタイミングt2との間隔をあまり大きくすることはしない。すなわち、0次ホールド特性の影響が低減され、制御レベル分解能が上がり、また、ピックアップ部2に用いられているアクチュエータ(図示せず)の特性上安定した速度制御を行うことができる(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)の場合には、タイミングt1とタイミングt2との間隔は0.2ms程度の値とすることができる。)。
【0047】
次に、タイミングt2から所定の時間長(時間領域A2:例えば0.3ms程度の値とする)におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算し、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、時間領域A1におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりも短くなったとする。これは、タイミングt1からタイミングt2にかけて出力されたトラッキングドライブ信号Stdによって、ピックアップ部2の対物レンズが、光ディスク1におけるトラックを半径方向に横切る方向と同じ方向に駆動されたことをあらわしている。
【0048】
例えば、時間領域A1においてピックアップ2の対物レンズが光ディスク1におけるトラックを半径方向に内周側から外周側に移動していた場合には、面積S1であらわされるトラッキングドライブ信号Stdは、ピックアップ2の対物レンズを内周側から外周側に移動させる方向の極性を持った信号である。また、例えば、時間領域A1においてピックアップ2の対物レンズが光ディスク1におけるトラックを半径方向の外周側から内周側に移動していた場合には、面積S1であらわされるトラッキングドライブ信号Stdは、ピックアップ2の対物レンズを外周側から内周側に移動させる方向の極性を持った信号である。
【0049】
トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が予め定められた値の範囲内にならないと、トラッキングサーボ制御をかけられない。すなわち、偏芯等により、ピックアップ部2の対物レンズの焦点近傍を光ディスク1のトラックが光ディスク1の半径方向に横切る方向と、ピックアップ部2が光ディスク1の半径方向に動く方向とが一致しないと、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が長くならないので、トラッキングサーボ制御がかけられないのである。
【0050】
従って、時間領域A2においてトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が短くなったということは、タイミングt1でピックアップ制御部4からピックアップドライブ部6へ出力されたトラッキングドライブ信号Stdの極性が、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を長くするための極性と反対であったことになる。
【0051】
そこで、タイミングt3において、タイミングt1において出力された正のトラッキングドライブ信号Stdと逆の極性である負のトラッキングドライブ信号Stdが出力される。
【0052】
タイミングt3からタイミングt4にかけてのトラッキングドライブ信号Stdの出力によって、ピックアップ部2の対物レンズが、光ディスク1のトラックを半径方向に横切る方向と同じ方向に駆動される。その結果、時間領域A3におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、時間領域A2のトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりも長くなる。
【0053】
次に、タイミングt5において、ピックアップ制御部4は、時間領域A3におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。タイミングt5において、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、トラッキングサーボ制御をかけられる周期に入っていないとする。すると、タイミングt5において、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdをもう一度ピックアップ制御部6に出力する。時間領域A3におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期は、時間領域A2におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりも長いので、ピックアップ制御部4はタイミングt3におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzのパルス振幅H1よりも小さいパルス振幅H2のトラッキングエラーゼロクロス信号Stzを、タイミングt5においてピックアップドライブ部6に出力する。
【0054】
タイミングt6において、ピックアップ制御部4はトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの出力信号の出力値を0に戻す。
【0055】
時間領域A4においてトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、時間領域A3のトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりもさらに長くなったとする。
【0056】
これは、ピックアップ部2の対物レンズの焦点近傍を、光ディスク1のトラックが光ディスク1の半径方向に横切る方向と、ピックアップ部2が光ディスク1の半径方向に動く方向が一致しており、その対物レンズとそのトラックとの相対速度が時間領域A4においては、時間領域A3よりもさらに小さくなったことをあらわしている。
【0057】
そこで、タイミングt7において、ピックアップ制御部4は時間領域A4におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、トラッキングサーボ制御をかけられる周期に入っていないとすると、タイミングt7において、ピックアップ制御部4はトラッキングドライブ信号Stdをさらにもう一度ピックアップ制御部6に出力する。時間領域A4におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期は、時間領域A3におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりも長いので、ピックアップ制御部4はタイミングt5におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzのパルス振幅H2よりも小さいパルス振幅H3のトラッキングエラーゼロクロス信号Stzを、タイミングt7においてピックアップドライブ部6に出力する。
【0058】
タイミングt8において、ピックアップ制御部4はトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの出力信号の出力値を0に戻す。
【0059】
時間領域A5においては、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、時間領域A4のトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりもさらに長くなったとする。
【0060】
さらに、タイミングt9において、ピックアップ制御部4は時間領域A5におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。
【0061】
タイミングt8からタイミングt9までの時間間隔が、タイミングt6からタイミングt7までの時間間隔よりも長くなっている。これは、ピックアップ制御部4によって、タイミングt5において演算された時間領域A3におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりも、タイミングt7において演算された時間領域A4におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が長くなっているために、ピックアップ制御部4がトラッキングエラーゼロクロス信号Stzを出力する時間間隔が長くなっているのである。すなわち、ピックアップ制御部4によって演算されたトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が長くなるほど、次に出力されるトラッキングドライブ信号Stdまでの時間間隔が長くなることを意味している。このようにして、ピックアップ部2の移動速度をピックアップ部2の対物レンズから照射されたレーザビームLBと光ディスク1のトラックとの半径方向への相対速度に次第に近づけるように調整しているのである。
【0062】
このように、ピックアップ制御部4から出力されるトラッキングドライブ信号Stdの間隔は、直前に演算されたトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期に依存する。
【0063】
本実施形態においては、ピックアップ制御部4において直前に演算されたトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が長いほど、ピックアップ制御部4から出力されるトラッキングドライブ信号Stdが出力される時間間隔が長くなるように予め設定されている。
【0064】
例えば、直前に演算されたトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期の逆数であるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周波数に、トラッキングドライブ信号Stdが出力される時間間隔を比例させてもよいし、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周波数の累乗に比例させてトラッキングドライブ信号Stdが出力される時間間隔を変化させてもよい。
【0065】
ここで、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する時間間隔は、ピックアップ制御部4から出力されるピックアップドライブ信号Spmとピックアップ部2の移動との応答時間との関係で決定される制御可能周波数帯域以下の時間間隔であることが必要であるため、予め定められた値以上の時間間隔になることが必要である。
【0066】
さらに、タイミングt9において、ピックアップ制御部4は、時間領域A5におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。タイミングt9においてもトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、トラッキングサーボ制御をかけられる周期に入っていないとすると、タイミングt9において、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdを、さらにもう一度ピックアップドライブ部6に出力する。時間領域A5におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期は、時間領域A4におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期よりも長いので、タイミングt7におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzのパルス振幅H3よりもさらにパルス振幅の小さいパルス振幅H4のトラッキングエラーゼロクロス信号Stzが、ピックアップ制御部4からタイミングt9においてピックアップドライブ部6に出力される。
【0067】
タイミングt10において、ピックアップ制御部4はトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの出力信号の出力値を0に戻す。
【0068】
次に、タイミングt8とタイミングt9よりもさらに長い時間間隔であるタイミングtaにおいて、ピックアップ制御部4はタイミングt10からタイミングtaの間におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。タイミングtaにおいては、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が、トラッキングサーボ制御をかけられる周期に入っているとすると、タイミングtaにおいて、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdをピックアップ制御部6に出力しない。
【0069】
タイミングtaにおいて、ピックアップ制御部4は、直ちにトラッキングサーボ制御の引き込み動作に入らずに、予め定められた時間間隔だけ待ってからトラッキングサーボ制御の引き込み動作を開始する。
【0070】
これは、予め定められた時間間隔の間に、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期の変動が小さいこと(トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が整定したこと)を、ピックアップ制御部4において確認した後にトラッキングサーボ制御の引き込み動作を開始するためである。
【0071】
トラッキングサーボ制御の引き込み動作を開始した後に、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期が変動すると迅速にトラッキングサーボ制御をかけられずにピックアップ部2が誤動作することがあるからである。
【0072】
タイミングtaから所定時間経過したタイミングt13において、トラッキング制御部4は、タイミングtaからタイミングt13の間におけるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期を演算する。その結果、タイミングt13においてもトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期がタイミングtaにおいて演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期と同じか小さくなっている場合に、ピックアップ制御部4は、トラッキングサーボ制御の引き込み動作を開始する。すなわち、トラッキングサーボループ内にあるアナログスイッチなどの回路を切断状態から接続状態とするのである。
【0073】
従って、タイミングt13以降は、トラッキングサーボ制御がかかっている状態となるので、ピックアップ部2から照射されたレーザビームLBから生成されるトラッキングエラー信号Steは、光ディスク1における一本のランドまたはグルーブの中心位置からの変位量をあらわす信号となる。したがって、ピックアップ部2から照射されたレーザビームLBを光ディスク1における一本のランドまたはグルーブの中心位置に位置するように制御するために、(トラッキングサーボ制御がかかった後は)トラッキングエラー信号Steをトラッキングドライブ信号Stdとして出力するのである。
【0074】
次に、本実施形態におけるトラッキングサーボ制御の動作について、図3および図4における、フローチャートを用いて説明する。
【0075】
図3および図4は、トラッキングサーボ制御がかかっていない状態からトラッキングサーボ制御をかける(引き込む)までの動作をあらわしたものである。
【0076】
図3および図4におけるフローチャートを用いてトラッキングサーボ制御をかける(引き込む)までの動作を説明する。
【0077】
ステップS1において、ピックアップ制御部4は、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングサーボループを切断する。例えば、トラッキングサーボループ内にあるアナログスイッチなどの回路を切断状態とするのである。
【0078】
次に、トラッキングサーボ制御を引き込むために必要な変数を記憶しておく記憶領域(図示せず)の変数の初期化動作を行う。
【0079】
例えば、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdの値を決める変数Stdの値を零にする。また、前回のトラッキングゼロクロス信号の周期値である変数PTtzcの値を零にする。さらに、前回出力したトラッキングドライブ信号Stdの出力タイミングにおけるトラッキングゼロクロス信号の周期値である変数PDTtzcの値を零にする。さらに、トラッキングドライブ信号Stdの出力極性をピックアップ部2の移動方向とするように設定する。ウェイトカウンタの値を示す変数である変数Wcoの値を零にする。終了判定カウンタの値を示す変数である変数EJCの値を予め定められた値であるC1にする。さらに、トラッキングサーボ制御の引き込み動作を所定の時間内に終了できない場合には、トラッキングサーボ制御の引き込み動作を終了させるためのタイムアウト値を予め定められた値とする。次にステップS2に進む。
【0080】
ステップS2において、トラッキングサーボ制御の引き込み動作を開始してから予め定められた時間が経過していないか否かが判断される。予め定められた時間が経過している場合には、ステップS9に進む(ステップS2:YES)。予め定められた時間が経過していない場合には、ステップS3に進む(ステップS2:NO)。
【0081】
ステップS3において、ピックアップ制御部4はトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期(Ttzc)を演算する。そして、ステップS4に進む。
【0082】
ステップS4において、ピックアップ制御部4は、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcがトラッキングサーボ制御の引き込み動作を行うためのトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの終了周期(Tend)より大きいか否かを判断する。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが終了周期Tendより小さい場合(ステップS4:NO)には、ステップS5に進む。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcがトラッキングサーボ制御の引き込み動作を行うためのトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの終了周期Tendより大きい場合(ステップS4:YES)には、ステップS6に進む。
【0083】
ステップS6において、ピックアップ制御部4は、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが、前回に演算をおこなったトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzc以上か否かを判断する。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが、前回に演算をおこなったトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzc(PTtzc)以上の場合(ステップS6:YES)には、ステップS7に進む。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが、前回に演算をおこなったトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzc(PTtzc)よりも小さい場合(ステップS6:NO)には、ステップS5に進む。
【0084】
ステップS5において、終了判定カウンタEJCの値を固定値C1に設定する。次にステップS10に進む。
【0085】
ステップS10において、ピックアップ制御部4は、ウエイトカウンタWCOの値が零よりも大きいか否かを判断する。ウエイトカウンタWCOの値が零よりも大きい場合(ステップS10:YES)には、ステップS15に進む。また、ウエイトカウンタWCOの値が零以下の場合(ステップS10:NO)には、ステップS11に進む。
【0086】
ステップS11において、ピックアップ制御部4は、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが前回のトラッキングエラーゼロクロス信号PDtzcの周期より大きいか否かを判断する。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが前回のトラッキングエラーゼロクロス信号PDtzc周期よりも大きい場合(ステップS11:NO)は、ステップS12に進む。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが前回のトラッキングエラーゼロクロス信号PDtzcの周期より小さい場合には(ステップS11:YES)、ステップS16に進む。
【0087】
ステップS16において、ピックアップ制御部4は、ステップS11においてトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが前回より小さくなったのは、前回出力したトラッキングドライブ信号Stdの極性が逆であったと認識する。そして、ピックアップ制御部4は、トラッキングドライブ信号Stdの極性を逆に設定する。
【0088】
ステップS12において、ピックアップ制御部4は、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが、終了周期Tendより大きいか否かを判断する。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが、終了周期Tendより大きい場合(ステップS12:YES)には、ステップS17に進む。トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcが、終了周期Tend以下の場合(ステップS12:NO)には、ステップS13に進む。
【0089】
ステップS13において、ピックアップ制御部4は、ピックアップドライブ信号の値Stdを零にする。また、前回に演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期PDtzcの値を、今回演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcとする。次にステップS14に進む。
【0090】
ステップS17において、ピックアップ制御部4は、ピックアップドライブ信号の値Stdにトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcの関数とした予め定められた値を代入する。例えば、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期の逆数であるトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周波数に比例した値を代入する。また、前回に演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期PDtzcの値を零とする。次にステップS14に進む。
【0091】
ステップS14において、ピックアップ制御部4は、ステップS13またはステップS17において新たに定められたピックアップドライブ信号の値Stdを出力する。また、ウエイトカウンタWCOの値をトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcの関数とした予め定められた値を代入する。例えば、トラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期に比例した値を代入する。
【0092】
さらに、前回に演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期PTtzcの値を、今回演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期Ttzcの値とする。そして、ステップS2に戻る。
【0093】
ここで、図4におけるフローチャートのうち、説明をしていないステップS15を説明する。
【0094】
ステップS15においては、ピックアップ制御部4は、ウエイトカウンタWCOの値を一つデクリメントする。また、ピックアップドライブ信号の値Stdを零にする。さらに、前回に演算したトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期PTtzcの値を零にする。
【0095】
次に、図3におけるフローチャートのうち、説明をしていないステップS7乃至ステップS9について説明する。
【0096】
ステップS7において、ピックアップ制御部4は、終了判定カウンタEJCからトラッキングエラーゼロクロス信号Stzの周期PTtzcの値を減算する。そして減算結果を終了判定カウンタEJCに代入する。次にステップS8に進む。
【0097】
ステップS8において、ピックアップ制御部4は、終了判定カウンタEJCが零よりも小さいか否かを判定する。終了判定カウンタEJCが零よりも小さい場合(ステップS8:YES)には、ステップS9に進む。終了判定カウンタEJCが零以上の場合(ステップS8:NO)には、ステップS10に進む。
【0098】
ステップS9においては、トラッキングサーボ制御の引き込み動作を行う。トラッキングドライブ信号Stdの出力値を固定値出力から、トラッキングエラーSte信号と連動した値とする。そして、トラッキングサーボループを閉じる動作を行う。例えば、トラッキングサーボループ内にあるアナログスイッチなどの回路を切断状態から接続状態とするのである。
【0099】
なお、本実施形態においては、サーボ信号としてトラッキングサーボ信号について説明したが、本願はこれに限定されるわけではなく、フォーカスサーボ信号についても、上記の実施形態と同様に適用することができる。
【0100】
また、本実施形態においては、信号形態としてアナログ信号とデジタル信号との混合形態について説明したが、デジタル信号のみにおいても本実施形態を実施することが可能である。
【0101】
すなわち、図3および図4における全ての信号をデジタル信号として取り扱うことが可能である。この場合には、図3および図4における信号処理は、例えばDSP(Digital Signal Processor)において構成することが可能になる。
【0102】
さらに、図3および図4のフローチャートに対応するプログラムを、フレキシブルディスク等の記録媒体に予め記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して予め記録しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等により読み出して実行することにより、当該汎用のマイクロコンピュータ等を実施形態に係わるCPU(Central Processing Unit)として機能させることも可能である。
【0103】
以上述べてきたように、本実施形態に記載のサーボ制御装置によれば、トラッキングサーボ制御を、記録型ディスクの未記録領域においても実施可能であり、記録型ディスクにおけるアクセス性能を向上させることができる。また、トラッキングサーボ制御の構成が低負荷になっているので、例えば、制御用DSPなどの高速なプロセッサではなく、システムコントロール用に通常使用されているいわゆるマイコン等によっても、このトラッキングサーボ制御を行うことが可能である。従って、マイコン等を制御するソフトウェアによって、本発明を実施することが可能なので、従来に比べ、低価格でしかも容易に本発明に係わるトラッキングサーボ制御を行うことが可能である。
【0104】
また、トラックとビームスポットとの相対速度を減速する制御を行う場合、記録型ディスクにおける未記録ディスクの場合においても、制御方向を決定することが容易に行うことができ、安定したサーボ制御を行うことが可能となる。
【0105】
さらに、記録型ディスクにおける未記録ディスクにおいても得られるトラッキングエラーゼロクロス信号を用いて、トラックとビームスポットの相対速度を減速する制御を行うことができる。また、制御中のトラッキングエラーゼロクロス信号の周期や周波数の遷移状態から制御方向を決定することができる。さらに、制御信号を連続信号ではなく、制御中のトラッキングエラーゼロクロス信号の周期や周波数に応じた間隔のパルス状の信号とすることで0次ホールド特性の影響が低減され、制御分解能が上がるとともに、アクチュエータの特性上安定した速度制御を行うことができるようになった。
【0106】
さらに、トラックとビームスポットとの相対速度が大きいほど、相対速度を減速する制御を迅速に行うことができるので、トラッキングサーボ制御動作をより高速にかつ安定して行うことが可能となる。
【0107】
さらに、トラッキングエラーゼロクロス信号の変動間隔の値が小さくなった後に、急激にトラッキングエラーゼロクロス信号の変動間隔の値が大きくなるような場合でも、間違ってトラックサーボ制御の引き込む動作をすることがないので、安定したトラックサーボ制御動作を行うことが可能である。
【0108】
さらに、トラッキングエラーゼロクロス信号等の信号変動間隔を高速にかつ正確に制御することが可能になるために、トラッキングサーボ制御動作を高速かつ安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施形態に係る光ディスク再生装置の概要構成例を示すブロック図である。
【図2】実施形態における各部の波形の変化をあらわすタイミングチャートである。
【図3】実施形態のトラッキングサーボ制御の動作をあらわすフローチャートである。
【図4】実施形態のトラッキングサーボ制御の動作をあらわすフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
1 … 光ディスク
2 … ピックアップ部
3 … 信号処理部
4 … ピックアップ制御部
6 … ピックアップドライブ部
7 … スピンドル部
LB … レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体から記録情報を読取って読取信号を生成する光ピックアップのサーボ制御装置において、
サーボ制御ループを開閉するスイッチ手段と、
前記光ピックアップのサーボ目標値からの変位量を示す誤差信号を前記読取信号から抽出する誤差信号抽出手段と、
前記誤差信号が変動する変動間隔の値を演算する演算手段と、
前記変動間隔の値に基づいて、前記光ピックアップの加速度を変更する駆動信号を生成するとともに前記駆動信号を出力するピックアップ駆動手段と、
前記変動間隔の値が、予め定められた範囲の値であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記変動間隔の値が予め定められた範囲の値であると判断された場合に、前記スイッチ手段を開いた状態から閉じた状態とする制御手段と、
を備えることを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサーボ制御装置において、
前記制御手段は、前記ピックアップ駆動手段から駆動信号が出力された後に、前記演算手段において演算される変動間隔の値が小さくなった場合には、前記駆動信号の極性を反転させることを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサーボ制御装置において、
前記ピックアップ駆動手段は、前記変動間隔の値が小さいほど、前記駆動信号の値を大きくすることを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサーボ制御装置において、
前記制御手段は、前記変動間隔の値が大きいほど、前記ピックアップ駆動手段において生成された前記駆動信号を出力する時間間隔を大きくすることを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のサーボ制御装置において、
前記判断手段によって、前記変動間隔の値が予め定められた範囲の値であると判断された場合に、予め定められた時間が経過するのを待って、前期変動間隔の値を前記演算手段に再演算させて、前記再演算後の前記変動間隔の値が前記演算後の前記演算間隔の値より小さくないことを確認した後に、前記スイッチ手段を開いた状態から閉じた状態とする制御手段を有することを特徴とするサーボ制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のサーボ制御装置において、
前記制御手段は、前記演算手段における前記変動間隔の値を演算する動作と、前記ピックアップ駆動手段から前記駆動信号を出力する動作とを交互に繰り返すことを特徴とするピックアップ制御装置。
【請求項7】
情報記録媒体から記録情報を読取って読取信号を生成する光ピックアップのサーボ制御方法において、
サーボ制御ループを開閉するスイッチ工程と、
前記光ピックアップのサーボ目標値からの変位量を示す誤差信号を前記読取信号から抽出する誤差信号抽出工程と、
前記誤差信号が変動する変動間隔の値を演算する演算工程と、
前記変動間隔の値に基づいて、前記光ピックアップの加速度を変更する駆動信号を生成するとともに前記駆動信号を出力するピックアップ駆動工程と、
前記変動間隔の値が、予め定められた範囲の値であるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において、前記変動間隔の値が予め定められた範囲の値であると判断された場合に、前記スイッチ手段を開いた状態から閉じた状態とする制御工程手段と、
を備えることを特徴とするサーボ制御方法。
【請求項8】
情報記録媒体から記録情報を読取って読取信号を生成する光ピックアップのサーボ制御装置に含まれるコンピュータを、
サーボ制御ループを開閉するスイッチ手段、
前記光ピックアップのサーボ目標値からの変位量を示す誤差信号を前記読取信号から抽出する誤差信号抽出手段、
前記誤差信号が変動する変動間隔の値を演算する演算手段、
前記変動間隔の値に基づいて、前記光ピックアップの加速度を変更する駆動信号を生成するとともに前記駆動信号を出力するピックアップ駆動手段、
前記変動間隔の値が、予め定められた範囲の値であるか否かを判断する判断手段、
前記判断手段によって、前記変動間隔の値が予め定められた範囲の値であると判断された場合に、前記スイッチ手段を開いた状態から閉じた状態とする制御手段、
として機能させることを特徴とするサーボ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−310837(P2008−310837A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285793(P2005−285793)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】