説明

サーボ情報補正方法

【課題】ディスク記録媒体のサーボフレームに書き込まれたサーボ情報に基づいてヘッドの位置決めを行う技術に関し、特に、ディスクの偏心等の周期性外乱の影響をサーボフレームに書き込まれているポストコード情報に基づいて補償する技術に関し、ポストコード値の異常によるライトオフトラックの発生を回避することにある。
【解決手段】ヘッドが目標トラック上に位置制御されていることを判定するオントラック条件が成立している場合に、ディスク記録媒体上の目標トラック上の各サーボフレームから読み出されるポストコードをメモリ記憶するステップが実行される。次に、各サーボフレームでの復調位置の補正において、その各サーボフレームに対応するポストコードがメモリ記憶されている場合であってかつオントラック条件が成立している場合に、そのメモリ記憶されたポストコードを復調位置の補正に用いるステップが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク記録媒体のサーボフレームに書き込まれたサーボ情報に基づいてヘッドの位置決めを行う技術に関し、特に、ディスクの偏心等の周期性外乱の影響をサーボフレームに書き込まれているポストコード情報に基づいて補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する記録ディスクにヘッドでリード/ライトするディスク装置、例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置においては、ヘッドを目標トラックに正確に位置決めすることが、高記録密度化のために重要である。
【0003】
一方、記録ディスクは回転するため、偏心等の周期性外乱やそれ以外の非周期性外乱によって位置精度が低下する。高い密度のトラックピッチを実現するには、この位置精度の改善が要求される。
【0004】
ヘッドは、ディスク記録媒体に記録されたサーボ情報に従ってサーボ制御によりデータトラックに位置決めされる。よって、その基本となるサーボ情報の品質がドライブの位置決め精度に大きな影響を与える。
【0005】
具体的には、例えば磁気記録方式によるハードディスク装置において磁気ディスクの目標トラックに磁気ヘッドが位置決めされる場合、磁気ヘッドがディスク記録媒体から検出するサーボ情報に基づいて決定される現在トラック位置と、目標トラック位置との差に応じて、ボイスコイルモータが制御され、目標トラックに向かって磁気ヘッドが移動させられる。そして、目標トラック位置に磁気ヘッドが移動した(=オントラック状態となった)と判定されると、サーボ情報から得られる位置信号により、目標トラックの中心に磁気ヘッドが位置決めされる。そして、磁気ヘッドを介して、データの書込み又は読出しが行われる。
【0006】
ここで、サーボ情報の磁気ディスクへの書込みにおいては、トラック位置を示す情報がないので、例えば、レーザ測距装置等を用いて磁気ヘッドの位置が測定され、磁気ディスク上の所定位置に磁気ヘッドを位置決めして行われる。その場合に、磁気ディスクを回転させるスピンドルモータの回転変動や振動又は磁気ディスクの偏心等の影響により、書き込まれるサーボ情報の記録位置が、理想的なトラックの中心位置に対して、磁気ディスクの半径方向に変動する現象が発生する。この結果、磁気ディスクのリード又はライト動作時において検出される実際のトラックの中心位置が周期的に変動する、RRO(Repeatable Run Out)と呼ばれる現象が発生し、隣接トラックの重なり等によるデータの書込み/読出し誤り等を発生させる。
【0007】
このRROを改善する従来技術として、例えば下記特許文献1又は特許文献2に記載の、ポストコードを用いた技術が知られている。
この従来技術について説明すると、まず、図7に示されるように、磁気ディスク701は同心円状に複数のトラック702を有しており、1つのトラック702は円周方向に例えば108個のセクタと呼ばれる領域703に分割される。そして、1つのセクタ703は、サーボフレーム704と呼ばれる領域と実際のユーザデータが記録されるデータ領域705とに分割される。
【0008】
サーボフレーム704は、プリアンブル706と、サーボマーク707と、グレイコード708と、A、B、C、Dの4つのバースト信号709と、ポストコード710とから
なる。実際に記録される信号の状態を、図8に示す。
【0009】
磁気ディスクの目標トラックに磁気ヘッドが位置決めされる場合、磁気ヘッドが磁気ディスク701上を走査しながら、プリアンブル706の信号パターンが検出されることによりサーボフレーム704が検出され、続いてサーボマーク707が検出された後にグレイコード708が検出されてトラック番号が取得され、現在トラック位置が認識される。
【0010】
そして、この現在トラック位置と目標トラック位置との差に応じて、ボイスコイルモータが制御され、目標トラックに向かって磁気ヘッドが移動させられるサーボ制御が実行される。最終的に、現在トラック位置と目標トラック位置とが一致する状態が一定サーボフレーム(例えば8フレーム)続いた時点で、磁気ヘッドが目標トラック位置に到達した、即ちオントラック状態となったと判定される。
【0011】
その後、磁気ヘッドがサーボフレーム704内のA〜Dのバースト709を検出することにより、トラック中心に位置決めが行される。
ここで、磁気ディスク701がハードディスク装置に搭載された後の検査工程において、磁気ディスク701が回転させられ、各セクタ703毎に、その偏心量(=RRO)が計測され、その偏心に対する補正量が、ポストコード710として各セクタのサーボフレーム704(図7)に書き込まれる。
【0012】
ハードディスク装置の実際のリード/ライト動作時には、オントラック状態になった後に、各サーボフレーム704からバースト信号709とポストコード710が読みとられて復調され、バースト信号709から得た現在位置がポストコード710の偏心補正量によって補正されることにより、偏心を含む現在位置が算出され、偏心をキャンセルするようなヘッド位置のサーボ制御が行われる。
【0013】
図9に模式的に示されるように、磁気ディスクを回転させるスピンドルモータの回転変動や振動又は磁気ディスクの偏心等の影響により、書き込まれるサーボ情報902(=バースト信号709等)の記録位置が、理想的なトラックの中心位置901に対して、905で示される磁気ディスクの半径方向に変動する。
【0014】
このようなサーボ情報902がリードヘッド904によって読み出された場合、それに基づいて認識される実際のトラック中心位置は、例えば図10(a)の1001として示されるように、細かく変動するRRO成分を含むものとなってしまい、これがリード/ライトエラーを引き起こす。
【0015】
これに対して、図9のポストコード903は、図9のサーボ情報902の偏心を補正する値が記録されているため、図10(a)に示されるように、補正前のポジション値1001にポストコード値1002が加算されることにより、変動の少ない良好なポジション値1003を得ることが可能となる。
【0016】
この様子を拡大したものが、図11(a)である。補正前は1101として示されるように変動の大きかったポジション値1001が、ポストコード値1002によって、1102として示されるように変動の小さい補正された制御ポジション値1003に修正される。
【特許文献1】特開平03−263662号公報
【特許文献2】特開昭60−117461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のようなポストコードを用いたサーボ制御において、図11(b)に示されるように、1103として示される補正前のポジション値1001に対して、補正をすべきポストコード値1002が何らかの原因で1104として示されるように異常値になった場合(例えば最上位ビットが反転したような場合)、それによって修正された補正後の制御ポジション値1003は、1105として示されるようにやはり異常値になって、オフトラックの発生要因となってしまう。
【0018】
図10(b)は、実際の波形例であり、1004として示されるように、ポストコード値1002に異常が発生しているために、そのポストコード値で補正したポジション値1003において、大きなスパイク状のノイズが重畳され、オフトラックが発生していることがわかる。
【0019】
オフトラックの発生要因としては、例えば、図12(a)に示されるように、ポストコード1201の書込み位置が、トラック中心1202からオフセットしているために、リードヘッド1203におけるオフセットマージンが不足している場合が考えられる。
【0020】
また例えば、図12(b)に示されるように、ポストコード1201に隣接して微小な欠陥が存在し、リードヘッド1203におけるリードマージンが不足している場合が考えられる。
【0021】
いずれにおいても、ポストコード値の読み取り異常により磁気ヘッドの位置が目標トラックからはずれてしまうと、書込みができない、或いは、異常なポストコード値によってトラック境界に磁気ヘッドが位置決めされた場合であってもトラック中心に位置決めされたと誤判定されてしまい、その状態で書込みが行われると、隣接トラックへの書込みが発生してしまうという事態も発生する可能性があり、ライトオフトラックの発生要因となるという問題点を有していた。
【0022】
ポストコードにパリティビットを付加し、パリティチェックの結果が正しい場合にポストコードによる補正を実行するという考えも採用可能だが、パリティビットの付加による情報量の増加やパリティチェックのための処理負荷の増加等を招いてしまうという問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の課題は、ポストコード値の異常によるライトオフトラックの発生を回避することにある。
本発明は、アクチュエータに設置されたヘッドを介して、ディスク記録媒体の各トラック上に記録される各サーボフレームからサーボ情報とそのサーボ情報の偏差を示すポストコードを読み出して、サーボ情報から復調される復調位置をポストコードで補正し、その補正した復調位置に基づいてアクチュエータを駆動してヘッドを目標トラック上に位置制御するディスク記憶装置のサーボ制御方法を前提とする。
【0024】
まず、ヘッドが目標トラック上に位置制御されていることを判定するオントラック条件が成立している場合に、ディスク記録媒体上の目標トラック上の各サーボフレームから読み出されるポストコードをメモリ記憶するステップが実行される。この場合のオントラック条件は、例えば、ヘッドが目標トラックの中心位置からの偏差が一定値(オントラックスライス)以内になるように位置制御されていることを判定する条件である。或いは、上記オントラック条件は、ヘッドが目標トラックの中心位置からの偏差が一定値以内になるように位置制御されている状態が所定サーボフレーム回数連続して成立することを判定する条件である。
【0025】
次に、各サーボフレームでの復調位置の補正において、その各サーボフレームに対応するポストコードがメモリ記憶されている場合であってかつオントラック条件が成立している場合に、そのメモリ記憶されたポストコードを復調位置の補正に用いるステップが実行される。
【0026】
上記発明の態様の構成において、各サーボフレームでの復調位置の補正において、その各サーボフレームに対応するポストコードがメモリ記憶されている場合であってかつオントラック条件が非成立になった場合に、そのポストコードのメモリ記憶をクリアするステップを更に含むように構成することができる。
【0027】
また、上記発明の態様の構成において、新たな目標トラックへのシーク動作の開始時に、各サーボフレームに対応するポストコードのメモリ記憶を全てクリアするステップを更に含むように構成することができる。
【0028】
また、上記発明の態様の構成において、ディスク記録媒体へのデータの書込み動作のリトライ中に、一旦別の目標トラックにシークすることにより、各サーボフレームに対応するポストコードのメモリ記憶を一旦全てクリアするステップを更に含むように構成することができる。
【0029】
更に、上記発明の態様の構成において、新たな目標トラックへのシーク命令を受領しても、今までの目標トラックにおけるオントラック条件が成立している間は、各サーボフレームに対応するポストコードのメモリ記憶をクリアしないように構成することができる。
【0030】
加えて、上記発明の態様の構成において、ポストコードをメモリ記憶するステップは、ディスク記録媒体へのデータの書込み用のシーク動作後においてのみ実行されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の態様の構成により、正常に読み出されたと判断されたポストコードを各トラックの各サーボフレーム毎に記憶し継続して使用することにより、ポストコードに起因するライトオフトラックを回避することが可能となる。
【0032】
本発明の態様の構成により、ポストコードにパリティ等を付加すること無しに、ディスク記録媒体から読み出したポストコードの良否を判断し、回復不可能なライトオフトラックエラーを回避することが可能となる。
【0033】
また、記憶されたポストコードが誤っている場合にもリトライアウトしないようにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態の基本原理
以下に説明する本発明の実施形態では、ポストコードの読み誤りによって、位置決め精度を悪化させて復旧不可能なライトオフトラックとなる場合があるため、正常に読み出されたと判断されたポストコードを各トラックの各サーボフレーム毎に記憶し継続して使用することにより、ポストコードに起因するライトオフトラックを回避することを特徴とする。
【0035】
前述した図9において、媒体(磁気ディスク)に書き込まれたサーボ情報902は、リードヘッド904の軌跡(図中A、B、C等)により値が変化するが、ポストコード90
3は、トラック中心901付近においては変化しない。そのため、一旦媒体から正常なポストコードを読み出せた場合は、それ以上、媒体からポストコードを読み出す必要は無く、過去に読み出されたポストコードを継続して使用することが可能である。
【0036】
この特徴を利用し、一旦媒体から読み出されたポストコードの良否が判断され、正常なポストコードが読み出された場合には、そのポストコードによる補正値が記憶され、それ以降のリトライを含む同一トラック上の動作については、記憶されているポストコードが使用される。
【0037】
本実施形態は、ポストコードにパリティ等を付加すること無しに、媒体から読み出したポストコードの良否を判断し、回復不可能なライトオフトラックエラーを回避することが可能となる。
また、記憶されたポストコードが誤っていることが原因でリトライアウトしないようにする手段も設けられる。
【0038】
本発明の実施形態の構成
図1は、本発明によるハードディスク装置の実施形態の構成図である。
ドライブユニット101は、特には図示しないスピンドルモータによって回転させられる磁気ディスク102、特には図示しないリード/ライトヘッド及びボイスコイルモータが組み込まれたアクチュエータ103、及びリード/ライトヘッドに対する電流を増幅するプリアンプ104等からなる。
【0039】
サーボコンボIC105は、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)108からドライブインタフェースロジック109を介して設定されるサーボ電流に基づいて、アクチュエータ103内のボイスコイルモータ等を制御し、目標トラックへの位置決め制御を実行する。
【0040】
リードチャネル部106は、読出し/書込みのユーザデータを電流値に変換し、プリアンプ104を介してアクチュエータ103内のリード/ライトヘッドに供給する。リードチャネル部106内のサーボ復号部107は、磁気ディスク102からアクチュエータ103内のリードヘッド及びプリアンプ104を介して読み出されるサーボ情報(プリアンブル、サーボマーク、グレイコード、バーストA/B/C/D)及びポストコードを読み出して復調する。
【0041】
DSP108は、サーボ復号部107からドライブインタフェースロジック109を介して入力するサーボ情報及びポストコードに基づいて、目標トラックへの位置決めのためのサーボ動作等を実行する。その結果決定されるサーボ電流値は、前述のようにドライブインタフェースロジック109を介してサーボコンボIC105に設定される。
【0042】
MCU(マイクロ・コントロール・ユニット)110は、フラッシュROM111に記憶された制御プログラムに基づいて、ハードディスク装置全体の各種動作を制御する。
ハードディスクコントローラ112は、ハードディスク装置が接続されるコンピュータの主記憶装置(特には図示しない)等との間で、読出し/書込みのためのユーザデータ及び実行コマンド等を授受する。ハードディスクコントローラ112は、外部の主記憶装置等から一括転送されてくる書込みのためのユーザデータを、データバッファRAM113に一時させた後、リードチャネル部106に送って、プリアンプ104、アクチュエータ103を介して磁気ディスク102への書込みを実行させる。また、ハードディスクコントローラ112は、磁気ディスク102からアクチュエータ103、プリアンプ104、リードチャネル部106を介して読み出されたユーザデータを、データバッファRAM1
13に一時記憶させた後、外部の主記憶装置等に一括転送する。
【0043】
本発明の実施形態の基本動作
図2は、図1のDSP108がファームウェアとして実現する目標トラックへの位置決めのためのサーボ制御の制御ブロック図である。
【0044】
サーボ制御対象201は、図1のサーボコンボIC105を介してアクチュエータ103内のボイスコイルモータに対して供給される電流値uである。
Plant202は、アクチュエータ103、プリアンプ104、サーボ復調部107等から構成される部分に対応し、そこからの出力はサーボ情報として得られるグレイコード203とポストコード204である。
【0045】
ポストコード204は205にてグレイコード203に加算され、その加算結果がオブザーバ207に入力される。オブザーバ207は、上記加算結果を入力として、ポジションLp、速度Lv、及びトルクバイアスLbからなる各制御値を出力する。
【0046】
オブザーバ207の上記各出力値は、制御電流値uを入力とする推定器206から出力される位置推定値EstPos、速度推定値EstVel、及びトルクバイアス推定値EstBiasの各z変換出力と加算器208、209、210においてそれぞれ加算され、コントローラ208及び加算器212にて電流値に変換されて電流値uとしてフィードバックされる。
【0047】
本実施形態は、上記制御系において、目標トラックにオントラックしたときに、当該トラック上の各サーボフレームにおけるポストコード204の精度を高めるための制御技術に特に関するものである。
【0048】
本発明の実施形態におけるポストコード制御
本実施形態においては、図1のDSP108が、以下に示すポストコードの制御動作を実行する。
【0049】
DSP108は、シーク動作が終了し、磁気ヘッドが目標トラックに到達した後、オントラック条件が成立したサーボフレームにおいてのみ、ポストコードを内部の各サーボフレーム対応のメモリに記憶し、オフトラックの場合は上記メモリに記憶していたポストコードを破棄する。
【0050】
こうすることで、ポストコードに、その妥当性を判断するための追加のパリティビット等を付加すること無しに、正しいと思われるポストコードを記憶することができる。
もし、ポストコードが異常値であるときにそのときの磁気ヘッドの位置との組合せでたまたまオントラック条件が成立した場合、その後のリトライ時にはオントラックが成立しない状態が継続する可能性がある。これを回避するため、DSP108は、オントラック条件が成立しない場合は、該当するサーボフレームのポストコードを破棄し、その次の周で再び媒体(磁気ディスク102)からポストコードを読み出す。
【0051】
こうすることにより、ポストコードのエラーレートが高くても、回復不能なライトオフトラックを回避でき、データライトが可能となる。リード動作時においても、間違ったポストコードを継続して使用することに起因するリードエラーを回避することができる。
【0052】
図3は、上記動作を実現するための、DSP108内のポストコードのためのメモリ領域の構成図である。
図3(a)の状態例では未記憶を示す値として−128が割り当てられている。またこ
の例では、1トラックあたりのサーボフレーム(以下、「SF」と表す)数は108フレームとする。
【0053】
図3(a)の状態例では、SF102(102フレーム目のサーボフレームを表す)が、ポストコードが未記憶のサーボフレームであり、SF102以外のサーボフレームではメモリに記憶されているポストコードが使用され、SF102では媒体(磁気ディスク102)から読み出されたポストコードが制御に使用される。
【0054】
SF102で、媒体から読み出したグレイコードとポストコード足したものがオントラック条件を満たしている場合は、そのときに読み出された値がSF102のメモリ領域に書き込まれる。
【0055】
図3(b)に示されるように、メモリに記憶された各サーボフレームのポストコードは、他のトラックへのシーク命令が開始されるときに全て、未記憶を示す−128の値で上書きされる。
【0056】
図4は、磁気ヘッドが目標トラックに到達してオントラック条件が成立するまでの様子を模式的に示した説明図である。
DSP108は、現在のトラック番号が目標トラックの8シリンダ前に到達した時点で、グレイコード(図7又は図8の708)のチェックを開始する(図4のS401)。
【0057】
DSP108は、各サーボフレームから読み出されるグレイコードに基づいて認識されるトラック番号が、目標トラックの0.5シリンダ前に到達した時点で、リードチャネル部106(図1)に対してリード処理を許可する(図4のS402)。
【0058】
DSP108は、各サーボフレームから読み出されるグレイコードに基づいて認識されるトラック番号が目標トラックに一致し、その後同じく各サーボフレームから読み出されるバースト信号A/B/C/D(図7又は図8の709)に基づいて認識されるヘッダ位置が、目標トラックに対して設定されているオントラックスライス内に入った時点(図4のS403)から、連続して8フレームの間オントラックスライス内に留まった時点(図4のS404)で、内部のオントラック信号をハイレベルに変化させ、リードチャネル部106(図1)に対してライト動作を許可する。DSP108は、このタイミング以降目標トラックにオントラックしている間、各サーボフレームから読み出されるポストコードを、内部のメモリの各サーボフレームに対応する記憶領域に記憶する。
【0059】
例えば図3(c)の例は、SF103において、オントラック条件が成立してシークが終了し(図4のS404のタイミングに相当)、SF103以降のサーボフレームにおいて、ポストコードがメモリに記憶される様子を示している。
【0060】
図5は、オントラック条件が終了してシーク動作が終了した後の、DSP108によるポストコード制御動作を示す動作フローチャートである。
まず、DSP108は、サーボ復調部107(図1)を介して、サーボ情報(バースト信号A/B/C/D)を読み込む(ステップS501)。
【0061】
次に、DSP108は、ポストコードのメモリ領域を参照し、現在のサーボフレームが、ポストコードがメモリ記憶されていないフレームであるか否かを判定する(ステップS502)。この判定は、該当メモリ領域の値が−128であるか否かを判定する動作として実現される。
【0062】
DSP108は、現在のサーボフレームがポストコードがメモリ記憶されていないフレ
ームであると判定した場合には、サーボ復調部107(図1)を介して媒体(磁気ディスク102)から読み出された現在のサーボフレームのポストコード値を、図2の204としてサーボ制御を実行する(ステップS502−>S503)。
【0063】
一方、DSP108は、現在のサーボフレームがポストコードがメモリ記憶されているフレームであると判定した場合には、内部のメモリの現在のサーボフレームに対応する記憶領域に記憶されているポストコード値を、図2の204としてサーボ制御を実行する(ステップS502−>S504)。
【0064】
次に、DSP108は、ステップS501で読み込んだサーボ情報から作成したポジション値と、上記ステップS503又はS504の何れかで決定したポストコード値とを加算する(ステップS505)。
【0065】
そして、DSP108は、オントラック条件が成立しているか否か、即ち、上記加算結果として得られるポジション値が、図4の目標トラックのオントラックスライス内に入っているか否かを判定する(ステップS506)。
【0066】
DSP108は、オントラック条件が成立していると判定した場合には、更に、ステップS503を実行して媒体から読み出したポストコード値を使用したか否かを判定する(ステップS506−>S507)。
【0067】
DSP108は、ステップS507の判定がYESの場合には、内部のポストコード用メモリの該当サーボフレームの記憶領域に、ステップS503で媒体から読み出したポストコード値を記憶して、現在のサーボフレームに対するポストコードの制御を終了して次の処理に進む。
【0068】
DSP108は、ステップS507の判定がNOの場合には、内部のポストコード用メモリの該当サーボフレームの記憶領域の記憶値をそのまま維持して、現在のサーボフレームに対するポストコードの制御を終了して次の処理に進む。
【0069】
DSP108は、ステップS506において、オントラック条件が成立していないと判定した場合には、内部のポストコード用メモリの該当サーボフレームの記憶領域に−128を書き込むことにより、そこに記憶されていたポストコード値を破棄する(ステップS506−>S509)。
【0070】
図6(a)に示されるように、もしポストコードが異常値であるときに(602)、そのときの磁気ヘッドの位置(601)との組合せでたまたまオントラック条件が成立した場合(603)、その後のリトライ時にはオントラックが成立しない状態が継続する可能性がある(図6の604、605、606)。これを回避するため、DSP108は、ステップS506の判定において、オントラック条件が成立しないと判定した場合は、ステップS509において、該当するサーボフレームのポストコードのメモリ記憶値を破棄し、その次の周で再び媒体からポストコードを読み出すのである。
【0071】
本発明の実施形態に対する補足
以上説明した実施形態において、磁気ディスク102(図1)へのデータの書込み動作のリトライ(ライトリトライ)が発生した場合には、一旦別の目標トラックにシークすることにより、各サーボフレームに対応するポストコードのメモリ記憶を一旦全てクリアさせるような動作を実行させてもよい。
【0072】
これにより、ポストコードのエラーレートが高いような場合に、ライトリトライを早期
に収束させることが可能となる。
また、上記実施形態において、新たな前記目標トラックへのシーク命令を受領しても、今までの目標トラックにおけるオントラック条件が成立している間は、各サーボフレームに対応するポストコードのメモリ記憶をクリアしないように制御することができる。
更に、上記実施形態において、ポストコードのメモリ記憶は、ディスク記録媒体へのデータの書込み用のシーク動作後においてのみ実行されるように制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明によるハードディスク装置の実施形態の構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるサーボ制御の制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態におけるポストコードのためのメモリ領域の構成図である。
【図4】磁気ヘッドが目標トラックに到達してオントラック条件が成立するまでの様子を模式的に示した説明図である。
【図5】オントラック条件が終了してシーク動作が終了した後のポストコード制御動作を示す動作フローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の動作説明図である。
【図7】サーボフレームの説明図である。
【図8】サーボフレームの記録信号波形図である。
【図9】サーボ情報の記録変動の説明図である。
【図10】ポジション値とポストコード値の関係を示す波形図である。
【図11】従来技術の動作及びその問題点の説明図である。
【図12】ポストコード値が異常となる原因の説明図である。
【符号の説明】
【0074】
101 ドライブユニット
102、701 磁気ディスク
103 アクチュエータ
104 プリアンプ
105 サーボコンボIC
106 リードチャネル部
107 サーボ復調部
108 DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)
109 ドライブインタフェースロジック
110 MCU(マイクロ・コントロール・ユニット)
111 フラッシュROM
112 ハードディスクコントローラ
113 データバッファRAM
201 電流値
202 Plant
203、708 グレイコード
204、710、903、1201 ポストコード
205、208〜210、212 加算器
206 推定器
207 オブザーバ
211 コントローラ
702 トラック
703 セクタ
704 サーボフレーム
705 データ
706 プリアンブル
707 サーボマーク
709 バーストA/B/C/D
901、1202 トラック中心
902 サーボ情報
904、1203 リードヘッド
1001 ポストコード値で補正しないポジション値
1002 ポストコード値
1003 ポストコード値で補正したポジション値
1204 微小欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータに設置されたヘッドを介して、ディスク記録媒体の各トラック上に記録される各サーボフレームからサーボ情報と該サーボ情報の偏差を示すポストコードを読み出して、前記サーボ情報から復調される復調位置を前記ポストコードで補正し、該補正した復調位置に基づいて前記アクチュエータを駆動して前記ヘッドを目標トラック上に位置制御するディスク記憶装置のサーボ制御方法であって、
前記ヘッドが前記目標トラック上に位置制御されていることを判定するオントラック条件が成立している場合に、前記ディスク記録媒体上の前記目標トラック上の前記各サーボフレームから読み出されるポストコードをメモリ記憶するステップと、
前記各サーボフレームでの復調位置の補正において、該各サーボフレームに対応する前記ポストコードが前記メモリ記憶されている場合であってかつ前記オントラック条件が成立している場合に、該メモリ記憶されたポストコードを前記復調位置の補正に用いるステップと、
を含むことを特徴とするサーボ情報補正方法。
【請求項2】
前記各サーボフレームでの復調位置の補正において、該各サーボフレームに対応する前記ポストコードが前記メモリ記憶されている場合であってかつ前記オントラック条件が非成立になった場合に、該ポストコードのメモリ記憶をクリアするステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーボ情報補正方法。
【請求項3】
新たな前記目標トラックへのシーク動作の開始時に、前記各サーボフレームに対応する前記ポストコードのメモリ記憶を全てクリアするステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のサーボ情報補正方法。
【請求項4】
前記ディスク記録媒体へのデータの書込み動作のリトライ中に、一旦別の目標トラックにシークすることにより、前記各サーボフレームに対応する前記ポストコードのメモリ記憶を一旦全てクリアするステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のサーボ情報補正方法。
【請求項5】
前記オントラック条件は、前記ヘッドが前記目標トラックの中心位置からの偏差が一定値以内になるように位置制御されていることを判定する条件である、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のサーボ情報補正方法。
【請求項6】
前記オントラック条件は、前記ヘッドが前記目標トラックの中心位置からの偏差が一定値以内になるように位置制御されている状態が所定サーボフレーム回数連続して成立することを判定する条件である、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のサーボ情報補正方法。
【請求項7】
新たな前記目標トラックへのシーク命令を受領しても、今までの前記目標トラックにおける前記オントラック条件が成立している間は、前記各サーボフレームに対応する前記ポストコードのメモリ記憶をクリアしない、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のサーボ情報補正方法。
【請求項8】
前記ポストコードをメモリ記憶するステップは、前記ディスク記録媒体へのデータの書込み用のシーク動作後においてのみ実行される、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のサーボ情報補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−283039(P2009−283039A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132027(P2008−132027)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】