説明

サーマルプリンタの用紙搬送機構

【課題】所望の画像を印刷後に予め形成されたミシン目で切り離し、用紙に所望の画像が印刷された印刷物を得る際に、用紙の速度変動が生じ、ジッタの影響が現れることを防止する。
【解決手段】サーマルヘッド1とプラテンが対向配置された印刷部3よりも用紙搬送方向における下流側に配設され、回転駆動される用紙搬送ローラおよびこの用紙搬送ローラと圧接する圧接ローラ6とにより搬送方向に対して直交する方向に延在するライン状のミシン目4aが形成された用紙4を狭持して搬送するサーマルプリンタの用紙搬送機構7であって、前記圧接ローラ6は、支軸6aと、この支軸6aに支持されている全体として1本のローラ本体6bとにより構成されており、前記用紙4の搬送方向に対し直交する方向に延在する用紙搬送ローラの軸線に対し、前記圧接ローラ6の軸線を搬送される用紙4の平面内において所定角度傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
余白が形成されることなく、用紙の全面に所望の画像が印刷された印刷物を得るためのサーマルプリンタの用紙搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタには、サーマルヘッドとプラテンとが対向配置された印刷部へ用紙を搬送供給するための機構(用紙搬送機構)が必要である。
【0003】
前記用紙搬送機構として、印刷部に配置されたローラ状のプラテンを利用するサーマルプリンタもある。しかしながら、例えば、カラーサーマルプリンタの場合、用紙を往復搬送させながら各色のインクの転写画像を重ねて所望のカラー画像を印刷するため、各色のインクの転写画像に位置ずれが生じないように、精度よく用紙搬送を行う必要がある。そこで、前記印刷部とは別の位置、例えばサーマルヘッドとプラテンが対向配置された印刷部よりも用紙の搬送方向下流側に、回転駆動される用紙搬送ローラと、この用紙搬送ローラに圧接する圧接ローラとからなる用紙搬送機構を配設している(図4参照)。
【0004】
さらに、用紙搬送機構が印刷部よりも用紙の搬送方向下流側に配設されたサーマルプリンタにおいては、用紙の先端部に前記用紙搬送機構の用紙搬送ローラと圧接ローラが該用紙を狭持するためのタブ部分(余白)が必要となる。そのため、用紙の全面に画像が印刷された印刷物を得る場合には、印刷物の用紙サイズに前記タブ部分を付加したサイズの用紙を印刷に供して、前記用紙サイズの領域に所望の画像を印刷し、その後、不要な前記タブ部分を切り離すことがなされている。そして、この印刷に供される用紙としては、前記タブ部分を切り離しやすいように、予め、用紙の搬送方向と直交する方向に延在するライン状のミシン目が形成された用紙が利用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−274061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、用紙に形成されたミシン目は、図6に示すように、ミシン目を形成する際のダイの歯形状によって用紙表面が凹んで段差形状となっている。なお、図6Aは、従来より使用されている用紙の印刷面(表面)におけるライン状のミシン目の用紙の搬送方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインA)と、用紙の搬送方向に対し直交する方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインB)(単位はμm)、図6Bは用紙の裏面におけるライン状のミシン目の用紙の搬送方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインA)と、用紙の搬送方向に対し直交する方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインB)(単位はμm)の測定結果である。この測定結果より、用紙の印刷面におけるミシン目は、幅約300μmに亘る凹部段差部となっていることがわかる。
【0007】
そのため、ライン状のミシン目の延在方向と等しい方向に前記圧接ローラやサーマルヘッド等が延在させて配設されている従来のサーマルプリンタにおいては、前記圧接ローラやサーマルヘッド等が搬送される用紙に形成されたミシン目の凹部段差に一時的に嵌合し、用紙搬送の速度変動が生じ、印刷結果に黒筋が発生するいわゆるジッタが発生していた。
【0008】
図7は、速度変動の発生原因の説明図であり、ミシン目を摸した縦0.2mm、横0.2mmの凹部段差を形成し、直径φ6mmのローラ部材(圧接ローラに相当)がこの凹部段差に一時的に嵌合した場合を想定すると、凹部段差に嵌合したローラ部材は直径がφ6.1mm程度に変化した場合と同じになり、また、曲率を持った硬度の高いローラ部材が段差に一時的に嵌合することで振動による速度変動が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、印刷後に不要部分を予め形成されたミシン目で切り離し、用紙の全面に所望の画像が印刷された印刷物を得る際に、用紙の搬送に速度変動が生じ、印刷結果にジッタの影響が現れることを防止することのできるサーマルプリンタの用紙搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明のサーマルプリンタの用紙搬送機構は、サーマルヘッドとプラテンが対向配置された印刷部よりも用紙搬送方向における下流側に配設され、回転駆動される用紙搬送ローラおよびこの用紙搬送ローラと圧接する圧接ローラとにより、搬送方向に対して直交する方向に延在するライン状のミシン目が形成された用紙を狭持して搬送するサーマルプリンタの用紙搬送機構であって、前記圧接ローラは、支軸と、この支軸に支持されている全体として1本のローラ本体とにより構成されており、前記用紙の搬送方向に対し直交する方向に延在する用紙搬送ローラの軸線に対し、前記圧接ローラの軸線は、搬送される用紙の平面内において所定角度傾斜していることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明のサーマルプリンタの用紙搬送機構は、前記圧接ローラの傾斜角度は1°以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他のサーマルプリンタの用紙搬送機構は、サーマルヘッドとプラテンが対向配置された印刷部よりも用紙搬送方向における下流側に配設され、回転駆動される用紙搬送ローラおよびこの用紙搬送ローラと圧接する圧接ローラとにより、搬送方向に対して直交する方向に延在するライン状のミシン目が形成された用紙を狭持して搬送するサーマルプリンタの用紙搬送機構であって、前記用紙は、前記圧接ローラに対し、前記ミシン目を1°以下その平面内で傾斜させて給紙部にセットされ、搬送されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
圧接ローラの軸線を搬送される用紙の平面内において所定角度(1°以下)傾斜させた本発明のサーマルプリンタの用紙搬送機構によれば、前記圧接ローラが用紙に形成されたライン状のミシン目の段差に嵌合することがないので、振動によって生じる速度変動を抑止し、印刷結果にジッタの影響が現れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態におけるサーマルプリンタの用紙搬送機構の要部構成を示す平面図
【図2】本発明の一実施形態におけるサーマルプリンタの用紙搬送機構の要部構成を示す側面図
【図3】本発明の一実施形態におけるサーマルプリンタの用紙搬送機構の要部構成を示す平面図
【図4】従来のサーマルプリンタの用紙搬送機構の要部構成を示す平面図
【図5】従来のサーマルプリンタの用紙搬送機構の要部構成を示す側面図
【図6】(A)用紙の印刷面(表面)におけるライン状のミシン目(単個)の用紙の搬送方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインA)と、用紙の搬送方向に対し直交する方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインB)の測定結果を示すグラフ、(B)用紙の裏面におけるライン状のミシン目の用紙の搬送方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインA)と、用紙の搬送方向に対し直交する方向における高さ寸法、長さ寸法(図中ラインB)の測定結果を示すグラフ
【図7】従来のサーマルプリンタの用紙搬送機構における用紙搬送の速度変動の発生原因の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2に示す本発明のサーマルプリンタの用紙搬送機構の実施形態においては、サーマルヘッド1とプラテンローラ2が対向配置された公知の構成の印刷部3よりも用紙4の搬送方向における下流側に、図示しない駆動源により回転駆動される用紙搬送ローラ5およびこの用紙搬送ローラ5と圧接する圧接ローラ6とからなる用紙搬送機構7が配設されている。
【0016】
本実施形態において、前記用紙搬送ローラ5は、支軸5aと、この支軸5aに支持されている、外周面に所定の高さの突起を備えた突起ローラ本体5bとにより構成されており、用紙4の搬送方向に対し直交する方向に延在するようにして、前記支軸5aを以てサーマルプリンタの図示しない支持体に回転可能に軸支されている。
【0017】
また、前記圧接ローラ6は、支軸6aと、この支軸6aに支持されている全体として1本のローラ本体6bとにより構成されている。そして、前記圧接ローラ6は、前記用紙搬送ローラ5の軸線に対し、前記圧接ローラ6の軸線が、搬送される用紙4の平面内において、1°以下の所定角度で傾斜するようにして前記支軸を以て6aサーマルプリンタの支持体に回転可能に軸支されている。
【0018】
そして、このサーマルプリンタに供される用紙4には、搬送方向に対して直交する方向、すなわち幅方向に延在するライン状のミシン目4aが形成されており、所望の画像を印刷後に不要部分を前記ミシン目4aで切り離し、用紙4の全面に所望の画像が印刷された状態の印刷物を得るように形成されている。
【0019】
このように構成されたサーマルプリンタの用紙搬送機構においては、ミシン目4aが形成された用紙4は、用紙4の裏面と前記突起ローラ本体5bの突起との摩擦により搬送される。その際、圧接ローラ6は搬送される用紙4に対し、用紙4の平面内において、1°以下の所定角度で傾斜した状態で接触する。よって、ライン状に形成された前記ミシン目4aと前記圧接ローラ6のローラ本体6bが接触するタイミングを用紙の幅方向において漸次ずらすことが可能となるため、接触により生じる速度変動を分散させ、小さくすることができる。
【0020】
よって、ジッタの発生を印刷結果に影響が出ない程度にまで抑止することが可能となる。
【0021】
なお、圧接ローラ6の軸線を傾斜させることにより、用紙4と接触するインクリボンの巻き取り時に、前記インクリボンが斜行し、しわ等が発生したりすることが懸念される。そこで、前記角度を、サーマルプリンタにインクリボン剥離プレート等の部材を配設する際に取り付け調整可能な範囲内(1°以下)とすることで、問題の発生に対処することが可能となる。
【0022】
さらに、圧接ローラ6に対
して用紙4のミシン目4aが水平に通過しないようにすることを要旨とする本発明においては、図3に示すように、圧接ローラ6を従来の通りに配設しておき、用紙4を斜行させることも考えられる。その場合においては、用紙4に対し、印刷は斜めに行うことが望ましい。しかしながら、通常のA4縦サイズ程度の用紙であれば、用紙4のセット時における傾斜角度を1°以下とすれば、用紙4の幅方向両端の搬送差(搬送方向における位置ずれ寸法)を1mm以下とすることができるので、用紙4に対し印刷を斜めに行わなくても、ミシン目4aによって切り離されるタブ部分が5mm程度あれば、印刷結果には問題がないと考えられる。
【符号の説明】
【0023】
1 サーマルヘッド
2 プラテンローラ
3 印刷部
4 用紙
4a ミシン目
5 用紙搬送ローラ
5a 支軸
5b 突起ローラ本体
6 圧接ローラ
6a 支軸
6b ローラ本体
7 用紙搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドとプラテンが対向配置された印刷部よりも用紙搬送方向における下流側に配設され、回転駆動される用紙搬送ローラおよびこの用紙搬送ローラと圧接する圧接ローラとにより、搬送方向に対して直交する方向に延在するライン状のミシン目が形成された用紙を狭持して搬送するサーマルプリンタの用紙搬送機構であって、
前記圧接ローラは、支軸と、この支軸に支持されている全体として1本のローラ本体とにより構成されており、
前記用紙の搬送方向に対し直交する方向に延在する用紙搬送ローラの軸線に対し、前記圧接ローラの軸線は、搬送される用紙の平面内において所定角度傾斜していることを特徴とするサーマルプリンタの用紙搬送機構。
【請求項2】
前記圧接ローラの傾斜角度は1°以下であることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタの用紙搬送機構。
【請求項3】
サーマルヘッドとプラテンが対向配置された印刷部よりも用紙搬送方向における下流側に配設され、回転駆動される用紙搬送ローラおよびこの用紙搬送ローラと圧接する圧接ローラとにより、搬送方向に対して直交する方向に延在するライン状のミシン目が形成された用紙を狭持して搬送するサーマルプリンタの用紙搬送機構であって、
前記用紙は、前記圧接ローラに対し、前記ミシン目を1°以下その平面内で傾斜させて給紙部にセットされ、搬送されることを特徴とするサーマルプリンタの用紙搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173211(P2010−173211A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19390(P2009−19390)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】