説明

サーマルプリンタ

【課題】リボンの巻き取り又は巻き戻しといったリボンの搬送を伴う準備動作を行うにあたり、複雑な制御を要することなく、リボンの搬送時にリボンにシワが発生することを防止して印刷品質を向上させたサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルプリンタは、供給側リボンローラ20からサーマルヘッド10へのリボンRbを繰り出しつつ、サーマルヘッド10により加熱されたリボンRbの巻取側リボンローラ21への巻き取る印刷動作を行うとともに、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21を停止した状態でリボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20からリボンRbを繰り出してリボンRbを弛ませる弛緩動作と、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20を停止した状態でリボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21に弛ませたリボンRbを巻き取る弛み巻取動作とを実行することにより、準備動作におけるリボンRbの搬送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドによりリボンを加熱してリボンのインク等の転写物を用紙等の記録媒体に熱転写するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、複数色のインク等の転写物を塗布したリボンをサーマルヘッドにより用紙等の記録媒体に押し当てた状態でリボンを記録媒体と共に搬送するとともに、サーマルヘッドによりリボンを加熱してリボンの転写物を記録媒体に熱転写する印刷装置である。
【0003】
サーマルプリンタの一例として特許文献1には、供給側リボンローラ及び巻取側リボンローラと、各々のローラを回転駆動するDCモータ等の駆動部と、供給側リボンローラと駆動部との間に作用するトルクを制限するトルクリミッタとを有し、トルクリミッタに規定されたテンションをリボンに作用させた状態で供給側リボンローラと巻き取り側リボンローラとの間でリボンを繰り出すプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−62032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなサーマルプリンタは、供給側リボンローラから繰り出されたリボンをサーマルヘッドで加熱して熱転写を行いながら、加熱済みのリボンを巻取側リボンへの巻き取る印刷動作と、この印刷動作を開始可能なレディ状態にするための準備動作とを実行可能に構成されている。準備動作は、例えば電源投入時に実行される初期化処理時やリボンの着脱操作がなされた後に実行されるチェック処理時等の所定の準備タイミングで実行されるもので、例えばリボン径等のリボンに関する情報を取得するために、供給側リボンローラから巻取側リボンローラへ向かうリボンの巻き取り又は巻取側リボンローラから供給側リボンローラへ向かうリボンの巻き戻しといったリボンの搬送を伴う動作である。このリボンの巻き取り又は巻き戻しは、トルクリミッタに設定されたテンションがリボンに作用する状態で行われる。
【0006】
しかしながら、リボンの全ての部位に熱がかかっていない新品状態ではよいものの、準備動作の前に行った印刷動作によって熱の加わった加熱済部位を巻き取り又は巻き戻しすると、リボンに作用するテンションによりリボンの加熱済部位が伸びて次の印刷動作で使用する未加熱部位にシワが発生してしまい、印刷品質が損なわれてしまう。
【0007】
一方、リボンにテンションが掛からないようにリボンを巻き戻し又は巻き戻すためには、供給側リボンローラによるリボンの搬送速度と、巻取側リボンローラによるリボンの搬送速度とを厳密に一致させる複雑な制御が必要となり、コストが増大してしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、リボンの巻き取り又は巻き戻しといったリボンの搬送を伴う準備動作を行うにあたり、複雑な制御を要することなく、リボンの搬送時にリボンにシワが発生することを防止して印刷品質を向上させたサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明のサーマルプリンタは、サーマルヘッドによりリボンを加熱してリボンの転写物を記録媒体に熱転写するサーマルプリンタであって、供給側リボンローラと巻取側リボンローラとの間でリボンを繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段と、サーマルヘッドの加熱、前記リボン搬送手段を通じた供給側リボンローラからサーマルヘッドへのリボンの繰り出し及び加熱されたリボンの巻取側リボンローラへの巻き取りを関連づけた印刷動作と、供給側リボンローラから巻取側リボンローラへ向かうリボンの巻き取り搬送又は巻取側リボンローラから供給側リボンローラへ向かうリボンの巻き戻し搬送の少なくとも一方を伴う準備動作とを司る制御手段とを具備し、前記制御手段は、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラを停止した状態でリボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラからリボンを繰り出してリボンを弛ませる弛緩動作と、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラを停止した状態でリボン搬送方向の進み側にあるリボンローラに弛ませたリボンを巻き取る弛み巻取動作とを実行することにより、前記準備動作におけるリボンの搬送を行うように構成されていることを特徴とする。
【0011】
このように、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラを停止した状態でリボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラからリボンを繰り出してリボンを弛ませる弛緩動作と、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラを停止した状態でリボン搬送方向の進み側にあるリボンローラに弛ませたリボンを巻き取る弛み巻取動作とを実行することにより、準備動作におけるリボンの搬送を行うように構成しているので、リボンにテンションがかからないようにリボンを巻き取り又は巻き戻すことができ、リボンの加熱済部位にテンションがかかってリボンにシワが発生することを防止して準備動作におけるリボンの適切な搬送を行うことが可能となる。
【0012】
リボンにテンションがかからないようにリボンを巻き取り又は巻き戻す動作を容易に実現するためには、前記制御手段は、前記リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラから予め定めた所定距離リボンを繰り出すとともに、前記リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラに前記所定距離リボンを巻き取るように構成されていることが好ましい。
【0013】
リボンにシワが発生することを回避しつつ、迅速なリボンの搬送を実現して準備動作に要する時間を抑制するためには、前記両リボンローラ間にリボンを張った状態にした場合にリボンにテンションのかかる所定範囲を予め設定しておくとともに、前記準備動作の開始時における前記所定範囲に対するリボンの加熱済部位及び未加熱部位の位置に関する開始時位置情報を予め設定しておき、前記準備動作の開始時からのリボンの搬送距離と前記開始時位置情報とに基づきリボンを両リボンローラ間に張った状態で搬送することによって前記加熱済部位にテンションがかかるか否かを判定し、前記加熱済部位にテンションがかかると判定した場合に前記弛緩動作及び前記弛み巻取動作を行うことによりリボンを搬送する一方、前記加熱済部位にテンションがかからないと判定した場合に両リボンローラの同時回転によりリボンを搬送するように構成されていることが望ましい。
【0014】
好適な適用例としては、前記準備動作は、リボンの搬送を通じて前記印刷動作が開始可能なレディ状態にするための動作であることが挙げられる。
【0015】
さらに具体的な好適な適用例としては、前記準備動作は、電源投入時に実行される初期化処理時又はリボンの着脱に関する操作がなされた後に実行されるチェック処理時に行われるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明したように、準備動作におけるリボンの搬送を上記の弛緩動作及び弛み巻取動作により行うので、リボンにテンションがかからないようにリボンを巻き取り又は巻き戻すことができ、リボンの加熱済部位にテンションがかかってリボンにシワが発生することを防止でき、準備動作におけるリボンの適切な搬送を行うことが可能となる。したがって、印刷品質を向上させたプリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタを模式的に示す構成図。
【図2】リボンにテンションのかかる所定位置及びこれに対するリボンの加熱済部位の位置に関する説明図。
【図3】準備動作におけるリボンの巻き取り搬送を模式的に示す図。
【図4】準備動作におけるリボンの巻き戻し搬送を模式的に示す図。
【図5】準備動作を行うために実行される準備動作制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】準備動作を行うために実行される準備動作制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態のサーマルプリンタは、図1に示すように、サーマルヘッド10及びサーマルヘッド10に対向するプラテンローラ11と、リボンRbをサーマルヘッド10に対して繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段2と、リボンRbの搬送状態を監視するリボン監視手段3と、ロール状に巻回された用紙等の記録媒体Paをサーマルヘッド10に対して供給可能に保持する給紙部4と、記録媒体Paを挟持して記録媒体Paを位置決め状態で搬送するフィードローラ50及びピンチローラ51と、記録媒体Paの搬送制御やリボンRbの搬送制御、サーマルヘッド10の加熱制御を行う制御手段6とを有し、記録媒体Pa及びリボンRbをサーマルヘッド10とプラテンローラ11で圧接した状態で搬送するとともに、サーマルヘッド10によりリボンRbを加熱してリボンRbに塗布されたインク等の転写物を記録媒体Paに熱転写する。
【0020】
サーマルヘッド10及びプラテンローラ11は、相対接離可能に構成されて、サーマルヘッド10とプラテンローラ11とでリボンRb及び記録媒体Paを圧接したヘッドダウン状態(図1参照)と圧接状態を解放したヘッドアップ状態(図3参照)とを切り替え可能にしている。サーマルヘッド10には、リボンRbのインク等の転写物を記録媒体に熱転写するための図示しない発熱抵抗体が配列して設けてあり、一ライン単位での熱転写(印刷)を可能としている。
【0021】
リボン搬送手段2は、図2に示すように、イエロー、マゼンタ、シアン等の有色インク、ラミネート層等の透明なコーティング剤の転写物が順に繰り出されるように転写物が塗布されたリボンRbを、図1に示すようにサーマルヘッド10に繰り出す供給側リボンローラ20と、サーマルヘッド10に繰り出されたリボンRbを巻き取る巻取側リボンローラ21と、両リボンローラ20・21を回転駆動するDCモータ等のリボン駆動部22・22と、供給側リボンローラ20とリボン駆動部22との間に作用するトルクを制限するトルクリミッタ23とを有し、供給側リボンローラ20と巻取側リボンローラ21との間でリボンRbの巻き取り又は巻き戻しを行う。具体的には、図3(c)に示すように、ヘッドアップ状態で巻取側リボンローラ21を回転駆動することによりトルクリミッタ23に定められたテンションをリボンRbに作用させた状態で供給側リボンローラ20から巻取側リボンローラ21へ向かうリボンの巻き取り搬送がなされ、逆に、図4(a)に示すように、ヘッドアップ状態で供給側リボンローラ20を回転駆動することによりトルクリミッタ23に規定されたテンションをリボンRbに作用させた状態で巻取側リボンローラ21から供給側リボンローラ20へ向かうリボンの巻き戻し搬送がなされる。ここで、リボンRbの巻き取り時には、図3に示すように、リボン搬送方向が供給側リボンローラ20から巻取側リボンローラ21へ向かう巻取方向となり、リボンRbの巻き戻し時には、図4に示すように、リボン搬送方向が巻取側リボンローラ21から供給側リボンローラ20へ向かう巻戻方向となる。なお、トルクリミッタ23は、本実施形態において供給側リボンローラ20とリボン駆動部22とを接続する位置に設けられているが、巻取側リボンローラ21とリボン駆動部22とを接続する位置に設けてもよい。
【0022】
リボン監視手段3は、図1に示すように、各々のリボンローラ20・21の単位時間あたりの回転量を検出するロータリエンコーダ等の回転検出部30を供給側リボンローラ20及び巻取側リボンローラに直接又は変速ギアを介してそれぞれ設けたもので、単位時間あたりの回転量を検出することにより単位時間あたりのリボンRbの搬送距離を検出する。検出結果は制御手段6に入力される。
【0023】
制御手段6は、図1に示すように、各部の駆動制御を通じて、サーマルヘッド10の加熱、リボン搬送手段2を通じた供給側リボンローラ20からサーマルヘッド10へのリボンRbの繰り出し及び加熱されたリボンRbの巻取側リボンローラ21への巻き取りを関連づけた印刷動作や、この印刷動作を開始可能なレディ状態にするためにリボンRbの巻き取り又は巻き戻しといったリボンRbの搬送を伴う準備動作、その他印刷に必要な動作を司る。制御手段6は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に図示しない印刷制御処理ルーチンや図5及び図6に示す準備動作制御処理ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードウェア資源と協働して、図1に示す印刷動作制御部60と、準備動作制御部61とを実現する。
【0024】
図1に示す印刷動作制御部60は、上記の印刷動作を制御するもので、プリンタステータスが印刷動作を開始可能なレディ状態である場合に、外部からの印刷指令に基づきイエロー、マゼンタ、シアン、ラミネート層の熱転写を行う印刷動作を行うために必要な各部の制御を行う。
【0025】
準備動作制御部61は、所定の準備タイミングで、リボンRbの巻き取り又は巻き戻しといったリボンRbの搬送を伴う準備動作を行うために各部の制御を行う。この準備動作は、リボンRbの搬送を通じてリボン径等のリボンRbに関する情報又はリボンセンサの感度等の各部のチェック結果に関する情報を取得することにより、印刷動作を開始不能な状態から印刷動作の開始可能なレディ状態にする動作である。準備動作を行う所定の準備タイミングとしては、電源投入時に実行される初期化処理時やリボンの着脱操作がなされた後に実行されるチェック処理時等が設定されている。本実施形態では、準備動作制御部61は、上記リボンRbに関する情報や各部のチェック結果に関する情報を取得するために、両リボンローラ20・21の回転駆動を制御して、リボンRbの巻き取りを各情報取得に必要な距離行った後、元の位置までリボンRbを巻き戻す。この際、リボン監視手段3で検出されるリボンRbの搬送距離を参照する。
【0026】
図1の制御手段6を構成するメモリには、図1及び図2に示すように、両リボンローラの間にリボンを張った状態にした場合にリボンにテンションのかかる所定範囲Rg1に関する情報63と、準備動作の開始時における所定範囲Rg1に対するリボンRbの加熱済部位Rb1及び未加熱部位Rb2の位置に関する開始時位置情報64とが予め設定されて記憶されている。また、準備動作制御部61は、準備動作におけるリボンRbの搬送距離と開始時位置情報64とに基づいて、現時点での所定範囲Rg1に対するリボンの加熱済部位Rb1及び未加熱部位Rb2の位置に関する現時点位置情報65を特定し、これを内部メモリに保持している。
【0027】
すなわち、図1及び図5に示すように、制御手段6は、プリンタの電源投入時に実行される初期化処理、又は、リボンにアクセスするために筐体に設けられたカバーを閉じる操作などリボンの着脱に関する操作がなされた後に実行されるチェック処理のうちいずれかの処理が実行されているか否かを判定し(処理ST1参照)、初期化処理又はチェック処理の実行が開始したと判定した場合には(処理ST1:YES参照)、予め設定された開始時位置情報64を現時点位置情報65として準備動作を開始する(処理ST2参照)。
【0028】
まず、リボンの巻き取り動作を行うにあたり、図1及び図2に示すように、現時点位置情報65に基づきリボンRbを両リボンローラ20・21間に張った状態で搬送することにより加熱済部位Rb1にテンションがかかるか否かを判定する(図5の処理ST3参照)。具体的には、図2に示すように、所定範囲Rg1内に加熱済部位Rb1があるか否かによって判定する。なお、加熱済部位Rb1にテンションがかからないと判定した場合には(図5の処理ST3:NO参照)、後述する処理ST7を実行する。準備動作の開始時には、図2に示すように、加熱済部位Rb1が所定範囲Rg1にあるので、制御手段6は、リボンRbを両リボンローラ20・21間に張った状態で搬送することにより加熱済部位Rb1にテンションがかかると判定し(図5の処理ST3:YES参照)、図3(a)に示すように、リボン搬送方向(この場合は巻取方向となる)の進み側にある巻取側リボンローラ21を停止した状態でリボン搬送方向(巻取方向)の遅れ側にある供給側リボンローラ20からリボンRbを予め定めた所定距離Y1繰り出してリボンRbを弛ませる弛緩動作を行い(図5の処理ST4参照)、図3(b)に示すように、リボン搬送方向(巻取方向)の遅れ側にある供給側リボンローラ20を停止した状態でリボン搬送方向(巻取方向)の進み側にある巻取側リボンローラ21に弛ませたリボンRbを上記と同じ所定距離Y1巻き取る弛み巻取動作を行う(図5の処理ST5参照)。このとき、図3(b)に示すように、リボンRbの搬送距離である所定距離Y1を用いて現時点位置情報65を更新する。再び、図5に示す処理ST3と同様に加熱済部位Rb1にテンションがかかる否かを判定し(処理ST6参照)、加熱済部位Rb1にテンションがかからないと判定されるまで(図5の処理ST6:NO参照)、上記処理ST4〜5の弛緩動作及び弛み巻取動作からなる尺取虫動作を繰り返し行い、リボンの巻き取り搬送を行う。なお、ここでいう尺取虫動作は、リボンが弛み状態にある場合に、リボンの弛み方向(曲げ方向)がリボンの厚み方向の一方のみに限定されることを意味するものではない。
【0029】
リボンRbの巻き取り搬送の結果、図3(c)に示すように、リボンRbの加熱済部位Rb1が巻取側リボンローラ21に巻き取られて所定範囲Rg1に加熱済部位Rb1がなく、リボンRbを両リボンローラ20・21間に張った状態で搬送することにより加熱済部位Rb1にテンションがかからないと判定された場合には(図5の処理ST6:NO参照)、図3(c)に示すように、両リボンローラ20・21の同時回転によりリボンRbを所要距離巻き取る搬送を行う(図5の処理ST7参照)。この場合も同様に、リボンRbの搬送距離を用いて現時点位置情報65を更新する。
【0030】
リボンRbの巻き取り搬送の後にリボンRbの巻き戻し搬送を行う場合には、上記と同様に、図1に示す現時点位置情報65に基づき加熱済部位Rb1にテンションがかかるか否かを判定する(図6の処理ST8参照)。この場合、図4(a)に示すように、巻戻方向は加熱済部位Rb1が巻取側リボンローラ21から繰り出される方向であるので、所定範囲Rg1を広げて余裕分を持たせた第二の所定範囲Rg2に加熱済部位Rb1があるか否かによって判定する。リボンRbの巻き戻し搬送を開始したときには、図4(a)に示すように、第二の所定範囲Rg2に加熱済部位Rb1がないので、制御手段6は、加熱済部位Rb1にテンションがかからないと判定し(図6の処理ST8:NO参照)、図4(a)に示すように、リボンRbの搬送距離を用いて現時点位置情報65を更新しつつ両リボンローラの同時回転によりリボンRbの巻き戻し搬送を行う。この際、図6の処理8のような加熱済部位Rb1にテンションがかかる否かの判定を行い、加熱済部位Rb1にテンションがかかると判定されるまで(図6の処理ST8:YES参照)、上記処理8〜9を繰り返す。
【0031】
リボンの巻き戻し搬送の結果、図4(b)に示すように、リボンRbの加熱済部位Rb1が第二の所定範囲Rg2内にあるものの所定範囲Rg1内になく、リボンRbを両リボンローラ20・21間に張った状態で搬送することによって加熱済部位Rb1にテンションがかかると判定された場合には(図6の処理ST8:YES参照)、リボン搬送方向(この場合は巻戻方向となる)の進み側にある供給側リボンローラ20を停止した状態でリボン搬送方向(巻戻方向)の遅れ側にある巻取側リボンローラ21からリボンを予め定めた所定距離Y1繰り出してリボンを弛ませる弛緩動作を行い(図6の処理ST10参照)、図4(c)に示すように、リボン搬送方向(巻取方向)の遅れ側にある巻取側リボンローラ21を停止した状態でリボン搬送方向(巻戻方向)の進み側にある供給側リボンローラ20に弛ませたリボンRbを上記と同じ所定距離Y1巻き取る弛み巻取動作を行い(図6の処理ST11参照)、上記弛緩動作及び弛み巻取動作からなる尺取虫動作を繰り返し行うことによりリボンRbの位置を図3(a)に示す準備動作の開始時の位置まで戻し(図6の処理ST12:YES参照)、印刷動作を開始可能なレディ状態にプリンタステータスを変更して準備動作を完了する(図6の処理ST13参照)。そして、印刷指令がある場合には、印刷動作制御部60により上記の印刷動作が開始されて、熱転写(印刷)がなされる。
【0032】
以上のように本実施形態に係るサーマルプリンタは、サーマルヘッド10によりリボンRbを加熱してリボンRbの転写物を記録媒体Paに熱転写するサーマルプリンタであって、供給側リボンローラ20と巻取側リボンローラ21との間でリボンRbを繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段2と、サーマルヘッド10の加熱、リボン搬送手段2を通じた供給側リボンローラ20からサーマルヘッド10へのリボンRbの繰り出し及び加熱されたリボンRbの巻取側リボンローラ21への巻き取りを関連づけた印刷動作と、供給側リボンローラ20から巻取側リボンローラ21へ向かうリボンRbの巻き取り搬送又は巻取側リボンローラ21から供給側リボンローラ20へ向かうリボンRbの巻き戻し搬送の少なくとも一方を伴う準備動作とを司る制御手段6とを具備し、制御手段6は、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21(20)を停止した状態でリボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20(21)からリボンRbを繰り出してリボンRbを弛ませる弛緩動作と、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20(21)を停止した状態でリボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21(20)に弛ませたリボンRbを巻き取る弛み巻取動作とを実行することにより、準備動作におけるリボンRbの搬送を行うように構成されている。
【0033】
このように、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21(20)を停止した状態でリボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20(21)からリボンRbを繰り出してリボンRbを弛ませる弛緩動作と、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20(21)を停止した状態でリボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21(20)に弛ませたリボンRbを巻き取る弛み巻取動作とを実行することにより、準備動作におけるリボンRbの搬送を行うように構成しているので、リボンRbにテンションがかからないようにリボンRbを巻き取り又は巻き戻すことができ、リボンRbの加熱済部位Rb1にテンションがかかってリボンRbにシワが発生することを防止でき、準備動作におけるリボンの適切な搬送を行うことが可能となる。
【0034】
特に、ラミネート層を熱転写するにあたり、ドット毎の熱量をランダムに変化させるマット印刷を行う場合には、ラミネート層全体を一定の熱量で熱転写する場合に比べて、リボンの加熱済部位にかかるテンションに起因してシワが発生しやすいので、上記尺取虫動作によるリボン搬送が効果的である。
【0035】
さらに、本実施形態では、制御手段6は、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラ20(21)から予め定めた所定距離Y1のリボンRbを繰り出すとともに、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラ21(20)に所定距離Y1のリボンRbを巻き取るように構成されているので、リボンRbを弛ませるために繰り出した距離Y1と、弛んだリボンRbを巻き取る距離Y1とが一致するので、リボンRbにテンションがかからないようにリボンRbを巻き取り又は巻き戻す動作を容易に実現することが可能となる。しかも、予め定める所定距離Y1を、リボンRbの弛みが過大にならないように設定すれば、リボンRbの弛みすぎによりリボンRbにシワが生じることを回避することも可能となる。
【0036】
さらにまた、両リボンローラ20・21間にリボンRbを張った状態にした場合にリボンRbにテンションのかかる所定範囲Rg1を予め設定しておくとともに、準備動作の開始時における所定範囲Rg1に対するリボンRbの加熱済部位Rb1及び未加熱部位Rb2の位置に関する開始時位置情報64を予め設定しておき、準備動作の開始時からのリボンRbの搬送距離と開始時位置情報64とに基づきリボンRbを両リボンローラ20・21間に張った状態で搬送することによって加熱済部位Rb1にテンションがかかるか否かを判定し、加熱済部位Rb1にテンションがかかると判定した場合に弛緩動作及び弛み巻取動作を行うことによりリボンRbを搬送する一方、加熱済部位Rb1にテンションがかからないと判定した場合に両リボンローラ20・21の同時回転によりリボンRbを搬送するように構成されているので、テンションをかけるとシワが発生する可能性のある加熱済部位Rb1が、両リボンローラ20・21間にリボンRbを張った状態にした場合にテンションのかかる所定範囲Rg1にあり、リボンRbを両リボンローラ20・21間に張った状態で搬送することにより加熱済部位Rb1にテンションがかかると判定される場合には、弛緩動作及び弛み巻取動作からなる尺取虫動作を行うことで加熱済部位Rb1にテンションをかけないようにリボンRbを搬送する一方、加熱済部位Rb1にテンションがかからないと判定される場合には、両リボンローラ20・21を同時駆動して迅速なリボンRbの搬送を行う。したがって、リボンRbにシワが発生することを回避しつつ、迅速なリボンRbの搬送を実現することができ、準備動作に要する時間を抑制することが可能となる。
【0037】
本実施形態では、準備動作が、リボンRbの搬送を通じて印刷動作が開始可能なレディ状態にするための動作であるので、上記発明の好適な実施例といえる。
【0038】
その他、本実施形態では、準備動作が、電源投入時に実行される初期化処理時又はリボンの着脱に関する操作がなされた後に実行されるチェック処理時に行われるので、上記発明の好適な実施例といえる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0040】
例えば、本実施形態では、準備動作としてリボンの巻き取り及び巻き戻しの双方を行うように構成されているが、準備動作としていずれか一方のみを行うように構成してもよい。
【0041】
その他、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…サーマルヘッド
2…リボン搬送手段
20…供給側リボンローラ
21…巻取側リボンローラ
6…制御手段
64…開始時位置情報
Rb…リボン
Pa…記録媒体
Y1…所定距離
Rg1…所定範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドによりリボンを加熱してリボンの転写物を記録媒体に熱転写するサーマルプリンタであって、
供給側リボンローラと巻取側リボンローラとの間でリボンを繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段と、
サーマルヘッドの加熱、前記リボン搬送手段を通じた供給側リボンローラからサーマルヘッドへのリボンの繰り出し及び加熱されたリボンの巻取側リボンローラへの巻き取りを関連づけた印刷動作と、供給側リボンローラから巻取側リボンローラへ向かうリボンの巻き取り搬送又は巻取側リボンローラから供給側リボンローラへ向かうリボンの巻き戻し搬送の少なくとも一方を伴う準備動作とを司る制御手段とを具備し、
前記制御手段は、リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラを停止した状態でリボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラからリボンを繰り出してリボンを弛ませる弛緩動作と、リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラを停止した状態でリボン搬送方向の進み側にあるリボンローラに弛ませたリボンを巻き取る弛み巻取動作とを実行することにより、前記準備動作におけるリボンの搬送を行うように構成されていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記リボン搬送方向の遅れ側にあるリボンローラから予め定めた所定距離リボンを繰り出すとともに、前記リボン搬送方向の進み側にあるリボンローラに前記所定距離リボンを巻き取るように構成されている請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記両リボンローラ間にリボンを張った状態にした場合にリボンにテンションのかかる所定範囲を予め設定しておくとともに、前記準備動作の開始時における前記所定範囲に対するリボンの加熱済部位及び未加熱部位の位置に関する開始時位置情報を予め設定しておき、前記準備動作の開始時からのリボンの搬送距離と前記開始時位置情報とに基づきリボンを両リボンローラ間に張った状態で搬送することによって前記加熱済部位にテンションがかかるか否かを判定し、前記加熱済部位にテンションがかかると判定した場合に前記弛緩動作及び前記弛み巻取動作を行うことによりリボンを搬送する一方、前記加熱済部位にテンションがかからないと判定した場合に両リボンローラの同時回転によりリボンを搬送するように構成されている請求項1又は2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記準備動作は、リボンの搬送を通じて前記印刷動作が開始可能なレディ状態にするための動作である請求項1〜3のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記準備動作は、電源投入時に実行される初期化処理時又はリボンの着脱に関する操作がなされた後に実行されるチェック処理時に行われる請求項4に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171115(P2012−171115A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32815(P2011−32815)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】