説明

サーマルプリンタ

【課題】両面印刷可能な構成において機械的構成を変更することなく、片面印刷などの部分的な印刷を行う場合でも巻き癖を適切に矯正するサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】ロール状に巻回した記録媒体Paを厚み方向のいずれか一方に湾曲させた状態で搬送しつつ記録媒体Paに圧接したサーマルヘッド20を加熱することでリボンPbのインクをライン単位で熱転写する両面印刷可能なサーマルプリンタを、表面及び裏面に設定した二画面分の所定領域Ar0のうちインクの転写が必要な印刷領域Ar1に関する情報に基づいて、記録媒体Paの搬送方向に直交する主走査方向に印刷領域Ar1のあるライン(X0〜X1)ではインクの熱転写を伴う加熱動作を行う一方、主走査方向に印刷領域Ar1がないライン(X2〜X3)ではインクの熱転写を伴わない加熱動作を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回された記録媒体に両面印刷可能なサーマルプリンタに係り、特に、記録媒体に付いた巻き癖に善処したサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、単色又は複数色のインクを塗布したリボンをサーマルヘッドにより用紙等の記録媒体に押し当てた状態でリボンを記録媒体とともに搬送しつつサーマルヘッドを加熱してリボンのインクを記録媒体に熱転写する印刷装置である。
【0003】
この種のサーマルプリンタとして例えば特許文献1には、表面印刷用のサーマルヘッド及び裏面印刷用のサーマルヘッドをそれぞれ記録媒体の搬送パスの両側に配置して両面印刷を実現するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−71569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような両面印刷機構を備えたサーマルプリンタでは、ロール状に巻回される記録媒体に対して両面印刷を行うだけで、ロール状に巻回されることにより記録媒体に付いた巻き癖(カール)がある程度矯正される。
【0006】
しかしながら、この巻き癖矯正の効果は両面印刷を行う場合に適切に発揮されるものの、例えばフォトアルバム等の表紙部分や裏表紙部分を印刷する場合など、記録媒体の片面しか印刷しない場合すなわち片面にしか熱を加えない場合には、両面印刷する場合に比べて記録媒体の巻き癖矯正の効果が著しく低減して矯正効果がほとんど発揮されなくなる。このことから、サーマルヘッドで加熱した用紙等の記録媒体をプラテンローラで湾曲させた状態で搬送する加熱動作を記録媒体両面に対して行うことが、巻き癖を矯正する効果が発現する条件であると考えられる。
【0007】
この問題を解決する一つの手段として、記録媒体を押圧することで曲げ癖を矯正する押圧機構をサーマルヘッドやプラテンローラとは別に設けておき、巻き癖矯正の効果が低減する片面印刷の場合に押圧機構を動作させるように構成することが考えられるが、別途に機械的構成を加えることになるので製造コストが増大してしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、両面印刷可能な構成において機械的構成を変更することなく、片面印刷などの部分的な印刷を行う場合でも巻き癖を適切に矯正するサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係るサーマルプリンタは、ロール状に巻回した記録媒体を厚み方向のいずれか一方に湾曲させた状態で搬送しつつ記録媒体に圧接したサーマルヘッドを加熱することでリボンのインクをライン単位で熱転写する両面印刷可能なサーマルプリンタであって、表面及び裏面に設定した二画面分の所定領域のうちインクの転写が必要な印刷領域に関する情報を保持する印刷情報保持部と、記録媒体の搬送を関連付けたサーマルヘッドの加熱動作を前記印刷情報保持部の保持する情報に基づき司る印刷制御部とを具備し、前記印刷制御部は、前記印刷情報保持部の保持する情報に基づいて、記録媒体の搬送方向に直交する主走査方向に印刷領域のあるラインではインクの熱転写を伴う加熱動作を行う一方、主走査方向に印刷領域がないラインではインクの熱転写を伴わない加熱動作を行うことを特徴とする。
【0011】
インクの熱転写を伴わない加熱動作とは、インクが記録媒体に転写されないように記録媒体を加熱することを意味し、例えばインクが熱転写されない程度の弱い熱量で行う加熱動作や、インク以外の透明なコーティング剤(オーバーコート層)を熱転写する加熱動作等が挙げられる。
【0012】
この構成によれば、片面印刷など、表面及び裏面に設定した二画面分の所定領域のうち一部の領域にしかインクの熱転写(印刷)を行わない場合でも、所定領域を構成するライン全体すなわち記録媒体の両面に加熱動作を行うことになるので、ロール状に巻回することで記録媒体に付いた巻き癖を新たな矯正機構を追加することなく、両面印刷時と同様に巻き癖を矯正する効果を発揮させて、巻き癖を適切に矯正することができる。
【0013】
巻き癖の矯正効果を適切に発揮させるためには、前記印刷制御部は、前記加熱動作を記録媒体の両面に対して実行するにあたり、ロール状に巻回することで巻き癖の付いた記録媒体をその巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態で行ういずれか一方の面に対する加熱動作を、巻き癖の曲げ方向と同方向に湾曲させた状態で行ういずれか他方の面に対する加熱動作よりも優先して先に実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明した構成であるから、片面印刷といった部分的にしかインクの熱転写(印刷)をしない場合でも、記録媒体の両面に加熱動作を行うことになるので、新たな矯正機構を追加することなく、記録媒体に付いた巻き癖を両面印刷時と同様に適切に矯正することが可能となる。したがって、製造コストを低減させるとともに巻き癖に善処して製品品質を向上させたサーマルプリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタを模式的に示す全体構成図。
【図2】印刷部及び制御手段を模式的に示す構成図。
【図3】記録媒体の表面に対する加熱動作を模式的に示す図。
【図4】記録媒体の裏面に対する加熱動作を模式的に示す図。
【図5】記録媒体の裏面に対する加熱動作を模式的に示す図。
【図6】優劣情報保持部が保持する優劣情報を模式的に示す図。
【図7】印刷情報及びこれに基づく加熱動作を模式的に示す図。
【図8】図7に示す印刷情報に基づく加熱動作を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態のサーマルプリンタは、図1に示すように、巻回されたロール用紙等の記録媒体Paを保持する給紙部1と、リボンPbのインクを記録媒体Paに熱転写(印刷)する複数の印刷部2,3と、給紙部1から供給される記録媒体Paを搬送する基幹路Li0と、基幹路Li0に分岐部43を介して接続され基幹路Li0と各々の印刷部2,3との間を連絡する分岐路Li1,Li2と、分岐路Li1,Li2にある記録媒体Paを搬送する搬送ローラ部4と、印刷部2,3に供給する記録媒体Paの表裏を反転させる反転手段5と、印刷部2,3への給紙を始めとする記録媒体Paの搬送制御や印刷部2,3の印刷制御を行う制御手段6とを有し、搬送ローラ部4を通じて給紙部1に保持される記録媒体Paを印刷部2,3に順次給紙しつつ記録媒体Paへの印刷を行うものである。
【0018】
給紙部1は、図1に示すように、ロール状に巻回された記録媒体Paを回転可能に保持し、図示しないモータ等の動力部により記録媒体Paをロールの軸心C1を中心に正逆回転させて記録媒体Paの繰り出し又は巻き戻し動作を行い得るように構成されているとともに、対をなす送出ローラ12・12で記録媒体Paを挟持しつつ印刷部2,3に供給する。記録媒体Paは、ロール状に巻回されることで巻き癖(カール)が付いている。
【0019】
分岐部43は、基幹路Li0にある記録媒体Paの搬送先を分岐路Li1又は分岐路Li2のいずれか一方に切り換える切り替え部の役割を担うもので、制御手段6によりその切り換えが制御される。
【0020】
搬送ローラ部4は、両分岐路Li1,Li2の内側に配置され記録媒体を搬送する駆動力を図示しない動力部から得るフィードローラ41と、フィードローラ41と共に分岐路Li1,Li2にある記録媒体をそれぞれ挟持するピンチローラ42・42とを有し、フィードローラ41の回転により記録媒体Paを搬送する。
【0021】
印刷部2は、給紙部1から基幹路Li0及び分岐路Li1を経由して供給される記録媒体Paに対してリボンPbのインクを熱転写する加熱動作を行うものであるのに対し、印刷部3は、給紙部1から基幹路Li0及び分岐路2を経由して供給される記録媒体Paに対してリボンPbのインクを熱転写する加熱動作を行うものである。これら印刷部2,3で用いるリボンPbは、イエロー、マゼンタ、シアン等のインクや透明なコーティング剤(オーバーコート層)等の転写体をリボンの繰り出し方向に沿って順次塗布したものである。両印刷部2,3の構成は同様であるので、印刷部2を代表して説明する。
【0022】
印刷部2は、図2に示すように、サーマルヘッド20及びサーマルヘッド20に対向するプラテンローラ21と、リボンPbをサーマルヘッド20に対して繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段23とを有し、プラテンローラ21により記録媒体Paを厚み方向のいずれか一方に湾曲させた状態で搬送しつつ記録媒体Paに押し当てたサーマルヘッド20を加熱することで、リボンPbのインクを熱転写する。本実施形態では、印刷部2,3による記録媒体Paの湾曲方向は、サーマルヘッド20側からプラテンローラ21側に向かう方向に設定されている。
【0023】
図2に示すサーマルヘッド20及びプラテンローラ21は、相対接離自在に構成されて、ヘッドダウン状態とヘッドアップ状態とを切り換え可能にされている。ヘッドダウン状態は、図2及び図7(b)に示すように、サーマルヘッド20及びプラテンローラ21でリボンPb及び記録媒体Paを圧接した状態であり、ヘッドアップ状態は、図7(c)に示すように、サーマルヘッド20及びプラテンローラ21を離間させてリボンPb及び記録媒体Paを圧接から開放した状態である。
【0024】
リボン搬送手段23は、図2に示すように、サーマルヘッド20に繰り出すリボンPbを保持する供給側リボンローラ23aと、サーマルヘッド20に至ったリボンPbを巻き取る巻取側リボンローラ23bと、両リボンローラ23a,23bを回転駆動させるDCモータなどのリボン駆動部23c・23cとを有し、巻取側リボンローラ23bを回転駆動することで供給側リボンローラ23aからサーマルヘッド20に対しリボンPbを繰り出し、供給側リボンローラ23aを回転駆動することで繰り出されたリボンPbを巻き戻すように構成されている。
【0025】
反転手段5は、図1に示すように、印刷部2,3それぞれ単独での両面印刷を実現すべく設けられたもので、給紙部1を回転軸Cn回りに回転可能とし、図3及び図4に示すように給紙部1を第一の回転位置ro1に停止させた状態で記録媒体Paを供給可能にするとともに、図5に示すように給紙部1を第一の回転位置ro1から例えば180度回転させた第二の回転位置ro2に停止させた状態で記録媒体Paを供給可能にすることで、印刷部2,3に至る記録媒体Paの表裏を反転させるものである。反転手段5は、給紙部1を回転軸Cn回りに回転させる図示しないモータ等の電動部と、第一又は第二の回転位置ro1,ro2のうち所望の回転位置に位置決め状態で停止させる図示しない位置決め部とを含んで構成されている。
【0026】
制御手段6は、例えば図3に示すように、給紙部1を第一の回転位置ro1にし、給紙部1から印刷部2に記録媒体Paを供給し、印刷部2において記録媒体Paをその巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態でいずれか一方の面に対して加熱動作を行い、印刷部2での加熱動作が完了すると、記録媒体Paを給紙部1に巻き取り、図4に示すように給紙部1から印刷部3に記録媒体を供給し、印刷部3において記録媒体Paをその巻き癖の曲げ方向と同方向に湾曲させた状態でいずれか他方の面に対して加熱動作を行うという印刷に必要な一連の動作や他の所要の動作を行うために、各部1〜5の駆動を制御するものである。制御手段6は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に図示しない印刷制御処理ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して図2に示す印刷情報保持部61と、印刷制御部62と、優劣情報保持部63とを実現する。
【0027】
印刷情報保持部61は、図2に示すように、外部ホストコンピュータ等の上位制御部htから受け付けた印刷指令に基づき、表面及び裏面に設定した二画面分の所定領域のうちインクの転写が必要な印刷領域に関する情報を保持する。この印刷領域に関する情報は、図7(a)に示すように、一画面を、記録媒体Paの搬送方向と平行な方向である副走査方向及び記録媒体Paの搬送方向と直交する方向である主走査方向それぞれに沿ってマトリックス状に配置された複数ドットで表現し、表面及び裏面に設定された二画面分の所定領域Ar0のうちインクを転写すべき印刷領域Ar1を示した二画面分の印刷データ(マップ)である。このデータは、主走査方向に沿って一列に配列するドットを一つのラインとして、複数のラインで構成されている。図2のサーマルヘッド20は、ヘッド20に配列された図示しない発熱抵抗体への通電によってライン単位で印刷を行う。図7(a)に示す印刷データは、一例であるが、表面及び裏面に設定した二画面分の所定領域Ar0のうち表面の全領域にインクを転写し、裏面の全領域にインクを転写しない、いわゆる片面印刷を行う際の印刷データを模式的に表したものである。このデータは、ライン単位でいえば、表面のX0〜X1にあるライン(すなわち表面の全ライン)の主走査方向に印刷領域Ar1があり、裏面のX2〜X3にあるライン(すなわち裏面の全ライン)の主走査方向に印刷領域がないとも言える。本実施形態では、上位制御部htから受けた印刷指令に基づいて印刷領域に関する情報を処理に適切な形式に変換又は加工処理して保持しているが、上位制御部htから処理に適切な形式に変換又は加工されたデータを直接取得するように構成してもよい。
【0028】
図2の優劣情報保持部63は、記録媒体Paの両面f,bに対してサーマルヘッド20による加熱動作を行うにあたり、いずれの面に対する加熱動作を他方の面に対する加熱動作よりも優先して先に実行するかを示す優劣情報を保持する。これは、ロール状に巻回することで巻き癖の付いた記録媒体をその巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態で行ういずれか一方の面に対する加熱動作(図3参照)を、巻き癖の曲げ方向と同方向に湾曲させた状態で行ういずれか他方の面に対する加熱動作(図4参照)よりも先に実行した場合の方が、図4→図3のような逆順の場合に比べて巻き癖矯正の効果が強く発現するという経験則に基づくものである。図3〜図5に示すように、印刷部2,3での記録媒体Paの湾曲方向と記録媒体Paの巻き癖による曲げ方向との関係は、使用する印刷部と給紙部1の回転位置とに応じて決まるため、優劣情報保持部63は、図6に示すように、優であるか劣であるかを示す優劣フラグと使用印刷部と給紙部の回転位置とを関連付けた優劣情報を予め記憶している。この優劣情報の具体例は、同図に示すように、使用印刷部が印刷部2で且つ給紙部の回転位置が第一の回転位置ro1である場合の優先フラグは「優」であり、使用印刷部が印刷部3で且つ給紙部の回転位置が第一の回転位置ro1である場合の優先フラグは「劣」である。
【0029】
図2の印刷制御部62は、記録媒体Paのサーマルヘッド20への給紙動作、サーマルヘッド20の昇降、及び、記録媒体Paの搬送方向(副走査方向)に対する記録媒体Paの搬送を関連付けたサーマルヘッド20の加熱動作を印刷情報保持部61の保持する印刷領域Ar1に関する情報に基づいて各部1〜5の制御を通じて司るものである。
【0030】
この印刷制御部62の動作について、図3及び図4に示すように給紙部1の回転位置を第一の回転位置ro1に固定した状態で印刷部2及び印刷部3を使用し、図7(a)に例示する印刷データに基づく印刷動作を行う場合を例に説明する。まず、印刷制御部62は、優劣情報保持部63の保持する優劣情報に基づいて印刷部2での表面fの印刷を印刷部3での裏面bの印刷よりも優先して先に実行すると判定し、図3に示すように、給紙部1から印刷部2に記録媒体Paを供給し、図7(b)に示すように印刷部2において記録媒体Paをその巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態で表面fの全ライン(X0〜X1)に対してインクの熱転写を伴う加熱動作を行う。この加熱動作が終了すると、図7(c)に示すようにサーマルヘッド20をヘッドアップ状態にし、記録媒体Paを給紙部1に巻き取り、図4に示すように給紙部1から印刷部3に記録媒体Paを供給し、図8(d)に示すようにインクの熱転写の必要のない裏面bの全ライン(X2〜X3)に対して加熱動作を行う。この加熱動作では、リボンPbのインクが熱転写しない程度の弱い熱量、すなわちインクを熱転写する場合の熱量よりも低減させた熱量で行う。
【0031】
ここで、裏面bの全ライン(X2〜X3)での加熱動作では、インクが記録媒体Paに転写されないものの、図8(d)→図8(e)のようにリボンPbが記録媒体Paと共に搬送されてしまう。そこで、加熱動作が終了すると、図8(f)に示すように、使用されていないリボンPbが無駄になることを防止してリボンコストを低減するために、インクの熱転写を伴わない加熱動作によって搬送された距離Y1分(図7(a)参照)、リボンPbをヘッドアップ状態でリボン搬送手段23により巻き戻し、印刷動作に関する処理を終了する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のサーマルプリンタは、ロール状に巻回した記録媒体Paを厚み方向のいずれか一方に湾曲させた状態で搬送しつつ記録媒体Paに圧接したサーマルヘッド20を加熱することでリボンPbのインクをライン単位で熱転写する両面印刷可能なサーマルプリンタであって、表面f及び裏面bに設定した二画面分の所定領域Ar0のうちインクの転写が必要な印刷領域Ar1に関する情報を保持する印刷情報保持部61と、記録媒体Paの搬送を関連付けたサーマルヘッド20の加熱動作を印刷情報保持部61の保持する情報に基づき司る印刷制御部62とを具備し、印刷制御部62は、印刷情報保持部61の保持する情報に基づいて、記録媒体Paの搬送方向に直交する主走査方向に印刷領域Ar1のあるラインではインクの熱転写を伴う加熱動作を行う一方、主走査方向に印刷領域Ar1がないラインではインクの熱転写を伴わない加熱動作を行う。
【0033】
インクの熱転写を伴わない加熱動作は、インクが記録媒体に転写されないように記録媒体を加熱することを意味し、例えばインクが熱転写されない程度の弱い熱量で行う加熱動作や、インク以外の透明なコーティング剤を熱転写する加熱動作が挙げられる。
【0034】
この構成によれば、片面印刷を始めとする表面f及び裏面bに設定した二画面分の所定領域Ar0のうち一部の印刷領域Ar1にしかインクの熱転写(印刷)を行わない場合でも、所定領域Ar0を構成するライン全体すなわち記録媒体Paの両面に加熱動作を行うことになるので、ロール状に巻回することで記録媒体Paに付いた巻き癖を新たな矯正機構を追加することなく、両面印刷時と同様に巻き癖を矯正する効果を発揮させて、巻き癖を適切に矯正することが可能となる。
【0035】
記録媒体Paの両面に対して加熱動作を行うにあたり、巻き癖を弱める方向に湾曲させた状態となる面への加熱動作を、巻き癖を強める方向に湾曲させた状態となる面への加熱動作よりも先に実施した方が、矯正効果が優れているという経験則がある。そこで、本実施形態では、印刷制御部62は、加熱動作を記録媒体Paの両面に対して実行するにあたり、ロール状に巻回することで巻き癖の付いた記録媒体Paをその巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態で行ういずれか一方の面(表面f)に対する加熱動作を、巻き癖の曲げ方向と同方向に湾曲させた状態で行ういずれか他方の面(裏面b)に対する加熱動作よりも優先して先に実行するので、巻き癖を弱める方向での加熱動作を先に実施することになり、上記経験則に基づいて巻き癖の矯正効果を適切に発揮させることが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0037】
例えば、本実施形態では、図7(a)に示すように、主走査方向に印刷領域Ar1のないライン(X2〜X3)で行うインクの熱転写を伴わない加熱動作として、インクが熱転写されない程度の弱い熱量で加熱しているが、インク以外の透明なコーティング剤(オーバーコート層)を熱転写するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、優劣情報を用いて両面のうち先に加熱動作を行う面を決定しているが、記録媒体の巻き癖矯正よりも全体の印刷処理速度を優先する場合等の事情があるには、かかる事情に応じていずれの面に対する加熱動作を先に実施してもよい。例えば、ロール状に巻回することで巻き癖の付いた記録媒体をその巻き癖の曲げ方向と同方向に湾曲させた状態で行ういずれか一方の面に対する加熱動作を先に行い、その後、巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態で行ういずれか他方の面に対する加熱動作を行うようにしてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態では、印刷部すなわちサーマルヘッド20を複数設けて両面印刷を行っているが、単一のサーマルヘッドで両面印刷を行う場合にも本発明を適用することができる。単一のサーマルヘッドで両面印刷を実現する構成として、例えば図3に示すように印刷部2において表面fへの印刷を行い、その後、給紙部1を回転させ、図5に示すように印刷部2のサーマルヘッド20に対して裏面bが対面するように記録媒体Paの姿勢を反転させて両面印刷を実現するように構成したものが挙げられる。
【0040】
その他、本実施形態では、記録媒体Paの表面f及び裏面bに設定した二画面分の所定領域Ar0を記録媒体Paの幅方向全域に亘り設定しているが、幅方向の一部に設定する等、所定領域の設定は適宜変更可能である。
【0041】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
20…サーマルヘッド
61…印刷情報保持部
62…印刷制御部
Pa…記録媒体
f…記録媒体の表面
b…記録媒体の裏面
Pb…リボン
Ar0…所定領域
Ar1…印刷領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回した記録媒体を厚み方向のいずれか一方に湾曲させた状態で搬送しつつ記録媒体に圧接したサーマルヘッドを加熱することでリボンのインクをライン単位で熱転写する両面印刷可能なサーマルプリンタであって、
表面及び裏面に設定した二画面分の所定領域のうちインクの転写が必要な印刷領域に関する情報を保持する印刷情報保持部と、記録媒体の搬送を関連付けたサーマルヘッドの加熱動作を前記印刷情報保持部の保持する情報に基づき司る印刷制御部とを具備し、
前記印刷制御部は、前記印刷情報保持部の保持する情報に基づいて、記録媒体の搬送方向に直交する主走査方向に印刷領域のあるラインではインクの熱転写を伴う加熱動作を行う一方、主走査方向に印刷領域がないラインではインクの熱転写を伴わない加熱動作を行うことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記印刷制御部は、前記加熱動作を記録媒体の両面に対して実行するにあたり、ロール状に巻回することで巻き癖の付いた記録媒体をその巻き癖の曲げ方向と逆方向に湾曲させた状態で行ういずれか一方の面に対する加熱動作を、巻き癖の曲げ方向と同方向に湾曲させた状態で行ういずれか他方の面に対する加熱動作よりも優先して先に実行する請求項1に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171254(P2012−171254A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36381(P2011−36381)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】