説明

サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ

【課題】 高速かつ鮮明な印刷を可能とするサーマルプリントヘッドを提供すること。
【解決手段】 サーマルプリントヘッドA1は、基板1と、基板1の一面に形成された抵抗体層2と、制御部7と、基板1の抵抗体層2とは反対側に位置する他方の面に形成された熱電変換素子4と、を備え、制御部7は、熱電変換素子4を用いて抵抗体層2を冷却するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタは、携帯デバイス、小売業、娯楽用途および医療業などにおいて、インクジェット方式やレーザープリント方式、あるいはインクリボン方式に対して優れた手法として広く用いられている。その利点としては、たとえば、素早い動作、複雑でない構造に起因して軽量化が可能であること、インク、トナー、リボンの交換が不要であること、などが挙げられる。これらの利点により、サーマルプリンタおよびサーマルプリントヘッドは、様々な分野において多種多様なデバイスに用いられるに至っている。特に、サーマルプリンタは、他の方式のプリンタと比べて、事務所や家庭においてより広い範囲の温度にさらされる可能性がある。サーマルプリンタは、熱によって感熱紙に画像を印刷するものであるため、サーマルプリンタに備えられるサーマルプリントヘッドは、環境温度が顕著に変化するような状況下であっても、印刷品質を劣化させることなく信頼性が高く素早い印刷を達成することが求められる。
【0003】
図25は、従来のサーマルプリントヘッドの一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示されたサーマルプリントヘッドX1は、基板101、抵抗体層102、ヒートシンク105、ドライバIC106およびプラテンローラ120を備えている。サーマルプリントヘッドX1を用いた画像印刷においては、抵抗体層102の一部が発熱要素を構成し、この一部に電力が供給されることによって熱が生じ、この発熱によって印刷画像を構成するドットが印刷される。複数の連続するドットが印刷される場合、抵抗体層102の上記発熱要素には、電力がオンタイムとオフタイムとが交互に生じるように繰り返し供給され、このオンタイムの間に感熱紙121にドットの印刷がなされる。連続するドットが長い場合、抵抗体層102に熱が篭る可能性がある。特に、電力を供給するオンタイムとオフタイムの切替速度が増速されると、抵抗体層102は、熱が篭る度合いに対抗しうる程度に熱を放散することが成し得ないため、抵抗体層102が増速された切替速度に追従することが困難となる。
【0004】
抵抗体層102の上記発熱要素を電力によって強制的に発熱させることとは対照的に、抵抗体層102の上記発熱要素の冷却は、ここからの熱を基板101に伝え、ヒートシンク105から大気へと放熱することによってなされる。言い換えると、抵抗体層102の発熱要素の冷却に要する時間は、抵抗体層102の熱容量や、基板101およびヒートシンク105の熱容量および熱伝導率、さらに大気の温度といった要因に左右される自然冷却に依存する。たとえば、抵抗体層102と基板101との熱容量が、上述した切替速度に追従可能な程度に放熱するには大きすぎる場合、印刷ドットに尾引きやぼやけなどが生じるおそれがある。抵抗体層102と基板101との熱容量が小さいとしても、ヒートシンク105が抵抗体層102や基板101からの熱を十分に早く放散できないと、同じ問題が生じうる。また、放散された熱を生じさせるために使われた電力は、浪費となってしまう。
【0005】
図26は、抵抗体層102の平面図である。抵抗体層102の抵抗体部分103は、感熱紙に一つのドットを印刷するために用いられる一つの発熱要素を構成している。抵抗体部分103は、矩形状とされている。一つのドットを印刷するにあたり、ひとつのピークを持つパルス電流が対応する個別電極104aからこの抵抗体部分103を通して共通電極104bへと送られ、電流は紙面右方から左方へと向かうX方向に流れる。この方向Xは、印刷中に感熱紙が送られる方向である。Y方向は、抵抗体層102の複数の抵抗体部分103が基板101上において並べられた方向である。Y方向は、主走査方向に相当し、X方向は、副走査方向に相当する。電流が流れると、抵抗体部分103が加熱し、感熱紙に濃いドットを印刷する。抵抗体部分103のY方向両端部分は、隣り合う抵抗体部分103どうしの隙間に面しているため、Y方向中央部分よりも熱がより早く放散する。このため、抵抗体部分103の中央部分は、温度蓄積がその他の部分よりも生じやすい。
【0006】
図27は、抵抗体部分103が加熱した場合の典型的な温度分布を示している。横軸は温度であり、縦軸は抵抗体部分103のY方向位置である。感熱紙がX方向に送られることによって温度蓄積がもっとも大となる中央部分は、抵抗体部分103のその他の部分と比べてより濃い像を印刷することとなる。
【0007】
図28は、上述した状態の抵抗体部分103によって印刷されたドットの一例を示している。印刷された像の後縁は、いわゆる尾引きあるいはぼやけと称される状態となっている。これは、抵抗体部分103の中央部分が図27に示した温度分布であることにより、電力供給が停止した後に冷却されるまでにより長い時間を要することに起因する。これらの尾引きやぼやけは、印刷品質を劣化させうる。一般的な対策としては、尾引きやぼやけが無視できる程度まで、印刷速度を遅くすることが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−205822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高速かつ鮮明な印刷を可能とするサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供することをその課題とする。また、電力の浪費を抑制することが可能なサーマルプリンタを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、上記基板の一面に形成された抵抗体層と、制御部と、上記基板の上記抵抗体層とは反対側に位置する他方の面に形成された熱電変換素子と、を備え、上記制御部は、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却するように構成されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記熱電変換素子は、上記基板の上記他方の面に直接接し、半導体の一方側が電気的および機械的に接続された上部電極、および下部基板に直接接し、上記半導体の他方側が電気的および機械的に接続された下部電極、を有し、上記上部電極および上記下部電極は、印刷、スパッタリング、デポジッティングおよびめっきのいずれかによって上記基板および上記下部基板に形成された厚さ2μm以下の金属薄膜からなる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層に隣接して配置されたセンサを備え、上記制御部は、上記センサによって計測された上記抵抗体層の温度に基づいて、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を加熱または冷却することにより、上記抵抗体層の温度をあらかじめ設定された温度範囲内に維持するように構成されている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記熱電変換素子が、ヒートシンクに取り付けられている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記抵抗体層に対する電力に基づいて上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、単位時間あたりに上記抵抗体層に供給された電力量があらかじめ定められた電力量を超えたときに、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却する。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を事前に冷却する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却するに際し、上記熱電変換素子に与える電圧を、上記抵抗体層に供給される電力に基づいて連続的に変化させる構成とされている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層に隣接して配置されたセンサを備え、上記制御部は、上記センサによって計測された上記抵抗体層の温度に基づいて、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を加熱または冷却することにより、上記抵抗体層の温度をあらかじめ設定された温度範囲内に維持するように構成されている。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記熱電変換素子は、ヒートシンク上に配置されている。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記熱電変換素子の上記抵抗体層側と反対側との温度差が十分な大きさとなったときに上記熱電変換素子によって生成される、あらかじめ定められた量の電流を検知すると、上記抵抗体層を冷却する状態へと上記熱電変換素子を切り替える。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、単位時間あたりに上記抵抗体層に供給された電力量があらかじめ定められた電力量を超えたときに、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記熱電変換素子の上記反対側に配置されたセンサをさらに備え、上記制御部は、上記センサによって計測された上記熱電変換素子の上記反対側の温度があらかじめ定められた第1温度を下回り、かつ上記熱電変換素子が発電していないときに、上記熱電変換素子によって上記抵抗体層を加熱するとともに、上記温度があらかじめ定められた第2温度を超え、かつ上記熱電変換素子によってあらかじめ定められた量の電流が生じているときに、上記熱電変換素子によって上記抵抗体層を冷却することにより、上記抵抗体層の温度をあらかじめ定められた温度範囲内に維持する。
【0023】
本発明の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、上記基板の一面に形成され、かつ複数の抵抗体層領域に分割された抵抗体層であって、上記各抵抗体層領域がさらに、各々が発熱要素を構成する複数の抵抗体部分に分割されている、抵抗体層と、上記基板の上記抵抗体層とは反対側に位置する他方の面に形成された複数の熱電変換素子と、制御部と、を備え、上記複数の熱電変換素子は、各々が上記基板の上記他方の面のうち上記複数の抵抗体層領域のいずれかに対応する位置に形成されており、上記制御部は、上記複数の熱電変換素子のうち対応するものによって上記各抵抗体層領域を冷却するように構成されている。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の熱電変換素子の各々は、上記基板の上記他方の面に直接接し、半導体の一方側が電気的および機械的に接続された上部電極、および下部基板に直接接し、上記半導体の他方側が電気的および機械的に接続された下部電極、を有し、上記上部電極および上記下部電極は、印刷、スパッタリング、デポジッティングおよびめっきのいずれかによって上記基板および上記下部基板に形成された厚さ2μm以下の金属薄膜からなる。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、各々が上記複数の抵抗体層領域のいずれかに隣接して上記基板上に配置された複数のセンサを備え、上記各センサは、上記複数の抵抗体層領域のうち対応するものの温度を計測し、上記各センサによって計測された計測温度が、あらかじめ定められた温度範囲から外れたときに、上記複数の熱電変換素子のうち対応するものが、上記計測温度を上記温度範囲内に維持するように上記複数の熱電変換素子のうち対応するものを加熱または冷却する。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の熱電変換素子は、ヒートシンクに取り付けられている。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記各抵抗体層領域に対する電力に基づいて、上記複数の熱電変換素子のうち対応する熱電変換素子を用いて当該抵抗体層領域を冷却する。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、単位時間あたりに上記複数の抵抗体層領域のいずれかに供給された電力量があらかじめ設定された量を超えたときに、この抵抗体層領域に対応する上記熱電変換素子を用いてこの抵抗体層領域を冷却する。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記複数の抵抗体層領域のいずれかに対応する上記熱電変換素子を用いて、この抵抗体層領域を事前に冷却する。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記制御部は、上記複数の熱電変換素子のうち対応する熱電変換素子を用いて上記各抵抗体層領域を冷却するに際し、当該対応する熱電変換素子に与える電圧を、上記抵抗体層領域に対する電力に基づいて連続的に変化させる構成とされている。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態においては、各々が上記複数の抵抗体層領域のいずれかに隣接して上記基板上に配置された複数のセンサを備え、上記各センサは、上記複数の抵抗体層領域のうち対応するものの温度を計測し、上記各センサによって計測された計測温度が、あらかじめ定められた温度範囲から外れたときに、上記複数の熱電変換素子のうち対応するものが、上記計測温度を上記温度範囲内に維持するように、上記複数の抵抗体層領域のうち対応するものを加熱または冷却する。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の熱電変換素子は、ヒートシンク上に配置されている。
【0033】
本発明の第3の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本発明の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドと、エネルギー蓄積装置と、を備え、上記熱電変換素子は、上記抵抗体層と上記熱電変換素子のうち上記抵抗体層が配置された側とは反対側との温度差が十分に大きい場合に、上記抵抗体層によって生成された熱を電力に変換し、この変換された電力は、上記エネルギー蓄積装置に蓄えられる。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層に隣接して配置され、上記抵抗体層の温度を計測するセンサをさらに備え、上記制御部は、上記センサによって計測された計測温度に基づいて上記エネルギー蓄積装置に上記電力を蓄えるように構成されている。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記熱電変換素子は、加熱モード、中立モード、変換モード、および冷却モード、のいずれかの状態で動作し、上記加熱モードは、上記計測温度があらかじめ定められた第1温度よりも低いときに上記抵抗体層を加熱するために用いられ、上記中立モードは、上記計測温度が上記第1温度とあらかじめ定められた第2温度との間にあり、上記熱電変換素子が熱を電力に変換しうる臨界温度差よりも上記温度差が小さいときに用いられ、上記変換モードは、上記計測温度が上記第1温度と上記第2温度の間にあり、かつ上記温度差が上記臨界温度差以上であるときに、熱を電力に変換するため、および電力を上記エネルギー蓄積装置に蓄えるために用いられ、上記冷却モードは、上記計測温度が上記第2温度よりも高いときに上記抵抗体層を冷却するために用いられる。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1温度および上記第2温度は、雰囲気温度に依存する。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記エネルギー蓄積装置があらかじめ定められた蓄積レベルに達したときに、上記電力が、このサーマルプリンタの駆動を補助するために使用される。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記サーマルプリントヘッドにヒートシンクが取り付けられている。
【0039】
本発明の第4の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本発明の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドと、エネルギー蓄積装置と、を備え、上記複数の熱電変換素子は、対応する上記抵抗体層領域と対応する上記熱電変換素子の反対側との温度差が熱を電力に変換するのに十分な大きさとなったときに、対応する上記抵抗体層領域によって生成された熱を電力に変換し、上記変換された電力は、上記エネルギー蓄積装置に蓄えられる。
【0040】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各抵抗体層領域に隣接して配置され、対応する抵抗体層領域の温度を計測するセンサを備え、上記制御部は、上記センサによって計測された計測温度に基づいて上記エネルギー蓄積装置に上記電力を蓄えるように構成されている。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記熱電変換素子は、加熱モード、中立モード、変換モード、および冷却モード、のいずれかの状態で動作し、上記加熱モードは、上記計測温度があらかじめ定められた第1温度よりも低いときに上記抵抗体層を加熱するために用いられ、上記中立モードは、上記計測温度が上記第1温度とあらかじめ定められた第2温度との間にあり、上記熱電変換素子が熱を電力に変換しうる臨界温度差よりも上記温度差が小さいときに用いられ、上記変換モードは、上記計測温度が上記第1温度と上記第2温度の間にあり、かつ上記温度差が上記臨界温度差以上であるときに、熱を電力に変換するため、および電力を上記エネルギー蓄積装置に蓄えるために用いられ、上記冷却モードは、上記計測温度が上記第2温度よりも高いときに上記抵抗体層を冷却するために用いられる。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1温度および上記第2温度は、雰囲気温度に依存する。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電力は、上記エネルギー蓄積装置があらかじめ定められた蓄積レベルに達したときに、このサーマルプリンタの駆動を補助するために使用される。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記サーマルプリントヘッドにヒートシンクが取り付けられている。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層は、各々が印刷において印刷対象物にドットを形成するための熱を発する発熱要素を構成する複数の抵抗体部分を有しており、上記各抵抗体部分は、上記印刷対象物が送られる方向である副走査方向における長さが、この副走査方向に対して直角である主走査方向において中央部分が両側部分よりも小となっている。
【0046】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各抵抗体部分は、副走査方向において離間する2つの端縁の少なくともいずれかが内方に凹む撓み形状とされている。
【0047】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記撓み形状とされた上記端縁は、副走査方向において上記印刷対象物が送られる上流側に位置する。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各抵抗体部分は、開口を有する。
【0049】
このような構成によれば、上記熱電変換素子によって上記基板からの放熱を促進することができる。したがって、上記サーマルプリントヘッドを用いてより高速かつより鮮明な印刷を行うことができる。
【0050】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【図3】他の構成例についての図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【図4】他の構成例についての図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【図5】図1のサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
【図6】図1のサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
【図7】図1のサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
【図8】図1のサーマルプリントヘッドを示すシステムブロック図である。
【図9】図1のサーマルプリントヘッドの他の構成例を示すシステムブロック図である。
【図10】本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態に基づくサーマルプリンタを示す斜視図である。
【図12】図11のサーマルプリンタを示すシステムブロック図である。
【図13】図11のサーマルプリンタを示すシステムブロック図である。
【図14】図11のサーマルプリンタを示すシステムブロック図である。
【図15】図11のサーマルプリンタの動作モードを示す表である。
【図16】本発明の第4実施形態に基づくサーマルプリンタを示す斜視図である。
【図17】本発明の第5実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
【図18】抵抗体部分の複数の構成例を示す要部平面図である。
【図19】図17のサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【図20】本発明の第6実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
【図21】抵抗体部分の開口の複数の構成例を示す要部平面図である。
【図22】サーマルプリントヘッドA3の他の構成例を示す要部平面図である。
【図23】サーマルプリントヘッドA4の他の構成例を示す要部平面図である。
【図24】本発明の第7実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
【図25】従来のサーマルプリントヘッドの一例を示す断面図である。
【図26】図25のサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
【図27】図25のサーマルプリントヘッドの抵抗体部分を示す平面図およびその温度分布を示すグラフである。
【図28】図25のサーマルプリントヘッドによる印刷ドットの一例を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0053】
図1は、本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、基板1、抵抗体層2、制御部7、熱電変換素子4およびヒートシンク5を備えている。
【0054】
図2は、基板1の表面に形成されたグレーズ層76と、抵抗体層2および電極とを示している。同図に示された構成は、いわゆる薄膜タイプのサーマルプリントヘッドとして形成されたものである。基板1は、セラミックス、樹脂、金属、ガラスなどからなる。上記グレーズ層76は、基板1の表面において、主走査方向に延びるように形成されており、断面形状が上方に膨らんでいる。なお、このグレーズ層76は、基板1の全面を覆うように形成されていてもよい。この場合、たとえば、図2に図示された部分が断面膨出状であり、これ以外の部分は平坦な層とされる。抵抗体層2は、グレーズ層76および基板1上に形成されており、たとえば抵抗体材料を用いたスパッタリングによって形成される。スパッタリングの手法によれば、抵抗体層2の厚さは、たとえば0.05〜0.2μm程度とされる。上記電極は、抵抗体層2の両側から延びる部分を有している。上記電極は、たとえば抵抗体層2を構成するための抵抗体薄膜が形成された後に、この抵抗体薄膜を覆うようにスパッタリングなどによって金属薄膜が形成され、さらにエッチングなどを用いたパターニングを経ることによって形成される。このほかに、たとえばCVDなどが抵抗体層2を形成するために用いられる。図3は、抵抗体層2の他の例を示している。本例は、いわゆる厚膜タイプのサーマルプリントヘッドと称される構成である。抵抗体層2は、グレーズ層76上において、上記電極を跨ぐように主走査方向に延びた形状とされている。このような抵抗体層2は、たとえば抵抗体材料を含むペーストを印刷した後に、これを焼成することによって形成される。図4は、抵抗体層2のさらに他の例を示している。本例においては、副走査方向両側から延びる電極が、グレーズ層76に対して沈降しており、上記電極の上面とグレーズ層76の上面とがほぼ面一となっている。この電極は、たとえばAuなどの金属材料を含むペーストを印刷した後に、これを焼成することによって得られる。抵抗体層2は、副走査方向量側から延びる2つの電極の双方の先端に重なり、かつグレーズ層76の一部を覆っている。この抵抗体層2は、たとえばスパッタリングなどの薄膜形成手法とエッチングなどのパターニングによって形成される。抵抗体層2が薄いほど、抵抗体層2の熱容量が小さくなる。これは、抵抗体層2の加熱および冷却をより迅速に行うのに都合がよい。
【0055】
図5に示すように、熱電変換素子4は、基板1のうち抵抗体層2が形成された面とは反対側の面に、直接接触するように形成されている。熱電変換素子4としては、電熱装置、ヒートポンプ、ペルティエ素子、熱電変換器などを採用できる。図5に示すように、本実施形態においては、熱電変換素子4は、ペルティエ効果に基づくペルティエ素子によって構成されている。
【0056】
図6は、熱電変換素子4の動作を説明するための要部概略断面図である。本図は、ペルティエ素子としての熱電変換素子4の一部分を示しており、N型半導体10、P型半導体11を備えている。N型半導体10の図中上端は、上部電極8の一方側部分に接続されている。上部電極8の他方側部分には、P型半導体11が接続されている。上部電極8は、基板1の図中下面に直接接触するように形成されている。N型半導体10およびP型半導体11の図中下端は、下部基板12の上面に直接接触するように形成された、対応する下部電極9に接続されている。なお、下部基板12は、熱伝導率が高い材質によって形成されることが好ましく、ヒートシンク5に接触させられてもよい。上部電極8および下部電極9は、たとえば、Au、Ag、Cu、Alなどの金属薄膜からなり、その厚さがたとえば2μm未満とされており、印刷、スパッタリング、堆積法、めっきなどの手法によって形成される。同図に示された直流電源の正極が図中左側の対応する下部電極9を介してN型半導体10に接続され、上記直流電源の負極が図中右側の対応する下部電極9を介してP型半導体11に接続されると、N型半導体10およびP型半導体11の双方を図示された方向に流れる電流が生じる。互いに異なる材質からなるN型半導体10および上部電極8の接合部を電流が流れることにより、上部電極8からN型半導体10および下部電極9を通して下部基板12へと電子が熱エネルギーを移動させるペルティエ効果が生じ、上部電極8から熱が奪われる。同様に、互いに異なる材質からなるP型半導体11および上部電極8の接合部を電流が流れることにより、上部電極8からP型半導体11および下部電極9を通して下部基板12へと正孔が熱エネルギーを移動させるペルティエ効果が生じ、上部電極8から熱が奪われる。このように、N型半導体10およびP型半導体11それぞれの電子と正孔の双方が、ペルティエ効果による熱移動に寄与している。上記電源の極性を反対とした場合、ペルティエ効果によって下部基板12から奪われた熱が基板1へと移動される。図7に示すように、基板1の温度が下部基板12の温度よりも高い場合、この温度差によって上部電極8の電子および正孔のそれぞれが、基板1の熱を上部電極8を介してN型半導体10およびP型半導体11へと移動させ、これにより同図に示す方向に電流が生じる。この電流は、サーマルプリントヘッドA1の駆動、あるいはコンデンサ、ニッケルカドミウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、リチウムイオンバッテリー、リチウムイオンポリマーバッテリーなどの充電式電源の蓄電などに用いることができる。
【0057】
図1および図5に示したように、熱電変換素子4は、複数の上部電極8、複数の下部電極9、複数のN型半導体10および複数のP型半導体11を備えている。このような構成は、本発明で言う熱電変換素子の一例にすぎない。
【0058】
図5に示すように、上部電極8および下部電極9は、金属薄膜によって形成可能であり、N型半導体10およびP型半導体11と機械的および電気的に接合され、サーマルプリントヘッドA1の熱伝導率を高め、熱容量を縮小するのに寄与する。N型半導体10は、ある下部電極9とある上部電極8との間に接続され、この上部電極8はP型半導体11に接続され、このP型半導体11の他端は他の下部電極9に接続されている。N型半導体10およびP型半導体11は、対応する上部電極8および下部電極9に対して、たとえばはんだによって接合される。図5に示された方式で配置されたN型半導体10およびP型半導体11は、ペルティエ素子を形成しうる。これらの半導体を他の方式に基づいて配置することによりペルティエ素子を形成可能であることはもちろんである。下部基板12の図中下面は、ヒートシンク5の一方側に接続されてもよい。ヒートシンク5の他方側は、サーマルプリンタの筐体に接続されてもよい。このような構成によれば、放熱効果をより高めることができる。このような構成の他に、N型半導体10およびP型半導体11は、上部電極8および下部電極9に対して、直接ボンディングされてもよいし、導電接着剤を介して接合されてもよい。
【0059】
本実施形態においては、サーマルプリントヘッドA1は、センサ3をさらに備えている。センサ3は、たとえば基板1の図中上面のうち抵抗体層2に隣接した領域に配置される。センサ3は、たとえばサーミスタ、熱電対、ICなどからなる。センサ3は、抵抗体層2とドライバIC6とを接続し電力を供給するための電極の一部が延長された部位である金属層上に配置されてもよい。このような金属層は、セラミックス、樹脂、ガラスなどの基板1を形成する材質よりも熱伝導率が高いため、上記金属層上にセンサ3を配置することにより、抵抗体層2の温度をより早く計測することが可能である。
【0060】
図8は、サーマルプリントヘッドA1のシステムブロック図である。センサ3は、制御部7に接続されている。センサ3によって計測された抵抗体層2の温度は、制御部7にフィードバックされ、制御部7は、この温度があらかじめ定められた温度範囲内にあるかを判断する。計測された温度が上記温度範囲を超えている場合、制御部7は、熱電変換素子4によって抵抗体層2を冷却する。これにより、たとえば、大気温度が高すぎるために、後述する事前冷却を行なってもサーマルプリントヘッドA1に熱がこもりやすいような場合であっても、抵抗体層2の温度を上記温度範囲に維持することができる。熱電変換素子4に与えられる電圧は、より強力な冷却を得ようとすると、それに応じて増加する。
【0061】
制御部7は、単位時間あたりに抵抗体層2に供給された電力量があらかじめ定められた量を超えると、基板1のうち抵抗体層2付近の領域を熱電変換素子4によって事前に冷却するように構成されている。単位時間あたりに抵抗体層2に供給された電力量は、制御部7、CPUなどによって監視することができる。
【0062】
図8は、制御部7のブロックダイアグラムの一例を示しており、単位時間あたりに抵抗体層2に供給された電力量の監視、言い換えると抵抗体層2に供給される電力の監視が可能に構成されている。制御部7は、ドライバIC6に接続されている。ドライバIC6は、抵抗体層2に印刷ドットを形成しうる電力を供給する。制御部7は、熱電変換素子4に接続されている。制御部7は、コントローラ70、計数器71および比較器72を具備している。コントローラ70は、センサ3、熱電変換素子4などの外部素子との信号送受信や、計数器71および比較器72との信号授受、さらにサーマルプリントヘッドA1全体を駆動制御するための制御処理を行う。計数器71は、単位時間あたりにドライバIC6に送られたドット生成信号の数を計数する。単位時間あたりにドライバIC6に送られたドット生成信号の数があらかじめ定められた数を超えると、制御部7は、熱電変換素子4によって抵抗体層2を事前に冷却する。この事前冷却は、抵抗体層2の温度が印刷を阻害しうるほどの温度に至る前であっても、抵抗体層2に熱が篭ることを抑制するのに寄与し、従来の自然放熱あるいは従来の強制冷却に依存する構成と比べて印刷速度を向上させることができる。計数器71および比較器72は、制御部7の外部に設けられていてもよい。また、制御部7は、基板1の外部に配置されていてもよい。
【0063】
図9は、単位時間あたりの電力量を監視する場合の構成例を示している。制御部7は、上述した計数器71および比較器72に代えて、電荷蓄積器73および電圧比較器74を備えている。電荷蓄積器73は、コンデンサなどであり、ドライバIC6にドット生成信号が送られる毎に電荷が蓄積されるものである。電荷蓄積器73の電圧は、電荷蓄積器73に蓄積される電荷量に応じて増加する。この電圧は、電圧比較器74によって定められた頻度で定期的に監視される。この電圧があらかじめ定められた電圧を超えると、制御部7は、熱電変換素子4によって抵抗体層2を事前に冷却する。電荷蓄積器73および電圧比較器74は、制御部7の外部に設けられてもよいことはもちろんである。図8および図9に示された双方の構成例において、熱電変換素子4を作動または停止させることは、徐々に状態を変更させる方法、段階的に変更させる方法など、種々の適切な方法によってなされる。熱電変換素子4に印加される電圧は、継続的に変化し、たとえば、抵抗体層2に供給される電力に基づいて変化する。
【0064】
次に、サーマルプリントヘッドA1の作用について説明する。
【0065】
本実施形態によれば、基板1の図中下面に熱電変換素子4が直接接している。これにより、熱電変換素子4によって基板1からの放熱を促進することができる。したがって、サーマルプリントヘッドA1を用いてより高速かつより鮮明な印刷を行うことができる。
【0066】
上部電極8は、基板1に直接接触しており、比較的厚さが薄い金属薄膜からなる。これにより、基板1からの熱をより効果的に上部電極8からN型半導体10およびP型半導体11に伝えることができる。センサ3を備え、このセンサ3による計測温度を制御部7にフィードバックすることにより、抵抗体層2の温度を所定の温度範囲内に維持することが可能であり、サーマルプリントヘッドA1をより安定して駆動させることができる。
【0067】
熱電変換素子4をヒートシンク5上に配置することは、熱電変換素子4からヒートシンク5を経由して、抵抗体層2からの熱を大気に放散するのに適している。
【0068】
制御部7によって抵抗体層2に供給された電力量または電力を監視し、これに基づいて抵抗体層2を冷却することにより、不当な温度蓄積がサーマルプリントヘッドA1に生じることをより確実に回避することができる。
【0069】
図10〜図24は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0070】
図10は、本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、複数の熱電変換素子4を備えている。基板1は、セラミックス、樹脂、金属、ガラスなどからなる。グレーズ層76は、基板1の表面において、主走査方向に延びるように形成されており、断面形状が上方に膨らんでいる。なお、このグレーズ層76は、基板1の全面を覆うように形成されていてもよい。この場合、たとえば、図示された部分が断面膨出状であり、これ以外の部分は平坦な層とされる。抵抗体層2は、複数の抵抗体層領域21に分割されている。各抵抗体層領域21は、複数の抵抗体部分22にさらに分割されている。各抵抗体部分22は、感熱紙にドットを印刷するための発熱要素を構成している。抵抗体層2は、上述した第1実施形態と同様の手法によって形成される。
【0071】
各熱電変換素子4は、上述した実施形態と同様に、基板1に直接接触するように形成されている。各熱電変換素子4は、複数の上部電極8、複数の下部電極9、複数のN型半導体10および複数のP型半導体11を備えている。上部電極8は、基板1に直接接触するように形成された金属薄膜によって形成されている。上部電極8は、基板1の図中下面に金属物質を印刷することによって形成可能であり、また、これ以外に、スパッタリング、CVD、めっきなどによって形成することができる。下部電極9は、下部基板12の図中上面に、印刷、スパッタリング、CVD、めっきなどによって金属薄膜を形成することによって構成されている。好ましくは、下部基板12は、熱伝導率が高い材質によって形成される。図10に示すように、複数の熱電変換素子4は、基板1の図中下面のうち各々が対応する抵抗体層領域21に対応する位置に取り付けられている。本実施形態においては、複数の抵抗体層領域21が主走査方向に並べられているため、複数の熱電変換素子4も主走査方向に並べられている。
【0072】
図5に示された構成例と同様に、上部電極8および下部電極9は、金属薄膜によって形成可能であり、N型半導体10およびP型半導体11と機械的および電気的に接合され、サーマルプリントヘッドA2の熱伝導率を高め、熱容量を縮小するのに寄与する。N型半導体10は、ある下部電極9とある上部電極8との間に接続され、この上部電極8はP型半導体11に接続され、このP型半導体11の他端は他の下部電極9に接続されている。N型半導体10およびP型半導体11は、対応する上部電極8および下部電極9に対して、たとえばはんだによって接合される。図5に示された方式で配置されたN型半導体10およびP型半導体11は、ペルティエ素子を形成しうる。これらの半導体を他の方式に基づいて配置することによりペルティエ素子を形成可能であることはもちろんである。下部基板12の図中下面は、ヒートシンク5の一方側に接続されてもよい。ヒートシンク5の他方側は、サーマルプリンタの筐体に接続されてもよい。このような構成によれば、放熱効果をより高めることができる。このような構成の他に、N型半導体10およびP型半導体11は、上部電極8および下部電極9に対して、直接ボンディングされてもよいし、導電接着剤を介して接合されてもよい。
【0073】
本実施形態においては、サーマルプリントヘッドA2は、複数のセンサ3をさらに備えている。各センサ3は、たとえば基板1の図中上面のうち対応する抵抗体層領域21に隣接した領域に配置される。本実施形態においては、複数の抵抗体層領域21の配置に対応して、複数のセンサ3は、主走査方向に沿って配列されている。各センサ3は、たとえば基板1の表面に形成されたサーミスタからなる。各センサ3は、対応する抵抗体層領域21とドライバIC6とを接続し電力を供給するための電極の一部が延長された部位である金属層上に配置されてもよい。このような金属層は、セラミックス、樹脂、ガラスなどの基板1を形成する材質よりも熱伝導率が高いため、上記金属層上にセンサ3を配置することにより、対応する抵抗体層領域21の温度をより早く計測することが可能である。センサ3は、制御部7に接続されている。センサ3によって計測された抵抗体層領域21の温度は、制御部7にフィードバックされ、制御部7は、この温度があらかじめ定められた温度範囲内にあるかを判断する。計測された温度が上記温度範囲を超えている場合、制御部7は、この抵抗体層領域21に対応する熱電変換素子4によってこの抵抗体層領域21を冷却する。これにより、たとえば、大気温度が高すぎるために、後述する事前冷却を行なってもサーマルプリントヘッドA2に熱がこもりやすいような場合であっても、抵抗体層領域21の温度を上記温度範囲に維持することができる。熱電変換素子4に与えられる電圧は、より強力な冷却を得ようとすると、それに応じて増加する。
【0074】
制御部7は、単位時間あたりにある抵抗体層領域21に供給された電力量があらかじめ定められた量を超えると、基板1のうちこの抵抗体層領域21付近の領域をこれに対応する熱電変換素子4によって事前に冷却するように構成されている。単位時間あたりに各抵抗体層領域21に供給された電力量は、上述した実施形態と同様に、制御部7、CPUなどによって監視することができる。
【0075】
このような実施形態によれば、主走査方向に並ぶ複数の抵抗体層領域21に対して、個別に冷却あるいは加熱操作を行うことができる。これにより、たとえば抵抗体層2の発熱に起因する温度蓄積に主走査方向におけるばらつきがあっても、冷却を必要な部位のみに対してより集中して行うことができる。
【0076】
図11は、本発明の第3実施形態に基づくサーマルプリンタを示している。同図に示されたサーマルプリンタB1は、サーマルプリントヘッドA1を備えている。サーマルプリントヘッドA1の各部の構成は、たとえば上述した実施形態において説明した構成とされている。さらに、サーマルプリンタB1は、蓄電コントローラ77および蓄電デバイス13を備えている。
【0077】
図12は、サーマルプリンタB1のシステムブロック図である。センサ3、熱電変換素子4、ドライバIC6および蓄電コントローラ77が、制御部7に接続されている。蓄電デバイス13は、蓄電コントローラ77に接続されている。
【0078】
蓄電デバイス13としては、電力を蓄積可能なあらゆるデバイスを用いることができる。蓄電デバイス13の例としては、コンデンサ、ニッケルカドミウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、リチウムイオンバッテリー、リチウムイオンポリマーバッテリーなどの充電式バッテリーやこれらの組み合わせが挙げられる。リチウムイオンバッテリーとリチウムイオンポリマーバッテリーとは、携帯型電子デバイスに広く用いられ始めている。これらのタイプのバッテリーは、軽量かつ高容量という利点がある一方、効率的かつ安全な使用のために特定の方式に従って充電することが求められる。たとえば、典型的なリチウムイオンバッテリーは、3.0〜4.2V程度の電圧で用いられる。一度使用した後に電圧が定められた低レベルとなると、蓄電コントローラ77は、バッテリーの容量に応じた一定の大きさの電流を与えることにより、バッテリーに充電することができる。たとえば、リチウムイオンバッテリーは、一時間で充電が完了する程度の大きさの電流が一定して供給されることにより充電される。この電流は、充電完了に近づくとゼロに向かって減少する。この減少を蓄電コントローラ77によって検出することにより、充電を停止することが必要とされる。過充電は、バッテリーを破損するおそれがある。さらに、ニッケルカドミウムバッテリーやニッケル水素バッテリーに一般的に用いられるトリクル充電をリチウムイオンバッテリーやリチウムイオンポリマーバッテリーに適用する場合、過充電を回避するために充電の電流を注意深く監視する必要がある。バッテリーの過充電は、バッテリーを充電不可能な状態としてしまうおそれもある。他の条件として、大気温度や湿度も考慮に入れられるべきである。これらのタイプのバッテリーの充電には、多くのシステムや手法が提案され、商業的に使用されている。単純な保護回路を用いたものもあれば、マイコンを用いた洗練されたシステムもある。これらのシステムは、たとえば本実施形態の蓄電コントローラ77の一部として実装されうる。
【0079】
リチウムイオンバッテリーは、携帯型電子デバイスに適しているが、本実施形態においては、蓄電デバイス13として、たとえばコンデンサを用いている。熱電変換素子4からは、比較的低電圧で一定しない電流が生成されることがその理由である。生成された電流と電圧がそれほど高くない場合、複数のコンデンサを互いに並列に接続することにより、所定の電圧となるまでの間、充電が可能となる。この所定の電圧は、熱電変換素子4によって生成される電圧とコンデンサの容量から決定される。蓄電されたコンデンサは、互いに直列に接続されることにより、メモリの記憶保持や停止モードあるいはスリープモードにおけるCPUの状態保持などといったサーマルプリンタB1の駆動が可能な程度に電圧を高めることができる。
【0080】
図13は、蓄電デバイス13としての複数のコンデンサに充電するための蓄電コントローラ77の一例を示している。本例においては、各々が4つのコンデンサを具備する2組のコンデンサ群が、蓄電コントローラ77によって生成されるモード制御信号85により、互いに並列にあるいは直列に接続された状態をとる。一方の組の4つのコンデンサが蓄電コントローラ77によって所定の電圧レベルまで蓄電されると、モード制御信号85がこの組の4つのコンデンサを、オペレーションモードに切り替える。このオペレーションモードにおいては、4つのコンデンサは、サーマルプリンタB1の駆動を補助するために用いられる。これと同時に、他方の組の4つのコンデンサは、モード制御信号85によって蓄電モードに切り替えられる。他方の組の4つのコンデンサには、所定の電圧レベルに達するまで蓄電がなされる。この間、一方の組の4つのコンデンサは、サーマルプリンタB1の駆動補助を継続する。この手法によれば、少なくともいずれかの組の4つのコンデンサが、蓄電モードにおかれる。同図に示された構成は、あくまで一例に過ぎず、様々な類似の構成やこれらが改変された構成が適宜採用される。
【0081】
図14は、蓄電コントローラ77の他の例を示している。本例における蓄電コントローラ77は、蓄電回路772、電圧モニタ773、電流モニタ774および温度モニタ775を具備している。蓄電回路772は、蓄電デバイス13の電圧から蓄電デバイス13がどれほど蓄電されているかを判断し、蓄電デバイス13への蓄電の開始または停止を決定する。蓄電が開始されると、蓄電デバイス13の電流、電圧および温度が電圧モニタ773、電流モニタ774および温度モニタ75によって定期的に監視され、得られたデータは、蓄電回路772にフィードバックされる。蓄電回路772は、蓄電の電流の大きさを決定するとともに、所定の基準に基づいて蓄電を継続すべきか停止すべきかを判断する。この所定の基準は、監視された温度に依存しうる。
【0082】
図12に示すように、ドライバIC6は、パルス電力を抵抗体層2に供給することにより、感熱紙にドットを印刷する。一連のドットによって、印刷されるべき画像が形成される。印刷中においては、制御部7は、センサ3によって計測された抵抗体層2の温度と、抵抗体層2と熱電変換素子4との温度差とに基づいて、熱電変換素子4を加熱モード、中立モード、変換モード、冷却モードの4つの異なるモードで駆動する。図15は、熱電変換素子4を駆動する4つのモードの一例を示す表である。この表は、センサ3によって計測された温度と、抵抗体層2と熱電変換素子4との温度差とによってその条件が構成されている。左から一つ目の列は、4つのモードを示している。上から一つ目の行は、4つの異なる範囲を示しており、これらの範囲は、計測された温度および上述した温度差によって区画されている。第1温度T1と第2温度T2は、あらかじめ定められた温度である。第1温度T1および第2温度T2は、センサ3によって計測された計測温度Tsと比較されるものである。基準温度差Tcは、熱電変換素子4が発電を開始しうる温度差である。計測温度Tsは、センサ3によって計測された温度である。温度Ttは、熱電変換素子4のうち抵抗体層2の反対側に位置する部分の温度である。計測温度Tsが第1温度T1よりも低い場合、制御部7は、熱電変換素子4を加熱モードに切り替える。これは、たとえば大気温度が相対的に低い時に起こりうる。加熱モードは、計測温度Tsが第1温度T1に到達するまで継続される。計測温度Tsが第1温度T1に達すると、熱電変換素子4は、中立モードに切り替えられる。なお、このときは、抵抗体層2と熱電変換素子4との温度差である温度差Ts−Ttが基準温度差Tcよりも小であることが条件とされている。中立モードにおいては、熱電変換素子4は、加熱、発電、冷却のいずれも行わず、電力の生成も消費も行わない。計測温度Tsが第1温度T1および第2温度T2の間にあり、かつ抵抗体層2と熱電変換素子4との温度差である温度差Ts−Ttが基準温度差Tc以上になると、熱電変換素子4は、変換モードに切り替えられ、上記温度差に起因する熱が電力に変換される。これは、熱電変換素子4における基板1の上部電極8と下部基板12の下部電極9との温度差が、熱電変換効果(ペルティエ効果)によって発電可能な程度の大きさとなるほどに、温度蓄積が大きい場合に特に生じやすい。計測温度Tsが第2温度T2より高くなると、制御部7は、熱電変換素子4を冷却モードに切り替える。この冷却モードにおいては、抵抗体層2が熱電変換素子4によって冷却される。これは、抵抗体層2の温度を所定の温度範囲内に維持することに寄与する。この所定の温度範囲内においては、大気温度が相対的に高い状態であっても、適切な印刷速度と印字品質とが維持される。熱電変換素子4に与えられる電圧は、適切な冷却および加熱を許容すべく、大気温度に依存して変化しうる。
【0083】
本実施形態によれば、抵抗体層2によって生じた熱のうち印刷に寄与しない熱を熱電変換素子4によって電力に変換することができる。この電力を蓄電デバイス13に蓄え、さらにサーマルプリンタB1の駆動補助に使用することにより、省電力化を図ることができる。
【0084】
計測温度Tsが第1温度T1より低いときに熱電変換素子4によって加熱することにより、抵抗体層2を印刷可能な温度に到達させる時間が不当に長くなってしまうことを抑制することができる。また計測温度Tsが第2温度T2よりも高いときに熱電変換素子4によって冷却することにより、あるドットを印刷した後にドットの形成がもはや必要とされない時点において、抵抗体層2の温度を望ましい温度に下げることができる。
【0085】
温度差Ts−T1が基準温度差Tc以上であるときに熱電変換素子4によって発電することにより、抵抗体層2に供給された電力のうち印刷に用いられなかった電力の少なくとも一部を電力として回収することができる。
【0086】
図16は、本発明の第4実施形態に基づくサーマルプリンタを示している。本実施形態のサーマルプリンタB2は、上述したサーマルプリントヘッドA2と蓄電コントローラ77および蓄電デバイス13とを備えている。
【0087】
制御部7は、前述した計測温度Tsおよび温度差Ts−Ttに基づいて、複数の熱電変換素子4のそれぞれを前述した加熱モード、中立モード、変換モード、冷却モードに切り替えるように構成されている。これらのモードの切り替えについては、図15を参照して説明した通りである。変換モードにおいては、各熱電変換素子4から得られた電力は、サーマルプリンタB1の駆動補助に用いられるか、あるいは蓄電デバイス13に蓄電される。ある熱電変換素子4が冷却モード切り替えられることは、この熱電変換素子4に対応する抵抗体層領域21の温度を所定の温度範囲内に維持することに寄与する。この所定の温度範囲内においては、大気温度が相対的に高い状態であっても、適切な印刷速度と印字品質とが維持される。
【0088】
本実施形態によれば、抵抗体層2の温度状況が抵抗体層領域21ごとに異なる場合であっても、それぞれの抵抗体層領域21に適したモードで熱電変換素子4を駆動させることが可能であり、より効率的に印刷速度の向上や省電力化を図ることができる。
【0089】
図17は、本発明の第5実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、上述したサーマルプリントヘッドA1,A2と基本的構成が共通しており、さらに本実施形態においては、抵抗体層2に相当する抵抗体層52、複数の個別電極54、共通電極55を備えているものとして構成されている。抵抗体層52、個別電極54および共通電極55の断面構成は、たとえば図2に示した構成とされる。あるいは、これらの断面構成は、図4に示される構成であってもよい。複数の個別電極54は、すべてがドライバIC6に接続されている。共通電極55は、複数の櫛歯状部分を有している。これらの櫛歯状部分は、それぞれがX方向に延びており、Y方向に配列されている。抵抗体層52は、複数の抵抗体部分53を有している。抵抗体部分53は、抵抗体層52のうちX方向において対向する個別電極54と共通電極55の対応する櫛歯状部分とに挟まれた部分である。複数の抵抗体部分53は、Y方向において隙間をおいて配列されている。所望の抵抗体部分53によってドットの印刷を行うときには、ドライバIC6から個別電極54および抵抗体部分53を通して共通電極55の上記複数の櫛歯状部分のうちこの抵抗体部分53に繋がるものへと電流が流れる。これにより、抵抗体部分53が発熱し印刷がなされる。抵抗体部分53のうちX方向上流側にある端縁531は、Y方向中央が凹んだ撓み形状とされており、抵抗体部分53のY方向中央部分のX方向寸法が減じられている。撓み形状とされたこの端縁531は、X方向において感熱紙のドットの後縁に対応する。この撓み形状により、抵抗体部分53の中央部分が周辺部分よりも高い温度であっても、この中央部分による印刷は、周辺部分による印刷よりも早く終了することとなる。これにより、ドットの印刷における不鮮明を効果的に回避することができる。図17において、撓み形状は、円弧形状とされている。しかしながら、この円弧形状は撓み形状の一例にすぎない。
【0090】
本実施形態によれば、抵抗体部分53のY方向における温度分布が中央部分において不当に高くなってしまうことを回避することが可能であり、この温度分布を均一化することができる。したがって、サーマルプリントヘッドA3による印刷において、ドットの尾引きや不鮮明、かすれ、しみなどを抑制することができる。
【0091】
図18は、撓み形状の他の形態を示している。抵抗体部分53の撓み形状としては、上述した円弧形状(同図最上段)に加えて、三角形状(同図上から2番目)、台形状(同図上から3番目)や、Y方向両端にY方向に沿って延びる部分を有した上で、これらの部分に挟まれた矩形状(同図上から4番目)および半円形状(同図上から5番目)などの形態を適宜採用できる。
【0092】
上述した不鮮明の回避効果をより適切に奏するには、基板1および抵抗体層52の熱容量を最小化することが好ましく、このためには抵抗体層52を抵抗体の薄膜によって構成することが好適である。
【0093】
図2を参照して説明した製造方法は、抵抗体層52、複数の個別電極54および共通電極55を形成する際にも採用される。抵抗体層52となる抵抗体材料から成る薄膜と複数の個別電極54および共通電極55となる金属薄膜とを形成した後になされるパターニングには、フォトリソグラフィの手法によってマスクを形成することが適している。このような手法によれば、抵抗体部分53の撓み形状を所望の形状に正確に仕上げることができる。より具体的には、抵抗体部分53の撓み形状は、各個別電極54の先端縁が撓み形状とされることによって実現される。
【0094】
抵抗体層52、複数の個別電極54および共通電極55が、図4に示した断面構成とされる場合、複数の個別電極54および共通電極55の上記複数の櫛歯状部分それぞれの先端部分が、グレーズ層76に対して沈降する。そして、複数の個別電極54および共通電極55の上記複数の櫛歯状部分それぞれの先端部分の上面とグレーズ層76の上面とがほぼ面一とされる。抵抗体部分53は抵抗体層52のうち対向する個別電極54と共通電極55の上記櫛歯状部分とに挟まれた部分によって構成される。本構成においては、抵抗体部分53の撓み形状は、抵抗体層52をパターニングすることによって、抵抗体層52に上述した撓み形状を有する部分を形成することによって実現される。さらに好ましくは、図19に示すように、個別電極54の先端縁54aを同様の撓み形状とすることが好ましい。
【0095】
図20は、本発明の第6実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA4は、抵抗体部分53の構成が上述したサーマルプリントヘッドA3と異なっている。本実施形態においては、抵抗体部分53には、開口56が形成されている。本実施形態においては、開口56は、Y方向を長軸とする楕円形状とされている。サーマルプリントヘッドA4の断面構造が、図2に示された構造である場合、このような開口56は、たとえば上述したフォトリソグラフィの手法を用いたパターニングによって形成することができる。サーマルプリントヘッドA4の断面構造が図4に示された構造である場合、抵抗体材料を含むペーストを印刷する際に、開口56に相当する空隙部を形成してもよいし、抵抗体材料からなる膜を形成した後に、パターニングによって開口56を形成してもよい。開口56は、図27に示した温度分布をより均一化するのに寄与する。開口56を形成しないと仮定した場合に温度分布がピークとなる位置に開口56を形成することは、温度分布の均一化に好適である。また、温度分布の均一化を図ることは、印刷速度を低下させることなく印刷品質を向上させるのに資する。
【0096】
本実施形態によれば、開口56を設けることにより、より効果的に抵抗体部分53のY方向における温度分布の均一化を図ることができる。
【0097】
開口56の形状は、楕円形状に限定されない。図21は、開口56の様々な形状を例示している。同図に示されたように、開口56の形状は、楕円形状(同図最上段)のほかに、矩形状(同図上から2番目)、三角形状(同図上から3番目)、台形状(同図上から4番目)、半円形状(同図上から5番目)およびX方向を長軸とする楕円形状(同図上から6番目)などがある。
【0098】
図22は、サーマルプリントヘッドA3の他の構成例を示している。本例においても、その断面構造は、図2または図4に示された構成とされる。本例においては、サーマルプリントヘッドA3は、複数の個別電極54、複数の共通電極55および複数の中継電極57を備えている。また、抵抗体層52は、複数の抵抗体部分53a,53bを有している。複数の個別電極54と複数の共通電極55は、グレーズ層76に対してX方向上流側に配置されており、互いに交互になるようにY方向に配列されている。複数の個別電極54と複数の共通電極55は、各々がX方向に延びる帯状とされている。抵抗体部分53aは、個別電極54のX方向下流側に配置されており、抵抗体部分53bは、共通電極55のX方向下流側に配置されている。複数の抵抗体部分53aと複数の抵抗体部分53bとは、互いに交互となるようにY方向に配列されている。複数の中継電極57は、本実施形態においては2つの帯状端部を有するコの字状とされており、複数の抵抗体部分53a,53bに対してX方向下流側に配置されている。各中継電極57の一方の帯状端部は、抵抗体部分53aに繋がっており、他方の帯状端部は、抵抗体部分53bに繋がっている。ドライバIC6からの電流は、個別電極54から、抵抗体部分53a、中継電極57、抵抗体部分53bを経由して、共通電極55へと流れる。このため、互いに隣接する抵抗体部分53a,53bが1つのドットを印刷するための発熱要素を構成している。抵抗体部分53a,53bのX方向上流側の端縁531a,531bが撓み形状となっている点は、図17および図19に示された構成と同様であり、その形成手法も同様である。抵抗体部分53a,53bの撓み形状は、図18に例示されたように様々な形状を採用しうる。このような実施形態によっても、印刷におけるドットの尾引きや不鮮明、かすれ、しみなどを抑制することができる。
【0099】
図23は、サーマルプリントヘッドA4の他の構成例を示している。本例においても、その断面構造は、図2または図4に示された構成とされる。本例においては、サーマルプリントヘッドA4は、図22に示された構成と同様に、複数の個別電極54、複数の共通電極55および複数の中継電極57を備えている。これらの構成要素は、図22を参照して説明したとおりである。言い換えると、図23に示された構成は、図22に示された構成に対して、各抵抗体部分53a,53bに開口56が形成されている点が異なる。図21に示されたように、本例においても抵抗体部分53a,53bの開口56は、様々な形状を採用しうる。このような実施形態によっても、印刷におけるドットの尾引きや不鮮明、かすれ、しみなどを抑制することができる。
【0100】
図24は、本発明に係る第7実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA5は、断面構造が図3に示された構成とされている。複数の個別電極54は、グレーズ層76に対してX方向上流側から延びており、Y方向に配列されている。共通電極55は、Y方向に延びる太い帯状部分と、この太い帯状部分からX方向上流側に延びる複数の櫛歯状部分とを有している。共通電極55の複数の櫛歯状部分と複数の個別電極54とは、グレーズ層76上においてY方向に互いに交互に配置されている。抵抗体層52は、Y方向に長く延びる帯状であり、共通電極55の複数の櫛歯状部分と複数の個別電極54とを跨ぐようにして、グレーズ層76上に形成されている。
【0101】
ドライバIC6からある個別電極54に電流が流されると、この電流は抵抗体層52を経由して共通電極55の複数の櫛歯状部分のうちこの個別電極54を挟んで位置する2つの櫛歯状部分へと流れる。このため、抵抗体層52のうち、ある個別電極54を跨いで両側の上記櫛歯状部分に挟まれた部分が、抵抗体部分53となっている。印刷の際には、各抵抗体部分53がドットを印刷するための熱を発する発熱要素を構成する。
【0102】
抵抗体部分53のX方向上流側の端縁531は、撓み形状の部分を有している。より詳しくは、端縁531のうち、個別電極54と共通電極55の櫛歯状部分とに挟まれた部分が撓み形状とされている。このため、1つの抵抗体部分53の端縁531に2つの撓み形状部分が形成されている。この撓み形状としては、図18に例示された形状を採用しうる。このような撓み形状の形成は、たとえば抵抗体層52を形成するための印刷において撓み形状に相当する形状を印刷によって実現する手法が採用できる。あるいは、抵抗体層52となるべき抵抗体材料からなる層を形成した後に、この層に対してパターニングを施すことにより撓み形状を形成してもよい。さらに、図20および図21に示した開口56を本実施形態の抵抗体部分53に形成してもよい。
【0103】
このような実施形態によっても、印刷におけるドットの尾引きや不鮮明、かすれ、しみなどを抑制することができる。
【0104】
本発明に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0105】
A1〜A5 サーマルプリントヘッド
B1,B2 サーマルプリンタ
B2 サーマルプリンタ
1 基板
2 抵抗体層
3 センサ
4 熱電変換素子
5 ヒートシンク
6 ドライバIC
7 制御部
8 上部電極
9 下部電極
10 N型半導体
11 P型半導体
12 下部基板
13 蓄電デバイス
21 抵抗体層領域
22 抵抗体部分
52 抵抗体層
53 抵抗体部分
53a 抵抗体部分
53b 抵抗体部分
54 個別電極
54a 先端縁
55 共通電極
56 開口
57 中継電極
71 計数器
72 比較器
73 電荷蓄積器
74 電圧比較器
75 温度モニタ
76 グレーズ層
77 蓄電コントローラ
85 モード制御信号
102 抵抗体層
531 端縁
531a,531b 端縁
772 蓄電回路
773 電圧モニタ
774 電流モニタ
T1 第1温度
T2 第2温度
Tc 基準温度差
Ts 計測温度
Tt 温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板の一面に形成された抵抗体層と、
制御部と、
上記基板の上記抵抗体層とは反対側に位置する他方の面に形成された熱電変換素子と、を備え、
上記制御部は、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却するように構成されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
上記熱電変換素子は、上記基板の上記他方の面に直接接し、半導体の一方側が電気的および機械的に接続された上部電極、および下部基板に直接接し、上記半導体の他方側が電気的および機械的に接続された下部電極、を有し、
上記上部電極および上記下部電極は、印刷、スパッタリング、デポジッティングおよびめっきのいずれかによって上記基板および上記下部基板に形成された厚さ2μm以下の金属薄膜からなる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
上記抵抗体層に隣接して配置されたセンサを備え、
上記制御部は、上記センサによって計測された上記抵抗体層の温度に基づいて、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を加熱または冷却することにより、上記抵抗体層の温度をあらかじめ設定された温度範囲内に維持するように構成されている、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
上記熱電変換素子が、ヒートシンクに取り付けられている、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
上記制御部は、上記抵抗体層に対する電力に基づいて上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却する、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
上記制御部は、単位時間あたりに上記抵抗体層に供給された電力量があらかじめ定められた電力量を超えたときに、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却する、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
上記制御部は、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を事前に冷却する、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
上記制御部は、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却するに際し、上記熱電変換素子に与える電圧を、上記抵抗体層に供給される電力に基づいて連続的に変化させる構成とされている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
上記抵抗体層に隣接して配置されたセンサを備え、
上記制御部は、上記センサによって計測された上記抵抗体層の温度に基づいて、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を加熱または冷却することにより、上記抵抗体層の温度をあらかじめ設定された温度範囲内に維持するように構成されている、請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
上記熱電変換素子は、ヒートシンク上に配置されている、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
上記制御部は、上記熱電変換素子の上記抵抗体層側と反対側との温度差が十分な大きさとなったときに上記熱電変換素子によって生成される、あらかじめ定められた量の電流を検知すると、上記抵抗体層を冷却する状態へと上記熱電変換素子を切り替える、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
上記制御部は、単位時間あたりに上記抵抗体層に供給された電力量があらかじめ定められた電力量を超えたときに、上記熱電変換素子を用いて上記抵抗体層を冷却する、請求項11に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
上記熱電変換素子の上記反対側に配置されたセンサをさらに備え、
上記制御部は、上記センサによって計測された上記熱電変換素子の上記反対側の温度があらかじめ定められた第1温度を下回り、かつ上記熱電変換素子が発電していないときに、上記熱電変換素子によって上記抵抗体層を加熱するとともに、上記温度があらかじめ定められた第2温度を超え、かつ上記熱電変換素子によってあらかじめ定められた量の電流が生じているときに、上記熱電変換素子によって上記抵抗体層を冷却することにより、上記抵抗体層の温度をあらかじめ定められた温度範囲内に維持する、請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
基板と、
上記基板の一面に形成され、かつ複数の抵抗体層領域に分割された抵抗体層であって、上記各抵抗体層領域がさらに、各々が発熱要素を構成する複数の抵抗体部分に分割されている、抵抗体層と、
上記基板の上記抵抗体層とは反対側に位置する他方の面に形成された複数の熱電変換素子と、
制御部と、
を備え、
上記複数の熱電変換素子は、各々が上記基板の上記他方の面のうち上記複数の抵抗体層領域のいずれかに対応する位置に形成されており、
上記制御部は、上記複数の熱電変換素子のうち対応するものによって上記各抵抗体層領域を冷却するように構成されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項15】
上記複数の熱電変換素子の各々は、上記基板の上記他方の面に直接接し、半導体の一方側が電気的および機械的に接続された上部電極、および下部基板に直接接し、上記半導体の他方側が電気的および機械的に接続された下部電極、を有し、
上記上部電極および上記下部電極は、印刷、スパッタリング、デポジッティングおよびめっきのいずれかによって上記基板および上記下部基板に形成された厚さ2μm以下の金属薄膜からなる、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
各々が上記複数の抵抗体層領域のいずれかに隣接して上記基板上に配置された複数のセンサを備え、
上記各センサは、上記複数の抵抗体層領域のうち対応するものの温度を計測し、
上記各センサによって計測された計測温度が、あらかじめ定められた温度範囲から外れたときに、上記複数の熱電変換素子のうち対応するものが、上記計測温度を上記温度範囲内に維持するように上記複数の熱電変換素子のうち対応するものを加熱または冷却する、請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
複数の熱電変換素子は、ヒートシンクに取り付けられている、請求項16に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項18】
上記制御部は、上記各抵抗体層領域に対する電力に基づいて、上記複数の熱電変換素子のうち対応する熱電変換素子を用いて当該抵抗体層領域を冷却する、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項19】
上記制御部は、単位時間あたりに上記複数の抵抗体層領域のいずれかに供給された電力量があらかじめ設定された量を超えたときに、この抵抗体層領域に対応する上記熱電変換素子を用いてこの抵抗体層領域を冷却する、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項20】
上記制御部は、上記複数の抵抗体層領域のいずれかに対応する上記熱電変換素子を用いて、この抵抗体層領域を事前に冷却する、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項21】
上記制御部は、上記複数の熱電変換素子のうち対応する熱電変換素子を用いて上記各抵抗体層領域を冷却するに際し、当該対応する熱電変換素子に与える電圧を、上記抵抗体層領域に対する電力に基づいて連続的に変化させる構成とされている、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項22】
各々が上記複数の抵抗体層領域のいずれかに隣接して上記基板上に配置された複数のセンサを備え、
上記各センサは、上記複数の抵抗体層領域のうち対応するものの温度を計測し、
上記各センサによって計測された計測温度が、あらかじめ定められた温度範囲から外れたときに、上記複数の熱電変換素子のうち対応するものが、上記計測温度を上記温度範囲内に維持するように、上記複数の抵抗体層領域のうち対応するものを加熱または冷却する、請求項19に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項23】
上記複数の熱電変換素子は、ヒートシンク上に配置されている、請求項22に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項24】
請求項1に記載のサーマルプリントヘッドと、
エネルギー蓄積装置と、
を備え、
上記熱電変換素子は、上記抵抗体層と上記熱電変換素子のうち上記抵抗体層が配置された側とは反対側との温度差が十分に大きい場合に、上記抵抗体層によって生成された熱を電力に変換し、この変換された電力は、上記エネルギー蓄積装置に蓄えられる、サーマルプリンタ。
【請求項25】
上記抵抗体層に隣接して配置され、上記抵抗体層の温度を計測するセンサをさらに備え、
上記制御部は、上記センサによって計測された計測温度に基づいて上記エネルギー蓄積装置に上記電力を蓄えるように構成されている、請求項24に記載のサーマルプリンタ。
【請求項26】
上記熱電変換素子は、加熱モード、中立モード、変換モード、および冷却モード、のいずれかの状態で動作し、
上記加熱モードは、上記計測温度があらかじめ定められた第1温度よりも低いときに上記抵抗体層を加熱するために用いられ、
上記中立モードは、上記計測温度が上記第1温度とあらかじめ定められた第2温度との間にあり、上記熱電変換素子が熱を電力に変換しうる臨界温度差よりも上記温度差が小さいときに用いられ、
上記変換モードは、上記計測温度が上記第1温度と上記第2温度の間にあり、かつ上記温度差が上記臨界温度差以上であるときに、熱を電力に変換するため、および電力を上記エネルギー蓄積装置に蓄えるために用いられ、
上記冷却モードは、上記計測温度が上記第2温度よりも高いときに上記抵抗体層を冷却するために用いられる、請求項25に記載のサーマルプリンタ。
【請求項27】
上記第1温度および上記第2温度は、雰囲気温度に依存する、請求項26に記載のサーマルプリンタ。
【請求項28】
上記エネルギー蓄積装置があらかじめ定められた蓄積レベルに達したときに、上記電力が、このサーマルプリンタの駆動を補助するために使用される、請求項24ないし27のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項29】
上記サーマルプリントヘッドにヒートシンクが取り付けられている、請求項24ないし28のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項30】
請求項14に記載のサーマルプリントヘッドと、
エネルギー蓄積装置と、
を備え、
上記複数の熱電変換素子は、対応する上記抵抗体層領域と対応する上記熱電変換素子の反対側との温度差が熱を電力に変換するのに十分な大きさとなったときに、対応する上記抵抗体層領域によって生成された熱を電力に変換し、
上記変換された電力は、上記エネルギー蓄積装置に蓄えられる、サーマルプリンタ。
【請求項31】
上記各抵抗体層領域に隣接して配置され、対応する抵抗体層領域の温度を計測するセンサを備え、
上記制御部は、上記センサによって計測された計測温度に基づいて上記エネルギー蓄積装置に上記電力を蓄えるように構成されている、請求項30に記載のサーマルプリンタ。
【請求項32】
上記熱電変換素子は、加熱モード、中立モード、変換モード、および冷却モード、のいずれかの状態で動作し、
上記加熱モードは、上記計測温度があらかじめ定められた第1温度よりも低いときに上記抵抗体層を加熱するために用いられ、
上記中立モードは、上記計測温度が上記第1温度とあらかじめ定められた第2温度との間にあり、上記熱電変換素子が熱を電力に変換しうる臨界温度差よりも上記温度差が小さいときに用いられ、
上記変換モードは、上記計測温度が上記第1温度と上記第2温度の間にあり、かつ上記温度差が上記臨界温度差以上であるときに、熱を電力に変換するため、および電力を上記エネルギー蓄積装置に蓄えるために用いられ、
上記冷却モードは、上記計測温度が上記第2温度よりも高いときに上記抵抗体層を冷却するために用いられる、請求項31に記載のサーマルプリンタ。
【請求項33】
上記第1温度および上記第2温度は、雰囲気温度に依存する、請求項32に記載のサーマルプリンタ。
【請求項34】
上記電力は、上記エネルギー蓄積装置があらかじめ定められた蓄積レベルに達したときに、このサーマルプリンタの駆動を補助するために使用される、請求項30ないし33のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項35】
上記サーマルプリントヘッドにヒートシンクが取り付けられている、請求項30ないし34のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項36】
上記抵抗体層は、各々が印刷において印刷対象物にドットを形成するための熱を発する発熱要素を構成する複数の抵抗体部分を有しており、
上記各抵抗体部分は、上記印刷対象物が送られる方向である副走査方向における長さが、この副走査方向に対して直角である主走査方向において中央部分が両側部分よりも小となっている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項37】
上記各抵抗体部分は、副走査方向において離間する2つの端縁の少なくともいずれかが内方に凹む撓み形状とされている、請求項36に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項38】
上記撓み形状とされた上記端縁は、副走査方向において上記印刷対象物が送られる上流側に位置する、請求項37に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項39】
上記各抵抗体部分は、開口を有する、請求項36ないし38のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2013−1121(P2013−1121A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134449(P2012−134449)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】