説明

サーマルヘッドのクリーニング方法

【課題】サーマルヘッドに付着したヘッドカスや異物などの汚れをヘッド摩耗を促進することなく乾式で簡便に除去することができるクリーニング方法を提供する。
【解決手段】 感熱層を有する感熱記録材料を搬送しつつサーマルヘッドを圧接させ熱印字を行なう感熱プリンタの該サーマルヘッドを、平均繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維を含有する不織布により乾式クリーニングすることを特徴とするサーマルヘッドのクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に感熱層を有する感熱記録材料を搬送しつつサーマルヘッドを圧接させ熱印字を行なう感熱プリンタが有するサーマルヘッドのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドを発熱させて感熱記録材料をプラテンとの間に押圧し、その感熱記録媒体に熱印字を行う感熱プリンタにおいては、サーマルヘッドを用いて記録する際、サーマルヘッドの熱及び圧力により連続記録するうちに感熱記録材料表面の異物や、サーマルヘッドにより削りとられたカス(ヘッドカス)がサーマルヘッドの発熱部分周辺に付着する。このヘッドカスの付着によりサーマルヘッドからの伝熱に阻害が生じ良好な感熱記録が行えず印字が不鮮明になるとともに、感熱記録材料を汚してしまうという問題があり、サーマルヘッドの発熱部分のクリーニングが必要であり、その方法についてはこれまでに数多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1にあるように通気量が100〜350cm3/cm2/secの範囲にある不織布をクリーニングシートとして用いるクリーニング方法、特許文献2にあるように全面にポーラススクリーンが設けられた粘着式のクリーニングシートを用いるクリーニング方法、特許文献3にあるように表面に和紙等が貼り付けられたクリーニングテープの装着されたクリーニング用カセットにアルコール等のクリーナー液をしみ込ませてクリーニングする方法、特許文献4にあるように表面粗さRaが0.1〜0.7μmの研磨体を用いてクリーニングする方法などである。
【0004】
しかしながら、いずれの方法もクリーナー液を用いずに乾燥状態でサーマルヘッドを拭き取ると、ヘッド摩耗を促進することとなり、結果として感熱プリンタの寿命を短くしてしまう欠点があった。特に最表層として親水性樹脂と熱溶融性微粒子を含有する感熱層を有する感熱性平版印刷版(例えば特開昭58−199153号公報に記載の印刷版等)である場合には、一般に、レジやFAX用途である感熱紙に比べ、適用される解像度が600dpi以上と高いため、ヘッド摩耗が局所的に発生すると、部分的に伝熱が変化して、均一な画像形成に大きな悪影響を及ぼす場合があった。
【0005】
一方で、ヘッドカスを溶解して除去するために溶剤を主体とするクリーナー液を用いる場合には、ヘッドカスの除去性は高いものの、溶剤がヘッド表面に一部残存する場合があり、溶剤が揮発しないまま感熱記録材料を印字可能な状態に装着すると、感熱記録材料の感熱層表面にサーマルヘッドが密着するため溶剤が付着して感熱記録材料の表面を溶解してしまい、正常な記録画像とならない問題が発生する場合があった。特に感熱記録材料が、最表層として親水性樹脂と熱溶融性微粒子を含有する感熱層を有する感熱性平版印刷版である場合には、保護層がなく、特に問題となる。
【特許文献1】特開平5−212939号公報
【特許文献2】特開2000−339643号公報
【特許文献3】特開平10−76738号公報
【特許文献4】特開2003−326751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を鑑み本発明の課題は、本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、サーマルヘッドに付着したヘッドカスや異物などの汚れをヘッド摩耗を促進することなく乾式で簡便に除去することができるクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は以下に記載のサーマルヘッドのクリーニング方法によって達成できることを見いだした。
1.支持体上に感熱層を有する感熱記録材料を搬送しつつサーマルヘッドを圧接させ熱印字を行なう感熱プリンタが有する該サーマルヘッドの発熱部を、平均繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維を含有する不織布により乾式クリーニングすることを特徴とするサーマルヘッドのクリーニング方法。
2、前記感熱記録材料が、最表層として親水性樹脂と熱溶融性微粒子を含有する感熱層を有する感熱性平版印刷版であることを特徴とする前記1記載のサーマルヘッドのクリーニング方法
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サーマルヘッドに付着したヘッドカスや異物などの汚れをヘッド摩耗を促進することなく、乾式で簡便に除去することができるクリーニング方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のサーマルヘッドのクリーニング方法は、感熱層を有する感熱記録材料を搬送しつつサーマルヘッドを圧接させ熱印字を行なう感熱プリンタの該サーマルヘッドを、繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維を含有する不織布により乾式クリーニングすることを特徴としている。
【0010】
本発明のクリーニング方法にかかわる不織布について詳細に説明する。
【0011】
本発明で言うフィブリル化とは、繊維内部のフィブリル(小繊維)が、摩擦や衝撃作用等により表面に現れて、より細い超極細繊維を形成すると同時に、それらの超極細繊維が毛羽立ちささくれて、三次元のネットワーク構造を生じる現象を言う。このようなフィブリル化した繊維長1μm以下のアクリル繊維を用いることは、不織布表面に適切な空隙を有した超極細のアクリル繊維の三次元ネットワーク構造を形成することができるので、細かい微細塵埃や親油性である物質、特に熱溶融性微粒子に由来するヘッドカスに対して、極めて優れた拭き取り性能と捕捉能を発揮することができる。また、適切な空隙を有した超極細繊維の三次元ネットワーク構造を形成しているため、サーマルヘッドの表面に対する摩擦も軽微となり、必要以上のヘッド摩耗も抑制される。このため、従来必要としていた溶剤を主体とするクリーナー液を用いずとも、十分なクリーニング性能を有するようになる。
【0012】
本発明にかかわる不織布に含有するフィブリル化したアクリル繊維について説明する。本発明で言うアクリル繊維とは、アクリロニトリル系ポリマーを50質量%以上含有し主原材料にした合成繊維である。またフィブリル化の方法としては、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル等の叩解、離解、分散設備を用いることでフィブリル化することができる。本発明においてはフィブリル化することで、平均繊維径を1μm以下とすることが好ましい。また、平均繊維径の確認方法としては電子顕微鏡による観察から確認することができる。
【0013】
上記のフィブリル化の方法以外に、不織布としてウェブを形成させた後に、高圧の柱状水流噴射等の機械的な力を該ウェブに与えることによってもフィブリル化することができる。これらの叩解、離解、分散処理、高圧柱状水流噴射処理を単独で、もしくは何れかを組み合わせることによってフィブリル化された繊維であれば、アクリル繊維を構成するポリマーに特に制限はない。すなわち、アクリロニトリル系ポリマーのみから構成されるアクリル繊維でも良いし、アクリロニトリル系ポリマーと添加剤ポリマーとから構成されるアクリル繊維でも構わない。超極細繊維による三次元ネットワーク構造を良好に生じさせるには、叩解、離解、分散処理の何れかの方法によりフィブリル化することがより好ましいので、このフィブリル化が容易であることを考慮すれば、アクリロニトリル系ポリマーと添加剤ポリマーとから構成されたアクリル繊維の方がより好ましい。
【0014】
上述のアクリロニトリル系ポリマーとしては、アクリロニトリルモノマー単独からなるポリマーであっても良いが、アクリロニトリル系ポリマーの共重合成分として5〜50質量%のアクリロニトリルモノマーと他のモノマー成分の共重合体が好ましく、好ましく用いられる他のモノマーとしては、例えば以下のモノマーが挙げられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー(単量体)などである。
【0015】
また、上述のアクリル繊維が含有する添加剤ポリマーとしては、アクリル樹脂系ポリマーが挙げられる。アクリル樹脂系ポリマーを構成するモノマーは、例えば以下のモノマーが挙げられ、このうちの1種以上を用いることができる。すなわち、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和単量体などである。また、アクリル樹脂系ポリマー以外の添加剤ポリマーとしては、セルロースアセテート、キトサン、ポリ塩化ビニル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリペプチドなどが挙げられ、このうちの1種以上を用いることができる。
【0016】
本発明にかかわる不織布において、フィブリル化したアクリル繊維の含有率は特に限定しないが、フィブリル化したアクリル繊維の不織布に対する総含有量は2〜98質量%が好ましく、更に好ましくは10〜80質量%である。フィブリル化したアクリル繊維の含有量が2質量%未満では、フィブリル化したアクリル繊維が不織布表面に均一に分布できないことから、拭き取り性能を高めることができない場合がある。一方、98質量%を超えると拭き取り性能は十二分に得られるものの、不織布自身の強度が大きく低下する場合がある。
【0017】
次に本発明にかかわる不織布としては任意の製造方法で得ることができる。まず原料となる繊維を集積して、繊維ウェッブ(不織布の絡合または結合前のもの)を形成し、繊維ウェッブ内の繊維を接着または絡合させることにより不織布化する一般的な手法で製造することができる。得られた不織布はそのまま使用しても良いし、複数枚の積層体として使用してもよい。繊維ウェッブの形成方法としては、例えばカード法やエアレイ法等の乾式法、抄紙法などの湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等が挙げられる。
【0018】
このような繊維ウェッブから不織布を形成する方法としては、例えば、繊維ウェッブを強力な水流により絡合させる水流交絡法やニードル等の作用によって絡合させる方法、バインダーによって接着させる方法、縫糸でウェッブを縦網状に縫合する方法等があり、これらの方法は単独で、あるいは組み合わせることができる。
【0019】
本発明にかかわる不織布を構成する繊維としては、上述のフィブリル化したアクリル繊維以外に、強度維持等のために、一般に公知である他の繊維を含有することができる。また、親油性即ち疎水性である感熱性の画像形成要素(例えば熱溶融性微粒子など)と親和性の高い疎水性繊維を含有することは拭き取り性が良好に作用するので特に好ましい。これらの疎水性繊維の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル、モダクリル等のアクリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維等の合成繊維が挙げられる。この他にもこれら複数の材質からなる複合繊維を用いても良い。
【0020】
本発明にかかわる不織布は、その坪量(単位面積あたりの乾燥質量)としては、10〜150g/m2の範囲が好ましい。10g/m2より少ないと、強度、吸液性が十分でない場合がある。一方、150g/m2を超えると、風合いが硬くなり、適度な柔軟性に劣ることがある。また上述の坪量の範囲であれば、その層構成には特に限定はなく、単層構造からなる不織布であっても良いし、フィブリル化した繊維が表面に存在しておれば2層、3層といった多層構造であっても良い。
【0021】
本発明のクリーニング方法について詳細に説明する。感熱プリンタのサーマルヘッドの発熱部を上述の不織布にて、そのまま清掃することができる。また、感熱記録材料と同様に感熱プリンタに通紙搬送して清掃することや、感熱プリンタにクリーニング手段として組み込み、印字開始前あるいは印字終了後に自動的に、本発明にかかわる不織布をサーマルヘッドに摺接させて清掃を行うルーチンを行わせることもできる。
【0022】
次に本発明にかかわる感熱記録材料について説明する。本発明に用いられる感熱記録材料としては、紙、フィルム等の支持体上に感熱層を最表層として有するものであれば有効に使用できる。例えば、バインダー樹脂及びフェノール誘導体や芳香族カルボン酸誘導体などの顕色剤や発色剤(電子供与性染料前駆体)を含有して構成される所謂感熱紙や支持体上に親水性樹脂と熱溶融性微粒子を含有する層を感熱層として設けてなる感熱性平版印刷版などが使用できる。特に感熱発色のための顕色剤や発色剤以外に、熱溶融性微粒子を有する感熱性平版印刷版の場合にはヘッドに付着する物質が多くなること及び単なる表示媒体ではなく印刷版としての特性上、欠陥の無い画像形成の必要があることから特にヘッドカスの悪影響を受けやすいため、本発明が有効に作用する。
【0023】
ここで特にヘッドカスによる悪影響が大きい感熱性平版印刷版について詳しく説明する。本発明にかかわる感熱性平版印刷版は支持体上に感熱層として親水性樹脂と熱溶融性微粒子を含有するものであって、その感熱層が最表層として構成されるものである。また感熱性平版印刷版は、感熱層のみ単層での構成でも構わないし、下層として視認性を得るための感熱発色層や親水性の無機微粒子などを含む親水性向上のための層や後述する支持体との接着性を向上させるための層などを塗設しても構わない。
【0024】
次に上記感熱層が含有する親水性樹脂についてに説明する。かかる親水性樹脂としては、印刷中に水を保持し、かつ層として存在しうるバインダー的要素を有するものであれば有効に使用できる。具体的には下記のような例が挙げられる。
【0025】
天然物では、澱粉類、海藻マンナン、寒天及びアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、アラビアガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、及びレバンなどのホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、及びザンタンガムなどのヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等のタンパク質、キチン及びその誘導体等が挙げられる。
【0026】
また、半天然物(半合成物)類としては、セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等が挙げられる。
【0027】
合成品には、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール類、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルエーテル類、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物、特開2006−247937号公報に記載のP1〜P24として例示される水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0028】
これらは、単独でも複数の組み合わせでも有効に使用することができる。また、耐刷性を向上させる目的で適宜架橋剤を用いることもできる。これらの親水性樹脂の中でも、ゼラチン、変性あるいは未変性のポリビニルアルコール、及びセルロース誘導体が有利に使用できる。特にゼラチンを用いることは、保水性と強度のバランスに優れるため好ましい。またゼラチンの配合量としては感熱層の全固形分量に対して0.5〜30質量%が好ましく、更に3〜25質量%とすることがより好ましい。
【0029】
次に上記熱溶融性微粒子について説明する。用いられる熱溶融性微粒子とは、加熱することにより溶融もしくは互いに融着することで、微粒子状形態から変化し一体化するものである。具体的には熱可塑性樹脂類(熱可塑性ポリマー)の微粒子化されたもので、固体あるいは水分散されたものあれば使用することができる。これらの分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているものや、ポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどを指すがいずれも好ましい。これらの平均粒径は、1〜50000nmが好ましく、5〜1000nmがより好ましい。熱溶融性微粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも、単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0030】
より具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体、パラフィン類やワックス類が挙げられる。これらの熱溶融性微粒子類は必要に応じて2種以上混合して使用することができるし、また複数の層としても良い。また、熱が与えられたときに自己架橋する樹脂が特に好ましい。本発明にかかわる感熱性平版印刷版の感熱層に含有される熱溶融性微粒子の量としては、用いられる親水性樹脂とのバランス、所望の感度により最適化されるが、感熱層の全固形分量に対して5〜50質量%が好ましく、更に10〜40質量%が好ましい。
【0031】
本発明にかかわる感熱性平版印刷版の感熱層は支持体上に塗設するために、助剤としてアニオン系、カチオン系もしくはノニオン系界面活性剤のいくつかを含有しても良いし、マット剤、増粘剤、帯電防止剤も含有することができる。更に画像視認性のために感熱発色剤、感熱顕色剤、感熱感度調整剤、あるいは着色剤等を含有することもできる。
【0032】
本発明にかかわる感熱性平版印刷版の支持体としては、耐水性を有する支持体が印刷版として用いる特性として好ましく、例えば、プラスティックフィルム、樹脂被覆紙、耐水紙などが使用できる。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムとこれらプラスチックを表面にラミネートやコーティングした樹脂被覆紙、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂などの湿潤紙力剤によって耐水化された紙を使用することができる。
【0033】
また、上記の他にプラスチックフィルム、金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)、ポリエチレンで被覆した紙などの材料(複合基材ともいう)を各々適宜貼り合わせた複合支持体を用いることもできる。これらの複合基材は、本発明の感熱層を形成する前に貼り合わせても良く、また感熱層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0034】
支持体の厚さは、感熱プリンターの記録適性及び平版印刷機適性等の観点から100〜300μm程度が好適である。また感熱層の膜厚としては、0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmの範囲が好適である。
【0035】
上述の耐水性を有する支持体の表面は、感熱層や必要に応じて適宜設置しても良い中間層との接着性を高めるために、プラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理等の易接着処理や下引き層を設けるなどの処理を施してもよい。
【0036】
次に本発明にかかわる感熱プリンタについて説明する。サーマルヘッドは厚膜または薄膜のサーマルラインヘッドを用いたラインプリンタータイプや薄膜のサーマルシリアルヘッドを用いたシリアルプリンタタイプのどちらでも使用できる。記録エネルギー密度は、円滑な出力速度を得るために10〜100mJ/mm2であることが好ましく、また印刷版出力用途であれば、商業印刷に耐えうる高品質な出力画像を得るためにサーマルヘッドの画像記録密度(出力解像度)が600dpi以上であることが好ましい。
【0037】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。尚、記載中、「部」及び「%」は特に示さない限り質量基準である。
【実施例】
【0038】
〔不織布の作製〕
フィブリル化していない三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P C300:アクリロニトリルポリマーとメタクリル酸メチルポリマーの2成分ブレンド繊維、3デシテックス×3mm)をPFIミル(熊谷理機工業社製)を用いて1万回転処理し、電子顕微鏡による観察で平均繊維径1.0μmと確認されたフィブリル化したアクリル繊維(A)を調製した。
【0039】
フィブリル化していない三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P C300、3デシテックス×3mm)をPFIミルを用いて3000回転処理し、平均繊維径2.0μmのフィブリル化したアクリル繊維(B)を調製した。
【0040】
フィブリル化していない三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P C300、3デシテックス×3mm)をPFIミルを用いて1000回転処理し、平均繊維径2.5μmの枝部が発生したフィブリル化したアクリル繊維(C)を調製した。
【0041】
フィブリル化していない三菱レイヨン社製アクリル繊維(A.H.F:アクリロニトリルポリマーとセルロースアセテートポリマーの2成分ブレンド繊維、3デシテックス×6mm)をダブルディスクリファイナーを用いて20回繰り返し処理し、平均繊維径0.7μmのフィブリル化したアクリル繊維(A2)を調製した。
【0042】
フィブリル化したアクリル繊維(A)と三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P 0.1デシテックス×6mm:繊維径 約3.5μm)をそれぞれ50/50とする配合で水中に順次添加混合し、1%濃度の水性スラリーを調製した。この水性スラリーを用いて坪量30g/m2のウェブを傾斜短網抄紙機で抄造した。次に、この抄造ウェブを76メッシュの平織りのプラスチックワイヤー上に積載し、3列ノズルにて水を圧力8×106Pa、加工速度20m/分の条件で噴射して絡合を行った。更にウェブを反転し、同様の条件で水流噴射して絡合を行い、70℃で乾燥して不織布1を作製した。
【0043】
フィブリル化したアクリル繊維(A)と三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P 0.1デシテックス×6mm:繊維径 約3.5μm)及び帝人ファイバー社製ポリエチレンテレフタレート繊維(テピルスTM04PN 0.3デシテックス×5mm:繊維径 約5.5μm)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、不織布1と同じ方法で加工を行い、不織布2を得た。
【0044】
フィブリル化したアクリル繊維(A2)と三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P 0.1デシテックス×6mm:繊維径 約3.5μm)をそれぞれ50/50とする配合とした以外は、不織布1と同じ方法で加工を行い、不織布3を得た。
【0045】
三菱レイヨン社製アクリル繊維(ボンネルM.V.P 0.1デシテックス×6mm:繊維径 約3.5μm)のみを配合した以外は、不織布1と同じ方法で加工を行い、不織布4を得た。
【0046】
フィブリル化したアクリル繊維(A)の替わりに、フィブリル化したアクリル繊維(B)を配合した以外は、不織布1と同じ方法で加工を行い、不織布5を得た。
【0047】
フィブリル化したアクリル繊維(A)の替わりに、フィブリル化したアクリル繊維(C)を配合した以外は、不織布1と同じ方法で加工を行い、不織布6を得た。
【0048】
〔感熱性平版印刷版の作製〕
厚さ150μmの両面ポリエチレン被覆紙(RC紙)をコロナ放電加工した後、下記処方からなる感熱層(画像形成層)塗工液を塗布、乾燥し感熱性平版印刷版を作製した。乾燥塗工量は2μmとした。
【0049】
(感熱層塗工液)
・親水性樹脂;ゼラチン(12%水溶液) 80部
(株式会社ニッピ IK3000)
・熱溶融性微粒子;カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体 30部
(大日本インキ化学工業(株) ラックスター7132−C)(固形分45%)
・感熱顕色剤;4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン 30部
(日本曹達株式会社製 D−8)分散液(30%水分散液)
・感熱発色剤;3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 9部
(山本化成製ODB2)分散液(30%水分散液)
・感熱感度調整剤;1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン 30部
(三光株式会社製KS−232)分散液(30%分散液)
・硬膜剤;ジビニルスルホン 1.2部
【0050】
〔クリーニング評価〕
東芝ホクト電子社製1200dpiサーマルプリントヘッド(ヘッド平均抵抗値7kΩ)を装着した感熱プリンタにて、印刷速度2msec/line、印加エネルギー0.02W/dotの印字条件にて120lpiの網点画像を下記のようにそれぞれ連続出力した後に、それぞれの不織布にてサーマルヘッド表面の発熱体部分を清掃しヘッドカスの除去具合を目視判定及び印字した場合の画像スジの発生有無(ヘッドカスが付着、残存している場合には伝熱状態が変わるため付着部がスジ状に見える)により比較した。またクリーナー液として市販のイソプロピルアルコールを不織布1〜6に含浸させて、同様に出力後、清掃を実施し比較した。この場合には、清掃直後に感熱記録材料を装着して直ちに印字すると一部クリーナー液が感熱記録材料に付着した部分では印字品質の低下が見られた。
【0051】
市販のFAX用感熱紙(厚み62μm)及び上記感熱性平版印刷版にてA4サイズ500枚連続出力した結果を表1に示す。またサーマルヘッドの発熱部の摩耗状態を観察するために、摩擦試験機II型(安田精機製作所製)にて上記サーマルヘッドの発熱部に対する不織布1〜6による摩耗性を、サーマルヘッド発熱部の面質の顕微鏡観察により調査し、結果を併記した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記の結果から明らかなように、本発明のクリーニング方法によれば、サーマルヘッドに付着したヘッドカスや異物などの汚れを確実に除去することができるクリーニング方法を提供することが可能となる。特に感熱性平版印刷版を用いた場合に、クリーナー液を使わず乾式クリーニングにおいても良好に長期に渡って使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に感熱層を有する感熱記録材料を搬送しつつサーマルヘッドを圧接させ熱印字を行なう感熱プリンタが有する該サーマルヘッドの発熱部を、平均繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維を含有する不織布により乾式クリーニングすることを特徴とするサーマルヘッドのクリーニング方法。
【請求項2】
前記感熱記録材料が、最表層として親水性樹脂と熱溶融性微粒子を含有する感熱層を有する感熱性平版印刷版であることを特徴とする請求項1記載のサーマルヘッドのクリーニング方法。

【公開番号】特開2009−241305(P2009−241305A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88377(P2008−88377)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】