説明

サーマルポジ型平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法

【課題】未露光部の現像処理に対する保持性を含めた耐薬品性、露光部の良好な現像性、及び高い耐久性(耐刷性)といった平版印刷版に要求される特性を高いレベルで満足し、しかも高いラチチュードを実現するサーマルポジ型平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】表面親水性の支持体上側に、1層以上の記録層を有するサーマルポジ型平版印刷版原版であって、前記記録層のいずれか同じ層あるいは別の層に、核をなす原子群に3つ以上のポリマー鎖が結合して放射状に分岐している星型ポリマーと赤外線吸収剤とを含有するサーマルポジ型平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルポジ型平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷におけるレーザ露光・現像に関連する技術の発展は目ざましい。特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源としてレーザは非常に有用であり、これに対応する平版印刷原版の開発が極めて重要である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とする。このIR染料等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。しかしながら、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料では、活性度の落ちた疲労現像液での処理性(現像ラチチュード)が十分なものではなかった。
【0004】
このような、現像ラチチュードに係る性能を改善するために、非画像部をより容易に現像し得る、即ち、アルカリ水溶液に対する溶解性がより良好な特性を有する材料からなる記録層を用いることが考えられる。しかし、このような記録層は、画像部領域においても化学的に弱くなり、通常印刷における耐久性、更には、現像液や印刷中に使用されるインキ洗浄溶剤、プレートクリーナー等によりダメージを受け易くなるなど、耐薬品性に劣る傾向があった。
【0005】
本出願人は、現像ラチチュード等を改良する目的で、先に以下のような技術を開発した。つまり、記録層を重層化し、アルカリ可溶性の高い下層を設け、その上層に特定の高分子化合物を適用したものを過去に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−218914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、上記特許文献の技術に鑑み、平版印刷版のさらなる印刷性能の向上を目指し、近時求められる要求性能を満足し、しかも良好な現像ラチチュードを実現しうる材料を探索した。
本発明の第一の目的は、未露光部の現像処理に対する保持性を含めた耐薬品性、露光部の良好な現像性、及び高い耐久性(耐刷性)といった平版印刷版に要求される特性を高いレベルで満足し、しかも高いラチチュードを実現するサーマルポジ型平版印刷版原版及びその製造方法を提供することである。本発明の第二の目的は、低pH現像液による現像であっても、上記項目において高い性能を示し、かつ露光後経時による現像性の低下が少ない(焼溜め性が良好な)サーマルポジ型平版印刷版原版及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は以下の手段により達成された。
(1)表面親水性の支持体上側に、1層以上の記録層を有するサーマルポジ型平版印刷版原版であって、前記記録層のいずれか同じ層あるいは別の層に、核をなす原子群に3つ以上のポリマー鎖が結合して放射状に分岐している星型ポリマーと赤外線吸収剤とを含有するサーマルポジ型平版印刷版原版。
(2)前記星型ポリマーが下記一般式(I)〜(VIII)で表される化合物の少なくとも1つであることを特徴とする(1)に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【0009】
【化1】

(前記各式中、Plは分子量1000以上1,000,000以下のポリマー鎖を表し、Aは分子量100以上1500以下の原子群を表す。)
【0010】
(3)上記一般式(I)〜(VIII)中のAが硫黄原子を含有する連鎖移動剤由来の化合物であることを特徴とする(2)記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
(4)前記星型ポリマーをなす核を形成する原料化合物が下記式CT−1〜CT−8のいずれかで表されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【0011】
【化2】

(5)前記一般式(I)〜(VIII)のポリマー側鎖PIが下記一般式(A)〜(C)で表される化合物群より選択される化合物に由来するものであることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【0012】
【化3】

(式中、R、Rは水素原子またはメチル基を表す。R、R、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。RとR、R10とR11は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0013】
(6)前記記録層がさらにアルカリ可溶性樹脂を含有する(1)〜(5)のいずれか1項に記載にサーマルポジ型平版印刷版原版。
(7)前記支持体上の層として、順に、下塗層と、記録層をなす下層及び上層とを有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
(8)前記星型ポリマーを記録層の上層もしくは下層に有し、さらに上層に前記アルカリ可溶性樹脂をなすノボラック樹脂を含有することを特徴とする(7)に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
(9)前記下層にさらに前記赤外線吸収剤を含有することを特徴とする(7)又は(8)に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
(11)前記アルカリ水溶液がアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤を含むことを特徴とする(10)に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のサーマルポジ型平版印刷版原版は、未露光部の現像処理に対する保持性を含めた耐薬品性に優れ、露光部の良好な現像性及び高い耐久性(耐刷性)を発揮し、しかも高い現像ラチチュードを実現する。さらに、上記の各項目において優れた性能を発揮し、かつ、低pH現像液による現像であっても露光後経時による現像性の低下を抑え、良好な焼溜め性を実現することができる。
また、本発明の製造方法によれば、上述した高い印刷性能を発揮するサーマルポジ型平版印刷版原版を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の平版印刷版原版の重層構成の一実施態様を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は本発明の平版印刷版原版の単層構成の一実施態様を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
<平版印刷版原版>
本発明の平版印刷版原版は、支持体上の1層以上の記録層のいずれかの層に、(A)3つ以上のポリマー鎖が核をなす原子群に結合して放射状に分岐している星型ポリマーと、(B)アルカリ可溶性樹脂と、(C)赤外線吸収剤とを含有する。ここで記録層が2層以上であるとき、上記成分(A)〜(C)は各々同一の層に含まれていても、別の層に含まれていてもよい。その層構成としては、単層構成(図2参照。下塗り層3を有する支持体4上に画像記録層1を有する)でも、上層と下層とからなる記録層を備える重層構成(図1参照。下塗り層3を有する支持体4上に下層12、上層11をこの順に有する)であってもよい。現像ラチチュードの観点から、赤外線吸収剤を含む下層と、熱によりアルカリ水溶液への溶解性を向上させる上層とを順次備えてなる重層構成であることが好ましい。このとき(A)主鎖が3つ以上に分岐している高分子化合物は下層に添加しても上層に添加してもよい(詳細は後記表1参照)。
ここで「順次備える」とは、支持体上に、下層と上層とがこの順に配置されることを意味し、所望により、その他の層、例えば、下塗り層、表面保護層など任意の層をさらに有していてもよい。本発明においては、効果の観点から、下層と上層とは隣接して形成されることが好ましい。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0017】
((A)主鎖が3つ以上に分岐している高分子化合物)
本発明に用いられるポリマー鎖が核に結合し3つ以上に分岐している星型ポリマーは、以下の化学構造式に示される構造を有していることが好ましい。これらは、ポリマー鎖Plの片末端が、中心骨格(核)Aに結合している構造を有しており、ポリマー側鎖の片末端がポリマー主鎖に結合しているグラフト型ポリマーとは異なる。
この観点から、星型ポリマーの核Aは炭素原子(C)1つで構成されることはなく、分子量100以上1,500以下の原子群で構成されていることが好ましく、200以上1,000以下の原子群で構成されていることがより好ましく、300以上800以下の原子群で構成されていることが最も好ましい。また異なる側面から言うと、核Aは対称形の構造であることが好ましい。ここで対称形の構造とは、回転操作、鏡映操作、反転操作、及びそれらの組み合わせにより元の構造となることを言うものとする。ただし、対象性の厳密な一致までは必要ではなく、本発明の効果を奏する範囲において対称形からずれる部分があってもよい。あるいは、核Aは放射状に延びる3以上の結合可能部位を有する原子群であることが好ましいと言える。更に、核Aは硫黄原子を含有する連鎖移動剤由来であることが現像ラチチュードの観点から好ましい。核Aが分子量100以下となると星型ポリマー製造時の反応性の観点から不利となり、核Aが分子量1,500以上となると、球状構造から外れてきてしまい網目状構造が多くなるため、現像ラチチュードへの効果の点で不利となると考える。
同様の観点からポリマー鎖Plは、1,000以上1,000,000以下の原子群で構成されていることが好ましく、3,000以上500,000以下の原子群で構成されていることがより好ましく、5,000以上100,000以下の原子群で構成されていることが最も好ましい。また、ポリマー側鎖はポリオレフィンを主鎖とする構造であることが好ましく、そこに親水性基を有する二次側鎖を有する構造であることが好ましい。
【化1】

【0018】
本発明においてこのような星型ポリマーを用いることより奏する効果の理由(作用機序)は、未解明の点を含むが下記のように説明できる。すなわち、通常高分子化合物は、印刷原版の記録層において耐刷力を高めたり耐薬品性を高めたりする効果が期待できる。一方、現像液の浸透に対しては阻害となり、現像性を低下させる要因となりうる。これに対し、上記星型ポリマーを採用することにより、高分子化合物のもつ耐刷力や耐薬品性における利点は維持して、その網目状に広がりにくい分子構造から現像液の浸透を阻害せず、むしろそれを促し良好な現像性を実現するものと推測される。これにより、通常困難な、高い現像ラチチュードと耐薬品性と耐刷性との同時満足を実現し、さらに必要によっては低pH現像液での現像や焼溜め性の良化を実現することができたと考えられる。
【0019】
本発明に用いられる星型ポリマーは、上記の構造を有している限り、何れの星型ポリマーでも使用することができる。かかる星型ポリマーとしては、「新実験化学講座 高分子化学I」社団法人 日本化学会編集 p208〜210に記載のカップリング法やアニオン生長法により得られる星型ポリマーや、特開平10−279867号公報に記載のジシオカーバメント基を含有する化合物および/またはザンテート基を含有する化合物を開始剤として、光照射下に重合反応を行う合成方法により得られる星型ポリマーや、多官能チオールを連鎖移動剤として使用し、通常のラジカル重合により得られる星型ポリマーが挙げられるが、合成の容易さと得られるポリマーの性能の観点から、多官能チオールを連鎖移動剤として使用し、通常のラジカル重合により得られる星型ポリマーであることが好ましい。このような星型ポリマーは、例えば多官能チオールを核(A)として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖(Pl)を有する星型ポリマーが挙げられる。
【0020】
本発明で星型ポリマーの核(A)をなす原料化合物としてその合成に用いられる多官能チオールは、1分子内に複数個のチオール基を有する化合物であれば何れも好適に使用することができるが、3官能以上10官能以下の多官能チオールが好ましく、3官能以上8官能以下のチオールがより好ましく、4官能以上6官能以下のチオールが特に好ましい。以下に多官能チオール化合物の好適な例について例示する。
【0021】
【化2】

【0022】
上記の構造の中では、現像性の観点から、(CT−5)、(CT−6)、(CT−7)、(CT−8)の構造が特に好ましい構造として挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる星型ポリマーは、上記のような多官能チオールを核(A)として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖(Pl)を有する高分子化合物である。本発明で用いる星型ポリマーにおけるポリマー鎖としては、ラジカル重合により製造可能な公知のビニル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、スチレン系ポリマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸系ポリマー、スチレン系ポリマーが特に好ましい。
本発明に用いられるポリマー鎖の好適な一例としては、親水性基を含有する繰り返し単位を有する共重合体が挙げられる。親水性基としては、スルホンアミド基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、水酸基、カルボン酸アミド基、硫酸(塩)基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、ホスホベタイン基、N−オキサイド基、アンモニウム基、−(CHCHO)R、−(CO)R(Rは水素、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基を表し、n、mは1〜100の整数を表す)及びそれらの組み合わせが挙げられる。
これら親水性官能基の中でも、スルホンアミド基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、カルボン酸アミド基、カルボベタイン基、スルホベタイン基、ホスホベタイン基、−(CHCHO)Rがより好ましく、スルホンアミド基、カルボン酸(塩)基、カルボン酸アミド基が更に好ましい。
前記一般式(I)〜(VIII)のポリマー側鎖Plは下記一般式(A)〜(C)で表される化合物群より選択される化合物に由来するものであることが好ましい。
【0024】
【化3】

(式中、R、Rは水素原子またはメチル基を表す。R、R、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。RとR、R10とR11は互いに結合して環を形成していてもよい。)
1価の有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基などがあげられる。
特に、R、R及びR12については、水素原子、無置換アルキル基・アリール基、酸性水素原子を置換基として有するアルキル基・アリール基が好ましく、酸性水素原子を有するアリール基が更に好ましい。酸性水素原子を有する置換基としては、カルボン酸基、スルホンアミド基が好ましい。
【0025】
以下に本発明に用いられる星型ポリマーの側鎖Plをなす原料化合物であり、親水性基を有する重合単位をなすものについて、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書において置換基に関してxxx基というときには、そのxxx基に任意の置換基を有していてもよい。また、同一の符合で示された基が複数ある場合は、互いに異なっていても同じであってもよい。複数の基が連結して環を形成するときには、その複数の基のすべてが連結していても、その一部が連結していてもよい。
【0026】
【化4−1】

【0027】
上記構造のなかでは、現像性、耐薬品性の観点から、(MA−1)、(MA−2)、(MA−7)の構造が特に好ましく、(MA−1)、(MA−7)の構造がより好ましい。
これら親水性基は、星型ポリマー1gあたりに、0.5mmol/g以上50mmol/g以下で含まれることが好ましく、1.0mmol/g以上30mmol/g以下で含まれることがより好ましく、1.5mmol/g以上10mmol/g以下で含まれることが特に好ましい。親水基が0.5mmol/g以下であると、現像性が不足する懸念が生じ、50mmol/g以上であると耐刷性が劣化する懸念が生じる。
【0028】
本発明に用いられる星型ポリマーのポリマー鎖は、上記親水性基を有する重合単位の他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルの重合単位、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体の重合単位、α-ヒドロキシメチルアクリレートの重合単位、スチレン誘導体、N置換マレイミド誘導体、(メタ)アクリロニトリルの重合単位を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソーブチル基、tert−ブチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、N-イソプロピルアクリルアミド、N-フェニルメタクリルアミド、N−(4-メトキシカルボニルフェニル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド等が挙げられる。α-ヒドロキシメチルアクリレートとしては、α-ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α-ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、スチレン、4−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。N置換マレイミド誘導体としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
以下に本発明に用いられる星型ポリマーの親水性基を有する重合単位以外の重合単位について、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化4−2】

【0030】
上記構造のなかでは、耐刷性の観点から、(MB−1)、(MB−2)、(MB−3)、(MB−11)、(MB−12)、(MB−13)、(MB−14)の構造が特に好ましい。(MB−11)、(MB−12)、(MB−13)、(MB−14)の構造が最も好ましい。
本発明に用いられる星型ポリマーの質量平均分子量は、5,000〜50万が好ましく、10,000〜25万がより好ましい。以下に本発明で用いられる星型ポリマーの具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0031】
本発明において、分子量というとき特に断らない限り質量平均分子量を意味し、分子量及び分散度は下記の測定方法で測定した値をいう。
[分子量・分散度の測定方法]
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定する。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
【0032】
【化5−1】

【0033】
【化5−2】

注:表中下段の数値はモル%を表す。
【0034】
本発明の星型ポリマーは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
星型ポリマーの画像記録層中での含有量は、固形成分の総量に対して、5〜90質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。この量が上記上限値以下であると、現像ラチチュードに優れ、上記下限値以上であると耐刷性に優れる。
星型ポリマーの構造、構成については、NMRスペクトル解析、MS分析、元素分析等定法により同定することができる。また、分岐度については、大学院高分子科学(講談社サイエンティフィク;野瀬卓平・中浜精一・宮田清蔵編)62ページ記載の方法で算出することができる。
【0035】
((B)アルカリ可溶性樹脂)
本発明においては、支持体上のいずれかの層がアルカリ可溶性樹脂を含有し、このアルカリ可溶性樹脂がノボラック樹脂であることが好ましい。本発明に用いることができる(B)ノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
本発明においてアルカリ可溶性樹脂の含有量は、固形成分の総量に対して、0質量%を超え98質量%以下であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましい。また、前記(A)星型ポリマー100質量部に対し0質量部を超え90質量部以下であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。この量が上記上限値以下であると、現像ラチチュード、耐薬品性に優れ、上記下限値以上であると耐刷性に優れる。
【0036】
((C)赤外線吸収剤)
本発明の平版印刷版原版は、その記録層に赤外線吸収剤を含むことが好ましい。赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
【0037】
そのような赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
なお、本明細書において***化合物とは、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオン等を含む意味に用いる。典型的には、当該化合物及び/又はその塩を意味する。
【0038】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明における上層に使用した場合に、高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0039】
【化6−1】

【0040】
一般式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0041】
【化6−2】

【0042】
上記式中、Xaは後述するZaと同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0043】
21及びR22は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R21及びR22は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R21とR22とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0044】
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。
、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R23及びR24は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
25、R26、R27及びR28は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za-は必要ない。好ましいZaは、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0045】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
赤外線吸収剤として特に好ましくは、以下に示すシアニン染料Aである。
【0046】
【化7】

赤外線吸収剤を添加する際の添加量としては、全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜30質量%であることが特に好ましい。添加量が0.01質量%以上であると、高感度となり、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
【0047】
<記録層の構成>
以下、記録層が重層構造の場合を中心に説明していくが、本発明の好ましい実施形態における層構成と各成分の配置としては下記の組合せが挙げられる。
【表1】

【0048】
<重層構造のときの下層>
重層構造の場合の下層には、上記(C)赤外線吸収剤を含むことが好ましい。下層には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、所望により他の成分を含有してもよい。例えば、(A)星型ポリマー、(B)ノボラック樹脂とは構造の異なるアルカリ可溶性樹脂(他のアルカリ可溶性樹脂と称する)などが挙げられる。
【0049】
(他のアルカリ可溶性樹脂)
本発明において、「アルカリ可溶性」とは、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味する。
下層に用いられる他のアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の酸性の官能基を有するものが好ましく、このような、アルカリ可溶性を付与する酸性の官能基を有するモノマーを10モル%以上含む樹脂が挙げられ、20モル%以上含む樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その質量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
【0050】
前記他のアルカリ可溶性樹脂は、質量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、質量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記他のアルカリ可溶性樹脂の分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
下層に所望により含まれる他のアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における下層の全固形分に対する他のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、0〜98質量%の添加量で用いてもよい。また、前記(A)星型ポリマー100質量部に対し、80質量部以下の割合で含みうる。
【0051】
<重層構造のときの上層>
上層における熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する機構には特に制限はなく、バインダー樹脂を含み、加熱された領域の溶解性が向上するものであれば、いずれも用いることができる。画像形成に利用される熱としては、赤外線吸収剤を含む下層が露光された場合に発生する熱が挙げられる。
熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する上層としては、例えば、ノボラック、ウレタン等の水素結合能を有するアルカリ可溶性樹脂を含む層、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂と溶解抑制作用のある化合物とを含む層、アブレーション可能な化合物を含む層、などが挙げられる。
また、上層に、更に赤外線吸収剤を添加することにより、上層で発生する熱も画像形成に利用することができる。赤外線吸収剤を含む上層の構成としては、例えば、赤外線吸収剤と水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂と溶解抑制作用のある化合物とを含む層、赤外線吸収剤と水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂と熱により酸を発生する化合物とを含む層などが挙げられる。
【0052】
以下、上層に含まれる成分について説明する。
(水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂)
本発明に係る上層には、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することで、赤外線吸収剤とアルカリ可溶性樹脂が有する極性基との間に相互作用が形成され、ポジ型の感光性を有する層が形成される。上述したものを含めて言うと、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。前記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が好ましく例示できる。なお、下式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0053】
【化8】

【0054】
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、上記重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
【0055】
使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他のエチレン性不飽和モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
【0056】
また、アルカリ可溶性樹脂としては、上述したように(B)ノボラック樹脂が好ましく挙げられる。
【0057】
前記水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、質量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、質量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の画像記録材料の上層におけるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における上層の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、全固形分中、2.0〜99.5質量%であることが好ましく、10.0〜99.0質量%であることがより好ましく、20.0〜90.0質量%であることが更に好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が2.0質量%以上であると記録層(感光層)の耐久性に優れ、また、99.5質量%以下であると、感度、及び、耐久性の両方に優れる。
【0058】
(酸発生剤)
画像記録層の上層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、上層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
【0059】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特願平8−9444号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
【0060】
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4-、PF6-、ClO4-などが好ましい。
【0061】
また、特開2008−195018公報の段落番号〔0036〕〜〔0045〕において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物を、本発明における酸発生剤として好適に用いることができる。
アジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
酸発生剤を上層に添加する場合の、好ましい添加量は、上層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
【0062】
(酸増殖剤)
本発明における上層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
【0063】
酸増殖剤は、WO95/29968号、WO98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等に記載の酸増殖剤を1種、或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
本発明における酸増殖剤の好ましい具体例としては、例えば、特開2001−66765公報段落番号〔0056〕〜〔0067〕に記載される化合物を挙げることができる。
【0065】
酸増殖剤を上層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01〜20質量%,好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成される。
【0066】
(その他の添加剤)
前記下層及び上層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。以下に挙げる添加剤は、下層のみに添加してもよいし、上層のみに添加してもよいし、両方の層に添加してもよい。
【0067】
(現像促進剤)
前記上層及び/又は下層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0068】
(界面活性剤)
上層及び/又は下層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2.0質量%が更に好ましい。
【0069】
(焼出し剤/着色剤)
上層及び/又は下層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤及び着色剤としては、例えば、特開2009−229917号公報の段落番号〔0122〕〜〔0123〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも適用しうる。
これらの染料は、下層又は上層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0070】
(可塑剤)
上層及び/又は下層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、下層又は上層の全固形分に対し、0.5〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0071】
(ワックス剤)
上層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、上層中に占める割合が0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0072】
<下層及び上層の形成>
本発明の平版印刷版原版における上層及び下層は、通常、前記各成分を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。
【0073】
なお、下層及び上層は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる成分と、上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法が挙げられる。
なお、2層を分離して形成する他の手法として上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去さる方法等が挙げられるが、この方法を併用することで、層間の分離が一層良好に行われることになる。
以下、これらの方法について詳述するが、2つの層を分離して塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
【0074】
下層に含まれる成分と上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法としては、上層用塗布液を塗布する際に、下層に含まれる成分のいずれもが不溶な溶剤系を用いるものである。これにより、二層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、下層成分として、上層成分であるアルカリ可溶性樹脂を溶解するメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等の溶剤に不溶な成分を選択し、該下層成分を溶解する溶剤系を用いて下層を塗布・乾燥し、その後、アルカリ可溶性樹脂を主体とする上層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等で溶解し、塗布・乾燥することにより二層化が可能になる。
【0075】
次に、2層目(上層)を塗布後に、極めて速く溶剤を乾燥させる方法としては、ウェブの走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エアーを吹きつけることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロール(加熱ロール)よりウェブの下面から伝導熱として熱エネルギーを与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
【0076】
本発明の平版印刷版原版の支持体上に塗布される下層成分の乾燥後の塗布量は、0.5〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.6〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.5g/m以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
また、上層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.08〜0.7g/mの範囲であることがより好ましい。0.05g/m以上であると、現像ラチチュード、及び、耐傷性に優れ、1.0g/m以下であると、感度に優れる。
下層及び上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.6〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.7〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.6g/m以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
【0077】
<単層構造の場合の画像記録層>
本発明の平版印刷版原版の記録層は、上記の重層構造のみならず、単層構造であってもよい。単層構造をとる場合の画像記録層は、少なくとも(A)星型ポリマー、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)赤外線吸収剤を含み、上記の他の成分を必要に応じ含有してもよい。画像記録層の形成は、重層構造の上層及び下層の形成と同様に、溶剤を用いた任意の塗布法により形成することができる。
単層構造の場合の乾燥後の塗布量としては、0.6〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.7〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.6g/m以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
【0078】
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
【0079】
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。アルミニウム支持体の表面処理については、例えば、特開2009−175195号公報の〔0167〕〜〔0169〕に詳細に記載されるような、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理、表面の粗面化処理、陽極酸化処理などが適宜、施される。
陽極酸化処理を施されたアルミニウム表面は、必要により親水化処理が施される。
親水化処理としては、2009−175195号公報の〔0169〕に開示されている如き、アルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、フッ化ジルコン酸カリウム或いは、ポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0080】
<下塗層>
本発明においては、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。下塗層に使用される化合物の詳細、下塗層の形成方法は、特開2009−175195号公報の段落番号〔0171〕〜〔0172〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用される。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/mであることが好ましく、5〜100mg/mであることがより好ましい。被覆量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
【0081】
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
【0082】
<平版印刷版の製版方法>
本発明の平版印刷版の作製方法は、前記本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含むことを特徴とする。
本発明の平版印刷版の作製方法によれば、焼きだめ性が良好となり、得られた平版印刷版は、非画像部の残膜に起因する汚れの発生がなく、画像部の強度、耐久性に優れる。
以下、本発明の製版方法の各工程について詳細に説明する。
【0083】
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザ又は半導体レーザにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cmであることが好
ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
【0084】
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
【0085】
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0086】
<現像工程>
・現像液
本発明の平版印刷版の製版方法はアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を含む。現像工程に使用されるアルカリ水溶液(以下、「現像液」ともいう。)は、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液であることが好ましく、pH9.0〜10.0であることがより好ましい。また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。ここでのpHは室温(25℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値を言う。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、及び、両性の界面活性剤のいずれも用いることができるが、既述のように、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
本発明の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0087】
本発明の現像液に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0088】
本発明の現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中でも、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又は、アルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0089】
本発明の現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例は、特開2008−203359〔0255〕〜〔0278〕、特開2008−276166〔0028〕〜〔0052〕等に記載されているものを用いることができる。
【0090】
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、HLB値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
【0091】
前記現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及びノニオン界面活性剤が好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン性界面活性剤及び、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するノニオン界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0092】
前記現像液を好適なpHに保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全質量に対して、0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0094】
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的に他のアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
【0095】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。湿潤剤は、現像剤の全重量に対し、0.1〜5質量%の量で使用されることが好ましい。
【0096】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全重量に対して、0.01〜4質量%の範囲が好ましい。
【0097】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類又はホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。キレート剤は現像液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量は、現像液の全重量に対して、0.001〜1.0質量%が好適である。
【0098】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系の化合物を使用することができ、HLB値が5以下の化合物であることが好ましい。シリコーン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化等がいずれも使用できる。消泡剤の含有量は、現像液の全重量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲が好適である。
【0099】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全重量に対して、0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0100】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(商品名、エッソ化学(株)製)、ガソリン、若しくは、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、又は、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0101】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0102】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が好ましい。
【0103】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全重量に対し、0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0104】
・現像処理
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0105】
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0106】
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体における腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20〜400μm、毛の長さは5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
【0107】
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去がさらに確実となる。更に、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0108】
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
本発明の平版印刷版の作製方法において好適に用いられる自動処理機としては、現像部と乾燥部とを有する装置が用いられ、平版印刷版原版に対して、現像槽で、現像とガム引きとが行なわれ、その後、乾燥部で乾燥されて平版印刷版が得られる。
【0109】
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0111】
(合成例)
星型ポリマー(P−1)の合成
3つ口フラスコ中にN,N−ジメチルアセトアミド:13.22g、MA−1:3.46gを秤量し、窒素気流下80℃に加熱した。この溶液中に、MA−1:13.84g、MB−1:6.41g、MB−14:3.18g、CT−1:1.43g、V−601(商品名、和光純薬工業(株)製):0.46g、N,N−ジメチルアセトアミド:52.86gから成る混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を続けた。反応後、良く攪拌した水:4000gに注ぐと固体が析出した。析出した固体をろ過し、水洗後減圧下にて乾燥して、上記構造式で表される星型ポリマー(P−1)を得た。質量平均分子量は、5.5万であった。
【0112】
(実施例1、比較例1)・・・単層の記録層を有する印刷版原版
<支持体の作製>
JIS A 1050アルミニウムシートをパミス−水懸濁液を研磨剤として回転ナイロンブラシで表面を砂目立てした。このときの表面粗さ(中心線平均粗さ)は0.5μmであった。水洗後、10%苛性ソーダ水溶液を70℃に温めた溶液中に浸漬して、アルミニウムの溶解量が6g/mになるようにエッチングした。水洗後、30%硝酸水溶液に1分間浸漬して中和し、十分水洗した。その後に、0.7%硝酸水溶液中で、陽極時電圧13ボルト、陰極時電圧6ボルトの矩形波交番波形電圧を用いて20秒間電解粗面化を行ない、20%硫酸の50℃溶液中に浸漬して表面を洗浄した後、水洗した。
粗面化後のアルミニウムシートに、20%硫酸水溶液中で直流を用いて多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行なった。電流密度5A/dmで電解を行ない、電解時間を調節して、表面に質量4.0g/mの陽極酸化皮膜を有する基板を作製した。この基板を100℃1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間処理して封孔率60%の基板(a)を作成した。
基板(a)をケイ酸ナトリウム2.5質量%水溶液で30℃10秒間処理して表面親水化を行なった後、下記下塗り液を塗布し、塗膜を80℃で15秒間乾燥し平版印刷版用支持体〔A〕を得た。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/mであった。
【0113】
(下塗り液)
・分子量2.8万の下記共重合体 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0114】
【化9】

【0115】
<記録層の形成>
得られた下塗り済の支持体〔A〕に以下の感光液1を塗布量が1.8g/m2になるよう塗布、乾燥して感光層(記録層)を形成し、図2に示した単層構造の平版印刷版用原版を得た。
(感光液1)
・ノボラック樹脂 1.0g
(m/p−クレゾール(6/4)、質量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%)
・主鎖が3つ以上に分岐している星型ポリマー(下記の表2を参照)
1.0g
・シアニン染料A(下記構造) 0.1g
・無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを
6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系ポリマー(メガファックF−176(固形分20%)、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.015g
・フッ素系ポリマー(メガファックMCF−312(固形分30%)、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.035g
・メチルエチルケトン 4.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤製)4.0g
・γ−ブチロラクトン 4.0g
【0116】
【化10】

【0117】
<未露光部保持時間の評価>
得られた平版印刷版原版を富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ現像浴に、時間を変えて浸漬した。画像濃度が、現像液未浸漬のものと比べ、95%となった浸漬時間を、未露光部保持時間とした。
<露光部現像時間>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ現像浴に、時間を変えて浸漬した。画像濃度が、Al支持体の画像濃度と同等になった浸漬時間を露光部現像時間とした。
【0118】
<現像ラチチュードの評価>
得られた平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にてビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、下記組成のアルカリ現像液の、水の量を変更することにより希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ、富士フイルム(株)製PSプロセッサー900H(商品名)を用い、液温を30℃に保ち、現像時間22秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の感光層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。
その結果を表2に示す。
【0119】
<耐刷性の評価>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmで、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP940Hを用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行った。これを、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロン(商品名)を用いて連続して印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。耐刷性は、比較例1−1の耐刷数を1.0とした際の相対値として示した。なお、テストパターンとしては、2cm×2cmのベタ画像(全面画像部)を用いた。印刷物の目視評価により、印刷部にカスレやヌケが発生した枚数を刷了枚数とした。このとき、「1.0」は4万枚であった。
<バーニング処理後の耐刷性の評価>
上記耐刷性の評価同様に現像して得られた平版印刷版の版面を水洗後、富士フイルム(株)製のバーニング整面液BC−7(商品名)で拭いた後、約270℃で2分間、バーニング処理を行った。その後、水洗し、富士フイルム(株)製ガムFP−2W(商品名)を水で体積を2倍に希釈した液で版面を処理した。その後、耐刷性の評価同様に、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)(商品名)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、バーニング処理後の耐刷性を評価した。なお、耐刷性は、比較例1−1の耐刷数を1.0とした際の相対値として示した。
【0120】
<耐薬品性の評価>
実施例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光・現像および印刷を行った。この際、5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム社製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加え、耐薬品性を評価した。この時の耐刷性が、前述の耐刷枚数の95%〜100%であるものを◎、80%〜95%であるものを○、60〜80%であるものを△、60%以下を×とした。クリーナーで版面を拭く工程を加えた場合であっても、耐刷枚数に変化が少ないほど耐薬品性に優れるものと評価する。結果を以下の表2に示す。
<露光経時後の露光部現像時間>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、室温25℃、湿度60%の条件下に40分静置した後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ現像浴に、時間を変えて浸漬した。画像濃度が、Al支持体の画像濃度と同等になった浸漬時間を露光部現像時間とした。
【0121】
(現像液)
・D ソルビット 2.5 質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5 質量%
(質量平均分子量1,000)
・水 96.15質量%
【0122】
【表2】

【0123】
【化11−1】

注:表中下段の数値はモル%を表す。
【0124】
【化11−2】

【0125】
表2の結果より明らかなように、実施例の主鎖が3つ以上に分岐している星型ポリマーを用いた場合、比較例に挙げた分岐鎖が2つの場合、分岐鎖がない場合と比較して現像性、現像ラチチュード、耐薬品性が向上していることが分かる。更に、露光経時後の現像性の劣化が少ないことも確認された。
一方、実施例で主鎖が3つ以上に分岐している星型ポリマーを用いた場合、バーニング処理後の耐刷性の観点からも有利であることは、予想外の効果であった。
【0126】
(実施例2、比較例2)・・・重層の記録層を有する印刷版原版
<支持体の作製>
厚さ0.3mmのJIS A 1050アルミニウム板をパミス−水懸濁液を研磨剤として回転ナイロンブラシで表面を砂目立てした。このときの表面粗さ(中心線平均粗さ)は0.5μmであった。水洗後、10%苛性ソーダ水溶液を70℃に温めた溶液中に浸漬して、アルミニウムの溶解量が6g/m3になるようにエッチングした。水洗後、30%硝酸水溶液に1分間浸漬して中和し、十分水洗した。その後に、0.7%硝酸水溶液中で、陽極時電圧13ボルト、陰極時電圧6ボルトの矩形波交番波形電圧を用いて20秒間電解粗面化を行い、20%硫酸の50℃溶液中に浸漬して表面を洗浄した後、水洗した。粗面化後のアルミニウムシートに、20%硫酸水溶液中で直流を用いて多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。電流密度5A/dm2で電解を行い、電解時間を調節して、表面に質量4.0g/m2の陽極酸化皮膜を有する基板を作製した。この基板を100℃1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間処理して封孔率60%の基板(b)を作成した。基板(b)をケイ酸ナトリウム2.5質量%水溶液で30℃10秒間処理して表面親水化を行った後、下記下塗り液1を塗布し、塗膜を80℃で15秒間乾燥し平版印刷版用支持体[B]を得た。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
【0127】
<下塗り中間層の形成>
上述の様に作製された支持体〔B〕上に、下記の中間層形成用塗布液を塗布した後、80℃で15秒間乾燥し、中間層を設けた。乾燥後の被覆量は、15mg/m2であった。
(下塗り液1)
・分子量2.8万の下記共重合体 0.5g
・メタノール 100g
・水 1g
【0128】
【化13】

【0129】
<記録層の形成>
得られた下塗り済の支持体〔B〕に、下記組成の感光液Iを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.3g/mとなるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の塗布液IIをワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.7g/mとなる赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。この平版印刷版原版は図1に示した重層構造を有するものである。
(感光液I)
・表3記載の星型ポリマー 3.5g
・エチルバイオレットの対アニオンを
6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.15g
・赤外線吸収剤(前述のシアニン染料A) 0.25g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 30g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 15g
・γ−ブチロラクトン 15g
【0130】
(感光液II)
・ノボラック樹脂 0.68g
(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、
Mw8,000)
・赤外線吸収剤(前述のシアニン染料A) 0.045g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 15.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 30.0g
【0131】
得られた印刷版原版について、実施例1と同様の手法を用いて印刷評価を行った。
【0132】
【表3】

【0133】
表3の結果から明らかなように、重層構造の平版印刷版原版においても、実施例の主鎖が3つ以上に分岐している星型ポリマーを用いた場合、優れた効果が得られることが分かる。
【0134】
(実施例3、比較例3)・・・重層の記録層を有する印刷版原版
実施例2と同様にして、支持体を作成した。
<下塗り中間層の形成>
下塗り液1を下記に示す下塗り液2にする以外は、実施例2と同様にして、下塗り中間層を作成した。
(下塗り液2)
・分子量3.1万の下記共重合体 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0135】
【化14】

【0136】
<記録層の形成>
得られた下塗り済の支持体に、下記組成の感光液IIIを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.3g/mとなるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の塗布液IVをワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.7g/mとなる赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。この平版印刷版原版は図1に示した重層構造を有するものである。
(感光液III)
・バインダーポリマー (REF-1) 3.5g
・エチルバイオレットの対アニオンを
6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.15g
・m,p-クレゾールノボラック(m/p比=6/4、質量平均分子量6000)
0.6g
・赤外線吸収剤(前述のシアニン染料A) 0.25g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 30g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 15g
・γ−ブチロラクトン 15g
【0137】
(感光液IV)
・ノボラック樹脂 0.68g
(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、Mw8,000)
・表4記載の星型ポリマー 0.20g
・赤外線吸収剤(前述のシアニン染料A) 0.045g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 15.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 30.0g
【0138】
実施例1と同様の条件で評価を行った結果を表4に示す
【0139】
【表4】

【0140】
表4の結果から明らかなように、重層構造の平版印刷版原版の別の実施形態においても、実施例の主鎖が3つ以上に分岐している星型ポリマーを用いた場合、優れた効果が得られることが分かる。
【0141】
(実施例4、比較例4)・・・重層の記録層を有する印刷版原版
<支持体の作製><下塗り中間層の形成>
実施例1と同様にして、支持体、下塗り中間層を作成した。
<記録層の作成>
得られた下塗り済の支持体に、下記組成の感光液Vを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.2g/mとなるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の塗布液VIをワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.6g/mとなる赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。この平版印刷版原版は図1に示した重層構造を有するものである。
(感光液V)
・表5記載の星型ポリマー 3.5g
・エチルバイオレットの対アニオンを
6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.15g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、質量平均分子量6000)
0.6g
・赤外線吸収剤(前述のシアニン染料A) 0.25g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 30g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 15g
・γ−ブチロラクトン 15g
【0142】
(感光液VI)
・ノボラック樹脂 0.68g
(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、Mw8,000)
・下記のポリウレタン(PU−1) 0.15g
・赤外線吸収剤(前述のシアニン染料A) 0.045g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 15.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 30.0g
【0143】
【化15】

【0144】
<未露光部保持時間の評価>
現像液として下記現像液2を用いた以外は、実施例1と同様に未露光部保持時間の評価を行った。
<露光部現像時間>
現像液として下記現像液2を用いた以外は、実施例1と同様に露光部現像時間の評価を行った。
<現像ラチチュードの評価>
現像液として下記現像液2を用い、下記現像工程で現像すること以外は、実施例1と同様に現像ラチチュードの評価を行った。
【0145】
<耐刷性の評価>
現像液として下記現像液2を用い、下記現像工程で現像すること以外は、実施例1と同様に耐刷性の評価を行った。
<バーニング処理後の耐刷性の評価>
現像液として下記現像液2を用い、下記現像工程で現像すること以外は、実施例1と同様にバーニング耐刷性の評価を行った。
<耐薬品性の評価>
現像液として下記現像液2を用い、下記現像工程で現像すること以外は、実施例1と同様に耐薬品性の評価を行った。
<露光後強制経時後の露光部現像時間>
現像液を下記現像液2を用いた以外は、実施例1と同様に露光部現像時間の評価を行った。
【0146】
(現像工程)
露光後の平版印刷版原版を市販の自動現像処理機(現像槽25L、版搬送速度100cm/min、ポリブチレンテレフタレート繊維(毛直径200μm、毛長17mm)植え込んだ外形50mm)のブラシロール1本が搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)乾燥温度80℃)および下記に示す現像液を用いて温度30℃にて現像を行った。
(現像液2)
・水 8963.8g
・炭酸ナトリウム 200g
・炭酸水素ナトリウム 100g
・ニューコールB4SN (商品名、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸塩、
日本乳化剤(株)製) 300g
・EDTA 4Na 80g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール 0.1g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1g
(pH=9.7)
【0147】
結果を表5に示す
【0148】
【表5】

【0149】
表5の結果から明らかなように、重層構造の平版印刷版原版のまた別の実施形態においても、実施例の主鎖が3つ以上に分岐している星型ポリマーを用いた場合、優れた効果が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0150】
1 画像記録層
3 下塗り層
4 支持体
11 記録層上層
12 記録層下層
10、20 平版印刷版原版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面親水性の支持体上側に、1層以上の記録層を有するサーマルポジ型平版印刷版原版であって、前記記録層のいずれか同じ層あるいは別の層に、核をなす原子群に3つ以上のポリマー鎖が結合して放射状に分岐している星型ポリマーと赤外線吸収剤とを含有するサーマルポジ型平版印刷版原版。
【請求項2】
前記星型ポリマーが下記一般式(I)〜(VIII)で表される化合物の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【化1】

(前記各式中、Plは分子量1000以上1,000,000以下のポリマー鎖を表し、Aは分子量100以上1500以下の原子群を表す。)
【請求項3】
上記一般式(I)〜(VIII)中のAが硫黄原子を含有する連鎖移動剤由来の化合物であることを特徴とする請求項2記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【請求項4】
前記星型ポリマーをなす核を形成する原料化合物が下記式CT−1〜CT−8のいずれかで表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【化2】

【請求項5】
前記一般式(I)〜(VIII)のポリマー側鎖Plが下記一般式(A)〜(C)で表される化合物群より選択される化合物に由来するものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【化3】

(式中、R、Rは水素原子またはメチル基を表す。R、R、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。RとR、R10とR11は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項6】
前記記録層がアルカリ可溶性樹脂を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載にサーマルポジ型平版印刷版原版。
【請求項7】
前記支持体上の層として、順に、下塗層と、記録層をなす下層及び上層とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【請求項8】
前記星型ポリマーを記録層の上層もしくは下層に有し、さらに上層に前記アルカリ可溶性樹脂をなすノボラック樹脂を含有することを特徴とする請求項7に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【請求項9】
前記下層にさらに前記赤外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
【請求項11】
前記アルカリ水溶液がアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項10に記載の平版印刷版の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−189847(P2012−189847A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53869(P2011−53869)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】