説明

シアナミド水溶液、及びジシアンジアミドの製造法

【課題】従来技術では、石灰窒素からシアナミド水溶液あるいはジシアンジアミドを製造するに当たり、カルシウム成分と炭素成分の分別は行えず、原料の有効利用がなされていなかった。本発明は、石灰窒素中に含まれている炭素、アナミド態窒素、カルシウムの各成分を、それぞれ、炭素、シアナミド水溶液あるいはジシアンジアミド、炭酸カルシウムの3つに分別して併産する製造法を提供することにある。
【解決の手段】カーバイドの窒化により得られる石灰窒素を、シアナミドを含む水溶液で処理し、不溶成分である炭素を分離後、清澄液を炭酸ガスで処理し、カルシウム成分を炭酸カルシウムとして析出させ分離し、シアナミド水溶液をえる。このようにして得たシアナミド溶液はアルカリ条件で重合反応を行い、ジシアンジアミドを得ることができる。
石灰窒素を原料に、同時に3成分を分別し併産する製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
石灰窒素から製造される、シアナミド水溶液、及び、ジシアンジアミドは、農薬原料、医薬原料、あるいは、エポキシ硬化剤、染料固着剤、凝集剤などの工業用原料として広く使われている。 また、高純度の炭酸カルシウムは、プラスチック、ゴム、パルプなどの充填剤、改質剤として使用され、炭素は、グラファイトとして、電池などの電極材料として、あるいは、ゴム、顔料などの分野で使用されている。
【0002】
本発明は、石灰窒素を原料に、シアナミド水溶液あるいはジシアンジアミドを製造するに当たり、炭酸カルシウム及び炭素を同時に製造し、産業廃棄物を低減した、環境負荷の少ない製造法を提供することにある。
【背景技術】
【0003】
工業的に利用されている石灰窒素は、カーバイドの窒化反応により、以下の反応式に従い生成するので、石灰窒素中の炭素成分の混入は不可避である。
【0004】
【化1】

【0005】
従来技術では、シアナミド溶液を得るために、石灰窒素を、水(USP-3,300,281)あるいはアルコール(USP-5,017,355)に分散し、炭酸ガスを吹き込み、生成した不溶のカルシウム成分と炭素を混合物として濾別し、シアナミド溶液をえていた。
【0006】
たとえば、アメリカ特許 USP−3,300,281は、連続的にシアナミド水溶液を製造する、優れた特許であるが、水中に石灰窒素を懸濁させ、炭酸ガスと接触させる方法が記載されている。
【0007】
【化2】

【0008】
そのため、生成した炭酸カルシウムは炭素との混合物となる。
【0009】
得られた、シアナミド溶液は、反応条件を選ぶことにより、容易に重合し、ジシアンジアミドを生成する。
【0010】
【化3】

【0011】
石灰窒素から、ジシアンジアミドを製造する方法に関しては、日本特許 公告 昭―5,017,355 Canadian Chemical and Process Industries 805 (Dec. 1944)などの先行技術があるが、いずれも、最初の段階で、水に分散した石灰窒素に、炭酸ガスを反応させる方法であり、生成する炭酸カルシウムは炭素との混合物となる。
【0012】
このため、従来の方法では、シアナミド水溶液を得るため、濾過残滓には生じた炭酸カルシウムと炭素が混合物となって存在するため利用できる分野は限られ、わずかに、セメント原料、あるいは、土質改良材として使われることにとどまっていた。また、利用されている量は全体から見ると、わずかであり、ほとんどは、産業廃棄物として、処理されていた。
【0013】
このように、本発明以前は、シアナミド水溶液あるいはジシアンジアミドを製造するにあたり、濾過残滓の炭酸カルシウムを、炭素成分と同時に分離し、製造する方法は知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ジシアンジアミド1トン生産すると、約4トンの濾過残滓が同時に生じる。濾過残滓の一部は、原料として利用されてはいるが、経済的には大きなメリットはなく、多くは、産業廃棄物として処理されて、その処理に、多大な負担がかかっていた。本発明は、従来技術では不可能であった、濾過残滓中の炭酸カルシウムと炭素の混合物を、製造時に分離し、工業的に有用な、炭酸カルシウムと炭素成分とに分離し製造する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来技術では、石灰窒素を分散する溶媒に、水あるいはジシアンジアミドを分離後の濾液を使用するため、その中に存在するシアナミド濃度は1%以下である。そのため、石灰窒素を、水に分散すると、以下の反応が起きる。
【0016】
【化4】

【0017】
しかし、同時に生成する水酸化カルシウムが、反応を阻害し、反応は完全には進行せず、シアナミド態窒素の多くが、不溶分として固形分中にとどまっているため、工業的に使えるものとは、考えられていなかった。
【0018】
そのため、工業的には、この懸濁液に直接炭酸ガスを導入し、固形分中のシアナミド態窒素の残存を減らす工夫をし、シアナミド水溶液を得ていた。
【0019】
【化5】

【0020】
このため、濾過残滓は炭素成分と炭酸カルシウムの混合物になっていた。
【0021】
本発明者等は、石灰窒素を水に分散するとき、シアナミドを存在させると以下の反応により、水溶液に可溶な酸性シアナミドカルシウムが、きわめて早く生成することをみいだし、本発明を完成させるに至った。すなわち、水溶液中に、石灰窒素に対し、等モルのシアナミドが存在すると、下記の反応が、速やかに完了し、石灰窒素中のシアナミドカルシウムは、酸性シアナミドカルシウムとして溶解する。
【0022】
【化6】

【0023】
石灰窒素中に存在する炭素は、水に不溶であり、一方、酸性シアナミドカルシウムは水に可溶である。石灰窒素中の鉄分、珪素分などの不純物は、水に不溶で、炭素分とともに反応液より濾別することができるので、酸性シアナミドカルシウム水溶液は、これら不純物の混入を防ぐことができる。
【0024】
かくして得られた透明な酸性シアナミドカルシウム水溶液と、炭酸ガスと処理することにより、下記(式7)の反応により、カルシウム成分は、水難溶の高純度炭酸カルシウムとして反応液から析出し、シアナミド水溶液を生成する。
【0025】
【化7】

【0026】
析出した炭酸カルシウムを濾過することにより、シアナミドを含む透明な水溶液を得る。
こうして、得られた、シアナミド水溶液を、式6に示す工程に戻すことにより、更に高濃度なシアナミド水溶液を得ることも、また式8に従いジシアンジアミドを製造することもできるが、 一部をとり、水で薄めて、式6に戻し 再利用し、残りをシアナミド水溶液として製造するか、あるいは、アルカリ成分を加えpH8〜11に調整し、以下の反応に従いジシアンジアミドを製造(式8)するのが工業上、好ましい。
【0027】
【化8】

【発明の効果】
【0028】
ジシアンジアミドあるいはシアナミド水溶液を製造するにさいし、同時に、工業的に有用な炭酸カルシウム、炭素材料を併産する、環境に優しく経済的な製造法を提供する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
式6で示すように、使用する溶液中に存在するシアナミドの量は、添加する石灰窒素中のカルシウムシアナミドに対し、等モル以上存在することが望ましい。工業的に製造されている石灰窒素中のシアナミド態窒素は18%〜24%であるので、シアナミド濃度1%水溶液では、石灰窒素1kgに対し、27リットルが必要となり、実設備が大きくなり、また、溶液の処理量が多く、実際的でない。また、シアナミドの濃度が50%を越えると、石灰窒素1kgに対し、シアナミド水溶液の添加量を0.6リットル程度まで少なくできるので、有利であるが、酸性シアナミドカルシウムの析出、二量化によるジシアンジアミドの生成なども考慮する必要があり、工業的な見知から本件の特許を実施するのは不利となる。本件の特許を実施するには、好ましくは3%〜30%のシアナミド水溶液を使用し、更に好適には、5%〜20%のシアナミド水溶液が推奨される。
【0030】
使用する石灰窒素は、粉砕された微粉が望ましいが、極端に細かなものである必要はないが、平均粒度で20〜200ミクロンのものが推奨される。
【0031】
シアナミド水溶液に、石灰窒素を添加するときは、撹拌することが好ましく、温度は60℃以下、好ましくは40℃以下、特に高品質シアナミド水溶液の製造を目的に行うときは、20℃以下に保つことが好ましい。
【0032】
式6の反応の終了は、溶液中のシアナミド、ジシアンジアミド濃度を測定して決定するのが実際的である。通常、バッチ反応で1時間以内に完了する。また、連続反応でも、滞留時間1時間以内で、実質的に反応は完了する。不溶分の炭素を濾別し、清澄な酸性シアナミドカルシウム水溶液をえる。
【0033】
このようにして得られた炭素分は、そのまま、プラスチック充填材、燃料として使用することもできるが、鉄、珪素等の不純物も混入しているので、アルカリと酸で洗浄し、更に精製することもできる。精製した炭素は、顔料、電極材として使用することもできる。
【0034】
式7で使用する炭酸ガスの濃度は、高いほど好ましいが、10%以上の濃度があれば、工業的に使用できる。石灰炉からの炭酸ガスを利用する場合は、20%〜41%の濃度を使用するのが好ましい。また、精製した99%以上の炭酸ガスを使用してもいい。しかし硫化水素、亜硫酸、アンモニア等の有害な成分はできうる限り少なくする必要がある。
【0035】
炭酸ガスと酸性シアナミドカルシウム水溶液の反応は、ガス吸収タイプの塔を使用することも、反応槽に酸性シアナミドカルシウム水溶液を入れ、炭酸ガスを底部から導入して行っても良い。
【0036】
反応のpHは10以下、好ましくは9以下、好適には8以下に保つ。特に、高品質シアナミド水溶液を製造するときは、pHを7以下に保つことが好ましい。しかし、いずれの場合でも、反応液の一部を取り、分析し、製造の目的かなったpHを決定するのが、実際的である。
【0037】
温度は60℃以下、好適には40℃以下にする。特に高品質シアナミド水溶液の製造を目的にする場合は 20℃以下にするのが好適である。また、あまり低すぎると、冷却の費用が、増大するので、工業的には不利となり、それを勘案すると0℃以上で行うのが、好ましい。
【0038】
シアナミドの二量化反応によりジシアンジアミドを製造するため、従来はシアナミド水溶液に水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリ成分を加えアルカリ性にしていたが、酸性シアナミドカルシウム水溶液を加え、シアナミド溶液のpHを8〜11とすることが好ましい。ジシアンジアミド分離後の濾液中のカルシウム成分は、再使用することにより炭酸ガスにより炭酸カルシウムとして除去されるので、反応液中に蓄積する事はない。勿論、ジシアンジアミド反応終了後、不溶分を除去するため濾過工程を設ける場合には、水酸化カルシウム、石灰窒素をアルカリ成分として加えても同様である。一方、水酸化ナトリウム、アンモニア等を使用すると、ジシアンジアミドを分離した後の濾液に、ナトリウムイオン、アンモニウムイオンが蓄積していくので、再使用が難しくなる。
【0039】
二量化反応によるジシアンジアミドの反応温度は、60〜80℃が推奨される。反応は4時間以内に終了し、未反応のシアナミド濃度は1%以下となる。それより温度が低いと、反応時間がかかり、また高いと不純物の生成が多くなり品質と収率が悪くなる。
【0040】
高品質なシアナミド水溶液あるいは及びジシアンジアミドを、常に一定の品質で生産するためには、連続的に生産するプロセスが推奨されるが、製造設備の投資、管理水準、生産規模を考慮し、バッチ毎の製造プロセスを取ることもできる。
【0041】
本発明で生成した炭酸カルシウムは、一度、酸性シアナミドカルシウムとして、水溶液中に溶解し、原料中の不純物を除去できるため、炭酸カルシウムの純度は極めて高く、99%以上の高純度品を拾得することができる。
【0042】
以下、本発明の理解を深めるため、実施例と比較例を示し説明するが、工業的に行うためは、先行技術などを参考にし設備をつくるべきで、本発明の実施は、この例にとどまるものではない。
【0043】
使用した石灰窒素の品質は以下のとおり
シアナミド態窒素 20.0%
カルシウム分 CaOとして 64.0%
平均粒度 100ミクロン
【実施例1】
【0044】
5%シアナミド水溶液を使用した、バッチによる抽出例
撹拌機をつけた500mlのビーカーに、5.00%シアナミド水溶液200g(pH7.5)を入れ、外部よりビーカーを冷却する。撹拌しながら、10gの石灰窒素を、一度に投入する。ビーカー内の温度を20℃以下に保つ。10分後、撹拌を停止し、内容物を 濾紙を敷いた径10cmのブフナー漏斗を使用し、真空濾過を行う。濾紙上の不溶分を、少量の水で洗浄し、濾液に合わせる。
【0045】
濾紙上の不溶分の主成分は炭素であり、 2.83gあり、30%の水を含み、シアナミド態窒素の濃度は0.17%を含んでいた。 濾紙上の黒色物を、5%苛性ソーダで処理後、水洗し、更に5%塩酸で処理し、水洗の行程を経て精製し、乾燥する。
黒色の炭素 1.17gをえた。
水分 0.5%
灰分 2.1%
であった。
【0046】
濾液を、ビーカーに移し、液中に管を入れ、炭酸ガスを吹き込んだところ、直ちに白色の沈殿を生じた。液中のpHが7を示すまで炭酸ガスを吹き込み、生じた炭酸カルシウムを、濾紙を敷いた径10cmのブフナー漏斗を使用し、真空濾過を行い、分離した。
少量の水で、濾紙上の炭酸カルシウムを洗浄した。拾得した炭酸カルシウムを乾燥したところ,収量は11.1gであった。
炭酸カルシウムの分析結果は以下のとおりであった。
純度 99.8%、
乾燥減量 0.1%
平均粒度 20.7ミクロン、
比表面積 2100cm/g
嵩比重 0.65g/ml
で、重質炭酸カルシウムであった。
【0047】
カーバイドの製造に使用した天然石灰石中の炭酸カルシウム純度は95.6%であったので、本発明により、低品位の石灰石から、きわめて純度の高い炭酸カルシウムを得ることができた。
【0048】
かくして得られた濾液は 210gであり、 5.85%のシアナミドと0.30%のジシアンジアミドを含んでいた。
【0049】
シアナミドの物質収支は、以下に示すよう計算し、評価した。
{入り}
使用した石灰窒素中のシアナミドモル数
10×20%÷28×1000=71.43mmol
添加石灰窒素 10.00g
石灰窒素中のシアナミド態窒素 20%
窒素2原子の分子量(N2) 28
使用したシアナミド水溶液に存在するシアナミドモル数
200×5%÷42×1000=238.10 mmol
水溶液 200g
水溶液濃度 5%
シアナミドの分子量 42
{出}
反応後、反応液に存在するシアナミドモル数
210×6.15%÷42×1000=307.5 mmol
水溶液 210gになり、
シアナミド換算濃度 5.85%+0.30%=6.15%

{物質収支}
溶液中のシアナミドの増加分は
307.5−238.1=69.4mmol
であり、
石灰窒素からの抽出効率は 69.4÷71.43=97.16% であった。

【実施例2】
【0050】
実施例1でできたシアナミド水溶液を使用した、バッチによる抽出例
実施例1でできたシアナミド水溶液を使用し、実施例1で示したのと同様な操作をおこない、シアナミド濃度6.57% ジシアン濃度0.65%の液 220gを得た。実施例1と同様に物質収支すると、抽出効率98.0%であった。
このバッチ操作を繰り返すことにより、更に高濃度のシアナミド溶液を得ることができる。
【0051】
{比較例}
本発明を更にはっきりさせる目的で、比較例として希薄なシアナミド水溶液を用いた場合の抽出実験例を以下に示す。
【0052】
使用する水溶液のシアナミド濃度を変える以外は、実施例1と同様な操作を行った。ただし、抽出処理時間は10分間だけでなく、更に抽出時間を延長した実験も付け加えた。
水溶液は200gを使用し、撹拌ながら、石灰窒素10.0gを一気に添加し、所定の時間経過後、不溶分を濾別し、不溶分を少量の水で洗い、洗液は濾液にあわせた。こうして得られた濾液に、炭酸ガスを吹き込み、炭酸カルシウムを析出させた。 生成した炭酸カルシウムを濾過し、炭酸カルシウムは、少量の水で洗浄した。洗液は、濾液と合わせ、205gに調整し、濾液中のシアナミドとジシアンジアミドを、分析し、評価した。 計算のやり方は、実施例1に記載した方法に従った。
【0053】
【表1】


以下に、その結果を示す。
【表2】


【表3】


【表4】


シアナミド濃度が、高くなるに従って、抽出効率の向上が見られるが、2%以下では、効果が薄く、本発明を実施するのは困難である。
【0054】
実施例1及び2は シアナミド濃度 5.0% と6.15%の例を示したが、抽出効率は、10分という短時間にも関わらず、ほぼ完了し、97.16%、98.8%の値をえている。本発明を、円滑に実施するためには、3%以上のシアナミド水溶液を使用するのが好ましい。
【実施例3】
【0055】
シアナミド水溶液の連続製造例
図1に示す製造フローに従い、シアナミド水溶液を製造した。
シアナミド濃度5.00%の水溶液を200Kg/Hrの速度で、2で示すコニカル漏斗に供給する。同時に、粉砕した石灰窒素を20.00Kg/Hrの速度で、コニカル漏斗に添加し、混合する。反応槽Aには、コニカル漏斗が直接取り付けられ、1で示す導入管は 反応槽Aのスラリー水面の下にまで 延ばしておく。反応槽Aのスラリー(懸濁液)は3の配管を通じコニカル漏斗に供給し、循環させる。反応槽Aは攪拌し、外部より冷却し15℃以下に保った。
【0056】
反応槽Aより溢れた(オーバーフロー)液は、濾過器Aを通じ不溶の固形分(炭素を主成分とする黒色ケーキ)を濾別する。更に濾過残滓を少量の水で洗浄し、濾液に合わせる。濾過残滓は黒色の粉体であり、105℃に保った乾燥機で乾燥した。
【0057】
清澄な濾液は、反応槽Bに導入する。 反応槽Bには、35%濃度の炭酸ガスを底部より導入した。反応槽Bは、pH7以下、反応温度20℃以下に保った。
【0058】
反応槽Bから白色スラリー液が溢れる(オーバーフロー)ようになったら、5.00%シアナミド水溶液の供給を止め、替わりに濾過器Bの濾液(清澄液)を 4の配管を通じ200Kg/Hrの速度で2で示すコニカル漏斗に供給し、シアナミド水溶液を循環する。
【0059】
濾過器Bで濾別した白色の炭酸カルシウムは、更に少量の水で洗い、濾液に合わせた。
炭酸カルシウムは、更に105℃に保った乾燥機で乾燥した。
【0060】
9時間後 4の配管を流れるシアナミド濃度が12%になったので、補給水を反応槽Aに42Kg/Hrの速度で加え、同時に、濾過器Bの濾液を 46.72Kg/Hrの速度で貯槽に抜き出した。このようにして、12%のシアナミド水溶液を連続的に製造した。
【0061】
定常的な製造条件では
原料添加(入)
石灰窒素 20.00Kg/Hr
補給水 42.0Kg/Hr
生産(出)
シアナミド水溶液 46.72Kg/Hr
シアナミド濃度 12.0%
ジシアンジアミド濃度 0.2%
添加石灰窒素をもとにしたシアナミドの収得収率は92.2%であった。
炭酸カルシウム 22.5Kg/Hr
純度 99.7%
水分 0.1%
炭素成分 3.6Kg/Hr
水分 0.5%
の結果を得た。
【0062】
上記 12.0%のシアナミド水溶液をpH4〜5に調整し、ロータリーエバポレーターを用い減圧下40℃以下で濃縮しシアナミド濃度50%の溶液の透明な清澄液を得た。
ジシアンジアミドの生成はわずかであった。
分析結果は以下のとおりであった。
シアナミド濃度 50.0%
ジシアンジアミド 1.1%
尿素 0.1%以下
チオ尿素 0.1%以下
【0063】
工業的な生産設備では、濾過器は、フィルタープレス、ドラムフィルター、遠心濾過器、ベルトフィルター、ヌッチェなど、また、乾燥機は、振動流動乾燥機、流動乾燥機、静置乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥機など、使いやすさ、効率、経済性などを勘案し、目的に合わせ選ぶことができる。

【実施例4】
【0064】
ジシアンジアミドの連続生産例
図1に示す製造フローに従い、ジシアンジアミドを製造した。
【0065】
シアナミド濃度5.00%の水溶液を200Kg/Hrの速度で、2で示すコニカル漏斗に供給する。同時に、粉砕した石灰窒素を20.00Kg/Hrの速度で、コニカル漏斗に添加し、混合する。反応槽Aには、コニカル漏斗が直接取り付けられ、1で示す導入管は 反応槽Aのスラリー水面の下にまで延ばしておく。反応槽Aのスラリー(懸濁液)は3の配管を通じコニカル漏斗に供給し、循環させる。反応槽Aは、攪拌し外部より冷却し30℃以下に保った。
【0066】
反応槽Aより溢れた(オーバーフロー)液は、濾過器Aを通じ不溶の固形分(炭を主成分とする黒色ケーキ)を濾別除去する。更に不溶の固形分は少量の新水で洗浄し、濾液に合わせる。濾過残滓は黒色の粉体であり、105℃に保った乾燥機で乾燥した。
【0067】
清澄な濾液は、反応槽Bに導入する。反応槽Bには、35%濃度の炭酸ガスを底部より導入した。反応槽Bは、pH7.5以下、反応温度40℃以下に保った。
【0068】
反応槽Bから白色スラリー液が溢れる(オーバーフロー)ようになったら、5.00%シアナミド水溶液の供給を止め、替わりに濾過器Bの濾液(清澄液)を4の配管を通じ200Kg/Hrの速度でコニカル漏斗に供給し、シアナミド水溶液を循環する。
【0069】
濾過器Bで濾別した白色の炭酸カルシウムは、更に少量の水で洗い、濾液に合わせた。
生じた炭酸カルシウムは、105℃に保った乾燥機で乾燥した。
【0070】
14時間後 4の配管を流れるシアナミド濃度とジシアンジアミド濃度の合計が16%を越えたので、水を反応槽Aに35〜40Kg/Hrの速度で補給し、シアナミド濃度とジシアンジアミド濃度の合計が16%〜18%になるよう調整する。同時に、濾過器Bの濾液を40Kg/Hrの速度で貯槽に抜き出した。シアナミド貯槽から溢れた清澄液は、反応槽Cに入れる。濾過器Aの濾液を、6の配管を通じて、反応槽Cに添加し、常にpHが9から11の範囲に入るようよう調整し、また、反応槽Cを65℃〜75℃に保つことにより二量化反応を促進した。約4時間で、反応槽Cより反応液が溢れだした。溢れた反応液は、連続晶析槽へいれ、結晶を析出させる。晶析槽は30℃に保ち、生成した白色のジシアンジアミドの結晶は、連続的に濾過器Cで濾別する。濾液はジシアンジアミドを4.5%、シアナミドを0.8%含んでいた。濾液は、7の配管を通じ、反応槽Bに循環する。この循環が始まったら、反応槽Aに補給している水の量を減らし、液面が一定になるように調整する。
【0071】
収得したジシアンジアミドの結晶は、少量の水で洗浄し、洗液は濾液に合わせた。
収得したジシアンジアミドは105℃に保った乾燥機中で乾燥した。
【0072】
定常状態になった連続ジシアンジアミド製造条件では、
原料添加(入)
石灰窒素 20.00Kg/Hr
シアナミド態窒素 20.0%
補給水と洗浄水の合計 6.3Kg/Hr
生産(出)
ジシアンジアミド 5.68Kg/Hr
純度 99.8%
水分 0.03%
ジシアンジアミド 1を得るため必要な石灰窒素は 3.52であった。
炭酸カルシウム 22.6Kg/Hr
純度 99.8%
水分 0.1%
炭素成分 3.6Kg/Hr
水分 0.5%
の結果を得た。
【0073】
濾過器は、フィルタープレス、ドラムフィルター、遠心濾過器、ベルトフィルター、ヌッチェなど、また、乾燥機は、振動流動乾燥機、流動乾燥機、静置乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥機など、工業的な効率、経済性を勘案し、目的に合わせ選ぶことができる。
【0074】
晶析機は、連続的に結晶を収得するオスロ晶析装置や、連続掻き取り式の冷却装置を備えた晶析装置が、好ましいが、それに限定するものでなく、晶析槽を複数設置して、結晶を得るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】シアナミド水溶液及びジシアンジアミド製造フロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰窒素を原料とし、シアナミド水溶液あるいは及びジシアンジアミドを製造するにあたり、(a)シアナミドの濃度が3%〜30%である水溶液に、石灰窒素を投入し、石灰窒素中のシアナミド成分を水溶液中に抽出し、原料中の水に不溶な炭素分及び無機成分を分離して清澄な酸性シアナミドカルシウムを含む水溶液を得る。(b)得られた清澄な酸性シアナミドカルシウム液に、炭酸ガスを含む気体を導入し、炭酸カルシウムを析出させ、析出した炭酸カルシウムを濾別し、シアナミド水溶液を得る製造方法。(c)更に、得られたシアナミド水溶液にアルカリ成分加えpH8〜11に調整してジシアンジアミドを製造する方法。
【請求項2】
(a)で得られた清澄な酸性シアナミドカルシウム水溶液に炭酸ガスを反応させ、高純度炭酸カルシウムを得る特許請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
(b)の工程で得られたシアナミド水溶液の一部あるいは全部を、(a)のシアナミド水溶液として再使用するバッチ操業で行う特許請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
(b)の工程でえられたシアナミド水溶液の一部を、(a)のシアナミドの水溶液として再使用し、連続的にシアナミド水溶液を製造する、特許請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ成分として(a)の工程で得られた酸性シアナミド水溶液を使用し、pH8〜11とし、ジシアンジアミドを生成させ、分離し、その濾液を(b)の工程に戻し、連続的にジシアンジアミドを製造する、特許請求項3及び特許請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ成分が(a)の工程で得られた酸性シアナミド水溶液であるバッチ操作でジシアンジアミドを製造する特許請求項3及び特許請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
(a)の工程で得られた不溶のグラファイトを、アルカリ及び酸で処理し、高純度グラファイトを得る、特許請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−189587(P2008−189587A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25057(P2007−25057)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(307000215)
【Fターム(参考)】