説明

シアノフィシンジペプチドのバイオテクノロジー的製造

本発明は、シアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマー調製品からの、CGPaseを用いたポリマー調製品の分解によるジペプチド組成物の酵素的製造方法、本方法に特に適合されたCGPase、およびシアノフィシン(CGP)もしくはCGP様ポリマーまたはそれらの断片、とりわけ、上に定義された方法により得られるジペプチド組成物の、医薬組成物、医薬品または食品もしくは代用食品としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマー調製品からの、CGPaseを用いたポリマー調製品の分解によるジペプチド組成物の酵素的製造方法、本方法に特に適合したCGPase、およびシアノフィシン(CGP)もしくはCGP様ポリマーまたはそれらの断片、とりわけ、上に定義された方法により得られるジペプチド組成物の、医薬組成物、医薬品または食品もしくは代用食品としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
3種の異なるポリ(アミノ酸):ポリ(ε−L−リシン)(ε−PL)、ポリ(γ−グルタミン酸)(γ−PGA)およびシアノフィシン(CGP)が天然に存在することが公知である。ポリ(アミノ酸)は、さまざまな環境に存在し、生物の生産においてさまざまな機能を果たしている(Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:1166〜1176(2004年))。例えば、シアノフィシン顆粒ポリペプチド(CGP)として公知であり、100年以上前にシアノバクテリアにおいて発見された(Borzi,A.、Malpighia 1:28〜74(1887年))シアノフィシン(マルチ−L−アルギニル−ポリ−[L−アスパラギン酸])は、生物に窒素、炭素およびエネルギーを提供する。シアノフィシンは、個々のビルディングブロックに5個の窒素原子を含有し、その結果理想的な細胞内窒素貯蔵となっている(Mackerras,A.H.ら、J.Gen.Microbiol.136:2057〜2065(1990年))。ポリ(アミノ酸)の生体適合性および完全な生分解性は、生体臨床医学、農業、農芸化学、パーソナルケアおよび薬学の分野において人生のさまざまな利用にとって理想的な候補にする(Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:1166〜1176(2004年))。
【0003】
藍藻のスピルリナを含むシアノバクテリアのいくつかの種は、ヒトおよび動物にとっての栄養源として奨励されてきた(Kihlberg,R.、A.Rev.Microbiol.26:427〜466(1972年))。CGPそれ自体は、シアノバクテリアにおいて1887年に発見された。シアノバクテリアの大部分の属は、機能性のシアノフィシン合成酵素遺伝子(cphA)を有し、CGPを合成する(Mackerras,A.H.ら、J.Gen.Microbiol.136:2057〜2065(1990年))。CphAをコードする遺伝子は、従属栄養細菌においても同定されている(Krehenbrink,M.ら、Arch.Microbiol.177:371〜380(2002年);Fuser,G.ら、Macromol.Biosci.7:278〜296(2007年))。分岐ポリマーは、細胞質において、膜のない不溶性細胞内顆粒として存在する(Allen,M.M.ら、J.Bacteriol.154:1480〜1484(1983年))。分岐ポリマーは、個々のアスパラギン酸のβ−カルボキシル基に、そのα−アミノ基により連結したアルギニン部分を有する、ポリ(アスパラギン酸)(PAA)骨格の形態で配列された、当モル量のアルギニンおよびアスパラギン酸からなる(Simon,R.D.ら、Biochim.Biophys.Acta 420:165〜176(1976年))。大規模製造のために、シアノバクテリアのcphA遺伝子は、大腸菌(Escherichia coil)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)に、異種的にクローニングされた。組換え細菌由来のCGPは少量のリシンを含有する(Voss、I.ら、Metabol.Eng.8:66〜78(2006年))。CGPはさまざまな自然の生息環境に広範囲に広がっており、細胞内または細胞外のCGPase(それぞれ、CphB、CphE)により分解される。CphEを保有する細菌は、さまざまな生息環境において発見され、CphEPaおよびCphEBmがそれぞれ、シュードモナス・アンギリセプチカ(P.angulliseptica)BIおよび巨大菌(B.megaterium)BAC19から単離され、特徴付けられた(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年);Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年))。CGPの分解は、偏性嫌気性菌または通性嫌気性菌、例えばそれぞれ、セディメンチバクター・ホンコンエンシス(Sedimentibacter hongkongensis)KIまたはシュードモナス・アルカリジェネス(P.alcaligenes)DIP1により、嫌気性の生息環境においても起こる(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Sallam,A.ら、公開用に提出(2008年))。公知のすべてのCGPaseは、CGP由来の水溶性β−ジペプチドを産生し、これらはその後細胞に輸送され、さらに分解される(Sallam,A.ら、公開用に提出(2008))。
【0004】
タンパク質の分解および輸送は、生命にとって不可欠である。例えば反芻動物において、食物タンパク質の大部分は第1胃の細菌叢により、アミノ酸およびペプチドに分解される。アミノ酸は、微生物タンパク質に組み込まれるか、または消化管の次の部分へ通過するか、または胃壁を通過し直接血液に吸収されるかである(Faix,S.ら、Acta Vet.Brno.70:243〜246(2001年))。しかし、トリペプチドおよびジペプチドは、遊離のアミノ酸より効率的に利用され、より優れた栄養価を有し、より多く吸収され(遊離のアミノ酸より最大185%)(Adibi,S.A.、J.Clin.Invest.50:2266〜2275(1971年))、体重増加の強化に寄与する完全なタンパク質より多くの窒素を保有する(Dock,D.B.ら、Biocell 28:143〜150(2004年))。特定のアミノ酸の輸送に遺伝的な損傷を有する患者における吸収の研究により、ジペプチドとして投与した場合、これらのアミノ酸の正常な吸収が示された。このことは、ジペプチドに関する特殊化された、有効な輸送系の存在を示した(Adibi,S.A.、Gastroenterology 113:332〜340(1997年))。したがって、加水分解タンパク質食は、飼料添加物として頻繁に適用され、栄養失調の症例を回復させる(Dock,D.B.ら、Biocell 28:143〜150(2004年))。
【0005】
半必須アミノ酸のアルギニンは、細胞生理においていくつかの極めて重要な役割を果たし、したがって多くの心臓血管、泌尿生殖器、胃腸または免疫の障害のための治療計画に適用される(総説には、(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年)を参照されたい)。必須アミノ酸のリシンは人および動物の食品添加物として公知であり、単純ヘルペスウィルスに対する抗ウィルス活性を有し、小腸におけるカルシウムの吸収を改善し、したがって骨粗しょう症に対して作用する(Cynober,L.A.、Metabolic and therapeutic aspects of amino acids in clinical nutrition、第2版、CRC Press LLC、Boca Raton、USA(2003年))。非必須アミノ酸のアスパラギン酸は、特に、エネルギー代謝のためにL−アルギニンの前駆体として機能し(Voet,D.ら、Biochemistry.第3版John Wiley and Sons Inc.、New York(2004年))、陽イオンまたは他のアミノ酸の薬剤送達に使用される(Cynober,L.A.、Metabolic and therapeutic aspects of amino acids in clinical nutrition.第2版、CRC Press LLC、Boca Raton、USA(2003年))。アミノ酸は、ジペプチド形態でより高い生体利用効率を有するので、ジペプチドとしてのそれらの投与は臨床的に承認されており、市販の製品で利用可能である(Duruy,A.ら、Vie.Med.Int.9:1589(1965年);Duruy,A.、Med.Int.1:203(1966年);Sellier,J.,Rev.Med.Toulouse 5:879(1979年);De−Aloysio,D.ら、Acta Eur.Fertil.13:133〜167(1982年);Rohdewald,P.、Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.40:158〜168(2002年);Lamm,S.ら、Eur.Bull.Drug Res.11:29〜37(2003年))。
【0006】
現在までに、CGPそれ自体の直接適用は知られていない。CGPについての先行する研究は、生分解性PAAの潜在的供給源としてのCGPにより動機付けられていた(Mooibroek,H.ら、Appi.Microbiol.Biotechnol.77:257〜267(2007年))。後者は、透析膜、人工皮膚および整形外科用インプラントにおける成分として、または薬剤の担体として、多くの適用可能性を有する(Obst,M.ら、Biomacromolecules5:1166〜1176(2004年))。PAAもまた、非生分解性ポリアクリル酸塩の代わりにでき、そのための多くの工業的応用が記載されている。これは、哺乳動物、鳥類および魚類の腸管内菌叢によるCGPの生分解、ならびにその後の栄養添加物および/または治療添加物としてのCGPおよびそのジペプチドの適用可能性についての最初の研究である。
【0007】
哺乳動物、鳥類および魚類の腸管内菌叢のいくつかのサンプルは、シアノフィシンの分解に関して調査された。すべてのサンプルは、37℃において12〜48時間のインキュベーションにわたって、嫌気的にCGPを完全に分解した。CGP分解性細菌は、すべてのサンプルにおいて発見され、ウサギおよびヒツジ由来の盲腸菌叢ならびにコイの消化管菌叢において高度に濃縮されていた。総計62の純粋培養が、単離され、嫌気的にCGPを分解し、そのうちの46は、24時間から7日間に及ぶ期間のインキュベーションを通したCGPの嫌気的分解も行った。HPLC分析により、すべての単離株がCGPをその構成要素となるジペプチドに分解したことが明らかになった。8株が16S rDNA配列決定により同定され、バチルス(Bacillus)、ブレビバチルス(Brevibacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびミクロモノスポラ(Micromonospora)の各属に関連付けられた。CGPは、0.06〜0.15%(wt/wt)のCGPを含有する、3種の異なるスピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)の市販の製品において見出すことができる。CGPが細胞外のCGP分解で分解できること、消化管におけるCGPの生分解性についての最初の証拠、続いて、CGPおよびそのジペプチドの、アルギニン、リシン、アスパラギン酸および他のアミノ酸候補の生物学的に高度に利用可能な供給源として、栄養および治療における適用の可能性が現在見出されている。
【0008】
対数増殖期から定常期の移行期の間に、シアノバクテリア中にCGPが蓄積する(Mackerras,A.H.ら、J.Gen.Microbiol.136:2057〜2065(1990年);Sherman,D.M.ら、J.Phycol.36:932〜941(2000年))。シアノバクテリアの大部分の属は、機能性シアノフィシン合成酵素遺伝子(cphA)を有し、CGPを合成する(Simon,R.D.1987年。Inclusion bodies in the cyanobacteria:cyanophychin,polyphosphate,polyhedral bodies,199〜225。P.FayおよびC.van Baalen(編)、The Cyanobacteria,Elsevier、Amsterdam、The Netherlands;Allen,M.M.ら、Methods Enzymol.167:207〜213(1988年);Mackerras,A.H.ら、J.Gen.Microbiol.136:2057〜2065(1990年);Liotenberg,S.ら、Microbiology 142:611〜622(1996年);Wingard,L.L.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:1772〜1777(2002年))。cphA遺伝子は、さらに従属栄養細菌においても同定された(Krehenbrink,M.ら、Arch.Microbiol.177:371〜380(2002年);Ziegler,K.ら、Naturforsch.57c:522〜529(2002年))。ポリマーは、細胞質において細胞内膜のない顆粒として存在し、中性pHおよび生理的イオン強度において不溶性である(Allen,M.M.ら、J.Bacteriol.141:687〜693(1980年))。CGPは、低温、低光度、リンまたはイオウの制限を含む制限条件下で蓄積される(Stephanら、Z.Naturforsch.55:927〜942(2000年))。シアノバクテリアにおいて、ポリマー鎖の分子量は、25から100kDaに及び(Simon,R.D.、Biochim.Biophys.Acta422:407〜418(1976年))、一方組換え鎖由来のポリマーは、低い範囲(25から30kDa)および多分散性を示す。さらに、組換え鎖由来のポリマーが、さらなるアミノ酸成分としてリシンを含有したことが発見された(Ziegler,K.ら、Eur.J.Biochem.254:154〜159(1998年);Aboulmagd,E.ら、Biomacromolecules2:1338〜1342(2001年))。CGPは、一時的な窒素、エネルギーおよびおそらく炭素の貯蔵として機能する(Li,H.ら、Arch.Microbiol.176:9〜18(2001年);Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))。CGPは5個の窒素原子を個々のビルディングブロックに含有するので、完全な細胞内窒素貯蔵としての基準を満たしている(Simon,R.D.1987.Inclusion bodies in the cyanobacteria:cyanophychin,polyphosphate,polyhedral bodies、199〜225ページ。P.FayおよびC.van Baalen(編)、The Cyanobacteria、Elsevier、Amsterdam、The Netherlands)。
【0009】
CGPの細胞内分解は、細胞質に存在する高度に特異的なシアノフィシナーゼ(CphB)により触媒され、β−ジペプチドの形成をもたらすα−切断機構を介して進行する(Richter,R.ら、Eur.J.Biochem.263:163〜169(1999年))。CGPは、CGPを蓄積できない細菌に対しても有益な基質となっている(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007a)。湖沼堆積物から単離された新規な中温性、タンパク質分解性細菌である新種クロストリジウム・スルフォティレデュセンス(Clostridium sulfatireducens)は、チオ硫酸塩、イオウを還元でき、一時的に硫酸塩を還元でき、このような細菌の多くはCGPをその利用可能なジペプチドに分解する、細胞外シアノフィシナーゼの保有を示し、これらのジペプチドは細胞に輸送され、さらに利用される得る(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007b。Anaerobic and aerobic degradation of cyanophycin by the denitrifying bacterium Pseudomonas alcaligenes strain DIP1−Role of other three co−isolates in the mixed bacterial consortium.公開用に提出。)。グラム陰性細菌のシュードモナス・アンギリセプチカ(Pseudomonas angulliseptica)、BI株由来のCphEPaなど、これらの酵素のいくつかの例が単離され、特徴付けられた。この細胞外酵素は、CphBと同様にCGP分解のためのα−切断機構を示す(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年))。
【0010】
細胞外CphEBmが巨大菌BAC19株から単離された時、さらにグラム陽性細菌もまたCGPaseを分泌することが発見され(Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年))、CphEPaおよびCphEBmは双方ともセリン型の加水分解酵素として同定された。最近の研究により、細胞外CGPの分解は偏性嫌気性細菌および通性嫌気性細菌(例えば、それぞれセディメンチバクター・ホンコンエンシス(Sedimentibacter hongkongensis)、KI株(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年))およびシュードモナス・アルカリジェネス(Pseudomonas alcaligenes)、DIP1株など)由来のCGPaseにより触媒されうることが明らかになった(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007b。Anaerobic and aerobic degradation of cyanophycin by the denitrifying bacterium Pseudomonas alcaligenes strain DIP1−Role of other three co−isolates in the mixed bacterial consortium.公開用に提出。)。すべての調査されたCGPaseは、切断産物としてβ−Asp−Argジペプチドをもたらしたが、CphEBmの場合(Asp−Arg)テトラペプチドもさらに検出された(Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年))。
【0011】
最近まで、CGPそれ自体またはジペプチドそれら自体に関する実用的応用は知られていなかった。対照的に、CGPの構造要素である(ポリマー骨格)であるポリ(アスパラギン酸)(PAA)に関しては、非生分解性ポリアクリル酸塩の代替として経済的に重要な応用が確立されている、(Schwamborn,M.,Polym.Degrad.Stab.59:39〜45(1998年))。PAAは、製紙産業、塗料産業および石油産業を含む多くの分野において、さらに用いることができる(Joentgen,W.ら、2003年。Polyaspartic acids.175〜199ページ。:S.R.FahnestockおよびA.Steinbuchel(編)、Biopolymers、7巻。Wiley、Weinheimによる総説)。PAAに関する生物医学的応用もまた記載されている(Leopold,C.S.ら、J.Pharmacokinet.Biopharm.4:397〜406(1995年);Yokoyama,M.ら、Cancer Res.6:1693〜1700(1990年))。つい最近、CGPジペプチドに関する生物医学的応用およびCGPそれ自体の可能性が明らかにされ、これらの応用は、第1に、多数の調査された哺乳動物、鳥類および魚類の菌叢における驚くほど広範囲なCGP分解細菌に依存しており、このことは、それぞれの消化管内においてCGPがおそらく分解可能であろうことを示し、一方、ジペプチドまたはトリペプチドの形態で投与された場合、アミノ酸の生体利用効率が上昇することは周知の理論であり、いくつかの治療分野において有効に応用されている。したがって、CGPおよび/またはそのβ−ジペプチドは、近い将来天然の食品添加物および/または治療添加物候補として考えることができる(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007c。Potential of cyanophycin and its β−dipeptides as possible additives in therapy,food and feed industries)。
【0012】
準工業的な量でのCGPの製造および効率的な単離は、わずか最近数年の間に確立された。大腸菌、ラルストニア・ユートロファ、シュードモナス・プチダおよびアシネトバクター・ベイリー(Acinetobacter baylyi)ADP1株のいくつかの細菌株を用い、後者は、約46%(wt/wt)の最大CGP収率を示した(Obst,M.ら、167〜194ページ。J.M.Shively(編)、Inclusions in Prokaryotes、1巻、Springer−Verlag、Berlin、Heidelberg(2006年))。しかし、所要の基質および培養条件は、経済的に適切なCGP産生を選択するための重要な因子でもある。
【0013】
純粋なCGP−ジペプチドは、CGP含有バイオマスから出発し、純粋なCGP−ジペプチドで終わる経済的な大規模方法で調製できる。なぜならば、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株は、単純な発育要求で高度の酵素生産性を示すことができるからである。この株は、このような工業的方法にとって理想的であることが見出された。
【0014】
シアノフィシンは個々のビルディングブロックに5個の窒素原子を含有し、したがって、完全な動的細胞内窒素貯蔵の基準を、確実に達成する(Simon,R.D.1987.Inclusion bodies in the cyanobacteria:cyanophycin,polyphosphate,polyhedral bodies、199〜225ページ。P.FayおよびC.van Baalen(編)、The Cyanobacteria、Elsevier、Amsterdam、 The Netherlands);その量的変動は、細胞の要求に従う(Carr,N.G.1988年。Nitrogen reserves and dynamic reservoirs in cyanobacteria、13〜21。L.J.RogersおよびJ.R.Gallon(編)、Biochemistry of the algae and cyanobacteria、Annual Proceedings of the Phytochemical Society of Europe、Clarendon、Oxford.)。ポリマーは、タンパク質合成が、対数増殖期から定常期へと移行する間に自然に減少する時(Simon,R.D.、Arch.Microbiol.92:115〜122(1973a))またはタンパク質生合成の阻害剤(例えばクロラムフェニコール)の添加により減少する時のどちらかにおいて、(Ingram,L.O.ら、Arch.Microbiol.81:1〜12(1972年);Simon,R.D.,J.Bacteriol.114:1213〜1216(1973b))シアノバクテリア中に蓄積され、ポリマーは、バランスの取れた成長が再開する時消失する(Mackerras,A.H.ら、J.Gen.Microbiol.136:2057〜2065(1990年))。CGPの蓄積は、リンの制限(Stephanら、Z.Naturforsch.55:927〜942(2000年))、イオウの制限(Arino,X.ら、Arch.Microbiol.163:447〜453(1995年))、低温、低光度またはこれらの因子の組み合わせによってもさらに促進される(Obst,M.ら、Biomacromolecules5:1166〜1176(2004年))。
【0015】
精製されたCGPまたはその細胞内含有量のどちらかの決定および定量化に関する異なる方法が開発された。CGPのアルギニン含有量は、加水分解ポリマーまたは非加水分解ポリマーのどちらかにおいて、Sakagushi試薬により比色分析的に定量化された(Simon,R.D.、J.Bacteriol.114:1213〜1216(1973b))。精製シアノフィシンのアミノ酸成分は、HPLCにより決定できた(Aboulmagd,E.ら、Arch.Microbiol.174:297〜306(2000年))。シアノフィシンの高速かつ高感度な決定のためにH核磁気共鳴(NMR)に基づく方法が開発された(Erickson,N.A.ら、Biochim.Biophys.Acta.1536:5〜9(2001年))。
【0016】
CGP分解(細胞内または細胞外)は、その利用可能なジペプチドの放出を主にもたらし、その後これらは細胞内で、細胞代謝に携わるその構成アミノ酸に分割される。シアノフィシンの細胞内分解は、シアノフィシナーゼ(CphB)により触媒される。第1のシアノフィシナーゼは、Gupta,M.ら、J.Gen.Microbiol.125:17〜23(1981年)により、アナベナ・シンドリカ(Anabaena cylindrica)の異質細胞および栄養細胞中にあることが記載された。この酵素は、単量体29.4kDa、セリン型であり、シアノフィシン特異的エクソペプチダーゼであり、その主要分解産物は、α−切断機構を介したアスパラギン酸・アルギニン・ジペプチドであった(Richter,R.ら、Eur.J.Biochem.263:163〜169(1999年))。最近数年で、細胞外シアノフィシナーゼ(CphE)によりシアノフィシンを分解できる好気性菌および嫌気性菌が単離された(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年));Obst,M.ら、Biomacromolecules5:153〜161(2004年);Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007b。Anaerobic and aerobic degradation of cyanophycin by the denitrifying bacterium Pseudomonas alcaligenes strain DIP1−Role of other three co−isolates in the mixed bacterial consortium.公開用に提出。)。CphBと同様に、すでに細胞外CGPaseと特徴付けられた、それぞれシュードモナス・アンギリセプチカ(Pseudomonas anguilliseptica)B1株および巨大菌BAC19株に由来するCphEPaおよびCphEBmが、セリン型のシアノフィシン特異的酵素として同定され、CGP−ジペプチドを分解産物として産生するが、CphEBmの場合、(Asp−Arg)テトラペプチドがさらに検出される。CphEPa標識研究により、この酵素はカルボキシル末端においてCGPを加水分解し、分解されたポリマー鎖の末端からβ−Asp−Argジペプチドを連続的に放出することが示された(総説には、Obst,Mら、Biomacromolecules5:1166〜1176(2004年)を参照されたい)。さらに、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1由来の第3の細胞外シアノフィシナーゼ(CphEal)は、近年、CGP−ジペプチドの工業的製造のために粗形態で用いられた(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2008b。Biotechnological process for the technical production of β−dipeptides from cyanophycin。準備中)。
【0017】
準工業的な量でのCGPの製造および効率的な単離は、わずか最近数年の間に確立された。大腸菌、ラルストニア・ユートロファ、シュードモナス・プチダおよびアシネトバクター・ベイリーのいくつかの細菌株を用いることに成功した(Obst,M.ら、Biomacromolecules5:1166〜1176(2004年))。しかし、CGPのバイオテクノロジー関連は、工業的応用[例えば水処理;製紙工業および皮革工業に分散剤として(Roweton,S.ら、J.Environ.Polym.Degrad.5:175〜181(1997年);Mooibroek,H.ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.77:257〜267(2007年))またはポリアクリル酸塩の生分解性代替として(Schwamborn,M.、Polym.Degrad.Stab.59:39〜45(1998年))の高い可能性を有するポリ(アスパラギン酸)の供給源であることに理論的に基づいている。PAAは、透析膜、人工皮膚、整形外科用インプラントの成分として、または薬剤の担体として、生物医学的応用可能性をさらに有する(Leopold,C.S.ら、J.Pharmacokinet.Biopharm.4:397〜406(1995年))。
【0018】
上に説明したように、CGP−ジペプチドの生物医学的応用およびCGPそれ自体の可能性が明らかになり、このことは、哺乳動物および魚類の消化管内においてCGPがおそらく分解可能であろうことを示し、ポリマーおよびそれらのジペプチドは、近い将来天然の食品添加物および/または治療添加物の候補であることを表した。したがって、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来の粗CphEalを使用する、CGPからジペプチドを製造する大規模な方法が最近構築された。この独自の方法は、3相;第I相:CGPの大規模抽出および精製、第II相:粗CphEalの粉末の大規模製造、第III相:CGPのそのジペプチドへの分解を含み、前記のように構成された。この独自の方法の、後期の2つの相は将来の応用のために大きく最適化することができることが、現在発見されている。さらに、CphEalは、粗粉末から工業的に精製され、その生化学的特徴が明らかにされた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、
(1)CGPaseを用いたポリマー調製品の分解を含む、シアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマー調製品からのジペプチド組成物の酵素的製造の方法、
(2)上記(1)の方法の好ましい実施形態であって、CGPaseが、
(i)分子量45kDa、至適温度50°C、至適pH範囲7〜8.5であり、CGPをβ−Asp−Argに分解する、および/または
(ii)DSM21533としてDSMZに寄託されたシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株のCGPaseのCphEal、またはCGpまたはCGP様ポリマーをジペプチドに切断できるそれらの突然変異体、誘導体もしくは断片である実施形態、
(3)上記の(2)に定義されたCGPase、ならびに
(4)シアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマーまたはそれらの断片を含む、組成物、医薬組成物、医薬品、食品補助剤または飼料補助剤、
(5)栄養療法のための医薬品を調製するため、または食品補助剤もしくは飼料補助剤としての、シアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマーまたはそれらの断片の使用、
(6)治療を必要とする患者の栄養療法のための方法であって、適切な量のシアノフィシン(CGP)もしくはCGP様ポリマーまたはそれらの断片を含む組成物を患者に投与するステップを含む方法、
(7)組成物、医薬組成物、医薬品、食品補助剤または飼料補助剤が、CGPもしくはCGP様ポリマーが、酵素的タンパク質分解により生じるジペプチドまたはジペプチド混合物を含む、好ましくはこのジペプチド混合物が、β−アスパラギン酸−アルギニンおよびβ−アスパラギン酸−リシンから構成される、および/または上記の(1)または(2)の方法により得ることができる、上記の(4)から(6)の好ましい実施形態
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】16S rDNA配列に基づく近隣結合系統樹が、すでに単離された、およびこの研究の期間に単離されたCGP分解細菌中に確立された系統関係を示す図である。太字の株は本研究期間中に単離された。下線を引いた株はCGP分解に関してすでに調査されていた。(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年);Obst,M.ら、Biomacromolecules5:153〜161(2004年);Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Sallam,A.ら、公開のために出版(2008年))。大腸菌K12は、外集団として使用した。受託番号を括弧に入れて示す。ブートストラップ値を、100反復のパーセントとして示す。バーは2%配列分岐である。
【図1B】16S rDNA配列に基づく近隣結合系統樹が、すでに単離された、およびこの研究の期間に単離されたCGP分解細菌中に確立された系統関係を示す図である。太字の株は本研究期間中に単離された。下線を引いた株はCGP分解に関してすでに調査されていた。(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年);Obst,M.ら、Biomacromolecules5:153〜161(2004年);Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Sallam,A.ら、公開のために出版(2008年))。大腸菌K12は、外集団として使用した。受託番号を括弧に入れて示す。ブートストラップ値を、100反復のパーセントとして示す。バーは2%配列分岐である。
【図2】シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来の細胞外CGPaseにより、CGP重層寒天プレート上に発生した分解ハローの図である。CphE:分解相(第III相)前の粗粉末、CphE R:分解相後の回収粉末。
【図3】異なる基質についてのシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株の成長の図である。100mlのバッフル付きKlettフラスコにおいて培養を行った;個々のフラスコは、10mlのSM培地および1gl−1の被検基質を含有した。実験は、同じ試験条件下で成長した前培養から接種し、二重に実施した。成長は、30℃において24時間インキュベート後、OD578nmの増加によって観察した。
【図4】さまざまな粗CphE濃度(1〜10g/l)の触媒効果の下での、さまざまなCGP濃度(10〜50g/l)の完全な分解のための所要インキュベーション期間の図である。反応チューブを、30℃で、回転速度3rpmのチューブローテーターにおいてインキュベートした。最も高いCGPの被検濃度(50g/l)は、2g/lの粗CphE粉末の存在下で10時間以内に分解できた。
【図5】420lのSM培地およびg/lのクエン酸ナトリウムを含有し、4%(vol/vol)の前培養を接種した、Biostat D650攪拌式タンク型反応器におけるシュードモナス・アルカリジェネスDIP1のバッチ醗酵の図である。前培養は、1lの同じ培地を含有する2lのバッフル付きフラスコにおいて培養し、30℃において12時間インキュベートした。BiostatD650反応器の醗酵パラメーターおよび培養条件は、pH6.9〜7.5、温度30℃および0.2vvmにおける通気であった。pOは最小40%に設定し、攪拌を100rpmに維持する以外は攪拌することによって自動的に調製した。矢印は、誘導時間を示す。*600nmにおける吸光度(OD600)、◆)。*pH、⊥)。*攪拌速度(rpm)、▲)。*pO(飽和の%)、−)。*気流(l 分−1)、・)。
【図6】シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株の醗酵上清におけるタンパク質の取得、濃縮および脱塩に関する連続系の図である(第II相)。取得には、CEPA Z41連続遠心分離機を使用して細胞を分離し、上清を中央の100lタンクに回収した。濃縮には、30kDaのカセットを有するクロスフローユニットを中央タンクに連結し、ろ過液を直接廃棄しながら、濃縮された残留物をタンクに再度ポンプ注入した。クロスフローの流速は、タンクに50lだけ保持するように調整した。最終濃縮の5lを5倍のベッドボリュームのHOを用いて脱塩し、−30℃において凍結し、凍結乾燥した。
【図7】製造したCGP−ジペプチドの品質管理のためのTLCプレートの図である。I:標準アミノ酸および被検ろ過系の後に採取した直接ジペプチドサンプル;1:30kDa.−COP.クロスフローカセット。2:ろ過膜(10kDa.−COP)。3:ろ過膜(5kDa.−COP)。4:ろ過膜(1kDa.−COP)。5:ろ過膜(0.5kDa.−COP)。6:CGP−ジペプチド(クロスフローおよび凍結乾燥後の最終チャージ)。II:標準アミノ酸および加水分解サンプル;a:CGP−ジペプチド(クロスフローおよび凍結乾燥後の最終チャージ)。b:Asp−Argジペプチド。c:Asp−Lysジペプチド。(b、c;Sigma Aldrich、Deisenhofen、Deutschland)。すべての直接サンプルに関して1つのスポットだけを示し(I)、一方加水分解サンプルは、標準アミノ酸のアルパラギン酸、アルギニンおよびリシンに関して典型的なスポットを示した(II)。
【図8】400lの7%(vol/vol)プロタミラス(protamylase)培地および100mg l−1のアンピシリンを含有する、Biostat D650攪拌式タンク型反応器における大腸菌DH1(pMa/c5−914::cphApcc6803)のバッチ醗酵の図である。前培養(4%、vol/vol)を、個々に1lの醗酵用の培地と同じ培地を含有する2lフラスコに調製し、30℃において20時間インキュベートした。BiostatD650反応器の醗酵パラメーターおよび培養条件は、pH7.5、0.17vvmにおける通気、pOは20%に一定に保ち、攪拌することによって自動的に調製した。醗酵を15時間、最初の6時間は30℃、その後37℃で実施し、CGP合成酵素の発現を誘導した。濁度(OD850)(◆)、pO(飽和の%)(▼)、通気(l/min)(▲)、攪拌速度(rpm)( ・)、温度(℃)(■)。
【図9】7%(vol/vol)のプロタミラス(protamylasse)培地でBiostat D650反応器において15時間醗酵させた、大腸菌DH1(pMA/c5.914::cphApcc6803)の細胞の位相差顕微鏡写真の図である。CGPのグラナが細胞内に光を反射する蓄積として現れている。バー;10μm。
【図10】CGPに対する特異的結合を介した、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来のCphEalの精製ステップのSDS−PAGEの図である。ゲルA:硝酸銀法により染色したSDS−PAGE;M:分子量標準タンパク質、C:粗CphEalの対照、S1:CGPおよび粗CphEalを一緒に混合した直後の上清サンプル、S2:6分の結合時間後の上清サンプル、S2’:10倍濃縮後のS1と同じ、W1、W2:双方の洗浄ステップ後の上清サンプル。ゲルB:A中の精製CphEalを3倍量用い、硝酸銀でより長く染色したSDS−PAGE。45kDaにおけるCphEalの他には、低濃縮タンパク質のバンドはほとんど観察できない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の態様(1)の方法において、ジペプチド組成物は、単一のジペプチドまたはジペプチドの混合物で構成されていてよい。しかし、ジペプチドは、アスパラギン酸、アルギニン、リシンおよびCGP様ポリマー中に存在する他のアミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基を含むことが好ましい。ジペプチドが、β−アスパラギン酸−アルギニンおよびβ−アスパラギン酸−リシンから選択されることが特に好ましい。
【0022】
本発明に従った「CGP」および「CGP様ポリマー」は、基本的に1つまたは複数のジペプチド単位で構成されるペプチド構造であり、前記ジペプチド単位が、以下のアミノ酸残基、アスパラギン酸、アルギニン、リシン、グルタミン酸、シトルリン、オルニチン、カネバニン(canevanine)などのうちの2つから構成されることが好ましい。
【0023】
当分野において公知の非常に種類豊富なCGPaseが、CGP分解のために利用できる(表2および4を参照されたい)。しかし、CGPaseは、シュードモナス・アルカリジェネス由来のCGPase、特にシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来のCGPaseであることが好ましい。本発明の態様(2)に従って、CGPaseは、(i)分子量45kDa、至適温度50°Cおよび至適pH範囲7〜8.5であり、CGPをβ−Asp−Argに分解する;および/または(ii)DSM21533としてDSMZに寄託されたシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株のCGPaseのCphEal、またはCGPまたはCGP様ポリマーをジペプチドに切断できるそれらの突然変異体、誘導体もしくは断片である。前述の天然のCGPaseの突然変異体、誘導体もしくは断片は、(天然配列の少なくとも50の連続したアミノ酸残基、好ましくは最大50、最大30または最大10の末端アミノ酸残基が除去された、Nおよび/またはC末端の切断産物を有する)断片、誘導体(特に、分泌ペプチド、リーダー配列などの機能性タンパク質およびペプチドを有する融合産物およびPEG、アルコール、アミンなどの化学的部分を有する反応産物)および突然変異体(特に、アミノ酸ベースの天然酵素と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する付加、置換、反転および欠失した突然変異体、または1から20、好ましくは1から10の、連続した、または個別のアミノ酸残基が、付加、置換、反転および/または欠失された突然変異体、置換突然変異体に関しては、保存的置換が特に好ましい)を含むが、前記修飾CGPaseは、天然CGPaseの酵素活性を有する。
【0024】
本発明の態様(1)および(2)の方法は、原核性または真核性の産生細胞系を培養することによってCGPまたはCGP様ポリマー調製品を調製するステップをさらに含むことができる。産生細胞系は、CGPまたはCGP様ポリマーを産生できる任意の細胞系であってよい。産生細胞系が、大腸菌、ラルストニア・ユートロファ、アシネトバクター・ベイリー、コリネバクテリウム・グルタミクム、シュードモナス・プチダ、酵母株および植物バイオマスから選択されることが好ましい。特に好ましい産生細胞系は、ラルストニア・ユートロファH16−PHB4−Δeda(pBBR1MCS−2::cphA6308/edaH16)および大腸菌DH1(pMa/c5−914::cphAPCC6803)である。
【0025】
上記の方法は、産生細胞系を培養することによって得られるCGP産物を単離、精製および/または化学的修飾するステップをさらに含むことができる。このような単離、精製および化学的修飾分離は、当分野において十分確立された方法によって得ることができる。
【0026】
しかし、産生細胞系を培養することによって得られるCGP産物を直接、すなわち、単離または精製せずにCGPaseによる分解に供することが、態様(1)および(2)の方法にとって好ましい。
【0027】
別の好ましい実施形態において、態様(1)および(2)の方法は、分解産物を精製または分離するステップおよび/または分解産物を化学的修飾するステップをさらに含む。先と同様に、このような精製、分離または化学的修飾は、当分野において十分確立された方法によって得ることができる。
【0028】
本発明の態様(3)は、
(i)分子量45kDa、至適温度50°C、至適pH範囲7〜8.5であり、CGPをβ−Asp−Argに分解する、および/または
(ii)DSM21533としてDSMZに寄託されたシュードモナス・アルカリジェネスDIP1のCGPaseのCphEal、またはCGpまたはCGP様ポリマーをジペプチドに切断できるそれらの突然変異体、誘導体もしくは断片である、
CGPaseに関する。突然変異体、誘導体および断片に関しては、上記の定義で言及している。
【0029】
本発明の態様(4)、(5)および(6)に従った医薬組成物、医薬品、食品補助剤または飼料補助剤は、医薬としてまたは食物として許容可能な適切な担体、結合剤などを、さらに含有できる。それらは、それぞれの医薬的目的のための、さらなる活性化合物をさらに含有することができる。
【0030】
この医薬組成物は、栄養療法に特に適している。栄養療法の型は、下記から明らかになるように、当然ながら組成物/医薬品内に存在するアミノ酸に依存する。重病患者の栄養療法における最近の進歩は、病気の期間の組織タンパク質の恒常性を維持するための、特定のアミノ酸の必要性の十分な理解を提供する(Witte,M.B.およびBarbul A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。すでに、アミノ酸は、非必須(可欠)または必須(不可欠)のどちらかとして分類されていた。しかし、アミノ酸に関するインビボ生理学のより優れた理解により、特定のアミノ酸の要求は条件つきで不可欠であるとして再定義する、代替の分類が提唱された(Laidlaw,S.A.およびKopple,J.D.、Am.J.Clin.Nutr.46:593〜605(1987年))。このことは、このようなアミノ酸の使用を、単独または完全な栄養計画の一部として魅力的にし、栄養転帰、免疫応答および組織回復を改善する。以下の項において、いずれもCGPを構築する3種のアミノ酸の生理および作用機構に関する発見を論じる。これらのアミノ酸は、非必須のL−アスパラギン酸、半必須のL−アルギニンおよび必須アミノ酸のL−リシンである。その生理作用の多さから、アルギニンに特に重点が置かれる。
【0031】
L−アスパラギン酸:非必須のL−アスパラギン酸は、分子量133.10g/モルを有し、ジカルボン酸アミノ酸である。大部分のL−アスパラギン酸は、タンパク質中に発見することができ、一方、それらの少量は体液および植物中に遊離の形態で発見することができる(Barrett,G.C.およびElmore D.T.Amino Acids and Peptides.Cambridge University Press、Cambridge、UK(1998年))。L−アスパラギン酸は、天然バイオポリマーのCGPおよび合成甘味料のアスパルテームの成分である。アスパラギン酸は、水に溶けにくく、塩の形態でより水溶性である。食物アスパラギン酸は、能動輸送により小腸で吸収され脈循環に進入し、その後、その大部分がタンパク質、プリン、ピリミジンプラントに代謝される肝臓に輸送される(Barrett,G.C.およびElmore D.T.Amino Acids and Peptides.Cambridge University Press、Cambridge、UK(1998年))。L−アスパラギン酸は、クエン酸サイクル中のエネルギー供給源として機能でき、したがって疲労に対して有効であることが推定される(さらに以下を参照されたい:Asp−Arg)。アスパラギン酸は、Mg2+、K、Ca2+、Zn2+などの陽イオンまたはそれらの生体利用効率の増加のための他のアミノ酸の薬剤送達に使用される(Cynober,L.A.Metabolic and therapeutic aspects of amino acids in clinical nutrition.第2版。CRC Press LLC、Boca Raton、USA(2003年))。
【0032】
L−アルギニン:L−アルギニンは、分子量174.2g/molの強塩基性アミノ酸であり、大部分のタンパク質中に発見される。L−アルギニンは、分子あたり4個の窒素原子を含有し、したがってヒトおよび動物において、最も豊富な窒素担体である(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。アルギニンは、魚にとって必須であるが(Ahmed,I.およびKhan,M.A.、Aquacult.Nutr.10:217〜225(2004年))、一方で哺乳動物において、アルギニンは栄養摂取を介して、または新たな合成(内因性)を介して補われ得るので、半必須であると考えられる。腎臓において、大部分の内因性アルギニンは、腸または肝臓におけるグルタミン代謝の副産物であるシトルリンに由来する。しかし、アルギニンの生合成は、喪失または不適切な供給の補正を強化しないので、食物摂取(平均的なヒトにとって、およそ5〜6g/日、Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))は依然として血漿アルギニンレベルの主要な決定因子のままである。
【0033】
摂取したアルギニンの約50%は小腸において直接利用され、一方残りは門脈循環に放出される。一般的に、摂取アルギニンの約半分は、主に酵素のアルギナーゼにより急速にオルニチンに転換される(Modolell,M.ら、Eur.J.Immunol.25:1101〜1104(1995年);Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。オルニチンは、順にグルタミン酸塩およびプロリンに、または酵素のオルニチンデカルボキシラーゼを介してポリアミンに代謝され得る(Boutard,V.ら、J.Immunol.155:2077〜2084(1995年))。残りのアルギニンは、4種の他の酵素:一酸化窒素合成酵素(一酸化窒素になる)、アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(クレアチンになる)、アルギニンデカルボキシラーゼ(アグマチンになる)またはアルギニル−tRNAシンテターゼ(タンパク質合成のための前駆体であるアルギニル−tRNAになる)のうちの1種により処理される(Vodovotz,Y.ら、J.Exp.Med.178:605〜613(1993年))。
【0034】
アルギニンは、ヒトおよび動物において内分泌機能、特に副腎および下垂体の分泌機能に関して有意な効果を有する。しかし、アルギニンがこれらの効果を発揮する正確な機序についてはほとんど知られていない。アルギニンは、心臓血管系においてさまざまな内皮依存性生理効果に関与する内因性メッセンジャー分子である、一酸化窒素(NO)の生物前駆体である。(Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。したがって、アルギニンの臨床効果の多くは、内皮由来弛緩因子についてのその効果を仲介すると考えられる。NO合成酵素は2種の変異体;構造的(cNOS)およびそのアイソフォームのeNOS(血管内皮内膜中)とnNOS(ニューロン中)ならびにマクロファージ、白血球、繊維芽細胞、内皮細胞およびケラチノサイトにおいて見出される誘導性変異体(iNOS)を有する(Rohdewald,P.およびFerrari V.、特許出願 US2004137081(2004年)。NOの機能は、その細胞供給源とは異なることがあり、繊維芽細胞NOはコラーゲン合成を支持し、一方、内皮NOは血管形成に影響を及ぼし、マクロファージNOは細菌に対して細胞増殖抑制性である(Rohdewald,P.およびFerrari V.、特許出願 US2004137081(2004年)。他方、アルギナーゼは、NOSの天然基質、すなわちL−アルギニンを共有し競合する。それぞれNO経路の中間産物および最終産物であるL−ヒドロキシアルギニンおよび亜硝酸塩は、双方との強力なアルギナーゼ阻害剤である(Hrabak,A.ら、FEBS Lett.390:203〜206(1996年))。反対に、アルギナーゼ活性の最終産物である尿素は、NOの形成およびNO依存性の過程を阻害する(Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。
【0035】
心臓血管病態におけるアルギニン:アルギニンは、多くの臨床検査において、心臓血管病態を有する患者に投与する場合、有益であることが証明された(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年)により総説された)。例えば、経口によるアルギニン補給は、狭心症の患者の運動能力および耐性を劇的に改善し(Bednarz,B.ら、Int.J.Cardiol.75:205〜210(2000年))、うっ血性心不全(CHF)の症例において、彼らの血流、動脈コンプライアンスおよび腎機能を有意に改善した(Watanabe,G.H.ら、J.Hypertens.18:229〜234(2000年))。動物の研究により、血管拡張の改善、プラーク形成の阻害、大動脈内膜の肥厚化の減少および高コレステロール血症のヒト成人の血小板凝集の正常化を含む、補足アルギニンの抗動脈硬化作用が示された(Nakaki,T.およびKato R.、Jpn J.Pharmacol.66:167〜171(1994年))。さらに、アルギニンの早期供給はラットおよびヒトにおいて高血圧を改善し、腎不全を予防し(Sanders,P.W.、Am.J.Kidney Dis.28:775〜782(1996年))、エナラプリルなどの医薬品に対する高血圧患者の応答を強化した(Pezza,V.ら、Am.J.Hypertens.11:1267〜1270(1998年))。その上、アルギニンは、間欠性跛行(Boger,R.H.ら、J.Am.Coll.Cardiol.32:1336〜1344(1998年))および子癇前症(Roberts,J.M.,Am.J.Kidney Dis.33:992〜997(1999年))の症状を、有意に改善した。
【0036】
成長ホルモン(GH)の分泌および運動能力におけるアルギニン:成長ホルモンは、筋肉の成長、脂肪燃焼および免疫系の維持に関与するが、その分泌は、ヒト体内において、30歳から下降し始める(Dean,W.およびPryor,K.、Growth hormone:amino achids as GH secretagoguesにより総説された−文献総説。Vit.Res.News;www.vrp.comにおいて利用可能(2001年))。この機序は十分理解されていないが、アルギニンがGHの分泌を強化することは公知である。さらに、臨床医は、アルギニン注入試験を日常的に使用し、ヒトにおいてGH放出に対する下垂体の反応性を決定する(Penny,R.ら、J.Clin.Endocrinol.29:1499〜1501(1969年))。アルギニンの低用量の静脈内(IV)注入は、血清中アルギニンを52%上昇させ、血清中GHレベルを有意に増大させる。他方、IVアルギニンとは異なり、経口アルギニンは、GH分泌の強化の効果の無い方法であることを示唆した(Marcell,T.J.ら、J.Gerontol.54:395〜399(1999年))、一方、高用量の経口アルギニン・アスパラギン酸は、夜においてのみ、成長ホルモン分泌促進剤として作用することを示唆する(Besset,A.ら、Acta Endocrinol.99:18〜23(1982年))。魚類において、アルギニンは必須アミノ酸であり、したがって、食物アルギニンは、最適な成長および有効な飼料利用に必須であり、その欠乏は成長率の減少、免疫応答の低下および死亡率の増加を起こす(Ahmed,I.およびKhan,M.A.、Aquacult.Nutr.10:217〜225(2004年))。
【0037】
創傷、火傷、重篤な外傷および老年性認知症におけるアルギニン:アルギニンは、一酸化窒素の製造を介した細胞のシグナル伝達およびアルギニンのオルニチンと他のポリアミンとへの代謝を介した細胞増殖に密接に関与するので、多くの研究により、アルギニンの補給が治癒にとって必須であることが示された。この効果は、投与経路に依存せず、コラーゲン、NO、オルニチンおよびポリアミンの合成経路と関係があると推定されている(Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。
【0038】
コラーゲンの合成は瘢痕形成にとって必須であり、瘢痕形成は大部分の哺乳動物の治癒にとって基盤である。ラットにアルギニン非含有食餌を与えることにより、創傷治癒が低下し、一方、ヒトおよび動物にアルギニンに富んだ食餌を与えることにより、コラーゲンの沈着および創傷破壊強度が改善されたことが示された(Barbul,A.ら、Surgery108:331〜336(1990年))。iNOS阻害剤はコラーゲン沈着を減少させ、切開創傷の治癒を遅らせるのに対してアルギニン補給後の創傷液中には高レベルのNO代謝産物が発見されるので、コラーゲン合成についてのアルギニンの効果は一部NO合成を介して仲介されることが推定される(Murrell,G.A.C.ら、Inflamm.Res.46:19〜27(1997年);Schaffer,M.R.ら、Eur.J.Surg.165:262〜267(1999年))。創傷治癒についてのNOの効果は、:1)アルギニン非含有栄養が、創傷部位だけでなくいくつかの臓器においてNO合成の誘導を阻害する;2)NOは、炎症誘導性浮腫を仲介し、細胞が肉芽腫に浸潤することを阻害する;3)創傷治癒についてのNOの効果は、eNOSノックアウトマウスもまた治癒障害を示すので、iNOS仲介性だけではない;および4)iNOS阻害剤は高濃度において高致死率を有するので、全身に仲介されることがさらに示唆される(Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。さらに、創傷縮小は開放創の閉合に大きく寄与すると同時に、切除創の閉合はiNOSの阻害により遅れ(Stallmeyer,B.ら、J.Invest.Dermatol.113:1090〜1098(1999年))、iNOSノックアウトマウスは、iNOS−cDNAを用いた形質移入により回復可能な切除創の閉合の遅れを示す(Yamasaki,K.ら、J.Clin.Invest.101:967〜971(1998年))。このデータはすべて、NOSを介したアルギニンの代謝が、治癒についてのアルギニンの陽性効果にとって必須であることの信憑性をもたらす(Shi,H.P.ら、Surgery128:374〜378(2000年))。
【0039】
ポリアミンの生合成において第1のステップを意味する、アルギナーゼの誘導または過剰発現が、内皮細胞の増殖を強化する(Wei,L.H.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:9260〜9264(2001年);Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。アルギニンは、宿主および創傷T細胞の応答を刺激し、その後線維芽細胞の応答を増加することによって創傷治癒を強化することが公知である(Barbul,A.ら、Surgery108:331〜336(1990年))。健康なヒトにおいて、アルギニンは末梢血リンパ球のマイトジェン活性を強化し、リンパ球の芽球化において外傷後機能障害を大きく減少する(Daly,J.M.ら、Ann.Surg.208:512〜23(1988年))。アルギニンは、骨髄リンパ球の分化にとって重要であることが示されている。T−リンパ球は正常な創傷治癒にとって必須であるので、T細胞欠損マウスおよびラットは、創傷治癒が有意に低下する。他の研究により、創傷治癒についての補給アルギニンの有益な効果は、傷付いた動物または火傷した子供にGHを投与する効果と同様であることが示され(Jorgensen,P.HおよびAndreassen,T.T.、Acta Chir.Scand.154:623〜626(1988年);Herndon,D.N.ら、Ann.Surg.212:424〜9(1990年))、このことは、下垂体および膵腺についてのアルギニンの周知の高い分泌促進活性による。このことは、アルギニンが創傷治癒に影響を及ぼさなかった、下垂体摘出動物に関する試験により確認された(Wei,L.H.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:9260〜9264(2001年);Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。
【0040】
Seifter,E.ら、Surgery84:224〜230(1978年)は、アルギニンが外傷後の状況において必須であることを示し、軽度の外傷を受けたアルギニン欠乏ラットは体重減少および死亡率が有意に多かったことを示した。火傷もまた、その回復においてアルギニンの酸化および変動を有意に増加する。しばしば使用される完全静脈栄養(TPN)は、アルギニンのオルニチンへの転換を増加し、不可逆なアルギニンの酸化を比例的に増加する。新たな合成に限定して、アルギニン酸化の上昇は、TPNを受けている重篤な火傷の患者において、アルギニンを条件付で必須にする(Yu,Y.M.ら、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.280:E509〜E517(2001年))。いくつかの他の研究は、アルギニンが、火傷および外傷の患者の入院の長さ、後天性感染、免疫障害(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))ならびに老年性認知症の高齢患者の脂質過酸化反応(Ohtsuka,Y.およびNakayaJ.、Am.J.Med.1:108〜439(2000年))を減らすことを実証した。相対的な安全性を加味して、これらの多数の観察により、アルギニンの使用は、外傷、火傷または重篤な病気の患者の世話にとって非常に魅力的となる(Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。
【0041】
免疫調節およびがんにおけるアルギニン:アルギニンは、強力な免疫調節因子であり、異化作用状態、例えば敗血症および術後のストレスにおいて有益な効果を有することが示された(Evoy,D.ら、Nutrition14:611〜617(1998年);Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。アルギニンは、HIV/AIDSの個体においてもまた有益であり得る。グルタミン、アルギニンおよびHMB(ヒドロキシメチル酪酸)の組み合わせは、AIDSの個体において除脂肪体重の減少を防ぐ(Swanson,B.、Nutrition18:688〜690(2002年))。動物およびヒトの試験は、大用量のアルギニンが腫瘍の誘導を妨げることができ、大用量のアルギニンの短期補給が化学療法期間の免疫機能の維持を支援することを示した(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。糖尿病およびインスリン耐性におけるアルギニン:血漿中アルギニンレベルの低下および内皮依存性弛緩の障害が、糖尿病(DM)のヒトおよび動物において観察される。内皮のNO欠乏は、このことのありそうな理由であると推定された。したがって、アルギニン補給は、これらの病態を改善することが示唆される;IVアルギニンは、1型DMの患者において血圧および血小板の凝集を低下させ(Giugliano,D.ら、Am.J.Physiol.273:E606〜E612(1997年))、一方、低用量のIVアルギニンは、肥満および2型DMの患者ならびに健康な対象においてインスリン感受性を改善した(Wascher,T.C.ら、Eur.J.Clin.Invest.27:690〜695(1997年))。アルギニンはさらに脂質過酸化反応を無効にし、その結果DMの微小血管症の長期合併症を減少し得る。さらに、二重盲検により、経口アルギニン補給が、2型DM患者の末梢および肝臓のインスリン感受性を有意に改善することが示された(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。
【0042】
胃腸の病態におけるアルギニン:その充血、血管形成および成長促進の効果を発揮する、NO、ガストリンおよびポリアミンに関するアルギニンの作用は、予備研究期間の潰瘍治癒の加速に関与する(Brzozowski,T.、J.Gastroenterol.32:442〜452(1997年))。加えて、NOは、胃腸の運動の制御において重要な役割を果たす。経口アルギニン補給は、食道運動障害の患者において肺の疼痛発作の頻度および強度を有意に減少させる(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。同様に、L−アルギニン−NO経路は胆嚢運動の制御に関与し、L−アルギニンの摂取は、空腹および残留胆嚢の体積を増加する(Luiking,Y.C.ら、Am.J.Physiol.274:984〜991(1998年))。
【0043】
泌尿生殖器の病態におけるアルギニン:米国で実施された調査(1999年)は、18から59歳の男性の31%および女性の43%が、多かれ少なかれ性機能障害を有していることを示した(Christianson,D.W.、Acc.Chem.Res.38:191〜201(2005年))。この問題は、生理的もしくは精神的な理由または双方を有しうる。男性において、性機能障害は勃起障害(インポテンスまたはED)として簡単に記載されるが、一方、女性において性機能障害は、4種の主要なカテゴリー:性的欲求低下、オルガスムス障害、性交痛障害および性的興奮障害に分類される(Basson,R.ら、J.Urol.163:888〜893(2000年))。陰核勃起および生殖器の充血を含む、十分な性的興奮の達成または維持の不能として定義される後者は、生殖器の血液循環の欠乏により起こるという点で男性のEDと類似している。このことは、双方の性別において、勃起したペニスまたは陰核内の血液で拡張可能な組織の筋肉性チャンバーである海綿体の中への血流および外への血流を管理する酵素触媒反応における生理的欠陥からもたらされ得る(Christianson,D.W.、Acc.Chem.Res.38:191〜201(2005年))。
【0044】
特にペニス勃起は、中枢または末梢の性的刺激に従った動脈血流入の増加および静脈血流出の制限に関与する血行動態過程である(Musicki,B.ら、Biol.Reprod.70:282〜289(2004年))。内皮性NO合成酵素(eNOS)およびニューロン性ペニスNO合成酵素(PnNOS)の双方により発生するNOの関与は、ペニス勃起の主要メディエーターとして十分立証されている。NOはグアニリルサイクラーゼを刺激する、隣接する標的の平滑筋組織に拡散し、海綿体の弛緩をもたらす環状グアノシン一リン酸(cGMP)を発生する(Ferrini,M.ら、Biol.Reprod.64:974〜982(2001年))。反対に、勃起は、cGMP−特異的ホスホジエステラーゼ(PDE)がcGMPを、平滑筋の収縮をもたらす5’−GMPに加水分解した時に終了する(Firoozi,F.ら、Br.J.Urol.Int.96:164〜168(2005年))。したがって、L−アルギニンおよびL−アルギニン−NO経路に作用する薬剤は、EDの治療薬として魅力的である。さらに、cGMPの分解を阻害し、その結果勃起を延長するクエン酸シルディナフィル(Sildenafil citrate)(バイアグラ(Viagra)(登録商標))のような、PDEの選択的阻害剤が広く用いられている。しかしシルディナフィルは、頭痛から出発する、広範囲の副作用をもたらす全身の血管拡張および降圧効果を有し、さらに死に達することもあり得る(Cohen,J.S.、Ann.Pharmaco.Ther.35:337〜342(2001年))。
【0045】
L−アルギニンの「栄養食品補助剤」は、男性および女性の性的興奮のための治療薬として多くの場合調査される。例えば、食物L−アルギニンの超生理学的用量を長期または補給することにより、ラット(Moodyら、1997年)および男性において、それぞれ陰茎海綿体圧および勃起機能が強化された。長期L−アルギニン補給は、一酸化窒素代謝が異常な男性においてEDを改善し(ZorgniottiおよびLizza 1994年)、一方、女性に関する別の研究において、L−アルギニンの栄養補助剤は、被検対象の73.5%において性生活全体の満足が改善された(Ito,T.Y.ら、J.Sex Marital Ther.27:541〜549(2001年))。他方NOSは、ペニスの勃起に影響を及ぼすたった1つの酵素ではなく、アルギナーゼはその唯一の基質のアルギニンを共有し、男性および女性の生殖器において平滑筋組織でNOSと同時発現する。したがってアルギナーゼの阻害は、性的興奮に必要なNO依存性の生理的過程を強化することができる。多くのアルギナーゼ阻害剤が、全身の動脈圧に明らかな効果を有さないので、性機能障害治療のための別の潜在的標的になった(Christianson,D.W.、Acc.Chem.Res.38:191〜201(2005年))。
【0046】
不妊および妊娠におけるアルギニン:アルギニンは、男性において正常な精子形成にとって必要である(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。50年以上前、研究者は、成人男性にアルギニン欠乏食を9日間与えたところ、精子数が90%減少し、非運動性精子のパーセントがおよそ10倍に増加したことを発見した(Holt,L.E.Jr.およびAlbanese,A.A.、Trans.Assoc.Am.Physicians 58:143〜156(1944年))。0.5gアルギニン−HCl/日を不妊男性に数週間経口投与すると、被検患者の過半数において精子数および運動性が著しく増加し、妊娠の成功をもたらした(Tanimura,J.、Bull.Osaka Med.School 13:84〜89(1967年))。精子減少症および受胎率(Tanimura,J.、Bull.Osaka Med.School 13:84〜89(1967年);De−Aloysio,D.ら、Acta Eur.Fertil.13:133〜167(1982年))ならびに不妊の改善に関して同様の効果が、他の予備試験において報告されている。しかし、精子数のベースラインが1000万/ml未満であった場合、アルギニン補給は役に立たなかった(Mroueh,A.、Fertil.Steril.21:217〜219(1970年);Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。
【0047】
一研究において、インビトロの受精にほとんど応答しない女性に対する経口アルギニン補給は、卵巣の反応、子宮内膜の受容性および妊娠率を改善した(Battaglia,C.ら、Hum.Reprod.14:1690〜1697(1999年))。加えて、子宮収縮の早すぎる女性に対する静脈内アルギニン注入(30分にわたって30g)は、一時的に子宮収縮を減少した(Facchinetti,F.ら、J.Perinat.Med.24:283〜285(1996年))。さらに、ヒトおよび動物の研究からの証拠は、一酸化窒素が妊娠中に子宮収縮を阻害し、その結果早期陣痛および早産に対して役に立ち、作用することができることを示した(Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。
【0048】
間質性膀胱炎(IC)の患者において、6ヶ月にわたる経口アルギニンは、排尿不快感、腹痛および膣/尿道の痛みを有意に減少した。昼夜の頻尿もまた有意に減少した(Smith,S.D.ら、J.Urol.158:703〜708(1997年);Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。
【0049】
L−リシン:L−リシンは、必須の塩基性アミノ酸であり、分子量146.19g/モルを有し、生理的pHにおいて正電荷を担持する。リシンのD−立体異性体は生物学的に活性でないが、一方L−リシンは、ヒトおよび動物にとって公知の食品添加物である(Cynober,L.A.Metabolic and therapeutic aspects of amino acids in clinical nutrition.第2版。CRC Press LLC、Boca Raton、USA(2003年))。摂取されたL−リシンは、能動輸送により小腸の内腔から腸細胞に吸収される。その一部は腸細胞内で代謝され、残りは門脈循環を介して肝臓に輸送され、タンパク質の生合成に加わる、またはL−α−アミノアジピン酸セミアルデヒドに代謝され、これがさらにアセトアセチル−CoAに代謝される。肝臓において代謝されないL−リシンは、身体のさまざまな組織に輸送される(Cynober,L.A.Metabolic and therapeutic aspects of amino acids in clinical nutrition。第2版。CRC Press LLC、Boca Raton、USA(2003年))。
【0050】
リシンは多くの機能を有する。リシンは、グリコーゲン、グルコースおよび脂質の前駆体として機能し、またはリシンはエネルギー生産のために直接機能する。リシンは筋肉におい濃縮され、骨の成長を促進し、コラーゲンの形成を強化する(Voet,D.およびVoet,J.G.、Biochemistry。第3版。John Wiley and Sons Inc.,New York(2004年))。コラーゲンは、結合組織(前を参照されたい)、皮膚、軟骨および骨の基礎となるマトリックスである。リシンの欠乏は、成長および免疫力の低下、精子の健康の損傷ならびに尿中カルシウムの増加に寄与し得る。この最後の事実は、適切なリシンが、より多くのカルシウムの吸収および沈着を介して骨粗しょう症の予防に役立ち得ることを示唆した(Flodin,N.W.、J.Am.Coll.Nutr.16:7〜21(1997年))。いくつかの研究が、L−リシンが、単純ヘルペス感染の再発率を減少させ、成長ホルモン分泌を刺激できることを示してから、L−リシンは栄養食品補助剤として普及した(下記を参照されたい)。
【0051】
推奨用量、副作用および禁忌:上で論じたアミノ酸の補給用量は、治療される病態に依存して大きく変化しうる。しかし、平均的なヒトのための必須アミノ酸のリシンの正常な食物の必要量は、欠乏の問題を避けるために0.75〜1g/日であると推定される。臨床研究に使用するアルギニンの用量は、精子減少症のために0.5g/日のような少量から、がん、子癇前症および早すぎる子宮収縮のための30g/日のような大量まで大幅に変化する。有意な悪影響は、この論文を通して述べたアミノ酸の補給に関して報告されていない。しかし、言及した臨床応用の多くは、より調節された、長期の研究により確認される必要がある。この論文はこれらのアミノ酸の効果についての、肯定的な報告だけを要約したが、これらの効果の多くが確認されなかった、反対の報告もまた存在する(完全な総説のために、Flodin,N.W.、J.Am.Coll.Nutr.16:7〜21(1997年);Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年);ならびにDean,W.およびPryor,K.、Growth hormone:amino acids as GH secretagogues文献の総説。Vit.Res.News;www.vrp.comで利用可能(2001年)を参照されたい)。
【0052】
臨床治療におけるアスパラギン酸、アルギニンおよびリシンのジペプチドならびに混合物:アスパラギン酸およびアルギニンは、ジペプチドまたは混合物として好んで一緒に投与され、アミノ酸双方のより高い生体利用効率を提供し、その結果低用量におけるそれらの有効性を増加する。双方のアミノ酸の投与は、さまざまな生理的障害の治療のためのいくつかの研究において調査された。一般的に、双方のアミノ酸は、遊離のアミノ酸に関する上記すべての応用のために、ジペプチド形態で投与することができる。以下の項は、併用投与形態について具体的に報告された調査結果を要約する。これらの報告は、創傷治療、GH分泌障害および運動能力の強化としての内分泌の病態または勃起障害ならびに男性および女性の不妊を含む泌尿生殖器の病態に関する研究から明らかになった。
【0053】
アルギニン−アスパラギン酸は、身体的および精神的無力症に対して、1965年に初めて臨床的に試験され(Duruy,A.およびBaujat,J.P.,Vie.Med.Int.9:1589(1965年))、陽性効果が後に確認された(Duruy,A.、Med.Int.1:203(1966年))。他の研究は、アルギニン−アスパラギン酸の長期投与が、好気的エネルギー代謝および能力を改善することを示した(Sellier,J.、Rev.Med.Toulouse5:879(1979年);Schmid,P.ら、Leistungssport 10:486〜495(1980年))。アルギニン−アスパラギン酸の補給は、創傷治癒およびT細胞の免疫機能を強化した(Barbul,A.ら、Surgery108:331〜336(1990年))。運動能力についての他の陽性効果も報告されており、例えば脂質代謝に関してわずか2週間のアルギニンの取り込みが、総コレステロール濃度の低下を起こした(Hurson,M.ら、J.Parenter.Enteral Nutr.19:227〜230(1995年))。したがって、L−アルギニン−L−アスパラギン酸(Sargenor(登録商標))は、運動選手および患者により広く使用され、トレーニング効果および運動耐容能を増加する。この分野において運動の持続に関する印象的な効果が、L−アルギニン−L−アスパラギン酸の長期にわたる取り込みの後に報告されており、最大下運動における血中乳酸濃度および心拍の低下ならびに作業負荷の増大による酸素摂取量の増加を起こす(Schmid,P.ら、Leistungssport 10:486〜495(1980年);Sellier,J.、Rev.Med.Toulouse 5:879(1979年);Burtscher,M.ら、J.Sports.Sci.Med.4:314〜322(2005年))。
【0054】
健康な高齢のボランティアに、2週間、30g/日のアルギニン・アスパラギン酸を食物補給すると、創傷のコラーゲン蓄積が有意に強化された(Witte,M.B.およびBarbul.A.、Wound Rep.Reg.11:419〜423(2003年))。250mg/kg/日の経口アルギニン・アスパラギン酸を、20から35歳の5例の健康な対象に7日間投与した場合、徐波睡眠中にGHの60%の上昇が起こった(Besset,A.ら、Acta Endocrinol.99:18〜23(1982年))。別のグループの研究者は、12例の正常な成人を、経口アルギニン・アスパラギン酸の単回の大用量(37.5g)を用いて処理した後で、血清hGHの少量だが有意な放出を起こす、期待できる結果を得た(Elsair 1987年)。このことは、アルギニン・アスパラギン酸を、hGHの同化作用を巧みに利用したいボディビルダーにとって興味深いものとした(Macintyre,J.G.、Sports Med.4:129〜142(1987年))。
【0055】
経口投与されたL−アルギニン−L−アスパラギン酸は、がんの一部の型の治療において陽性効果を誘導することも報告された。例えば、経口投与されたL−アルギニン−L−アスパラギン酸は、マウスにおいて唾液腺の腺様嚢胞癌に対して、肺の転移巣形成の阻害および生存期間の延長を伴う抗転移効果を誘導した。さらに、インビトロおよびインビボ実験において、これらの結果は確認された(Li,F.ら、Chin.J.Stomatol.36:464〜466(2001年);Li,F.ら、Chin.J.Stomatol.37:87〜89(2002年);Appleton,J.、Altern.Med.Rev.7:512〜522(2002年))。
【0056】
歯科衛生の分野において、歯の表面に密に付着するスポンジ状の有機材料であるプラークが、そのマトリックス内に特定のサイズおよび形状のペプチドを受容することが発見された。さらに、1つまたは複数がアルギニンである2−4アミノ酸単位のペプチドは、希釈から保護されてプラーク内に保存され、口内pHを非齲蝕レベル(6.1またはそれ以上)に有効に回復することが示された。さらに、これらのオリゴマーは、糖質と同時に提供された場合でさえ、有効である。このことは、歯磨きペーストおよびチューイングガムなどの一般的なデンタルケア製品中へのこのようなペプチドの包含を示唆した(Kleinberg,I.、特許出願 US4225579(1980年))。
【0057】
L−アルギニン−L−アスパラギン酸は、さらに泌尿生殖器の障害の治療にも用いられた。EDは、中程度の勃起障害を有する45から70歳の男性の25%および重篤な勃起障害の10%において一般的である(Kernohan,A.F.B.ら、Br.J.Clin.Pharmacol.59:85〜93(2004年))。近年、「L−アルギニルアスパラギン酸」が、男性のEDの治療用のいくつかの医薬品、例えばPrelox(登録商標)の成分として使用された(Lamm,S.ら、Eur.Bull.Drug Res.11:29〜37(2003年))。Prelox(登録商標)の成分に関する臨床研究は、1gの「L−アルギニルアスパラギン酸」(Sargenor(登録商標))を単独で、またはPycnogenol(登録商標)(NOSの分泌を刺激する)と一緒に、3回の投与後(毎日1.7gのアルギニン)、それぞれEDの40例の男性の5%および92%が勃起機能を改善したことを示した(Stanislavov,R.およびNikolova,V.、J.Sex Marit.Ther.29:207〜213(2003年))。長期研究の期間、EDを有し、精液の量が低下し、精子の運動性が減少し、精子の形態異常を有する、45から60歳の50例の男性を、まずSargenor(登録商標)単独で1ヶ月治療した。これらの男性の10%が正常な勃起を経験した。2ヶ月の治療にPycnogenol(登録商標)を加えた後で、正常に勃起した男性のパーセントは80%に上昇した。治療を1年の間継続し、その間精子の質が有意に改善され、カップルの42%が妊娠を達成した(Stanislavov,R.およびNikolova,V.、Int.J.Impot.Res.14(4):S65(2002年);Lamm,S.ら、Eur.Bull.Drug Res.11:29〜37(2003年))。その後の観察により、アルギニン−アスパラギン酸の使用に関する、数ヶ月の補給により精子の数および質が上がる(Tanimura,J.、Bull.Osaka Med.School 13:84〜89(1967年);Schellen,T.M.およびDeclerq,J.A.、Dermatol.Monatsschr,164:578〜80(1978年);De−Aloysio,D.ら、Acta Eur.Fertil.13:133〜167(1982年))ならびに不妊が改善される(Schacter,A.ら、J.Urol.110:311〜13(1973年);Schacter,A.ら、Int.J.Gynaecol.Obstet.11:206〜209(1973年))という先行する研究が確認された。
【0058】
アスパラギン酸およびリシンからなるジペプチドに関する臨床報告は、このジペプチドが大量に利用できないためほとんど存在しない。しかし、リシンのこのジペプチド形態は、遊離のリシンもしくはその塩に関して公知の応用分野(前を参照されたい)において、または単に遊離のリシンより高い生体利用効率のヒトおよび動物用の食品添加物として、遺伝的にリシン輸送体が欠乏したヒトにおいて有効であり得る。
【0059】
アルギニンおよびリシンは、成長ホルモン(GH)の放出のために相乗的に作用し(Suminski,R.R.ら、Int.J.Sport Nutr.7:48〜60(1997年))、ヒトおよび動物の栄養においてそれらの濃度は非常に重要である(Ahmed,I.およびKhan,M.A.、Aquacult.Nutr.10:217〜225(2004年))。リシン:アルギニン比が低いと、コレステロール低下効果を有し(Sanchez,A.ら、Nutr.38:229〜238(1998年))、したがって特許は、心臓血管疾患を有する患者に使用するタンパク質混合物のArg:Lys比が少なくとも5.5:1で実施された(Radha,C.ら、特許出願 7091001(2006年))。対照的に、単純ヘルペスウィルスのタンパク質はL−アルギニンに富んでいるので、食物中でアルギニンに対するリシンの比が高いと、ウィルスの複製、治癒時間および発生期間の細胞病原性の低下に役立つことが公知である(Griffith,R.S.ら、Dermatologica 156(5):257〜267(1978年))。したがって、ヘルペスの予防および治療において、アルギニンに富んだ食品を避け、リシンに富んだ食品をより多く食べることが役立つことが示唆される。
【0060】
近年の調査は、hGHの刺激およびその結果の筋肉の構築、体重増加および免疫の支援の改善において、L−リシンおよびL−アルギニンを一緒に使用する療法が有用であり、おそらくアルギニン/オルニチンの併用よりもさらに優れていることを示唆している。15例の15から20歳の健康な男性対象において、1.2gのアルギニンピログルタミン酸とL−リシン塩酸塩との併用は、アミノ酸混合物の消費後、GHレベルが2から8倍、有意に上昇した(Isidori,A.ら、Curr.Med.Res.Opin.7:475〜481(1981年))。別の研究は、静止状態下で摂取した1.5gのアルギニンおよび1.5gのリシンの摂取が、GHの分泌の急激な増加を起こすことを示した(Suminski,R.R.ら、Int.J.Sport Nutr.7:48〜60(1997年))。
【0061】
消化管内部の自然状態を刺激するために、調製された腸「液」を、CGPを含有する嫌気性フンゲート(Hungate)チューブ中の接種材料としておよび栄養食品補助剤として使用した。すべてのチューブにおいてCGPが完全に分解されたことは、CGPが消化管の嫌気性環境のような、このような嫌気性環境において容易に分解され得ることを示す。このことは、偏性嫌気性および通性嫌気性のCGP分解細菌に関する先に観察された短期分解期間に類似した短期分解期間によってもさらに確認された(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Sallam,A.ら、公開用に提出(2008年))。
【0062】
本研究の期間中に、動物、鳥類および魚類の消化管においてCGP分解細菌が広範囲に分布していることが、初めて実証された(表1、2)。精製手順において観察されたCGP分解コロニー間、およびその後得られた純粋培養間の形態的多様性もまた、環境サンプルについての先行研究により示され、これにより原核生物中のCGP分解菌の広範囲の分布が示された(表2)。他方、CGPを分解する能力は、特定の属の種においてより多く分布しているように思われ、;今日までの細胞外CGP分解についての調査は、CGP分解菌が、シュードモナス属およびバチルス属に広範囲に分布していることを示す(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年);Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年);Sallam,A.ら、公開用に提出(2008年)、本研究)。しかし、このことは、これらの細菌に有利にされた、用いられた実験室条件に関係する、または単純に自然におけるこれらの細菌属の優勢のためと思われる。加えて、シュードモナス属およびバチルス属の菌株とは異なる多くのCGP分解細菌は、CGP分解能を損なうことなく純粋培養することが非常に難しく(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年);Krug,A.、Diplom thesis、Institut fur Molekulare Mikrobiologie and Biotechnologie,Westfalische Wilhelms−Universitat、Munster、Germany(2001年))、普通は無視される。
【0063】
部分的CGP分解は、嫌気条件下の純粋培養に関して、嫌気的にCGPを分解した46株のうち8株のみに観察された。このことに関する妥当な理由は、それらの天然環境におけるようなこれらの菌株と他の菌株との間の、それぞれ、多くの場合制限されたまたは必要な物質の蓄積または枯渇をもたらす天然の相互作用の欠落である。このことは、成長およびCGP利用がその同時単離されたシトロバクター・アマロナティクス(Citrobacter amalonaticus)G株の存在下で大幅に強化された、偏性嫌気性芽胞形成菌のセディメンチバクター・ホンコンエンシスKI株に関する先行する観察に一致する(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年))。
【0064】
同定された8種の単離株のうち、いくつかの菌株は嫌気的CGP分解能を示したが、それらはバチルスまたはシュードモナスなどの、好気性であることが公知の属に属する。しかし、枯草菌(B.subtilis)および巨大菌(B.megaterium)の菌株は、嫌気的に成長することが公知であり、一部は硝酸塩を還元することが公知である(Glaser,P.ら、J.Bacteriol.177:1112〜1115(1995年))。同様に、シュードモナス属のメンバーの嫌気的成長および硝酸塩還元も十分調査されている(Sallam,A.ら、Submitted for publication(2008年))。ミクロモノスポラ(Micromonospora)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびブレビバチルス(Brevibacillus)の種もまた通性嫌気性であることが公知である(Cochrane,V.W.、Annu.Rev.Microbiol.15:1〜26(1961年);Borodina,I.ら、Genome Res.15:820〜829(2005年);Baek,S.H.ら、Int.J.Syst.Evol.Microbiol.56:2665〜2669(2006年))。一般的に、CGP分解に関する最近の調査は、通性嫌気性菌の中にCGP分解細菌が広範囲に分布していることを指摘している。
【0065】
CGPおよびそのジペプチドは、天然起源の単純なタンパク質性物質であるが、臨床研究は、これらの物質を市場にもたらすことを要求される。本研究において試験した個々の哺乳動物、鳥類または魚類の腸内細菌叢のおけるCGP分解細菌の広範囲な分布は、経口投与されたCGPが少なくとも微生物的に高速で容易に分解されるであろうという第1の証拠を提供する。さまざまな動物および鳥類の下部消化管に由来するこのような細菌(表1)の単離は、CGPの分解が上部消化管で完了しなかった場合、下部において継続される可能性があることを示す。
【0066】
HPLC分析により、ジペプチドが、62種すべての単離菌によるCGPの分解産物であったことが明らかになった。(β−Asp−Arg)テトラペプチドなどの高次のジペプチドオリゴマーは、CGPから作製されなかった。このことは、シュードモナス・アンギリセプチカBI株(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年))、セディメンチバクター・ホンコンエンシスKI株(Obst,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:3642〜3652(2005年))およびシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株(Sallam,A.ら、公開用に提出(2008年))由来のCGPaseの効果と一致する。巨大菌BAC19株の場合だけ、高次のこのようなオリゴマーが検出された(Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年))。スピルリナは、何世紀にもわたってその栄養効果および治療効果が公知であり、今日まで、多くの国において食品として消費されている。スピルリナのタンパク質含有量は、60%以上に達することが公知である(Narasimha,D.L.R.ら、J.Sci.Food Agric.33:456〜460(1982年))。スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)の市販の製品中のCGPの存在は、CGPが、スピルリナの定期的な消費のウェルビーイング効果に加わることができることを示す。しかし、分析されたサンプル中の決定されたCGP含有量は、大きく変動し、相対的に低かった。このことは、シアノバクテリアにおけるCGPの蓄積についての先行する研究と一致し、CGPの蓄積が多くの因子により影響され、したがって変動することは公知である(Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))。さらに、市販のスピルリナ製品は、商業化が許可される前に、多くの臨床試験および毒性試験を確実に通過してきた。このことは、抽出されたCGPおよびCGP−ジペプチドが、経口摂取した場合毒性効果を誘導しないことを示す。さらに、CGPジペプチドは、細菌において成長のために普通に取り込まれ、利用され、標的調査の間に静菌効果または殺菌効果を全く示さなかった(データ非掲載)。一般的に、スピルリナの公知の効果および応用はアルギニンに関して証明された効果および応用と非常に類似しており、このことは、実際にこれらの効果の一部が、CGPの含有量を含む、そのアルギニン含有量(約6%)によると思われることを示唆している。
【0067】
細菌は3種のペプチド輸送系を保有しており、2種がABC(ATP結合カセット)輸送体の大型のファミリーに属するオリゴペプチド透過酵素(Opp)およびジペプチド透過酵素(Dpp)、ならびにPTR(Peptide TRansporter)ファミリーに属するジペプチドおよびトリペプチドのための輸送体である。最後の系だけが、酵母から出発する高等真核生物において保存されている(Daniel,H.ら、Physiology 21:93〜102(2006年))。哺乳動物において、ジペプチドおよびトリペプチドPEPT(SLC15ファミリー)のための輸送系は2種の変異体:腸内PEPT1(SLC15A1)および腎性イソ型PEPT2(SLC15A2)を含む。それらは、L−αアミノ酸およびそれらの誘導体を優先する立体選択的手段で、ほぼすべての可能なジペプチドおよびトリペプチドを輸送する。D−アミノ酸だけ、または4個以上のアミノ酸を含むペプチドは受容されない。PEPT1は、小腸を通し、その高い輸送能力により優勢な発現を有するので、PEPT1のすべての薬剤基質は優れた経口利用の可能性を有し、したがってPEPT1は薬剤送達の第1の標的となっている(Daniel,H.ら、Physiology 21:93〜102(2006年))。CGPジペプチドの構成L−アミノ酸である、Asp−ArgおよびAsp−Lys(組換えCGP)は、α−βペプチド結合を介して連結される。この型の結合およびCGPジペプチドの立体構造は、PEPT系の基質として作用し、摂取された場合、哺乳動物の腸内腔から輸送され得ることが、強く想定される。したがって、CGPおよび/またはそのジペプチドの使用は、治療薬および/または栄養剤としての構成アミノ酸の経口投与にとって理想的な取り組みであると思われる。
【0068】
CGPを構成するアミノ酸、例えばアスパラギン酸、アルギニンおよびリシンならびにその構造にさらに統合することが可能な、シトルリン、オルニチン、カナバニンまたはグルタミン酸塩などのアミノ酸を含むアミノ酸の栄養的価値および臨床的価値は、何世紀にもわたって公知である。これらのアミノ酸の合成オリゴマーの組み合わせは、遊離のアミノ酸より高い生体利用効率を有することが証明されており、したがって、頻繁に調査され、栄養および治療に用いられていた(前を参照されたい)。CGPは、遊離の形態のその構成アミノ酸より低用量でより有効であることが期待できる、このようなオリゴマーの理想的な天然供給源を表す。したがって、CGPおよびそのジペプチドの吸収、安全性および効果は、現在調査中である。さらに、CGPに統合する他のアミノ酸に関する研究により、期待できる結果が示された(データ非掲載)。得られたジペプチドは、いくつかの治療分野、例えばアスパラギン酸−オルニチンを肝臓疾患の治療において用いることができる(Kircheis,G.ら、Hepatology 25:1351〜1360(1997年))。その結果として、CGP構造における任意の将来の改変が、CGPジペプチドの範囲を広げ、その後、治療薬および/または栄養食品補助剤などのそれらの応用範囲を拡大すると思われる。
【0069】
三相性の方法が、シアノフィシン(CGP)からのβ−ジペプチドの大規模製造のために確立された。第I相は、バイオマスからCGPを工業的に単離するための、最適化された酸抽出方法に基づき、総計704gの純粋CGPを得、アスパラギン酸、アルギニンおよび少量のリシンが構造的に含有された。第II相は、細胞外CGPase(CphE)の醗酵性製造を表し、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株から、500l規模で、単一基質として1g/lのクエン酸塩を使用して酵素を生産し、17.5gの粗タンパク質粉末を得、CGPに対して高い分解活性を示した。第III相は、CphEを介したCGPの分解を含み、250gのCGPを、99%以上の純度(TLC、HPLC)のβ−アスパラギン酸−アルギニンおよびβ−アスパラギン酸−リシンのジペプチドに分解した。第III相の全体の効率は、91%であり、使用したCphE粉末の78%(wt/wt)が回収され、CGPに対する持続性の活性を示した。確立された方法は、工業基準の材料および設備に依存し、あらゆる所望の規模に適用可能である。
【0070】
DIP1株を含むシュードモナス・アルカリジェネスの菌株は、広範囲の基質において成長し、それらの最小量を必要とすることが公知である。このような菌株の高い酵素産生力も、細胞外リパーゼの醗酵性製造にそれらを用いる主な理由である(WO95/30744;Gerritse、G.ら、Appl.Environ.Microbiol.64:2644〜2651(1998年);Moore,E.R.B.ら、Mai1999年。Pseudomonas:Nonmedical.Mooreら、(編)、The Prokaryotes:An Evolving Electronic Resource for the Microbiological Community、第3版、release 3.0、Springer−Verlag、New York))。DIP1株由来のCGPaseの高い安定性および活性(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007b。Anaerobic and aerobic degradation of cyanophycin by the denitrifying bacterium Pseudomonas alcaligenes strain DIP1−Role of other three co−isolates in the mixed bacterial consortium。公開用に提出。)に加えて、これらの特徴は、この菌株を設計した工業的方法にとって理想的であると考える主要な因子であった。
【0071】
最終的な三相性方法を創製する前に、CGPに対して直接DIP1株を培養することによって、同じ目標を達成するためにいくつかの試験を実施したが、その戦略は成長細胞によってCGP−ジペプチドが急速に消費されるためあまり有効ではなく、この問題を、DIP1株の細胞を排除して定義した三相性方法の手順において避けた。さらに、直接培養により得られたジペプチド溶液は大量であり、したがって、操作が非常に困難であり、さらに得られたジペプチド溶液中の少量のタンパク質および塩の存在が、その戦略の別の欠点を表した。対照的に、三相方法によるCGPの分解濃度および分解時間は完全に調節可能である。その結果、得られたジペプチド溶液は少量に制限され容量を操作しやすい。最も高い試験濃度(50g/l)は、将来の応用のためにさらに最適化でき、本方法を経済的により有効にする態様の1つである。
【0072】
経済的因子は、一般的に工業的方法にとって非常に重要であり、したがって、培地の最適化および基質利用において得られた結果は満足のいくものであり、工業的な量において安価な基質であり、単一基質として、用いられる菌株にとって理想的であったクエン酸塩は、細胞外リパーゼの醗酵性製造にすでに用いられていた(Gerritse,G.ら、Appl.Environ.Microbiol.64:2644〜2651(1998年))、しかし、粗CphE(第II相)の製造相のために最適化された培地の必要が、醗酵期間、特に誘導および分解相の期間の濁度グレードの正確なモニタリングの必要を介して浮上する。実験的CGP分解による先の経験により、不透明な培地および細胞の力強い成長は誤解を招く恐れがあり得、加えて、細胞のより望ましい成長は細胞外CGPaseのより多い製造を本質的に意味しなかった(非公開データ)ことを示した。
【0073】
先行する研究において適用に成功した、Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年)のCGP酸抽出方法は、バイオマスの任意の工業的な量から純粋なCGPを単離するために適切になるように最適化された。もともとの方法の最も有効な変化は、溶解したCGPの滅菌ろ過ステップであり、この手順は、希HClに溶解しないいかなる細胞デブリも完全に除去することを保証した。対照的に、希釈酸および水を用いる増加した精製ステップは、CGPの損失を不必要に増加する恐れがあり、このことは、得られたCGPと抽出量との差を説明する。CGPの損失およびその抽出に必要な時間は、CGPを4℃に静置する代わりに、CGPを遠心分離機にかけることによって最小化できる。
【0074】
または、この抽出方法の全体の生産力は、有効な機器、例えばクロスフローを用いた場合、大幅に増加でき、この場合、単離するCGPの分子サイズより、一方は大きく他方は小さい、2つの異なるCOPを備えた2つのカセットが必要であり、この2つのカセットは、それぞれ、溶解状態および沈殿状態のCGPにおいてCGPの交互のろ過に用いることができる。しかし、このような限外ろ過カセットの比較的高い価格およびさらに限られた寿命により、それらの適用はコストの問題となる。
【0075】
粗CphEの醗酵性製造(第II相)の期間中、CGPによる誘導は、CphEの最大の製造を保証し、濁度変化と培地中のCGP量とを排他的に参照するために定常期に用いる。
【0076】
培地のpHは、許容範囲(pH6.9〜7.5)を超えて上昇し、HClの添加により調節したが、これは、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株の細胞によるアンモニアの放出のためである可能性が最も高い。この菌株に関する類似の生理的挙動が、CGP分解についての先行調査に記録されていた(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007b。Anaerobic and aerobic degradation of cyanophycin by the denitrifying bacterium Pseudomonas alcaligenes strain DIP1−Role of other three co−isolates in the mixed bacterial consortium.公開用に提出。)。
【0077】
さまざまな被検ろ過系の前後に得られたCGP−ジペプチドの理想的な純度は、明らかに、もともとのジペプチド溶液中の不純物の最初の欠乏による。このことは、細菌細胞を用いた直接培養戦略と比較した、定義された酵素的方法の適用に関する別の有利性を表す。他方、ろ過によるジペプチドの量的損失が予想され、不運なことに避けられない;ろ過材料、カットオフ点、および/またはろ過する物質それ自体の特徴を含む、いくつかの一般因子がこのような損失を起こすことが公知である。このことは、分解相期間(第III相)のCGPの9%および粗CphEの22%の損失も説明する。その上、新しいろ過膜(0.5−10kDa、COP)だけを試験し、その結果CGP−ジペプチドの損失量は、飽和まで膜表面に付着する可能性が最も高い。
【0078】
91%のプロセス効果は極めて高いにもかかわらず、いくつかの態様は、さらに改善可能であり、したがって最適化の途中であり、これらの態様は、粗CphEのより高い生産力、CphEの工業的精製戦略の可能性および分解相のより有効な条件を含む(非公開データ)。CGP−ジペプチドの商業的価値は、CGPそれ自体の製造コストに直接関係するが、この数年にわたって、CGPの製造は、いくつかの細菌株を使用して重点的に調査され、最適化され、その結果、CGP含有量の増大が、新規のより適した経済的な基質を使用して達成され、これらの進歩は商業的CGP製造の方向に移動したと思われ(上を参照されたい)、この方法はさらに、他の公知な細菌性ポリ(アミノ酸)例えばポリ(グルタミン酸)およびポリ(ε−リシン)により、技術および食品応用のために商業化されることが必要であった(Oppermann−Sanio F.B.ら、Naturwissenschaften 89:11〜22(2002年);Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:1166〜1176(2004年)により総説された)。その時まで、CGP−ジペプチドの生物医学的価値は、CGPの実際の製造コストとのバランスの取れた関係を実際に提供できるであろう。したがって、CGP−ジペプチドの生物医学的効果は現在調査中であるSallam,A.およびA.Steinbuchel.2007c。Potential of cyanophycin and its β−dipeptides as possible additives in therapy,food and feed industries)。
【0079】
シアノフィシン(CGP)からのβ−ジペプチドの大規模製造のための以前に適用されたバイオテクノロジー的方法を最適化した;もともとの方法は、3相:第I相:バイオマスからの純粋CGPの大規模抽出;第II相:シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株からの粗シアノフィシナーゼ(CphEal)の大規模製造、第III相:CGPのそのジペプチドへの分解からなった。最適な培養条件は、第II相のために決定した;2g l−1のクエン酸塩、pH6.5および培養温度37℃。CphEalのインデューサーとしてのCGPの最適濃度は50g l−1であり、これは以前に適用した濃度の1/5を表す。最大酵素濃度は誘導5時間後に得た。CGP−ジペプチドの同じ濃度は、わずか3時間後に同様の誘導効率を示した。さらに、最適条件の4g l−1のL−アスパラギン酸はCphEalを誘導したが、CGPと比較して1/3の効率であった。CphEalは、CGPに対する基質特異的結合を介して精製した。精製された酵素を特徴付け、50℃およびpH7〜8.5において最大活性を有するセリンプロテアーゼであるという結果になった。もともとの方法の第III相の条件(CGP分解);50g l−1のCGP、10g l−1の粗CphEalおよびインキュベーションは30℃において10時間を、100g l−1のCGP、10g l−1の粗CphEalおよびインキュベーションは50℃においてわずか4時間に最適化できた。CGPは、純度99%以上(HPLC)のβ−アスパラギン酸−アルギニンおよびβ−アスパラギン酸−リシンジペプチドに分解された。これらの最適化により、コスト、時間および労力がより有効な工業的方法が得られた。
【0080】
500l規模の醗酵におけるプロタミラスでのCGPの製造に先立って、プロタミラスの利用可能なチャージについての予備試験により、CGP製造にとって7%(vol/vol)が最適であることが明らかになったが、プロタミラスの前のチャージについてのElbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年)の先行する研究において、最適濃度が6%(vol/vol)であることが見出された。このことは、工業的デンプン製造の残留化合物であるプロタミラスは、チャージごとに変動しうる組成物を含む複合培地であり、したがって培養培地として適用前に調整されなければならない。
【0081】
醗酵期間中および最初の6時間の後、温度感受性λ−リプレッサー(cI857)を不活性化するために温度を37℃に上昇させ、その結果CGP−シンテターゼ(CphA)遺伝子の誘導を可能にした。この時点で、組換え大腸菌株の細胞は、すでに2時間対数増殖期であった。この醗酵経過が、CGP−シンテターゼの誘導およびCGPの最大の細胞内蓄積に最適であることが証明された(Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年))。
【0082】
さらに醗酵の6時間後、培地の濁度が、自動調節攪拌の増加と平行して急上昇を示した。このことは、37℃への温度上昇に加えて強力な細胞成長のための培地中の酸素の減少により説明できる。明らかに、培地中の酸素含有量はあらかじめ調整した最小値より低下し、攪拌の自動増加を起こし、これが順に泡および気泡の高度の形成をもたらし、その後OD850nm値が不正確になった。消泡剤の手動の添加は、濁度の急速な低下を起こし、正常なレベルに達した。
【0083】
CGPが細胞内に最大に蓄積したことが顕微鏡的に予測された時(15時間後)に、醗酵を終了させた。しかし、醗酵サンプルの後の分析により、より良い取得時間が13時間のインキュベーション後であったことが示された。その時点において、CGP含有量は約13%(CDMのwt/wt)であり、一方15時間後に10%(CDMのwt/wt)に下降した。この損失は、明らかに、CGP含有量の、醗酵期間中に唯一可能な方法であった顕微鏡予測の不正確さのためであった。さらに、CGP含有量の減少は、インキュベーション中の時間に発生するプラスミドの損失の可能性が最も高い(Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))。ポリマーの抽出および精製後、HPLC分析により、CGPの高純度および3種のアミノ酸:アスパラギン酸(47.7mol%)、アルギニン(45.6mol%)およびリシン(6.8mol%)からなることが明らかになった。SDS−PAGEにより、CGPが25〜30kDaの分子サイズを有することが示された。これらの特徴は、いくつかの培地上の同じ菌株により以前に産生されたCGPの特徴と非常に一致する(Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年);Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))。
【0084】
近年、1g l−1のクエン酸塩を含む単純な無機塩培地(SM−培地)が、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株からの、CphEalの大規模製造に適用された。この培地は、その単純でコストのかからない組成物のため、ならびに使用する菌株に対して適切であるため好ましい(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2008b。Biotechnological process for the technical production of β−dipeptides from cyanophycin。準備中)。しかし本研究の期間中、成長に最適なクエン酸塩濃度は6g l−1にもかかわらず、このような培養においてCphEalは産生されなかった。CphEalの最大の製造は2g l−1のクエン酸塩で成長する培養において起こった;このことは、この酵素が基質の制限下においてのみ誘導されることを示した。温度およびpHの最適条件に関する他の実験は、37℃および5.5〜7.5のpH範囲を示し、DIP1株およびCphEalの製造にとって最適な最適条件は6.5であった。これは、はじめに1g l−1のクエン酸塩、pH7.5およびインキュベーション温度30℃を適用した製造方法の効率を強化した(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2008b。Biotechnological process for the technical production of β−dipeptides from cyanophycin。準備中)。
【0085】
CphEalの誘導についての延長調査は、以前に用いられたCGP濃度(250mg l−1)のわずか1/5(50mg l−1)が、同じ効果をもたらすために十分であったことを明らかにした。さらに、CGP−ジペプチドは、同じ効率でCphEalを誘導するためには同じ濃度(50mg l−1)で十分であった。しかし、ジペプチドにより誘導される培養液を取得するまでに必要な短時間のインキュベーション期間(3時間)は、CGP−ジペプチドが、CphEalの実際のインデューサーであり、CGPそれ自体ではないことを示す。加えて、アスパラギン酸は、CGP−ジペプチド以外のCphEalの良好なインデューサーであり、4g l−1の濃度および5時間のさらなるインキュベーション期間がCphEalの最大の製造に必要であり、これは、CGPまたはそのジペプチドの製造効率のわずか1/3のCphEalの製造効率であったことを表した。したがって、将来の適用におけるインデューサーの選択は、依然として状況およびコスト依存性のままである。
【0086】
もともとの方法の第III相(粗CphEalを介したCGPの大規模分解)は、30℃の代わりに50℃においてより有効であることが見出された。この最適化は、30℃において1/4の分解時間で容易に分解可能にするために、CGP濃度をはるかに高くする(最大100g l−1)。このことは、温度が10ケルビン(10℃)上昇すると反応速度が2倍になるというVan’t Hoffの方程式に一致する。さらに、分解混合物の体積および分解混合物の汚染の危険性がこのような温度上昇において最小化される。インキュベーション温度30℃および50℃の双方において、分解時間は、粗CphEal濃度の減少およびCGP濃度の増加と共線性増加を示した。したがって、得られた式は、将来の方法適用において最適な分解パラメーターの適用に役立ち得る。分解相の効率は50℃において非常に高いので、式は50℃における適用に関して計算し、その結果、最大100g l−1のCGP濃度に適している。
【0087】
有機溶媒または硫酸アンモニウムによる沈殿により、弱い精製効果および低い酵素回復率が提供された。逆に、CGPに対する特異的結合による開発された手順は、高度に有効であることが証明され、単一の基質(CGP)を使用する粗溶液中の他のタンパク質から、CphEalを分離する有利性を有する。精製方法は、CGPマトリックスをそのジペプチドに分解することで終了し、これらは同時にこの方法の価値のある最終産物であり、したがってさらに主要な製造流に向かうことができる(材料の損失はない)。精製方法は、容易に規模を拡大でき、所望であれば将来の方法の適用に統合される。
【0088】
もともとの方法(粗CphEalの大規模製造)の第II相の効率およびその精製の可能性を上げるために、2つの式を作り出した。第1の式(s.a.)は、CphEalの測光分析に基づき、粗上清中のCphEal含有量の高速決定を可能にする。CphEalの決定された濃度は、その後第2の式に統合することができ、結合するCGPの必要量を評価し、その結果純度、上清中のCphEalの完全な含有量を評価する。このスキームは、それらのタンパク質組成が大きく異なり得る粗CphEalの将来の製造チャージのための信頼できる道具を提供する。
【0089】
精製CphEalの基質特異性に関する実験中に、CGPだけでなく、BSAもまた分解されたが、含有量は低かった。このことは、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来のCGPaseが、それぞれ、以前に特徴付けられた、シュードモナス・アンギリセプチカB1株および巨大菌BAC19株由来のCphEPaおよびCphEBmほど特異的ではないと思われることを示している。この非特異的効果に関するより妥当な説明は、精製酵素溶液中にわずかな他のタンパク質が存在することである。これらのタンパク質が、高度に濃縮されたサンプルにおいてのみ、SDS−PAGEにおいて集中的な硝酸銀染色により可視化されたにもかかわらず、非特異的プロテアーゼの最少量は、CGP以外の被検基質にこのような効果を生み出すと思われる。
【0090】
シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来のCphEalは、セリン−プロテアーゼ阻害剤のペファブロック(Pefabloc)(登録商標)およびPMSF双方により大きく阻害された。このことは、このCGPaseがセリン型のプロテアーゼに属する可能性が最も高いことを示す。このことは、以前に特徴付けられたCGPase;CphB、CphEPaおよびCphEBmに関する結果と一致する。さらに、CphEalはトリプトファン酸化剤のN−ブロモコハク酸イミドにより完全に阻害され、トリプトファン残基が酵素の触媒機序に関連していると思われることを示す。また、このことは、CphEalおよび細胞外CphEPaおよびCphEBmの間の高い類似性を指摘する。ロイペプチンまたはEDTAを用いて処理されたCphEalサンプルは、CGP重層寒天プレートにおいて阻害活性を示さなかったが、EDTAを用いて処理されたサンプルのHPLC分析は、約75%のCGPaseの阻害を示した。このことは、OPA誘導体化の間に大量の沈殿が形成されたためであり、酵素が阻害されたためではない。(Obst,M.ら、J.Biol.Chem.277:25096〜25105(2002年);Obst,M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年))。以前に特徴付けられた、それぞれ、シネコシスティス属(Synechocystis)種PCC6803、シュードモナス・アンギリセプチカB1株および巨大菌BAC19株由来のCphB、CphEPaおよびCphEBmと比較した、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株のCphEalの生化学的特徴を、表3に表示した。精製CphEalのいくつかの特徴はCphEPaおよびCphEBmの特徴と比較的類似していたが、関連する違い、例えば分子サイズおよび至適温度を観察することができる。後者はCphEalに関して50℃であり、これは公知のCGPaseすべてに関して最も高い至適温度であり、その結果、純粋および粗形態でこの酵素を適用することの大きな利益を提供する。精製酵素は、至適pH範囲7〜8.5、最適は8.5を示し、これは粗酵素(5.5〜7.5、最適は6.5)に関して決定された至適pH範囲から移行する。このことは、複合環境を表す粗抽出物中に多くの他のタンパク質が存在し、このような環境内の相互作用が、順に、CGPaseの構造および/または特性に影響を及ぼし得ることによる可能性が最も高い。細胞系、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1は、2008年6月10日に、DMSZ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyに受託番号DSM 21533として寄託された。
【0091】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明するが、これらは本発明を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0092】
材料および方法
サンプリングおよびサンプルの調製:腸内細菌叢のサンプルを、新鮮に解体された健康な標本から採取した(表1)。反芻動物を除いて(授乳歴が決定できない)、選択されたすべての動物、鳥類および魚類は、少なくとも部分的に自由に生活し、自由に食餌をしていた。サンプルは、個々の供給源の動物の消化管に沿って、完全に満たされた50mlの滅菌ファルコンチューブにより、いくつかの部位から採取され(表1)、使用まで4℃に維持された。サンプルを滅菌標準生理食塩水で希釈し(表1)、その後滅菌条件下で固体材料からろ過した(ひだ折フィルター(folded filter)、Schleicher & Schuell、Dassel、Germany)。糞サンプルを滅菌食塩水中で刻み、上記のようにろ過した。
【0093】
培地:嫌気条件下でCGP分解可能な細菌に富むために、以下の基礎培地(BM)を適用した:1.0gのNHCl、3.0gのKHPO、3.0gのKHPO、0.1gのKCl、0.5gのMgCl・6HO、0.1gのCaCl・2HO、0.5gのNaCl、0.5gのシステイン−HCl、0.5gの酵母エキス(テキストに指示がない限り)、10mlのSL10の微量成分溶液および1mgのレザズリン/l蒸留水。pHを、KOHを用いて7.0に調整した。培地を沸騰させ、NaS・9HOを、最終濃度0.04%(wt/vol)になるように加えた後で、早急にフォルミエガス(Formier gas)(N:H、95:5%、vol/vol)雰囲気を含有する嫌気性チャンバー(A型−手動気密室;Coy Inc.、Grass Lake、MI、USA)に移した。室温に冷却後、10mlのアリコートをフンゲイトチューブに分注し、密閉し、嫌気性チャンバーから取り出し、その後、オートクレーブで121℃において20分間滅菌した。好気培養を、還元剤のシステイン−HClおよびNaS・9HOを欠いたBM培地を含有する100mlのKlettフラスコにおいて実施した。
【0094】
ルリア−ベルターニ(Luria Bertani)(LB)培地(Sambrook,J.ら、Molecular cloning:a Laboratory Manual、第2版。Cold Spring Harbor、NY:Cold Spring Harbour Laboratory(1989年))を、CGP分解細菌の精製および生存培養の維持のために使用した。
【0095】
シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株の単離のために、Dufresne,A.ら、Macromolecules 31:6426〜6433(1998年)の変法無機培地(SM培地)を使用した;1.0gのNHCl、5.0gのKHPO、1gのMgSO・7HO(個別に滅菌および添加)、および10mlの微量成分ストーク(stalk)溶液/l水道水。微量成分ストック溶液は、ニトリロ三酢酸(70mM、pH6.5)、FeSO・7HO(5g/l)、MnCl・4HO(0.85g/l)、CoCl・6HO(0.14g/l)、CuCl・2HO(0.085g/l)、HBO(0.17g/l)、ZnSO・7HO(0.9g/l)およびNaMoO・2HO(0.09g/l)を含有した。培地のpHを7・0に調整し、その後オートクレーブで121℃において20分間滅菌した。
【0096】
バッフル付きエレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコにおいて液体培養を適用し、Pilotshake RC−4/6−W 水平振とう機(Kuhner AG、Birsfelden、Switzerland)において150rpmでインキュベートした。CGP重層寒天プレートを調製するために、1.2%(wt/vol)のバクトアガー(bacto−agar)をCGP懸濁液(1〜2g/l)に加え、この混合物をその後、オートクレーブで121℃において20分間滅菌し、45℃に冷却後、すでに調製されたSM寒天プレート上に薄層として注いだ。
【0097】
CGP重層寒天プレートを調製するために、1.2%(wt/vol)のバクトアガーをCGP懸濁液(1〜2g l−1)に加え、この混合物をその後、オートクレーブで121℃において20分間滅菌し、45℃に冷却後、すでに調製されたSM寒天プレート上に薄層として注いだ。
【0098】
CGPの供給源および単離:「組換え」CGPを、ラルストニア・ユートロファH16−PHB4−Δeda(pBBR1MCS−2::cphA6308/edaH16)(Voss,I.ら、Metabol.Eng.8:66〜78(2006年))の凍結乾燥細胞から単離し、改良酸抽出方法(Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年))に従って精製した。CGPを、スピルリナの市販の製品から、先にシアノバクテリアに関して記載した方法(Simon,R.D.ら、Biochim.Biophys.Acta420:165〜176(1976年))に従って単離した。
【0099】
大規模にCGPを単離および精製するために、酸抽出法を以下のように最適化した(Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年));CGP含有乾燥質量を水道水に懸濁し、最終濃度0.1g/mlとした。pHを、濃HCl(32%)を用いて1まで下げ、一晩攪拌した。懸濁液を、CEPA Z61連続遠心分離機(CEPA、Carl Padberg Zentrifugenbau GmbH、Lahr、Germany)を用いて17000rpmにおいて遠心分離し、ペレットを20lのHCl 0.1Nに再懸濁し、1時間攪拌し、再度遠心分離し、上清を第1のチャージに加え、一方ペレットは廃棄した。CGP含有上清を、CGPが沈殿するように30lのガラス瓶においてNaOH(50%)を用いて中和(pH7.3)した。上清を廃棄する前に、乳状懸濁液を4℃において一晩放置した。希HCLに不溶なすべての不純物を取り除くために、3回以上CGPを繰り返し溶解し、中和した。得られたCGPを30lのHCL 0.1Nに溶解し、0.2μmのSartobran−Pフィルターユニット00型(Sartorius AG、Gottingen、Germany)を通した。溶液を、NaOHを用いて再度中和し(pH7.3)、一晩放置し、上清を廃棄した。あらゆる水溶性の不純物および脱塩CGPを除去するために、ペレットを、5倍のベッドボリュームの蒸留水を用いて3回連続して洗浄した。最終的に、CGPのペレットを20000rpmにおいて遠心分離し(CEPA Z41 連続遠心分離機)、−30℃において凍結し、BETA1−16型凍結乾燥機(Christ Gefriertrocknungsanlagen、Osterode、Germany)において凍結乾燥した。
【0100】
CGPの滅菌:CGPの滅菌ストック懸濁液を調製するために、ジエチルエーテルを3:1(vol/wt)の割合でCGPに加えた。15分後、溶媒を廃棄し、完全に蒸発した後、CGPを滅菌0.1NのHClに溶解することで微粒子の懸濁液を得、その後、pH7.3において、等量の滅菌0.1NのNaOHを加えることによりポリマーを沈殿させた。または、CGPをまず0.1NのHClに溶解し、フィルターを通し(細孔径0.2μm、Millipore GmbH、Eschborn,Germany)、最終的に上記のように再沈殿させた。ストック溶液中のCGPの濃度を、短時間の遠心分離(3500×g、2分間)でCGPを沈降させることによって、もしくは単純に、CGPを4℃において一晩沈降させることによって調整した。双方の場合において、その後上清を部分的に廃棄し、最終的に所望のCGP濃度を得た。嫌気性のCGP分解に関する実験を、嫌気的に調製した、0.5gl−1の酵母抽出物を含む、または含まない10mlのBMを含有するフンゲートチューブにおいて実施した。滅菌CGP懸濁液を、嫌気的に調製したBMフンゲートチューブに、最終濃度1g l−1になるように直接注入した。チューブ内のCGPの視覚的消失は、その分解を示した。CGP重層寒天プレートの調製のために、1.2%(wt/vol)のバクトアガー(bacto−agar)をCGP懸濁液に加え、この混合物をその後、オートクレーブで121℃において20分間滅菌し、45℃に冷却後、すでに調製されたBM寒天プレート上に薄層として注いだ。
【0101】
哺乳動物、鳥類および魚類の腸内細菌叢のサンプルによるCGPの嫌気性分解:菌叢サンプルを得た場所の生息環境の自然条件を刺激するために、調製サンプルを、接種材料および栄養食品補助剤として、同時に使用した。BM培地(酵母抽出物非含有)中の1g l−1のCGPを含有する滅菌嫌気性フンゲートチューブに、最終濃度10%になるように接種し、37℃においてCGP分解が起こるまでインキュベートした。
【0102】
腸内菌叢中のCGP分解細菌のスクリーニング:CGP分解細菌を単離するために、調製菌叢サンプルの100μlのアリコートを、好気的に調製された、CGPを重層したBM寒天プレートにスプレッドした。37℃において数日間インキュベートした間に、プレートを、CGP分解細菌のコロニーにより起こるハローの出現に関して検査した。さらに、インキュベーションの間、コロニー計測手順を用い、CGP分解細菌のコロニーと非分解細菌のコロニーとの割合を決定した。
【0103】
CGP分解の純粋培養の単離:形態的に異なるCGP分解細菌のコロニーを、分解ハローを示すコロニーから、新鮮なCGP重層寒天プレートに、連続3世代の間材料を移すことによって選択し、さらに精製した。純粋培養をCGP重層寒天プレートにおいて試験し、それらがCGP分解能を保有していたことを確認する前に、さらに、3ステップの精製をLB寒天プレートにおいて適用した。
【0104】
純度管理:単離した純粋培養の純度を、顕微鏡によって、さらに嫌気条件および好気条件下で異なる培地において培養することによって、定期的に確認した。
【0105】
分析技術:遊離のアミノ酸および低分子ペプチド(CGP−ジペプチド)を、上記のようなo−フタルジアルデヒド(phtaldialdehyde)(OPA)試薬を用いた、それらの遊離のアミノ基の予備カラム誘導体化(Aboulmagd,E.ら、Arch.Microbiol.174:297〜306(2000年))後に、逆相HPLC(Kontron Instruments、Neufahrn、Germany)によって検出した。CGPサンプルの分析のために、ポリマーをあらかじめ酸加水分解に供した(6N HCl、95℃、一晩)。同様に、酸加水分解をジペプチド構成アミノ酸の定性的確認および定量的確認に適用した。HPLC系はB801カラム(Prep Nova−Pak HR 3.9×300)(Knauer GmbH、Berlin、Germany)を備えており、初期溶出剤(81%、vol/vol、酢酸ナトリウム(50mM):19%、vol/vol、メタノール)を用いて平衡化した。アミノ酸のOPA誘導体を、40℃において流速1.0ml/分でメタノール勾配(19〜75%、vol/vol)により溶出し、その後330/450nm(励起/発光)において、モデル1046A 蛍光検出器(Hewlett Packard、Waldbronn、Germany)を用いて蛍光分析的に検出した。較正のために、クロマトグラフィー的に純粋なアミノ酸を使用した(Serva Feinbiochemica、Heidelberg、GermanyによるKollection AS−10)またはシュードモナス・アルカリジェネスDIP1(CphEal)の細胞外CGPaseを用いるCGPの総酵素的加水分解によって作製されたジペプチドを使用した(Sallam,A.ら、公開用に提出(2008年))。
【0106】
細菌の成長を、KlettフラスコをEppendorf 1101M 分光光度計(Eppendorf、Hamburg、Germany)に挿入後、578nmにおける濁度の増加を測定することによってモニターした。
【0107】
薄層クロマトグラフィー(TLC)分析をSilica gel 60プレート(Merck,Darmstadt,Germany)に適用し、HPLCの初期溶出をTLCにもラン(rum)バッファーとして使用し、染色のために、アセトン中20%(wt/vol)ニンヒドリン溶液を適用した。ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、Laemmli、U.K.、Nature227:680〜685(1970年)に倣って、11.5%(wt/vol)のゲルにおいて実施した。タンパク質およびシアノフィシンを、クマシー(Coomassie)染色方法(Weber,K.ら、J.Biol.Chem.244:4406〜4412(1969年))により染色し、その後銀染色法(Heukeshoven,J.ら、Electrophoresis 6:103〜112(1985年))により染色し、タンパク質を低濃度で可視化する。
【0108】
DNAの抽出および16S rRNA遺伝子の分析:上記のように、純粋培養から全ゲノムDNAの単離を実施した(Rao,R.N.ら、Methods Enzymol.153:166〜198(1987年))。16S rRNA遺伝子を、全DNAから標準オリゴヌクレオチドプライマー(MWG−BIOTECH AG、Ebersberg、Germany)を使用してPCRにより増幅した。PCR産物をNucleo−trap CRキットを使用して精製し(Macherey−Nagel、Duren、Germany)、その後直接配列決定した。DNAの配列決定を、臨床科学および医学的検査のための機関(W.W.U.Munster、Germany)において、キャピラリーシーケンサー(ABI Prism 3730 DNA アナライザー)において通常通り実施し、配列を、データ収集ソフトウェアv3.0(双方ともApplied Biosystems、Darmstadt、Germanyによる)により分析した。配列反応を製造業者により示された手順に従って、BigDye(登録商標)ターミネーターv3.1サイクル配列決定キット(Applied Biosystems、Darmstadt、Germany)および以下の配列決定プライマーを使用して、調製した:
27f (5'-GAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'; 配列番号1),
343r (5'-CTGCTGCCTCCCGTA-3'; 配列番号2),
357f (5'-TACGGGAGGCAGCAG-3'; 配列番号3),
519r (5'-G(T/A)-ATTACCGCGGC(T/G)GCTG-3'; 配列番号4),
536f (5'-CAGC(C/A)GCCGCGGTAAT(T/A)C-3'; 配列番号5),
803f (5'-ATTAGATACCCTGGTAG-3'; 配列番号6),
907r (5'-CCGTCAATTCATTTGAGTTT-3'; 配列番号7),
1114f (5'-GCAACGAGCGCAACCC-3'; 配列番号8),
1385r (5'-CGGTGTGT(A/G)CAAGGCCC-3'; 配列番号9)および
1525r (5'-AGAAAGGAGGTGATCCAGCC-3'; 配列番号10)
(MWG−BIOTECH AG、Ebersberg、Germany)。
【0109】
配列の分析およびアライメントならびに系統樹の構築を、前記のように適用した(Sallam,A.ら、公開用に提出(2008年)):核酸配列データを、Contig Assembly Program(CAP)オンラインソフトウェアを用いて分析した。配列を、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のデータベースにおいて利用可能なブラスト機能を使用して、代表的菌株および他の細菌のすでに公開された配列とアライメントした。参照配列を、ClustaIX 1.8ソフトウェアを使用してアライメントし、系統樹をTreeView 1.6.5およびNJplotプログラムを使用して構築した。ブートストラップを、100回のリゼンブリング(resemblings)を実施することによって、樹のトポロジーを評価するために適用した。
【0110】
500l規模の培養:500l規模での培養を、総体積650l(内径64cmおよび高さ198cm)を有し、d/D値の関係(攪拌器の直径対攪拌槽の直径との関係)が0.375である、Biostat D650ステンレススチールのバイオリアクター(B.Braun Biotech International、Melsungen、Germany)において実施した。このバイオリアクターは、3つの攪拌器を装備しており、それぞれが6個のパドルおよびFunda−Foamの機械的破泡装置(B.Braun Biotech International、Melsungen、Germany)を含む。さらに、ポートを滅菌可能なプローブとして使用し、溶解酸素(pO)(モデル25;Mettler Toledo GmbH、Steinbach,Switzerland)、pH(モデルPa/25;Mettler−Toledo GmbH)、泡(モデルL300/Rd.28;B.Braun Biotech International、Melsungen、Germany)、温度(pt100電極;M.K.Juchheim GmbH、 Fulda、Germany)および850nmにおける吸光度(モデルCT6;Sentex/Monitek Technology Inc.)を測定した。操作を、デジタル調節ユニットとMFCS/winソフトウェアパッケージ(B.Braun Biotech International)との併用によって調節し、記録した。培養は30℃において実施し、pOを倍地中で飽和の40%を超えるように調整し、攪拌によって自動的に調節され、通気速度は0.7vvm(体積/体積×分)で一定であった。培地の最初のpHは6.9であり、成長が耐えられるpHの上昇は最大7.5であり、そうでない場合、4NのHClを添加することによってpHを調節した。
【0111】
細胞分離、上清タンパク質の濃度および脱塩:CEPA Z41型またはZ61型の連続遠心分離機(Carl Padberg Zentrifugenbau GmbH、Lahr、Germany)を用いて遠心分離により細胞を取得した。分子サイズ30kDaを超えるタンパク質を濃縮し、その後、30kDaのCOP(カットオフポイント)およびSartocon(登録商標)2Plus型(Sartorius AG,Gottingen,Germany)のステンレススチールホルダーを有するクロスフローSartocon(登録商標)ポリエーテルスルホン・カセットを使用して、脱塩した(5倍のベッドボリュームのHO)。
【0112】
さまざまな基質における成長:基質利用を、100mlのバッフル付きKlettフラスコにおいて調査し、個々のフラスコは、10mlのSM培地および以下の基質の1種を1g l−1で含有した:乳酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グルコン酸塩、グルコース、フルクトース、スクロースおよびグリセリン。すべての基質のストック溶液を、ろ過(細孔径0.2μm、Millipore GmbH、Eschborn、Germany)によって滅菌した。実験は2重に実施し、同じ試験条件下で成長した前培養から接種した。成長を、30℃において24時間のインキュベーション期間後、OD578nmにおける増加によってモニターした。
【0113】
シアノフィシンの醗酵性製造:CGPを、プラスミドpMa/c5−914::cphApcc6803を有する組換え大腸菌DH1株を使用して500l規模の醗酵で生産した(Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年))。基質および培地として、すでに適用したプロタミラス(Avebe,Veendam,The Netherlands)培地を使用し、(Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))により記載されたように希釈し、篩過し、遠心分離することによって調製した。
【0114】
CGP製造のために使用可能なプロタミラスのチャージの最適濃度を決定するために、4〜8%(vol/vol)の間の濃度のプロタミラス培地における100mlの培養を、200mlのバッフル付きフラスコにおいて試験した;培地のpHは7.5であり、100mg l−1のアンピシリンを含有した。接種後、フラスコを、37℃において15時間、振とう(120rpm)しながらインキュベートした(振とう器G25型、New Brunswick Scientific GmbH、Nurtingen、Germany)。最終的に、CGP含有量を、個々のフラスコからの50mlのサンプルにおいて測定した。
【0115】
醗酵前に、16lの前培養を、それぞれ、1lのプロタミラス培地(7%;vol/vol、pH7.5)、100mg l−1のアンピシリンおよび0.15%(vol/vol)のシリコン系消泡剤(50%;vol/vol、Wacker Silicones、Burghausen、Germany)を含有する2lのバッフル付きフラスコにおいて培養し、30℃において20時間、振とう(110rpm、振とう器RC−6−W型、Adolf Kuhner AG、Birsfelden、Switzerland)しながらインキュベートした。
【0116】
本培養を、総体積650l(内径64cmおよび高さ198cm)を有し、d/D値(攪拌器の直径対攪拌槽の直径)が0.375である、Biostat D650ステンレススチールのバイオリアクター(B.Braun Biotech International、Melsungen、Germany)において実施した。このバイオリアクターは、3つの攪拌器を装備しており、それぞれが6個のパドルおよびFunda−Foamの機械的消泡装置(B.Braun Biotech International、Melsungen、Germany)を含む。さらに、ポートを滅菌可能なプローブとして使用し、溶解酸素(pO)(モデル25; Mettler Toledo GmbH、Steinbach,Switzerland)、pH(モデルPa/25; Mettler−Toledo GmbH)、泡(モデルL300/Rd.28;B.Braun Biotech International、Melsungen、Germany)、温度(pt100電極;M.K.Juchheim GmbH、 Fulda、Germany)および850nmの吸光度(モデルCT6;Sentex/Monitek Technology Inc.)を測定した。操作を、デジタル調節ユニットとMFCS/winソフトウェアパッケージ(B.Braun Biotech International)との併用によって調節し、記録した。
【0117】
このバイオリアクターを、400lの7%プロタミラス培地(pH7.5)および75mlの消泡剤溶液で満たし、インサイツで滅菌し、30℃に冷却後、100mg l−1の滅菌アンピシリン溶液を添加し、その後4%(vol/vol)の前培養を接種した。培養を最初の6時間は30℃において実施し、培地のpHを、6MのNaOHまたは6MのHClを添加することによって7.5に維持した。pOは、20%に一定に維持し、攪拌によって自動的に調整し、通気速度は0.17vvm(体積/体積×分)で一定であった。発泡は、機械的破泡装置によって、または消泡剤(50%、vol/vol)の滅菌溶液の添加によって自動的に調節した。インキュベーション6時間後、醗酵が終了するまで温度を37℃に上昇させた。細胞を、CEPA Z61型連続遠心分離機(Carl Padberg Zentrifugenbau GmbH、Lahr、Germany)を用いて、遠心分離により取得した。
【0118】
CGPの大規模抽出および精製:得られたウェットバイオマスから純粋なCGPを得るために、CGPの大規模抽出および精製のためにすでに最適化された酸抽出方法を適用した(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2008b。Biotechnological process for the technical production of β−dipeptides from cyanophycin。準備中)。最終的に、抽出CGPを−30℃において凍結し、BETA 1−16型凍結乾燥機(Christ Gefriertrocknungsanlagen、Osterode、Germany)において凍結乾燥した。
【0119】
CGPの滅菌:CGPを、上記のように、ジエチルエーテルによって、または0.1NのHClに溶解し、滅菌ろ過することによって滅菌した(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2007b。Anaerobic and aerobic degradation of cyanophycin by the denitrifying bacterium Pseudomonas alcaligenes strain DIP1−Role of other three co−isolates in the mixed bacterial consortium.公開用に提出。)。ストック溶液中のCGPの所望の濃度を、短時間の遠心分離(2800×g、2分間)でCGPを沈降させることによって、もしくは、CGPを4℃において一晩静置することによって沈降させることによって調整し、その後上清を部分的に廃棄し、所望のCGP濃度を得た。
【0120】
分析技術:細菌成長およびCGP分解を、KlettフラスコをKlett光度計(Manostat Corporation、New York、USA)に挿入後、濁度の増加を測定することによって、または600nmにおいて1mlのサンプルのODを、Libra S5光度計(Biochrom Ltd.、Camebridge、UK)を用いて測定することによってモニターした。ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、Laemmli、U.K.、Nature227:680〜685(1970年)に倣って、11.5%(wt/vol)のゲルにおいて実施した。タンパク質のゲルにおける復元を、(Lacks,S.A.ら、J.Biol.Chem.225:7467〜7473(1980年))に倣って適用した。タンパク質およびシアノフィシンを、クマシー(Coomassie)染色方法(Weber,K.ら、J.Biol.Chem.244:4406〜4412(1969年))により染色し、または銀染色法(タンパク質に関してのみ)(Nesterenko,M.V.ら、J.Biochem.Biophys.Methods 3:239〜242(1994年))により染色した。総タンパク質およびCGPの濃度を、(Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))により記載のように、ブラッドフォード(Bradford)試薬を使用して決定した。培養サンプル中の高サイズタンパク質を、濃縮し、脱塩し、10kDaの膜のビバスピン(Vivaspin)チューブ(Vivascience AG、Hannover、Germany)を使用して、または大容量のために、アミコン(Amicon)チャンバー(Amicon、Beverly、USA)および10kDaの膜(Millipore Corporation、Bedford、USA)を使用して、限外ろ過によってCGP−ジペプチドから分離した。
【0121】
遊離のアミノ酸およびジペプチドを、上記のようなオルトフタルジアルデヒド(OPA)試薬を用いた、それらの遊離のアミノ基の予備カラム誘導体化(Aboulmagd,E.ら、Arch.Microbiol.174:297〜306(2000年))後に、逆相HPLC(Kontron Instruments、Neufahrn、Germany)によって検出した。CGPまたはCGP−ジペプチドの構成アミノ酸の分析のために、サンプルをあらかじめ酸加水分解に供した(6N HCl、95℃、一晩)。HPLC系はB801カラム(Prep Nova−Pak HR 3.9×300)(Knauer GmbH、Berlin、Germany)を備えており、初期溶出剤(81%、vol/vol、酢酸ナトリウム(50mM):19%、vol/vol、メタノール)を用いて平衡化した。アミノ酸のOPA誘導体を、40℃において流速1.0ml 分−1でメタノール勾配(19〜75%、vol/vol)により溶出し、その後330/450nm(励起/発光)において、モデル1046A 蛍光検出器(Hewlett Packard、Waldbronn、Germany)を用いて蛍光分析的に検出した。
【0122】
CDhEalの活性および濃度の決定:シアノフィシナーゼ(CphEal)の活性を、濃縮酵素溶液の少量のアリコートによるCGP重層寒天プレートにおける分解ハローの形成によって検査し、このために、5mlの培養サンプルを、2800×gにおいて30分間遠心分離し(Megafuge 1.0R、Heraeus Sepatech GmbH、Osterode、Germany)、得られた上清の4mlを限外ろ過によって100倍に濃縮した。培養サンプル中の酵素の定量的決定のために、以下のように測光的方法を開発した;2μlの濃縮した培養上清を、1mlのCGP懸濁液(100mg l−1)に加え、30℃において30分間チューブローテーターにおいてインキュベートした(3rpm、502S型、Watson−Marlow GmbH、Rommerskirchen、Germany)。最終的に、サンプルのOD600nmを測定し、分解によるCGP量の減少を示し、順に、これを使用し、溶液中のCphEalの濃度を、それぞれの較正曲線を介して示した。
【0123】
CGP分解のための最適な濃度および条件:シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2008b。Biotechnological process for the technical production of β−dipeptides from cyanophycin。準備中)を用いた、上記の500lの醗酵期間に得られた粗CphEal粉末を使用して、必要な分解時間と関係したCGP濃度と粗CphEalとの間の最適な割合を決定するために、純粋CGP懸濁液(水中、pH7.3)の段階希釈(50〜100g l−1)を、それぞれ全体積1mlのエッペンドルフチューブに調製し、さまざまな量の粗CphEal粉末[CphEal含有量4.6%(wt/wt)]を個々に調製されたCGP濃度に加え、反応チューブをチューブローテーター(3rpm)において30℃でインキュベートし、CGPの完全な分解に必要なインキュベーション期間を明らかにした。
【0124】
CGP分解のための最適pHを決定するための実験を、pH値が5.0から9.0の間である1mlのCGP懸濁液(100g l−1)を含有するエッペンドルフチューブにおいて実施し反応チューブはさらに10g l−1の粗CphEalを含有し、30℃において30分間インキュベートした。最適な分解温度のための反応混合物は、同様の濃度のCGP(pH7.0)およびCphEalを含有し、15、20、25、30、35、37、40、50、60または70℃において30分間インキュベートされた。双方の実験後、すべてのチューブにおけるCGPの分解を、パーセントで計算し、一緒に比較した。
【0125】
有機溶媒および硫酸アンモニウム沈殿によるCDhEalの精製:濃度10〜100%(vol/vol)の間の冷エタノール、アセトンまたはメタノールの1mlを、エッペンドルフチューブ中の50μlの濃縮粗CphEal溶液(14g l−1)に加え、反応混合物を、−20℃において60分間インキュベートした。反応チューブを16000×gにおいて5分間遠心分離した後で、ペレットを乾燥させ、50μlのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に再懸濁した。硫酸アンモニウム分画を、10mlの粗CphEal溶液(3.5g l−1)における硫酸アンモニウムの飽和に対するパーセントの段階的増加(10〜100%)により適用し、各ステップにおいてチューブを室温で30分間インキュベートし、16000×gにおいて10分間遠心分離し、ペレットをリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に再懸濁し、その後、限外ろ過によって脱塩した。すべてのタンパク質ペレットを、CGP重層寒天プレートにおけるCGP分解に関して、およびSDS−PAGEにおけるタンパク質含有量に関して分析した。
【0126】
CphEalの特異的基質精製:CphEalの精製方法を、粗抽出物中の酵素のその不溶性基質(CGP)に対する強力な親和性によって開発し、CphEalはCGPにだけ結合し、したがって沈降により取得できる。pH7.0において、酵素がCGPに完全に結合するために必要な時間を決定するために、0.5mlの濃縮粗CphEal溶液(14g l−1)を、0.5mlのCGP懸濁液(100g l−1)に加えた。最初の10分のインキュベーションごとに、(短時間の遠心分離の)反応上清からの2μlのアリコートを、CGP重層寒天プレートにおける分解活性に関して試験し、分解ハローの減少が、CphEalのCGPに対する完全な結合を示した。実際の精製方法を、類似の1mlの反応混合物において実施し、以下のように進めた:CphEalのCGPに対する完全な結合後、混合物を30秒間(16000×g)遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを10mlのリン酸ナトリウム緩衝液(50mM)を用いて5回洗浄した。その後、ペレットを1mlのリン酸緩衝液に懸濁し、回転させながら(3rpm)、CGPの完全な分解が起こるまで、30℃において一晩インキュベートした。混合物を遠心分離し(5分、16000×g)、その後、CGP−ジペプチドを限外ろ過により取り出し、上清の濃縮タンパク質分画をSDS−PAGEにより純度に関して分析した。
【0127】
シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来のCphEalの特徴付け:精製CphEalの温度安定性を決定するために、10μlアリコートを、さまざまな温度(10〜80℃)において20分間インキュベートし、その後その3μlを、30℃におけるCGP重層寒天プレートでの分解活性に関して試験した。最適分解温度のために、3μlアリコートの精製CphEal溶液を、1mlのCGP懸濁液(50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0中に100g l−1)に加え、さまざまな温度(10、20、30、40、45、50および60℃)において20分間インキュベートした。精製CphEalによるCGPの最適分解pHのために、精製CphEalストーク(stalk)溶液の3μlアリコートを、さまざまなpH値(5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5または9)の1mlのCGP懸濁液(50mMのリン酸ナトリウム緩衝液中に100g l−1)に加え、30℃において30分間インキュベートした。最終的に、CGP分解を、上記のような双方の実験の反応チューブにおいて測光的に決定した。精製CphEalの基質特異性を、以下のポリペプチド基質について、前記のように試験した(Obst、M.ら、Biomacromolecules 5:153〜161(2004年)):CGP、ウシカゼイン(Hammersten−grade)(Merck、Darmstadt、Germany)、ウシ血清アルブミン(BSA)(Roth、Karlsruhe、Germany)およびポリ(α,β−D/L−アスパラギン酸)(Bayer AG、Leverkusen、Germany)。
【0128】
精製CphEalについての酵素阻害剤の効果を明らかにするために、50μlアリコートの精製酵素ストーク(stalk)溶液を、450μlのNa−リン酸緩衝液(50mM)に加え、以下の基特異的阻害剤の1つの存在下で30℃において2時間インキュベートした;ロイペプチン(チオール−プロテアーゼ)、EDTA(メタロプロテアーゼ)、ペファブロック(Pefabloc)(セリン−プロテアーゼ)、PMSF(セリン−プロテアーゼ)またはN−ブロモコハク酸イミド(トリプトファン残基)。個々の反応混合物の5μlのサンプルを、CGP重層寒天プレートにおける活性に関して分析した。その後、5μlアリコートのCGPストーク(stalk)懸濁液(50g l−1)を反応チューブに加え、さらに15分間インキュベートし、遠心分離し、HPLCを介して分解産物に関してスクリーニングした。
【実施例1】
【0129】
哺乳動物、鳥類および魚類の腸内細菌叢由来のサンプルによるCGPの嫌気性分解:ろ過した菌叢サンプルは、多くのさまざまな細菌および高含有量の基質を含有した。これらのサンプルを得た消化管内部の自然条件を刺激するために、菌叢溶液を接種材料として、および栄養食品補助剤として同時に使用した。BM培地および1g l−1のCGPを単一基質として含有する滅菌嫌気性フンゲートチューブに、10%濃度で接種した。すべての接種嫌気性チューブは、これらの条件下で完全なCGP分解を示した。チューブ内でCGPの完全な分解に必要なインキュベート期間は、12から48時間に及んだ。
【0130】
腸内細菌叢中のCGP分解細菌のスクリーニング:CGP分解細菌の単離のために、100μlアリコートの調製菌叢サンプルを、CGP重層寒天プレート上にスプレッドした。37℃において数日間インキュベーションの間、プレートは、CGP分解細菌の出現が、さまざまな菌叢の中で大きく変化したことを示した(表1)。最も高い発生は、ウサギ(エジプト)、ヒツジ(ドイツ)の盲腸の菌叢およびコイの消化管の菌叢(ドイツ)の場合であった。さらに、分解コロニーの形態的特徴、必要なインキュベーション期間、CGPの分解により起こるハローの形態および強度もまた、さまざまな菌叢サンプルの中で、および個々のサンプル内のコロニーの中で大きく変化した。このことは、CGP分解の多様な能力を有する独特の細菌種の存在を示した。
【0131】
CGP分解菌株の単離および精製:形態的に異なるCGP分解細菌のコロニーを選択し、分解ハローを示すコロニーを、新鮮なCGP重層寒天プレートに移すことによって、さらに精製した。精製作業の間、多くのCGP分解コロニーが、それらの純粋培養として分解ハローを誘導する能力を失い、したがって無視された。同様に、いくつかのCGP分解コンソーシアは、純粋培養を得ることが非常に困難であり、さらなる精製手順からも省かれた。他方、精製相は、形態的に異なる特徴を示し、CGP分解の能力を保有する62種の純粋培養をもたらした。表1に実証されるように、CGP分解細菌は、個々の動物の消化管に沿ったさまざまな部位から単離された。このことは、例えば反芻動物における食物タンパク質の分解について公知の事実と一致する;第1胃は食物タンパク質の主要な分解部位であるが、未消化のタンパク質(バイパスタンパク質またはエスケープタンパク質)は消化物と一緒に下部消化管に移動し、そこでそれらの一部は、動物の酵素によって、または下部腸内細菌叢によって破壊され、その後、残りが排泄される前に吸収される。バイパスタンパク質の分解は、ミルク製造などの特定の生理的機能にとって重要である(Holter,J.B.ら、J.Dairy.Sci.76:1342〜1352(1993年))。
【0132】
嫌気条件および好気条件下の純粋培養によるCGPの分解:62種の純粋培養を、好気条件下で液体培地においてCGPを分解する能力に関して試験した。これを、1g l−1のCGPおよび0.5g l−1の酵母抽出物を含有するBM培地に適用し、すべての純粋培養のCGPを分解する能力を表した(表1)。還元剤に加えて同様の培地を含有するフンゲートチューブにおける嫌気性CGP分解実験により、62種の単離株のうち、46種は、同様に嫌気的にCGPを分解できることを明らかにした。当然のことながら、38種はCGPを完全に分解したが、残りは部分的にCGPの分解を示した。純粋培養による嫌気的CGP分解に必要なインキュベーション期間は、37℃において24時間から7日間に及んだ。
【0133】
CGPの分解産物:好気培養および嫌気培養において62種の純粋な単離株によりCGPが完全に分解された直後、培養上清中のCGPの分解産物を、方法の項に述べたようにOPA試薬を用いたカラムの予備誘導体化の後で、HPLCにより決定した。期待したように、HPLC分析により、すべての単離株CGPをその構成ジペプチドに分解することが明らかされた。酸加水分解の前に供された上清サンプルに関する同様の分析により、3種のCGP構成アミノ酸;アスパラギン酸、アルギニンおよびリシンの存在が明らかになった。終わりの3種のアミノ酸の検出は、これらの実験に適用された、アルギニン部分のおよそ6Mol%がリシンで置き換えられた組換えCGPの公知の組成に一致する(Voss,I.ら、Metabol.Eng.8:66〜78(2006年))。
【0134】
CGP分解純粋培養の分類学上の立場:単離純粋培養の形態的特徴は、単離株のおよそ50%がバチルス属およびシュードモナス属に属し、一方残りの単離株は、ストレプトマイセス属およびミクロモノスポラ属を含む他の属に属することを示唆した。試験した腸内細菌叢におけるCGP分解細菌の系統発生についてのより明確な洞察を提供するために、62種から8種の菌株を、16S rDNA配列決定によりさらに同定した。表1に示すように、3種の単離株;それぞれ、ヒツジの第1胃の細菌叢(ドイツ)、七面鳥の盲腸の細菌叢(エジプト)およびテラピアの消化管の細菌叢(エジプト)に由来する17、35、49は、バチルス属のメンバーとして同定され、それぞれ巨大菌AC46b1、巨大菌MPF−906およびバチルス・コグリョ(B.Koguryoae)SMC4352−2と99%を超える16S rDNA配列類似性を有した。2種の単離株;牝牛の結腸の細菌叢(ドイツ)およびハトの盲腸の細菌叢(エジプト)由来の15および47は、ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属することが発見され、それぞれ、ブレビバチルス・レウスゼリ(B.reuszeri)DSM9887およびブレビバチルス属種SE004と、98%を超える16S rDNA配列類似性を有した。ウサギの盲腸から単離された菌株31(ドイツ)は、ストレプトマイセス属に所属し、ストレプトマイセス・アベルミティリス(S.avermitilis)NCIMB 12804と98%を超える配列類似性を有した。16S rDNA配列分析は、アヒルの盲腸由来の菌株38(ドイツ)は、ミクロモノスポラ属に属し、ミクロモノスポラ属種0138と、99%を超える配列類似性を有することをさらに示した。最終的に、シュードモナス属の代表もまた、同定された単離株の中に発見された;コイ由来の菌株52(ドイツ)CGP分解細菌のシュードモナス・アルカリジェネスDIP1と99%を超える16S rDNA配列類似性を示した。
【0135】
構築された系統樹(図1)は、多様な動物、鳥類および魚類の細菌叢に由来する8種の同定株間と、それらの密接に関連する菌株および他の細菌との関係を示す。さらに、細胞外CGP分解が可能なすべての公知の細菌の分類学的位置が、系統樹において実証される。さらに表2は、細胞外CGPの分解が可能な細菌の、広範囲な生息環境および系統発生についての要約を提供する。
【0136】
スピルリナ・プラテンシスの市販の製品中のCGP:商品名スピルリナ、これは多くの場合いくつかの栄養的利益を伴い、したがってヒトおよび動物のための添加物として使用される(Narasimha,D.L.R.ら、J.Sci.Food Agric.33:456〜460(1982年);Kihlberg,R.、A.Rev.Microbiol.26:427〜466(1972年);Lu,J.ら、Aquaculture 254:686〜692(2004年);Ross,E.、Poult−Sci.69:794〜800(1990年)))。これは、CGPの存在を伴うかどうかを調査するために、ドイツの市場で利用可能な3種のスピルリナ製品を、CGPの存在に関して検査した。;from Sanatur GmbH(Singen、Germany)およびGreenvally GmbH(Berlin、Germany)による2種の製品は100%スピルリナ・プラテンシスからなり、一方、Aurica GmbH(Schwalbach−Elm、Germany)による第3の変異体は、それらの40%を含有する。通常の日用量のおよそ2倍に相当する、3種の製品それぞれの10gのCDMを、CGPの単離前に微粉に挽くことによって調製した。3種の市販の変異体は、それぞれ、0.06%、0.13%および0.15%のCGP含有量を示した。単離CGPの加水分解サンプルの確認HPLC分析は、期待したように、シアノバクテリアのCGPの典型的な構成アミノ酸;アスパラギン酸およびアルギニンを明らかにした。
【実施例2】
【0137】
CGP由来のβ−ジペプチドの製造のための最適な方法の開発:いくつかの因子;例えば要求される適切かつ経済的な培地、分解のために実用的に調製できる高度に濃縮されたCGPの懸濁液および比較的短時間のインキュベーションにおいて完全なCGP分解を達成するための細胞外酵素の必要量の規定、をまず小規模に最適化した。
【0138】
インデューサー(CGP)の添加およびそのその後の分解によるCphEの製造の間のOD600nmにおける変化は、CphEの放出の明確な兆候を表し、したがって、透き通った培地および細胞の調節された成長が必要であり、このことは、材料と方法の項において述べた最終的培地組成物を介して達成された。さらに、被検基質の中で、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株は、クエン酸塩において最も優れた成長を示し(図3)、単一基質としてのクエン酸塩の適用濃度(1g/l)は、誘導および分解相中妥当な培養物の成長濁度を保証したが、同時に培養物の成長濁度を調節した。
【0139】
大規模方法の分解相(第III相、下記を参照されたい)のための、CGPおよび粗CphE濃度の間のバランスの取れた比率を決定するために、以下の小規模実験を実施した;純粋CGP懸濁液(水中、pH7.3)の段階希釈(10〜50g/l)を、個々に全体積1mlのエッペンドルフチューブに調製し、さらに、粗CphEの段階希釈(1〜10g/l)を、個々の調製CGP濃度について試験し、反応チューブを、回転速度3rpmで、チューブローテーター中で30℃においてインキュベートした。実験により、低濃度の粗CphEを使用した場合、CGPの分解は比較的一定な増加を示した。CGPの最も高い被検濃度(50g/l)は、2g/lの粗CphE粉末の存在下で10時間以内に分解できた(図4)。
【0140】
CGP−ジペプチド大規模製造:純粋CGP−ジペプチドの大量の日常的製造を可能にするために、三相性の方法を実施した;第I相:CGPの大規模単離および精製、第II相:粗CphE粉末の大規模製造、第III相:CGPのそのジペプチドへの分解。
【0141】
第I相(CGPの大規模単離および精製):大量のCGPを得るために、CGP含有細胞の4776gの細胞の乾燥質量を使用し、この量は、ラルストニア・ユートロファH16−PHB4−Δeda(pBBR1MCS−2::cphA6308/edaH16)を用いた、一回の500l醗酵の間にすでに製造された。このバイオマスチャージのCGP含有量は、32%(wt/wt)であった(Voss,I.ら、Metabol.Eng.8:66〜78(2006年))。加えて、ラルストニア・ユートロファH16−PHB4−Δ/dh/Ωkm−cphA6308を用いた、実験室規模の醗酵由来のいくつかの他の乾燥バイオマスチャージを混合し(総計2490g)、第2のチャージと考えた。CGPを、材料と方法の項において述べた改良酸抽出法に従って個々のチャージから別々に抽出および精製した。得られたCGPの湿潤質量は、主要細胞チャージに関しては1948gおよび第2のチャージに関しては295gであり、精製CGPの乾燥凍結後、双方のチャージから得られた純粋CGPはそれぞれ621.83gおよび82.17gであった。
【0142】
双方の細胞チャージから単離されたCGPの個々のアミノ酸成分のHPLC分析により、このポリマーが主にアスパラギン酸およびアルギニンで構成されており、リシンはわずか4.5%(mol/mol)含有されることが明らかになった。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、双方のチャージ中の単離CGPが分子量約20〜30kDaを有することが明らかになった。さらに、HPLC分析およびSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の双方により、得られたCGP中にはいかなる不純物も無いことが示された。したがって、双方のCGPチャージは一緒に混合でき、純粋CGPの最終量は704gであった。
【0143】
第II相(粗CphE粉末の大規模製造):CGP−ジペプチドの商業的製造方法の開発を継続するために、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1からの粗CphEの十分量の製造が必要であり、したがって、この菌株を、Biostat D650バイオリアクターにおいて500l規模で培養した。シュードモナス・アルカリジェネスDIP1の前培養を、1lのSM培地および1g/lのクエン酸ナトリウムを含有する、2lのバッフル付きフラスコにおいて培養した;このフラスコを振とうしながら30℃に置いて12時間インキュベートした。バイオリアクターを、1g/lのクエン酸ナトリウムを含有する420lのSM培地で満たし、滅菌し、4%(vol/vol)の前培養を接種した。最初のpHは6.9に調整した。醗酵中、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株の細胞は、最初の醗酵時間の直後に成長し始め、OD600nm値が0.4に達し、ほぼ9時間後に定常期に入った。CphEの排出は、0.25g/l滅菌CGP懸濁液を、定常期の最初の2時間後に添加することによって誘導され、インデューサー(不溶性CGP)の添加によりOD600nmは急速に0.55から0.98に増加し、加えたCGPの完全な分解には2時間を要し、それは、OD600nmの減少を示し、誘導前の値に近い値に達した。1時間後、細胞はわずかに成長し始め、これは、培地中のCGP−ジペプチドの存在による可能性が最も高い。醗酵は、全培養期間が14時間で終了した(図5)。
【0144】
排出された細胞外シアノフィシナーゼを含む上清中のタンパク質の取得、濃縮および脱塩のために、醗酵を実行しながら連続系を調製した(図6);取得のために、中央の100lタンクにおいて上清を回収しながら、CEPA Z41連続遠心分離を使用して、細胞を分離した。同時に回収した上清を濃縮するために、30kDaのカセットを有するクロスフローユニットを中央タンクに連結した;フィルターカセット(30kDa)のCOPより分子サイズの大きいタンパク質を含有する濃縮保持液を、タンクに再度ポンプで送り、一方透過液は直接廃棄した。クロスフローの流速を調整し、タンク中の体積を約50lに維持した。冷却のために、中央タンクにアイスバッグを導入し、溶液の温度を20℃以下に維持した。取得終了後、濃縮過程を、5lの濃縮液だけがタンク内に残るまで継続した。脱塩のために、濃縮液を5倍のベッドボリュームのHOを用いて洗浄した。先のステップの個々の間に、サンプルを回収し、CGP重層寒天プレートにおけるCGP分解活性に関して確認した(図2)。最終的に、濃縮液を−30℃において凍結し、凍結乾燥し、最終乾燥重量17.5gの粗タンパク質粉末を得た。
【0145】
第III相(純粋CGPのそのジペプチドへの分解):CGPからジペプチドへの大規模分解を250gの純粋CGPおよび10gの粗CphE粉末を使用して適用し、これらの量は最も高い、調製しやすいCGP濃度(50g/l)および小規模実験により決定された12時間以内の完全な分解を確実にするために十分な粗CphE(2g/l)の濃度を表す。250gのCGP粉末を、5lの0.1M HCLに溶解し、pH7.3に中和し、4℃において沈殿させ、最終的に水道水を用いて3回洗浄することによって脱塩し、所望の濃度の全体積5lを得た。その後、10gの粗CphE粉末を、CGP懸濁液に加え、ゆっくり攪拌しながら、30℃において12時間インキュベートした。CGPの完全な分解後、ジペプチド溶液を滅菌ろ過し、第II相中に使用した同じクロスフロー系を用いて、粗タンパク質成分から分離し、−30℃において凍結し、最終的に凍結乾燥し、227.5gのCGPジペプチドを得た。
【0146】
CGPジペプチドの精製のためにさらなるろ過ステップが必要かどうかを決定するために、いくつかの20mlアリコート(後の凍結ステップおよび凍結乾燥ステップの前に採取した)を、以下のCOPを有するさまざまな膜を用いてろ過した;10、5、1および0.5kDa。ろ過後、CGP−ジペプチドを、ろ過前後の凍結乾燥の1mlアリコートの乾燥重量を決定することによって、並びにHPLC分析によって評価した。もともとのジペプチド溶液と比較して、ろ過中の乾燥重量の最大損失は、最もCOPが小さい(0.5kDa)膜の場合78.5%(wt/wt)であり、1kDaの膜では47.8%(wt/wt)の損失が生じ、一方、5kDaの膜では11.6%(wt/wt)の損失が生じ、より大きいCOP(10kDa)を有するろ過膜は、最小の損失である7.4%(wt/wt)を示した。
【0147】
すべてのろ過系から得られたジペプチドの純度を、TLCおよびHPLC分析によりモニターし、すべてのろ過したジペプチドサンプルは、同じ高グレードの純度を示した(図7、I)。したがって、主要ジペプチドチャージにはさらなるろ過系ステップは必要なかった。30kDaのカセットを有するクロスフローは、明らかに分解されたCGP溶液のタンパク質部分を回収するためにも最も実践的な道具であった。回収されたタンパク質溶液を、再度凍結し、凍結乾燥した。CGP重層寒天プレートにおける回収した粉末に関する活性試験は、前述のすべての手順においてCphEが生存しており、その活性を保有していたことを示した(図2)。粗粉末の回復率は78%であった。
【0148】
得られたジペプチド粉末の最終品質の調節のために、直接サンプルおよび酸加水分解サンプルを、TLCにより試験した;直接サンプルでは1つのスポットだけが示され、(図7、I)、一方加水分解サンプルは、標準アミノ酸のアスパラギン酸、アルギニンおよびリシンに関する典型的なスポットが示された(図7、II)。さらに、酸加水分解サンプルに関する確認HPLC分析は、これらの3種の構成アミノ酸に関する典型的なピークだけを明らかにした。これらの結果を手がかりに、ジペプチド粉末の純度は99%を超えると評価された。250gのCGPの分解からの最終結果(227.5gの純粋ジペプチド)は、全方法の全体の効率は91%を示し、これは将来の最適化を介してさらに増加させることができる。
【実施例3】
【0149】
500l規模でのシアノフィシンの醗酵性製造:本研究のために十分な量のCGPを、(Elbahloul,Y.ら、Appl.Environ.Microbiol.71:7759〜7767(2005年))に従って500l規模の醗酵で製造した。しかし、組換え大腸菌DH1株(pMa/c5−914::cphApcc6803)を、7%のプロタミラス(vol/vol);において培養した。この濃度は、プロタミラスの利用可能なチャージに関する予備実験中に、CGP製造のために最適であることが証明された。
【0150】
醗酵中(図8)およびインキュベーションの最初の6時間後、温度を37℃に上昇させ、CGP−シンテターゼ(CphA)遺伝子の誘導を可能にした(Frey,K.M.ら、Appl.Environ.Microbiol.68:3377〜3384(2002年))。各々の時間に採取したサンプルは、期待通りにポリマーの漸進的な細胞内蓄積を示し、13時間後に最大に達し(顕微鏡的に評価)、その後も一定のままであった(図9)。OD600nmは、15時間後に18.3に達し、その後醗酵は終了したが、その後の分析により醗酵13時間後に最大のCGP蓄積は13%(CDMのwt/wt)であり、取得時間(15時間)には10%に低下した(CDMのwt/wt)ことが明らかになった。得られた4626gの湿潤細胞塊(1372gのCDM)からのCGPの抽出後、135gの純粋CGP粉末を得た。CGPのHPLC分析は、構成アミノ酸のポリマーの6.8Mol%を表すリシンに加えてアスパラギン酸、アルギニンだけを示した。SDS−PAGEにより、CGPの純度が確認され、分子量25〜30kDaが示された。
【0151】
シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株のための最適成長条件:DIP1株にとって最適な基質であることがすでに証明された(Sallam,A.およびA.Steinbuchel.2008b。Biotechnological process for the technical production of β−dipeptides from cyanophycin。準備中)クエン酸塩をさまざまな濃度(0.5〜10g l−1)で含むSM−培地を試験することにより、6g 1−1が最大の成長を起こすことが示された(30℃において13時間後、475 Klett単位)。pH値が異なる(5.5〜8.5)以外は同じ条件下で、6g l−1のクエン酸塩において培養されたDIP1株の培養は、DIP1株はpH6.5において最適成長を示し、一方さまざまなインキュベーション温度(15〜45℃)における培養により、成長のための最適温度が37℃であることが明らかにされた。
【0152】
シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株による最大のCphEal製造のための最適培養条件:DIP1株によるCphEalの最大製造のための最適培養条件を結論付けるために、細胞を、最適成長条件下でさまざまな濃度のクエン酸塩において培養した;細胞が定常期に達したときに、0.25g l−1のCGPの添加によりCphEal製造を誘導した。
【0153】
5時間後、上清サンプルを濃縮し(100倍)、CGP重層寒天プレートにおける分解活性および測光的にスクリーニングした。クエン酸塩濃度が0.5g 1−1未満または4g 1−1を超える培養物からの上清サンプルは、分解活性を全く示さず、一方、最大活性およびその後の最大CphEal製造は、2g l−1のクエン酸塩において成長した培養物を誘導してから5時間後にモニターされた。最適製造条件下のさらなる培養実験により、DIP1株の細胞はインキュベーションの約13時間後に定常期に達することが確認され、この時点がCphEalの誘導にとって最適であることが証明された。したがって、以下の条件がCphEal製造にとって最適であると考えられた;2g l−1クエン酸を含むSM−培地、pH6.5、37℃、13時間後の誘導および、インキュベーション16時間目の取得。
【0154】
CGPおよび別のインデューサーによるCphEalの最適な誘導:CGP以外の、他のインデューサー候補を、DIP1株の培養物において試験した;(CGP由来β−ジペプチド、合成ジペプチド(α−アルギニン−アスパラギン酸、α−リシン−アスパラギン酸、α−オルニチンアスパラギン酸)(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri、USA)、α−ポリアスパラギン酸(Bayer AG、Leverkusen、Germany)、ポリ−ε−リシン(Chisso、Tokyo、Japan)、L−アスパラギン酸、L−アルギニン、L−リシン、L−シトルリン、L−オルニチンならびにアスパラギン酸類似体[N−アセチル−アスパラギン酸、ウレイドコハク酸(N−カルバモイル−アスパラギン酸)]。すべてのインデューサーを、まず、0.25g l−1の濃度において試験し、CphEal製造を、CGP重層寒天プレートにおいて、およびさらに測光的に分析した。CGP、そのジペプチドおよびアスパラギン酸だけが、有意な量のCphEalを誘導した。その後、最適濃度および最適CphEal取得時間を、これらの3種のインデューサーを用いて誘導した培養物において調査した;CGPに関しては、0.001〜3.0g l−1の濃度で試験し、0.05g l−1までの濃度は誘導効果が増加したが、それ以上の濃度になると同じ効率を示した。最大CphEal製造は、0.05g l−1のCGPにより、誘導から5時間後に得られた。
【0155】
CGPに関して試験した同じ濃度範囲内でCGP−ジペプチドにより誘導した以外は同様の条件下で培養した培養物は、インデューサーの濃度に関しては同様の結果を示したが、最大CphEal製造は、誘導のわずか3時間後に得られた。さらに、アスパラギン酸は、4g l−1のアスパラギン酸により誘導5時間後に最大CphEal製造が得られたので、適切なインデューサーであることを証明したが、最適なCGP濃度(0.05g l−1)により誘導した培養物と比較して、アスパラギン酸による誘導後のCphEal製造は3番目でしかなかった。
【0156】
粗CphEalを介した、CGPのジペプチドへの分解にとっての最適条件:処理する反応体積およびもともとの方法の第III相(CGPの分解)に必要な時間を減少させるために、より高いCGP濃度(50〜100g/l)の分解時間を30℃において試験し、これは、分解時間と粗CphEal濃度の減少、および分解時間とCGP濃度の増加とが共線的増加を示した。10g l−1の粗CphEalの存在下で、最も短い分解期間(4時間)が、CGPの最も低い被検濃度(50g l−1)に関してモニターされ、一方最も高いCGPの被検濃度(100g l−1)を分解するためには16時間が必要であった。
【0157】
粗CphEal粉末によるCGP分解にとって最適なpHおよび温度を評価するための実験を、材料および方法の項に記載のように、別々に実施した。反応チューブにおける残留CGPの測光的決定により、最大CGP分解(45%)は、pH6.5において起こることが示されるが、pH範囲5.5から7.5では、結果が近いことが明らかになった。他方、50℃において最大の90%に達するまでは温度の上昇に伴って、CGP分解が増加する。したがって、CGPの濃度とCphEalとの間の最適な関係に関する実験を、最適なパラメーター(50 ℃、pH 6.5)のもとで反復した。これにより、CGP濃度50および100g 1−1に関する必要な分解時間(10g l−1の粗CphEalの存在下)は、それぞれ1および4時間に減少した。さらに、最適条件下で、分解時間は、粗CphEalの濃度の減少およびCGP濃度の増加と共線的増加を示した。この共線的関係は、将来の方法適用において、最適分解パラメーターを適用するために役立ち得る。それぞれの式を、100g l−1までのCGP濃度に関して計算し、純粋CphEal(E)の濃度に基づき、粗抽出物適用のために、CphEal含有量は式を使用する前に決定されるべきである(s.u.);
50℃における分解時間=17.55−29.891E[純粋CphEalの所望の濃度(g/l)]
【0158】
粗上清粉末からのCphEalの精製:より効率的な方法をさらに前進させるために、およびシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株由来のCGPaseの特徴についてのより優れた知見を得るために、いくつかの、工業的に適用可能な方法を、粗粉末からCphEalを生成するために試験した。溶媒、例えば、エタノール、メタノールまたはアセトンを使用する酵素の沈降および精製は、低い回収率および低い精製効果のため満足のいく結果を提供できなかった。しかし、硫酸アンモニウムによる沈降は、飽和濃度の70%の比較的優れた結果を提供したが、純度はいまだ低すぎた。
【0159】
特異的基質結合を介したCphEalの精製:シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株からCGPaseを精製するための単純な方法を開発した。このために、不溶性CGPそれ自体を、材料および方法の項に記載のように、CphEalを特異的に結合するための結合マトリックスとして使用した。予備試験は、最初の5分後にCphEalがCGPに完全に結合することを示し、したがって、これは、さらなる適用において最小の結合時間と考えられる。すべての精製ステップにおいて、SDS−PAGEは、酵素の段階的精製(図10A)および最初の2回の洗浄ステップは、CGPに結合しなかった他のタンパク質を除去するために必要であることを示した。CGPマトリックスの分解および限外ろ過によるジペプチドの除去後、高純度のCphEalを得た。CGP重層寒天プレートは、精製CphEalの高い活性を示し、精製タンパク質は、SDS−PAGEにおいて、45kDaの見かけの分子量を示した。CphEalの同一性を、ゲル内再生(in−gel−renaturation)により確認し、CphEalは活性を回復し、CGP重層寒天プレートにおける分解ハローを形成した。精製CphEal濃度は、43.2μg ml−1であり、一方、最初の粗タンパク質溶液中の全タンパク質含有量は944μg ml−1であった。精製酵素の純度をより正確に検出するために、SDS−PAGEを、より大量のサンプル(3倍量)に関して反復し、銀染色によりより長い時間染色した;このことにより、比較できるほどの非常に低濃度の、少数の他のタンパク質のバンドの存在が明らかになった(図10B)。
【0160】
醗酵上清中のCphEal含有量の決定:将来の方法適用において純粋CphEalの適用が望まれる場合、CGPaseの濃度は、まず製造された上清中で評価されなければならず、したがって、1mlの、OD600nmが0.215である固定濃度(100mg l−1)のCGP懸濁液を使用する高速試験を開発した。この溶液に、3μlのさまざまな濃度(2.7〜43.2μg ml−1)の精製酵素を含む溶液を加えた。反応液を、低速(3rpm)で回転しながら30℃において60分間インキュベートした。最終的に、CGP分解の範囲を、600nmにおいて測光的に決定した。試験の再現性およびその式(s.u.)の正確性を保証するために、試験パラメーターおよびOD600における測定範囲(0.15−0.215)を順守しなければならない。
[粗抽出物中のCphEal含有量(μg/ml)]=[0.2404−D(60分後のOD600nm]/0.0017
【0161】
CphEalの工業的精製に必要なCGP量:酵素精製の手順を主要な製造方法に統合するために、(既知のCphEal含有量を含む上清中の)全CphEalに結合するために必要なCGP量もまた、決定されなければならない。全反応体積の0.5mlにおいて、さまざまな濃度の(1.4〜19μg ml−1) 50μlの精製CphEal溶液を、さまざまな濃度(0.1〜6g l−1)のCGPに加えた。反応混合物を、低速(3rpm)で回転しながら30℃において10分間インキュベートした。遠心分離(16000×g、2分)後、反応チューブを遠心分離にかけ、上清を、CGP重層寒天プレートにおける活性に関してスクリーニングした。すべての被検CphEal濃度に関して、分解ハローを誘導しなかった最小CGP濃度を、安全のために3回掛け、その後較正曲線に統合した。得られた式は以下のようであった:
[必要なCGP濃度(g/l)]−[E[粗抽出物中のCphEal含有量(μg/ml)]−2.4392]/0.9432
【0162】
精製CphEalの生化学的特徴:精製CphEalは、50℃において最大CGP分解活性を示し、一方、68℃において酵素の完全な不活性化が発生した。CGP分解にとっての最適pH範囲は7〜8.5であり、8.5において最適であった。CGP、BSA、ウシカゼインおよびポリ(アスパラギン酸)に対する精製CphEalの基質特異性を試験すると、CGPに対して最も高い分解活性を示した。しかし、BSAもまた、部分的に分解された(CGPと比較して65%)。ウシカゼインおよびポリ(アスパラギン酸)は、精製CphEalの酵素活性によりごくわずかしか影響を受けなかった。
【0163】
CphEalの触媒機序についての情報を得るために、さまざまな基特異的阻害剤を用いた阻害剤実験を実施した(表1)。CGPaseの阻害は、CGP重層寒天プレートにおいて、およびCGP分解産物のHPLC分析によって分析した。このことは、細胞外CphEalは、セリンプロテアーゼ阻害剤のペファブロックおよびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)により強く阻害されることが明らかにされた。さらに、N−ブロモコハク酸イミド(トリプトファン酸化剤)は、酵素の全阻害をもたらした。対照的に、CphEalによる分解ハローの形成は、チオールプロテアーゼ阻害剤のロイペプチンによって、またはメタロプロテアーゼ阻害剤のEDTAによって影響されなかった。HPLC分析により、CphEalの阻害を示したEDTAにより処理したサンプルを除いて、これらの結果が確認された。
【実施例4】
【0164】
Caco2細胞の培養物によるCGPジペプチドの吸収:栄養および治療におけるCGPジペプチドの適用可能性を証明するために、これらの高度に可溶性のジペプチドの吸収を、予備研究においてCaco2細胞(ヒト結腸上皮腺がん細胞)の細胞培養物を使用して試験した。20%のウシ胎児血清(FCS)および1%の2mMグルタミン溶液を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を培養培地として使用した。約7000のCaco2細胞/ウェルを、24−ウェルプレートに播種し、5%CO雰囲気および約98%の湿度下で、37℃においてインキュベートした。細胞を、ほぼ50時間後に単層が形成されるまで毎日顕微鏡的に確認した。インキュベーション培地を、350μg/mlのCGPジペプチド(90%Asp−Arg:10%Asp−Lys)または遊離のL−アスパラギン酸、L−アルギニンおよびL−リシンの等量混合物を補給した新鮮な700μl/ウェルの同じ培地に、完全に置き換えた。ウェルの列に後の添加剤を含まない新鮮な700μlのインキュベーション培地を補給し、対照として考えた。サンプルを、0、13、22、67および113時間のインキュベーション期間後に採取し、SallamおよびSteinbuchelにより記載のように(J.App.Microbiol.DOI:10.1111/j.1365−2672.2009.04221.x)、HPLCにより分析し、被検ジペプチドおよびアミノ酸の濃度の変更を決定した。
【0165】
培地サンプルのHPLC分析は、113時間のインキュベーション後、約60%のシアノフィシンAsp−Argジペプチドおよび68%のシアノフィシンAsp−Lysジペプチドの吸収が明らかになった。他方、わずか41%の遊離のアルギニンおよび51%の遊離のL−リシンは、同じインキュベーション期間にわたって吸収された。例外的に、L−アスパラギン酸は、Caco2細胞により遊離の形態で吸収され、約67時間の短いインキュベーション期間内に完全に吸収されたと思われる。対照的に、遊離のアルギニンおよび遊離のリシンの吸収量と比較して、31.6%のより多くのアルギニンおよび24.4%のより多くのリシンが、CGPジペプチドの形態で細胞より吸収された。したがって、CGPジペプチドは、双方のアミノ酸、アルギニンおよびリシンの、より高い生体利用可能な供給源を表す。これらの結果は、栄養および治療におけるCGPジペプチドの適用可能性についての第1の直接の証拠であり、腸内細菌叢によるCGPの分解についての先の結果を確認する(SallamおよびSteinbuchel J.App.Microbiol.DOI:10.1111/j.1365−2672.2009.04221.x)。結果は、一般的に、オリゴペプチドは、遊離の形態のそれらの構成アミノ酸より高い生体利用効率を有するという、以前のインビトロおよびインビボの研究とも一致する(Adibi,S.A.、J.Clin.Invest.50:2266〜2275(1971年);Adibi,S.A.、Gastroenterology 113:332〜340(1997年);Dock,D.B.ら、Biocell 28:143〜150(2004年))。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【0170】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数種のジペプチド単位を本質的に含むペプチド構造であるシアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマーの調製品からのジペプチド組成物の酵素的製造のための方法であって、分子量約45kDa、活性温度範囲10から68℃および活性pH範囲5から9を有する、シュードモナス・アルカリジェネス由来のCGPase、またはCGPもしくはCGP様ポリマーをジペプチドに切断できるその突然変異体、誘導体もしくは断片を用いて前記ポリマー調製品を分解するステップを含む方法。
【請求項2】
CGPaseが、シュードモナス・アルカリジェネスDIP1株に由来するCGPaseである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CGPaseが、活性温度範囲15から60℃、好ましくは40〜60℃、および至適pH範囲7から8.5を有し、CGPをその構成β−ジペプチドに分解する、最も好ましくはCGPaseが、分子量約45kDa、至適温度約50℃および至適pH範囲7から8.5を有し、CGPをβ−Asp−Argに分解する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
CGPaseが、DSMZにDSM21533として寄託されているシュードモナス・アルカリジェネスDIP1株のCGPaseであるCphEal、またはその突然変異体、誘導体もしくは断片である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)ジペプチド単位が、以下のアミノ酸:アスパラギン酸、アルギニン、リシン、グルタミン酸、シトルリン、オルニチンおよびカネバニンの2種から構成される;および/または
(ii)ジペプチド組成物が、単一ジペプチドまたはジペプチドの混合物から構成される;および/または
(iii)ジペプチド組成物が、アスパラギン酸、アルギニン、リシンおよびCGP様ポリマー中に存在する他のアミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基を含むジペプチドから構成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジペプチド/ジペプチド単位が、β-アスパラギン酸-アルギニンおよびβ-アスパラギン酸-リシンから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
CGPまたはCGP様ポリマー調製品を、原核生物または真核生物の産生細胞系を培養することによって調製するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
産生細胞系が、大腸菌、ラルストニア・ユートロファ、アシネトバクター・ベイリー、コリネバクテリウム・グルタミクム、シュードモナス・プチダ、酵母株および植物バイオマスから選択され、最も好ましくは、ラルストニア・ユートロファH16−PHB4−Δeda(pBBR1MCS−2::cphA6308/edaH16)および大腸菌DH1(pMa/c5−914::cphAPCC6803)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
産生細胞系を培養することによって得られたCGP産物を単離するステップ、精製するステップ、および/または化学的に修飾するステップをさらに含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
産生細胞系を培養することによって得られたCGP産物を、単離または精製せずに、直接CGPaseを用いた分解に供する、請求項7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分解産物を精製するステップまたは分離するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
分解産物を化学的に修飾するステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか一項に記載のCGPase。
【請求項14】
1種または複数種のジペプチド単位を本質的に含むペプチド構造であるシアノフィシン(CGP)またはCGP様ポリマーから、酵素性タンパク質分解によって得られたジペプチドまたはジペプチド混合物を含む、組成物、医薬組成物、食品補助剤または飼料補助剤。
【請求項15】
ジペプチドまたはジペプチド混合物が、請求項1から12に記載の方法によって、CGPまたはCGP様ポリマーから得られる、請求項14に記載の組成物、医薬組成物、医薬品、食品補助剤または飼料補助剤。
【請求項16】
ジペプチド単位が、以下のアミノ酸:アスパラギン酸、アルギニン、リシン、グルタミン酸、シトルリン、オルニチンおよびカネバニンの2種から構成される請求項14または15の組成物、医薬組成物、医薬品、食品補助剤もしくは飼料補助剤であって、好ましくは、β−アスパラギン酸−アルギニンおよび/またはβ−アスパラギン酸−リシンを含む組成物、医薬組成物、医薬品、食品補助剤もしくは飼料補助剤。
【請求項17】
栄養療法のための医薬品を調製するため、または食品補助剤もしくは飼料補助剤としての、請求項14から16に記載のジペプチドまたはジペプチド混合物の使用。
【請求項18】
治療を必要とする患者の栄養療法の方法であって、患者に適切な量の、請求項14から16に記載のジペプチドまたはジペプチド混合物を投与するステップを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−522557(P2011−522557A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513006(P2011−513006)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057382
【国際公開番号】WO2009/150252
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510326588)ヴェスト フェリッシェ ウェルヘルムス ウニベルジテート ミュンスター (2)
【Fターム(参考)】