説明

シクロオキシゲナーゼ−2の発現および/または活性の相乗的阻害を示すクルクミノイド組成物

【課題】COX−1に対してほとんど効果を有さないかまたは全く効果を有さずに、COX−2によるプロスタグランジン合成を、特異的に阻害または防止する化合物を含有する、組成物の提供。
【解決手段】第1の成分としてのクルクミノイド(curcuminoid)種およびクルクミノイドの抗炎症性効果を相乗作用的に増強し得る第2の化合物を含有する組成物。この組成物は、クルクミノイド種を含む有効量の第1の成分ならびにα酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるメンバーを含む第2の成分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般的に、誘導性シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の発現および/または活性の相乗的阻害を示す組成物に関する。本組成物は、構成性シクロオキシゲナーゼ(COX−1)に対してほとんど有意な効果を有さないかまたは全く有意な効果を有さずに誘導性シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の発現および/または活性を相乗的に阻害するように機能し得る。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の記載)
炎症性疾患は、5千万人を超えるアメリカ人に影響を及ぼす。最近の10年〜15年の間の分子免疫学および細胞免疫学における基礎研究の結果として、これらの免疫学ベースの疾患の診断、治療および予防に対するアプローチが、劇的に変化した。この1つの例は、シクロオキシゲナーゼ酵素の誘導性形態の発見である。最初に、1976年に精製され、そして1988年にクローン化された構成性シクロオキシゲナーゼ(COX)は、アラキドン酸(AA)由来のプロスタグランジン(PG)の合成において機能する。この精製から3年後、COX活性を有する誘導性酵素は、同定され、COX−2の名を与えられた一方、構成性COXは、COX−1と称された。
【0003】
COX−2遺伝子発現は、前炎症性サイトカインおよび成長因子の制御下にある。従って、この影響は、COX−2が細胞増殖の炎症および制御の両方において機能することである。COX−2が、多くの組織において誘導性である一方、疼痛および熱に対する神経伝達において機能し得る、脳および脊髄において構成的に存在する。COXの2つのアイソフォームは、構造がほぼ同一であるが、基質およびインヒビターならびにこれらの細胞内位置において重要な差異を有する。胃壁の完全性を保護し、欠陥腎臓において正常な腎機能を維持する保護的PGは、COX−1によって合成される。他方、免疫細胞においてCOX−2によって合成されるPGは、炎症プロセスに対して中枢である。
【0004】
炎症処置のための理想的な処方物は、COX−1の活性に影響を与えずにCOX−2の誘導および活性を阻害する。しかし、従来の非ステロイド性薬物およびステロイド性抗炎症性薬物は、COX−1に影響せずにCOX−2を阻害する特異性を欠き、長期間使用される場合、胃腸管系に対して障害を生じる危険性がある。
【0005】
多くの研究は、胃腸管(GI)副作用の相対的発生率が、薬剤の相対的COX−2特異性に関連し得ることを示した。COX−2に対する特異性がCOX−1より高ければ高いほど、GI不調の発生率がより低くなる。従って、わずか0.6のCOX−2特異性を有するアスピリンは、ほぼ3.0の報告されたCOX−2特異性を有するクルクミノイドよりも大きなGI窮迫の発生率を生じる。しかし、GI不調の確立を有意に減少するために必要な一般的に受容されるCOX−2特異性は、5.0である。
【0006】
従って、COX−2酵素活性の発現を特異的に阻害または防止するが、COX−1代謝に対してほとんど効果を有さないかまたは効果を全く有さない組成物を同定することは、有用であり、その結果、有害な副作用を有さない有意に低い用量または現在の臨床用量で使用し得る。
【0007】
医師は、一般的に、変形性関節症の治療のための非ステロイド性抗炎症性薬物およびステロイド性抗炎症性薬物を使用する。しかし、これらの薬物は、長期療法にはそれほど適合しない。なぜなら、これらは、軟骨を補助(promote)し、そして保護する能力を欠くだけではなく;これらは、軟骨の変性またはその合成の低下を実際に導き得る。さらに、ほとんどの非ステロイド性抗炎症性薬物は、長期間使用される場合、胃腸管系を損傷する。従って、関節炎に対する新規処置は、緊急に必要とされる。
【0008】
グルコサミンの関節保護特性によって、以下の2つの欠点を除いて、変形性関節症のための興味深い治療剤になる:(i)グルコサミン処置に対する応答の速度が、抗炎症性薬物を用いた処置より遅い、そして(ii)グルコサミンは、変性の寛解の予想を満たさない可能性がある。非ステロイド性抗炎症性薬剤とグルコサミンとを比較する研究において、例えば、1日当たり1500mgのグルコサミン硫酸を1200mgのイブプロフェンと比較する二重盲式研究は、最初の2週間の間、グルコサミン処置患者においてよりも、イブプロフェン患者において、疼痛スコアをより早く減少したことを示した。しかし、疼痛スコアの減少は、グルコサミンを受容した患者において試行期間の間ずっと続き、2つの群の間の差異は、第8週までにグルコサミンの方に有意に傾いた。非特許文献1。従って、グルコサミンは、関節炎の疼痛および炎症を軽減し得るが、利用可能な抗炎症性薬物より速度がより遅い。
【0009】
さらに、現在利用可能なグルコサミン処方物は、変形性関節症および慢性関節リウマチの根源的な原因を、最適に攻撃および緩和するようには処方されてこなかった。また、多くの市販されるハーブの補助物質および食事性補助物質とは違って、利用可能な処方物は、用法の歴史を有さず、これらの安全性および効力を保証し得る制御された臨床試験の歴史も有さない。
【0010】
軟骨代謝の標準化または変形性関節症の処置のための理想的な処方物は、強力な抗炎症性活性を有する十分な軟骨保護を提供する。変形性関節症のための最適食事性補助物質は、グルコサミンによって提供される一般的な関節復元の質を強化し、任意の有害な副作用を誘導することなく、炎症応答を低減する。これは、安価に作製され、そして全ての政府の規制に従う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lopes Vaz,A.,(1982),「Double−blind clinical evaluation of the relative efficacy of ibuprofen and glucosamine sulphate in the management of osteoarthritis of the knee in outpatients,8」,Curr.Med Res Opin.145−149
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
従って、COX−1に対してほとんど効果を有さないかまたは全く効果を有さずに、COX−2によるプロスタグランジン合成を、特異的に阻害または防止する化合物の天然の処方物を同定することは、有用である。関節組織の健康状態の保護、関節炎または他の炎症性状態の処置に有用である、このような処方物は、以前に発見されなかった。用語「特異的または選択的なCOX−2インヒビター」は、COX−1よりCOX−2を選択的に阻害する化合物または混合物を含む。好ましくは、化合物は、COX−1の阻害に関して中間有効濃度より少なくとも5倍大きい、COX−2阻害に関する中間有効濃度を有する。例えば、試験処方物のCOX−2に対する中間阻害濃度が0.2μg/mLであった場合、処方物は、COX−1に対する中間阻害濃度が1μg/mL以上にならない限り、COX−2特異的であるとはみなされない。
【0013】
好ましい実施形態は、第1の成分としてのクルクミノイド(curcuminoid)種およびクルクミノイドの抗炎症性効果を相乗作用的に増強し得る第2の化合物を含有する組成物を提供する。この組成物は、クルクミノイド種を含む有効量の第1の成分ならびにα酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるメンバーを含む第2の成分を含有する。特定の実施形態において、α酸は、フムロン(humulone)である。別の実施形態において、β酸は、ルプロン(lupulone)である。別の実施形態において、クルクミノイドは、クルクミン(curcumin)である。
【0014】
特定の実施形態において、この組成物は、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸からなる群から選択されるメンバーをさらに含有する。
【0015】
好ましい実施形態はまた、動物における炎症または炎症ベースの疾患を処置する方法を提供し、この方法は、クルクミノイド種を含む有効量の第1の成分ならびにα酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるメンバーを含む第2の成分を含有する組成物を、炎症の症状を罹患する動物に提供する工程を包含する。
【0016】
好ましい実施形態はまた、動物における変形性関節症の症状を低減する方法を提供し、この方法は、クルクミノイド種を含む有効量の第1の成分ならびにα酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるメンバーを含む第2の成分を含有する組成物を、炎症の症状を罹患する動物に提供する工程を包含する。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
有効量の第1の成分および第2の成分を含有する組成物であって、当該第1の成分が、クルクミノイド種を含有し、当該第2の成分が、α酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるメンバーを含有する、組成物。
・(項目2)
項目1に記載の組成物であって、上記α酸が、フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソプレフムロン、フルポン、アドフルポン、キサントフルポンAおよびキサントフルポンBからなる群から選択される、組成物。
・(項目3)
上記α酸が、フムロンである、項目2に記載の組成物。
・(項目4)
項目1に記載の組成物であって、上記β酸が、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロン、ヘキサジドロコルプロン、およびジヒドロイソフムロンからなる群から選択される、組成物。
・(項目5)
上記β酸が、ルプロンである、項目4に記載の組成物。
・(項目6)
項目1に記載の組成物であって、上記α酸またはβ酸が、モノサッカリドまたはジサッカリド、アミノ酸、脂肪酸、スルフェート、スクシネート、アセテート、およびグルタチオンからなる群から選択される、組成物。
・(項目7)
上記第2の成分が、ホップから抽出される、項目1に記載の組成物。
・(項目8)
上記抽出が、超臨界COによって実施される、項目7に記載の組成物。
・(項目9)
項目1に記載の組成物であって、上記クルクミノイドが、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、シス−トランス−クルクミン、およびシクロクルクミンからなる群から選択される、組成物。
・(項目10)
上記クルクミノイドが、クルクミンである、項目9に記載の組成物。
・(項目11)
項目1に記載の組成物であって、上記クルクミノイドが、モノサッカリドまたはジサッカリド、アミノ酸、脂肪酸、スルフェート、スクシネート、アセテート、およびグルタチオンからなる群から選択される化合物に結合体化される、組成物。
・(項目12)
上記第1の成分が、合成化合物である、項目1に記載の組成物。
・(項目13)
上記第2の成分が、合成化合物である、項目1に記載の組成物。
・(項目14)
上記組成物が、薬学的に受容可能なキャリアで処方される、項目1に記載の組成物。
・(項目15)
グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸からなる群から選択されるメンバーをさらに含有する、項目1に記載の組成物。
・(項目16)
抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂質、炭水化物、およびアミノ糖からなる群から選択されるメンバーをさらに含有する、項目1に記載の組成物。
・(項目17)
動物における炎症または炎症ベースの疾患の処置における使用のための、項目1に記載の組成物。
・(項目18)
動物における変形性関節症の症状を低減する使用のための、項目1に記載の組成物。
・(項目19)
動物における炎症または炎症ベースの疾患の処置のための医薬の調製のための項目1の組成物の使用。
・(項目20)
項目19に記載の使用であって、上記組成物が、投薬形態で処方され、当該投薬形態において、投与が、第1の成分および第2の成分を提供し、当該第1の成分が、1日当たり動物の体重1kg当たり約0.001〜約30mgであり、当該第2の成分が、1日当たり動物の体重1kg当たり約0.5〜約20mgである、使用。
・(項目21)
項目19に記載の使用であって、ここで、上記投与が、経口送達、非経口送達、局所的送達、経皮的送達、および経粘膜的送達からなる群から選択される手段による、使用。
・(項目22)
項目21に記載の使用であって、ここで、上記局所適用の処方箋が、約0.001重量%〜約1重量%の第1の成分および約0.025重量%〜約1重量%の第2の成分を提供する、使用。
・(項目23)
項目22に記載の使用であって、ここで、上記局所適用の処方箋が、約0.01重量%〜約1重量%の第1の成分および約0.05重量%〜約1重量%の第2の成分を提供する、使用。
・(項目24)
動物における変形性関節症の症状を低減するための医薬の調製のための項目1の組成物の使用。
・(項目25)
項目24に記載の使用であって、ここで、上記組成物が、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸からなる群から選択されるメンバーをさらに含有する、使用。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1[A]〜1[F]は、[A]クルクミノイド類の一般的な化学構造、ならびに[B]、[C]、[D]、[E]および[F]は、それぞれ、クルクミノイド類内の種として、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミンのシス−トランス幾何異性体、およびシクロクルクミンの一般的な化学構造、を示す。
【図2】図2[A]および[B]は、それぞれ、α酸類およびα酸類内の種として、フムロンの一般的な化学構造を示す。
【図3】図3[A]および[B]は、それぞれ、β酸類およびルプロンの一般的な化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を含むことに留意しなければならない。
・好ましい実施形態は、COX−2の発現および/または活性に対して相乗的阻害効果を有する組成物を提供する。より詳細には、この組成物は、以下により詳細に記載されるように、第1の成分としてクルクミノイドを、そして第2の成分としてα酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるメンバーを含有する。好ましい実施形態において提供される組成物は、食事性補助物質または治療組成物として処方され得る。組成物は、COX−1に対して有意な効果を有さずに、COX−2の誘導性および/または活性を相乗的に阻害するように機能し得る。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「食事性補助物質」とは、生理学の構造的変化または機能的変化に影響を及ぼすために消費される組成物をいう。用語「治療組成物」とは、疾患を処置または予防するために投与される任意の化合物をいう。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「クルクミノイド」および「活性クルクミノイド」とは、COX−2の誘導性および/または活性を阻害し得るが、COX−1に対してほとんど効果を有さないかまたは全く効果を有さないクルクミノイド類内の種、あるいは炎症性応答の重篤度を抑制し得るかまたは低減し得るクルクミノイド類内の種、をいう。クルクミノイドは、天然産物から抽出され得るかまたは化学合成され得る。
【0021】
Curcuma longaの根茎から単離された黄色色素の画分は、ジシナモイルメタン基に属するクルクミノイドを含有する。クルクミノイドは、3〜5%の程度まで存在する。これらは、最も重要な活性成分であると考えられ、そしてCurcuma longaの生物学的活性を担うと考えられる。これらの主要な活性は抗炎症性であるが、クルクミノイドは、同様に、抗酸化性、抗アレルギー性、創傷治癒、抗痙攣性、抗菌性、抗真菌性および抗腫瘍活性を保有することが報告されている。クルクミン(図1B)は、1815年に単離され、1910年に構造的に規定された。Curcum longaから単離された他のクルクミノイドとしては、デメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)(図1C)、ビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)(図1D)、クルクミンのシス−トランス幾何異性体(図1E)、およびシクロクルクミン(cyclocurcumin)(図1F)が挙げられる。クルクミノイドは、Curcuma longaの他に他の植物種(例えば、Curcuma xanthorrhizaおよびCurcuma zedoaria)において見出され得る。
【0022】
クルクミノイドは、これらの抗炎症性活性について周知である。Tumericは、Ayurvedic医薬において使用される最も古い抗炎症性薬物の1つである。クルクミノイドの抗炎症性活性は、炎症反応モデル(例えば、カラゲニン、コットンペレット(cotton pellet)、ホルムアルデヒドおよび肉芽腫嚢のような化学的刺激原または物理的刺激原)において評価される。ヒトの二重盲式の臨床試行は、5〜6週間の間、1200mgのクルクミノイド/日の用量で、慢性関節リウマチにおける効力を示した。しかし、これらの用量で、胃腸管(GI)不快感および胃刺激の徴候が、しばしば報告される。高用量のクルクミノイドによって引き起こされるGI不調および胃刺激は、クルクミノイドが、アスピリンおよびアスピリン様抗炎症性薬剤と類似する様式でプロスタグランジン産生に作用するという事実に起因し得る。
【0023】
好ましくは、図1[A]に示され、そして図1[B]中のクルクミンによって特に例示されるようなクルクミノイド類は、例えば、Sabinsa(121 Ethel Road West,Piscataway,NJ)から市販入手され得るような、薬学的等級の植物性抽出物である。使用され得る他のクルクミノイドとしては、デメトキシクルクミン(図1[C])、ビスデメトキシクルクミン(図1[D])、シス−トランスクルクミン(図1[E])、およびシクロクルクミン(図1[F])が挙げられる。使用されるクルクミノイドは、Curcuma longa L.から容易に得られ得る。薬学的等級のクルクミノイド抽出物は、約70%を超えるクルクミノイド含量を有するように標準化される。薬学的な植物性等級の抽出物は、好ましくは、徹底的な安全性手順および効力手順を通過するべきである。好ましい実施形態において使用される場合、この抽出物は、約1〜99重量%のクルクミノイド含量を有する。好ましくは、最小クルクミノイド含量は、約70重量%である。あるいは、クルクミノイドは、化学合成において公知の標準的技術を使用して合成され得る。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「ホップ(hop)抽出物」とは、(1)ホップ植物産物を溶媒に曝す工程、(2)ホップ植物産物を溶媒から分離する工程、および(3)溶媒を除去する工程から生じる固体物質をいう。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「溶媒」とは、ホップ植物産物から固体物質を抽出するために必要な特徴を保有する水性または有機性の液体をいう。溶媒の例としては、水、蒸気、過剰加熱水、メタノール、エタノール、ヘキサン、クロロホルム、液体CO、液体N、またはこれらの物質の任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「CO抽出物」とは、ホップ植物産物を、液体または超臨界的CO調製物に曝し、その後をCO除去する工程から得られる固体物質をいう。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「α酸」とは、ホップ植物産物から単離される化合物をいい、これらとしては、フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソプレフムロン、フルポン(hulupone)、アドフムロン、キサントフモル(xanthohumol)AおよびキサントフモルBが挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「β酸」とは、ホップ植物産物から単離される化合物をいい、これらとしては、ルプロンとして集合的に公知の化合物をいい、これらとしては、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロン、およびヘキサヒドロコルプロンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「重要な油画分」とは、ミルセン(myrcene)、フムレン(humulene)、β−カリオフィリーン(caryophyleen)、ウンデカン−2−オン、および2−メチル−ブト−3−エン−オールを含む成分の複合混合物をいう。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「脂質」とは、脂肪酸のトリアシルグリセロールエステルをいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「ろう」は、トリアシルグリセロールエーテルまたは極端に長い鎖(>25炭素)の脂肪族アルコールもしくは脂肪酸のエステルをいう。
【0032】
1つの形態または別の形態中のホップ抽出は、水およびエタノール中への抽出がまず試行された19世紀初期まで150年以上遡る。今日でさえも、エタノール抽出は、ヨーロッパで利用可能であるが、はるかに広く行われている抽出は、有機溶媒(ヘキサン)抽出およびCO抽出(超臨界的かつ液体)である。CO(代表的には、60バールの圧力かつ5〜10℃で)は、液体状態で存在し、そしてホップ軟質樹脂および油に対して高度に特異的な、比較的穏やかな非極性溶媒である。臨界点を超えると、代表的には、300バールの圧力および60℃で、COは、気体および液体の両方の特徴を有し、さらにより強い溶媒である。種々の抽出物の適切な成分が、表1において比較される。
【0033】
(表1.ホップ抽出物(パーセント W/W)
【0034】
【表1】


最も単純な場合、ホップ抽出は、ホップを粉砕する工程、ペレット化する工程、そして再粉砕し、ホップ腺を広げる工程、溶媒を充填されたカラムを通過させ、樹脂成分を回収する工程、最後に、溶媒を除去し、全樹脂抽出物または「純粋」樹脂抽出物を得る工程を包含する。
【0035】
主要な有機抽出物は、強い溶媒であり、実質的に全てのホップ腺成分に加えて、これらは、植物色素、クチクラろう、水および水溶性物質を抽出する。
【0036】
超臨界COは、有機溶媒より選択的であり、少量のタンニンおよびろうならびにより少量の水、従って水溶性成分を抽出する。これは、クロロフィルのようないくらかの植物色素を抽出するが、有機溶媒が抽出するよりは少ない。液体COは、ホップに使用するために商業的に使用される最も選択的な溶媒であり、従って、最も純粋な全樹脂および油抽出物を生成する。これは、硬質樹脂もタンニンも抽出せず、かなりより少量の植物ろうを抽出し、植物色素は抽出せず、そしてより少量の水および水溶性物質を抽出する。
【0037】
この選択性およびより穏やかな溶媒特性の結果として、ホップ単位重量当たりの液体CO抽出物の絶対収量は、他の記載された溶媒を使用する場合よりも少ない。さらに、液体COでのα酸の収量(約89〜93%)は、超臨界CO(約91〜94%)または有機溶媒(約93〜96%)よりも少ない。抽出の後、溶媒除去のプロセスを行い、有機溶媒に対する溶媒除去は、加熱し揮発させる工程を包含する。このことにも関わらず、微量の溶媒が、抽出物に残る。しかし、COの除去は、圧力を緩め、COを揮発させる工程を単に包含する。
【0038】
好ましい実施形態において、α酸、β酸、またはこれらの誘導体は、ホップから抽出され得るか、または化学合成され得る。好ましくは、α酸、β酸、またはこれらの誘導体は、ホップから抽出され、より好ましくは、超臨界COによって抽出される。
【0039】
好ましくは、図2[A]によって示され、特に図2[B]におけるフムロンによって例示されるようなα酸類、および図3[A]によって示され、特にルプロン(図3[B])によって例示されるようなβ酸類は、薬学的等級調製物であり、例えば、Hopunion(Yakima,WA)から市販入手され得る。
【0040】
骨吸収インヒビターとしてのホップ抽出物由来のフムロンの同定は、Tobe,Hら1997に報告される[Bone resorption Inhibitors from hop extract.Biosci.Biotech.Biochem 61(1)158−159]。同じグループの後の研究によって、MC3T3−E1細胞のTNFα刺激後の、COX−2遺伝子転写の阻害として、フムロンの作用の機構が特徴付けられた[Yamamoto,K.2000.Suppression of cyclooxygenase−2 gene transcription by humulon of bee hop extract studied with reference to glucocorticoid.FEBS Letters 465:103−106]。しかし、これらの参考文献は、骨粗鬆症およびCOX−2遺伝子転写の適用のためのみのフムロンの使用を開示する。
【0041】
好ましい実施形態は、クルクミノイド分子を改変し、より高い効力およびより低い毒性を達成する工程ならびに相乗的な様式で作用する第2の成分を添加する工程を提供する。従って、好ましい実施形態は、クルクミノイドを、α酸、β酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択される第2の分子と組み合わせる場合、この組合せが、標的細胞において相乗効果を生じるという発見に関する。1つのこのような相乗的応答は、誘導性COX−2の特異的阻害である。
【0042】
各類内の代表的な種は、表2に列挙される。表2における各類の項目下で列挙される種の中で、少なくとも1つのアステリスク()を含む種は、好ましく、2つのアステリスク()を含む種は、特に好ましい。
【0043】
(表2.組成物の成分)
【0044】
【表2】


好ましくは、好ましい実施形態は、活性クルクミノイドおよびホップ抽出物の成分またはこれらの誘導体を使用する。本明細書中で使用される場合、用語「活性クルクミノイド」、「ホップ抽出物の活性成分」またはこれらの誘導体は、COX−2の誘導性および/または活性を阻害し得るが、COX−1に対してほとんど効果を有さないかまたは全く効果を有さないか、あるいは炎症性応答の重篤度を防止し得るかまたは低減し得る、それぞれの類の範囲内の天然に存在する種または合成誘導体をいう。
【0045】
好ましい実施形態はまた、クルクミノイド、α酸およびβ酸またはこれらの誘導体の結合体を使用し得る。クルクミノイド、α酸およびβ酸またはこれらの誘導体の「結合体」は、モノサッカリドまたはジサッカリド、アミノ酸、スルフェート、スクシネート、アセテートおよびグルタチオンからなる群から選択されるメンバーを共有結合するかまたはこれらと結合体化される、クルクミノイド、α酸、およびβ酸を意味する。好ましくは、モノサッカリドまたはジサッカリドは、グルコース、マンノース、リボース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース、マルトース、およびフルクトースからなる群から選択されるメンバーである。
【0046】
特定の実施形態は、有効量のクルクミンならびにフムロンおよびルプロンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する組成物である。
【0047】
α酸またはβ酸によるCOX−2酵素活性の阻害は、クルクミノイドとの二重の相乗効果を提供し得る。従って、α酸およびβ酸からなる群から選択される第2の化合物は、クルクミノイドの抗炎症性活性を増大し得る。好ましい実施形態の組成物の結果は、通常必要とされるよりも低い用量のクルクミノイドでのCOX−2の活性に対するより選択的な効果である。所望のCOX−2阻害を達成するようにクルクミノイドの用量を減少することによって、この化合物からの副作用の可能性は、ほとんど指数関数的に減少する。α酸およびβ酸からなる群から選択される第2の化合物は、利益を提供し得、この利益としては、例えば、肝臓保護、抗腫瘍促進、抗高脂質血症、抗高血糖症(antihyperglycermia)およびクルクミノイドによるCOX−1阻害由来の潰瘍形成に対する保護であるがこれらに限定されない。
【0048】
好ましくは、好ましい食事性補助物質の一日用量(mg/kg−日)は、動物の体重の1kg当たり、約0.001〜約30mgクルクミノイド、および約0.5〜約20.0mgのα酸またはβ酸を送達するように処方される。
【0049】
局所適用のための好ましい実施形態の組成物は、以下の1つを含有する:約0.001〜約1重量%、好ましくは約0.01〜約1重量%のクルクミノイド、および約0.025〜約1重量%、好ましくは約0.05〜約1重量%のα酸またはβ酸。
【0050】
好ましい実施形態の組成物は、以下の範囲の血清濃度を生じる:約0.0001〜約10μMのクルクミノイド、および約0.001〜約10μMのα酸またはβ酸。
【0051】
好ましい実施形態において、組成物は、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸をさらに含有し得る。グルコサミンは、一般的に、変形性関節症の処置に対して有効であり、そして安全であるとして受け入れられる。従って、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸をさらに含有する組成物は、関節機能の正常化または変形性関節症の症状を低減するのを補助し得る。
【0052】
クルクミノイドとα酸、β酸または誘導体との組み合わせに加えて、食事性適用のための本組成物は、種々の添加物(例えば、他の天然の中間代謝物の成分、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂質、炭水化物、およびアミノ糖であるがこれらに限定されない)および不活性成分(例えば、タルクおよびステアリン酸マグネシウム(これらは、錠剤およびカプセル剤の製造において標準的な賦形剤である))を含有し得る。
【0053】
好ましい実施形態の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。本明細書中で使用されるように、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤、甘味剤などを含む。これらの薬学的に受容可能なキャリアは、広範な材料から調製され得、このような材料としては、希釈剤、結合剤および接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、バルキング剤、嬌味嬌臭剤、甘味剤および特定の治療組成物を調製するために必要とされ得る雑材(例えば、緩衝剤および吸収剤)が挙げられるが、それらに限定されない。薬学的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。いかなる従来の媒体または薬剤も活性成分と不適合性でない限り、好ましい実施形態におけるその使用が企図される。1つの実施形態では、タルク剤およびステアリン酸マグネシウムが、処方物中に含まれる。好ましい成分は、Astac Brand 400 USPタルク粉末および実際等級(veritable grade)のステアリン酸マグネシウムである。食用バーまたは機能的食品としてのこの組成物の製造に影響することが公知の他の成分としては、フレーバリング、糖、アミノ糖、タンパク質、および/または化工澱粉、ならびに脂肪および油が挙げられ得る。
【0054】
好ましい実施形態の食事性補助物質、ローション、または治療組成物は、当業者によって公知である任意の様式で処方され得る。1つの実施形態では、組成物は、当業者に利用可能な技術を用いてカプセルまたは錠剤に処方され得る。カプセルまたは錠剤の形態では、成人または成体動物にとって推奨された一日用量が、好ましくは、1〜6のカプセルまたは錠剤に含有される。しかし、本発明の組成物はまた、他の便宜的な形態で処方され得る。このような形態としては、例えば、注射溶液または懸濁液、スプレー溶液または懸濁液、ローション、ガム、ロゼンジ、食品または軽食品目が挙げられる。食品、軽食、ガムまたはロゼンジ品目は、任意の摂取可能な成分を含み得、このような成分としては、甘味剤、フレーバリング、油、澱粉、タンパク質、果実もしくは果実抽出物、野菜もしくは野菜抽出物、穀物、動物脂、またはタンパク質が挙げられる。従って、本組成物は、シリアル、軽食品目(例えば、チップス、バー、ガムドロップ、チューイングキャンデー、または緩慢に溶解するロゼンジ)に処方され得る。好ましい実施形態は、炎症ベースの疾患(急性および慢性の両方)の全ての型の処置を企図する。本発明は、炎症応答を減少させ、そしてそれにより罹患組織の治癒を促進するか、または罹患組織へのさらなる損傷を防ぐ。薬学的に受容可能なキャリアはまた、本発明の組成物および処方物において使用され得る。
【0055】
好ましい実施形態によれば、動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、トリ、ウマ、反芻動物、または他の温血動物からなる群から選択されるメンバーであり得る。好ましい実施形態は、主としてヒトの処置に関する。投与は、当業者に利用可能な任意の方法によって、例えば、経口経路、局所経路、経皮経路、経粘膜経路、または非経口経路によって、であり得る。
【0056】
以下の表3は、COX−2酵素発現および活性が役割を果たし得、従って、好ましい実施形態の組成物による正常化または処置の適切な標的である疾患のリストを提供する。
(表3:COX−2関連疾患)
【0057】
【表3】


COX−2の発見は、COX−1により作製された胃および腎臓における防御性PGを除去することなく炎症を減少させる薬物の設計を可能にした。好ましい実施形態の組成物は、被験体における炎症の処置、および他の炎症関連障害の処置(例えば、疼痛および頭痛の処置における鎮痛薬として、または熱の処置のための解熱薬として)に有用であるが、これらに限定されない。好ましい実施形態の組成物は、血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症(sclerodma)、リウマチ熱、I型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス(sacoidosis)、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、過敏症、傷害後に生じる腫脹、心筋虚血などのような疾患において炎症を処置する際に有用である。好ましい実施形態の組成物は、有害な副作用が顕著に少ないというさらなる利点を有する抗炎症剤として有用である。
【0058】
好ましい実施形態はまた、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸が、関節運動を正常化するか、または変形性関節炎の症状を減少させるように機能する割合を増加させる組成物を提供し得る。例えば、好ましい実施形態の組成物は、関節炎を処置するために有用である。このような関節炎としては、慢性関節リウマチ、脊椎アソパシー(spondyloathopathies)、痛風性関節炎、変形性関節炎、全身性エリテマトーデス、および若年性関節炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
好ましい実施形態のこのような組成物はまた、喘息、気管支炎、月経性痙攣(menstrual cramps)、腱炎、滑液包炎および皮膚関連状態(例えば、乾癬、湿疹、熱傷、および皮膚炎)の処置において有用である。好ましい実施形態の組成物はまた、胃腸状態(例えば、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、および潰瘍性大腸炎)を処置するため、および癌(例えば、結腸直腸癌)の予防または処置に有用である。
【0060】
好ましい実施形態の組成物はまた、眼疾患(例えば、網膜症、結膜炎、ブドウ膜炎、眼光恐怖(ocular photophobia))の処置、および眼組織への急性傷害の処置において有用である。化合物はまた、肺炎症(例えば、ウイルス感染および嚢胞性線維症に関連した肺炎症)の処置において有用である。化合物はまた、特定の神経系障害(例えば、皮質性痴呆(cortical dementias)(アルツハイマー病を含む)の処置に有用である。PGE2のCOX−2媒介生合成のインヒビターとして、これらの組成物はまた、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、エンドトキシンショック症候群、アテローム性動脈硬化症、および発作、虚血、および外傷から生じる中枢神経系損傷の処置において有用である。
【0061】
以下の実施例は、好ましい実施形態の例示であって、いずれの様式においても制限しないことを意図する。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
クルクミノイドおよびホップの抽出物によるマウスB細胞におけるプロスタグランジンE2産生の相乗的阻害
本実施例は、好ましい実施形態のクルクミノイドおよびホップ抽出物の組み合わせの、クルクミノイド単独に比較して優れたCOX−2阻害効力および選択性を示す。
(RAW 264.7細胞におけるPGE2のCOX−2媒介産生の阻害)
装置−バランサー(分析用)、Ohaus Explorer(Ohaus Model #EO1140,Switzerland)、バイオセイフティーキャビネット(Forma Model#F1214,Marietta,Ohio)、ピペッター(100〜1000μL)(VWR Catalog#4000−208,Rochester,NY),細胞ハンド計数カウンター(VWR Catalog#23609−102,Rochester,NY),COインキュベーター(Forma Model#F3210,Marietta,Ohio),ヘマサイトメーター(Hausser Model#1492,Horsham,PA)、倒立顕微鏡(Leica Model #DM IL,Wetzlar,Germany)、マルチチャンネルピペッター(12チャンネル)(VWR Catalog#53501−662,Rochester,NY)、ピペットエイド(VWR Catalog#53498−103,Rochester,NY)、ピペッター(0.5〜10μL)(VWR Catalog#4000−200,Rochester,NY)、ピペッター(100〜1000μL)(VWR Catalog#4000−208,Rochester,NY)、ピペッター(2〜20μL)(VWR Catalog#4000−202,Rochester,NY)、ピペッター(20〜200μL)(VWR Catalog#4000−204,Rochester,NY)、PURELAB Plus Water Polishing System(U.S.Filter,Lowell,MA)、冷蔵装置(4℃)(Forma Model#F3775,Marietta,Ohio)、ボルテックスミキサー(VWR Catalog#33994−306,Rochester,NY)、温水バス(Shel Lab Model#1203,Cornelius,OR)。
【0063】
細胞、化学物質、試薬、および緩衝液−細胞スクレーパー(Corning Catalog#3008,Corning,NY)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(VWR Catalog#5507,Rochester,NY),ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Mediatech Catalog#10−013−CV,Herndon,VA)、ウシ胎仔血清(熱不活性化)(FBS−HI)(Mediatech Catalog#35−011−CV,Herndon,VA)、リポ多糖(LPS)(Sigma Catalog#L−2654,St.Louis,MO)、遠心管(1.7mL)(VWR Catalog#20172−698,Rochester,NY)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech Catalog#30−001−CI,Herndon,VA)、ピペットチップ(0.5〜10μLピペッター用)(VWR Catolog#53509−138,Rochester,NY)、ピペットチップ(100〜1000μLピペッター用)(VWR Catolog#53512−294,Rochester,NY)、ピペットチップ(2〜20μLピペッターおよび20〜200μLピペッター用)(VWR Catolog #53512−260,Rochester,NY)、ピペット(10mL)(Becton Dickinson Catalog#7551,Marietta,OH)、ピペット(2mL)(Becton Dickinson Catalog#7507,Marietta,OH)、ピペット(5mL)(Becton Dickinson Catalog#7543,Marietta,OH)、RAW 264.7細胞(American Type Culture Collection Catalog#TIB−71,Manassas,VA)、試験化合物(液体COホップ抽出物(Hopunion,Yakima,WA製))、(クルクミン(Sigma(St.Louis,MO)製)(Product C 1386)、65〜70%Curcuma longa粉末)、組織培養プレート(96ウェル)(Becton Dickinson Catalog#3075,Franklin Lanes,NJ)、超純水(Ultra−pure water)(抵抗(Resistance)=18MΩ−cm脱イオン水)。
【0064】
一般手順−RAW 264.7細胞(ATCCより入手)を、DMEM培地において増殖させ、そして対数期増殖に維持した。DMEM増殖培地を以下のようにして作製した:50mLの熱不活性化FBSおよび5mLのペニシリン/ストレプトマイシンを、500mLボトルのDMEMに添加し、そして4℃で保存した。これを使用前に温水バス中で37℃に温め、そして最良の結果のために、3ヶ月以内に使用すべきである。
【0065】
実験の第一日目において、対数期264.7細胞を、96ウェル組織培養プレートにおいて1ウェル当たり0.2mL増殖培地中に、8×10細胞/ウェルで播種した。播種後6〜8時間で、各ウェルから100μLの増殖培地を除去し、100μLの新鮮な培地と交換した。1.0mg/mL LPS溶液(これを、RAW 264.7細胞におけるCOX−2の発現を誘導するために使用した)を、1mL DMSO中の1.0mgのLPS中に溶解することによって調製した。それを、溶解するまで混合し、そして4℃で貯蔵した。使用する直前に、室温で、または37℃温浴バス中でそれを解凍させた。
【0066】
実験の第二日目において、試験材料を、DMSO中で1000×ストックとして調製した。例えば、試験材料の最終濃度が10μg/mLであった場合、1mLのDMSO中に10mgの試験材料を溶解することにより、10mg/mLストックを調製した。実験の2日目に、新鮮な試験材料を調製した。1.7mL遠心分離管において、1mL DMEM(FBS含まず)を添加し、0.05μg/mL、0.10μg/mL、0.5μg/mL、および1.0μg/mLの試験濃度を得た。2μLの1000×DMSOストックの試験材料を1mL培地(FBS含まず)に添加した。最終濃度の試験材料を含んだ管を2倍濃縮した。この管を、10分間インキュベーター中に配置して、平衡化させた。
【0067】
100mLの培地を、1日目に調製した細胞プレートの各ウェルから除去した。100mLの平衡化した2×最終濃度の試験化合物を細胞に添加し、そして90分間インキュベートした。44μLの1mg/mL DMSOストックを10mLの培地に添加することにより、DMEM(FBS含まず)中LPSを調製した。刺激される細胞の各ウェルにつき、20μLのLPS(LPSの最終濃度は、0.4μg/mLのLPSである)を添加した。LPS刺激を24時間続け、その後各ウェルからの上清培地を、培地中のPGE2
含有量の決定のために、きれいな遠心管に移した。
(クルクミノイドおよびホップ抽出物によるCOX−1酵素阻害の決定)
PGE2のCOX−1合成を阻害する試験材料の能力を、本質的に、Noreen,Y.ら(J.Nat.Prod.61,2−7,1998)によって記載されるように決定した。
【0068】
装置−バランサー(2400g,Acculab VI−2400,VWR Catalog#11237−300,Rochester,NY)、バランサー(分析用)、Ohaus Explorer(Ohaus Model#EO1140,Switzerland)、バイオセイフティーキャビネット(Forma Model#F1214,Marietta,Ohio)、冷凍装置(−30℃)(Forma Model#F3797)、冷凍装置(−80℃)Ultralow(Forma Model#F8516,Marietta,OH)、加熱攪拌プレート(VWR Catalog#33918−262,Rochester,NY)、製氷機(Scotsman Model#AFE400A−1A,Fairfax,SC)、マルチチャンネルピペッター(12チャンネル)(VWR Catalog#53501−662,Rochester,NY)、マルチチャンネルピペッター(8チャンネル)(VWR Catalog#53501−660,Rochester,NY)、旋回振盪器プラットフォーム(Scienceware#F37041−0000,Pequannock,NJ)、pHメーター(VWR Catalog#33221−010,Rochester,NY)、ピペットエイド(VWR Catalog#53498−103,Rochester,NY)、ピペッター(0.5〜10μL)(VWR Catalog#4000−200,Rochester,NY)、ピペッター(100〜1000μL)(VWR Catalog#4000−208,Rochester,NY)、ピペッター(2〜20μL)(VWR Catalog#4000−202,Rochester,NY)、ピペッター(20〜200μL)(VWR Catalog#4000−204,Rochester,NY)、PURELAB Plus Water Polishing System(U.S.Filter,Lowell,MA)、冷蔵装置(4℃)(Forma Model #F3775,Marietta,Ohio)、真空チャンバー(Sigma Catalog#Z35,407−4,St.Louis,MO)、ボルテックスミキサー(VWR Catalog#33994−306,Rochester,NY)。
【0069】
供給品および試薬−96ウェル丸底プレート(Nalge Nunc#267245,Rochester,NY)、アラキドン酸(Sigma Catalog#A−3925,St.Louis,MO)、遠心分離管(15mL)(円錐形、滅菌済)(VWR Catalog#20171−008,Rochester,NY)、COX−1酵素(ヒツジ)、40,000単位/mg(Cayman Chemical Catalog#60100,Ann Arbor,MI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(VWR Catalog#5507,Rochester,NY)、エタノール100%(VWR Catalog#MK701908,Rochester,NY)、エピネフリン(Sigma Catalog#E−4250,St.Louis,MO)、グルタチオン(還元)(Sigma Catalog# G−6529,St.Louis,MO)、メモリ付きシリンダー(1000mL)(VWR Catalog#24711−364,Rochester,NY)、ヘマチン(ブタ)(Sigma catalog# H−3281,St.Louis,MO)、塩酸(HCl)(VWR Catalog#VW3110−3,Rochester,NY)、KimWipes(Kimberly ClarkCatalog#34256,Roswell,GA)、遠心管(1.7mL)(VWR Catalog#20172−698,Rochester,NY)、NaOH(Sigma Catalog#S−5881,St.Louis,MO)、ピペットチップ(0.5〜10μLピペッター用)(VWR Catolog#53509−138,Rochester,NY)、ピペットチップ(100〜1000μLピペッター用)(VWR Catolog#53512−294,Rochester,NY)、ピペットチップ(2〜20μLピペッターおよび20〜200μLピペッター用)(VWR Catolog#53512−260,Rochester,NY)、プロスタグランジンE2(Sigma Catalog#P−5640,St.Louis,MO)、プロスタグランジンF2α(Sigma Catalog#P−0424,St.Louis,MO)、攪拌棒(磁気)(VWR Catalog#58948−193,Rochester,NY)、貯蔵ビン(1000mL)(Corning Catalog#1395−1L,Corning,NY)、貯蔵ビン(100mL)(Corning Catalog#1395−100,Corning,NY)、ホップのCO抽出物(Hopunion,Yakima,WA)、クルクミン(Sigma,St.Louis,MO,(Product C 1386)、65〜70% Curcuma longa粉末)、Tris−HCl(Sigma Catalog#T−5941,St.Louis,MO)、超純水(抵抗=18MΩ−cm脱イオン水)。
【0070】
一般手順−酸素を含まない1.0MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を、以下のようにして調製した。1000mLのビーカーで、12.11gのTrizma HClを、900mLの超純水に溶解した。このビーカーにスターラーバーを入れて、スターラープレートにのせた。NaOHを、pHが8.0に達するまで添加した。その容量を、1000mLの最終容量まで調整し、そして1000mLの保存瓶中で貯蔵した。
【0071】
Tris−HCl緩衝液を、上を開けたまま、真空チャンバーに入れ、そしてこの緩衝液の気体発生が止まるまで、空気ポンプをオンにした。次いで、真空チャンバーを切り、そして貯蔵瓶に密閉して覆った。酸素を含まないTris−HCl緩衝液を使用するたびに、この工程を繰り返した。
【0072】
1mLの補因子溶液を、1.3mgの(−)エピネフリン、0.3mgの還元グルタチオンおよび1.3gmのヘマチンを、1mLの酸素を含まないTris−HCl緩衝液に添加することによって調製した。この試験物質の溶液を、必要に応じて調製した(すなわち、10mgのアスピリンを計量し、そして1mLのDMSOに溶解した)。
【0073】
酵素、すなわち、プロスタグランジンE2またはプロスタグランジンF2αを、以下のようにして、酸素を含まないTris−HCl緩衝液に溶解した。すなわち、氷上で、40,000単位/mLの酵素(6.5μL)をとり、そして酸素を含まないTris−HCl緩衝液(643.5μL)に添加した。この酵素溶液は、60回の反応に十分である。COX−1酵素溶液を、以下のようにして調製した:15mLの遠心分離管中で、40,000単位/mLのCOX−1酵素(10μL)を、一回の反応あたり、50μLの補因子溶液を含有する酸素を含まないTris−HClに添加した。この混合物を、氷上で、5分間インキュベートした。60回の反応について、650μLの酵素を、3.25mLの補因子溶液を含有する酸素を含まないTris−HCl緩衝液に添加した。
【0074】
96ウェルプレートの各ウェル中で、60μLの酵素溶液を20μLの試験溶液と合わせた。試験溶液の最終濃度は、100、50、25、12.5、6.25および3.12μg/mLであった。これらのプレートを、氷上で10分間、プレインキュベートした。20μLのアラキドン酸(30μM)を添加し、そして37℃で15分間インキュベートした。
【0075】
12.1NのHClを100mLの貯蔵瓶中で希釈することによって、2MのHClを調製した。83.5mLの超純水を添加し、次いで、12.1NのHCl(16.5mL)を添加した。これを、100mLの貯蔵瓶中で貯蔵し、そしてBiosaftyキャビネット中に置いた。この反応を、2MのHCl(10μL)を添加することによって停止させた。最終溶液を、PGEアッセイのための上清として使用した。
【0076】
(培地中のPGE2濃度の決定)
以下の手順は、本質的にHamberg,M.およびSamuelsson,B.(J.Biol.Chem.1971.246,6713−6721)により記載される手順であった;しかし、商業的な非放射性の手順を用いた。
【0077】
装置−冷凍庫、−30℃(Forma Model #F3797)、加熱撹拌プレート(VWRcatalog #33918−262,Rochester,NY)、マルチチャネルピペッター、12チャネル(VWRcatalog #53501−662,Rochester,NY)、回転式振盪プラットフォーム(Scienceware #F37041−0000,Pequannock,NJ)、ピペットエイド(Pipet Aid)(VWRcatalog #53498−103,Rochester,NY)、ピペッター、0.5〜10μL(VWRcatalog #4000−200,Rochester,NY)、ピペッター、100〜1000μL(VWRcatalog #4000−208,Rochester,NY)、ピペッター、2〜20μL(VWRcatalog #4000−202,Rochester,NY)、ピペッター、20〜200μL(VWRcatalog #4000−204,Rochester,NY)、プレートリーダー(Bio−tek Instruments model#Elx800,Winooski,VT)、PURELAB Plus水研磨システム(Water Polishing System)(U.S.Filter,Lowell,MA)、冷却装置、4℃(Forma model#F3775,Marietta,Ohio)。
【0078】
化学物質、試薬および緩衝液−プロスタタグランジンE EIAキットモノクローナル480ウェル(Cayman Chemical Catalog #514010,Ann Arbor,MI)、遠心分離管、50mL、コニカル、滅菌(VWRcatalog #20171−178,Rochester,NY)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Mediatech catalog #10−013−CV、Herndon,VA)、メスシリンダー、100mL(VWRcatalog #24711−310,Rochester,NY)、キムワイプ(KimWipes)(Kimberly Clark catalog #34256、Roswell,GA)、微量遠心管、1.7mL(VWRcatalog #20172−698,Rochester,NY)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech catalog #30−001−CI,Herndon,VA)、0.5〜10μLのピペッターのピペットチップ(VWRcatalog #53509−138,Rochester,NY)、100〜1000μLのピペッター用のピペットチップ(VWRcatalog #53512−294,Rochester,NY)、2〜20μLおよび20〜200μLのピペッター用のピペットチップ(VWRcatalog #53512−260,Rochester,NY)、ピペット、25mL(Becton Dickinson catalog #7551,Marietta,OH)、貯蔵瓶、100mL(Corning catalog #1395−100,Corning,NY)、貯蔵瓶、1000mL(Corning catalog #1395−1L、Corning,NY)、超純水(抵抗=18メガオーム−cm脱イオン水)。
【0079】
一般手順−EIA緩衝液を、EIA緩衝液濃縮物(バイアル#4)の内容物を90mlの超純水で希釈することによって調製した。バイアル#4を、数回リンスして、全ての結晶を確実に除去し、次いで、100mLの貯蔵瓶に入れ、そして4℃で貯蔵した。
【0080】
洗浄緩衝液濃縮物(バイアル#5)を、超純水で1:400に希釈することによって、洗浄緩衝液を調製した。次いで、0.5ml/lのTween 20(バイアル#5a)を(正確な測定のためのシリンジを使用して)添加した。2.5mlの洗浄緩衝液濃縮物、0.5mlのTween−20および997mlの超純水を添加して、1リットルの洗浄緩衝液を調製した。この溶液を、1リットルの貯蔵瓶中、4℃で貯蔵した。
【0081】
プロスタグランジンE標準物質を、以下のようにして再構成した。200μLのピペットチップを、このチップにエタノールを繰返し数回出し入れすることによって平衡化した。このチップを使用して、100μLのPGE標準物質(バイアル#3)を1.7mLの微量遠心管に移した。900μlの超純水を、この管に添加し、そして4℃で貯蔵した。これは、約6週間安定であった。プロスタグランジンEアセチルコリンエステラーゼトレーサーを、以下のようにして再構成した。50mLの遠心分離管中で、100μLのPEGトレーサー(バイアル#2)を30mLのEIA緩衝液と混合し、そして4℃で貯蔵した。
【0082】
プロスタグランジンE2モノクローナル抗体を、以下のようにして再構成した。50mLの遠心分離管中で、100μLのPGE抗体(バイアル#1)を30mLのEIA緩衝液と混合し、そして4℃で貯蔵した。
【0083】
5mLのペニシリン/ストレプトマイシンを500mLのDMEMに添加することによって、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEMを調製し、そして4℃で貯蔵した。
【0084】
プレートを以下のようにして構成した:各プレートは、最低2つのブランク(B)、2つの非特異的結合ウェル(NSB)、2つの最大結合ウェル(B)および二重に実行される8点標準曲線(S1〜S8)を含んだ。各サンプルを、最低2つの希釈物でアッセイし、そして各希釈物を二重に実行した。
【0085】
標準物質を以下のようにして調製した:1.7mLの微量遠心管(8個)を、管1〜8とラベルを付けた。900μLのDMEMを、管1に添加し、そして500μLのDMEMを管2〜8に添加した。100μLのPGE標準物質を、管1に添加し、そして混合した。500mLの溶液を、管1から取り、そして管2に入れ、このプロセスを、管8まで繰り返した。
【0086】
50mLのEIA緩衝液および50μlのDMEMを、NSBウェルに添加した。50μlのDMEMを、Bウェルに添加した。50mLの溶液を、管#8から取り、そして最低の標準物質ウェル(S8)の両方に添加した。50mLを、管#7から取り、そして次の2つのウェルの各々に添加した。これを、管#1まで続けた。(8個全ての標準物質について、同じピペットチップを使用して、新たな標準物質の各々をピペットで吸い上げそして出すことによって、この新たな標準物質の各々におけるチップの平衡化を確実にした)。P200を使用して、各希釈率の各サンプル(50μl)を、サンプルウェルに添加した。
【0087】
12チャネルピペッターを使用して、50μlのプロスタグランジンEアセチルコリンエステラーゼトレーサーを、全活性(TA)ウェルおよびブランク(B)ウェル以外の各ウェルに添加した。12チャネルピペッターを使用して、50μlのプロスタグランジンEモノクローナル抗体を、全活性(TA)ウェル、(NSB)ウェルおよびブランク(B)ウェル以外の各ウェルに添加した。このプレートを、プラスチックフィルム(項目#7)で覆い、そして4℃で18時間インキュベートした。
【0088】
このプレートを以下のようにして発色させた:Ellman試薬の1個の100μLバイアル(バイアル#8)を、50mLの遠心分離管中で、50mlの超純水を用いて再構成した。このバイアルを光から保護し、そして同じ日に使用した。ウェルを、12チャネルピペッターを使用して、洗浄緩衝液で5回洗浄およびリンスした。200mLのEllman試薬を、12チャネルピペッターを使用して、各ウェルに添加し、そして5μlのトレーサーを全活性(TA)ウェルに添加し、次いで、P10ピペットを使用して各ウェルに添加した。このプレートを、プラスチックフィルムで覆い、そして暗室で、60〜90分間回転式振盪機に置いた。
【0089】
このプレートを、405nmと420nmとの間の単一の波長で、Bio−tekプレートリーダーで読みとった。各プレートを読みとる前に、底をキムワイプで拭いた。このプレートは、ウェルの吸光度が0.3から0.8A.U.の範囲にある時に読みとるべきである。ウェルの吸光度が1.5を越えた場合、これらを洗浄し、そして新たなEllman試薬を添加し、そして再び発色させた。
【0090】
(相乗効果および組合せ指数の計算)
クルクミノイドとアンドログラホリド(andrographolide)との間の相乗効果を、CalcuSyn(BIOSOFT、biosoft.com)を使用して評価した。この統計学パッケージは、T−C ChouおよびP.Talaly(Trends Pharmacol.Sci.4:450−454)(本明細書中で参考として援用される)により記載される50パーセント有効法(Median Effect method)を使用して、複数の薬物用量−効果計算を行う。
【0091】
簡単に述べると、これは、最も簡単な予測様式:fa/fu=(C/Cm)mで、「用量」および「効果」を相関させる。ここで、Cは、化合物の濃度または用量であり、そしてCmは、可能性を示す50パーセント有効用量である。Cmは、50パーセント有効プロットのx切片から決定される。試験物質の濃度により影響を受ける因数は、Faであり、そして濃度により影響を受けない部分は、fu(fu=1−fa)である。指数mは、用量−効果曲線のS字形(sigmoidicity)または形状を示すパラメーターである。これは、50パーセント有効プロットの傾きによって推定される。
【0092】
50パーセント有効プロットは、x=log(C) 対 y=log(fa/fu)のプロットであり、そしてChouの50パーセント有効式の対数形態に基づく。この50パーセント有効式に対するデータの適合度は、50パーセント有効プロットの線形相関係数rによって表される。通常、酵素またはレセプター系からの実験データは、r>0.96を有し、組織培養物からの実験データは、r>0.90を有し、そして動物系からの実験データは、r>0.85を有する。
【0093】
試験成分の相乗効果は、組合せ指数(CI)パラメーターを使用して数量化される。Chou−TalalyのCIは、多剤効果に基づき、そして酵素動力学モデルから導かれる(Chou,T.C.およびTalalay,P.(1977)A simple generalized equation for the analysis of multiple inhibitions of Michaelis−Menten kinetic systems.J.Biol.Chem.252:6438−6442)。この式は、相乗効果または拮抗作用ではなく、付加的な効果のみを決定する。しかし、本発明者らは、1983年にChoおよびTalalay(Trends Pharmacol.Sci.(1983)4:450−454)により提案されるように、相乗効果を予測される付加的な効果よりも大きいと規定し、そして拮抗作用を、予測される付加的な効果よりも小さいと規定する。付加的な効果としてのCI=1の指定を使用して、本発明者らは、同じ作用様式を有する相互排除的な化合物について、または全体的に独立した作用様式を有する相互非排除的な薬物について、以下の関係:CI<1,=1および>1(これは、それぞれ、相乗作用、相加性および拮抗作用を示す)を得る。
【0094】
2成分組合せの推定50パーセント阻害濃度を、以下の関係を使用して推定した:
[1/推定IC50]=[A/IC50A]+[B/IC50B]
ここで、A=組合せ中の成分Aのモル画分であり、そしてB=組合せ中の成分Bのモル画分である。
【0095】
表4は、RAW 264.7細胞アッセイにおける、COX−2によるPGE2産生についての、クルクミン抽出物およびホップ抽出物の、観察された50パーセント阻害濃度および推定50パーセント阻害濃度を示す。クルクミン抽出物およびホップ抽出物の10:1の組合せの推定IC50は、1.6μl/mLであったが、観察された値は、0.77μg/mL、または2倍以上大きかった。このレベルの差異は、予想外であり、クルクミン抽出物およびホップ抽出物の1:10の組合せの合わせたCOX−2阻害活性についての新規な所見を構成する。
【0096】
(表4.クルクミンおよびホップ抽出物の処方物(10:1)についての観察および予期された中間阻害濃度)
【0097】
【表4】


クルクミンとホップ抽出物の1:10の組み合わせに対するRAW264.7細胞モデル中のPEG2のCOX−2産生の阻害の統計的分析を表5に提示する。この組み合わせに対するCIは、IC50、IC75およびIC90について、それぞれ、0.490、0.472および0.454であった。これらのCI値は、完全用量応答曲線に亘り、クルクミンとホップ抽出物との間の強い相乗効果を示す。
【0098】
(表5.クルクミンおよびホップ抽出物1:10の処方物についての組み合わせ指数)
【0099】
【表5】


クルクミン単独によるRAW264.7細胞モデル中のCOX−2の中間阻害濃度は、4.01μg/mLであった(表6)。クルクミンによるCOX−1酵素活性の阻害は、10.0μg/mLのIC50で幾分より高かった。ホップ抽出物は、0.21μg/mLのCOX−2によるPGE2阻害のIC50、および6.25μg/mLで推定されたCOX−1酵素阻害のIC50を示し;クルクミン単独のCOX−2特異性は2.5であり、そしてホップ抽出物については、それは29.5であった。クルクミンとホップ抽出物との11の処方物は、17.4の中間COX−2特異性で、48.6〜11.2の範囲のCOX−2特異性を示した。クルクミンとホップ抽出物との組み合わせのすべては、予期せぬことに、COX−2の阻害によりPGE産生を特異的に制限するように設計された薬学的産物に対する最小値として示唆されたわずかな5.0より大きいCOX−2特異性を示した。この発見は、クルクミンとホップ抽出物との組み合わせが、COX−1阻害で観察されるGI副作用なしに強力な抗炎症性処方物として機能し得ることを示す。
【0100】
(6.クルクミン、ホップ抽出物ならびに11のクルクミンおよびホップ抽出物処方物
に対するCOX−2特異性)
【0101】
【表6】


(実施例2)
(外傷後の関節機能の正常化)
食事性補助物質としての本発明の代表的な組成物は、経口処方物、すなわち、以下の組み合わせの1つを供給する錠剤中に存在する:(a)15mgクルクミノイド/kg・日および6.0mgフムロン/kg・日;(b)15mgクルクミノイド/kg・日および6.0mgウプロン(uplons)/kg・日;(c)15mgクルクミノイド/kg・日および6.0mgジヒドロイソフムロン/kg・日。運動または繰り返し運動ストレスに起因する身体外傷後の関節運動の正常化が、2〜10用量の後に生ずることが期待される。この結果は、すべての動物において期待される。
【0102】
(実施例3)
(しゅさ性挫瘡の処置におけるローション処方物の臨床有効性)
以下:(a)0.1重量%クルクミノイドおよび0.5%のフムロン;または(b)0.1重量%クルクミノイドおよび0.5%のルムロンの1つを含むよう設計されたローションを、患者の担当医により診断され、そして独立の広く認定された(board−certified)皮膚学者により確認されるように、しゅさ性挫瘡を示す患者の罹患領域に付与する。罹患した表面領域および赤みを定量する研究の1週間前に、自己評価試験が施与される。さらに、類似の変数が、患者の処置状態を知らない専門の臨床スタッフによりスコアされる。これらの評価を、0、7、14および21日に繰り返す。
【0103】
患者を、試験の開始時に、試験処方物また偽薬にランダムに割り当てる。この試験処方物および偽薬は、1日あたり罹患領域に1または2回付与される。糖尿病、高血圧などの健康状態の処置は、この研究の間許可される。スコアは、4つの観察期間の各々について、試験処方物と偽薬との間で統計的に比較される。ローション処方物中の本発明の組成物で処理された患者は、患者のスコアが、評価される各カテゴリー内で、予備試験されたスコアから20%より大きく改善されるとき、改善されると考えられる。改善を示す人の%を、組み合わせ処方物と偽薬コントロールとの間で比較する。2つの群間の差異は、真実であるときのゼロ仮説を拒絶する確率が5%未満である場合、統計的に有意であると考えられる。
【0104】
(実施例4)
(乾癬の処置におけるローション処方物の臨床的有効性)
組成物が、患者の担当医により診断され、そして独立の広く認定された皮膚学者によりされ確認されるように、乾癬を示す患者の罹患領域に付与することを除いて、実施例3に記載のと同じよう様式でこの実施例を実施する。罹患した表面領域および皮膚状態を定量する研究の1週間前に、自己評価試験が施与される。さらに、類似の変数が、患者の処置状態を知らない専門の臨床スタッフによりスコアされる。これらの評価を、0、7、30および60日に繰り返す。
【0105】
患者を、試験の開始時に、試験処方物また偽薬にランダムに割り当てる。この試験処方物および偽薬は、1日あたり罹患領域に1または2回付与される。糖尿病、高血圧のような健康状態の処置は、この研究の間許可される。スコアは、4つの観察期間の各々について、試験処方物と偽薬との間で統計的に比較される。試験ローション処方物としての本発明の組成物で処理された患者は、患者のスコアが、評価される各カテゴリー内で、予備試験されたスコアから20%より大きく改善されるとき、改善されると考えられる。改善を示す人の%を、試験処方物と偽薬コントロールとの間で比較する。2つの群間の差異は、真実であるときのゼロ仮説を拒絶する確率が5%未満である場合、統計的に有意であると考えられる。
【0106】
(実施例5)
(アルツハイマー病の処置における処方物の臨床的有効性)
実施例2に記載のような経口処方物が、患者の担当医により診断され、そして独立の広く認定された神経学者により確認されるように、アルツハイマー病(AD)の初期段階を示した患者に投与される。臨床試験の2週間前に、患者は、ミニメンタル状態試験(MMSE)、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)、ボストンネーミング試験(BNT)、およびトーケン試験(TT)のような適切な精神神経学的試験を受ける。精神神経学的試験は、臨床試験の0日、6週および3ヶ月で繰り返される。これらの試験は、患者の処置状態を知らない精神神経学者により実施される。
【0107】
患者を、試験の開始時に、試験処方物また偽薬にランダムに割り当てる。この試験処方物および偽薬は、1日あたり1または2回経口摂取される。糖尿病、高血圧などのような状態の処置は、この研究の間許可される。スコアは、3つの観察期間の各々について、試験処方物と偽薬との間で統計的に比較される。処置なしでは、ADの自然の経過は、臨床試験の経過の間は、試験スコアで有意な悪化がある。試験処方物として本発明の組成物で処理された患者は、臨床試験の経過の間に同じままか、または改善する場合、改善されると考えられる。
【0108】
(実施例6)
(結腸癌の処置および予防における経口処方物)
実施例2に記載のような経口処方物が、患者自身の担当医により診断され、そして独立の広く認定された癌学者により確認されるように、結腸癌の初期段階を示した患者に投与される。
【0109】
患者を、試験の開始時に、試験処方物また偽薬にランダムに割り当てる。この試験処方物および偽薬は、1日あたり1または2回経口摂取される。糖尿病、高血圧などのような状態の処置は、この研究の間許可される。内視鏡評価を、1、2、6および12ヶ月で行う。4つのフォローアップ臨床訪問のいずれか1つの間で腫瘍の再出現の証拠は、処置失敗と考えられる。処置失敗の%は、試験処方物と偽薬コントロールとの間で比較される。記載される実験条件の下では、試験物質は、コントロール群に対し腫瘍発生率を低減することが予期される。2つの群間の差異は、真実であるときのゼロ仮説を拒絶する確率が5%未満である場合、統計的に有意であると考えられる。
【0110】
(実施例7)
(過敏性大腸症候群の処置のための経口処方物)
実施例2に記載のような経口処方物が、患者の担当医により診断されるように、過敏性大腸症候群を示した患者に投与される。正常な大腸機能が24時間以内に回復される。
【0111】
(実施例8)
(変形性関節症における関節機能の正常化)
実施例2に記載の組成物を用い、変形性関節症に起因する関節剛直性の正常化が、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸の存在下または不在下で、5〜12用量の後生じる。さらに、この組成物は、伝統的な非ステロイド系抗炎症剤とは異なり、これら2つのプロテオグリカン成分の正常な関節再構築効果を妨害しない。
【0112】
要するに、特定の実施形態は、誘導性COX−2活性の阻害のための組成物であって、COX−1活性に対しては最小の影響を有し、この組成物は、第1の成分として有効量のクルクミノイド種、ならびにα酸種およびβ酸種またはそれら誘導体からなる群から選択される有効量の第2の成分を含む。好ましくは、このクルクミノイド種は、クルクミン、デメトキシクルクミン、またはビスデメトキシクルクミンである。好ましくは、α酸種は、フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソプレフムロン、フルポン、アドフムロン、キサントフモルA、またはキサントフモルBである。好ましくは、β酸種は、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロコルプロンまたはジヒドロイソフムロンである。本組成物の第1または第2の成分は、薬学的等級であり得るか、かつまたは植物(単数または複数)または植物抽出物(単数または複数)に由来し得る。この第1または第2の成分はまた、モノサッカリドまたはジサッカリド、アミノ酸、スルフェート、スクシネート、アセテートまたはグルタチオンのような化合物との結合体に由来し得る。好ましい実施形態の組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に処方され得、そして抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂質、炭水化物、グルコサミン、コンドロイチン硫酸またはアミノ糖のような添加物を含む。
【0113】
その他の実施形態は、好ましい実施形態の組成物の栄養補助の方法を含み、炎症の症状を患う動物中の症状を低減する。この組成物は、上記投与が、約0.001〜約30.0mg/kg体重/日の各クルクミノイド種、および約0.5〜約20.0mg/kg体重/日のα酸種またはβ酸種を提供するような投薬形態で処方される。この組成物は、約0.1〜約50μMの各クルクミノイド種、および約0.001〜約50μMの各α酸種またはβ酸種の血清濃度を維持するに十分な量で投与される。動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、トリ、爬虫類、両生類、ウマまたは反芻動物であり得る。投与は、経口送達系、非経口送達系、局所送達系、経皮系または経粘膜送達系であり得る。
【0114】
従って、教示される種々の処方物の中で、第1の成分としてのクルクミノイド、およびα酸およびβ酸からなる群から選択される第2の成分を含む処方物が開示されている。これらの組み合わせは、生物学的因子または未知の病因に起因する、物理的または化学的損傷あるいは異常免疫刺激に応答する相乗的抗炎症性効果を提供し得る。自明な性質の種々の変更および改変が、本発明の意図から逸脱することなくなされ得、そしてすべてのこのような変更および改変が、添付の請求項により規定されるような本発明の範囲内に入ると考えられることは当業者に容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−93918(P2011−93918A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291333(P2010−291333)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【分割の表示】特願2003−537576(P2003−537576)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(503465937)メタプロテオミクス, エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】