説明

シクロオレフィンオリゴマーを含む装飾材料

本発明は、技術的性質、特に光学的性質は、装飾材料として優れた適性によって装飾材料として優れた材料に関する。前記材料はシクロオレフィンオリゴマー、特に、高い屈折率及び高いアッベ数を特徴とするシクロオレフィンホモオリゴマー及びシクロオレフィンコオリゴマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その技術的性質、特にその光学的性質のために装飾材料として優れた適性を備えた材料に関する。該材料は、オリゴマー性シクロオレフィン、特にシクロオレフィンホモオリゴマー及びシクロオレフィンコオリゴマーを含む。これらの特徴は、高い屈折率及び高いアッベ数にある。
【背景技術】
【0002】
装飾材料は、通常、人が魅力的と感じる材料の中に見出される。こうした魅力は、その形状、あるいは色、曇り度、透明度、反射率、光沢値などの光学的性質に由来することが多い。一例として、人はクラッシュガラスに引き付けられる。特にそれが着色されていればなおさらである。従って、今日ではクラッシュガラスは、必要に応じて着色されて、装飾材料として市場で大成功を収めている。
【0003】
多くのプラスチックは、ガラスと同様、大部分非晶質で、固化溶融物のような挙動を示す。もし、高透明度、高屈折率、及び高アッベ数などのその他の性質も併せ持つならば、これらのプラスチックは装飾材料としての使用に理想的な適性を備えている。
【0004】
具体例を挙げると、アクリル板又はポリカーボネートからなる装飾材料であって、例えば比較的大きいダイヤモンド又は比較的大きい宝石の形態のものが既に開示されている。これらの材料の従来の特徴は、高透明度又はほとんど無色、及び高密度である点にあるが、一方でそれらの溶融物は、射出成形用及びホイル用の構造材料を基材としているため、非常に高強度であるという欠点も有している。それらは所望の形状に変換するために射出成形機を通じて加工する必要がある。これは、単位時間あたりの生産量が極めて低いため第一に手間がかかり、第二に高価である。別の欠点は、これらの材料のオリゴマーがその毒性のために限界値を設定されていることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低コストで製造容易、非毒性の、例えば液滴形状の透明装飾材料に対する需要は依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに本発明はこの装飾材料を提供する。そこで、本発明は、屈折率nが好ましくは1.50〜1.60、特に好ましくは1.52〜1.55、なお特に好ましくは1.5435(いずれも25℃で測定)で、アッベ数が好ましくは50〜60、特に好ましくは52〜58、なお特に好ましくは56のシクロオレフィンホモオリゴマー又はコオリゴマーを含む装飾材料を提供する。
【0007】
シクロオレフィンコオリゴマーは、少なくとも一つの環状オレイフィンモノマー及び少なくとも一つの非環状オレフィンモノマーを含むオリゴマーである。シクロオレフィンホモオリゴマーは、同一又は異なる環状オレフィンモノマーを含むオリゴマーである。
【0008】
適切なモノマー性シクロオレフィンは、式I、II、III、IV、V、又はVI:
【0009】
【化1】

【0010】
のものである。上記式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、同一又は異なっており、互いに独立して、水素原子又はC−C30炭化水素基であるか;又はR1〜R8の2個以上の基は互いに環状に結合している。異なる式の同一(番号)の基は同じでも異なっていてもよい。好適なC−C30炭化水素基の例は、直鎖又は分枝C−C30アルキル基、C−C18アリール基、C−C20アルキレンアリール基、又は環状C−C20アルキル基、又は非環状C−C20アルケニル基である。
【0011】
使用できるその他のシクロオレフィンは、式VII:
【0012】
【化2】

【0013】
の単環式オレイフィンである。式中、nは2〜10の数である。
適切な非環状オレフィンは、式VIII:
【0014】
【化3】

【0015】
のものである。上記式中、R9、R10、R11、及びR12は、同一又は異なっており、互いに独立して、水素原子又はC−C10炭化水素基、例えばC−Cアルキル基又はC−C14アリール基である。
【0016】
本発明の目的のために特に適切なシクロオレフィンコオリゴマーは、コモノマーとして式I〜VIの少なくとも1個のシクロオレフィンと式VIIIの少なくとも1個の非環状オレフィンを含有するものである。ここでは、合計2〜20個の炭素原子を有するような非環状オレフィンVIIIが好適であり、特に好適なのは、2〜10個の炭素原子を有する非分枝の非環状オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、及び/又はブチレンである。オリゴマー中の式VIIIの非環状オレフィン単位の割合は、それぞれのシクロオレフィンコオリゴマーの総重量を基にして99重量%まで、好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜60重量%である。
【0017】
前述のシクロオレフィンホモオリゴマー及びシクロオレフィンコオリゴマーの中で、特に基本骨格となるノルボルネン構造を有する多環式オレフィン単位を含有するものが好適であり、ノルボルネン又はテトラシクロドデセンを含有するものが特に好ましい。非環状オレフィン、特にエチレンの単位を含有するシクロオレフィンコオリゴマーも特に好適である。また、特に好適なのは、5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%のエチレン単位(コオリゴマーの重量に基づき)を含有するノルボルネン−エチレンコオリゴマー及びテトラシクロドデセン−エチレンコオリゴマーである。また、これらの中でとりわけ非常に好ましいのはノルボルネン−エチレンコオリゴマーである。
【0018】
本発明によれば、オリゴマーは、2個以上のモノマー単位を含むが、まだポリマーとはみなされない材料のことである。このことは、絡み合い長(例えば、Ferry:“Viscoelastic properties of Polymers(ポリマーの粘弾性)”,Wiley 1980,pp.247以下参照)が、鎖内で連結しているモノマーの数に上限を画することを意味する。
【0019】
いわゆる臨界分子量M(絡み合い点間分子量Mの2倍の長さに相当する)未満の領域において、オリゴマーはニュートン流れの挙動を示す。このことは、分子量の対数、log Mがゼロ剪断粘度の対数、log ηに傾きm=1で正比例していることを意味する。臨界分子量Mの対数、log Mより上では比例定数mの値は3.4である。
【0020】
本発明に従って使用されるモノマーの場合、特にノルボルネン及びエチレンモノマーの場合、絡み合い長はM=2×M=10000g/モル、好ましくはM=2×M=8500g/モル、特にM=2×M=7200g/モルである。本発明のシクロオレフィンコオリゴマーは、モル質量5000g/モル、好ましくは4250g/モル、特に好ましくは3600g/モル(CHCl中35℃でゲル透過クロマトグラフィーGPCによる測定)によって説明することもできる。式中、Mは臨界分子量、Mは絡み合い点間分子量である。
【0021】
シクロオレフィンコオリゴマーの極限粘度数[η]が≦25、好ましくは≦20、特に≦18の範囲であれば(デカリン中135℃でISO 16289又はDIN 53728による測定)、球状の装飾材料の製造にとって好都合である。絡み合い長がM=2×M>10000g/モルを上回り、又は分子量が5000g/モルを超えると、溶融材料から液滴を形成することは不可能になる。液滴を形成しようとするとフィラメント化し、ポリマー溶融物がフィラメント上にさらに付着して、いわゆる“ビーディング(beading)”をもたらす結果となる。他方、絡み合い長がM=2×M=6000g/モルを下回るか、又はモル質量が3000g/モルを下回ると、ポリマー溶融物の粘度が非常に低くなるので均整のとれた形状の液滴ではなく、より細長い構造体が形成される。
【0022】
特別な装飾効果のために、シクロオレフィンホモオリゴマー又はシクロオレフィンコオリゴマーのポリマービーズの密度が1.0g/cm3をごくわずかに下回ることが有利であることが分かっている。好都合なのは0.99〜1.00g/cm3の範囲、好ましくは0.95〜1.00g/cm3、特に0.90〜0.99g/cm3である。これにより、浮かび、高光沢及び高屈折力を有するビーズの提供が可能になる。ポリエチレン及びポリプロピレンのような他のプラスチックの密度も同様に1.00g/cm3未満であるが、それらは適当な光沢又は高屈折率を備えていない。ポリカーボネート又はポリメチルメタクリレートのような他の材料の密度はとても高いので、該材料から密度1.00g/cm3未満の装飾ビーズを製造することはできない。しかしながら、装飾ビーズをシクロオレフィンホモオリゴマー又はシクロオレフィンコオリゴマーから製造すると、プロセス条件に応じて1.00g/cm3付近の様々な密度を得ることが可能である。
【0023】
シクロオレフィンオリゴマーは、様々な文献に記載されているように、有機金属化合物を用いて不均一又は均一触媒作用によって都合よく製造される。チタン化合物又はバナジウム化合物を有機アルミニウム化合物と組み合わせてなる混合触媒に基づく適切な触媒系がDD 109 224、DD 237 070、及びEP−A−0 156 464に記載されている。EP−A−0 283 164、EP−A−0 407 870、EP−A−0 485 893、及びEP−A−0 503 422には、本発明の装飾材料の製造に特に好適な、可溶性メタロセン錯体に基づく触媒を用いたシクロオレフィンコポリマー(COC)の製造が記載されている。有機アルミニウム化合物を用いる重合反応中、適当な分子量を得るために、鎖長の増加を粘度測定によってモニタし、臨界分子量Mに達したら、水素を添加して重合反応を調節又は停止させる。
【0024】
得られたシクロオレフィンオリゴマーの際立った特徴は、1〜10%、好ましくは2〜8%、特に好ましくは3〜6%という非常に低い曇り度(ISO 14782による測定)である。それらの透明度/光の透過率(DIN EN ISO 13468−1による測定)は、90〜99%、好ましくは92〜98%、特に好ましくは94〜97%であり、それらの光沢値(DIN EN ISO 2813による測定)は、85〜140%、好ましくは90〜135%、特に好ましくは95〜130%である。それらの屈折率n(DIN EN ISO 489による測定)は、1.50〜1.60、特に1.52〜1.55、特に好ましくは1.5435であり、それらのアッベ数(DIN EN ISO 489による測定)は、50〜60、特に52〜58、特に好ましくは56である。
【0025】
シクロオレフィンオリゴマーを含む本発明の装飾材料は、任意の所望の形状、例えば球状、円筒状、又は層状を取ることができる。特に好ましいのは、例えば液滴形又は扁平球形などの球形である。これらの形状を製造するには、シクロオレフィンオリゴマーと必要に応じて色素又は色素マスターバッチを例えば押出機の中で溶融し、次に例えばコンベヤベルト上に液滴形状で塗布するか又は散らばらせる。ストランド又はシートを製造する場合、シクロオレフィンオリゴマーを、例えば穿孔ダイ又はスロットダイを通して押出し、取り出せばよい。
【0026】
使用するシクロオレフィンオリゴマーの密度が1.0g/cm3をごくわずかに上回る場合、すなわち水の密度をごくわずかに上回る場合、すなわち1.0〜1.02g/cm3の場合、様々な冷却条件によって液滴内の空胞を“凍結”できるので、得られた液滴(球形又は扁平球形)の全体密度をごくわずかに下げることができる。得られた製品の密度は1.0周辺で変動するか、又は1.0g/cm3未満となり、結果的に得られた装飾材料を水に加えると、液滴密度に応じて、材料の一部は浮かび、別の一部分は水中に浮遊し、さらに別の一部分は沈む。
【0027】
本発明の装飾材料は、例えばガラス製花瓶の充填材として、天然及び合成装飾材料、例えば着色砂、カーネーション、アルミニウムの削り片、コケ、ドライフラワー及び/又は生花又はフラワーアレンジメント、草などと組み合わせて使用できる。
【0028】
請求の範囲に記載されている装飾材料は、ショーウィンドウに陳列する人目を引く材料として、又はテーブル装飾用のディスプレイ材料としても使用できる。装飾材料のその他の用途は、ロウソク(好ましくは“ナイトライト(常夜灯)”の形態)を入れる容器の充填材である。請求の範囲に記載された、本明細書のシクロオレフィンオリゴマーを含む装飾材料の利点は、燃焼区分規則のDIN 4102−1による建築材料分類B1及びB2に従い、溶融物が建築材料分類B2(DIN 50050−1による燃焼ケース内での端部着火性)に適合するだけでなく、建築材料分類B1の要件をも充足することであり、従って難燃性であることである。
【0029】
シクロオレフィンオリゴマー又はシクロオレフィンコオリゴマーを含む装飾ビーズを球形又は扁平球形もしくは楕円体で使用する場合にみられる一つの性質は、周辺光、あるいは指向性又は非指向性光源からの光がそれらの表面に集束するため、光の増幅がもたらされることである。この作用は、光源の位置が焦点と凹面鏡表面の間にある場合の凹面鏡のそれと類似している。従って、拡大された虚像が生じる。
【0030】
試験法
以下の試験法を用いて製品の性質を測定した。
絡み合い度の決定
低分子量の線状オリゴマー/ポリマーのゼロ剪断粘度の依存性は二つの領域に分けられる。
<Mの場合、η∝M
>Mの場合、η∝M3.4
ここで、M=重量平均分子量、M=臨界分子量
分子量が臨界分子量Mより大きいポリマーは絡み合いが可能なので、その結果として粘度の分子量依存性は非常に高い。
【0031】
次に、log Mを両対数グラフでlog ηに対してプロットすると(すなわち、重量平均分子量の対数をゼロ剪断粘度の対数に対してプロットすると)、比較的低い値の領域ではlog Mとlog ηとの間に正比例の関係がある。これはポリマー溶融物のニュートン領域であり、オリゴマーに起因する。臨界分子量を超えると、オリゴマーの絡み合いが始まり、その時点からポリマーと呼ばれる。そこでは、log Mのlog ηに対するプロットの傾きは3.4になる。
【0032】
従って、臨界分子量は、異なる重量平均分子量を対応するゼロ剪断粘度に対してプロットすることによって決定できる。結果は、低い分子量領域で傾きmが1のプロットと高分子量領域で傾きmが3.4のプロットが得られる。臨界分子量Mは2本の直線が交わる点である。
【0033】
極限粘度数の決定
濃度に対する粘度の微分係数は、一般化シュタウディンガーインデックス{η}と呼ばれている。すなわち、δlnη/δc={η}である。シュタウディンガーインデックスは、c→0(無限希釈極限)及びγ/δs→0(無限小剪断速度極限)の極限値を求めることによって得られる。分かりやすく表現すれば、無限希釈溶液中の1グラムのポリマーから形成されるもつれ構造が占める体積である。
【0034】
【数1】

【0035】
式中、[η]はml/gで表され、c=溶液中のオリゴマー濃度である。
シュタウディンガーインデックス(極限粘度数)は極限値に関するので、決定法には換算粘度が使用される。これ(換算粘度)を様々な濃度で決定し、実験式の助けを借りてc=0に外挿することができる。
【0036】
シュタウディンガーインデックスは細管粘度計で測定される。ごく少量のオリゴマー又はポリマーをCHCl中に一連の濃度で溶解し、この溶液が細管粘度計を通過するのに要する時間を測定する。これらの時間から純溶媒のフロー時間を差し引く。フロー時間表はこのために必要な粘度を与える。これを溶液中のオリゴマー濃度で割って濃度に対してプロットする。この一連の濃度を0に外挿してシュタウディンガーインデックスを得る。
【0037】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0038】
実施例
シクロオレフィンコオリゴマーの製造
テトラシクロドデセン−エチレンコオリゴマー及びノルボルネン−エチレンコオリゴマーの製造
(停止反応は反応溶液をアセトンで処理することによって行い、エチレン/ノルボルネンの配合率は水素含有量によって調節する)。
【0039】
テトラシクロドデセン(TCD)又はジシクロペンタジエン(DCPD)のトルエン中溶液600cm3を1.5dm3のオートクレーブ(エチレンで適切に予備パージされている)にまず装入する。5cm3のトルエン中メチルアルミノキサン溶液(Crompton;10%力価、凝固点降下法で測定したモル質量1000g/モルのメチルアルミノキサン溶液の重量に基づく)を向流で反応容器(適切に準備されている、すなわち事前に排気し、大気中の水分を除去してある)に量り入れ、混合物を70℃で10分間撹拌する。次にこの溶液を、何回かの圧力調節を通じて、エチレン又はエチレンと5%水素との混合物で飽和させる。次に、10cm3のトルエン中メチルアルミノキサン溶液中の0.004mmolメタロセン錯体[MeC(Ind)]ZrCl溶液を15分間の活性化時間後に加える。活性化は2つの成分の相互の化学反応によって起こる。オリゴマー化は、7リットルのエチレンの完全に消費されるまで撹拌(750rpm)によって実施する。エチレンの圧力は補充配量によって維持し、温度も70℃に維持する。
【0040】
反応時間終了後、溶液を容器に入れ、直ちに5dm3のアセトンで処理し、10分間撹拌する。次に沈殿したシクロオレフィンコオリゴマーをろ過によって単離する。ろ過ケーキを3回に分けて10%力価HCl溶液とアセトンで交互に洗浄し、残渣をアセトンでスラリー化し、再ろ過する。得られた精製オリゴマーを減圧(0.2バール)下、45℃で15時間乾燥する。
【0041】
オリゴマーの性質:上記の方法により、ガラスのように透明で、分子構造又はエチレンとノルボルネンの配置のために完全に非晶質のオリゴマーが得られる。これは、シクロオレフィンオリゴマーがいかなる結晶格子も持たず、従って結晶性の成分も全くないことを意味する。それは凝固してガラス性の材料となり、ガラス転移温度として知られる温度を超えて加熱することにより再度液化できる。温度がガラス転移温度未満に降下すると、シクロオレフィンオリゴマーは再凝固して高透明及び高光沢のガラス性材料になる。
【0042】
装飾材料の製造
実施例1のTCDオリゴマーをサンドビック社(ドイツ、フェルバッハ)が開発したロートフォームプロセス(Rotoform process;図1参照)によって粒状物に加工した。
造粒プロセスはサンドビック社のロートフォーム液滴形成装置(1)からなる。この装置では液状のオリゴマー溶融物が連続循環スチールベルト(2)に供給される。冷却水(3)をスチールベルトの裏面に噴霧すると、得られた最適な熱交換によって急速な液滴(droplet)の凝結が起こる。このプロセスによって、溶融生成物は直接ペレット(pellet)及びタブレット(pastille)に成形されるので、微粉砕又は磨砕が完全に不要になる。これによってコストが削減され、粉塵や騒音による環境汚染が防止される。
【0043】
サンドビックスチールベルトの冷却装置の連続運転によって間接的熱交換が提供されるので、オリゴマー溶融物も冷却水も汚染されない。従って水は容易に廃棄したり系に戻すことができる。これらのプラントで製造された粒状物は耐摩耗性が高いので、作業環境は高処理量でも容易に無塵状態に保たれる。従って、排気をクリーニングするための対策が全く不要である。
【0044】
従って、このシステムは、簡素なプロセス技術、高効率、優れた製品品質、及び最小限の環境汚染の組合せを提供する。
異なる密度のこれらの装飾ビーズを製造するには、冷却条件を的確に制御することが必要である。1.00g/cm3を上回る密度の装飾ビーズを得たい場合、溶融物をガラス転移温度として知られている温度未満に冷却するように冷却プロセスを制御しなければならない。シクロオレフィンオリゴマーのガラス転移温度は、60〜70℃、好ましくは62〜68℃、特に好ましくは65℃である。
【0045】
溶融物の急冷又は凝固は冷却速度によって制御できる。これらは、溶融物の温度と冷却水の温度の差及び滞留時間の関数である。溶融物は、外側すなわちオリゴマー液滴と外気又はスチールベルトとの間の界面から内側に向かって冷却されるので、シクロオレフィンオリゴマー溶融物の収縮により、冷却速度に応じて様々なサイズの空胞が形成される。装飾ビーズの全体密度は空胞のサイズによって制御できるので、一部の装飾ビーズの密度を1.02g/cm3にすることは可能である。つまりそれらは空胞を持たないので、例えば水中に沈む。また一部のビーズの密度を正確に1.00g/cm3にした場合、それらは例えば水中に浮遊する。また一部のビーズの密度を低く、1.00g/cm3未満にした場合、それらは例えば水面に浮かぶ。
【0046】
装飾ビーズ製造のために材料をロートフォーム装置に供給する場合、溶融物のストリームを合成反応器から排出するか、又は予め調製したシクロオレフィンオリゴマーをスタティックミキサ又は押出機に導入し、溶融して加熱溶融ラインを通じてロートフォーム装置に送り込む。ここで重要なことは、まず溶融物が均一に溶融されていること、次に溶融物がガスを含んでいないことである。スタティックミキサの場合、これは溶融物を減圧することによって達成される。押出機の場合、この装置自体が運搬方向に対して溶融物を圧縮することによる脱ガスを提供する。合成プラントを介して材料を供給する場合、プロセス条件に基づき、溶融物中にガスは全く存在しない。
【0047】
溶融物にガスが混入していると、空気とオリゴマー溶融物の密度の違いによって、ロートフォーム装置での装飾ビーズ成形時に非常に小さい気泡が形成される。これは特に溶融物の表面に優先的に形成されるのでビーズの光沢を損なう。なぜならば、気泡が非常に小さいサイズのため高度の光散乱が生ずるからである。このタイプの装飾ビーズは、気泡のない溶融物のそれと比べて曇っているとみなされる。驚くべきことに、内部に形成されうる何らかの空胞は装飾ビーズの光沢を妨害するのではなく、さらに興味深い屈折反射効果も提供する。
【0048】
溶融物中への何らかのガス、特に酸素の封入を防止する別の理由は、シクロオレフィンオリゴマー中のモノマーに対して起こり得る酸化的攻撃を回避するためである。酸化的攻撃を受けると酸化的分解によって望ましくない黄色〜褐色の着色が生じ得る。
【0049】
オリゴマー溶融物の温度は150〜300℃、好ましくは180〜280℃、特に好ましくは200〜260℃である。これらの温度における溶融物の極限粘度数は15Pas以下、好ましくは12Pas以下、特に好ましくは10Pas以下である。製造条件は、溶融物が大きい液滴を形成するに十分な程度の高い粘度を有すると同時に、溶融物をサンドビックベルト上に広げたときに溶融物がフィラメント化するのを回避するに十分な程度の低い粘度を有するように選ばれる。冷却水の温度は、シクロオレフィンオリゴマーが適当な造形及び硬化を受けるために、シクロオレフィンオリゴマーのガラス転移温度より少なくとも低くなければならない。さらに、サンドビックベルト上の滞留時間も、オリゴマー溶融物がガラス転移温度未満に冷却するのに十分な程度に長くなくてはならない。なぜならば、そうしなければ装飾ビーズが袋詰め又は包装時に互いにくっつき合う危険性があるからである。用途にとって重要なシクロオレフィンホモオリゴマー又はシクロオレフィンコオリゴマーの性質の一つは、凝固後粘着性でないこと、従ってファンデルワールス力又はその他の接着力によって互いにくっつかないことである。冷却水に必要とされる冷却温度は、5〜70℃の限度内で変動する。好ましくは10〜25℃、特に好ましくは15〜20℃である。
【0050】
装飾ビーズの形状及びサイズは、溶融物の供給量、ベルトスピード、溶融物の温度、そしてまた冷却速度又は溶融物と冷却水との温度差、さらに滞留時間によって変動し得る。例えば、ほとんど完全な球形の装飾ビーズは、適切な条件下、すなわち比較的低い溶融物温度、遅いベルトスピード、少量〜中程度の量の溶融物、高レベルの向流冷却といった条件下で製造できる。溶融物温度が非常に高く、ベルトスピードが高く、溶融物の量が多く、向流冷却がごくわずかの場合、得られるのは比較的長い楕円体の装飾ビーズである。
【0051】
装飾ビーズの軸a:b:cの比は、1:1:1(理想的球形)〜10:1:1又は1:10:1又は1:1:10(楕円体形)の限度内で変動しうる。プロセスによって、球形からのずれは生じうる。なぜならば、溶融物は冷却ベルトに付着しており、それが溶融状態にある初期にはそれ自体の重量によって冷却ベルトに直接接触している側に重力がかかるため、何らかの平坦化が起こりうるからである。平坦化は、ロートフォーム装置のベルトの冷却温度が特に低い場合にも促進される。その場合、このベルトに対しては特に高レベルの熱移動がある一方で、周囲空気への熱移動は、オリゴマー溶融物も空気も良好な熱伝導性を持たないため、比較的少ない。従って、溶融物は相の境界ではベルト方向よりもゆっくり冷却するので、溶融物の連続的な流動を促進する。これは、冷却ベルト上にある装飾ビーズを取り囲む空気を追加的に冷却することによって防止又は制御することができる。
【0052】
得られた装飾材料の性質
モル質量M=3700g/モル(CHCl中35℃でGPCにより測定)の、エチレンとノルボルネンを含むシクロオレフィンコオリゴマーを使用した。装飾ビーズの製造条件は以下のように選択した。
【0053】
実施例1:
合成反応器からサンドビックベルトに供給されるオリゴマー溶融物の処理量は、ベルトあたり1時間につき1.5メートルトンに調節された。溶融物の温度は190℃で、パイプの温度は225℃であった。冷却ゾーン1は7m3/hの水処理量で10℃に調節され、冷却ゾーン2も同様に12m3/hの水処理量で10℃に調節され、空冷は20℃及び5000m3/hに調節された。滴下の頻度はベルトスピードの65%に調整された。サンドビックベルト上の滞留時間は約30秒であった。
【0054】
実施例2:
合成反応器からサンドビックベルトに供給されるオリゴマー溶融物の処理量は、ベルトあたり1時間につき1.5メートルトンに調節された。溶融物の温度は180℃で、パイプの温度は215℃であった。冷却ゾーン1は10m3/hの水処理量で7℃に調節され、冷却ゾーン2も同様に18m3/hの水処理量で7℃に調節され、空冷は10℃及び5000m3/hに調節された。滴下の頻度はベルトスピードの75%に調整された。サンドビックベルト上の滞留時間は約60秒であった。
【0055】
実施例3:
合成反応器からサンドビックベルトに供給されるオリゴマー溶融物の処理量は、ベルトあたり1時間につき1.5メートルトンに調節された。溶融物の温度は185℃で、パイプの温度は220℃であった。冷却ゾーン1は8.5m3/hの水処理量で8.5℃に調節され、冷却ゾーン2も同様に15m3/hの水処理量で10℃に調節され、空冷は15℃及び5000m3/hに調節された。滴下の頻度はベルトスピードの70%に調整された。サンドビックベルト上の滞留時間は約45秒であった。
【0056】
装飾ビーズの性質:
【0057】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】粒状化ペレット製造のためのサンドビックプロセスを示すダイヤグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率n(25℃)が1.50〜1.60で、アッベ数が50〜60のシクロオレフィンコオリゴマーを含む装飾材料。
【請求項2】
オリゴマーが、少なくとも一つの環状オレイフィンモノマー及び少なくとも一つの非環状オレフィンモノマーを含む、請求項1に記載の装飾材料。
【請求項3】
シクロオレフィンコオリゴマーが、ノルボルネン−エチレンコオリゴマー又はテトラシクロドデセン−エチレンコオリゴマーである、請求項1又は2に記載の装飾材料。
【請求項4】
オリゴマーの絡み合い長がM=2×M=10000g/モルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項5】
シクロオレフィンコオリゴマーのモル質量が5000g/モル未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項6】
シクロオレフィンコオリゴマーの平均鎖長が2×Mより小さい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項7】
シクロオレフィンコオリゴマーの極限粘度数[η]が15≦[η]≦25の範囲にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項8】
シクロオレフィンコオリゴマーの密度が0.95〜1.05g/cm3である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項9】
シクロオレフィンコオリゴマーの曇り度が1〜10%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項10】
シクロオレフィンコオリゴマーの透明度が90〜99%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項11】
シクロオレフィンコオリゴマーの光沢値が85〜140%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項12】
球状、円筒状、又は層状である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装飾材料。
【請求項13】
請求項1に記載の装飾材料の製造方法であって、シクロオレフィンコオリゴマーを溶融し、それらを溶融状態で所望の形状に変換し、その後にそれを冷却することを含む前記方法。
【請求項14】
請求項1に記載の装飾材料の製造方法であって、シクロオレフィンコオリゴマーを溶融し、それらを溶融状態で所望の形状に変換し、そして次に装飾ビーズに顕著な収縮が生じるようにサンドビックベルトを用いてそれらを冷却し、その結果装飾ビーズの密度が1.00g/cm3未満となるようにすることを含む前記方法。
【請求項15】
請求項1に記載の装飾材料を二つ以上含む混合物であって、装飾材料の少なくとも一部分の密度が1.0g/cm3を上回り、別の部分の密度が1.0g/cm3等しい及び/又はそれを下回る前記混合物。
【請求項16】
花瓶の充填材料、ショーウィンドウのディスプレイ材料、又はテーブル装飾材料としての請求項1に記載の装飾材料の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−511651(P2007−511651A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540286(P2006−540286)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012962
【国際公開番号】WO2005/049677
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506168679)トパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】