説明

シクロオレフィンポリマー成形用ペレット、その製造方法、及び成形品

【課題】 機械的強度と靭性に優れた成形品を与えるために長繊維に樹脂成分が充分に含浸されたペレット、その製造方法、そのペレットを成形した成形品を提供する。
【解決手段】 シクロオレフィンポリマーと長繊維とを含んでなるシクロオレフィンポリマー成形用ペレット、および該ペレットを成形してなるシクロオレフィンポリマー成形品。該ペレットは、シクロオレフィンモノマーとメタセシス重合触媒とを含んでなる重合性組成物を連続繊維に含浸させ、重合してシクロオレフィンポリマー含有連続繊維を製造する工程、該シクロオレフィンポリマー含有連続繊維を所定長さに切断する工程を含んでなる製造方法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンポリマーと長繊維を含んでなるペレット、その製造方法及びその成形品に関し、さらに詳しくは、機械的強度と靭性に優れるシクロオレフィンポリマー成形品、及びそれを与える成形用ペレットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィンの強度を向上させるための手段として、ガラス繊維等の強化繊維を配合することが知られており、一般には、ポリオレフィンとチョップドストランド等の短繊維を混合して押し出すことによりペレットを製造し、そのペレットを用いて成形することにより繊維強化されたポリオレフィン樹脂成形品が製造されている。かかる方法によれば、高い機械的強度を有するポリオレフィン樹脂の成形品が極めて容易に得られるという利点を有する。しかしながら、近年、樹脂に対してさらに高度の機械的強度と靭性が求められる傾向がある。このため、強化繊維として長繊維を用いることが考えられるが、長繊維とポリオレフィン樹脂とを押出機で混練して押し出そうとすると、長繊維の折損が避けられない問題があった。
【0003】
これに対し、かかる問題点を改善し、繊維の折損を起こすことなく長繊維で強化されたペレットを製造する方法として、プルトルージョン成形法が注目されてきている。この方法は、基本的には連続した強化繊維を引きながら熱可塑性樹脂を溶融含浸させた後に、賦形ダイを通してストランドを引き取り細断してペレットを製造するものである。例えば、特許文献1には、不飽和カルボン酸等で変性したポリオレフィンを用いて含浸しペレットを製造する方法、特許文献2には、ポリエチレンナフタレート繊維を組み合わせるポリオレフィン樹脂組成物を含浸しペレットを製造する方法、特許文献3には、全芳香族ポリエステルを組み合わせるポリオレフィン樹脂組成物を含浸しペレットを製造する方法などが開示されている。しかしながら、これらの方法では、樹脂成分の連続繊維への含浸性や密着性が充分でなく、得られるペレットを用いて成形した成形品は、機械的強度や靭性が十分でない問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平3−121146号公報
【特許文献2】特開2006−8995号公報
【特許文献3】特開2006−29117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機械的強度と靭性に優れた成形品を与えるために長繊維に樹脂成分が充分に含浸されたペレット、その製造方法、そのペレットを成形した成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマーと特定の重合触媒とを含んだシクロオレフィンモノマー中心の重合性組成物を連続繊維に含浸した後に重合し、次いで細断してペレットを得ることにより、長繊維に十分にシクロオレフィンポリマー成分が含浸したペレットが得られること、また該ペレットを成形すると充分に機械的強度と靭性に優れる成形品が得られることを見出した。また、重合性組成物に連鎖移動剤を配合させると、より連続繊維への含浸性と成形性に優れたペレットが得られることを見出した。また、連続繊維が炭素繊維の場合は重合性組成物の連続繊維への含浸性がより向上することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
かくして本発明によれば、シクロオレフィンポリマーと長繊維とを含んでなるシクロオレフィンポリマー成形用ペレットが提供される。
また、シクロオレフィンモノマーとメタセシス重合触媒とを含んでなる重合性組成物を連続繊維に含浸させ、重合してシクロオレフィンポリマー含有連続繊維を製造する工程、該シクロオレフィンポリマー含有連続繊維を所定長さに切断する工程を含んでなるシクロオレフィンポリマー成形用ペレットの製造方法が提供される。
前記シクロオレフィンポリマー含有連続繊維を製造する工程は、プルトルージョン法で行なわれるものであることが好ましい。
前記重合性組成物は、連鎖移動剤を含むものであることが好ましい。
前記連続繊維は、炭素繊維であることが好ましい。
さらに本発明によれば、前記シクロオレフィンポリマー成形用ペレットを成形してなるシクロオレフィンポリマー成形品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シクロオレフィンポリマー成分が長繊維に充分に含浸され且つ密着されたペレットが容易に得られること、また、該ペレットを成形することにより機械的強度に優れるシクロオレフィンポリマー成形品が容易に製造することができる。また、本発明のシクロオレフィンポリマー成形品は、機械的強度に優れるため、自動車や航空機などの乗物用構造体、スポーツ用途、及び土木、建築などの一般産業分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(シクロオレフィンポリマー)
本発明のシクロオレフィンポリマー成形用ペレット(以下、単に「ペレット」ということがある。)は、シクロオレフィンポリマーを含む。シクロオレフィンポリマーとしては、公知のシクロオレフィンモノマーの重合体を格別な限定がなく用いることができる。具体的には、シクロオレフィンモノマーの開環重合体、シクロオレフィンモノマーの付加重合体、シクロオレフィンモノマーと鎖状オレフィンとの付加共重合体、およびこれらの水素化物が挙げられる。
【0010】
シクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その例として、ノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーとしては、格別な限定はないが、例えば、2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、フニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシクロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの 七環体、及びこれらのアルキル置換体(メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体など)、アルキリデン置換体(例えば、エチリデン置換体)、アリール置換体(例えば、フェニル、トリル置換体)、並びにエポキシ基、メタクリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン基、エーテル基、エステル結合含有基などの極性基を有する誘導体などが挙げられる。
【0011】
単環シクロオレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィン及び置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
シクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
【0013】
(長繊維)
本発明のペレットは、長繊維を含む。長繊維の種類としては、格別な制限はなく、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維などが挙げることができる。これらの中でも、有機繊維、ガラス繊維、あるいは炭素繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。特に、炭素繊維は、シクロオレフィンポリマーとの相性がよく機械強度、強靭性及び耐熱性に優れる成形品が得られるので好適である。
【0014】
本発明に使用される長繊維の強度特性は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択される。引張強度としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張強度で、通常0.5〜50GPa、好ましくは1〜10GPa、より好ましくは2〜8GPaの範囲である。引張弾性率としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張弾性率で、通常100〜1,000GPa、好ましくは200〜800GPa、より好ましくは300〜700GPaの範囲である。伸びとしては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張伸びで、通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜3%の範囲である。長繊維の強度特性がこれらの範囲にあるときに、機械強度と強靭性が高度にバランスされ好適である。
【0015】
本発明に使用される長繊維の繊維束糸条1本中のフィラメント数は、格別な限定はないが、1,000〜100,000本、好ましくは2,000〜20,000本、より好ましくは5,000〜15,000の範囲である。
【0016】
本発明に使用される長繊維の長さは、成形品の機械的強度と靭性の観点から適宜選択されるが、特開2002−5924号公報に記載されている方法によって測定される重量平均繊維長で、通常1mm以上、好ましくは3〜100mm、より好ましくは5〜50mmの範囲である。
【0017】
これらの長繊維は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンポリマー成形用ペレット中の、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲である。シクロオレフィンポリマーと長繊維の割合がこの範囲にあるときに、得られる成形品の機械的強度、靭性及び耐熱性が高度にバランスされ好適である。
【0018】
(シクロオレフィンポリマー成形用ペレット)
本発明のシクロレフィンポリマー成形用ペレットは、上記シクロオレフィンポリマーと長繊維を必須成分として、必要に応じてその他の配合剤を含むことができる。その他の配合剤としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、架橋剤、架橋助剤、エラストマー材料、充填剤、老化防止剤、難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤、高分子改質剤などを挙げることができる。
【0019】
本発明においては、架橋剤を配合することにより、成形品の機械的強度、靭性及び耐熱性の特性を高度に向上させることができ好適である。架橋剤としては、シクロオレフィンポリマーを架橋させるものであれば格別な制限はないが、通常、通常ラジカル発生剤が用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物や非極性ラジカル発生剤である。
【0020】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;などが挙げられる。中でも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシドおよびペルオキシケタール類が好ましい。
【0021】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0022】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0023】
使用される架橋剤がラジカル発生剤の場合の1分半減期温度は、ラジカル発生剤の種類及び使用条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。
【0024】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0025】
(架橋助剤)
本発明のペレットは、架橋助剤を含むことが好ましい。ペレットに架橋助剤を配合することで、成形品の機械的強度、靭性及び耐熱性の特性を高度に向上させることができる。
【0026】
本発明で使用される架橋助剤としては、一般的に用いられるものを格別な限定なく使用でき、例えば、炭素−炭素不飽和結合を2つ有する2官能性架橋助剤、炭素−炭素不飽和結合を3つ以上有する多官能架橋助剤などを挙げることができる。
【0027】
かかる架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの2官能架橋助剤、トリイソプロペニルベンゼン、トリメタアリルイソシアネートなどの3官能架橋助剤等が挙げられる。中でも、トリイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、m−ジイソプロペニルベンゼンがより好ましい。
【0028】
これらの架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部、最も好ましくは5〜15重量部である。架橋助剤の量がこの範囲であると、得られる成形品の機械的強度に優れる。
【0029】
エラストマー材料としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらのエラストマー材料は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、シクロオレフィンポリマーの架橋体100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。エラストマー材料がこの範囲であるときに得られるシクロオレフィンポリマー成形品の靭性を高度に向上させることができ好適である。
【0030】
充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機系充填剤や有機系充填剤のいずれも用いることができが、好適には無機系充填剤である。無機系充填剤としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子、窒化アルミニウム、炭化ケイ素粒子やウィスカー等が挙げられる。有機系充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、廃プラスチック等の粒子化合物が挙げられる。
【0031】
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜350重量部の範囲である。充填剤がこの範囲にあるときにシクロオレフィンポリマー成形品の機械的強度、耐熱性及び耐薬品性等の特性を格段に向上させることができ好適である。
【0032】
老化防止剤としては、一般的に樹脂工業で使用されるものであれば格別な限定なく使うことができるが、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を用いることにより、重合反応を阻害しないで、得られるシクロオレフィンポリマー成形品の耐酸化劣化性を高度に向上させることができ好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。
【0033】
フェノール系老化防止剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0034】
アミン系老化防止剤としては、例えば、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。
【0035】
リン系老化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、などが挙げられる。
【0036】
イオウ系老化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどを挙げられる。
【0037】
これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0038】
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0039】
(シクロオレフィンポリマー成形用ペレットの製造方法)
本発明のシクロオレフィンポリマー成形用ペレットの製造方法は、格別な限定はなく、例えば上記シクロオレフィンポリマーと長繊維を必須成分として、必要に応じてその他の配合剤を配合して混練して得ることができる。また、シクロオレフィンモノマーとメタセシス重合触媒とを含んでなる重合性組成物をプルトルージョン法で連続繊維に含浸させ、重合してシクロオレフィンポリマー含有連続繊維を製造する工程、該シクロオレフィンポリマー含有連続繊維を所定長さに切断する工程とを含んでなる方法をも挙げられる。この方法によれば、長繊維にシクロオレフィンポリマーが充分に含浸したペレットが容易に得られ好適である。この製造方法に使用されるシクロオレフィンモノマーは、前記と同様のものが用いられる。
【0040】
本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合できるものであれば特に限定されないが、通常遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては例えばタンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えばモリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えばルテニウムやオスミウムが挙げられる。これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体をメタセシス重合触媒として用いることが好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性が優れるために得られる熱可塑性樹脂の臭気(未反応のモノマーに由来する)が少なく生産性に優れ、また、成形性の優れる熱可塑性樹脂が連続繊維中に形成され好適である。
【0041】
本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、連続繊維として炭素繊維を用いた場合は、ヘテロ環構造を有するルテニウム触媒を用いることが、得られるシクロオレフィンポリマー成形品の外観、機械的強度及び靭性の特性が高度にバランスされ好適である。ヘテロ環構造の炭素原子以外の原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリンやイミダゾリジン構造が好ましく、かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0042】
好ましいルテニウム触媒の例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子としてヘテロ環構造を有する化合物と中性の電子供与性化合物とを有するルテニウム錯体化合物が挙げられる。
【0043】
これらのメタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、(触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
【0044】
本発明に使用される重合性組成物は、上記シクロオレフィンモノマーとメタセシス重合触媒を必須成分として、必要に応じて、連鎖移動剤、重合調整剤及びその他の配合剤を添加することができる。その他の配合剤は、前記シクロオレフィンポリマー成形用ペレットで記述したものと同様なものを用いることができる。
【0045】
本発明においては、重合性組成物に連鎖移動剤を配合することで、連続繊維への含浸性により優れ且つ成形性に優れたシクロオレフィンポリマー成形用ペレットが得られるので好適である。連鎖移動剤としては、格別な限定はなく、例えば、置換基を有していてもよい鎖状のオレフィン類を用いることができる。その具体例としては、例えば、1−ヘキセン、ジビニルベンゼン、エチルビニルエーテル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸3−ブテン−2−イル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、アクリル酸3−ブテン−1−イル、アクリル酸3−ブテン−2−イル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレート、アリルトリビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その添加量は、シクロオレフィンモノマー全体に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0046】
重合調整剤としては、重合触媒の重合活性を制御したり反応率を向上させる目的で配合することができる。重合調整剤としては、アルミニウム、スカンジウム、スズのアルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などを例示することができる。重合調整剤の具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。重合調整剤の使用量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0047】
本発明に使用される重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、メタセシス重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)をシクロオレフィンモノマーに必要に応じてその他の添加剤を配合した液(モノマー液)に添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0048】
プルトルージョン法は、連続繊維を引きながら重合性組成物を含浸し、次いで必要に応じて賦形し、硬化させて連続的に成形を行なう方法である。重合性組成物の連続繊維への含浸方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合組成物を入れた含浸浴の中を連続繊維を通し含浸する方法、重合性組成物を連続的に連続繊維に吹きかける方法、クロスヘッドダイの中を連続繊維を通しながら押出機等からクロスヘッドダイに重合性組成物を含浸する方法などを行なうことができる。本発明に使用される重合性組成物は、従来のマトリックス樹脂として使用されるエポキシ樹脂やポリオレフィン樹脂等と比較して、低粘度であり、また、特に炭素繊維等の強化繊維との相容性に優れることから強化繊維(束)に均一に含浸させることができる。
【0049】
重合方法としては、特に限定されないが、塊状重合が好ましい。塊状重合を行う場合には、重合性組成物は反応に関与しない溶媒等の含有量が少ないので、繊維に含浸させた後に、重合、成形するときに溶媒による臭気、フクレ、ボイド等の問題を生ぜず好適である。重合温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃の範囲であり、また、前記架橋剤がラジカル発生剤を用いる場合は、通常ラジカル発生剤の1分半減期温度以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは20℃以下である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間から20分間、好ましくは5分間以内である。
【0050】
かくして得られるシクロオレフィンポリマー含有連続繊維は、通常ストランド形状で得られ、次いで、該シクロオレフィンポリマー含有連続繊維(ストランド)を所定の任意長さに切断することにより成形用ペレットを製造することができる。ストランドの切断は、常法に従えばよく、通常はペレタイザーを用いて行なうことができる。
【0051】
本発明のシクロオレンポリマー成形用ペレットの長さは、使用目的及び成形方法に応じて適宜選択されるが、通常1mm以上、好ましくは3〜100mm、より好ましくは5〜50mmの範囲である
【0052】
(シクロオレフィンポリマー成形品)
本発明のシクロオレフィンポリマー成形品は、上記シクロオレフィンポリマー成形用ペレットを成形して得ることができる。成形方法としては、常法に従えばよく、例えば射出成形法、プレス成形法などを行なうことができる。成形温度は、通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲であり、前記架橋剤を配合する場合は架橋剤の架橋の起こる温度であり、ラジカル発生剤を用いた場合は、通常1分半減期温度以上、好ましくは1分半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分半減期温度より10℃以上高い温度である。また、成形時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜20分の範囲である。
【0053】
かくして得られる本発明のシクロオレフィンポリマー成形品は、機械的強度と靭性に優れるので、例えば、OAやAV機器、自動車や鉄道などの車両用構造体材、航空機内装部品などをはじめとして、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用途、その他一般産業用途に好適に用いられる。具体的の用途としては、例えば、釣竿、ゴルフクラブ用シャフト、テニスラケット、スキーストック等のスポーツ用途;ディスプレー、FDDキャリッジ、シャーシ、HDD、MO、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、ポータブルMD、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの電気・電子機器;電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、アイロン、ヘアドライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、掃除機、トイレタリー用品、レザーディスク、コンパクトディスク、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどのオフィスオートメーション機器および家電機器;アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ドライブシャフト、ホイール、ホイールカバー、フェンダー、ドアミラー、ルームミラー、フェシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、トランクフード、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スピラーおよび各種モジュールなどの自動車部品;ランディングギアポッド、ウイングレッド、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリングなどの航空機部品およびパネルなどの建材などが挙げられる。これらの中でも、自動車や航空機などの乗物用部材として特に好適である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0055】
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定した。
(1)重合性組成物の含浸性:重合性組成物の連続繊維への含浸性は、含浸後の性状を観察し、下記基準で判断した。
◎:均一に含浸され、気泡の発生がない
○:均一に含浸されているが、僅かに気泡の発生が見られる
×:均一に含浸されていない
【0056】
(2)機械的強度:JIS K−7073に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で成形品の引張強度を測定し、比較例1で作製した成形品の引張強度を100として、下記基準で判断した。
◎:100以上
×:100未満
【0057】
(3)靭性:成形品を60°に曲げ、その曲げ部分の性状を観察し、下記基準で判断した。
◎:割れ、長繊維と樹脂成分との剥れ等がない
△:割れ、長繊維と樹脂成分との剥れ等が僅かに見られる
×:割れ、長繊維と樹脂成分との剥れ等が激しく見られる
【0058】
(4)耐熱性:成形品を200℃のオーブンに静置し、100時間後に取り出して外観を観察し、下記基準で判断した。
◎:形状の変化が認められない
×:形状が変化している
【0059】
実施例1
ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、シクロオレフィンモノマーとして、ジシクロペンタジエン(DCPD)を100部入れ、ここに連鎖移動剤としてアリルメタクリレートを0.74部、フェノール系老化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール1.0部を加えた後、上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mlの割合で加えて撹拌し重合性組成物を調製した。
【0060】
次いで、連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドダイを通して炭素繊維束をクリールから400g/stの張力で引きながら、クロスへッドダイに接続された押出機から供給される重合性組成物を含浸させた後、賦形ダイを通してストランドとして引き取り、150℃の温度に温度管理された金型の中に70秒間滞留するように通過させ重合反応を行なったのち、ペレタイザーで切断し、長繊維含有量40重量%、長さ9mmのペレットを作製した。得られたペレットを用いて200℃×90秒間射出成形し10cm角、厚さ3mmのシクロオレフィンポリマー成形品を得た。ペレット及び成形品の各特性を評価して表1に示した。
【0061】
実施例2
重合性組成物に、さらに架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)を1.2部を加えた以外は実施例1と同様に行い、各特性を評価して表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
比較例1
ポリプロピレンに無水マレイン酸を1%及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3を500ppm添加し、200℃で溶融混練し反応させ、変性ポリプロピレンを得た。次いで、連続繊維の通路を波状に加工したクロスヘッドダイを通してガラスロービングを引きながら、クロスヘッドダイに接続された押出機から供給される無変性ポリプロピレン90部と変性ポリプロピレン10部の溶融混合物(260℃)を含浸させた後、賦形ダイを通してストランドとして引き取り裁断し、炭素繊維含有量40%で長さ9mmのペレット状組成物を得た。
【0064】
得られたペレットを用いて射出成形し、10cm角、厚さ3mmの成形品を得た。ペレット及び成形品の各特性を評価して表1に示した
【0065】
表1の結果から、本発明のペレット製造方法は重合性組成物の連続繊維への含浸性が優れ、且つ該ペレットを用いて得られる成形品は、機械的特性と靭性に優れるばかりか耐熱性にも優れることが判る(実施例1、2)。一方、ポリマーを溶融含浸するものは連続繊維への含浸性が充分でなく、また、成形品は、機械的強度に優れるが靭性や耐熱性に劣ることがわかる(比較例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンポリマーと長繊維とを含んでなるシクロオレフィンポリマー成形用ペレット。
【請求項2】
シクロオレフィンモノマーとメタセシス重合触媒とを含んでなる重合性組成物を連続繊維に含浸させ、重合してシクロオレフィンポリマー含有連続繊維を製造する工程、該シクロオレフィンポリマー含有連続繊維を所定長さに切断する工程を含んでなるシクロオレフィンポリマー成形用ペレットの製造方法。
【請求項3】
シクロオレフィンポリマー含有連続繊維を製造する工程が、プルトルージョン法で行なわれるものである請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
重合性組成物が、連鎖移動剤を含むものである請求項2または3記載の製造方法。
【請求項5】
連続繊維が、炭素繊維である請求項2乃至4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載のシクロオレフィンポリマー成形用ペレットを成形してなるシクロオレフィンポリマー成形品。

【公開番号】特開2009−179755(P2009−179755A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21880(P2008−21880)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】