説明

シクロオレフィン積層体およびその製造方法

【課題】光透過性支持体と接する側の金属部が黒化でき、シクロオレフィン支持体とパターニングされた金属部との接着性を改善し、かつパターニングされた金属部を他の基材と貼合せずとも、ヘイズの低いシクロオレフィン積層体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】シクロオレフィン支持体上に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一つを含有する樹脂層、および該樹脂層上に、硫化物により黒化処理された厚み1μm以下のパターニングされた金属部を有するシクロオレフィン積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ、有機EL、CRT等の表示装置に設けられた黒色の縁や、これら表示装置の青、赤、緑色画素の周囲に設けられる黒色の縁(ブラックマトリックス)等の表示装置用遮光フィルム、あるいは有機EL素子、無機EL素子、タッチパネル、電子ペーパー等の光透過性電極等に用いられるシクロオレフィン積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置用遮光フィルムとしては、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ」1997年4月、共立出版(株)発行、第218〜220頁(非特許文献1)に記載されているように、光透過性支持体上にパターニングされた金属部を有する積層体が知られている。また光透過性電極としては、光透過性支持体上に透明金属酸化物を含有する層が設けられた積層体や、例えば特開2010−8964号公報に記載される、光透過性支持体上にパターニングされた金属部が設けられた積層体が知られている。
【0003】
シクロオレフィン系素材は、高い光透過性や複屈折率が低いなどの優れた光学特性に加えて、吸湿性、ガスバリア性、誘電率、および誘電正接などに優れることが知られている。このため近年、表示装置用遮光フィルムや光透過性電極へのシクロオレフィン系素材の応用が期待されている。しかしシクロオレフィン系素材はその表面の接着性が低く、金属部に対する十分な接着性が得られないという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、シクロオレフィン支持体表面に各種表面処理を行うことが知られており、例えば特開2003−226767号公報(特許文献1)に記載されるプラズマ処理、特開2008−94923号公報(特許文献2)に記載される紫外線照射処理等が知られている。また特表2002−520437号公報(特許文献3)にはシクロオレフィン支持体上にアクリル性下塗り層を設けることが記載され、特開2007−240640号公報(特許文献4)にはシクロオレフィン支持体上に水系ウレタンあるいは水系アクリル接着剤を用いることが記載される。またシクロオレフィン支持体に関する記載はないが、特開2009−185342号公報(特許文献5)、特開2008−235467号公報(特許文献6)、特開2008−218096号公報(特許文献7)等には、光透過性支持体と金属部との間の下塗り層や物理現像核層に各種高分子ラテックスを含有させることが記載されており、中でもウレタンが好ましく用いられることが記載される。
【0005】
しかしながらシクロオレフィン支持体と金属部とでは線膨張係数が異なるため、上記したような方法では温度変化に伴い金属部が剥離するといった問題が生じ、より高い接着性が求められていた。
【0006】
一方、光透過性支持体上にパターニングされた金属部の金属光沢をなくし、積層体の視認性を低下させるための方法として黒化処理が知られている。しかし黒化処理は金属部の露出した側の面に限られるため、光透過性基材と接する側の金属部は黒化されない。光透過性基材側の金属部を黒化するのに、両面黒化処理済みの銅箔などの金属箔を光透過性支持体上に樹脂層を介して接着させ、この銅箔をエッチングするいわゆるエッチングメッシュを作製する方法が知られている。しかしながらこの方法では、粗面化された金属箔が、接着される樹脂層に押しつけられ、樹脂層が粗面化されるために積層体のヘイズが高くなる問題が知られている。かかる問題を防ぐため、特開2006−66909号公報(特許文献8)、特開2006−332140号公報(特許文献9)、特開2007−95900号公報(特許文献10)等では、基材上にパターニングされた金属部を黒化処理した後、この黒化処理面と転写用基材とを貼合し、その後基材を剥離することで、基材と接する側の金属部を黒化している。
【0007】
また、黒化処理により粗面化した金属部と他の基材を貼合した場合にアンカー作用が生じ、基材との接着性を向上できることが特開平06−204660号公報(特許文献11)に記載される。しかし上記した黒化処理により得られる効果はいずれの方法においても基材上にパターニングされた金属部と他の基材とを貼合しなければならず、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−226767号公報
【特許文献2】特開2008−94923号公報
【特許文献3】特表2002−520437号公報
【特許文献4】特開2007−240640号公報
【特許文献5】特開2009−185342号公報
【特許文献6】特開2008−235467号公報
【特許文献7】特開2008−218096号公報
【特許文献8】特開2006−66909号公報
【特許文献9】特開2006−332140号公報
【特許文献10】特開2007−95900号公報
【特許文献11】特開平06−204660号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「カラーTFT液晶ディスプレイ」1997年4月、共立出版(株)発行、第218〜220頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光透過性支持体と接する側の金属部が黒化でき、シクロオレフィン支持体とパターニングされた金属部との接着性を改善し、かつパターニングされた金属部を他の基材と貼合せずとも、ヘイズの低いシクロオレフィン積層体、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の発明により達成された。
(1)シクロオレフィン支持体上に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一つを含有する樹脂層、および該樹脂層上に、硫化物により黒化処理された厚み1μm以下のパターニングされた金属部を有するシクロオレフィン積層体。
(2)シクロオレフィン支持体上に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一種を含有する樹脂層を塗設する工程、該樹脂層上に厚みが1μm以下のパターニングされた金属部を形成する工程、および該金属部を硫化物によって黒化処理する工程を少なくとも具備するシクロオレフィン積層体の製造方法。
(3)前記樹脂層の厚みが0.35μm以下である(1)記載のシクロオレフィン積層体。
(4)前記樹脂層の厚みが0.35μm以下である(2)記載のシクロオレフィン積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、光透過性支持体と接する側の金属部が黒化でき、シクロオレフィン支持体とパターニングされた金属部との接着性を改善し、かつパターニングされた金属部を他の基材と貼合せずとも、ヘイズの低いシクロオレフィン積層体、およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシクロオレフィン積層体はシクロオレフィン系支持体上に、樹脂層、パターニングされた金属部がこの順に積層されてなる。さらに金属部の上面に、あるいはシクロオレフィン系支持体の樹脂層の反対面に紫外線吸収層、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層等の公知の機能層を設けることもできる。
【0014】
本発明にはシクロオレフィン系支持体が用いられる。シクロオレフィン系支持体としては、シクロオレフィン系樹脂からなる光透過性樹脂フィルムが好ましく利用される。ここで光透過性とは全光線透過率が50%であることを意味する。このようなシクロオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂である。このシクロオレフィン系樹脂は、上記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができるほか、シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも使用できる。
【0015】
また、本発明においてシクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体であるシクロオレフィンコポリマーをシクロオレフィン系樹脂として用いることもできる。鎖状オレフィンの例としては、エチレンやプロピレンなどが挙げられ、またビニル基を有する芳香族化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは50モル%以下、例えば15〜50モル%程度であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体とする場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、このように比較的少ない量であることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%程度、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%程度である。本発明においては特にシクロオレフィンと鎖状オレフィンの共重合体であるシクロオレフィンコポリマーからなるシクロオレフィン支持体を用いることが好ましい。
【0016】
本発明で用いるシクロオレフィン系支持体には可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、マット剤等公知の添加剤を含有させることができる。
【0017】
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂として、ドイツのTICONA社から販売されている“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア(ZEONOR)”および“ゼオネックス(ZEONEX)”、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)がある。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、フィルムとすることになるが、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。
【0018】
本発明で用いるシクロオレフィン系支持体は、ロール状態にあると、フィルム同士が接着してブロッキングを生じやすい傾向にあるので、通常は、プロテクトフィルムを貼合してロール巻きとされる。
【0019】
本発明で用いるシクロオレフィン系支持体は、樹脂層を塗布する面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行うことができる。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理やコロナ処理が好適である。
【0020】
本発明で用いるシクロオレフィン系支持体の厚みは、薄いほうが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなり、一方で厚すぎると透明性が低下したり、重量が大きくなったりするなどの問題が生じる。そこで、その適当な厚みは、例えば5〜200μm程度であり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは30〜130μmである。またパターニングされた金属部側の表面粗さはJIS B0601−1994で規定される算術平均粗さRaで0.1以下が好ましく、さらに好ましくは0.05以下である。
【0021】
本発明のシクロオレフィン積層体は少なくともシクロオレフィン系支持体の一方の面に樹脂層が設けられている。樹脂層は一般に塗工することで設けられるが、スクリーン印刷方式等の印刷法により、パターン状に樹脂層を印刷することでも塗設することができる。
【0022】
本発明で用いる樹脂層はアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一つを含有する。中でもウレタン樹脂がより高い密着性を得られることから好ましい。ウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートから合成され、それに用いるポリオールとしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。本発明においてポリエーテル系ウレタンとはポリオールとしてポリエーテルを用いたもの、ポリエステル系ウレタンとはポリオールとしてポリエステルを用いたもの、ポリカーボネート系ウレタンとはポリオールとしてポリカーボネートを用いたものを意味する。中でも本発明ではポリカーボネートポリオールを用いたポリカーボネート径ウレタン樹脂および、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテル系ウレタン樹脂が好ましく用いられる。ポリカーボネートポリオールは、例えば炭酸エステルとジオールとを反応させることにより得ることができる。炭酸エステルの例としてはエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどを挙げることができ、ジオールの例としては1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。また、ポリカーボネートジオールとジカルボン酸あるいはポリエステルとの反応で得られるポリエステルポリカーボネートであってもよい。
【0023】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオールおよび芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族低分子量活性水素原子含有化合物(水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール、および活性水素原子含有基として1級もしくは2級アミノ基を含有する化合物)のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物が使用できる。AOが付加される脂肪族多価アルコールには、直鎖もしくは分岐の脂肪族2価アルコール[(ジ)エチレングリコール、(ジ)プロピレングリコール、1,2−、1,3−、2,3−および1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,12−ドデカンジオールなど]および脂環式2価アルコール[環状基を有する低分子ジオール、例えば 特公昭45−1474号公報記載のもの]、脂肪族3価アルコール[グリセリン、トリメチロールプロパン、トリアルカノールアミンなど]、および脂肪族4価以上のアルコール[ペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ソルバイドなど]が挙げられる。AOが付加される1級もしくは2級アミノ基を含有する化合物としては、アルキル(炭素数1〜12)アミン、および(ポリ)アルキレンポリアミン(アルキレン基の炭素数2〜6、アルキレン基の数1〜4、ポリアミンの数2〜5)などが挙げられる。芳香族環含有ポリエーテルポリオールとしては芳香族低分子量活性水素原子含有化合物(水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価またはそれ以上の、フェノール類および芳香族アミン)のAO付加物が使用できる。AOが付加されるフェノール類としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、芳香族アミンとしてはアニリンおよびフェニレンジアミンなどが挙げられる。AO付加物の製造に用いるAOとしては、炭素数2〜12またはそれ以上のAO、例えばエチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(THF)、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、およびこれらの2種以上の併用(ランダムおよび/またはブロック)が挙げられる。脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)など]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)など]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略記)などが挙げられる。芳香族環含有ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノール骨格を有するポリオール、例えばビスフェノールAのEO付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物、ビスフェノールAのEO20モル付加物等]およびビスフェノールAのPO付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物、ビスフェノールAのPO5モル付加物等]、並びにレゾルシンのEOもしくはPO付加物などが挙げられる。
【0024】
本発明で用いる樹脂層に好ましく用いられるウレタン樹脂の原材料たるポリイソシアネートとしては芳香族系ポリイソシアネート類と脂肪族・脂環族系ポリイソシアネート類が挙げられるが、本発明においてはヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族・脂環族系ポリイソシアネート類を用いることが好ましい。
【0025】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミドおよびメタクリロニトリル等のいずれかのモノマーの単独重合体またはこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体またはこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体またはこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、さらにメチロール基、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであることが架橋反応が可能になるので好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂の例としては、多価フェノール類とエピハロヒドリンおよび/または低分子量エポキシ化合物を反応して得られるポリグリシジルエーテルの単独縮合や前述のエーテル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ウリア樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂との縮合反応によって得られる。多価フェノール類の具体的な例としては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン)、ビスフェノールE(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−フェニルエタン、ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノール類が挙げられる。
【0027】
本発明で用いる樹脂層は水系分散ラテックスとしてシクロオレフィン系支持体に塗布することがVOCの発生がないことから好ましい。水系分散物の平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.1μmである。また、これら水系分散ラテックスは複数種類のラテックスを混合して用いることも可能である。
【0028】
本発明で用いる樹脂層はウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂以外にもポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸とスチレンの共重合体、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等のタンパク質、カラギーナン、ヒアルロン酸などムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、アリルアミンとジアリルアミンの共重合体、ジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体などの水溶性高分子や、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの単独重合体があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ポリエステル等の非水溶性樹脂を用いることもできる。非水溶性樹脂はVOCフリーの観点から水系分散物の形で用いることが好ましく、その平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.1μmである。これらウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂以外の樹脂を併用して用いる場合には、全樹脂成分のうち、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂以外の樹脂成分は70質量%以下が好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0029】
本発明で用いる樹脂層は膜強度を高め、傷等が入りにくくするよう、架橋剤により架橋されていることが好ましい。架橋剤としてはアルデヒド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、活性ハロゲン化合物、少なくとも2個のビニルスルホニル基を有する化合物等、公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤の添加量は樹脂層の全樹脂成分量に対して1〜7質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜5質量%である。
【0030】
さらに樹脂層にはシリカなどのマット剤、滑剤、顔料、染料、界面活性剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0031】
本発明で用いる樹脂層の厚みは温度変化に対する密着性を向上させるために0.35μm以下とすることが好ましく、好ましくは0.05〜0.3μmである。またその表面粗さはJIS B0601−1994で規定される算術平均粗さRaは0.1以下とすることが望ましく、さらに0.05以下とすることが望ましい。
【0032】
本発明においてパターニングされた金属部を形成させる方法としては、銀塩感光材料を用いる方法、同方法を用いさらに得られた銀画像に無電解めっきや電解めっきを施す方法、スクリーン印刷法を用いて銀ペーストなどの導電性インキを印刷する方法、銀インクなどの導電性インクをインクジェット法で印刷する方法、無電解めっき等で銅などの金属からなる導電性層を形成する方法、あるいは樹脂層の上に蒸着やスパッタなどで導電性層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法、銅箔などの金属箔を貼り、さらにその上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法など、公知の方法を用いることができるが、視認されにくい極微細な線からなり、かつ高い金属部の密着性を得るためには銀塩感光材料を用いる方法、中でも銀塩拡散転写法を用いることが好ましい。
【0033】
パターニングされた金属部は十分な光透過性を得るために、金属細線からなることが好ましい。金属細線はできるだけ均一なもの、好ましくは線幅、厚み共にそのフレの範囲が10%以内であるような金属細線を作製することが好ましい。パターニングされた金属部の厚みは1μm以下であり、0.6μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.3μm以下である。また、金属細線の線幅についてはその幅は狭ければ狭いほど光透過性は高くなるが、一方で、狭すぎると抵抗値が高くなりすぎることから、少なくとも50μm以下、好ましくは10〜30μmの線幅であることが好ましい。金属細線は格子状あるいは網目状となって金属部を形成していることが好ましいが、金属細線を構成する金属としては金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、クロム、錫、アルミ、あるいはそれらの合金等の金属を用いることができるが、本発明においては銀塩拡散転写法を用いる手法を用いてパターニングされた金属部を作製することが好ましいことから、銀を用いることが最も好ましい。また複数の金属を積層し、金属部とすることもできる。
【0034】
上記パターニングされた金属部を銀塩拡散転写法で作製するには、シクロオレフィン系支持体上の樹脂層上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に設けることで、あるいは物理現像核を含有する樹脂上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を設けることでシクロオレフィン積層体前駆体とし、これを露光、現像することで得られる、あるいは現像後にめっき処理することで得られる。
【0035】
シクロオレフィン積層体前駆体においては上述の通りハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術はそのまま用いることもできる。
【0036】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されているような公知の手法を用いることができる。中でも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明のシクロオレフィン積層体前駆体においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩、もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明に用いるシクロオレフィン積層体前駆体においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0038】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。また、ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀量は銀換算で2〜10g/mであることが好ましい。
【0039】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0040】
シクロオレフィン積層体前駆体にはハロゲン化銀乳剤層と樹脂層との間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることができる。これらの非感光性層は、水溶性高分子化合物を主たるバインダーとする層である。ここでいう水溶性高分子化合物とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、あるいは樹脂層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0041】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子化合物は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0042】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0043】
シクロオレフィン積層体前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記した樹脂層、あるいは樹脂層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、またはシクロオレフィン系支持体を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが良い。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1mあたり約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における吸光度として0.5以上である。
【0044】
シクロオレフィン積層体前駆体の露光について説明する。シクロオレフィン積層体前駆体のハロゲン化銀乳剤層は像様(所望の細線パターン)に露光されるが、露光方法として、透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることができる。
【0045】
シクロオレフィン積層体前駆体の銀塩拡散転写現像液による現像処理について説明する。上記のように像様に露光されたシクロオレフィン積層体前駆体のハロゲン化銀乳剤層は、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、現像可能なだけの潜像核を有さないハロゲン化銀が可溶性銀錯塩形成剤により溶解されて銀錯塩となり、樹脂層上で還元されて金属銀が析出し金属部を得ることができる。一方、現像可能なだけの潜像核を有するハロゲン化銀はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層(黒化銀もこれに含まれる)および中間層、保護層、裏塗り層等は除去されて、金属部が樹脂層上に露出する。
【0046】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の樹脂層の上に設けられた層や裏塗り層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等を剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0047】
シクロオレフィン積層体前駆体の現像処理において使用する、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤および還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して金属微粒子あるいは金属硫化物微粒子上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0048】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0049】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0050】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0051】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1Lあたり0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1Lあたり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0052】
現像液のpHは10以上が好ましく、さらに11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、リン酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0053】
また、上記現像処理および水洗処理することで得られたパターニングされた金属部は後処理を施すこともできる。後処理液としては例えば還元性物質、水溶性リンオキソ酸化合物、水溶性ハロゲン化合物などの水溶液が一例としてあげられる。このような後処理液に50〜70℃、さらに好ましくは60〜70℃で10秒以上、好ましくは30秒〜3分の処理を行えば、導電性は向上し、さらに高温高湿下でもその表面抵抗率が変動しなくなるので好ましい。
【0054】
現像、水洗処理後に作製したパターニングされた金属部には導電性を上げるため、あるいは色調を変えるためなどの種々の目的でめっき処理を行うことも可能である。本発明におけるめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、または無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。まためっき処理の後には酸化処理も行うことができる。
【0055】
本発明において無電解めっき処理を施す場合、無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形でも良いし、また金属パラジウムであっても良い。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることが良い。
【0056】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき、無電解コバルトめっき、無電解金めっき、銀めっきなどを用いることができるが、上記の必要な導電性と透明性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0057】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることもできる。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行うことが好ましい。
【0058】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することができる。
【0059】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法などを用いることができる。
【0060】
本発明においては電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法などが好ましい。
【0061】
本発明において金属部の表面は硫化される。本発明において硫化は、硫化物、多硫化物、硫黄を含有する溶液中に金属部を浸漬させる方法や、亜硫酸ガスなどの硫黄酸化物気体と金属部を接触させることなどでなされるが、安全性などの点から硫化物、多硫化物、硫黄を含有する溶液(以下硫化処理液と略す)、特に水溶液に浸漬する方法で処理することが好ましい。
【0062】
本発明で用いる硫化処理液は硫黄、二硫化ナトリウムや四硫化ナトリウムなどの多硫化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどの硫化物から選ばれる少なくとも1種を含有する。硫黄はそのままでは水に溶解しないので、硫黄分散物の形で用いることもできるが、硫化物の存在下で水に溶解することにより、多硫化物として用いることが、溶液の取り扱いの上で好ましい。硫黄、多硫化物、および硫化物の中では水溶液にでき、また反応性の早い多硫化物を用いることが好ましい。本発明の処理液における硫黄、多硫化物、および硫化物の含有量は、処理液1Lあたり、0.01〜100g含有することが好ましく、0.1〜50g含有することがより好ましい。また本発明の処理液にて処理する際の温度は20〜80℃が好ましく、処理時間は処理温度、濃度に依存するが5〜180秒であることが好ましい。
【0063】
本発明の処理液にはその他に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、重曹等のpH調整剤、界面活性剤、消泡剤、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウムなどの膨潤抑制剤、増粘剤、防カビ剤、キレート剤等を含有させることができる。本発明において、硫黄を硫化物水溶液で溶解する場合や、硫黄の水分散物を用いる場合には界面活性剤を用いることが特に好ましい。界面活性剤としては、アニオン、ノニオン、カチオン、ベタイン等各種公知の活性剤を用いることができるが、溶液を沈澱させたりすることの少ないノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。
【0064】
本発明の処理液で処理した後には、十分な水洗処理を行いその後乾燥することが望ましい。水洗処理が不足した場合、硫黄分が残るため、様々な悪影響を及ぼす場合がある。水洗処理は浸漬しても良いし、シャワー等で洗い流すことも可能である。水洗温度は10〜80℃が好ましく、20〜70℃がさらに好ましい。また処理時間は10〜1000秒であることが好ましい。
【実施例】
【0065】
本発明の実施例を以下に示す。なお、記載中百分率は特に断りのない限り、質量基準である。
【0066】
(実施例1)
「シクロオレフィン積層体1の作製」
シクロオレフィン系支持体として、TOPAS6013(ポリプラスチック社製シクロオレフィンコポリマー)を原料とし、溶融押し出し法により製造した厚み100μmのシクロオレフィンコポリマーからなるシクロオレフィン支持体(COC支持体)を用いた。なお、COC支持体の全光線透過率は90%、Raは0.02μmであった。
【0067】
続いて、硫化パラジウムゾル液を下記のようにして作製した。
【0068】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0069】
続いて、下記処方に従い、樹脂層塗液を作製し、シクロオレフィンコポリマー支持体に塗布し、100℃で10分乾燥させた。乾燥後50℃24時間加温処理することで樹脂層塗布済みCOCフィルムを作製した。
【0070】
<樹脂層塗液1処方/1mあたり>
ハイドランWLS201(DIC社製ポリエーテル系ウレタンラテックス。平均粒径0.1μm以下) 140mg(固形分50mg)
ゼラチン 50mg
ノニオンOT221(日油社製ノニオン界面活性剤) 1mg
EX313(ナガセケムテックス社製エポキシ硬化剤) 9mg
ハイミクロンL271(中京油脂社製滑剤) 4mg
前記硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0071】
得られた樹脂層の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
【0072】
続いて、COC支持体に近いほうから順に下記組成の中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、および最外層1をこの順に上記樹脂層の上に塗布した。またCOC支持体の反対面に裏塗り層1を塗布し、シクロオレフィン積層体前駆体を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸とを用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0073】
<中間層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0074】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0075】
<最外層1組成/1mあたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0076】
<裏塗り層1組成/1mあたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0077】
【化1】

【0078】
このようにして得たシクロオレフィン積層体前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンのポジ透過原稿を密着させて露光した。
【0079】
その後、先に露光したシクロオレフィン積層体前駆体を下記組成の拡散転写現像液中に15℃で90秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層1、中間層1、最外層1および裏塗り層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。これにより樹脂層上に細線幅が20μm、格子間隔250μmの金属部を形成した。なお、この金属部の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡を用いて測定したところ0.1μmであった。
【0080】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mL
85%リン酸水溶液にてpH=12.2に調整した。
【0081】
続いて下記組成の黒化液中に70℃3分浸漬し、さらに純水で水洗、乾燥処理し、COC支持体上に、厚み0.1μmの樹脂層、厚み0.1μmの黒化されたメッシュ状金属パターン(パターニングされた金属部)からなる透明なシクロオレフィン積層体Aを得た。
【0082】
<黒化処理液組成>
硫黄 5.5g
硫化ナトリウム・9水和物 27.6g
全量を水で1000mL
【0083】
上記のようにして得られたメッシュ状金属パターンが形成されたシクロオレフィン積層体Aの画像の密着性、ヒートサイクル試験評価、外観検査を下記方法に従い、実施した。結果を表1に示す。
【0084】
<密着性>
得られたメッシュ状金属パターン面に日東電工社製ポリエステル粘着テープNo.31を金属面に気泡の入らないように貼り付け、その後勢い良くテープを剥がし剥離テストを行った。剥離テストの評価は○が剥離なし、△が一部剥離あり、×が全面剥離の3段階とした。
【0085】
<ヒートサイクル試験>
80℃に1時間と−20℃に1時間を1サイクルとし、このサイクルを100回繰り返すことで、ヒートサイクル試験とした。密着性の評価と同様に○を剥離なし、△が一部剥離あり、×が全面剥離とし、さらにヒートサイクル中に自発的剥離のあったものは××とした。
【0086】
<外観検査>
得られたシクロオレフィン積層体の金属部を基材側から目視し、その色を見た。またメッシュ状金属パターン面のヘイズをスガ試験機(株)製ヘイズメーターHZ−2を用い、測定した。
【0087】
(実施例2)
「シクロオレフィン積層体Bの作製」
樹脂層処方のハイドランWLS201の代わりにハイドランWLS210(DIC社製ウレタンポリカーボネートラテックス。平均粒径0.1μm以下)を同じ固形分量となるよう用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Bを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0088】
(実施例3)
「シクロオレフィン積層体Cの作製」
樹脂層処方のハイドランWLS201の代わりにビニゾール1082(大同化成社製アクリルラテックス。平均粒径0.1μm)を同じ固形分量となるよう用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Cを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0089】
(実施例4)
「シクロオレフィン積層体Dの作製」
下記処方に従い実施例1同様に塗布することでCOC支持体上に樹脂層を作製し、さらに樹脂層の上に、下記処方の物理現像核を塗布し、その上に実施例1同様に中間層、ハロゲン化銀乳剤層、最外層を設け、シクロオレフィン積層体前駆体を作製し、これを用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Dを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0090】
<樹脂層塗液2処方/1mあたり>
アラキード9203N(荒川化学工業社製、アミン変性エポキシ樹脂。分子量30000) 2.5g(固形分0.1g)
n−ブタノール 7.5g
トルエン 7.5g
【0091】
<物理現像核層処方/1mあたり>
ノニオンOT221(日油社製ノニオン界面活性剤) 1mg
実施例1で作製した硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0092】
(比較例1)
「比較シクロオレフィン積層体Eの作製」
樹脂層処方のハイドランWLS201の代わりにスミカフレックス510(住友化学工業社製酢酸ビニル−エチレン共重合体ラテックス。平均粒径0.7μm)を同じ固形分量となるよう用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Eを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
「比較シクロオレフィン積層体Fの作製」
樹脂層処方のハイドランWLS201の代わりにラックスター2800A(DIC社製カルボキシル変成SBRラテックス。平均粒径0.15μm)を同じ固形分量となるよう用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Fを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0094】
(比較例3)
「比較シクロオレフィン積層体Gの作製」
COC支持体にPL16−110紫外線表面処理装置(セン特殊光源社製。UV照度18mW/cm)にて10分UV光を照射し、これに樹脂層を設けず、COC支持体上に実施例4で用いた物理現像核を塗布し、さらに実施例4と同様に物理現像核層の上に、中間層、ハロゲン化銀乳剤層、最外層を塗布する以外は実施例4と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Gを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0095】
(比較例4)
「比較シクロオレフィン積層体Hの作製」
COC支持体にPWB−24型プラズマ装置(マーチプラズマ社製。酸素流量2.5L/分。真空度250mmHg)にて処理し、これに樹脂層を設けず、COC支持体上に実施例4で用いた物理現像核等を塗布し、さらに実施例4同様に物理現像核層の上に、中間層、ハロゲン化銀乳剤層、最外層を塗布する以外は実施例1同様にして透明なシクロオレフィン積層体Hを作製し、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。
【0096】
(比較例5)
「比較シクロオレフィン積層体Iの作製」
黒化処理をしない以外は実施例1と同様にし、「銀黒」(エダミネ社製テルル系黒化液)室温15秒処理にて黒化処理し透明なシクロオレフィン積層体Iを作製した。作製したシクロオレフィン積層体Iを実施例1と同様にして評価し、その結果を表1に記載した。
【0097】
(比較例6)
「比較シクロオレフィン積層体Jの作製」
黒化処理をしない以外は実施例1と同様にし、下記処方の黒化ニッケル無電解めっき液に80℃10分浸漬し、続いて塩化第二鉄100g/L(Fe3+として約0.37mol/L)、および塩酸200g/Lを含有する酸性処理液を用い、酸性処理液中に25℃で1分浸漬したが、金属部が剥離してしまった。
【0098】
<黒化ニッケルめっき液>
硫酸ニッケル 0.1mol
次亜リン酸ナトリウム 0.1mol
クエン酸 0.1mol
乳酸 0.1mol
サッカリン 1g
25%アンモニア水を加え、pHを6とした。全量を水で1000mLとした。
【0099】
【表1】

【0100】
表1より樹脂層を設けないと、全く密着性が得られないことが判る。また、アクリル、ウレタン、エポキシ以外の樹脂からなる樹脂層では特にヒートサイクルによる接着力の低下が顕著であることが判る。黒化処理においても硫化黒化が優れていることが判る。
【0101】
(実施例5)
「シクロオレフィン積層体Kの作製」
実施例1と同様にして、シクロオレフィン積層体前駆体を作製し、これを実施例1同様にして、露光、現像した。この後、CU−5100無電解銅めっき液中で50℃10分浸漬し、その後実施例1同様にして黒化処理し透明なシクロオレフィン積層体Kを作製した。これを実施例1と同様にして評価した。なお、シクロオレフィン積層体Kのパターニングされた金属部の厚みは0.5μmであった。結果を表2に示す。
【0102】
(実施例6)
「シクロオレフィン積層体Lの作製」
無電解銅めっき液中で50℃20分浸漬する以外は、実施例5と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Lを作製した。これを実施例1と同様にして評価した。なお、シクロオレフィン積層体Lのパターニングされた金属部の厚みは0.8μmであった。結果を表2に示す。
【0103】
(比較例7)
「シクロオレフィン積層体Mの作製」
無電解銅めっき液中で50℃30分浸漬する以外は、実施例5と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Mを作製した。これを実施例1と同様にして評価した。なお、シクロオレフィン積層体Mのパターニングされた金属部の厚みは1.2μmであった。結果を表2に示す。
【0104】
(比較例8)
「シクロオレフィン積層体Nの作製」
無電解銅めっき液中で50℃40分浸漬する以外は、実施例5と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Nを作製した。これを実施例1と同様にして評価した。なお、シクロオレフィン積層体Nのパターニングされた金属部の厚みは1.5μmであった。結果を表2に示す。
【0105】
(比較例9)
「シクロオレフィン積層体Oの作製」
黒化処理をHIST500黒化液(日立化成製黒化液。亜塩素酸含有酸化型黒化液)を用い、95℃3分処理する以外は実施例5と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Oを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表2に示す。
【0106】
(比較例10)
「シクロオレフィン積層体Pの作製」
黒化処理を比較例6と同様にする以外は実施例5と同様にしてシクロオレフィン積層体を作製しようとしたが、黒化処理中に金属部が剥離してしまった。
【0107】
【表2】

【0108】
表2より、金属部の厚みが1.0μmを越えたシクロオレフィン積層体はヒートサイクルに入る前の密着性は良いものの、ヒートサイクルにより、密着性が悪化することが判る。また、酸化黒化では密着性は好ましくないことも判る。
【0109】
(実施例7)
「シクロオレフィン積層体Qの作製」
樹脂層処方として下記処方の樹脂層塗液を用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Qを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表3に示す。なお、樹脂層の厚みは0.2μmであった。
【0110】
<樹脂層塗液3処方/1mあたり>
ハイドランWLS201(DIC社製ポリエーテル系ウレタンラテックス)
280mg(固形分100mg)
ゼラチン 100mg
ノニオンOT221(日油社製ノニオン界面活性剤) 2mg
EX313(ナガセケムテックス社製エポキシ硬化剤) 18mg
ハイミクロンL271(中京油脂社製滑剤) 8mg
前記硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0111】
(実施例8)
「シクロオレフィン積層体Rの作製」
樹脂層処方として下記処方の樹脂層塗液を用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Rを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表3に示す。なお、樹脂層の厚みは0.3μmであった。
【0112】
<樹脂層塗液4処方/1mあたり>
ハイドランWLS201(DIC社製ポリエーテル系ウレタンラテックス)
420mg(固形分150mg)
ゼラチン 150mg
ノニオンOT221(日油社製ノニオン界面活性剤) 3mg
EX313(ナガセケムテックス社製エポキシ硬化剤) 27mg
ハイミクロンL271(中京油脂社製滑剤) 12mg
前記硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0113】
(実施例9)
「シクロオレフィン積層体Sの作製」
樹脂層処方として下記処方の樹脂層塗液を用いる以外は実施例1と同様にして透明なシクロオレフィン積層体Sを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表3に示す。なお、樹脂層の厚みは0.4μmであった。
【0114】
<樹脂層塗液5処方/1mあたり>
ハイドランWLS201(DIC社製ポリエーテル系ウレタンラテックス)
560mg(固形分200mg)
ゼラチン 200mg
ノニオンOT221(日油社製ノニオン界面活性剤) 4mg
EX313(ナガセケムテックス社製エポキシ硬化剤) 36mg
ハイミクロンL271(中京油脂社製滑剤) 16mg
前記硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0115】
【表3】

【0116】
表3より樹脂層の厚みは0.3μmを越えると密着性が悪化してくることが判る。
【0117】
(実施例10)
「シクロオレフィン積層体Tの作製」
実施例1で実施したのと同様にして、COC支持体上に樹脂層を設けた。得られた樹脂層の上に、厚み15μmのドライフィルムレジスト(旭化成社製SUNFORTシリーズSPG)をラミネートし、さらに水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介さず、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンのネガ透過原稿を密着させて露光し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中で揺動させながら40秒間現像した。続いて5%クリーナー160(メルテックス社製脱脂液)で60℃1分脱脂処理し、その後エンプレートアクチベーター(メルテックス社製触媒付与剤)で室温5分処理し、さらにその後Cu5100番無電解銅めっき液(メルテックス社製)で50℃3分無電解めっきを施し、最後に実施例1で用いた黒化処理液中に70℃3分間浸漬することで黒化処理した。なお、脱脂および触媒付与液、めっき処理、黒化処理の後には水洗工程を設けている。無電解めっき処理の後、40℃の3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付けることにより、ドライフィルムレジストを剥離、除去し水洗、乾燥させて透明なシクロオレフィン積層体Tを作製した。なお、シクロオレフィン積層体のパターニングされた金属部の厚みは0.2μmであった。得られたシクロオレフィン積層体Tを実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0118】
(実施例11)
「シクロオレフィン積層体Uの作製」
樹脂層を実施例2で作製したのと同じ処方、同じ厚みの樹脂層を用いる以外、実施例10と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Uを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表4に示す。
【0119】
(実施例12)
「シクロオレフィン積層体Vの作製」
樹脂層を実施例3で作製したのと同じ処方、同じ厚みの樹脂層を用いる以外、実施例10と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Vを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表4に示す。
【0120】
(比較例11)
「シクロオレフィン積層体Wの作製」
樹脂層を比較例1で作製したのと同じ処方、同じ厚みの樹脂層を用いる以外、実施例10と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Wを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0121】
(比較例12)
「シクロオレフィン積層体Xの作製」
樹脂層を設けず、比較例3と同様にしてCOC支持体をUV処理する以外、実施例10と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Xを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0122】
(比較例13)
「シクロオレフィン積層体Yの作製」
樹脂層を設けず、比較例4と同様にしてCOC支持体をプラズマ処理する以外、実施例10と同様にして、透明なシクロオレフィン積層体Yを作製し、実施例1同様に評価した。結果を表4に示す。
【0123】
(実施例13)
「シクロオレフィン積層体Zの作製」
2Lのステンレスビーカーに平均分子量が約30000の焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.1−A)を54.4gと純水860gを加え、約30分間撹拌した。その後、硝酸銀131.8gを加え、さらに約30分間撹拌し、完全に溶解した。この液に水酸化カリウム60.9gを純水83.9gに溶解した液を添加し、撹拌回転数400rpmの状態で60分間還元反応を実施した。還元反応が終了した銀超微粒子分散液を続いて、酢酸にてpH=5.6に調整した後、ビオザイムF10SD(天野エンザイム(株)製)を200mg添加し45℃で1時間撹拌し、残留しているデキストリンを低分子化し、7質量%の銀超微粒子分散液を得た。次に、得られた銀超微粒子分散液の精製工程として、遠心分離を実施することで、銀超微粒子と上澄み液を綺麗に分離させ、上澄み液を廃棄した。残った銀超微粒子を再分散させ、繰り返し遠心分離を実施し、上澄み液を廃棄した。その後、純水を加えて再分散し、銀濃度が47.2質量%の銀超微粒子分散液1を110g得た。
【0124】
銀超微粒子分散液1を3g取り、活性剤(泰光油脂化学(株)製タイポールNLES−227)を0.01g、ポリマーラテックスとして第一工業製薬(株)製スーパーフレックス150HS(ポリウレタンラテックス、平均粒径0.11μm、固形分38質量%)を0.64g、塩化ナトリウム濃度が2質量%の水溶液を1.42g添加し、純水で濃度調整を行い、銀濃度が20質量%、ポリマーラテックス固形分濃度が3.43質量%、水溶性ハロゲン化物質量モル濃度が0.090mol/kgの銀超微粒子含有組成物1を得た。
【0125】
実施例1で実施したのと同様にして、COC支持体上に樹脂層を設けた。得られた樹脂層の上に、厚み15μmのドライフィルムレジスト(旭化成社製SUNFORTシリーズSPG)をラミネートし、さらに水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介さず、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンのネガ透過原稿を密着させて露光し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中で揺動させながら40秒間現像した。
【0126】
銀超微粒子含有組成物1を、パターニングされたドライラミネートフィルムの上からワイヤーバーを用いて、銀の厚みが0.2μmとなるよう塗布し、120℃10分乾燥した。その後、40℃の3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付けることにより、ドライフィルムレジストを剥離、除去し水洗、乾燥させ、さらにその後、実施例1と同条件で黒化処理して透明なシクロオレフィン積層体Zを作製した。シクロオレフィン積層体を実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
表4よりパターニングした金属部の作製方法を変えても同様の結果が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィン支持体上に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一つを含有する樹脂層、および該樹脂層上に、硫化物により黒化処理された厚み1μm以下のパターニングされた金属部を有するシクロオレフィン積層体。
【請求項2】
シクロオレフィン支持体上に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一種を含有する樹脂層を塗設する工程、該樹脂層上に厚みが1μm以下のパターニングされた金属部を形成する工程、および該金属部を硫化物によって黒化処理する工程を少なくとも具備するシクロオレフィン積層体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層の厚みが0.35μm以下である請求項1記載のシクロオレフィン積層体。
【請求項4】
前記樹脂層の厚みが0.35μm以下である請求項2記載のシクロオレフィン積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−11737(P2012−11737A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152644(P2010−152644)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】