説明

シクロヘキセニルアルキルまたはアルケニルケトンの異性化法

本発明は、触媒としてルテニウムの有機金属前駆物質と酸との反応により得られるルテニウム錯体を使用して、2−アルキル−シクロヘキセ−3−エニルアルキルまたはアルケニルケトンを、相応する2−アルキル−シクロヘキセ−2−エニルケトンと相応する2−アルキレン−シクロヘキシルケトンとを含有する混合物へと炭素−炭素二重結合を異性化する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機合成の分野に関する。より具体的には本発明は適切なルテニウムの有機金属前駆物質と酸とを反応させることにより得られる錯体を触媒として使用して、2−アルキル−シクロヘキセ−3−エニルアルキルまたはアルケニルケトンを、相応する2−アルキル−シクロヘキセ−2−エニルケトンと相応する2−アルキレン−シクロヘキシル−ケトンとを含有する混合物へと異性化する方法を提供する。
【0002】
従来技術
以下に定義する式(II)または(II′)の化合物は、付香成分として、またはより複雑な骨格を有する化合物を構成するための原料として有用であり得る。
【0003】
該化合物の製造方法は従来技術では一般に極めて長時間であり、かつ高価であることが報告されている。さらに、該方法はそれぞれ、該化合物のどちらか一方を得ることができるのみである。従って該化合物を得るために、当業者は2の別々の工程を実施しなくてはならないが、これは時間の無駄になる。
【0004】
従って、このような化合物を、原料が容易に入手可能な材料であり、かつ化合物(II)および(II′)の両方を得ることが可能であり、容易かつ効果的な異性化法を用いて得ることが大いに所望される。
【0005】
我々が知る限りでは、従来技術では式(II)および(II′)の化合物が同時に直接得られる異性化法は報告されていない。
【0006】
発明の詳細な説明
前記の問題を解決するために、本発明は式
【0007】
【化1】

[式中、それぞれのRは、同時に、または無関係に、水素原子またはメチル基を表し、かつRは水素原子、線状もしくは分枝鎖状のC−アルキルまたはC−1−アルケニル基を表す]の基質を、式(II)の少なくとも1の化合物および式(II′)の少なくとも1の化合物
【0008】
【化2】

[式中、RおよびRは上記と同じ意味を有する]を含有する混合物へと異性化する方法であって、該方法を、配位しないか、または弱く配位する媒体中、不活性雰囲気下に、かつ
a)式[Ru(ジエン)(アリル)]、[Ru(ジエニル)]、[Ru(テトラエン)(エン)]または[Ru(ジエン)(トリエン)]のルテニウム前駆物質と、
b)式HX[式中、Xは弱く配位するか、または配位しないアニオンである]のプロトン酸または式B(R[式中、Rはフッ化物またはフェニル基を表し、場合により1〜5の基、たとえばハライド原子またはメチルまたはCF基により置換されている]のルイス酸または式FeX、FeX、AgX、AlY、FeY、FeY、SnY、SnY、AgY、AgY、SbY、AsYまたはPY[式中、Xは上記で定義した基であり、かつYはフッ素または塩素原子である]のルイス酸
とを、酸/ルテニウムのモル比0.3〜3.1で、配位しないか、または弱く配位する媒体中、および不活性雰囲気下に反応させることにより得られる触媒の存在下で実施する、異性化法を提供する。
【0009】
本発明による異性化法により得られる混合物中に存在していてもよく、かつ記載することが有用である別の化合物は、式
【0010】
【化3】

[式中、RおよびRは式(I)に記載されたものと同じものを意味する]のエノンである。
【0011】
化合物(III)は、異性化の最後に得られる混合物の任意の成分である。実際、出願人は化合物(III)の形成は特定の実験条件、特にRu/酸の比、反応の温度および時間、または使用される触媒およびその濃度に依存することを観察した。一般に、化合物(III)は、最終混合物の2質量%未満である。本発明の有利な実施態様によれば、最終混合物は式(III)の前記化合物を含んでいない。
【0012】
本発明の有利な実施態様によれば、基質は式
【0013】
【化4】

[式中、RおよびRは、式(I)に記載したものと同じものを表し、有利にはRは水素原子を表し、かつRは水素原子またはメチルまたはCH=CHCH基を表す]の化合物であり、かつ得られる混合物は、式(V)および(V′)
【0014】
【化5】

[式中、RおよびRは式(IV)のために記載したものと同じものを表す]の相応する化合物を含有する。
【0015】
前記の実施態様では、該混合物の上記の任意の成分は、式
【0016】
【化6】

[式中、RおよびRは式(VI)のために記載したものと同じものを表す]の成分である。
【0017】
さらに、式(I)の化合物、ならびに相応する化合物(II)または(II′)が光学活性形であってもよいことは特定の実施態様にかかわらず、言及しておくことも重要である。特に化合物(I)、(II)または(II′)は式
【0018】
【化7】

[式中、RおよびRは上記と同じものを表し、かつアスタリスクは該化合物が光学活性形であることを意味する]の化合物であってよい。
【0019】
光学活性な化合物(I)の特別な例は、(2E)−1−[(1S,2R)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−2−ブテン−1−オン、(2E)−1−[(1S,2S)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−2−ブテン−1−オン、1−[(1S,2R)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−1−エタノンまたは1−[(1S,2S)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−1−エタノンである。
【0020】
触媒は本発明による方法の重要な要因である。上記のとおり、該触媒は有機金属ルテニウム前駆物質と、特にルイス酸もしくはプロトン酸とを、配位しないか、または弱く配位する媒体中および不活性雰囲気下に反応させることにより得られる。
【0021】
適切なルテニウム前駆物質の、限定的ではない例として、一般式[Ru(ジエン)(アリル)][式中、「ジエン」はC〜C20、有利にはC〜C10の、2の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基、たとえばCOD(シクロオクタ−1,5−ジエン)またはNBD(ノルボルナジエン)またはヘプタ−1,4−ジエンを表し、かつ「アリル」はC〜C20、有利にはC10の、C=C−CまたはC=C−Cの断片を有する炭化水素基、たとえば2−アリルまたは2−メタリルを表す]の化合物を挙げることができる(たとえばJ.P.Genet等、引用文献:M.O.Albers等、Inorganic Synth.、1989、26、249、R.R.Schrock等、J.Chem.Soc.Dalton Trans.1974、951を参照のこと)。
【0022】
その他の適切なルテニウム錯体は[Ru(ジエニル)]タイプの化合物[式中、「ジエニル」はC〜C20、有利にはC〜C15の、1の炭素−炭素二重結合を有し、かつC=C−C、C=C−CまたはC=C−Oの断片を有する炭化水素基、たとえばペンタジエニル、シクロペンタジエニル、置換されたシクロペンタジエニル(たとえばペンタメチル−シクロペンタジエニル)、2,4−ジメチルペンタジエニル、2,3,4−トリメチルペンタジエニル、2,4−ジ(t−ブチル)−ペンタジエニルまたは2,4−ジメチル−1−オキサペンタジエニルを表す]を含む(たとえばR.D.Ernst等、J.Organometallic Chem.、1991、402、17、L.Stahl等、Organometallic 1983、2、1229、T.Schmidt等、J.Chem.Soc.Chem.Commun.、1991、1427、T.D.Newbound等、Organometallics、1990、9、2962)または2,5−シクロオクタジエニルまたは2,5−シクロヘプタジエニル(たとえばP.Pertici等、J.Chem.Soc.Dalton Trans.、1980、1961を参照のこと)。
【0023】
もう1つの適切なルテニウム錯体は式[Ru(ジエン)(トリエン)][式中、「トリエン」はC〜C20、有利にはC〜C12の、3の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基、たとえばシクロオクタ−1,3,5−トリエン(COT)、ベンゼンまたは置換されたベンゼン、たとえばヘキサ−メチル−ベンゼンを表す]の錯体である。有利なトリエンはCOTである。
【0024】
もう1つの適切なルテニウム錯体は式[Ru(テトラエン)(エン)][式中、「テトラエン」は、C〜C20、有利にはC〜C12の、4の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素、たとえばシクロオクタ−1,3,5,7−テトラエンを表し、かつ「エン」はC〜C10、有利にはC〜Cの、1の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基、たとえばシクロオクテンまたはシクロヘキセンを表す]
【0025】
本発明の有利な実施態様によれば、Ru前駆物質として式[Ru(COD)(2−メタリル)]、[Ru(COD)(COT)]、[Ru(2,4−ジメチルペンタジエニル)]の化合物(たとえばL.Stahl等またはT.D.Newbound等、引用文献)または[Ru(2,4−ジメチル−1−オキサペンタジエニル)]錯体(たとえばT.Schmidt等、引用文献)を使用する。[Ru(COD)(2−メタリル)]はその製造がJ.Powell等によりJ.Chem.Soc.1968、159において最初に報告され、実地の観点からは好都合であることが判明した。
【0026】
触媒の製造法では酸が使用され、該酸はルテニウム前駆物質をカチオン化すると考えられている。
【0027】
触媒の製造において使用される適切な酸の第一の種類は、プロトン酸のタイプである。プロトン酸は弱く配位するか、または配位しないアニオンを有していなくてはならない。「弱く配位するか、または配位しないアニオン」という表現はここでは、反応条件下で触媒と顕著に相互作用しないアニオンを意味し、このような概念は触媒の当業者には周知である。換言すれば、弱く配位するか、または配位しないアニオンは、触媒のRu中心に全く配位しないか、または式(I)の基質よりも劣った配位安定度定数を有するアニオンである。
【0028】
触媒を製造するために適切なプロトン酸の限定的ではない例は、式HX[式中、XはClO、RSOであり、Rは塩素またはフッ素原子またはC〜C−フルオロアルキルまたはフルオロアリール基である]、BF、PF、SbCl、AsCl、SbF、AsFまたはBR[式中、Rはフェニル基であり、場合により1〜5の基、たとえばハライド原子またはメチルまたはCF基により置換されている]の酸である。
【0029】
本発明の有利な実施態様によれば、弱く配位するか、または配位しないアニオンは、BF、PF、CSO、CFSOまたはB[3,5−(CFであり、さらに有利にはBFである。
【0030】
このようなプロトン酸は相応するエーテラートの形で(たとえばHBFO、その際、RはC〜C−炭化水素基、たとえばCまたはCである)使用することができる。これらのエーテラートは市販品であるか、またはこれらはAgXとHClとを、ジアルキルエーテルを含有する溶剤、たとえばジクロロメタンとジエチルエーテルとの混合物中で反応させることにより製造することができる。銀塩化物が沈殿するにつれて、これは酸のエーテラート溶液を提供し、これは次いで本発明によればルテニウム前駆物質との反応において使用することができる。
【0031】
触媒の製造において使用される適切な酸の第二のタイプはルイス酸のタイプである。このような酸の適切な例は、FeCl、AlCl、SbF、AsFまたはPF、AgF、Fe(CFSO、AgBF、SnCl、BFまたはBMeである。
【0032】
該酸は無水物の形で、またはこれらのいくつかに関しては、水和物の形であってもよい。さらに、ホウ素またはアルミニウムの誘導体、特にBFは、該誘導体とエーテルまたはカルボン酸、たとえばROまたはRCOOH[式中、RはC〜C−アルキル基であり、かつRはC〜C20−アルキル基である]との任意の付加物の形であってよい。本発明の特別な実施態様によれば、有利なルイス酸はBFまたはEtO、BuOもしくはAcOHとのBF付加物である。
【0033】
上記によれば、触媒の製造において、酸およびRu前駆物質を0.3〜3.1のモル比で反応させる。本発明の有利な実施態様によれば、前記の比は約0.5〜2である。
【0034】
触媒はその効力を低下させないために、配位しないか、または弱く配位する溶剤中および不活性雰囲気下で製造することもできる。「配位しないか、または弱く配位する溶剤」という表現はここでは触媒を著しく不活性化することがなく、かつ基質が触媒と反応することができるようにする溶剤を意味し、このような概念は触媒の当業者には周知である。換言すれば、弱く配位するか、または配位しない溶剤は、触媒のRu中心に全く配位しないか、または式(I)の基質よりも配位安定度定数が低い溶剤である。
【0035】
一般に実験条件下で不活性であり、かつ基質および触媒を溶解することができる任意の溶剤が特に適切である。本発明の特別な実施態様では、このような溶剤は塩素化された炭化水素、飽和もしくは不飽和の炭化水素、エーテル、エステル、カルボン酸、弱く配位したケトン(立体障害ケトン)または式(I)の基質またはこれらの混合物である。このような溶剤の特別な例は、CHCl、ヘプタン、オクタン、ジブチルエーテル、ブチルアセテート、酢酸、t−アミルメチルエーテル、ジイソプロピルケトンまたは上で定義したとおりの式(IV)の化合物である。
【0036】
「不活性雰囲気」という表現はここでは触媒に対して反応性ではない雰囲気を意味し、かつ特にその酸素含有率が200ppmより低く、かつ有利には100ppmを超えない雰囲気である。
【0037】
我々の知る限りでは、上記の方法により得られ、かつ酸が上で定義したとおりルイス酸である触媒は、新規の化合物である。該触媒もまた本発明の対象である。有利なルイス酸はBF、BF・EtO、BF・BuOまたはBF・(AcOH)である。有利なルテニウム前駆物質は錯体[Ru(COD)(2−メタリル)]、[Ru(COD)(COT)]、[Ru(2,4−ジメチルペンタジエニル)]または[Ru(2,4−ジメチル−1−オキサペンタジエニル)]、および特に[Ru(COD)(2−メタリル)]である。
【0038】
本発明の方法は、配位しないか、または弱く配位する溶剤中および不活性雰囲気下で実施することもできる。該溶剤および雰囲気は触媒の形成に関して上記で定義されている。
【0039】
本発明による方法で触媒を使用する量は一般に、基質に対して0.01〜2モル%である。本発明の方法の有利な実施態様では、触媒を約0.05〜1モル%の濃度で使用する。より具体的には、触媒の量は、約0.1〜0.4モル%であってよい。触媒を大量に使用することは、得られる混合物中の式(III)の化合物の存在につながりうる。
【0040】
本発明の方法を実施することができる温度は、60℃から溶剤または基質の環流温度までである。有利には温度は60℃〜180℃の範囲であり、さらに有利には110℃〜165℃であり、かつより一段と有利には110℃〜150℃である。当然のことながら、当業者は原料および最終生成物ならびに溶剤の融点および沸点の関数として有利な温度を選択することができる。
【0041】
しかしプロセス温度が150℃〜180℃の範囲である場合、方法の終わりに得られる混合物は、特に基質の変換がそれ以上観察されなくなった後にも反応をこのような温度にしておく場合には、認容可能な量の式(III)の化合物を含有しうることに言及しなくてはならない。
【0042】
ここで、本発明を以下の実施例に基づいてより詳細に記載するが、その際、略号は技術分野における通常の意味を有しており、温度は摂氏(℃)で記載する。
【0043】
例1
プロトン酸を使用して得られる触媒の存在下での1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノンの異性化
窒素下に20℃で攪拌されるトランス1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン(4.52モル、トランス/シス=94/5〜99/1、純度≧99%)に、HBFOEt(HBFの4.54ミリモル)および[Ru(COD)(メタリル)](4.54ミリモル)を連続的に添加した。得られる溶液を130℃に加熱し、かつ窒素下に130℃で30分間攪拌した。その後、得られる混合物を20℃に冷却し、かつ次のものを含有する混合物が得られた(最終混合物の質量%、GC分析により得られた):
トランス−1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 6%、
シス−1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 1%、
1−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 86%、
1−(2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキシル)−1−エタノン 2%、
1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 2%。
【0044】
例2
ルイス酸を使用して得られる触媒の存在下での1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノンの異性化
窒素下に20℃で攪拌されるトランス1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン(4.52モル、トランス/シス=94/5〜99/1、純度≧99%)に、BF・(AcOH)(BFの2.27ミリモル)および[Ru(COD)(メタリル)](2.27ミリモル)を連続的に添加した。得られる溶液を130℃に加熱し、かつ窒素下に130℃で30分間攪拌した。その後、得られる混合物を20℃に冷却し、かつ次のものを含有する混合物が得られた(最終混合物の質量%、GC分析により得られた):
トランス−1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 7%、
シス−1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 1%、
1−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 87%、
1−(2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキシル)−1−エタノン 2%、
1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン 観察されず。
【0045】
例3
ルイス酸を使用して得られる触媒の存在下での1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オンの異性化
窒素下に20℃で攪拌されるトランス1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン(25g、130ミリモル、トランス:シス=98:2、純度≧99%)に、BF・(AcOH)(0.65ミリモル)および[Ru(COD)(メタリル)](0.65ミリモル)を連続的に添加した。得られる溶液を130℃に加熱し、かつ窒素下に130℃で60分間攪拌した。次いで、得られる混合物を20℃に冷却し、かつ次のものを含有する混合物が得られた(最終混合物の質量%、GC分析により得られた):
トランス−1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン 9%、
1−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン 86%、
1−(2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキシル)−2−ブテン−1−オン 1%、
1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン 観察されず。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、それぞれのRは、同時に、または無関係に、水素原子またはメチル基を表し、かつRは水素原子、線状もしくは分枝鎖状のC−アルキルまたはC−1−アルケニル基を表す]の基質を、式(II)の少なくとも1の化合物と、式(II′)の少なくとも1の化合物
【化2】

[式中、RおよびRは上記と同じ意味を有する]とを含有する混合物へと異性化する方法であって、該方法を、配位しないか、または弱く配位する媒体中、不活性雰囲気下に、かつ
a)式[Ru(ジエン)(アリル)]、[Ru(ジエニル)]、[Ru(テトラエン)(エン)]または[Ru(ジエン)(トリエン)]のルテニウム前駆物質と、
b)式HX[式中、Xは弱く配位するか、または配位しないアニオンである]のプロトン酸または式B(R[式中、Rはフッ化物またはフェニル基を表し、場合により1〜5の基、たとえばハライド原子またはメチルまたはCF基により置換されている]のルイス酸または式FeX、FeX、AgX、AlY、FeY、FeY、SnY、SnY、AgY、AgY、SbY、AsYまたはPY[式中、Xは上記で定義した基であり、かつYはフッ素原子または塩素原子である]のルイス酸
とを、酸/ルテニウムのモル比0.3〜3.1で、配位しないか、または弱く配位する媒体中、および不活性雰囲気下に反応させることにより得られる触媒の存在下で実施する、式Iの基質の異性化法。
【請求項2】
化合物(I)、(II)または(II′)が、式
【化3】

[式中、RおよびRは請求項1に記載したものと同じものを表し、かつアスタリスクは該化合物が光学活性形であることを表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基質が(2E)−1−[(1S,2R)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−2−ブテン−1−オン、(2E)−1−[(1S,2S)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−2−ブテン−1−オン、1−[(1S,2R)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−1−エタノンまたは1−[(1S,2S)−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−1−エタノンであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
基質が式
【化4】

[式中、RおよびRは請求項1に記載したものと同じものを表す]の基質であり、かつ得られた混合物が、式(V)および(V′)
【化5】

[式中、RおよびRは、請求項1に記載したものと同じものを表す]の相応する化合物を含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
が水素原子を表し、かつRが水素原子またはメチルまたはCH=CHCH基を表すことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ルテニウム前駆物質が一般式
i)[Ru(ジエン)(アリル)][式中、「ジエン」はCOD(シクロオクタ−1,5−ジエン)、NBD(ノルボルナジエン)またはヘプタ−1,4−ジエンを表し、かつ「アリル」は2−アリルまたは2−メタリルを表す]、
ii)[Ru(ジエニル)][式中、「ジエニル」はペンタジエニル、2,4−ジメチルペンタジエニル、2,3,4−トリメチルペンタジエニル、2,4−ジ(t−ブチル)−ペンタジエニル、2,4−ジメチル−1−オキサペンタジエニルまたは2,5−シクロオクタジエニルまたは2,5−シクロヘプタジエニルを表す]、
iii)[Ru(ジエン)(トリエン)][式中、「ジエン」は上記と同じものを表し、かつ「トリエン」はシクロオクタ−1,3,5−トリエン(COT)を表す]または
iv)[Ru(テトラエン)(エン)][式中、「テトラエン」はシクロオクタ−1,3,5,7−テトラエンを表し、かつ「エン」はシクロオクテンまたはシクロヘキセンを表す]
の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ルテニウム前駆物質が錯体[Ru(COD)(2−メタリル)]、[Ru(COD)(COT)]、[Ru(2,4−ジメチルペンタジエニル)]または[Ru(2,4−ジメチル−1−オキサペンタジエニル)]であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
XがClO、RSO[式中、Rは塩素またはフッ素原子であるか、またはC〜C−フルオロアルキルまたはフルオロアリール基、BF、PF、SbCl、AsCl、SbF、AsFまたはBRであり、Rはフェニル基であり、場合により1〜5の基、たとえばハライド原子またはメチルまたはCF基により置換されている]であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
XがBF、PF、CSO、CFSOまたはB[3,5−(CFであることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
酸HXがHBFEtOであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ルイス酸がFeCl、AlCl、SbF、AsFまたはPF、AgF、Fe(CFSO、AgBF、SnCl、BF、BMeであるか、またはエーテルもしくはカルボン酸ROまたはRCOOH[式中、RはC〜C−アルキル基であり、かつRはC〜C20−アルキル基である]とのBFの付加物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ルイス酸がBFであるか、またはEtO、BuOまたはAcOHとのBF付加物であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
配位しないか、または弱く配位する媒体が塩素化された炭化水素、飽和もしくは不飽和の炭化水素、エーテル、エステル、カルボン酸、弱く配位するケトン(立体障害ケトン)または請求項1において定義されている式(I)の基質であるか、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項14】
触媒を基質に対して約0.1〜0.4モル%の濃度で使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項15】
a)式[Ru(ジエン)(アリル)]、[Ru(ジエニル)]、[Ru(テトラエン)(エン)]または[Ru(ジエン)(トリエン)]のルテニウム前駆物質および
b)式B(R[式中、Rはフッ化物またはフェニル基を表し、場合により1〜5の基、たとえばハライド原子またはメチルまたはCF基により置換されている]のルイス酸または式FeX、FeX、AgX、AlY、FeY、FeY、SnY、SnY、AgY、AgY、SbY、AsYまたはPY[式中、Xは上記で定義した基であり、かつYはフッ素原子または塩素原子である]のルイス酸
を反応させ、その際、酸/ルテニウムのモル比は0.3〜3.1であり、かつ反応は配位しないか、または弱く配位する媒体中および不活性雰囲気下で実施することにより得られる触媒。
【請求項16】
ルテニウム前駆物質が請求項6または7で定義されているものであることを特徴とする、請求項12記載の触媒。
【請求項17】
ルイス酸がBF、BFEtO、BFBuOまたはBF(AcOH)であることを特徴とする、請求項15または16記載の触媒。

【公表番号】特表2007−515421(P2007−515421A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544571(P2006−544571)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003978
【国際公開番号】WO2005/061426
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1、route des Jeunes、 CH−1211 Geneve 8、 Switzerland
【Fターム(参考)】