説明

シクロペンテンジオールモノアセテート誘導体

式(I)
【化1】


(式中、R1は本明細書に記載のとおりである)
の化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、とりわけ式(I)
【化1】

〔ここで、RはC−C−アルキル、C−C10−アリール、C−C−アルコキシおよびC−C10−アリールオキシからなる群から選択される〕
のシクロペンテンジオールモノアセテート誘導体の製造に関する。
【0002】
ホモキラルシクロペンテンジオールモノアセテート誘導体a−d
【化2】

およびジオールe−f
【化3】

は、多様な重要分子、特にプロスタノイドおよび炭素環式ヌクレオシドの合成について重要な構造ブロックとして使用されている。
【背景技術】
【0003】
cisエナンチオマーaおよびbへの現在の経路は、危険な出発物質/中間体(シクロペンタジエンおよび過酸化物)および操作、および/または一定しない反応および/または選択性不良を含んでおり、特にスケールアップのためにはそれらの効率および有用性が限定されている。
【0004】
シクロペンテンジオールモノアセテートaおよびbは、一重項酸素の付加、シクロペンタジエンダイマーへの分解に続いて過酸化物の還元を経て製造されている。Saito et al., “Structure-activity relationships of untenone A and its derivatives for inhibition of DNA polymerases” Frontier Research Center for Genome and Drug Discovery, Tokyo University of Science, Noda, Chiba, Japan, Bioorg Med Chem Lett, Vol. 14, No. 8, pp. 1975-1977 (2004); および Zhang et al., “Versatile Photosensitization System for 1O2-Mediated Oxidation of Alkenes Based on Nafion-Supported Platinum(II) Terpyridyl Acetylide Complex”, Technical Institute of Physics and Chemistry, Chinese Academy of Sciences, Beijing, Peop. Rep. China, Org Lett, Vol. 5, No. 18, pp. 3221-3224 (2003)参照。該ジオールはジアシル化され、その後酵素的に不斉化されて1または2が得られる。Lalonde et al., “Cross-Linked Crystals of Candida rugosa Lipase: Highly Efficient Catalysts for the Resolution of Chiral Esters”, Altus Biologics Inc., Cambridge, MA, USA, JACS, Vol. 117, No. 26, pp. 6845-6852 (1995)参照。
【0005】
シクロペンタジエンの臭素化、その後のアセテート置換も記載されているが、低収率に苦しむ。DePuy and Zaweski, “Cyclopentene-3,5-dione. I. Synthesis and properties”, Iowa State Univ., Ames, JACS, Vol. 81, pp. 4920-4924 (1959)参照。
【0006】
シクロペンタジエンの過酸酸化はまた、ジオール前駆体を1−4に製造するために使用されているが、不良な位置および立体選択性に苦しむ。Reimann and Poeschl, “Intramolecular alkylation of aromatic compounds. Part 32. Regioselective synthesis of 4-methyl-1-pyrindan-5-one”, Inst. Pharm. Lebensmittelchemie, Univ. Muenchen, Munich, Germany, Pharmazie, Vol. 50, No. 9, pp. 589-592 (1995)参照。
【0007】
ジオールのtrans−異性体fおよびgは、長い合成シーケンスによってキラルに合成されている。Kimura, Ehama and Inomata, “Chiral preparation of C2-symmetric 4-Cyclopentene-1,3-diol”, Tohoku Pharmaceutical University, Sendai, Japan, Synthesis, pp. 1027-1032 (2002)参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ホモキラルシクロペンテンジオールモノアセテート誘導体のより効率的な製造方法が望まれている。かかる方法は、高純度の化合物を提供し、そして大規模合成に適している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(I):
【化4】

〔式中、RはC−C−アルキル、C−C10−アリール、C−C−アルコキシおよびC−C10−アリールオキシからなる群から選択される〕
の有機化合物の製造方法であって、下記工程を含む方法に関する:
(1)フルフリルアルコールを酸性溶液中で十分な時間反応させて式(II)
【化5】

の化合物を形成させ;
(2)保護基を有する式(II)の化合物を非プロトン性溶媒中で、塩基の存在下で十分な時間反応させて、式(III)
【化6】

〔式中、Tは保護基である〕
の化合物を形成させ;
(3)式(III)の化合物を還元し、式(III)の化合物の前記保護基を除去して、式(IV)
【化7】

の化合物を得て;
【0010】
(4)式(V)
【化8】

〔式中、各Rは独立して、C−C−アルキル、C−C10−アリール、C−C−アルコキシおよびC−C10−アリールオキシから選択される〕
の化合物または式(Va)
【化9】

〔式中、Xはハロゲン、イミダゾールまたはN−ヒドロキシベンゾトリアゾールからなる群から選択される〕
の化合物を、式(IV)の化合物と反応させて式(VI)
【化10】

の化合物を得て;そして
(5)式(VI)の化合物を酵素と反応させて式(I)の化合物を得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義:
下記用語および略語を本明細書において使用し、下記のとおりに定義する。
「DMAP」は4−ジメチルアミノピリジンである。
「MTBE」はメチルt−ブチルエーテルである。
「DIBAL−H」またはDIBAHはジイソブチルアルミニウム水素化物であり、式BuAlH(ここで、Buはイソブチル基を意味する)を有する還元剤である。
【0012】
本願の特許請求の範囲の合成方法の反応を好適な溶媒中で行うことができる。当該溶媒は有機合成の分野における当業者が容易に選択することができ、該好適な溶媒は一般に、出発物質(反応物)、中間体または生成物と、反応が行われる温度、すなわち溶媒の凝固点温度〜溶媒の沸点温度の範囲の温度で実質的に非反応性である何れかの溶媒である。所定の反応を、1種類の溶媒または1種類以上の溶媒の混合物中で行うことができる。具体的な反応工程に基づいて、具体的な反応工程について好適な溶媒を選択することができる。
【0013】
好適な非プロトン性溶媒は、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロベンゼン、o−、m−、p−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、メチルt−ブチルエーテル、N−メチルピロリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、propioニトリル、ギ酸エチル、酢酸メチル、ヘキサクロロアセトン、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、テトラメチルウレア、ニトロメタン、ニトロベンゼンまたはヘキサメチルホスホロアミドを含むが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書において使用するとき、「塩基」なる用語は、アルコールをインサイチュで脱プロトン化するのに十分塩基性であり、かつカルボニルとインサイチュで適合性である当業者に既知の何れかの塩基、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンおよびN,N−ジイソプロピルアミンを意味する。
【0015】
「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書において使用するとき、フルオロ、クロロおよびブロモを意味する。
「C−C−アルキル」は、本明細書において使用するとき、分子および直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を含むことを意図する。
「C−C10−アリール」は、本明細書において使用するとき、6−10個の炭素原子を含み、そして例えばフェニルのような単環式基;またはナフチルのような二環式基であり得る芳香族性炭素環式基を含むことを意図する。
「C−C−アルコキシ」は、本明細書において使用するとき、1−8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルコキシ、例えばO−C−C−アルキルを意味する。
「C−C10−アリールオキシ」は、本明細書において使用するとき、酸素と結合している本明細書に定義のアリール、例えばO−アリールを意味する。
【0016】
本発明において使用する酵素は、リパーゼ、エステラーゼ、アシラーゼ等を含むが、これらに限定されない。好ましくはAlkaligenesに属する微生物に由来するリパーゼ、カンジダ属に属する微生物に由来するリパーゼ、シュードモナス属に属する微生物に由来するリパーゼ、ケカビ属に属する微生物に由来するリパーゼ等である。
【0017】
上記Alkaligenesに属する微生物に由来するリパーゼは、“リパーゼPL”(MEITO SANGYO Co.の製品の登録商標)等を含む。上記カンジダ属に属する微生物に由来するリパーゼは、“Novozym 435”(“Novo SP435”とも称する)(Novo-Nordisk A/Sの製品の登録商標)、“リパーゼOF”(MEITO SANGYO Co.の製品の登録商標)、“リパーゼMY”(MEITO SANGYO Co.の製品の登録商標)等を含む。上記シュードモナス属に属する微生物に由来するリパーゼは、“リパーゼPS AMANO”(AMANO PHARMACEUTICAL Co.の製品の登録商標)等を含む。上記ケカビ属に属する微生物に由来するリパーゼは、“リポザイムIM”(Novo-Nordisk A/Sの製品の登録商標)を含む。
【0018】
本明細書に記載の化合物は不斉中心を有し得る。全てのキラル、ジアステレオマーおよびラセミ形態が本発明に含まれる。本発明のある化合物が非対称的に置換された炭素原子を有しており、そして光学的に活性な形態またはラセミ形態で単離することができると理解される。光学的に活性な形態をどのように製造するか、例えばラセミ形態の分割または光学的に活性な出発物質からの合成によることは周知である。具体的な立体化学または異性体形態が具体的に示されていない限り、全てのキラル、ジアステレオマーおよびラセミ形態、ならびに全ての構造の幾何異性形態が意図される。
【0019】
置換基および/または可変部の組合せは、かかる組合せによって安定な化合物が得られるときのみ許容される。安定な化合物または安定な構造は、本明細書において、有用な程度の純度で反応混合物から単離して存在する程度に十分頑丈である化合物を意味する。
【0020】
本発明は、少なくとも数グラムスケール、キログラムスケール、数キログラムスケールまたは工業スケールで実施することを意図している。「数グラムスケール」は、本明細書において使用するとき、好ましくは少なくとも1種の出発物質が10g以上、より好ましくは少なくとも50g以上、さらにより好ましくは少なくとも100g以上存在するスケールである。「数キログラムスケール」は、本明細書において使用するとき、本明細書において使用するとき、好ましくは少なくとも1種の出発物質を1kg以上使用するスケールを意味することを意図する。「工業スケール」は、本明細書において使用するとき、実験室スケール以外のスケールであり、臨床試験または消費者に分配するのに十分な製品を供給するためのスケールを意味することを意図する。
【0021】
保護基Tは、官能基の性質について好適な保護基から、例えばProtective Groups in Organic Synthesis, T.W. Greene and P.G.M. Wuts, John Wiley & Sons Inc, Second Edition (1991)(該文献はまた、水素による保護基の置換に好適な方法を記載している)に記載のとおりに選択することができる。
【0022】
還元工程は、ケトンの還元について既知の方法を用いて、または例えば本明細書の実施例の記載と同様に行う。
【0023】
「求核触媒」は、多様な反応を触媒する。求核触媒の例には、DMAPを含むがこれに限定されない。反応の例は、無水物によるエステル化、Baylis-Hillman反応、シリル化、トリチル化、Steglich-転移、β−ラクタムのStaudinger合成、ならびにBerry et al., “Catalysis by 4 dialkylaminopyridines” および Hoefle, Steglich and Vorbrueggen, “O-401R 2001 and 4 dialkylaminopyridines as Highly Active Acylation Catalysts”, Angew Chem Int Ed Engl, Vol. 17, pp. 569-583 (1978)に記載の多くのものを含む。
【0024】
式(I)の化合物の製造において、工程(2)の保護基は好ましくはクロロトリメチルシランである。
【0025】
式(I)の化合物の製造において、式(V)の化合物は好ましくは
【化11】

〔式中、各Rは独立して、好適にはC−C−アルキルである〕
の化合物である。より好ましくは、式(V)の化合物は無水酢酸である。
【0026】
式(I)の化合物の製造において、工程(5)の酵素は好適には、Novo SP435またはリパーゼPS Amanoである。
【0027】
本発明の他の局面において、式(Ia)
【化12】

の有機化合物の製造であって、下記工程を含む製造を提供する:
(1)フルフリルアルコールを水を含む酸性溶液中で十分な時間反応させて式(IIa)
【化13】

の化合物を形成させ;
(2)式(IIa)の化合物とクロロトリメチルシランとジクロロメタン中、塩基の存在下で十分な時間反応させて、式(IIIa)
【化14】

の化合物を形成させ;
(3)式(IIIa)の化合物を非プロトン性溶媒中で反応させて、式(IVa)
【化15】

の化合物のラセミ混合物を得て:
(4)前記式(IVa)の化合物のラセミ混合物を無水酢酸と、非プロトン性溶媒中、塩基の存在下で十分な時間反応させて、式(VIa)
【化16】

の化合物を形成させ;そして
(5)式(VIa)の化合物とNovo SP435またはリパーゼPS Amano(LPS AB0351302)を反応させて式(Ia)の化合物を得る。
【0028】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(1)の酸性溶液は、リン酸水素カリウムおよびオルトリン酸を含む。
【0029】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(1)の酸性溶液は、pH約3.0〜約5.0を有する。
【0030】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(2)の塩基は好適にはトリエチルアミンである。
【0031】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(2)はさらにDMAPのような求核触媒を含む。
【0032】
式(Ia)の化合物の製造において、DIBAL−Hを工程(3)の還元剤として用いる。
【0033】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(3)の非プロトン性溶媒は好適には、トルエンまたはtert−ブチルメチルエーテルである。好ましくは、該非プロトン性溶媒はトルエンとtert−ブチルメチルエーテルの混合物である。
【0034】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(4)の塩基は好適にはトリエチルアミンである。
【0035】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(4)はさらに、DMAPのような求核触媒を含む。
【0036】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(4)の非プロトン性溶媒は好適にはジクロロメタンである。
【0037】
式(Ia)の化合物の製造において、工程(5)によって少なくとも80%のエナンチオマー比の生成物、すなわち化合物(Ia)が得られる。好ましくは、生成物、すなわち化合物(Ia)のエナンチオマー比は少なくとも90%である。
【0038】
有機合成の分野における当業者が、式(I)−(V)の化合物および/または式(Ia)−(Va)の化合物のホモログを製造するために、本明細書に記載または例示された方法を用意することができることが理解されよう。
【0039】
スキーム1はシクロペンテンジオールモノアセテート誘導体、例えば酢酸(1S,4R)−4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エニルエステル 6の合成における重要な工程を説明する。
スキーム1
【化17】

【0040】
本発明の方法は、ホモキラルシクロペンテンジオールモノアセテート誘導体を高純度で製造するためのより効率的な方法の創成を開示する。本方法はまた、危険な出発物質/中間体(シクロペンタジエンおよび過酸化物)および操作、および/またはムラのある反応、および/または不良な選択性(これらはスケールアップのためのそれらの効率および有用性を限定する)を含まない。
【0041】
スキーム2は4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エノン 2の製造方法を記載する。
スキーム2
【化18】

スキーム2において、酸、好ましくはオルトリン酸をフルフリルアルコールとリン酸水素カリウムの水溶液に加えて、溶液のpHを約4.1に調節する。その後、該溶液を加入温度で十分な時間加熱して、4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エノン 2を製造する。
【0042】
スキーム3において、4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エノン 2を保護基、例えばクロロトリメチルシランで保護する。保護プロセスにおいて、塩基をジクロロメタンのような非プロトン性溶媒の溶液に加え、その後DMAPを加える。得られた溶液を約0℃に冷却し、10℃を超えないようにクロロトリメチルシランを加える。反応物を十分な時間撹拌して、4−トリメチルシランオキシ−シクロペント−2−エノン 3を製造する。
スキーム3
【化19】

【0043】
スキーム4において、カルボニル基を還元し、保護基を除去して4−シクロペンテン−1,3−ジオール 4のラセミ混合物を得る。DIBAL−Hを4 トリメチルシランオキシ−シクロペント−2−エノン 3の非プロトン性溶媒溶液に、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下、0℃未満、好ましくは−20℃〜−30℃の温度で加える。得られた反応混合物を十分な時間撹拌して、4−シクロペンテン−1,3−ジオール 4のラセミ混合物を製造する。
スキーム4
【化20】

【0044】
スキーム5は、酢酸(1S,4R)−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステル 5を良好な収率で製造する方法を提供する。
スキーム5
【化21】

約室温で、4−シクロペンテン−ジオール 4のジクロロメタンのような非プロトン性溶媒懸濁液に、トリエチルアミンのような塩基、次にDMAPを加える。無水物またはアシルハライド、好ましくは無水酢酸を得られた反応混合物に、25℃未満、通常0〜20℃で加える。この添加の後、得られた反応混合物を約室温に十分な時間加熱して、酢酸(1S,4R)−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステル 5を製造する。
【0045】
スキーム6において、(1S,4R)−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステル 5を例えばpH7のリン酸バッファー(Fluka 73173)、リパーゼPS Amanoのような酵素を加え、必要であれば、塩基を加えてpHを約7に調節し、十分な時間を費やして、化合物6を製造する。ジアセテート 5はモノアセテート 6に良好な収率で加水分解される。塩基は好ましくは1M NaOHである。
スキーム6
【化22】

【0046】
あるいは、C2対称transアルコールcおよびdはまた、本明細書に記載の経路の変法によって、(酵素的)分解、次にアルコールのtrans選択的還元によって直接得ることができる:
【化23】

【0047】
下記実施例は、本発明の説明を意味する。これらの実施例は本発明の例示を意味しており、本発明の範囲の限定を構成しない。
【実施例】
【0048】
4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エノン 2の製造
【化24】

フルフリルアルコール 1(1.2L、13.85mol)の水(24L)溶液に、撹拌下、リン酸水素カリウム(69g、0.507mol)を加える。2mLオルトリン酸を滴下してpHを4.5〜4.1に調節する。その後、溶液を99℃に加熱し、一晩この温度で撹拌すると、明黄色溶液が明褐色ゴム状懸濁液になる。pHを4.0に低下させる。反応混合物を60℃に冷却し、hyfloで濾過する。明黄色濾液を減圧下(70℃、10mbar)で濃縮し、得られた褐色固体をジクロロメタン(4L)に懸濁させ、15分間撹拌する。懸濁液を濾過によって分離し、母液を蒸発乾固させる。粗生成物(606g)を130℃、0.0045mbarで短経路蒸留カラムで蒸留して精製して、4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エノン 2(448.8g、33%)を無色液体として得る。
【0049】
4−トリメチルシランオキシ−シクロペント−2−エノン 3の製造
【化25】

4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エノン 2(400g、4.01mol)の5L ジクロロメタン溶液に、トリエチルアミン(781.5mL、5.614mol)、次に4−DMAP(8g、0.064mol)を加える。混合物を0℃に冷却し、温度が0℃〜5℃の間を保つようにクロロトリメチルシラン(560mL、4.42mol)を滴下する。形成された濃黄色懸濁液をTHF(1L)で希釈し、室温で約1時間撹拌する。懸濁液をジクロロメタン(5L)で希釈し、15% 水性塩化アンモニウム(各5L)で抽出する。水層をジクロロメタン(3L)で抽出する。合併した有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発乾固させる。粗生成物(672.8g)を80℃、0.009mbarで短経路蒸留で精製して、445.5g 4−トリメチルシランオキシ−シクロペント−2−エノン 3を黄色油状物として得る(77%)。
【0050】
ラセミ4−シクロペンテン−1,3−ジオール 4の製造
【化26】

4−トリメチルシランオキシシクロペント−2−エノン 3(520g、3.05mol)の2.1L TBMEと3.1L トルエン混合物中溶液に、冷温(−30℃)で、トルエン中20%DIBAL−H(5.05L、約5.05mol)をアルゴン雰囲気下、温度が−22℃〜−25℃を保つように滴下する。反応混合物を−22℃で1時間(この時点で、TLCによって出発物質の変換の完了が示される)撹拌し、0℃に温め、飽和NHCl(350mL)で注意深くクエンチする。CO−EtOH浴で冷却して温度を0℃〜25℃に保つ。混合物をMeOH(10L)で希釈し、hyflo(125g)を加えて、混合物を1時間撹拌する。懸濁液を吸引濾過する。濾過ケーキをMeOH(5L)で、上記のとおり洗浄する。合併した濾液を減圧下で蒸発乾固させて、粗4−シクロペンテン−1.3−ジオール 4(329g、3.28mol、定量的)を赤色アモルファス状固体として得る。粗生成物を次の工程に使用する。
【0051】
酢酸(1S,4R)−4−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステル 5の製造
【化27】

4−シクロペンテン−ジオール 4(329g、3.05mol)のジクロロメタン(3.2L)懸濁液を、室温でトリエチルアミン(1.27L、9.15mol)および4−DMAP(11.2g、0.09mol)で処理する。氷浴で冷却して温度を8℃〜19℃に保つように、無水酢酸を滴下する。混合物を2時間室温で撹拌する。TLCによって出発物質の変換の完了が示される。反応混合物を2M水性HCl(5L)溶液に、十分な撹拌下で注ぐ。15分間十分に撹拌した後、水層を分離し、ジクロロメタン(4L)で抽出する。合併した有機層を水(2×2.5L)と塩水(2.5L)で連続的に抽出し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発乾固させて、482g 粗生成物を褐色油状物として得る。生成物を60℃、0.8mbarで短経路蒸留で精製して、酢酸(1S,4R)−4−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステル 5(370g、2工程で68%)を明黄色液体として得る。化学的純度:87%cisおよび13%trans異性体、GC−MSで分析した。
【0052】
酢酸(1S,4R)−4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エニルエステル 6の製造
【化28】

382.68g 酢酸(1S,4R)−4−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステル 5を2,100g リン酸バッファー pH7に加え、1M NaOHでpH7に調節する。4g リパーゼPS Amano(LPS AB0351302)を反応混合物に加え、反応混合物を一晩撹拌する。
【0053】
反応混合物をDCMで抽出して有機層に移す(水層をTLC、DCM/MeOH 95:5で確認する)。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて280g 黄色油状物を得る。
【0054】
油状物を加熱したエーテルに溶解させ、ヘキサンで沈殿させる。白色結晶を濾過し、真空オーブン中で乾燥させて、174.02g → 58.9% ee:>99.9%;化学的純度:>99.0%;cis/trans比:>99.9/0.1;[α]20 =+64.4°(c=1;CHCl)を得る。
【0055】
未処理酢酸(1S,4R)−4−アセトキシ−シクロペント−2−エニルエステルを再度単離し、反応条件に再度供してより多くの酢酸(1S,4R)−4−ヒドロキシ−シクロペント−2−エニルエステルを製造する。当該プロセスは:
・水層を酢酸エチルで抽出すること;
・有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させること;
・DMAP触媒によるアセチル化のために、残渣にAcO(60g)とEtN(60g)を直接加えること;そして
・得られたジアセテート(0.2bar、沸点62℃)を蒸留して44.1g(0.239)明黄色液体を得ること
を含む。
【0056】
酵素的加水分解反応を、酵素としてNovo SP435を用いて反復したところ、優れた選択性で、例えばモノアセテート生成物の対応するジオールへのさらなる加水分解のような副反応なしに、良好な収率で得られることを見出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中、RはC−C−アルキル、C−C10−アリール、C−C−アルコキシおよびC−C10−アリールオキシからなる群から選択される〕
の有機化合物の製造方法であって、
(1)フルフリルアルコールを酸性溶液中で十分な時間反応させて式(II)
【化2】

の化合物の化合物を形成させ;
(2)保護基を有する式(II)の化合物を非プロトン性溶媒中で、塩基の存在下で十分な時間反応させて、式(III)
【化3】

〔式中、Tは保護基である〕
の化合物を形成させ;
(3)式(III)の化合物を還元し、式(III)の化合物の前記保護基を除去して、式(IV)
【化4】

の化合物を得て;
(4)式(V)
【化5】

〔式中、各Rは独立して、C−C−アルキル、C−C10−アリール、C−C−アルコキシおよびC−C10−アリールオキシから選択される〕
の化合物または式(Va)
【化6】

〔式中、Xはハロゲン、イミダゾールまたはN−ヒドロキシベンゾトリアゾールからなる群から選択される〕
の化合物を、式(IV)の化合物と反応させて式(VI)
【化7】

の化合物を得て;そして
(5)式(VI)の化合物を酵素と反応させて式(I)の化合物を得ること、
を含む方法。
【請求項2】
式(Ia)
【化8】

の有機化合物の製造のための請求項1に記載の方法であって、
(1)フルフリルアルコールを水を含む酸性溶液中で十分な時間反応させて式(IIa)
【化9】

の化合物を形成させ;
(2)式(IIa)の化合物とクロロトリメチルシランとジクロロメタン中、塩基の存在下で十分な時間反応させて、式(IIIa)
【化10】

の化合物を形成させ;
(3)式(IIIa)の化合物を非プロトン性溶媒中で反応させて、式(IVa)
【化11】

の化合物のラセミ混合物を得て:
(4)前記式(IVa)の化合物のラセミ混合物を無水酢酸と、非プロトン性溶媒中、塩基の存在下で十分な時間反応させて、式(VIa)
【化12】

の化合物を形成させ;そして
(5)式(VIa)の化合物とNovo SP435またはリパーゼPS Amanoを反応させて式(Ia)の化合物を得ること、
を含む方法。
【請求項3】
工程(1)の酸性溶液がオルトリン酸を含む、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)の酸性溶液がpH約3.0〜約5.0を有する、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(2)の塩基がトリエチルアミンである、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程(2)がさらに求核触媒として4−ジメチルアミノピリジンを含む、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程(3)が工程(3)における還元剤としてジイソブチルアルミニウム水素化物を含む、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項8】
工程(3)の非プロトン性溶媒がトルエンとtert−ブチルメチルエーテルの混合物である、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項9】
工程(4)の塩基がトリエチルアミンである、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項10】
工程(4)がさらに求核触媒として4−ジメチルアミノピリジンを含む、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項11】
工程(4)の非プロトン性溶媒がジクロロメタンである、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項12】
工程(5)によって少なくとも80%のエナンチオマー比の生成物、すなわち化合物(Ia)が得られる、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。
【請求項13】
工程(5)によって少なくとも90%のエナンチオマー比の生成物、すなわち化合物(Ia)が得られる、式(Ia)の化合物の製造のための請求項2に記載の方法。

【公表番号】特表2010−508835(P2010−508835A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535701(P2009−535701)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061886
【国際公開番号】WO2008/055874
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】