説明

シクロペンテン骨格を有する有機リン化合物及びその製造方法

【課題】一般式(1)で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物、及び、該有機リン化合物を穏和な条件下、簡便かつ収率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】1,6−ヘプタジインと、一般式(4)で示されるヒドロリン化合物をキレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体の存在下で反応させることを特徴とする一般式(1)で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンテン骨格を有する有機リン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環骨格を有する有機リン化合物として、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環等を有するものが知られている。例えば非特許文献1及び2には、シクロヘキサン骨格を有する有機リン化合物が記述されている。特許文献1にも、(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)ジフェニルホスフィンオキシドを始めとするホスフィンオキシド化合物が開示されている。また、特許文献2にはメチレン基を介してシクロペンテン環にリン原子が結合した有機リン化合物が開示されている。更に、特許文献3にはジシクロペンタジエンと亜リン酸とを反応させてなる脂環式ホスホン酸化合物が開示されている。
【0003】
しかしながら、エキソメチレン基を介してシクロペンテン環にリン原子が結合した有機リン化合物は、今日まで知られていない。
【特許文献1】特表2001−503413公報
【特許文献2】特表平11−503424公報
【特許文献3】特開2004−099519公報
【非特許文献1】Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、2005年、315巻、pp.1362−1367
【非特許文献2】Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、2006年、316巻、pp.727−732
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、エキソメチレン基を介してシクロペンテン環にリン原子が結合した新規な有機リン化合物を提供すること、及び該有機リン化合物を穏和な条件下、簡便かつ収率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ジイン化合物に対するヒドロリン化合物の付加反応について鋭意研究を重ねてきた。その結果、キレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体の存在下で反応させると環化−付加反応が進行すること及び該反応によりエキソメチレン基を介してシクロペンタン環にリン原子が結合した新規な有機リン化合物を合成できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち本発明は、以下の項に示すシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物及びその製造方法を提供する:
項1.一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、R及びRは、同一または異なって、炭素数6以下のアルキル基、炭素数10以下のアリール基、炭素数12以下のアラルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数3〜6のシクロアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、または炭素数12以下のアラルキロキシ基を表す。
前記アリール基、アラルキル基、アリーロキシ基及びアラルキロキシ基を構成する芳香環は、複素芳香環であってもよい。
及びRから水素原子を1原子ずつ除いた残基が分子内で互いに結合してリン原子を含む環構造を形成しても良い。]
で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物。
【0009】
項2.一般式(2)
P−A−PR (2)
[式中、R、R、R及びRは、同一または異なって、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアリ−ル基又は炭素数12以下のアラルキル基を表す。
及びRの基から水素原子を1原子除いた残基が互いに結合し、リン原子を分子内に含む環状構造のものであっても良い。
及びRの基から水素原子を1原子除いた残基が互いに結合し、リン原子を分子内に含む環状構造のものであっても良い。
Aは炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環構造を有する2価の有機基を示す。]で示されるキレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体の存在下、式(3)
【0010】
【化2】

【0011】
で示される1,6−ヘプタジインを一般式(4)
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、R及びRは、同一または異なって、炭素数6以下のアルキル基、炭素数10以下のアリール基、炭素数12以下のアラルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数3〜6のシクロアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、または炭素数12以下のアラルキロキシ基を表す。
前記アリール基、アラルキル基、アリーロキシ基及びアラルキロキシ基を構成する芳香環は、複素芳香環であってもよい。
及びRから水素原子を1原子ずつ除いた残基が分子内で互いに結合してリン原子を含む環構造を形成しても良い。]
で示されるヒドロリン化合物で処理することを特徴とする、一般式(1)
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物の製造方法。
【0016】
本明細書において示される各基は、具体的には以下の通りである。
【0017】
炭素数6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、n−へキシル基、イソへキシル基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を例示することができる。
【0018】
炭素数10以下のアリール基としては、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を例示することができる。
【0019】
炭素数12以下のアラルキル基としては、フェニル低級アルキル基、ナフチル低級アルキル基等を例示することができる。
【0020】
フェニル低級アルキルとしては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアルキル部分が炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基であるフェニルアルキル基を例示することができる。
【0021】
ナフチル低級アルキルとしては、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等のアルキル部分がメチル基またはエチル基であるナフチルアルキル基を例示することができる。
【0022】
炭素数6以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基を例示することができる。
【0023】
炭素数3〜6のシクロアルコキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜6のシクロアルコキシ基を例示することができる。
【0024】
炭素数12以下のアリーロキシ基としては、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜12のアリーロキシ基を例示することができる。
【0025】
炭素数12以下のアラルキロキシ基としては、フェニル低級アルコキシ基、ナフチル低級アルコキシ基等を例示することができる。
【0026】
フェニル低級アルコキシ基としては、ベンジロキシ基、アルコキシ部分が炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基であるフェニルアルコキシ基を例示することができる。
【0027】
ナフチル低級アルコキシ基としては、1−ナフチルメトキシ基、2−ナフチルメトキシ基等のアルコキシ部分がメトキシ基またはエトキシ基であるナフチルアルコキシ基を例示することができる。
【0028】
及びRから水素原子を1原子ずつ除いた残基が分子内で互いに結合して形成されるリン原子を含む環構造としては、4,5−ジメチル−1,2,3−ジオキサホスホラン環、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン環等が例示される。
【0029】
上記アリール基、アラルキル基、アリーロキシ基及びアラルキロキシ基を構成する芳香環は、複素芳香環であってもよく、複素芳香環としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環等を例示することができる。
【0030】
炭素数12以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、n−へキシル基、イソへキシル基、n−オクチル基等の炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を例示することができる。
【0031】
炭素数12以下のアリール基としては、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ビフェニル基を例示することができる。
【0032】
及びRから水素原子を1原子ずつ除いた残基が互いに結合して形成されるリン原子を含む環構造としては、ホスファシクロペンタン環、ホスファシクロヘキサン環、ジベンゾホスファシクロペンタン環等を例示することができる。
【0033】
本発明化合物には、例えば、上記一般式(1)においてR及びRが、同一または異なって、炭素数10以下のアリール基または炭素数6以下のアルコキシ基を示す、有機リン化合物が含まれる。
【0034】
また、本発明化合物には、例えば、上記一般式(1)においてR及びRが、互いに結合して−OCH(CH)CH(CH)O−または−OC(CHC(CHO−を示す、有機リン化合物が含まれる。
【0035】
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0036】
本発明の化合物である一般式(1)
【0037】
【化5】

【0038】
[式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物(以下、この化合物を単に化合物(1)ということもある)は、
一般式(2)
P−A−PR (2)
[式中、R、R、R、R、及びAは、前記と同じ意味を表す。]で示されるキレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体の存在下、式(3)
【0039】
【化6】

【0040】
で示される1,6−ヘプタジインを一般式(4)
【0041】
【化7】

【0042】
[式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるヒドロリン化合物で処理することにより製造される。
【0043】
本発明に用いる一般式(2)で示されるキレート配位性ホスフィンにおいて、一般式(2)中のAは炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環構造を有する2価の有機基を示し、具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、o−フェニレン基、フェロセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、キサンテンジイル基等を例示することができる。
【0044】
一般式(2)で示されるキレート配位性ホスフィンの具体例としては、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2−ビス(9−ホスファフルオレン−9−イル)エタン、Binap、DIOP、Xanthophos等が例示される。
【0045】
これらのキレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体としては、予め調製されたゼロ価又は2価の各種パラジウム錯体を例示することができ、その具体例としては、PdClL(式中Lはキレート配位性ホスフィンを示す。)、PdL(PEt(式中Lはキレート配位性ホスフィンを示す。)、Pd(OAc)L(式中Lはキレート配位性ホスフィンを示す。)、PdClPhL(式中Lはキレート配位性ホスフィンを示す。)、PdCl(COPh)L(式中Lはキレート配位性ホスフィンを示す。)、PdL(式中Lはキレート配位性ホスフィンを示す。)等を挙げることができる。パラジウム錯体の使用量は、パラジウム原子当たり、一般式(4)のヒドロリン化合物に対して、通常0.0001〜15モル%、好ましくは0.001〜10モル%である。
【0046】
本発明に用いるキレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体は、予め調製することなく、反応系中でキレート配位性ホスフィンと前駆体としてのパラジウム化合物を混合して発生させて用いてもよい。好ましく用いられる前駆体としてのパラジウム錯体としては、種々のゼロ価又は2価のパラジウム化合物を用いることができ、具体例としては、PdCl、KPdCl、NaPdCl、PdCl(PhCN)、PdCl(cod) (codは1,5−シクロオクタジエンを示す)、Pd(OAc)、Pd(dba)・CHCl (dbaはジベンジリデンアセトンを示す)、Pd(PPh等のゼロ価又は2価のパラジウム化合物を好適に用いることができる。パラジウム錯体の使用量は、パラジウム原子当たり、一般式(4)のヒドロリン化合物に対して、通常0.0001〜15モル%、好ましくは0.001〜10モル%である。また、前駆体としてのパラジウム化合物に混合するキレート配位性ホスフィンの量は、ホスフィン中のリン原子とパラジウム原子のモル比で1〜10、好ましくは1〜5の範囲から選択される。
【0047】
式(3)で示される1,6−ヘプタジインは、公知の化合物である。
【0048】
一般式(4)で示されるヒドロリン化合物は、公知の化合物であるか、または公知の方法に準じて容易に製造される。
【0049】
一般式(4)で示されるヒドロリン化合物の具体例としては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ジフェニル、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、フェニルホスフィン酸エチル、メチルホスフィン酸フェニル、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド等を例示することができる。
【0050】
式(3)で示される1,6−ヘプタジインと一般式(4)で示されるヒドロリン化合物との使用割合は、前者1モルに対して、後者が、通常0.5〜2モル、好ましくは0.8〜1.5モルである。
【0051】
本発明の反応は窒素、アルゴン、メタン等の不活性ガスの雰囲気下で実施するのが好ましい。本発明の反応は特に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて溶媒中で実施することもできる。溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒など種々のものが使用できる。また、これらは単独または2種以上の混合物として使用される。
【0052】
上記反応は、冷却下、室温下及び加温下のいずれで行ってもよい。具体的には、通常0℃から250℃、好ましくは80℃から170℃の範囲から選択される。
【0053】
反応時間は、通常数時間〜数十時間、好ましくは2〜10時間である。
【0054】
反応混合物からの精製物の分離及び精製は、各種クロマトグラフィー、蒸留或いは再結晶等通常行われる精製法により容易に達成される。
【発明の効果】
【0055】
本発明の一般式(1)で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物は、P=O結合と共役した2重結合を持つ特徴的な構造をしており、これまで知られていない骨格を持つ全く新規な化合物であり、医薬・農薬の製造中間体、高分子添加用難燃剤、錯体触媒の配位子またはその合成原料等として有用である。
【0056】
また、本発明の製造方法によれば、一般式(1)で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物を、ジイン及びヒドロリン化合物から容易にかつ高収率に製造することができる、その単離精製も容易に行うことができるため、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
実施例
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0058】
実施例1 1,6−ヘプタジインとフェニルホスフィン酸エチルとの反応
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム14.8mg(0.066ミリモル)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン39.6mg(0.099ミリモル)、フェニルホスフィン酸エチル0.23g(1.33ミリモル)及び1,6−ヘプタジイン0.13g(1.39ミリモル)をエチルベンゼン3mLに加え、 100℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮し、残留液をイソプロパノールとn−ヘキサンの1:9混合溶媒を用いてシリカゲル薄層クロマトグラフィーに付すことによりRがフェニル基及びRがエトキシ基を示す化合物(1)(以下、この化合物を化合物(1a)という)が収率52%で得られた。
【0059】
本生成物は文献未収載の新規物質であり、その物性値や分光学データは以下の通りであった。
【0060】
化合物(1a): 無色液体;
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.80-7.87 (m, 2H, 芳香族プロトン), 7.29-7.50 (m, 3H, 芳香族プロトン), 6.23 (br d, J(HH)= 1.2 Hz, 1H, HC=C), 5.53 (dd, J(HH) = 2.4 Hz, 1H, J(HP) = 17.9 Hz, HC=C), 4.05-4.13, 3.88-3.96 (2 m, 2H, OCH2), 2.99-3.03, 2.93-2.96 (2 m, 1H, CHH), 2.69-2.73, 2.63-2.65 (2m, 1H, CHH), 2.42 (br, 2H, CH2), 1.77 (br s, 3H, CH3), 1.32 (t, J(HH) = 7.1 Hz, 3H, CH3);
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 169.4 (d, J(PC) = 6.6 Hz), 142.8, 141.1 (d, J(PC) = 21.8 Hz), 133.1 (d, J(PC) = 133.6 Hz), 131.6 (d, J(PC) = 2.6 Hz), 131.2 (d, J(PC) = 10.2 Hz), 128.3 (d, J(PC) = 7.4 Hz), 104.1 (d, J(PC) = 145.6 Hz), 60.0 (d, J(PC) = 5.7 Hz), 30.9, 29.6 (d, J(PC) = 5.1 Hz), 16.5 (d, J(PC) = 6.7 Hz), 12.4;
31P NMR (CDCl3, 162 MHz) δ 33.0;
HRMS C15H19O2Pとしての計算値: 262.1122、実測値 262.1123。
【0061】
実施例2 1,6−ヘプタジインと4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシドとの反応
フェニルホスフィン酸エチルに代えて4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシドを1.33ミリモル用い、実施例1と同様に反応させ、後処理した結果、R及びRが互いに結合して、−OC(CHC(CHO−基を示す化合物(1)(以下、この化合物を化合物(1b)という)が収率40%で得られた。
【0062】
本生成物は文献未収載の新規物質であり、その物性値や分光学データは以下の通りであった。
【0063】
(化合物(1b)):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 6.29 (br, 1H, HC=C), 5.12 (d, J(HP) = 19.2 H, 1H, HC=C), 3.00 (br t, J(HH) = 2.3 Hz, 2H, CH2), 2.45 (br t, 2H, J(HH) = 2.1 Hz, CH2), 1.77 (br s, 3H, CH3), 1.49, 1.35 (2 s, 12H, CH3);
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 172.1 (d, J(PC) = 7.8 Hz), 144.0, 141.0 (d, J(PC) = 23.7 Hz), 100.1 (d, J(PC) = 190.8 Hz), 87.4, 30.9, 30.5 (d, J(PC) = 4.8 Hz), 24.6 (d, J(PC) = 4.0 Hz), 24.1 (d, J(PC) = 5.3 Hz), 12.4;
31P NMR (CDCl3, 162 MHz) δ 32.6;
HRMS C13H21O3Pとしての計算値:256.1228、実測値:256.1231。
【0064】
実施例3 1,6−ヘプタジインとホスホン酸ジメチルとの反応
フェニルホスフィン酸エチルに代えてホスホン酸ジメチルを1.33ミリモル用い、実施例1と同様に反応させ、後処理した結果、R及びRが共にメトキシ基を示す化合物(1)(以下、この化合物を化合物(1c)という)が収率38%で得られた。
【0065】
本生成物は文献未収載の新規物質であり、その物性値や分光学データは以下の通りであった。
【0066】
化合物(1c):1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 6.27 (br d, J(HH)= 1.3 Hz, 1H, HC=C), 5.20 (br d, J(HP) = 17.7 Hz, 1H, HC=C), 3.71, 3.67 (2s, 6H, OCH3), 2.86-2.91, 2.43-2.46 (2 m, 4H, CH2), 1.75 (br d, J(HH)=1.5 Hz, 3H, CH3);
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 171.0 (d, J(PC) = 7.3 Hz), 143.7, 140.7 (d, J(PC) = 17.0 Hz), 98.4 (d, J(PC) = 196.2 Hz), 51.9, 51.8, 30.8, 30.0 (d, J(PC) = 5.0 Hz), 12.3;
31P NMR (CDCl3, 162 MHz) δ 24.5;
HRMS C9H15O3Pとしての計算値: 202.0759、実測値:202.0762。
【0067】
実施例4 1,6−ヘプタジインとジフェニルホスフィンオキシドとの反応
フェニルホスフィン酸エチルに代えてジフェニルホスフィンオキシドを1.33ミリモル用い、実施例1と同様に反応させ、後処理した結果、R及びRが共にフェニル基を示す化合物(1)(以下、この化合物を化合物(1d)という)が収率36%で得られた。
【0068】
本生成物は文献未収載の新規物質であり、その物性値や分光学データは以下の通りであった。
【0069】
化合物(1d):1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.77-7.80 (m, 4H, 芳香族プロトン), 7.44-7.47 (m, 6H, 芳香族プロトン), 6.26 (br, 1H, HC=C), 5.22 (br d, J(HP) = 22.6 Hz, 1H, HC=C), 2.76-2.81 (m, 2H, CH2), 2.40-2.43 (m, 2H, CH2), 1.84 (br d, J(HH)=1.5 Hz, 3H, CH3);
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 170.8 (d, J(PC) = 2.6 Hz), 143.1, 141.2 (d, J(PC) = 16.8 Hz), 134.8 (d, J(PC) = 104.1), 131.3, 131.2, 131.0, 130.9, 128.5, 128.4, 125.7, 104.8 (d, J(PC) = 110.2 Hz), 31.1, 29.7 (d, J(PC) = 5.5 Hz), 12.5;
31P NMR (CDCl3, 162 MHz) δ 31.3;
IR (KBr, cm-1) 1178 (νP=O);
HRMS C19H19OPとしての計算値:294.1174、実測値:294.1166。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、R及びRは、同一または異なって、炭素数6以下のアルキル基、炭素数10以下のアリール基、炭素数12以下のアラルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数3〜6のシクロアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、または炭素数12以下のアラルキロキシ基を表す。
前記アリール基、アラルキル基、アリーロキシ基及びアラルキロキシ基を構成する芳香環は、複素芳香環であってもよい。
及びRから水素原子を1原子ずつ除いた残基が分子内で互いに結合してリン原子を含む環構造を形成しても良い。]
で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物。
【請求項2】
一般式(2)
P−A−PR (2)
[式中、R、R、R及びRは、同一または異なって、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアリ−ル基又は炭素数12以下のアラルキル基を表す。
及びRの基から水素原子を1原子除いた残基が互いに結合し、リン原子を分子内に含む環状構造のものであっても良い。
及びRの基から水素原子を1原子除いた残基が互いに結合し、リン原子を分子内に含む環状構造のものであっても良い。
Aは炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環構造を有する2価の有機基を示す。]で示されるキレート配位性ホスフィンのパラジウム錯体の存在下、式(3)
【化2】

で示される1,6−ヘプタジインを一般式(4)
【化3】

[式中、R及びRは、同一または異なって、炭素数6以下のアルキル基、炭素数10以下のアリール基、炭素数12以下のアラルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数3〜6のシクロアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、または炭素数12以下のアラルキロキシ基を表す。
前記アリール基、アラルキル基、アリーロキシ基及びアラルキロキシ基を構成する芳香環は、複素芳香環であってもよい。
及びRから水素原子を1原子ずつ除いた残基が分子内で互いに結合してリン原子を含む環構造を形成しても良い。]
で示されるヒドロリン化合物で処理することを特徴とする、一般式(1)
【化4】

[式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。]
で示されるシクロペンテン骨格を有する有機リン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−44852(P2008−44852A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218890(P2006−218890)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000149561)大八化学工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】