説明

システインに富む新規な細胞膜透過性ペプチドの同定

本発明は、細胞内へ内在化されることが可能なペプチドをコードする核酸分子に関し、ここで前記核酸分子は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする核酸分子;(b)配列番号1のDNA配列を有する核酸分子(ここで、核酸分子がRNAの場合、TはUである);又は(d)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するペプチドをコードする核酸分子(ここで、配列番号2の1、7及び8位からなる群から選択される少なくとも2つの位置において、システインが存在し、且つ配列番号2の2、4、6、9又は10位からなる群から選択される少なくとも4つの位置において、アルギニン又はリジンが存在する)からなる。本発明はまた、本発明の核酸によってコードされるペプチド、本発明のペプチドを含む融合分子、及び本発明のペプチド又は融合分子を含む組成物に関する。更に、本発明は、本発明の融合分子の内在化の挙動を検出する方法、癌、酵素欠損症、梗塞、脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染や真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)及び関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーから選択される状態を治療及び/又は予防するための本発明の組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内へ内在化されることが可能なペプチドをコードする核酸分子に関し、ここで前記核酸分子は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする核酸分子;(b)配列番号1のDNA配列を有する核酸分子(ここで、核酸分子がRNAの場合、TはUである);又は(c)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するペプチドをコードする核酸分子(ここで、配列番号2の1、7及び8位からなる群から選択される少なくとも2つの位置において、システインが存在し、且つ配列番号2の2、4、6、9又は10位からなる群から選択される少なくとも4つの位置において、アルギニン又はリジンが存在する)からなる。本発明はまた、本発明の核酸によってコードされるペプチド、本発明のペプチドを含む融合分子、及び本発明のペプチド又は融合分子を含む組成物に関する。更に、本発明は、本発明の融合分子の内在化の挙動を検出する方法、癌、酵素欠損症、梗塞、脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染若しくは真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)若しくは関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーから選択される状態を治療及び/又は予防するための本発明の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、特許出願及び製造者のマニュアルを含む多くの文書が引用される。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連するとはみなされないが、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。より具体的には、全ての参考文献は、各個別の文書が参照により組み込まれると具体的且つ個別に表示されたのと同程度に、参照により組み込まれる。
【0003】
細胞への物質の標的化送達は、生細胞によって能動的に取り込まれないほとんどの分子を排除するための効率的な防護壁である細胞膜により長く妨げられてきた。特定の分子量、極性及び正味電荷の、狭い範囲の分子のみが、細胞膜を通して拡散することができる。他の分子は、例えば受容体を介したエンドサイトーシスにより能動的に輸送されるか、又はエレクトロポレーション、カチオン性脂質/リポソーム、マイクロインジェクション、ウイルス送達若しくはポリマー内への封入などの方法により細胞膜を人工的に強制的に通過させなければならない。これらの方法は、主に疎水性分子を送達するために利用される。更に、これらの方法に付随する副作用及び、それらの利用がin vitroでの使用に限定されるという事実が、それらが、疾患及び状態を治療するために、細胞に薬物などの物質を送達するための効率的な手段となるのを妨げてきた。
タンパク質導入ドメイン(PTD)又は膜移行配列(MTS)とも呼ばれる細胞膜透過性ペプチド(CPP)の発見は、細胞膜を通じたより大きな分子の移行が可能であることを証明した。CPPの著名な例は、HIV-1 TAT移行ドメイン(Green and Loewenstein, 1988)及びショウジョウバエ由来アンテナペディアタンパク質のホメオドメイン(Joliot et al., 1991)である。正確な移行メカニズムはいまだ議論されている。アンテナペディアタンパク質の変異実験は、ペネトラチン又はpAntpと呼ばれる16アミノ酸の配列(Derossi et al., 1994)が、膜移行に必要十分であることを明らかにした。続いて、HIV-1 Tatタンパク質の塩基性配列(Vives et al., 1997)及びキメラペプチドトランスポータン(Pooga et al., 1998)などの他のタンパク質由来のCPPが開発された。開発された合成ペプチドは、両親媒性モデルペプチド(Oehlke et al., 1998)である。アンチセンスDNA又はPNAをCPPに連結することで、in vivoで所望の効果を発揮することが示された。
CPPが移行機能を発揮するためにいずれの特性が必要かについて、長い間探求された。一般には、異なるファミリーのCPPの間で、構造上の類似点はほとんど見出されていなかった。これまで一貫して見出されてきた唯一の特性は、正の正味電荷をもたらす塩基性アミノ酸の含量が高いことである。従って、CPPは、細胞膜中の負に荷電した脂質の頭部又はタンパク質に最初に結合すると推測される。これに関して、正電荷アミノ酸としてのアルギニンの重要性がいくつかのグループにより実証された(Rothbard et al., 2000; Wender et al., 2000)。一般的には、αへリックス二次構造がCPPについて予測されており、これは一部の場合について確認できたが、普遍的な必要条件としては受け止めることができない。
移行することのできる多くのタンパク質は、細胞への深刻な副作用を有し、そのことは、天然に存在する物質のほとんどが、例えば抗菌物質又は毒素として使用されるという事実を考慮すれば、理解できる。CPPは、例えば、膜の破壊に起因する細胞質の漏出を引き起こすことができ、また膜タンパク質の機能を妨げることができる。CPPはまた、細胞毒性効果を発揮し得る(例えばGTPアーゼ活性に影響するトランスポータンなど(Soomets et al., 2000))。更に、多くのCPPが、in vivoでは満たされ得ない特定の非常に狭い条件下でのみその機能を発揮することが、ますます明らかになってきている。別の欠点は、標的細胞に応じて、CPPが細胞内で急速に分解され得ることである。最後に、CPPの毒性効果及び免疫原性効果が観察されており、それは例えば治療用途におけるそれらの利用を妨げる。
【0004】
現在までに、そして内在化のメカニズムに応じて、公知のCPPは主に核内に局在するか、それらが小胞内に内在化される場合には、そこに留まり、ごく一部のみが細胞質へと放出される。
【0005】
クロタミンは、南アメリカガラガラヘビの毒液中の主な毒素の1つであり(Radis-Baptista et al., 1999)、他の毒液筋肉毒と高い相同性を示す。42アミノ酸長のカチオン性ポリペプチドは、11個の塩基性残基、及び3つのジスルフィド結合を生じさせる6つのシステインを含む。これは、2つの推定上のNLSモチーフ、Crot2-18及びCrot27-39を有する。クロタミンは、in vitroにおいて様々な細胞型及びマウス胚盤胞へと浸透するCPPであることが示された(Kerkis et al., 2004)。これは1μMの濃度まで無毒性であり、好ましくは核(そこでクロマチン構造に結合すると考えられている)に局在することが示された。細胞分裂の前に用いると、クロタミンは分裂終期後、細胞質に主に局在する。推定上のNLSモチーフに対応する2つのペプチドがWO2006/096953において調べられ、両者が細胞内に内在化することができることが見出された。行なわれた実験から、Cro2-18に対応するペプチドが、Cro27-39よりも効率よく、GFPをコードするDNAを細胞内へ内在化し、輸送することができると、更に結論された。本発明者らは、驚くべきことに、Kerkis et al. (2004)において決定され、WO2006/096953において調べられたNLSモチーフCro27-39の最小限の配列よりも更に短いCPPを提供することが可能であることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、細胞内へ内在化されることが可能なペプチドをコードする核酸分子に関し、ここで前記核酸分子は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする核酸分子;(b)配列番号1のDNA配列を有する核酸分子(ここで、核酸分子がRNAの場合、TはUである);又は(c)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するペプチドをコードする核酸分子(ここで、配列番号2の1、7及び8位からなる群から選択される少なくとも2つの位置において、システインが存在し、且つ配列番号2の2、4、6、9又は10位からなる群から選択される少なくとも4つの位置において、アルギニン又はリジンが存在する)からなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】合成ペプチド断片(積荷:K(FITC)、ペプチド23=配列番号2)の細胞内蛍光の比較。corr.f.u=補正蛍光単位(ビスベンズイミド33342蛍光により評価した細胞数で補正された、測定された細胞関連FITC蛍光)。
【図2】ペプチド23(配列番号2)におけるセリンによるシステインの置換の、内在化効率への影響。ns、有意差なし;*、p<0.05、***、p<0.001で、ペプチド23と比較して有意に異なる(ANOVA、ボンフェローニの多重比較試験)。K(FITC)を全てのペプチドのN末端に連結させた。
【図3】配列の順番及びアミノ酸のキラリティーの、内在化効率への影響。*、p<0.05、**、p<0.01、***、p<0.001で、ペプチド23と比較して有意に異なる(ANOVA、ボンフェローニの多重比較試験)。K(FITC)又はk(FITC)を全てのペプチドのN末端に連結させた。
【図4】ペプチド23(CyLoP-1、配列番号2)の制御された酸化の後の細胞内ジスルフィド架橋の、内在化効率への影響。(A)蛍光顕微鏡像。(B)蛍光分光定量。ns、有意差なし;**、p<0.01、***、p<0.001で、ペプチド23と比較して有意に異なる(ANOVA、ボンフェローニの多重比較試験)。K(FITC)を全てのペプチドのN末端に連結させた。
【図5】C末端の官能基並びにペプチド23(CyLoP-1、配列番号2)に連結するフルオロフォアの位置及び種類の、内在化効率への影響。*、p<0.05、***、p<0.001で、ペプチド23と比較して有意に異なる(ANOVA、ボンフェローニの多重比較試験)。カルボキシフルオレセイン(CF)又はFITCを表示のように連結させた。ペプチド23-アミドは、C末端に遊離酸基の代わりにアミド基を含む。
【図6】リジンリンカーを介してペプチド23(CyLoP-1、配列番号2)のN末端に連結された積荷分子の、内在化効率への影響。(A)種々の積荷分子の影響。(B)ペプチド23−積荷結合物/融合物と対応する積荷のみとの間の比較。 *、p<0.05、***、p<0.001で、ペプチド23と比較して有意に異なる;a、p<0.05で、有意に異なる対(ANOVA、ボンフェローニの多重比較試験)。
【図7】ペプチド23(CyLoP-1、配列番号2)の内在化効率の、4つの他の公知のCPPとの比較。Antp、ペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK);d-Tat、d-Tat49-57(rkkrrqrrr);ri-Tat、d-Tat57-49(rrrqrrkkr);d-R8、オクタアルギニン(rrrrrrrr);***、p<0.001で、ペプチド23と比較して有意に異なる(ANOVA、ボンフェローニの多重比較試験)。K(FITC)又はk(FITC)を全てのペプチドのN末端に連結させた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によれば、用語「ポリヌクレオチド」と互換可能に使用される用語「核酸分子」は、cDNA又はゲノムDNAなどのDNA、及びRNAを含む。核酸分子がRNAであれば、例えば配列番号1中に示されるチミン(T)塩基は、ウラシル(U)(RNA中に存在するチミンアナログ)と置換される。DNA又はRNAの合成又は半合成誘導体及び混合ポリマーなどの、当分野において公知の核酸擬態分子が更に含まれる。本発明のこのような核酸擬態分子又は核酸誘導体としては、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミデート(phosphoramidate)核酸、2’−O−メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール核酸(HNA)及びLocked核酸(LNA)(Braasch and Corey, Chem Biol 2001 , 8: 1を参照のこと)が挙げられる。LNAは、リボース環が、2’酸素と4’炭素との間のメチレン結合により拘束されているRNA誘導体である。それらは、当業者によって容易に理解されるように、追加の非天然又は誘導体ヌクレオチド塩基を含み得る。本発明の目的のために、ペプチド核酸(PNA)も用いられ得る。ペプチド核酸は、ペプチド結合により結合されたN−(2−アミノエチル)−グリシン単位の繰り返しから構成される主鎖を有する。プリン及びピリミジン塩基は、メチレンカルボニル結合により主鎖に結合される。
【0009】
好ましい実施形態において、核酸分子はDNAである。
【0010】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」は、アミノ酸の直鎖分子鎖を表し、30アミノ酸までを含む、一本鎖タンパク質の断片が挙げられる。ペプチドは、少なくとも2つの同一の又は異なる分子からなるオリゴマー形成し得る。対応する高次構造のこのようなマルチマーは、それに応じて、ホモ又はヘテロダイマー、ホモ又はヘテロトリマー、などと呼ばれる。用語「ペプチド」は、アミノ酸(複数可)及び/又はペプチド結合(複数可)が機能的アナログに置換されている、このようなペプチドのペプチド模倣体を更に含む。このような機能的アナログは、セレノシステインなどの、20の遺伝子にコードされるアミノ酸以外の全ての公知のアミノ酸も含む。原則として、30アミノ酸までのペプチドが、1又は数コピーの本発明のペプチドのみからなることが可能である。あるいは、ペプチドは、本発明のペプチドと共に、天然には存在しない、好ましくはそれらと非相同な、第二のペプチドに融合されてもよい。
【0011】
本発明の文脈の中で使用される場合、ポリペプチドは、30を超えるアミノ酸を含む。本発明によれば、該用語は、「タンパク質」と互換可能に使用され、以下にさらに記載されるように、本発明のペプチドがマルチマー化されるか、別のペプチド又はポリペプチドに融合されて本発明の融合分子を形成している場合に、適用される。
【0012】
本発明の文脈の中で使用される場合、用語「内在化されることが可能」とは、細胞の形質膜を通過する、又はそのペプチドを含む融合分子を細胞の形質膜を通って通過させる、あるペプチドの能力を言う。様々な内在化のメカニズムが、文献において提案されている:エネルギー依存的エンドサイトーシスメカニズム及びエネルギー非依存的受動輸送メカニズム。後者は、いくつかの提案されているモデルにさらに分けられ得る。逆ミセル駆動送達モデルにおいて、CPPの正に荷電した部分が、膜のリン脂質と相互作用し、その後ペプチドの疎水性部分が膜と相互作用し、逆ミセルを生じる。別のモデルは、形質膜の直接の貫通を示唆する。TATペプチドの例により、移行のメカニズムは、ペプチドに付着/融合した積荷に依存することが示唆された。大きさは、積荷の化学的特性と同様に影響を与え得る。更に、メカニズムは、CPPの濃度に応じて変動し得ることが示された。最近の総説として、例えば、Trehin and Merkle (2004)、Magzoub and Graslund (2004)又はGupta et al. (2005)を参照のこと。本発明の文脈において、任意の可能な内在化のメカニズムが想定される。好ましいメカニズムは、CPP又はCPP複合体/融合体の少なくとも一部、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、更により好ましくは50%以上、更により好ましくは60%以上、更により好ましくは70%以上及び最も好ましくは80%以上が、異なるコンパートメント(例、小胞内、エンドソーム内、又は核内)における局在と対比して、細胞質に局在することを保証するであろう。
【0013】
本発明の核酸分子によりコードされるペプチドの特定の位置における特定のアミノ酸の存在に関して、これらの位置は、そのペプチドがより長いペプチド又はタンパク質中に存在するならば、そのペプチドの配列にも割り当てられ得る。より具体的には、配列番号2に対応する又は配列番号1によりコードされるペプチドと相同又は同一のアミノ酸の鎖が、より長いペプチド又はタンパク質(をコードする核酸配列)中に同定される場合、両配列は整列され得、位置が割り当てられる。この情報から、配列番号1によりコードされるペプチド中の各アミノ酸に対応する、より長いペプチド又はタンパク質中の位置が、検索され得る。
【0014】
本発明に従えば、用語「パーセント(%)配列同一性」は、鋳型アミノ酸配列の全長を構成するアミノ酸残基の数と比較した、2以上の整列されたアミノ酸配列の同一のアミノ酸の一致(「ヒット」)の数を表す。他の用語では、(部分)配列が、比較の範囲にわたり、又は当分野において公知の配列比較アルゴリズムを使用して測定されるような指定された領域にわたり、最大の一致のために比較され、整列される場合、あるいは手動で整列され、目視により検査される場合、アラインメントを使用して、2以上の配列又は部分配列について、同じであるアミノ酸残基の割合(例、70%、80%又は85%同一)が決定され得る。この定義は、試験配列の相補体にも適用される。
【0015】
2つのタンパク質配列の間の同一性レベルを評価するために、それらは、当分野で公知の適切なコンピュータープログラムを使用して電子的に整列され得る。このようなプログラムは、BLAST(Altschul et al., J. Mol. Biol. 1990, 215: 403)、その変形(WU-BLAST(Altschul & Gish, Methods Enzymol. 1996, 266: 460)など)、FASTA(Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988, 85: 2444)又はSmith-Watermanアルゴリズム(SSEARCH, Smith & Waterman, J. Mol. Biol. 1981 , 147: 195)の導入を含む。これらのプログラムは、ペアワイズ配列アラインメントを提供することに加えて、配列同一性レベル(通常パーセント同一性で)及び偶然整列の起こる可能性(P値)も報告する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、word length(W)3、及びexpectation(E)10を使用する。BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci., 1992, 89:10915)は、alignments(B)50、expectation(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。CLUSTALW(Thompson Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)などのプログラムは、2より多い配列を整列するために使用され得る。さらに、CLUSTALWは、例えばFASTDBと異なり、その同一性計算において配列ギャップを考慮する。
【0016】
全ての上記プログラムが、本発明に従って使用され得る。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、配列番号2に対する配列同一性は、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。配列番号2に対する配列同一性が100%であることが特に好ましい。
【0018】
本発明のペプチドのアミノ酸配列中の置換は好ましくは保存的である。これは、置換が好ましくはアミノ酸の1クラス内で起こることを意味する。例えば、正に荷電したアミノ酸は、好ましくは別の正に荷電したアミノ酸に変異される。同じことは、塩基性アミノ酸、芳香族アミノ酸又は脂肪族アミノ酸のクラスにも当てはまる。
【0019】
本発明の過程で、驚くべきことに、クロタミンに由来するが、アミノ酸27−29からなるクロタミンの断片(Cro27-39)と比較して短い長さを有し、全てのシステインを保持するペプチドが、天然に存在するクロタミンと比較して改善された内在化特性を有し、Cro27-39と同等又は更によい内在化特性を有することが見出された。本発明のペプチドを他のCPPと比較する場合において、膜透過に関与する可能性のある2つ配列のうちの1つとして提案されているC末端核局在化シグナルCro27-39(KMDCRWRWKCCKK)(Kerkis et al., 2004)を、その内在化特性について単独で調べた。N末端核局在化シグナルCro2−18に対応するペプチドをCro27−39よりも有望なCPPとして提案するWO2006/096953の開示にも関わらず、Cro27−39に対応するペプチドを更なる調査のために選択した。この断片Cro27−39の取り込みの挙動を、それに付加されたフルオロフォアを用いて研究した。これは効率的なCPPであり、また細胞質への拡散を示すことが証明された。細胞質への拡散は、薬理的活性物質を細胞へ送達するために特に望ましい。この追加の特徴は、本発明者らに、この断片に変化を導入させ、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン酸及び、特に、合成をより複雑且つ困難にするシステインのようなアミノ酸の使用を避けさせた。システインを避けることは、ペプチドの合成、取り扱い及び保存を容易にするだけでなく、システインが分子内及び分子間システイン架橋を形成しやすく、従ってペプチドの凝集を促進することから、ペプチドのin vivo特性を改善することも示唆されている。しかしながら、現在までに、CPPにおけるシステイン又はシステイン架橋の役割は調べられていない。国際特許出願WO03/106491は、CPPを予測又は設計する方法を開示している。CPP特性を発揮することが予測されている及び/又は示されているペプチドのほとんどは、全くシステインを含まないことは注目すべきである。
【0020】
正に荷電したアミノ酸(リジン及びアルギニン)は、これらが細胞膜透過性ペプチドの重要な特徴であるため、改変されない。N末端からアミノ酸を欠失させた配列Cro27−39の断片と共に、システインがαアミノ酪酸又はセリン(システインの密接なアナログ)で置換された様々な誘導体を合成した。あるいは、システインを1つずつ欠失させるか、配列中のいずれかの位置のアミノ酸を欠失させた。最後に、トリプトファンを、プロリン又はフェニルアラニンで置換した。蛍光イメージングにより細胞内への取り込みについて試料を分析するために、(ε−アミノ基における)FITCの連結のためのリンカーとしてリジンをN末端に含む全ての組み合わせを合成した。培養細胞についての内在化研究は、アミノ酸組成の変化が細胞内への取り込みに著しく影響することを示す(図1から3及び実施例を参照のこと)。様々な組み合わせでの1つずつのシステインの欠失だけでなく、α−アミノ酪酸による置換も、欠失又は置換されるシステインの数に応じて、細胞への取り込みを減少させた。セリンによるシステインの置換は、ほとんど同じ結果を示す。プロリンリッチペプチドは、細胞透過性を促進することが知られているため、トリプトファンをプロリンで置換した。しかしながら、この場合もやはり内在化は否定的な方向に大きく影響された。最も良い結果は、断片K(FITC)-CRWRWKCCKK(内在化特性について調べた全配列の完全なリストを表示する下記表1のペプチド23)について観察され、該断片は細胞に完全に取り込まれ、またエンドソーム及び細胞質での蛍光分布を示す。リンカーを含まないこの断片は、システインの数を同じに維持しながら、配列KMDCRWRWKCCKK)を有する元の断片Cro27−39よりも3アミノ酸短い。Tat、アンテナペディア及びポリアルギニンのような周知のCPPについて行なわれた研究は、正電荷の役割が移行に極めて重要であることを明らかにした。公知のCPPと異なり、本発明のCPPは、その機能の点で著しく異なる。効率的な細胞への取り込み及び細胞質ゾルにおける位置、並びに準毒性濃度(<2.5μM)での小胞への分布は際立った特徴であり、それは他のCPPによっても示されるが、比較的高い濃度(>10μM)においてである。他の独特の特徴は、ペプチド主鎖のキラリティー及び配列の順番の、細胞への取り込みへの影響である:本発明のCPPの配列を逆転させた提案のペプチドの形態、D−アミノ酸を有する本発明のCPPの配列を有する提案のペプチドの形態、又はD−アミノ酸を有し且つ逆転した順番の本発明のCPPの配列を有する提案のペプチドの形態も、Tatペプチドについて知られているのと異なり、低い取り込みと細胞質ゾルへの拡散を示した。
【0021】
研究全体が、膜透過の間の荷電残基及び疎水性残基の要件に焦点を合せながら、各アミノ酸の重要性を示している。以前の研究から知られるように、荷電残基は細胞表面への付着に役立ち、それは内在化の最初の工程であり、次いでトリプトファンが膜の不安定化により膜移行を補助し得る。
【0022】
【表1−1】

【0023】
【表1−2】

【0024】
表1:Cro27-39由来であり、本発明においてそれらの内在化特性について調べた配列。個別の配列は、添付の実施例において更に詳細に考察される。X:α−アミノ酪酸;大文字はL−アミノ酸を表し、小文字はD−アミノ酸を表す。ペプチド23は、CyLoP:細胞質ゾル局在ペプチドとしても表される。
【0025】
このように、本発明のCPPは、その内在化特性を最適に発揮するために、トリプトファン及び、驚くべきことに、システインを実際に必要とすることが見出されている。従って、本発明の最適化されたペプチドは、配列番号1に示される核酸配列によりコードされているか、又は配列番号2のアミノ酸配列を有する。それは3つのシステイン及び2つのトリプトファンをコードし、これらは意外なことにペプチドの内在化特性を改善することが示されている。メチオニン、アスパラギン酸、及びシステインのようなアミノ酸に富んでいるため、Cro27−39は、合成及び保存の間の困難に耐える。従って、このようなアミノ酸を可能な限り避けるのが望ましく、それが本研究の主要目的である。本明細書中において、本発明者らは、公知の断片からの提案の断片の開発を示す。両配列は、機能(内在化効率及び細胞質ゾル分布)の点で同等であるが、提案の配列は、より短い長さで且つ少なくともメチオニン及びアスパラギン酸を避けながら、同じ結果を与えるように見える。
【0026】
この結果は、第一に、Cro27−39の内在化特性を有するペプチドが、活性を失うことなく更に短縮され得るとは信じられていなかったという事実に鑑みれば、驚くべきものである。第二に、システインなどの潜在的な問題のあるアミノ酸が、本発明のペプチドにおいて、その内在化活性を発揮するために必要であることは、予想外である。最後に、WO2006/096953は、Cro2−18に対応するペプチドがCPPとしてより有用であろうことを示唆している。
【0027】
好ましい実施形態において、核酸分子によりコードされるペプチドは、更にリンカーを含む。
【0028】
本発明と関連して使用される場合、リンカーは、本発明のペプチドを他の部分と連結するために使用される。リンカーは、本発明のペプチドと他の部分(複数可)とを物理的に分離する働きをし、本発明のペプチドも他の部分も、互いに近接することに起因してそれらの機能が制限されないことを保証する働きをする。他の部分に応じて、リンカーは、ペプチド結合、アミノ酸、適切な長さのペプチド、又は所望の特徴を提供する異なる分子であり得る。当業者は、その常識に基づき、適切なリンカー分子、特にリンカーペプチドを設計する方法を知っている。例えば、ペプチドリンカーは、LIP(Loops in Proteins)データベース(Michalsky et al., 2003)から選択され得る。リンカーは、N末端又はC末端に付加され得るか、又は、適切であると考えられる場合には、本発明のペプチドの末端アミノ酸から離れたアミノ酸にも付加され得る。リンカーは、好ましくはN末端に位置する。
本発明と関連して使用される場合、部分は、機能的単位である。部分は、例えば、最低限リジンを含むリンカーであり得る。他の部分は、例えば、以下により詳細に記載されるような、FITC又は薬物などの選択マーカーであり得る。
【0029】
より好ましい実施形態において、リンカーはリジンである。リジン内のε−アミノ基は、本発明のペプチドを種々の他の部分に連結するのに適している。更に、リジンは、本発明のペプチドの内在化特性を更に改善する働きをし得、そのため、適切であると考えられる場合には、別のリンカーによって補われ得る。
【0030】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含むベクターに関する。好ましくは、ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ又は、例えば遺伝子工学において慣用される別のベクターである。本発明の発現ベクターは、本発明の核酸分子及びそれによりコードされるペプチド又はポリペプチドの複製及び発現を指示することが可能である。一般に、ベクターは、クローニング又は発現のための1以上の複製起点(ori)及び遺伝システム、宿主における選択のための1以上のマーカー、並びに1以上の発現カセットを含むことができる。当業者に周知の方法が、組換えベクターを構築及び改変するために使用され得る:例えば、Sambrook and Russell, 2001及びAusubel, 2001に記載の技術を参照のこと。
【0031】
ベクターに挿入されるコード配列は、例えば、標準的方法により合成され得るか、又は組換えソースから単離され得る。転写制御エレメント及び/又は他のアミノ酸コード配列へのコード配列のライゲーションは、確立された方法を使用して実施され得る。原核生物又は真核細胞における発現を保証する転写制御エレメント(発現カセットの一部)は、当業者に周知である。これらのエレメントは、転写の開始を保証する制御配列(例、翻訳開始コドン、プロモーター、エンハンサー、及び/又はインスレーター)、内部リボソーム進入部位(IRES)(Owens et al., 2001)及び随意に転写の終結及び転写産物の安定化を保証するポリAシグナルを含む。更なる制御エレメントとしては、転写及び翻訳エンハンサー、並びに/又は天然に結合されている若しくは異種のプロモーター領域が挙げられ得る。好ましくは、本発明の核酸分子は、例えばベクターの形態で、原核生物又は真核細胞における発現を可能にするこのような発現制御配列に作動可能に連結される。ベクターは、更なる制御エレメントとして分泌シグナルをコードするヌクレオチド配列を更に含み得る。このような配列は、当業者に周知である。更に、使用される発現系に応じて、発現したポリペプチドを細胞内コンパートメントへと指示することが可能なリーダー配列が、本発明の核酸分子のコード配列に付加され得る。このようなリーダー配列は当分野において周知である。特別に設計されたベクターは、細菌と真菌細胞との間、又は細菌と動物細胞との間などの、異なる宿主間のDNAの往復を可能にする。
【0032】
上記本明細書中に記載される本発明の核酸分子は、細胞への、直接的な導入のために、又は、リポソーム、ファージベクター若しくはウイルスベクター(例、アデノウイルス、レトロウイルス)を介した導入のために設計され得る。更に、バキュロウイルスシステム又はワクチニアウイルス若しくはセムリキ森林熱ウイルスに基づくシステムが、本発明の核酸分子のための真核生物発現システムにおけるベクターとして使用され得る。ウイルス由来であり且つ標的とされた細胞集団へのポリヌクレオチド又はベクターの送達のために使用可能な他の発現ベクターは、レトロウイルス、ワクチニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、又はウシパピローマウイルスである。
【0033】
哺乳動物ベクターにおける典型的な複製起点は、SV40ウイルスoriである。哺乳動物ベクターにおける更なるエレメントとしては、エンハンサー、Kozak配列及び、RNAスプライシングのためのドナー部位及びアクセプター部位が隣接する介在配列が挙げられ得る。高効率の転写は、SV40由来初期及び後期プロモーター、レトロウイルス(例、RSV、HTLVI、HIVI)由来末端反復配列(LTR)、並びにサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターを用いて達成され得る。しかしながら、細胞エレメントも使用され得る(例、ヒトアクチンプロモーター)。真核宿主細胞における発現を許容する制御エレメントの他の例は、酵母におけるAOX1及びGAL1プロモーター又はCMV-(サイトメガロウイルス)、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、ニワトリβ−アクチンプロモーター、CAG-プロモーター(ニワトリβ−アクチンプロモーターとサイトメガロウイルス前初期エンハンサーの組み合わせ)、gai10プロモーター、ヒト伸長因子1α−プロモーター、CMVエンハンサー、CaMキナーゼプロモーター、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)多角体プロモーター又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。転写の開始に関与するエレメントに加えて、このような制御エレメントは、ポリヌクレオチドの下流の、SV40ポリA部位若しくはtkポリA部位又はSV40、lacZ及びAcMNPV多角体ポリアデニル化シグナルなどの転写終結シグナルも含み得る。適切な選択マーカーは、dhfr、gpt、G418ネオマイシン、ハイグロマイシンであり、トランスフェクトされた細胞の同定及び単離を可能にする。トランスフェクトされた核酸はまた、コードされたペプチドを大量に発現させるために増幅され得る。dhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)マーカーは、数百又は数千コピーもの目的の遺伝子を保持する細胞株を作成するのに有用である。別の有用な選択マーカーは、酵素グルタミン合成酵素(GS)(Murphy et al. 1991;Bebbington et al. 1992)である。これらのマーカーを使用して、哺乳動物細胞が選択培地中で培養され、最も高い耐性を有する細胞が選択される。
【0034】
原核細胞用の好適な複製起点としては、例えば、Col E1及びM13複製起点が挙げられる。E. coli及び他の原核生物における培養用の好適なマーカーの例としては、テトラサイクリン、カナマイシン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。原核宿主細胞における発現を許容する可能な制御エレメントは、例えば、lac、trp又はtacプロモーター、E. coliにおけるlacUV5又はtrpプロモーターが含まれる。
【0035】
本発明の核酸分子は、当業者に周知のいくつかの市販のベクターに挿入され得、当業者はいずれのベクターが本発明のペプチドの導入及び/又は発現に適切であるかを決定することもできる。非限定的な例としては、pUCシリーズ、pBluescript(Stratagene)、pETシリーズの発現ベクター(Novagen)又はpCRTOPO(Invitrogen)などの原核プラスミドベクター、ラムダgt11、pJOE、pBBR1-MCSシリーズ、pJB861、pBSMuL、pBC2、pUCPKS、pTACT1並びに、pREP(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO-pSV2neo、pBPV-1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2-dhfr、pIZD35、オカヤマ−バーグ(Okayama-Berg)cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGEMHE(Promega)、pLXIN、pSIR(Clontech)、pIRES-EGFP(Clontech)、pEAK-10(Edge Biosystems)pTriEx-Hygro(Novagen)及びpCINeo(Promega)のような哺乳動物細胞における発現に適合するベクターが挙げられる。Pichia pastorisに適したプラスミドベクターの例は、例えば、プラスミドpAO815、pPIC9K及びpPIC3.5K(全てIntvitrogen)を含む。
【0036】
上述の本発明の核酸分子はまた、別の核酸分子との翻訳融合物が生成されるよう、ベクターに挿入されてもよい。他の核酸分子は、例えば、本発明の核酸分子によりコードされるペプチドの溶解性を増加させ得、且つ/又は精製を容易にし得るペプチド又はタンパク質をコードしてもよい。このようなベクターの非限定的な例としては、pET32、pET41、pET43が挙げられる。更なる発現可能なポリヌクレオチドが1以上のシャペロンをコードして、正確なタンパク質のフォールディングを促進してもよい。更に、上記の翻訳融合物は、本明細書中の他の場所に記載されるような、本発明の融合分子をコードしてもよい。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、本発明のベクターを用いてトランスフェクト又は形質転換された非ヒト宿主に関する。
【0038】
本発明の非ヒト宿主は、単細胞又は多細胞生物であり得る。
【0039】
より好ましい実施形態において、非ヒト宿主は細胞である。
好適な原核宿主細胞は、例えば、BL21(例、BL21(DE3)、BL21(DE3)PlysS、BL21(DE3)RIL、BL21(DE3)PRARE)若しくはRosetta(登録商標)由来の株などのEscherichia種、Streptomyces種、Salmonella種又はBacillus種の細菌を含む。好適な真核宿主細胞は、例えば、Saccharomyces cerevisiae若しくはPichia pastorisなどの酵母、又はDrosophila S2若しくはSpodoptera Sf9細胞などの昆虫細胞である。
【0040】
使用され得る哺乳動物宿主細胞としては、ヒトHela、HEK293、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、COS 1、COS 7及びCV1、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞並びにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。初代哺乳動物細胞又は細胞株も、本発明の範囲内である。初代細胞は、生物から直接採取された細胞である。好適な初代細胞は、例えば、マウス胎仔線維芽細胞(MEF)、マウスの初代肝細胞、心筋細胞及び神経細胞、並びにマウス筋幹細胞(サテライト細胞)、並びにそれらに由来する安定な不死化細胞株である。本発明の組換えペプチドは、染色体内に組み込まれた遺伝子コンストラクトを含む安定細胞株内で、又はプラスミドの形態で安定に若しくは一過的にトランスフェクトされた細胞内で、発現され得る。
【0041】
例えば遺伝子銃を用いてトランスフェクトされ、且つ/又は本発明の核酸分子を発現する宿主としてのトランスジェニック非ヒト動物も、本発明の範囲内にある。好ましい実施形態において、トランスジェニック動物は、哺乳動物、例えばハムスター、マウス、ラット、ウシ、ネコ、ブタ、イヌ、ウマ、ウサギ又はサルである。本発明の核酸分子でトランスフェクトされ且つ/又はそれを発現する宿主としてのトランスジェニック植物も、本発明の範囲内にある。
【0042】
更に別の実施形態において、本発明は、本発明の宿主細胞を適切な条件下で培養する工程、及び製造されたペプチドを単離する工程を含む、本発明のペプチドの製造方法に関する。
【0043】
適切な宿主においてペプチドを製造するための、多数の好適な方法が当分野に存在する。宿主が原核生物又は哺乳動物若しくは昆虫の細胞などの単細胞生物である場合、当業者は種々の培養条件に立ち戻ることができる。都合よいことに、製造されたタンパク質は、培地、培養された細胞のライセートから、又は確立された技術により単離された(生体)膜から、採取される。本発明の核酸を保持する複数の細胞を含む宿主などの多細胞生物の場合、これらの細胞の一部が、本発明のペプチドのソースとして働いてもよく、例えばこの一部は植物の収穫可能な部分であってもよい。好ましい方法は、PCRによる核酸配列の合成及び発現ベクターへのその挿入を含む。続いて、好適な宿主が、発現ベクターを用いてトランスフェクション又は形質転換され得る。その後、宿主が細胞である場合、宿主は培養され、所望のペプチドを生産し、該ペプチドは単離及び精製される。
【0044】
上記宿主のための適切な培地及び培養条件は、当分野で公知である。例えば、細菌の培養のための好適な条件は、それらを通気しながらルリアベルターニ(Luria Bertani)(LB)培地中で増殖させることである。発現産物の収量及び溶解性を増加させるため、培地は緩衝され得るか、又は両方を向上若しくは促進することが知られている適切な添加剤を添加され得る。E. coliは、4から約37℃で培養され得、正確な温度又は一連の温度は、過剰発現させる分子に依存する。一般に、当業者は、これらの条件が宿主の要求及び発現されるペプチド又はタンパク質の要件に合せなければならないであろうことも承知している。誘導性プロモーターが、宿主細胞中に存在するベクター内の本発明の核酸を制御する場合、ポリペプチドの発現は、適切な誘導剤の添加により誘導され得る。好適な発現プロトコール及び戦略は、当業者に知られている。
【0045】
細胞種及びその特有の要件に応じて、哺乳動物細胞培養は、例えば、10%(v/v)FCS、2mM L−グルタミン及び100 U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含む、RPMI又はDMEM培地中で行なわれ得る。細胞は5%CO、水飽和雰囲気中、37℃で維持され得る。
昆虫細胞培養のための好適な培地は、例えば、TNM + 10% FCS又はSF900培地である。昆虫細胞は通常、接着又は浮遊培養として27℃で増殖させる。
真核細胞のための好適な発現プロトコールは、当業者に周知であり、例えばSambrook, 2001の中から得られ得る。
このような方法は、当分野において周知である(例えば、上記Sambrookらを参照のこと)。
【0046】
本発明のペプチドの製造のための別の方法は、mRNAのin vitro翻訳である。本発明に従って用いるための好適な無細胞発現系としては、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽抽出物、イヌ膵臓ミクロソーム膜、E. coli S30抽出物、及びTNTシステム(Promega)などの共役転写/翻訳系が挙げられる。これらのシステムは、コード領域及び適切なプロモーターエレメントを含むクローニングベクター、DNA断片、又はRNA配列の添加により、組換えペプチド又はタンパク質の発現を可能にする。
製造されたペプチドの単離の方法は、当分野において周知であり、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)、アフィニティークロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ディスクゲル電気泳動又は免疫沈降などの方法(例えば、Sambrook, 2001を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本発明はまた、本発明の核酸分子によりコードされる、又は本発明の方法により得ることのできるペプチドに関する。
【0048】
本発明のペプチドは、合成的にも製造され得る。ペプチドの化学合成は、当分野において周知である。固相合成は、一般に用いられ、種々の市販の合成装置、例えばApplied Biosystems Inc.、フォスターシティー、CA;Beckman;MultiSyntech、ボーフム、ドイツなどの自動合成装置が入手可能である。溶液相合成方法も使用され得るが、これはより不便である。本発明のペプチドを小分子、標識部分、ペプチド、又はタンパク質に結合させ、それにより本発明の融合分子を形成させるための官能基は、化学合成の間に分子内に導入され得る。更に、小分子及び標識部分/レポーターユニットは、合成過程の間に結合され得る。好ましくは、官能基の導入及び他の分子への結合は、対象ペプチドの構造及び機能に、最小限にしか影響しない。
【0049】
更に、本発明のペプチドはまた、半合成的に、例えば、組換えによる製造と合成的製造の組み合わせにより、製造され得る。ペプチドの断片が合成的に製造される場合、ペプチドの残りの部分は、他の方法、例えば組換えにより製造され、次いで該断片に連結されて本発明のペプチドを形成しなければならないであろう。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、リンカーに結合している。リンカーの構造及び位置に関して、既に上に記載したのと同じことが適用される。リンカーは、好ましくはペプチドのN末端に位置する。リンカーがリジンであることも好ましい。
【0051】
別の好ましい実施形態において、ジスルフィド結合が、配列番号2の1位及び7位のシステインの間又は7位及び8位のシステインの間に存在する。
【0052】
ジスルフィド結合の有無は、ペプチドがそれらの生物活性及び立体構造の安定性維持するのに有利であり得る。本発明者らは、驚くべきことに、本発明のペプチド内に存在するシステインが、ペプチドがその内在化活性を発揮するために必要であるだけでなく、3つのシステインのうち2つの間でのジスルフィド結合が、ペプチドの内在化活性を更に促進することを見出した。
【0053】
実施例3に示すように、1位及び7位のシステインの間並びに7位及び8位のシステインの間のジスルフィド結合の存在は、本発明のペプチドの内在化特性を更に向上させる。従って、前記ジスルフィド結合の存在だけでなく、位置も、本発明のペプチドの内在化活性のために有利であると思われる。
【0054】
当分野において周知であるように、ジスルフィド結合は、例えば固相合成の間に、ジスルフィド結合を形成すべきでないシステインに適切な保護基を導入することにより、ペプチド内に選択的に導入され得る。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは修飾され得る。例示的な修飾としては、エステル化、グリコシル化、アセチル化又はミリスチン酸の結合などのアシル化、アミド化、リン酸化、ビオチン化、PEG化、ファルネシルの連結、及び当分野において周知の類似の修飾が挙げられる。誘導体化とも呼ばれる修飾は、N末端、C末端又はそれらの間の任意のアミノ酸において行なわれ得る(例、Cys側鎖へのファルネシルの結合)。本発明のペプチドのC末端が修飾されることが好ましく、好ましくはアミド化により修飾される。このような修飾は、外因性のペプチダーゼに対するペプチドの安定性を高めると考えられている。C末端の酸性官能基のアルデヒドへの変換は、化学選択的ライゲーション又はペプチド模倣体における還元ペプチド結合の形成のために使用される。
【0056】
アシル化するための、具体的にはN末端の遊離アミノ基をアセチル化するための方法は、当分野において周知である。C末端については、カルボキシル基は、アルコール類を用いたエステル化により修飾され得るか、又は-CONH2又はCONHRを形成するようアミド化され得る。エステル化及びアミド化の方法は、周知技術を使用して行なわれる。
【0057】
本発明は更に、本発明のペプチドを含む融合分子に関する。
【0058】
本発明の文脈において、融合分子は、上で定義されたように、少なくとも1つの他の部分に連結された1つの部分を形成する、本発明のペプチドを含む少なくとも2つの部分からなる分子である。ペプチド及び少なくとも1つの他の部分は、更なる部分を形成する上記のリンカーにより分離され得るか、又は直接連結され得る。実施例(実施例4を参照のこと)に示すように、本発明のペプチドは、両方の部分を分離するリンカーを使用しても使用しなくても、別の部分に融合されると、その内在化活性を発揮し得る。融合分子は、本発明のペプチドの内在化活性を本質的に保持することが好ましい。好ましくは少なくとも50%の内在化活性が保持され、より好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は100%の本発明のペプチドの内在化活性が、融合分子において保持される。
少なくとも1つの他の部分は、N末端、C末端において本発明のペプチドに融合され得るか、又は、適用できる場合には、末端アミノ酸以外の任意のアミノ酸に融合され得る。少なくとも1つの他の部分がN末端に融合され、随意に上記のリンカーにより分離されることが好ましい。更なる部分は、既に融合分子内に含まれている部分に、又はC末端に、又は本発明のペプチドの末端アミノ酸以外のアミノ酸に融合され得る。当業者は、本発明の融合分子における部分の最適な順番及び/又は組み合わせをどのように決めるかの試験を十分に承知している。例示的な試験は、更に以下に記載するような本発明の目的の融合分子の内在化活性を評価し、及び随意に、この活性を、本発明のペプチドの内在化活性、又は異なる順番の融合された部分を有する本発明の他の融合分子の内在化活性と比較することを含む。
【0059】
別のペプチド又はポリペプチドに融合された本発明のペプチドを含む本発明の融合分子には、融合の結果、クロタミンなどの天然に存在するペプチド又はポリペプチドが生じるような融合分子は含まれない。言い換えれば、本発明のペプチドに融合されるペプチド又はポリペプチドは、異種由来、即ちクロタミンとは異なるペプチド又はポリペプチド由来である。
【0060】
本発明のペプチドに融合されたペプチド又はポリペプチドを含む融合分子の場合、前記ペプチド又はポリペプチドは、本発明のペプチドのN末端に融合されるのが好ましい。より好ましい実施形態において、結果として生じる融合分子のN末端は、例えば、アセチル化などのアシル化により、上記のように修飾される。
【0061】
本発明の融合分子は、本発明のペプチドの製造のための上記方法に従い、製造及び単離され得る。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、核酸、ペプチド若しくはポリペプチド、アプタマー、小分子、ナノ粒子若しくはナノキャリヤー又は造影剤に融合されている。
核酸は、例えば、プラスミド、アンチセンスRNA又はsiRNAの形態で、直鎖状又は環状であり得る。これに関連して、上記核酸擬態分子、例えばPNAも、部分として好適である。
アプタマーは、他の分子に結合するそれらの能力に基づき無作為のプールから選択されたDNA又はRNA分子である。アプタマーとしては、核酸、タンパク質、小有機化合物、及び単細胞生物などの生体全体にまでも結合するものが挙げられる。アプタマーのデータベースは、http://aptamer.icmb.utexas.edu/に維持されている。
より具体的には、アプタマーは、DNA若しくはRNAアプタマー又はペプチドアプタマーとして分類され得る。前者はオリゴヌクレオチドの(通常短い)鎖からなるのに対し、後者は短い可変のペプチドドメインからなり、タンパク質の足場に両末端において結合されている。
【0063】
本発明のペプチドに融合されるペプチドの例としては、SmacのN末端に由来する配列AVPIAQK(実施例を参照のこと)を有するSmacN7ペプチドなどのアポトーシス促進性ペプチドが挙げられる。更なる例は、p53又はp53由来ペプチド並びにp21又はp21由来ペプチドを含み、それらはアポトーシスの制御に関与しており、癌の治療に有用であり得る。ICAM-1又はIKKβ及び/又はそれら由来のペプチド(
【0064】
【数1】

【0065】
)が炎症の研究及び治療に使用される。本発明のペプチドは、ポリペプチド、例えば、チミジンキナーゼ、神経アミダーゼ(neuroamidase)などの酵素、HSP70又はGFPにも融合され得る。
【0066】
ナノ粒子(又はナノ粉末又はナノクラスター又はナノ結晶又はナノキャリヤー)は、少なくとも1つの次元が100 nm未満の微小な粒子である。ナノキャリヤー(通常、約50から500 nmの直径を有する)は、より小さな分子、特に、所望の部位にその後送達され得る薬物を収容することができる。現在までに存在するナノキャリヤーは、温度及び/又はpH感受性であり、このことはそれらが加熱することで又はpHを変えることでそれらの積荷を放出することができることを意味する。それらは普通は、通常の生理的環境では構造的に安定であり、例えば静脈内投与に抵抗性である。ポリマー性コア−シェル型ナノキャリヤー(Polymeric core-shell nanocarriers)は、大きさが小さく(一般に200 nm未満)、封入された生物活性化合物を分解及び消化液から保護するシェルを有する。
【0067】
本発明の融合分子の好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、レポーターユニットに融合される。好適なレポーターユニットは、当業者に周知であり、FITC若しくはTAMRAなどの蛍光色素、又はGd−DOTA−、Gd−DTPA−、64Cu−DOTA−、若しくは68Ga−DOTAなどのMRI若しくはPETのためのレポーターユニット、又はsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、PNA、若しくはレポーター遺伝子をコードし、好ましくはプロモーターなどの制御エレメントに作動可能に連結された核酸などの核酸、又は他のイメージング技術のための造影剤を含む。
【0068】
本発明の融合分子の別の好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、薬理的活性化合物に融合される。薬理的活性化合物は、例えば、上に列挙された核酸、ペプチド、小分子、ナノ粒子などの異なる物質分類に属し得る。例示的な化合物は、抗癌剤、抗生物質又は、更に以下に記載される他の疾患の治療において使用される化合物である。
【0069】
本発明のペプチドが、1より多い他の部分に融合される場合、部分の好適な組み合わせは、例えば、リンカー部分と薬理的活性部分、又は随意に更に1以上のリンカー部分を含む検出可能な部分と薬理的活性部分であり得る。
【0070】
好ましい実施形態において、ペプチド又は融合分子は、研究及び/又は診断目的に適用される。
本発明のペプチド又は融合分子は、例えば、光学的イメージング法、磁気共鳴イメージング(MRI)(主として生体組織の病理学的若しくは他の生理的変化を実証するための医学的イメージングにおいて使用される)、又は陽電子放射断層撮影法(PET)(体内の機能的過程の三次元像又は地図を作り出す核医学イメージング技術)において適用され得る。
MRIにおいて、造影剤は、測定を改善するために適用され得る。該剤は、水のように単純であり得、例えば胃及び小腸をイメージングするために経口投与され得るが、特定の磁気特性を有する物質も使用され得る。最も一般的には、常磁性造影剤(通常ガドリニウム化合物)が与えられる。これは、例えば血管組織(例、腫瘍)の検出に高い感度を提供し、(例えば、脳卒中において)脳かん流の評価を可能にする。
より最近では、超常磁性造影剤(例、酸化鉄ナノ粒子)が利用可能となった。これらは、肝臓イメージング−正常な肝臓組織は該剤を保持し、異常な領域(例、瘢痕、腫瘍)は保持しない−のために使用され得る。それらは、経口投与もされ得、消化管の視覚化を向上させ、消化管内の水が他の臓器(例、膵臓)を分かりにくくするのを防ぐ。
硫酸バリウムなどの反磁性剤は、消化管における使用可能性について研究されてきたが、使用頻度は低い。
PETスキャンを行なうために、短寿命放射性トレーサーアイソトープ(陽電子の放射により崩壊し、また代謝的に活性な分子へと化学的に取り込まれている)が、生体対象(通常血流中)へと注入される。待ち時間の間に、代謝的に活性な分子は目的の組織中に濃縮される;次いで、研究対象又は患者は、イメージングスキャナー内に置かれる。この目的のために最も一般的に使用される分子は、フルオロデオキシグルコース(FDG)、糖であり、その待ち時間は典型的には1時間である。
本発明のペプチドは、両方の方法で、それに結合された各造影剤を目的の部位へ標的化するために、シャトルとして働き得る。細胞内送達は、公知の市販の造影剤と比較して高い感度及び特異性を提供すべきである。標的化された細胞のより特異的な検出(例えば、癌の診断において、又は糖尿病におけるβ−細胞の喪失の検出において)を別にして、このような造影剤は、細胞療法(例、細胞傷害性T細胞を用いる癌治療)における移植細胞の運命と働きの非侵襲的追跡のために使用され得る。幹細胞治療又は養子免疫治療などの細胞ベースの治療は、主に侵襲的光学イメージング法により、動物モデルにおいて既に成功裏に試験され、また観察された(例えば、Sauer MG, 2004)。しかしながら、臨床応用は、移植細胞の長期の定量的及び定性的評価のための非侵襲的診断法の欠如にいまだ悩まされている。これは、治療及びその有効性の観察のために必須である。特異的に標的化された造影剤を用いる無毒性標識手段(最も好ましくは繰り返し適用可能である)により、細胞はin vivoで追跡され得、それらの蓄積及び機能が、MRI、核イメージング又は光学イメージングのようなイメージング技術を使用して観察され得る。
【0071】
本発明は更に、本発明のペプチド又は本発明の融合分子を含む医薬組成物に関する。
【0072】
用語「組成物」は、本発明に従って使用される場合、少なくとも1つの列挙された化合物を含む組成物に関する。組成物は、固形又は液体の形態であり得、とりわけ、粉末(複数可)、錠剤(複数可)、溶液(複数可)又はエアロゾル(複数可)の形態であり得る。
【0073】
本発明に従って、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、上記列挙された化合物を、単独で又は組み合わせて含む。医薬組成物は随意に、更なる分子であって、それにより本発明の化合物の特徴を変えること、例えばそれらの機能を安定化すること、調節すること、及び/又は活性化することが可能な更なる分子を含んでよい。本発明の医薬組成物は、随意に及び更に、医薬上許容可能な担体を含んでよい。「医薬上許容可能な担体」は、無毒性の固体、半固体若しくは液体の、増量剤、希釈剤、封入材料又は任意の種類の補助的製剤を意味する。好適な医薬担体の例は、当分野において周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水乳剤などの乳剤、種々の種類の湿潤剤、無菌溶液、DMSOなどを含む有機溶媒が挙げられる。このような担体を含む組成物は、周知の方法により処方され得る。一般には、製剤は、医薬組成物の成分を均一且つ完全に、液体担体若しくは細かく分けた固体担体又は両方と接触させることにより調製される。次いで、必要であれば、生成物は所望の剤形に成形される。
【0074】
好ましい実施形態において、組成物は非経口投与に適している。用語「非経口」は、本明細書中で使用される場合、投与の形態を言い、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内の、注射及び注入が挙げられる。これらの医薬組成物は、適切な用量で対象に投与される。投与計画は、主治医及び臨床的因子により決定される。医学分野において周知であるように、任意の一患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的健康状態、並びに同時に投与される他の薬物を含む、多くの因子に依存する。所定の状況のための治療有効量は、ありふれた実験より容易に決定され、普通の臨床医又は医師の技術及び判断力の範囲内である。一般に、医薬組成物の定期的な投与としての計画は、1日当たり1μgから5g単位の範囲内であるべきである。しかしながら、より好ましい投薬量は、1日当たり、0.01mgから100mg、更により好ましくは0.01mgから50mg、最も好ましくは0.01mgから10mgの範囲内であり得る。
【0075】
治療的投与のために使用される医薬組成物の成分は、無菌でなければならない。無菌性は、無菌濾過膜(例、0.2ミクロン膜)を通して濾過することにより容易に達成される。
医薬組成物の成分は通常、単位用量容器又は多用量容器、例えば、密閉アンプル又はバイアル内に、水性溶液として又は再構成のための凍結乾燥製剤として保存される。凍結乾燥製剤の例として、10mlバイアルが、5mlの無菌濾過された1%(w/v)水性溶液で満たされ、その結果得られる混合物が凍結乾燥される。注入溶液は、静菌性注射用水を使用して、凍結乾燥された化合物(複数可)を再構成することにより調製される。
例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどの、保存剤及び他の添加剤も存在してもよい。
更に、医薬組成物は、その使用目的に応じて更なる薬剤を含んでよい。
【0076】
医薬組成物は、例えば癌、酵素欠損症、梗塞若しくは脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染若しくは真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症若しくは関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーを含む疾患の、治療及び/又は予防のために特に有用であり得る。更なる好ましい疾患は、医薬組成物が有効であるために血液脳関門などの制限的膜構造を横切らなければならない疾患である。このような疾患の例は、AD又はPDである。
【0077】
本発明に従う癌は、制御されない細胞の分裂及び、浸潤を通じた近接した組織への直接的な成長による、又は転移(このとき、癌細胞は、血流又はリンパ系により運搬される)による離れた部位への移入による、これらの広がる能力により特徴付けられる、疾患又は障害の一分類を指す。
【0078】
障害につながる酵素欠損は、細胞内の1以上の酵素における1以上の変異により引き起こされ、脂肪酸酸化障害、尿素回路障害、フェニルケトン尿症、グリコーゲン分枝酵素欠損及びミトコンドリア酵素欠損が含まれる。
【0079】
本発明に従う細菌感染としては、細菌性髄膜炎、コレラ、ジフテリア、リステリア症、百日咳(pertussis)(百日咳(whooping cough))、肺炎球菌性肺炎、サルモネラ症、破傷風、チフス又は尿路感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明に従うウイルス感染としては、単核球症、AIDS、水痘、風邪、サイトメガロウイルス感染、デング熱、エボラ出血熱、手足口病、肝炎、インフルエンザ、おたふく風邪、ポリオウイルス感染症、狂犬病、天然痘、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性脳炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎又は黄熱病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明に従う真菌感染としては、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症又は足白癬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明に従う自己免疫疾患は、体内に通常存在する物質及び組織に対する身体の過剰な免疫反応から生じる疾患を指す。自己免疫疾患は、当業者に周知であり、エリテマトーデス、急性散在性脳脊髄炎、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、糖尿病、多発性硬化症、視神経炎又は関節リウマチが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明に従うアミロイド様繊維を伴う疾患は、正常では溶解性のペプチドアミロイド−ベータ又はタンパク質アルファ−シヌクレインが規則的な繊維状構造へと凝集し、典型的には酸化的障害の増大、興奮毒性及び細胞周期の変化をもたらすことを共通の特徴として共有する疾患である。アミロイド様繊維を伴う疾患としては、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
アルツハイマー病は、日常生活動作の減退及び神経精神症状又は行動変化と共に、進行性の認知力の低下により特徴付けられる神経変性疾患である。これは最も一般的な種類の認知症である。
【0085】
パーキンソン病は、しばしば罹患者の運動能力及び話す能力を損なう、中枢神経系の変性疾患である。
【0086】
ミオパシーは、筋線維が機能せず、筋力低下をもたらす、神経筋疾患である。いくつかの種類のミオパシーが知られており、例えば筋ジストロフィー、先天性ミオパシー、ミトコンドリアミオパシー又は炎症性ミオパシーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は、特に上記の細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染を予防するために、ワクチンとして使用される。特に好ましい実施形態において、ワクチンはDNAワクチンである。従って、本発明のペプチドは核酸に連結され、該核酸は細胞内に導入された場合に翻訳され、その結果得られるペプチド又はタンパク質は、細胞表面上に抗原断片の形態で提示されるためにプロセシングされ、後者は細菌、真菌又はウイルスにおいて通常見出されるものである。或いは、他の部分(ペプチド又はタンパク質など)に連結された本発明のペプチドを含む本発明の組成物はまた、翻訳される必要なしに細胞内に導入された場合にそれらに対する免疫が誘導される、発現されたタンパク質/ペプチド又は分子を、直接的に細胞に提供する。
【0088】
上記障害及び疾患の治療において、少なくとも1つの薬理活性部分が、本発明のペプチドに連結される。部分について一般的に上記したように、薬理活性部分は様々な物質分類に属し得る。
【0089】
薬理活性部分に加えて、本発明の診断用組成物に含まれる融合分子について更に後述されるように、本発明の融合分子は、所望の組織又は構造を特異的に標的化する標的化配列又は部分を更に含んでよい。
【0090】
更に、本発明は、(a)本発明の核酸分子、(b)本発明のベクター、(c)本発明のペプチド、又は(d)本発明の融合分子のうち少なくとも1つを含む診断用組成物に関する。
【0091】
本発明に従い、用語「診断用組成物」は、個別の患者を、本発明の医薬組成物へのそれらの応答可能性又は本発明の医薬組成物による治癒の可能性について診断するための組成物に関する。更に、診断用組成物は、本発明のペプチド及び融合分子について既に上述したように、研究目的のために少なくとも1以上の部分に融合された本発明のペプチドを含む物質を意味し得る。診断用組成物は、適切な緩衝剤(複数可)を更に含んでよい。診断用組成物は、1つの容器又は複数の容器に詰められ得る。
【0092】
診断用組成物の好ましい実施形態は、レポーターユニット及び、所望の組織又は構造に特異的に標的化する標的配列に融合された本発明のペプチドを含む。例えば、標的配列は、酵素的に切断可能な、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はペプチド配列であり得る。このような標的配列は、例えば癌性の細胞若しくは組織又は他の病的な細胞若しくは組織にレポーターユニットを送達するために設計され得る。
本発明の診断用組成物を使用して、癌などの疾患が、早期に検出され得、従って早期且つより有望な治療を可能にする。特に、癌性組織におけるpH値は、通常非癌性組織よりもより酸性である。従って、pH値の変化に敏感で、従って例えばより酸性のpH値を有する組織を検出することが可能なレポーターユニットは、本発明の診断剤に関連して、癌の検出に役立ち得る。
別の例は、インスリンmRNAに結合するアンチセンス核酸に本発明のペプチドを連結することによる、インスリン産生β細胞におけるインスリンmRNAの検出に関連する。この分子を診断ツールとして、β細胞におけるインスリン産生が観察でき、糖尿病の初期段階を示し得るインスリン産生の減少及び/又はβ細胞の喪失が検出され得る。
更に異なる例は、移植片に対する身体の耐性及び体内に移植された細胞の運命を観察するための、移植事象後の体内の移植された健康な細胞の検出に関連する。
【0093】
治療に適用可能な部分との、検出及び/又は診断において使用可能な部分の上記組み合わせは、セラノスティクスとの関連でますます重要になる。これは、個別の患者について、新しい薬剤投与を受けることへの可能な反応について患者を試験し、試験結果に基づき彼らのために治療を調整するための、診断的治療の提案された過程を説明するために使用される用語である。
【0094】
本発明は更に、本発明のペプチドを含む融合分子又は本発明の融合分子の内在化挙動の検出方法に関し、この方法は、(a)前記融合分子を細胞に投与する工程、及び(b)該融合分子の内在化を検出する工程を含む。
本方法は、例えば医薬組成物又は診断用組成物の形態で、医療目的又は研究目的のためにそこに連結された他の部分との関連で、本発明のペプチドの適用可能性を予測するために特に適している。ペプチド又は1を超える部分を含む融合分子の効率的な内在化が検出され、そして随意にその局在が細胞質中である場合、このことは、各分子が医療目的及び研究目的のために効率的に使用され得ることを示す。
好ましい実施形態において、該方法は、(c)本発明のペプチドの内在化又は異なる順番の融合された部分を有する本発明の融合分子の内在化と比較する工程を、更に含む。この場合に他の融合分子と比較してより高い内在化は、各融合分子が医療目的及び研究目的のために効率的に使用され得ることを示す。
【0095】
更に、本発明は、癌、酵素欠損症、梗塞、脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染若しくは真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)若しくは関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーから選択される状態の治療、予防或いは診断方法に関し、該方法は、本発明の組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0096】
本発明はまた、治療目的又は診断目的のための、本発明のペプチド、融合分子又は組成物に関する。好ましい実施形態において、治療目的は、癌、酵素欠損症、梗塞、脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染若しくは真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)若しくは関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーの治療及び/又は予防である。
【0097】
本発明は、(a)本発明の核酸分子、(b)本発明の核酸分子を含むベクター、(c)本発明のベクターを含む宿主細胞、(d)本発明のペプチド又は(e)本発明の融合分子若しくはタンパク質のうち、少なくとも1つを含むキットに更に関する。
【0098】
該キットの種々の構成成分は、1以上のバイアルなどの1以上の容器内に詰められ得る。バイアルは、該構成成分に加えて、保管のための保存剤又は緩衝剤を含み得る。
【実施例】
【0099】
ここで本発明を以下の実施例を参照することにより説明するが、実施例は単なる例示であり、本発明の範囲の限定として解釈すべきではない。
【0100】
実施例1:ペプチド合成:材料及び方法
全ての溶媒は、ペプチド合成等級のものであった。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びメタノールは、Acros Organics、ベルギーから購入した。保護されたFmocアミノ酸及びレジンは、Novabiochem(ノッティンガム、UK)から入手した。リジンの側鎖はBoc又はDdeにより、CysはTrt又はtBuにより、ArgはPbfにより、そしてTrpはBocにより保護した。
【0101】
(A)自動ペプチド合成:
ペプチドは、Fmoc/tBu戦略及びα-Fmoc-(ε-BOC)-リジン-TCP-ポリスチレンレジンを使用して、全自動固相ペプチド合成により調製した。レジンは、30mgアリコート(15μmol)で濾過管に分配し、バルブブロック上にマイクロタイタープレートのフォーマットで置いた。Fmoc脱保護は、2回、各10分間、ジメチルホルムアミド(DMF)中の30%ピペリジン(300μl)で行なった。9回の洗浄工程をDMF(300μl)で行なった。Fmoc−アミノ酸(0.5M)を、DMF中の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(0.5M)で溶解した。ジイソプロピルエチルアミン[NMP中3M、60μl]を反応管に添加した。カップリング剤ジイソプロピルカルボジイミド[DMF中3M、50μl、第一の連結]又は1−H−ベンゾトリアゾリウム−1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−テトラフルオロボレート(1−),3−オキシド[TCTU、DMF中0.5M、200μl、第二の連結]及びFmoc−アミノ酸[第一の連結200μl;第二の連結100μl]を反応管に分配した。1時間の連結時間の後、カップリング剤を濾去し、レジンをDMFで洗浄し[1×200μl]、その後第二の連結工程(1時間)を行なった。アミノ酸は、各Fmoc−L−アミノ酸の7倍モル過剰量を使用して導入した。洗浄工程[4×400μl]後、Fmoc脱保護を2回、各10分間、DMF中の30%ピペリジン(300μl)で行なった。9回の洗浄工程をDMF(300μl)で行なった。連結過程は、ペプチドの長さに応じて繰り返した。N末端リジンのε基は、FITC(4倍過剰量)で、DMF中トリエチルアミン(1:2)で、一晩手動で標識した。ペプチドをDMF、DCM、メタノール(各4×)で洗浄し、レジンから切り離す前に乾燥させた。
ペプチドは、リエージェントK(500μl)を用いて、レジンから切り離し、側鎖を脱保護した。
【0102】
(B)手動ペプチド合成:
選択したペプチドの合成は、手動ペプチド合成装置(Heidolph Synthesis 1合成装置)を使用して、固相Fmoc化学により行なった。ペプチドは、α−Fmoc−(ε−BOC)−リジン−2−クロロトリチルレジン(0.83mmol/g)上で合成した。Fmocで保護されたアミノ酸(4倍過剰)を、60分間、DIC/HOBT活性化で連結させた。Fmocは、DMF中30%のピペリジンにより除去した(2×10分)。レジンは、連結及びDMFを用いた脱保護の各サイクルの後洗浄した(4×)。連結及び脱保護の完了は、カイザーテスト(Kaiser Test)(38)により観測した。ペプチドを、DMF、DCM、メタノール(各4×)で洗浄し、乾燥させた。ペプチドを、リエージェントK(500μl)を用いて、レジンから切り離し、側鎖を脱保護した。
この切断反応は、特にDOTAベースの化合物の合成のために、リエージェントK単独に代えて、TFA:リエージェントK:TMSBr(8.5:1.45:0.05)を2時間使用することにより、更に最適化した。酸化されたペプチドについて、TFA:TIPS:HOからなる別の切断カクテルを1時間使用し、その後、0℃で30分間DMSO(5:1)を添加し、室温で1時間撹拌した。
【0103】
実施例2:精製及び特徴付け:
全てのペプチドを、MTBEで沈殿させた。沈殿物を遠心分離により回収し、冷MTBEに再懸濁し(2回)、凍結乾燥させた。
試料を、バリアン(Varian)Polaris C18−エーテルカラム(直径21.2mm、長さ250mm、粒子径5μm)上で、水/0.1%TFA(溶媒A)及びアセトニトリル/0.1%TFA(溶媒B)を使用して、室温で準分取RP−HPLCにより精製した。生成物を含む画分を、バリアンPolaris C18−エーテルカラム(直径4.6mm、長さ250mm、粒子径5μm)上で、分析的RP−HPLCで調べることにより決定した。質量分析(ESI−MS)を、更なる特徴付けのために使用した。精製した生成物を、2%酢酸を含む水及びターシャリーブチルアルコール(1:4)に溶解し、凍結乾燥させた。
システインを含むペプチドは、ジスルフィド結合の酸化的形成が起こりやすく、ジスルフィド結合は分子内で形成され得、その結果環状ペプチドを生じ、或いは分子間で形成されればオリゴマー又は凝集を形成し得る。
このCPPはシステインに富むペプチドであるため、該ペプチドの合成及び保管の間、注意を払わなければならない。ペプチドの合成の間、保護基及び切断の間の適切なスカベンジャーの選択は、最適化されるべきである。凍結乾燥の後、ペプチドは窒素下で保管した。内在化研究のために分離した試料は、アリコートにし、−80℃で保管した。細胞研究のための溶液は、これらのアリコートから各実験のために新たに調製した。
【0104】
実施例3:SAR研究
提案された断片(Cro27−39)由来の種々の断片を合成し、親配列の独特の特徴を維持している最適な断片を得た。元の断片Cro27−39(ペプチド1、表1を参照のこと)は、メチオニン又はシステインのような合成的に困難なアミノ酸を含む、13アミノ酸のペプチドである。この研究の目的は、親配列Cro27−39の独特の特徴を維持している配列を単純化することであった。この目的を視覚化するために、配列中の塩基性アミノ酸を保存しながら、アミノ酸残基を置換又は欠失させることにより、一連のペプチドを合成した。K(FITC)又はk(FITC)を全てのペプチドのN末端に連結し、内在化効率を測定した。
【0105】
(A)システインの置換:
置換の目的は、配列中のシステインの重要性を理解することであった。システインの、アミノ酪酸又はセリンによる1つずつの又は一斉の置換は、透過能の維持に関わるシステインの数及び位置の推測に、並びにシステインを避けることにより合成の複雑さを最小化するために、役立つ。
【0106】
(B)システインの欠失:
完全にシステインを避ける可能性の研究に同じ原理が当てはまった。そのようにすることに関して、本発明者らは、配列から1つずつシステインを欠失させることを試み、内在化効率への欠失の影響を研究した。
【0107】
(C)配列の短縮:
最も良い取り込みに必要な最小のアミノ酸組成を見出すために、正に荷電したアミノ酸を同じに保ちながら、N末端からアミノ酸を欠失させることにより、組み合わせを設計した。一方、C末端からの正に荷電したアミノ酸の欠失も研究した。
【0108】
(D)配列の短縮及び置換:
他のバリエーションとしては、置換と欠失の複合効果を研究するためのこれら2つの複合が挙げられる。これは、アミノ酪酸によるシステインの置換及びN末端アミノ酸からの(最初のシステインに達するまで)1つずつの欠失を含んだ。その意図は、適切な長さ及び必要なシステイン残基の数を確認することであった。
【0109】
(E)トリプトファンの置換:
トリプトファンは、アルキル化のような副反応が起こりやすいことが知られている。またトリプトファンとシステインの混合物は、化学的な種々の方法によるジスルフィド形成の過程での副反応の機会がより多く存在するため、最も好ましいものと言うわけではない。従って、トリプトファンは、プロリン又はフェニルアラニンで、1つずつ又は完全に置換した。
【0110】
(F)キラリティーの影響:
細胞取り込みに関する多数の断片のスクリーニングにより、より短い長さのペプチド(ペプチド23、配列番号2)が得られた。アミノ酸組成自体以外の因子を確認するために、このペプチドについて研究を行なった。
他の独特の特徴は、ペプチド主鎖のキラリティー及び配列の順番の、細胞の取り込みへの影響である。d−アイソマーを有するペプチド(配列全体がD−アミノ酸)、逆の順番でL−アミノ酸を有するペプチド、及びD−アミノ酸を逆の順番で有するペプチドを合成した。更に、Trp−Arg−Trp−Argの領域のみにおいて、1つのD−アミノ酸を用いること又は4つ全ての残基を交換することにより、立体化学の影響を研究した。このパターンは、最初のスクリーニングの結果によって示されるように重要であると思われた。
【0111】
(G)スペーサーユニットの導入:
提案の断片におけるシステイン及びそれらの酸化状態の重要性を、研究は示す。本発明者らの研究をこの方向に拡張するために、提案の断片の酸化に焦点を当てて試みた。配列番号2では、2つのシステインが互いに隣接している。それらの間のジスルフィド結合形成のための好ましい条件を確立するために研究を行なった。スペーサーグリシンの導入の目的は、ジスルフィド結合のための2つのシステインの間の最適な距離の必要性を研究するためだけでなく、断片の濃縮を通じて明確なジスルフィド結合の合成を促進するためでもあった。更に、更なるシステインを導入することによる配列の伸長の影響を、2つの明確なジスルフィド結合を有するペプチドの簡便な合成のために研究した。
【0112】
実験結果を図1から3に示す。
【0113】
(H)システインの制御された酸化(細胞内ジスルフィド架橋):
ペプチド内のシステイン残基は、分子内及び分子間の架橋を形成しその結果オリゴマー化を促進するそれらの能力により、該ペプチドの生物活性を修飾することができる(Andreu, 2004)。従って、配列番号2(以下CyLoP-1とも呼ぶ)により表され、リジン(FITC)に融合させた、本発明のペプチドの種々の酸化形態を、明確な細胞内システイン架橋で合成した。
ペプチド23(CyLoP-1)の場合、C−C間、C−C間、又はC−C間の細胞内ジスルフィド結合を有する3つのペプチドが可能である。ペプチドは、実施例1(B)において言及したように合成した。明確なジスルフィド架橋を、他に記載された手順により得た(Wacker, 2008)。該ペプチドを、95%トリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%トリイソプロピルシラン、2.5%水により、レジンから切り離した。分析及び精製条件はこれまで(実施例2)と同じである。
【0114】
3つの酸化されたペプチドのうちの2つ(C−C間及びC−C間のジスルフィド架橋)は、CyLoP-1と比較して改善された取り込みを示し(図4)、このことは、細胞の培養の間のシステインの酸化還元状態(又は生体液中でのそれらの潜在的な酸化)が取り込みにおいて重要な役割を果たし得ることを示す。このことは、CyLoP-1を含む培養培地へのジチオスレイトール(DTT)のアクセスの添加が、取り込み及び細胞質ゲルに拡散される蛍光を減少させるという事実により、更に支持される。
【0115】
実施例4:取り込みへの積荷の影響
CPPは、形質膜を通過する種々の積荷のキャリヤーであることが知られている。種々の積荷の細胞取り込みを研究した。積荷は、必要に応じて変えることができるリンカーを介してペプチドに連結した。この研究ではリンカーとしてリジンを使用する。アミノ保護基の選択は、合成の要件による。
【0116】
積荷としての蛍光色素:
ε−アミノ基へのFITC連結:
構造活性研究のために、全てのペプチドを、リンカーとしてBoc−リジン(Fmoc)−OHを介してFITCに連結した。N末端リジンのε基を、DMF中のトリエチルアミン(1:2)を用いてFITC(4倍過剰)で一晩標識した。
分析及び精製条件はこれまで(C)と同じである。
【0117】
TAMRA及びカルボキシフルオレセインの連結:
内在化に対する積荷の影響を研究するために、様々な色素をεアミノ基に連結した。内在化のメカニズムを研究するための追跡実験用に、様々な有色色素を合成した。内在化への積荷の位置の影響を研究するために、α−アミノ基及びε−アミノ基の両方に、TAMRAを連結した。これらの色素の連結は、DIC、HOBt活性化により8時間行なった。
分析及び精製条件はこれまで(C)と同じである。
【0118】
フルオロフォアの位置:
フルオロフォアの最適な結合を保証するために、様々な位置及び種類の色素の連結を試験した。第一の基準は、C末端標識とN末端標識の比較であった。FITCを、上記の方法によりリジンの側鎖に結合させた。C末端標識の場合に、細胞内取り込み及び細胞質ゾル分布における減少が観察された。
N末端からのリジンのαアミノ基と側鎖アミノ基の標識の更なる比較を、カルボキシフルオレセイン(CF)と連結することにより行なった。この場合、N末端へのFITCの連結は、エドマン分解を引き起こし、従って明確な化合物を失うため、FITCは適用しなかった。
更に、リンカーとしてリジンを使用せずにCyLoP-1におけるN末端システインのαアミノ基に直接、カルボキシフルオレセインを連結させた。
フルオロフォアの連結は、実施例1(B)に記載したように行なった。分析及び精製条件はこれまで(実施例2)と同じである。
【0119】
C末端の官能基:
C末端の官能基の選択も、外因性ペプチダーゼに対するペプチドの安定性の決定において重要な役割を果たす。これに関して、C末端に酸及びアミドを有するCyLoP-1を合成した。
【0120】
二重標識:
内在化のメカニズムを決定するために、及び細胞質ゲインの理由を調べるために、2つのフルオロフォアFITC及びTAMRAをそれぞれC末端及びN末端に有するCyLoP-1を合成した。
フルオロフォアの連結は、これまでに記載したように行なった。分析及び精製条件はこれまで(実施例2)と同じである。
【0121】
N末端へのリジンリンカーを介したCF又はFITCの連結は、取り込みに顕著な影響を及ぼさなかった(図5)のに対し、C末端FITC標識及びN末端システインへのフルオロフォアの直接の連結は、細胞取り込みを著しく減少させた。C末端の酸官能基のアミド基による交換も、細胞における内在化及び分布に否定的に影響した。
【0122】
積荷としてのMRレポーター:
積荷としてのGd(DOTA):
積荷の範囲におけるバリエーションを拡張するために、Gd(DOTA)[MRレポーターとして]及びFITC[蛍光マーカー]のキャリヤーとして提案のペプチドを使用して、二峰性細胞内造影剤の合成を試みた。
ペプチドの合成は、これまでに言及したように行なった。積荷の連結は、リンカーとしてのFmoc−Lys(Dde)−OHの連結により行なった。DOTAは、DIC、HOBt活性化により12時間、α−アミノ位に(Fmoc脱保護の後)連結した。その後、3分間×2のDMF中2%ヒドラジンによるDde脱保護の後、FITCをε−アミノに連結した。分析及び精製条件はこれまで(C)と同じである。
ペプチドの実際の濃度は、蛍光分光法により、約25%であると推定された。従って、GdCl.6HOを、pH6、50℃で18時間加えた(1:1)。再精製を行い、過剰のガドリニウムを除去した。
分析及び精製条件はこれまで(C)と同じである。試料を48時間透析し、過剰なガドリニウム及び他の無機塩を除去した。
【0123】
積荷としてのPNA:
ペプチド核酸(PNA)は、アンチセンスイメージングの分野において有効に適用されているが、形質膜に不透過性であるという制限を有する。この障害を克服するために、これらは一般的には、細胞透過性ペプチド(例、ポリアルギニン、Tat、ペネトラチンなど)のような送達ベクターに連結される。従って、CyLoP-1に結合/融合されたPNAの細胞内送達を研究した。選択されたアンチセンスPNAは、赤色蛍光dsRedタンパク質のmRNAを標的とする(Su et al, 2007)。PNA−ペプチド融合物は、連続Fmoc合成により得た。ペプチドは、実施例1(B)に記載の方法により、0.2mmol/gスケールで、リンクアミドMBHAレジン上で合成した。Fmoc−Lys(Dde)−OHを、フルオロフォアの更なる連結のためのリンカーとして導入した。PNA鎖を、各PNAモノマー、HATU、DIPEA(1:0.9:2)1時間の連続連結により伸長させ、その後各ステップでアセチル化を行なった。反応管からの反応試薬の除去を保証するために、DMF/NMP、DCM、メタノール、DCM、DMF/NMPでの通常の洗浄を行なった。FITCは、DMF中2%ヒドラジンによるDdeの除去の後、リンカーのリジンに結合させた。PNA−ペプチド融合物の反応が完了すると、レジンをDMF、DCM、及びメタノールで十分に洗浄し、乾燥させ、そしてリエージェントKにより3時間切断する。
濾過物を回収し、MTBEにより2回沈殿させた。遠心分離により回収したペレットを、水:tert−ブタノール(1:4)及び5%酢酸中で凍結乾燥させた。分析及び精製条件はこれまで(実施例2)と同じである。
PNA-CyLoP-1融合物:Ac-tccgtgaacggc-K(FITC)-CRWRWKCCKK-CONH2
【0124】
積荷としてのペプチド:
ペネトラチン(アンテナペディアの3番目のへリックス由来の周知のCPP)は、形質膜を通じて各種分子を送達することで知られている。また、ペネトラチンは、アミノ酸組成に関してCyLoP-1と密接な相同性を示す。ペネトラチン及びCyLoP-1の送達効率を比較すると、CyLoP-1は、2.5μMという低い濃度で、細胞質ゾル分布を保持しながら、より良く細胞に取り込まれることが観察されたが、ペネトラチンでは観察されなかった。細胞透過へのこれら二つのペプチドの累積的影響を研究するために、ペネトラチン−CyLoP-1融合物を合成した。内在化効率への積荷/分子量の影響を評価するために、2つの短縮ペネトラチン配列(small-1、small-2)も同様にCyLoP-1に連結した。
融合物は、実施例1(B)に記載の方法により連続固相合成により合成した。各連結の後、未反応の活性部位をブロックするためのキャッピングを行なった。Fmoc−Lys(Dde)−OHを、フルオロフォアの更なる連結のために、CyLoP-1とペネトラチンとの間にリンカーとして導入した。合成の完了後、結合/融合分子を、リエージェントKにより3時間レジンから切断し、その後MTBE中での沈殿及び遠心分離を行なった。
分析及び精製条件はこれまで(実施例2)と同じである。
ペネトラチン-CyLoP-1融合物:Ac-RQIKIWFQNRRMKWK-K(FITC)-CRWRWKCCKK
Small-1-CyLoP-1融合物:RMKWK-K(FITC)-CRWRWKCCKK
Small-2-CyLoP-1融合物:WFQNRRMKWK-K(FITC)-CRWRWKCCKK
【0125】
積荷としてのSmac:
別の例において、CyLoP-1を、Smacタンパク質のN末端由来のアポトーシス促進性ペプチドに融合させた。Smac(第二のミトコンドリア由来カスパーゼ活性化因子)は、アポトーシス刺激に応答してミトコンドリアから放出され、アポトーシスタンパク質の阻害因子(IAP)に結合することによりそれらの阻害活性を失わせ、カスパーゼの活性化を促進する(Heckl, 2008)。IAP結合配列SmacN7(AVPIAQK)のみでは、形質膜に対して不透過性であり、従って、膜透過性ペプチドとの融合は、標的化を達成する簡単な方法である。
SmacN7を、実施例1(B)において議論した方法により、連続SPPSによりCyLoP-1に連結した。フルオロフォアも、これらの融合ペプチドに結合させ、細胞内局在を追跡した。
分析及び精製条件はこれまでと同じである。
Smac CyLoP-1融合物:Ac-AVPIAQK-(FITC)-CRWRWKCCKK
CyLoP-1のN末端へのリジンリンカーを介したより大きな積荷分子の連結の後、積荷の大きさ及び種類に応じて、内在化の減少が観察された(図6A)。ペプチド核酸を有する融合分子は、最も低い細胞内蛍光を示した。それにも関わらず、CyLoP-1の結合体化は、積荷分子のみと比較して、細胞への取り込みを明らかに促進しており(図6B)、このことは生物活性物質を細胞質ゾルへと輸送するその能力を証明している。
【0126】
実施例5:細胞培養
NIH 3T3マウス線維芽細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清、4mM L−グルタミン、100μg/mlストレプトマイシン及び100U/mLペニシリン(全てBiochrom AG、ドイツから購入した)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)培地中、10%COで、37℃で単層として培養した。細胞は、2から3日毎に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Biochrom AG、ドイツ)中、トリプシン/EDTA0.05/0.02%(w/v)でトリプシン処理することにより継代した。
【0127】
更なる細胞株における内在化の評価
調べた細胞株:
C6ラットグリオーマ
N18マウス神経芽細胞腫(分化、未分化)
CCL−11マウス線維肉腫
Shin3ヒト卵巣癌
PANC1ヒト膵臓癌
初代マウス骨髄細胞
【0128】
細胞は、それぞれに最適化された増殖培地を使用して培養し、記載したように継代した。分化は、増殖培地中の血清を10%から1.25%に段階的に減らすことにより、N18細胞において誘導した。
骨髄細胞は、屠殺したマウスの後肢から抽出し、添加IMDM培地中で維持した。
【0129】
分化したN18を除き、CyLoP-1と接触させた全ての細胞種は、小胞の及び拡散した細胞質ゾルの蛍光分布を有する、同等の取り込み挙動を示した。分化したN18神経芽細胞腫細胞への取り込み、特により神経型形態を示す細胞への取り込みは、大きく低下した。
【0130】
実施例6:蛍光標識したペプチドの濃度の決定
ペプチドをミリQ水に溶解し、重量で10mMの溶液を得た。正確なペプチド濃度の決定のために、これらの原液をDMEMで1:100に希釈した。690nmにおける濁度のレシオメトリック補正した485nmにおける溶液の吸光度を、マルチプレートリーダー(BMG Labtech、ドイツ)により測定した。原液の濃度は、εカルボキシフルオレセイン485 nm=81,000 l/(mol・cm)として計算した。TAMRA標識ペプチドの濃度は、εTAMRA 540 nm=40,000 l/(mol・cm)として計算した。
【0131】
実施例7:取り込みアッセイ
細胞の内在化実験は、NIH 3T3線維芽細胞の接種により96ウェルマイクロプレート中で行なった(1×10細胞/ウェル)。24時間後、細胞を、10%CO存在下37℃にて更に18時間、DMEM中で、2.5μMの異なるペプチド溶液と共に培養した。洗浄前に、細胞を、細胞数を概算するために、ビスベンズイミド33342(Hoechst 33342)(核染色剤)と共にインキュベートした。細胞を、ハンクス緩衝生理食塩水(Biochrom AG、ドイツ)で洗浄し、細胞外蛍光を、リン酸緩衝生理食塩水(Biochrom AG、ドイツ)中、冷トリパンブルー0.05%(w/v)と3分間インキュベートすることにより消光し、その後ハンクス緩衝生理食塩水で繰り返し洗浄した。細胞関連のFITC蛍光(Ex485nm/Em530nm)及び細胞数(Ex346nm/Em460nm)を、マルチプレートリーダーで評価した。実験は、6連で、各ペプチドについて少なくとも3回行なった。統計分析は、スチューデントt−検定により、又はダネットの事後検定(Dunnett's post test)と共にANOVAにより行なった。P値<0.05を、有意であるとみなした。結果を図1から3に示す。
【0132】
CyLoP-1の内在化を、4つの公知のCPP(下の表を参照のこと)と比較した。全てのペプチドを、実施例1及び2に記載するように組織内で合成し評価した。細胞取り込み研究を上記のように行なった。
【0133】
【表2】

【0134】
K(FITC)又はk(FITC)をペプチドのN末端に結合させた。大文字はL−アミノ酸を示し、小文字はD−アミノ酸を示す。
【0135】
4つの公知のCPP全てが、CyLoP-1と比較して有意に低下した内在化を示した(図7)。これらのCPPについて、細胞内の主に小胞での蛍光の出現は、特に注目すべきであり、これは、エンドソームでの捕捉と細胞質ゾルへの放出がないこととを示している。
【0136】
実施例8:顕微鏡観察
同じ細胞を、固定することなく、LD Plan NeoFluor40×対物レンズを備えたツァイスAxiovert 200 M(ドイツ)顕微鏡を使用して、顕微鏡的研究に供した。イメージング条件は、異なる試料の観察について、一定に維持した。ペプチドの細胞局在及び分布を、青色光(470/40nm)を照射し、525/50nmで観察することにより、観察した。明るい点状且つ被包性で表されるFITC蛍光を、小胞性の取り込みとして分類し、一方拡散した蛍光は、類似の強度で細胞全体に分布しているように見えた。少なくとも3回の実験の手動の観察をまとめて、ペプチドが、拡散、小胞性、又は両方のタイプの取り込みを示すか否かを結論した。FITC蛍光の他、Hoechstによる核標識は、460/50nmで観察し、トリパンブルー蛍光は645/75nmで見た。また同じ領域のDICと共に位相差像を作成し、細胞がペプチドの存在下でそれらの正常な形態を維持するか否かを観察した。
【0137】
実施例9:経時変化
細胞を、96ウェルマイクロプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種した。48時間後、細胞を、様々な時間(30分−18時間)37℃で、DMEM中、2.5μMのペプチド溶液と共にインキュベーションした。Hoechstでの標識、消光及び洗浄は、取り込みアッセイにおいて詳細に説明したように行なった。蛍光分光法及び顕微鏡観察はプレート上で行なった。
【0138】
実施例10:取り込みへの温度の影響
細胞を、96ウェルマイクロプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種した。48時間後、細胞を、更に4時間37℃又は4℃で、DMEM中、2.5μMの様々なペプチド溶液と共にインキュベーションした。Hoechstでの標識、消光及び洗浄は、取り込みアッセイにおいて詳細に説明したように行なった。蛍光分光法及び顕微鏡観察はプレート上で行なった。
【0139】
実施例11:取り込みメカニズムの解明
内在化のメカニズムを理解するために、細胞を、ワートマニン、メチル−β−サイクロデキストリン、NaN/2−デオキシグルコース、クロロキンなどのような、種々の取り込み阻害剤で処理した。細胞を、96ウェルマイクロプレートに1×10細胞/ウェルの密度で培養した。48時間後、細胞を、表示された阻害剤と30分間プレインキュベーションし、その後、37℃又は4℃で、無血清DMEM中、2.5μMの様々なペプチド溶液と共に更に4時間共インキュベーションした。Hoechstでの標識、消光及び洗浄は、取り込みアッセイにおいて詳細に説明したように行なった。蛍光分光法及び顕微鏡観察はプレート上で行なった。
【0140】
実施例12:ペプチドNMR
CyLoP-1の内在化活性におけるシステインの潜在的な関与を、(N末端リジン(FITC)を有する及び有さない)CyLoP-1についての高分解能NMR研究により更に実証した。水中pH4.5で、該ペプチドは構造化されていないこと、及び還元状態であることが見出され、それに対して、pHを6.5に上げることにより、共鳴の広幅化が観察され、このことは、細胞取り込み条件下での凝集を示している。
試料溶液を、水中pH4−4.5及びpH6.5−7で調製した。pH4.5において、標準セットの2D同種核実験(2D−ipCOSY、2D−TOCSY、異なる混合時間(100及び200ms)での2つの2D−NOESYスペクトル)及び異種核実験(13C−HSQC及び15N−HSQC)を行なった。試料は、モノマーのペプチドであることと一致する十分に分解されたスペクトルを生じた。これらのスペクトルを使用して、全ての非交換性プロトンの共鳴、更に炭素及び窒素の共鳴の、完全な帰属を完了することが可能であった。低い化学シフトの分散、結合定数の7Hzからの逸脱が無いこと、及び残基内接触又は鎖内のその前の残基への接触を示すアミドプロトンは、該ペプチドが構造化されていないことを明らかにした。
それに対してpH6.5では、ラインの広幅化(おそらく高分子量凝集の形成に起因する)が、個別の共鳴の帰属を困難にする。従って、この試料中のジスルフィド架橋の有無は推定することができなかった。
NMR実験は、Bruker Avance IIIスペクトロメーター上で、600MHzにおいて行なった。
【0141】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内へ内在化されることが可能なペプチドをコードする核酸分子であって、ここで前記核酸分子は、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする核酸分子;
(b)配列番号1のDNA配列を有する核酸分子(ここで、核酸分子がRNAの場合、TはUである);又は
(c)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するペプチドをコードする核酸分子(ここで、配列番号2の1、7及び8位からなる群から選択される少なくとも2つの位置において、システインが存在し、且つ配列番号2の2、4、6、9又は10位からなる群から選択される少なくとも4つの位置において、正に荷電したアミノ酸が存在する)
からなる核酸分子。
【請求項2】
ペプチドがリンカーを更に含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記リンカーが前記ペプチドのN末端に位置する、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
リンカーがリジンである、請求項2又は3に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターでトランスフェクト又は形質転換された非ヒト宿主。
【請求項7】
細胞である請求項6に記載の非ヒト宿主。
【請求項8】
請求項7に記載の宿主を適切な条件下で培養する工程、及び製造されたペプチドを単離する工程を含む、ペプチドを製造する方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載の核酸分子によりコードされる、又は請求項8に記載の方法により製造される、ペプチド。
【請求項10】
ジスルフィド結合が、配列番号2の1位及び7位のシステインの間又は7位及び8位のシステインの間に存在する、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
ペプチドのC末端が修飾されている、請求項9又は10に記載のペプチド。
【請求項12】
ペプチドが、アクリル化、アミド化、エステル化、グリコシル化、リン酸化、ビオチン化、PEG化、又はファルネシルの連結により修飾されている、請求項9から11のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のペプチドを含む融合分子。
【請求項14】
ペプチドが、核酸、タンパク質若しくはペプチド、アプタマー、小分子、ナノ粒子若しくはナノキャリヤー又は造影剤に融合されている、請求項13に記載の融合分子。
【請求項15】
ペプチドが、FITC、TAMRA、Gd−DOTA−、Gd−DTPA−、64Cu−DOTA−、68Ga−DOTA、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又はレポーター遺伝子をコードする核酸に融合されている、請求項13又は14に記載の融合分子。
【請求項16】
請求項9から12のいずれか1項に記載のペプチド、又は請求項13から15のいずれか1項に記載の融合分子を含み、随意に医薬上許容可能な担体、賦形剤及び/若しくは希釈剤を更に含む、医薬組成物。
【請求項17】
ワクチンである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
(a)請求項1から4のいずれか1項に記載の核酸分子、
(b)請求項5に記載のベクター、
(c)請求項9から12のいずれか1項に記載のペプチド、又は
(d)請求項13から15のいずれか1項に記載の融合分子
のうち少なくとも1つを含む診断用組成物。
【請求項19】
請求項9から12のいずれか1項に記載のペプチドを含む融合分子、又は請求項13から15のいずれか1項に記載の融合分子の内在化挙動の検出方法であって、
(a)前記融合分子を細胞に投与する工程
(b)該融合分子の内在化を検出する工程
を含む方法。
【請求項20】
癌、酵素欠損症、梗塞、脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染若しくは真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)若しくは関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーから選択される状態の治療及び/又は予防方法であって、請求項16又は17に記載の組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む方法。
【請求項21】
癌、酵素欠損症、梗塞、脳虚血、糖尿病、炎症性疾患、細菌感染、ウイルス感染若しくは真菌感染などの感染、全身性エリテマトーデス(SLE)若しくは関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などのアミロイド様繊維を伴う疾患、又は特定の形態のミオパシーの予防及び/又は治療用の、請求項9から12のいずれか1項に記載のペプチド、請求項13から15のいずれか1項に記載の融合分子、又は請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項22】
(a)請求項1から4のいずれか1項に記載の核酸分子
(b)請求項5に記載のベクター
(c)請求項7に記載の宿主
(d)請求項9から12のいずれか1項に記載のペプチド又は
(e)請求項13から15のいずれか1項に記載の融合タンパク質
のうち少なくとも1つを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−511641(P2011−511641A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546265(P2010−546265)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001040
【国際公開番号】WO2009/100934
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(504199286)マックス−プランク ゲゼルシャフト ツァー フォルデルング デア ビッセンシャフテン エー.ファウ. (1)
【Fターム(参考)】