説明

システイン強化発酵乳食品及びその製造方法

【課題】システイン高含有ペプチドを配合することにより得られるシステインを高濃度に含有する風味良好な飲食品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを配合することを特徴とするシステイン強化発酵乳食品および発酵乳製品の製造に当たり、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを添加する工程を含むことを特徴とするシステイン強化発酵乳食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システイン強化発酵乳食品およびその製造方法に関し、さらに詳細には、種々の酸化的ストレスに関連する生体内疾患の予防・治療に効果が期待されるシステインを高濃度で含有するペプチドを利用した、風味良好で酸乳安定性に優れた発酵乳食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内の細胞に存在する重要な天然抗酸化物質の一つとしてグルタチオンが知られている。このグルタチオンは、抗酸化作用の他に、アルコール等の有害物質の解毒作用、肝機能向上作用、免疫賦活作用、美白・美肌作用等の生理機能に関与していることが明らかにされている。このようなグルタチオンの作用効果は、用量依存的であり、細胞中のグルタチオン濃度が減少するとともに損なわれる傾向があるため、生体内での上記作用効果を発揮させるためには、体内細胞におけるグルタチオン濃度を維持することが重要と考えられている。
【0003】
体内のグルタチオン濃度を増加させる方法としては、まず、グルタチオンそのものを投与する方法が考えられる。しかしながら、投与されたグルタチオンがそのまま吸収されて、体内細胞中のグルタチオン濃度が増加したという報告はなされていない。
【0004】
また、体内或いは細胞内のグルタチオン濃度を増加させる方法としては、これまでに、γ−グルタミルシステイン又はγ−グルタミルシスチンを投与する方法、N−アセチル−L−システインを投与する方法、N−メルカプトプロピオニルグリシンを使用する方法等が挙げられる他、グルタチオンの等価物であるグルタチオンアルキルエステルを投与する方法(特許文献1)も報告されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、体内或いは細胞内のグルタチオン濃度を増加させる手段として有用であっても、上記ジプチド類は化学合成等しなければならないものであり、手軽に摂取しうるというものではなかった。
【0006】
一方で、グルタチオンは、グルタミン、システイン、グリシンからなるトリペプチドであり、体内では主に肝臓内で生合成されることが知られている。そして、その合成量は、体内のシステインの量に依存するため、体内でのグルタチオンの生成を効率よくするには、システインを多く摂取することが重要であるとされている。
【0007】
ところで、システインを手軽に効率よく摂取する方法としては、システインを配合した各種の飲食品等を経口的に摂取する方法を挙げることができる。しかし、システインそのものは、体内で迅速に代謝され、その上、高濃度では細胞に対して有毒であると考えられているため、食品添加物としても認可されていない。従って、システインそのものを遊離アミノ酸として各種飲食品に配合することができないため、システインを含有し、且つ食品添加物と認められている天然或いは合成された食品素材等を飲食品中に配合するしかない。
【0008】
上記のようなシステインを含有する天然の食品素材としては、しじみ、牡蠣、牛レバー、鶏卵、大豆、トマト等を挙げることができる。しかし、これら食品素材のタンパク質あたりのシステイン含有量は、1〜2.5質量%程度と低く、高濃度でシステインを含有する飲食品を得るためには、これらの食品素材を多量に使用する必要があり、経済性面から問題がある。また、これら天然素材を多量使用することで飲食品への風味に影響を与える場合もあり、味覚面からも問題である。
【0009】
更に最近、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるペプチド(以下、「システイン高含有ペプチド」という)が開発され(特許文献2)、これを利用した各種飲食品の開発を検討した。しかしながら、このシステイン高含有ペプチドは、飲食品として使用するにあたり、水に溶解するとシステイン特有の不快な風味が強くなるという問題があり、飲料等の飲食品へ利用する場合には、過剰な糖質等のマスキング素材を使用して風味を改善しなければならないものであった。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,869,456号
【特許文献2】特開2003−33197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、システイン高含有ペプチドを配合していながらも風味良好な飲食品およびその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、システイン高含有ペプチドは、これを発酵乳ベースに配合することにより特有の味がマスキングされ、風味の良好な飲食品が簡単に得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明はペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを配合することを特徴とするシステイン強化発酵乳食品を提供するものである。
【0014】
また、本発明は発酵乳製品の製造に当たり、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを添加する工程を含むことを特徴とするシステイン強化発酵乳食品の製造方法を提供するものである。
【0015】
更に、本発明は発酵乳食品に、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを添加することを特徴とするシステイン強化発酵乳食品の風味改善方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、システイン高含有ペプチドを利用することにより、システインの風味がマスキングされ、風味良好なシステイン強化発酵乳食品を得ることができる。
【0017】
従って、本発明のシステイン強化発酵乳食品により、日常的に簡単にシステインを摂取することができ、このものは体内のグルタチオン濃度を簡単に高めることのできる飲食品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のシステイン強化発酵乳食品は、通常の発酵乳食品に、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを配合し、システインを強化したものである。
【0019】
本発明で用いるシステイン高含有ペプチドは、数個〜数十個のアミノ酸からなるペプチドであり、その中のシステインの含有量が4〜20質量%、好ましくは5〜10質量%のものである。また、このシステイン高含有ペプチドの分子サイズとしては、分子量の70%以上が200以上10,000以下、好ましくは200〜5,000の範囲内にあるものが好ましい。
【0020】
このシステイン高含有ペプチドは、どのような方法で得られたものでも上記条件を満たすものであれば良く、特に限定されないが、例えば、特許文献2に記載の方法により、天然の乳由来の成分である乳清タンパク質を酵素により数個〜数十個のアミノからなるペプチドに加水分解することにより得られたものが好ましい。また、本発明において用いるシステイン高含有ペプチドは、最終製品の風味への影響を考慮して、上記タンパク質の加水分解工程で生じるアミノ酸分子をなるべく含有しないもの、具体的には、アミノ酸分子の含有量が、10質量%以下であるものが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記の方法により得られるシステイン高含有ペプチド以外に、市販のものも利用することができる。市販品としては、例えば、システインペプチド(Cysteine Peptide:DMV International社:システインの含有量約6質量%)を挙げることができる。
【0022】
本発明において、発酵乳食品中でのシステイン高含有ペプチドの配合量は、特に制約はないが、体内への吸収性や製品の風味に与える影響を考慮して0.01〜3.0質量%、好ましくは0.1〜2.0質量%程度とすればよい。なお、システイン高含有ペプチドの添加量が3.0質量%よりも多くなると、システイン高含有ペプチドに由来する独特の風味により、製品の風味が著しく損なわれることもある。
【0023】
本発明のシステイン強化発酵乳食品は、通常の発酵乳食品に前記システイン高含有ペプチドを配合したものである。従って、本発明において発酵乳食品とは、牛乳、羊乳、山羊乳等の生乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、生クリーム等の乳製品をそのまま或いは必要に応じて希釈した溶液(以下、「原料乳」という)中で乳酸菌及び/又はビフィドバクテリウム属細菌を接種して発酵させた溶液もしくはその殺菌処理物(以下、「発酵乳ベース」という)をベースとして含有するものを意味し、乳等省令により定められている発酵乳、乳製品乳酸菌飲料等の生菌含有タイプの他、殺菌処理を施すことにより得られる発酵乳、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、プレーンヨーグルト、更にはケフィア、チーズ等も包含する。なお、本発明のシステイン強化発酵乳食品は、風味上の観点からは、上記態様の発酵乳食品のうち無脂乳固形分が3質量%以上のものが好ましく、特に5質量%以上のものが好ましい。
【0024】
このシステイン強化発酵乳食品の製造において、原料乳の発酵に用いる乳酸菌およびビフィドバクテリウム属細菌としては、通常食品分野で使用されているものであれば特に制限されることなく使用することができる。このうち、乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス、ラクトバチルス・ヘルベティカス等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス等のエンテロコッカス属細菌等が挙げられる。また、ビフィドバクテリウム属細菌としては、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム等が挙げられる。これらの乳酸菌およびビフィドバクテリウム属細菌は、単独或いは2種以上を併用して用いてもよい。
【0025】
本発明のシステイン強化発酵乳食品の製造方法は、特に制限されることなく、従来からよく知られている発酵乳食品の製造方法に従って製造することが出来る。例えば、以下の方法が挙げられる。
【0026】
まず、殺菌した原料乳に通常食品に利用される乳酸菌を接種、培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得、次いでこれに、別途調製したシステイン高含有ペプチド等を含有するシロップを混合して十分に攪拌し、更にフレーバーを添加することにより最終製品が得られる。なお、この時、原料乳には、発酵助剤として酵母エキス等を配合しておいてもよい。
【0027】
また、より良好な風味を得るためには、上記製造方法において、システイン高含有ペプチドの添加時期や、発酵乳ベースの調製方法(発酵条件)を調整することが好ましい。発酵乳ベースの調製方法で、システイン高含有ペプチドを、原料乳を発酵処理した後に添加する場合には特に条件は問わないが、特に、システイン高含有ペプチドを原料乳に添加して発酵処理をする場合には、発酵条件を原料乳中の溶存酸素量が少ない状態、具体的には、原料乳の発酵を静置、嫌気等の条件で、外気との接触をできるだけ抑制した状態を保持しながら行うことが好ましい。
【0028】
更に、本発明のシステイン強化発酵乳食品には、必要に応じて、シロップ等の甘味料のほか、それ以外の各種食品素材、例えば、各種糖質、増粘剤、乳化剤、各種ビタミン剤等の任意成分を配合することができる。これらの食品素材として具体的なものは、ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖等の糖質、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の各種増粘(安定)剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クリーム、バター、サワークリームなどの乳脂肪、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等の各種ビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分を例示することができる。これらの食品素材は、シロップ液中に添加するか、或いは別途殺菌処理して添加することも可能である。
【0029】
斯くして得られる本発明のシステイン強化発酵乳食品は、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを用いることにより、システインを強化していながらも風味が改善された優れたものである。
【実施例】
【0030】
以下、実験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。
【0031】
実 施 例 1
システイン高含有ペプチドの風味評価:
24質量%の脱脂粉乳溶液を121℃で3秒間殺菌し、これにストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2001株及びラクトバチルス・アシドフィルスYIT0071株をそれぞれ0.01%及び0.1%接種し、pH4.3になるまで培養して発酵乳ベースを得た。
【0032】
得られた発酵乳ベースを150kg/cmで均質化した後、98℃で5分間加熱殺菌し、10℃以下になるまで冷却した。この発酵乳ベースとシステイン高含有ペプチド(システインペプチド:DMV International社:システイン含量約6質量%)を1質量%、ショ糖を6質量%及びペクチンを0.3質量%含むシロップ溶液を混合し、さらにヨーグルトフレーバーを0.1質量%添加してドリンクタイプのシステイン強化発酵乳食品を得た。得られたシステイン強化発酵乳食品を次に示す指標で、専門パネル5名で風味評価した結果を表1に示す。なお、比較品として、シロップ溶液のみについても評価した。
【0033】
(風味評価)
1.システイン高含有ペプチドの味の感じ方に関する指標
++;非常に強く感じる
+ ;強く感じる
± ;やや感じる
− ;感じない
2.風味に関する指標
◎;風味が非常によい
○;風味がよい
△;どちらともいえない
×;風味が悪い
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果から、システイン高含有ペプチドを発酵乳ベースに配合した場合には、良好な風味を有するシステイン強化発酵乳食品が得られた。また、無脂乳固形分を3%以上に調製した場合には、特に優れた風味が得られることが認められた。一方、システイン高含有ペプチドを水に溶解した場合には、ショ糖のようなマスキング素材を配合してもシステイン高含有ペプチドの味が強く感じられ風味が悪かった。
【0036】
実 施 例 2
システイン高含有ペプチドの添加量に関する評価:
24質量%の脱脂粉乳溶液を121℃で3秒間殺菌し、これにストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2001株及びラクトバチルス・アシドフィルスYIT0071株をそれぞれ0.01%および0.1%接種し、pH4.3になるまで培養して発酵乳ベースを得た。
【0037】
得られた発酵乳ベースを150kg/cmで均質化した後、98℃で5分間加熱殺菌し、10℃以下になるまで冷却した。この発酵乳ベースとシステイン高含有ペプチド(システインペプチド:DMV International社:システイン含量約6質量%)を0.01〜2.0質量%、ショ糖を6質量%及びペクチンを0.3質量%含むシロップ溶液を混合し、さらにヨーグルトフレーバーを0.1質量%添加してドリンクタイプのシステイン強化発酵乳食品を得た。得られた発酵乳食品を実施例1と同様に専門パネル5名で風味評価した結果を表2に示す。なお、比較品として、シロップ溶液のみについても評価した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2から明らかなとおり、無脂乳固形分が3%以上である場合であれば、システイン高含有ペプチドを0.01〜2.0質量%添加しても良好な風味を有するシステイン強化発酵乳食品を得ることができる。
【0040】
実 施 例 3
原料乳の発酵条件の違いによる風味への影響:
24質量%の脱脂粉乳溶液を121℃で3秒間殺菌し、これにストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2001株及びラクトバチルス・アシドフィルスYIT0071株をそれぞれ0.01%および0.1%接種し、静置して又は攪拌しながらpH4.5が程度になるまで培養して発酵乳ベース(1及び2)を得た。
【0041】
一方で、4質量%のシステイン高含有ペプチド(システインペプチド:DMV International社:システイン含量約6質量%)と24質量%の脱脂粉乳との混合溶液を121℃で3秒間殺菌し、これにストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2001株及びラクトバチルス・アシドフィルスYIT0071株をそれぞれ0.01%、0.1%接種し、静置して又は攪拌しながらpH5.0が程度になるまで培養して発酵乳ベース(3及び4)を得た。
【0042】
上記で得られた4種類の発酵乳ベースを150kg/cmで均質化した後、98℃で5分間加熱殺菌し、10℃以下になるまで冷却した。発酵乳ベース1及び2には、システイン高含有ペプチドを1質量%、ショ糖を1質量%及びペクチンを0.3質量%含むシロップ溶液を、発酵乳ベース3及び4には、ショ糖を1質量%及びペクチンを0.3質量%含むシロップ溶液を混合し、さらにヨーグルトフレーバーを0.1質量%添加してドリンクタイプの発酵乳食品を得た。得られた発酵乳食品を実施例1と同様に専門パネル5名で風味評価した結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3の結果から、原料乳を静置条件で発酵させた場合には、システイン高含有ペプチドの添加時期に関係なく良好な風味を有する発酵乳食品が得られるのに対し、原料乳を攪拌条件で発酵すると、原料乳にシステイン高含有ペプチドを配合した場合にのみ、システイン高含有ペプチドに由来する味が顕著に認められ、最終製品での風味に大きく影響を与えることが明らかとなった。
【0045】
また、表3に示される結果から、原料乳の発酵条件の違いによって、発酵時にシステイン高含有ペプチドが何らかの作用を受けて分解されている可能性が考えられたため、この点を確認するため、参考実験として発酵によるシステイン高含有ペプチドの変化を次に示す方法で調べた。
【0046】
参 考 例 1
実施例3で得られた4種類の発酵乳食品について、過ギ酸処理高速液体クロマトグラフ法(WATERS Acc Q. Tag法)により、システイン含有量を測定し、システイン高含有ペプチド中のシステイン含有量(理論値)と比較した。その結果を表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4の結果から、原料乳の発酵条件が、添加するシステイン高含有ペプチド中のシステインの構造変化には影響しておらず、システインの構造変化が製品への風味に影響を及ぼしていないことが示唆された。
【0049】
また、発酵条件による風味へ影響するメカニズムは定かではないが、システインを高濃度で含有する発酵乳食品を製造する場合には、システイン高含有ペプチドのような化合物を発酵条件に応じて、適切な時期に配合することにより、良好な風味を得ることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のシステイン強化発酵乳食品は、風味が良好であり、日常的にシステインを摂取するために好適なものとなる。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを配合することを特徴とするシステイン強化発酵乳食品。
【請求項2】
無脂乳固形分が3質量%以上である請求項1記載のシステイン強化発酵乳食品。
【請求項3】
システイン高含有ペプチドの配合量が、0.01〜3.0質量%である請求項1または2記載のシステイン強化発酵乳食品。
【請求項4】
発酵乳製品の製造に当たり、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを添加する工程を含むことを特徴とするシステイン強化発酵乳食品の製造方法。
【請求項5】
発酵乳食品に、ペプチド中のシステインの含有量が4〜20質量%であるシステイン高含有ペプチドを添加することを特徴とするシステイン強化発酵乳食品の風味改善方法。


【公開番号】特開2006−197834(P2006−197834A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11953(P2005−11953)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】