説明

システムにおける故障を診断するモデルの更新の支援

方法は、複数のコンポーネントを含むシステムにおける1組の故障と、1組の徴候と、故障と徴候とのうちの少なくとも幾つかとの間の関係性と、を表すシステムモデルデータ(114)を取得するステップ(202)を含む。システムモデルデータを使用して、ベイズネットワーク(300)を作成する。更に、故障例データを取得する。各故障例データは、徴候のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、故障のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、を記述している。次に、故障例データを使用して、ベイズネットワークにおいて学習動作を行なう(208)。学習動作中におけるベイズネットワークのパラメータの更新に対する、故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた寄与を評価する(210)。少なくとも幾つかの故障例のうちの評価された寄与を表わす情報を表示する(212)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援することに関する。
【背景技術】
【0002】
故障モード影響解析は、故障−徴候モデルを作成するために使用される技術である。故障−徴候モデルを使用して、既知の徴候に関するデータと、既知の徴候と既知の故障との関係性に関するデータとを用いて、システムにおいて最も可能性の高い故障を識別することができる。従って、徴候に関する情報がある場合に、診断アプリケーションは、モデルを使用して、可能性の高い故障を識別することができる。通常は、故障と、関連する徴候との間の関係性を定義するモデルの構造は、最初に、専門家の知識を使用して構築されて、次に、一般に、システムの使用中に実際に集められた故障例データを受信することによって、故障と徴候との間の関係性に関する更なる情報が利用可能になるのに従って、更に精度が高められ得る。
【0003】
実際のシステムのモデルは大きい場合があり、確率に基づくリンクによって、何百もの徴候と故障とが互いに関係付けられている。このようなモデルの改善は、リンク構造が正しい(即ち、故障が、リンクされた徴候を本当に起こしている)ことを検証して、故障が発生する真の事前確率及び/又は徴候と故障との関係性の条件付き確率を計算することを含み得る。モデルを記述している、確率に基づくベイズネットワークを用いた学習プロセスを使用して、システムのモデルを改善することは知られている。しかしながら、学習プロセスの結果は、捉え難い場合があり、かなりの期間にわたって行われる場合がある。従って、システムのモデルを検査している専門家が、学習プロセスによってモデルが更新されたことに気付かないか、或いはなぜ又はどのようにモデルが更新されたかが十分に分からない場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施形態は、上述の問題のうちの少なくとも幾つかに対処することを目的としている。実施形態は、モデルに対する可能性のある変化をユーザ(一般に、システムモデルを検査している対象分野の専門家)に知らせることができる情報を提供し、更に、提案された変化の背後にある論理と理由との説明を提供することができる。次に、ユーザは、自身の専門家としての意見に基づいて、提案された変化を容認又は否認する決定をすることができる。
【0005】
本発明の1つの態様によると、システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援する方法であって、
複数のコンポーネントを含むシステムにおける1組の故障と、1組の徴候と、前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の関係性と、を表すシステムモデルデータを取得するステップと、
前記取得したシステムモデルデータに基づくパラメータを有するベイズネットワークであって、前記故障のうちの少なくとも幾つかと前記徴候とのうちの少なくとも幾つかとの間の確率に基づく関係性を記述する前記ベイズネットワークを作成するステップと、
各故障例が、前記徴候のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、前記故障のうちの少なくとも1つの存在/不存在とを記述している、複数の前記故障例を表わす故障例データを取得するステップと、
前記故障例データを使用して、前記ベイズネットワークにおいて学習動作を行なうステップと、
前記学習動作中における前記ベイズネットワークの前記パラメータを更新に対する、前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた寄与を評価するステップと、
前記少なくとも幾つかの故障例の前記評価された寄与を表す情報を表示するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0006】
前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行なわれた前記寄与を評価するステップは、前記故障例の尤度勾配の寄与(likelihood gradient contribution)を計算するサブステップを含むことができる。前記システムモデルデータにおける前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の前記関係性は、故障−徴候の条件付き確率を含むことができる。前記ベイズネットワークのパラメータ(P)の各々と、前記学習動作の各最適化期間(E)とに対する、前記少なくとも幾つかの故障例(C)の各々について、前記尤度勾配の寄与が計算され得る。
【0007】
前記ベイズネットワークは、二値ノードの二層のノイジーオアベイズネットワーク(Binary Node Two-layer Noisy-Or Bayesian Network)を含み得る。前記学習動作は、最尤学習動作を含み得る。
【0008】
更に、前記方法は、前記更新されたパラメータのうちの1つの選択を表す入力を受信するステップを更に含み得る。前記表示される情報は、前記選択されたパラメータに関連する少なくとも1つの前記故障例を含み得る。前記選択されたパラメータの前記更新に対する前記故障例の評価された寄与に従って、前記少なくとも1つの表示された故障例を選択する。従って、前記少なくとも1つの表示された故障例は、システムモデルにおける前記選択されたパラメータに対応するデータを更新するための「正当化(justification)」を表わすことができる。
【0009】
更に、前記方法は、前記更新されて選択されたパラメータの容認又は否認を示す入力を受信するステップと、前記入力が容認を示す場合に、前記システムモデルデータ中の前記更新されて選択されたパラメータに対応するデータを更新するステップと、を更に含み得る。前記学習動作によって計算された、前記故障と前記徴候との間の条件付き確率に対する新たな値を用いて、前記システムモデルデータを更新することができる。前記学習動作によって計算された、徴候−漏れの確率又は故障の事前確率に対する新たな値を用いて、前記システムモデルデータを更新することができる。
【0010】
前記方法は、前記学習動作によって計算された、前記故障と前記徴候との間の条件付き確率を上げる/下げる提案を表示するステップを含み得る。前記方法は、前記学習動作によって計算された、更新された条件付き確率値に基づいて、前記故障と前記徴候との間の条件付き確率の関係性/リンクを削除/追加する提案を表示するステップを含み得る。
【0011】
前記尤度勾配の寄与の計算は、三次元勾配分析オブジェクトを計算するステップを含むことができる。更に、前記尤度勾配の寄与の前記計算は、
前記三次元勾配分析オブジェクトを使用して、(例えば、加算することによって)二次元勾配分析テーブルを生成するステップと、
対象のパラメータ(例えば、ユーザによって選択されたパラメータ)を含む前記生成された二次元勾配分析テーブルの中の列を、前記列中の前記故障例の前記尤度勾配の寄与に従って分類するステップと、
1又は複数の前記尤度勾配の寄与のうちの最高を有する、前記分類された列の中の少なくとも1つの故障例を選択するステップと、
前記少なくとも1つの選択された故障例を正規化するステップと、
を含むことができる。
【0012】
本発明の別の態様によると、ここに実質的に記載されているように、コンピュータプログラムコード手段がロードされたときに、システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援する方法を、コンピュータに実行させるために、前記コンピュータプログラムコード手段を有する、コンピュータ読み出し可能媒体を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援するように構成されている装置であって、
複数のコンポーネントを含むシステムにおける1組の故障と、1組の徴候と、前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の関係性と、を表すシステムモデルデータを取得するように構成されているデバイスと、
前記故障のうちの少なくとも幾つかと前記徴候とのうちの少なくとも幾つかとの間の確率に基づく関係性を記述するベイズネットワークを作成するために、前記取得したシステムモデルデータを使用するように構成されているデバイスと、
各故障例が、前記徴候のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、前記故障のうちの少なくとも1つの存在/不存在とを記述している、複数の前記故障例を表わす故障例データを取得するように構成されているデバイスと、
前記故障例データを使用して、前記ベイズネットワークにおいて学習動作を行なうように構成されているデバイスと、
前記学習動作中における前記ベイズネットワークの前記パラメータの更新に対する、前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた寄与を評価するように構成されているデバイスと、
前記少なくとも幾つかの故障例の前記評価された寄与を表す情報を表示するように構成されているデバイスと、
を含む、装置を提供する。
【0014】
本発明の更に別の態様によると、ここに実質的に記載されている方法を使用して/に従って更新されるシステムモデルが提供される。本発明の別の態様によると、複数のコンポーネントを含むシステムにおける故障を診断するシステムモデルを表わすデータを更新する方法であって、
前記システムの最初/現在のモデルを表わすデータを取得するステップと、
ここに実質的に記載されている、前記システムモデルの更新を支援する方法を適用するステップと、
前記システムモデルの更新を支援する方法によって表示される情報を考慮して、前記システムモデルデータを更新するステップと、
を含む方法を提供する。
【0015】
上述において本発明を記載したが、本発明は、上述又は後述に記載されている特徴の任意の発明的な組み合わせに及ぶ。本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照してここに詳しく記載されているが、本発明はこれらの実施形態そのものに制限されないと解されるべきである。従って、多くの変更とバリエーションが、当業者に明らかになるであろう。更に、1つの実施形態の一部として記載されている又は個別に記載されている特定の特徴と、他の実施形態の一部又は他の個別に記載されている特徴とを、他の実施形態と特徴とが特定の特徴について言及していなくても、組み合わせることができる。従って、本発明は、まだ記載されていない特定の組み合わせに及ぶ。
【0016】
本発明は、様々なやり方で行なうことができる。ここで、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を例示的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】システムモデルを表わすデータを記憶するように構成されているコンピュータと、システムモデルとを示す概略図である。
【図2】システムモデルの更新を支援するプロセスのステップを概略的に示す図である。
【図3】更新を支援するプロセスによって使用されるベイズネットワークを概略的に示す図である。
【図4】更新を支援するプロセスによって行なわれる評価手順のステップを概略的に示す図である。
【図5】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図6】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図7】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図8】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図9】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図10】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図11】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図12】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図13】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【図14】更新を支援するプロセスによって生成することができる画面表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、一般にシステムの故障/徴候モデルの作成に関与するステージの概要を提供する。第1に、対象のシステムについて記載する。第2のステージは、システムのコンポーネントの状態と故障モードを識別することに関与し得る。例えば、ポンプトレイ装置において、コンポーネントは、タンクを含み得る。故障状態は、そのバルブの「位置」に関連し得る。故障モードの識別は、少なくとも1人の専門家の知識に基づき得る。次に、テーブル(又は、任意の他の適切なデータ構造)を作成する。テーブルは、各故障モードに関連する徴候について記述している情報を記憶する。一般に、これも専門家の知識に基づくであろう。第4のステージは、故障モード/徴候マトリックスを生成することに関する。故障モード/徴候マトリックスは、特定の徴候が故障モードをもたらす確率を表わす値を含んでいる。次のステージは、テーブルを検証することである。検証結果を使用して、テーブルを修正することができる。これは、テスト装置又は使われているデータと、テーブルとを比較することに関与し、故障と、関連する徴候とのリストを提供する。(例えば、米国マサチューセッツ州ナティック(Natick, MA, USA)のマスワークス(Mathworks)のマットラブ(Matlab)(登録商標)のようなツールを使用して)ユニットのテストを作成して、徴候をツールに加えた場合に、診断ツールが正確に故障を識別するかをチェックするのに利用してもよい。大きなモデルを処理する場合に、テーブルを検証するために、故障の設定番号を選択してもよいが、より小さなモデルを用いて、全ての故障をテストしてもよい。
【0019】
既に記載したように、モデル作成プロセスにおける初期のステージは、システムについて記載することに関与する。図1は、システム100の概略図を示している。例示的なシステムは、ポンプトレイである。ポンプトレイは、様々な異なるタイプのコンポーネントを具備している。コンポーネントは、例えば、ポンプ102と、センサ104A、104Bと、バルブ106である。この構成は単に例示であって、ここに記載されている実施形態を使用して、任意のシステムのモデルの更新を支援することができる。任意のシステムは、故障を診断する必要がある複数のコンポーネントを具備している(任意のシステムは、サブシステムに構成される場合がある)。
【0020】
更に、図1は、コンピューティングデバイス110を示している。コンピューティングデバイス110は、プロセッサ111と、メモリ112とを有する。メモリ112は、システムのモデルを表わすデータ114を記憶するように構成されている。システムモデルデータ114は、5つの部分/パラメータに構成されているように示されているが、これは単に例示であって、更に、任意の適切なフォーマット/構造の中に、システムモデルデータを記憶できることが分かるであろう。この例におけるシステムモデルデータは、1組の故障120、例えば「動かないバルブ106」を含んでいる。更に、システムモデルデータは、1組の徴候122、例えば「ポンプ102の警報灯の点灯」を含んでいる。更に、システムモデルデータは、故障のうちの少なくとも幾つかと徴候のうちの少なくとも幾つかとの間の関係性に関するデータを含んでいる。この例では、故障−徴候の関係性データは、1組の事前確率124を含んでいる。1組の事前確率124は、徴候を観測することなく、故障が存在している確率を表す。これを使用して、コンポーネントの信頼度をモデル化することができる。更に、故障−徴候の関係性データは、故障−徴候の確率のマトリックス/テーブル126を含んでいる。このようなマトリックスは、当業者によく知られていて、簡潔に言うと、1つのみの故障が存在する場合に、徴候のうちの1つが存在するとして観測される確率を表わす情報を記憶している。更に、故障−徴候の関係性データは、徴候の各々に対する徴候−漏れの確率128を含んでいる。徴候−漏れの確率128は、モデル化された故障が全て存在しない場合に、徴候が存在するとして観測される確率を表わす。システムモデルデータの単純な例を示すテーブルを以下に提供する。
【表1】

【0021】
更に、コンピュータ110のメモリ112は、アプリケーション130のためのコードを含んでいる。アプリケーション130は、システムモデルデータの更新を支援することを目的とする。図2は、アプリケーション130によって行なわれるステップを示している。示されているステップは、単に例示であって、場合によっては、ステップの順序を変更すること、ステップのうちの幾つかを省略すること、及び/又は、別のステップを含むことができることが分かるであろう。ステップ202において、システムモデルを記述しているデータを取得する。このデータは、通常は、アプリケーション130によって既に更新されたデータであるが、最初は、専門家の知識のみに基づいて作成され得る。システムモデルデータのフォーマット、構造、等は、例えば、木、テーブル、等の任意の適切な形式をとることができる。
【0022】
ステップ204において、システムモデルデータに基づいて、ベイズネットワーク(有向グラフモデル)を作成する。当業者は、このような表現と動作とについてよく知っているであろう。米国ピッツバーグ大学の決定システムの研究室(Decision Systems Laboratory, University of Pittsburgh, USA)によって作られた、スマイル(SMILE)とジニー(GeNie)のような公に入手可能なソフトウェアについて参照する。これを使用して、ベイズネットワークに基づくモデルデータを作成して、ベイズネットワークに基づくモデルデータにおいて、診断動作を実行/実施することができる。システムモデルデータは、ベイズネットワークのパラメータ、例えば確率、を提供する。1つの実施形態において、ネットワークは、ベイズネットワークの二値ノードの二層のノイジーオアベイズネットワーク(Binary Node Two-layer Noisy-Or Bayesian Network, BN2NO)形式である。その理由は、これがスケーラビリティに特に適しているからである。しかしながら、他の形式も使用できることが分かるであろう。例えば、1つのみの親ノードがある場合に、1つの故障のベイズネットワークに対するパラメータとして、システムモデルが使用され得る。
【0023】
図3は、専門家の知識から直接に構築されたシステムモデルを使用して構成された、例示的なベイズネットワーク300の例である。専門家の知識は、徴候−故障リンクの粗い測度(coarse measure)のみを含み得る。従って、この例において、リンクの重み(又は条件付き確率)は、非常に単純である。これらの条件付き確率は、グラウンドトルース(ground truth)に対する近似値である。システムの寿命にわたって、現実の故障例から学習することによって、これらの条件付き確率の精度を高めることができる。例示的なネットワークにおいて、特定の故障が存在する場合に、条件付き確率は、強く予想される徴候に対して、1であり、時々発生し得る徴候に対して、0.5である。例えば、sは、fが存在する場合に、1の確率で発生し、fが存在する場合に、0.5の確率でのみ発生する。sが唯一の証拠である場合に、複雑な計算を行なわずに、システムは、fの2倍の確率を有する原因として、fを疑うと推測できる。
【0024】
ステップ206において、(図1において135として概略的に示されている)故障例データを取得する。通常は、故障/徴候の観測を使用して、このデータを構築する。故障/徴候の観測は、モデルの作成/最後の更新後に、モデル化されたシステムの使用中に行なわれる。一般に、最初の検査において、徴候を観測し、次に、疑わしいコンポーネントを取り除く。次に、コンポーネントを、例えばベンチで、テストする。このテスト結果により、疑わしい故障が確認又は否定される。一般に、アプリケーション130は、任意の適当数の故障/徴候の観測に対処できる。従って、故障例は、例えば、メンテナンス作業員(maintenance personnel)によって指摘されるような、システムが稼働中にどのように故障したかの記録である。故障例のデータを使用する目的は、学習動作を使って、システムモデルを改善することである。その結果、後述されるように、モデルは、1組の観測された故障例に、より密接に適合する。
【0025】
データによって記載される各故障例は、どの徴候を観測した(又は、観測しなかった)かと、どの故障が存在している(又は、存在していない)として確認されたかを示すことを含み得る。観測された徴候は、存在している徴候である場合もあり、又は存在していない徴候である場合もある。同様に、観測された故障は、存在している故障である場合もあり、又は存在していない故障である場合もある。存在していない故障は、詳しい検査を行なう前は、存在していると思われていて、その後に、存在していないことが分かった故障に対応し得る。例えば、システムから疑わしいコンポーネントを取り除いて、コンポーネントが使用可能であるかを、使用可能性テスト(serviceability test)で見出す。下記のテーブルに、2つの故障例の例示的な組を示したが、バリエーションが可能である(例えば、観測された故障/徴候のみを記録してもよい)ことが分かるであろう。
【表2】

【0026】
ステップ208では、故障例データを使用して、ベイズネットワークにおいて学習動作を行なう。学習動作は、ネットワークのパラメータの更新をもたらす。システムモデルに対する示唆された変化に対する根拠として、これらの更新されたパラメータを使用することができる。様々なやり方でこの動作を行なうことができ、取得されたデータ中の故障例の全てを一緒に同時に処理できるとは限らないことが分かるであろう。1組の故障例がある場合に、推論アルゴリズム(例えば、ベイズネットワークのBN2NO形式のためのクイックスコア(Quickscore)であるが、これに代わるものが当業者に分かるであろう)を使用して、システムモデルに基づいて、故障例を観測する確率を計算することができる。この確率は、尤度と呼ばれ、システムモデルパラメータの関数として見なすことができる。モデルパラメータ(例えば、徴候が1つの故障を与える条件付き確率)を変えることによって、観測された故障例の尤度を高めることができる。従って、通常、学習動作は、ベイズネットワークにおける、故障と徴候との間のリンクの条件付き確率値と、事前確率と、徴候−漏れの確率とを修正する。その結果、ネットワークは、システムの実際の性能に、より密接に対応することになる。ここに記載されている例では、最尤学習動作を適用するが、他の学習技術を使用できることが分かるであろう。例えば、大きなモデルの変化を不利にするために、学習動作の目的関数に項を加えることができる。
【0027】
ステップ210において、学習動作中に処理される故障例のうちの少なくとも幾つかの寄与を評価する。学習プロセス中に行なわれた計算に基づく、システムモデルに対する少なくとも1つの示唆される更新として使用できる情報と、更に、示唆に対する理由/正当化を示すことができる情報とを提供することが、アプリケーション130の目的である。パラメータに対する尤度勾配要素の(学習動作の期間にわたる)和に従って、故障例に順位を付ける。これは順位値と称される。その更新を提案する理由として、最高の順位値を有する1つ(又は複数)の故障例を選択する。アプリケーションのユーザは各故障例の相対的重要度に関心があり得るので、更に、各理由/例の「影響」率を提供してもよい。順位値を使用して、示唆された更新/システムモデルパラメータに対する最大の順位値によって、順位値を正規化することにより、影響率を計算する。
【0028】
順位値を計算するために使用されるアルゴリズムの例を、図4に概略的に示したが、当業者には、この図に示されているステップに対するバリエーションが分かるであろう。この例は、学習プロセスに関与する故障例に対する尤度勾配の寄与を計算することを含む。尤度は、例えば、1つの故障例又は1組の故障例のような、特定の1組の証拠を観測する確率である。各故障例は、同一分布から独立して取り出されると仮定する。この仮定を考慮して、各故障例に対する対数尤度の和によって、対数尤度が与えられる。この和の中の各項は、各故障例による尤度の寄与である。更に、パラメータに対する尤度の勾配(一次微分、又は変化率)は、各故障例に対する項との和である。勾配の和の中の各項は、特定の故障例に対する「尤度勾配の寄与」である。ステップ402において、以下の式(1)によって示されている三次元勾配分析オブジェクト(Three-Dimensional Gradient Analysis Object, 3DGAO)を取得するために、モデルパラメータの各々と、学習動作中の各最適化期間とに対する、各故障例の尤度勾配の寄与を計算して記憶する。
【数1】

【0029】
mは、システムモデル中のパラメータの総数である。パラメータは、事前確率と、条件付き確率と、漏れノードの確率とを含む。
【0030】
nは、処理される故障例データ中の故障例の総数である。
【0031】
eは、学習動作中の最適化期間の総数である。
【0032】
(即ち、パラメータPと、故障例Cと、期間Eとに対する、勾配の寄与gijkである)。
【0033】
学習動作の完了後に、アプリケーション130によってステップ404を行なうことができる。ステップ404において、和をとることによって3DGAOの次元を2Dにする。順位値を取得するために、(以下の式(2)によって示されている)2DGAOは、全ての最適化期間にわたる尤度勾配の寄与を含む。
【数2】

【0034】
(即ち、パラメータPと故障例Cとに対する、勾配の寄与Gijである)。
【0035】
勾配の和は、故障例によるパラメータの変化の真の測度でない場合もあるが、適度に正確なメトリックである。勾配の寄与の技術に代わるものを使用してもよい。勾配の寄与は、最適化によるパラメータの変化に対する故障例の影響を測るための1つの相対的メトリックである。既知の勾配降下最適化技術(gradient descent optimization technique)(この場合に、ステップサイズは、1である)において、各ステージにおけるステップは、単に勾配ベクトルである。この目的関数に対して、勾配降下の各ステージにおける総ステップは、各故障例によるステップの和である。従って、最適化の全ステップにわたって、故障例によるステップの和をとることによって、故障例によるパラメータの変化を取得することができる。
【0036】
ステップ406では、決定段階において、システムモデルのパラメータ「s」の更新に対するユーザ選択の示唆を考慮して、2DGAOのs番目の行(row)の中の最高絶対勾配の寄与(即ち、高い影響)を有する列(column)番号(即ち、故障例)を選択する。1つ以上の最も高い影響の故障例を選択するように、アプリケーション130を構成できることが分かるであろう。ステップ408において、選択された列の中の故障例を順位値/勾配の寄与Gijに従って分類する。ステップ410において、影響係数を得るために、これらの順位値を正規化する。
【0037】
図2の概要に戻ると、ステップ212において、少なくとも幾つかの故障例の評価された寄与を表わす情報を表示する。後述されるように、情報の表示の仕方を変えることができる。表示情報がユーザを支援して、システムモデルをどのように更新すべきかを決定することが意図されている。例えば、高い影響係数/寄与を有する計算された故障例を、システムモデルパラメータの更新に関する示唆に対する最も確率の高い理由として、強調して提示することができる。
【0038】
ステップ214において、アプリケーション130のユーザは、システムモデルの更新の容認又は否認を表わす入力を提供する。代わりの実施形態では、ユーザは、更新支援アプリケーション130から独立して、ユーザによって検討されるべき故障例の寄与情報を表示するアプリケーションを用いて、システムモデルデータを更新することができる。容認された各/任意の提案に対して、ステップ216において、現在のシステムモデル中の対応するパラメータのデータを、示唆された値に更新する。示唆された値は、学習プロセスにより取得される。更新されたモデルを、新たなシステムモデルとして設定することができる。モデルデータの更新は、アプリケーション130によって完全に自動的に行われる場合もあり、又はユーザによる幾つかの入力を用いる場合もある。ユーザによって容認されない提案は、何れもモデルデータに適用されない。その後に条件が変わると、更新されたモデルを、新たな最初のモデルとして使用でき、学習/更新プロセスを再び適用できる。一般に、1組の観測された徴候がある場合に、診断ツールによってシステムモデルを使用して、システムにおける故障の確率を計算する(診断ツールは、コンピュータ110又は別のデバイスによって実行され得る)。
【0039】
学習動作における計算中に最悪の事態を避けるために、システムモデルパラメータを調節することができる。例えば、学習中の目的関数の勾配を計算する際に、ゼロの尤度があると、問題が生じ得る。ゼロによって除算した項又は対数(0)のような数学的矛盾を、学習全体を通して回避するために、学習アプリケーション全体を通して、数式中の関連のある項を調節することができる。一例として、1に等しい現在の故障−徴候マトリックスの要素を、epsとして呼ばれる僅かな量を減算することによって置換することができる。ここで、epsは、2.2204.10−16に等しい。別の例として、ゼロに等しい漏れノード値を、小さな値であるepsを加えることによって置換することができる。
【0040】
実際のシステムモデルを更新するときのアプリケーションの有用性を査定するために、実際の故障診断システムモデルと、実際の故障例とについて検討する。多数のパラメータを有するシステムモデルと、学習動作とに対して、既知のクイックスコアの推論アルゴリズムを使用することができる。この結果、多数の計算が必要とされ、存在する徴候の数と共に指数関数的に計算数が増加する。従って、より大きなサイズの実際のデータに対処するために、学習プロセスを修正してもよい。例えば、現在観測された徴候に基づくサブネットワーク(即ち、パラメータの適切なサブセットに関するサブグラフ)を使用することによって、推論を単純化することができる。この概念を修正して、学習のためにシステムモデルに適用することができる。故障例に応じて、学習時に、有効なシステムモデルのインスタンスを1つずつ減らす。修正された推論を、縮小されたモデルの各々に適用する。縮小されたシステムモデルは、対象の故障例の中で観測される徴候を有している。更に、故障の全てを考慮に入れる。従って、縮小されたシステムモデルにおいて、徴候数は低減されている。その徴候数は、対象の故障例において、元のシステムモデル中の観測される徴候数に等しい。更に、結果の値をキャッシュに入れることによって、同じパラメータに対する推論関数の連続的な呼出しが最適化される。全体的な更新結果は、実質的に同じままであったが、学習に対する計算時間は低減し、従って、学習アプリケーションは、大きなサイズの実際のデータに対してより効率的であって、かなりの性能の向上を示すことができる。
【0041】
次に、更新の提案に従ってシステムモデルを更新すべきかについての、ユーザの決定を支援するために、及び情報のために、アプリケーション130が更新の提案をユーザにどのように提示できるかについての例を記載する。アプリケーションによって生成されるグラフィカルユーザインターフェイス(Graphical User Interface, GUI)は、故障徴候マトリックスと、漏れの確率ベクトルと、事前確率ベクトルの示唆に関する、大きなシステムモデルの情報をグリッド構造で要約できるが、これに対するバリエーションが可能であることが分かるであろう。図5は、このようなグリッドベースのインターフェイスの一例であり、51個の徴候と50個の故障とを有するモデルに対する更新の示唆を示している。高い重要性を有し得る示唆を強調することができる。例えば、赤色で表示する。一方で、他の示唆は強調しない。例えば、青で表示する。アプリケーション130は、重要度のレベルを、例えば0.4に事前設定/選択することができる。0.4は、対象の現在のモデルパラメータにおける40%の変化を示唆/提案することを示す。
【0042】
GUIは、インタラクティブであり得る。例えば、赤いセルを選択すると、現在のモデルパラメータに対する変化を示唆する理由を表示する。「示唆」のウィンドウに対する例示的なインターフェイスは、図6に示されている。選択された示唆された変化は、条件、fm4、22を下げる。与えられた理由(又は、正当化)は、故障F22が存在し且つ徴候S16が存在する(S4を含む他の全ての徴候が存在しない)という故障例である。S4が存在しないときに、F22が存在するという理由で、この故障例は、示唆された変化を正当化する。従って、F22とS4とのリンク(即ち、条件付き確率の値)は下がる。
【0043】
最初の学習プロセスが終了すると、ユーザは、図7に示されているGUIを呼び出すことができる。モデルパラメータの更新に対する示唆は、上述の最も確率の高い理由と共に表示される。一般に、故障例と、システムパラメータに対する対応する作用は、一貫性があることが認められている。一例として、故障例の組の中に故障−徴候のペアが認められている場合であって、且つそのペアに対応する現在の故障徴候マトリックスの要素が小さな値であるならば、学習後に、そのペアに対応する更新された現在の故障徴候マトリックスの要素は、より大きな値になる。
【0044】
図7は、システムモデルにおける条件付きリンクを変える示唆を示す例示的なインターフェイスを示している。この「示唆」のインターフェイスィンドウは、更新された示唆702を表示して、関連のある故障例と、関連のある故障例に関係のある影響とを用いて、示唆された変化に対する最も確率の高い理由704を要約している。棒グラフ又は任意の他の適切な表示形式で、影響を表示することができる。例えば、「示唆」のインターフェイスにおける「影響」ボタン706をユーザが選択する場合に、図8に示されているような棒グラフが表示され得る。これは、更新の示唆に対して関連のある故障例に関係のある影響をグラフで提示している。例示的な棒グラフにおいて、y軸は、理由のID番号に相当し、x軸は、理由に対する影響要素としての各理由に対する勾配項の正規化された和に対応する。
【0045】
更に、「示唆」のインターフェイスィンドウは、対象のシステムパラメータの前の値と、現在の値と、示唆された値とを与えることができる。更に、ユーザは、異なる値を有する対象のリンクを更新するために、編集可能な更新される値のパネルに、値を入力することができる。更に、ユーザは、示唆に対する理由の詳細を取得できる。更に、故障例と示唆された更新とを視覚化するのを助けるために、関連のあるレイアウトのサブグラフが提供される。提供された情報を使用して、ユーザは、更新の示唆の承認又は否認について決定することができる。表示情報は、更新に使用されない追加のデータを含む場合がある。例えば、どの特定の乗り物/航空機から、障害のあるコンポーネントを取り除いたか、誰がそれを取り除いたか、誰がベンチテストを行なったか、等である。
【0046】
示唆された更新に対する最も確率の高い理由である故障例の詳細を見るために、ユーザは、「示唆」のインターフェイス上の「詳細」ボタン708を押すことができ、図9に示されている情報ウィンドウが生成される。
【0047】
ユーザが、図7の「示唆」のインターフェイス上の「レイアウト」ボタン710を選択すると、更新の示唆に対して関連のある故障例のサブグラフの関係のあるレイアウトは、二層のノイジーオアベイズネットワークのサブグラフのレイアウトとして、グラフで提示される。レイアウトウィンドウは、観測された徴候と、観測された故障と、関係する故障とを示すので、有益である。関係する故障を取得するために、対象の故障例を有する現在のシステムモデルに対して、クイックスコアの推論を適用する。故障に対する事後確率を計算する。サブグラフのレイアウトの中で、より高い事後確率を有する故障は、関係する故障として見なされる。従って、ユーザは、故障例中の故障だけでなく、関係する故障も見ることができる。提示されるレイアウトの一例は、図10に示されている。
【0048】
図10のレイアウトにおいて、故障1002A−1002Hは、円形のノードの中のIDと共に示されている。徴候1004−1004Fは、長方形のノードの中のIDと共に示されている。存在する故障ノードと存在する徴候ノードは、赤色を付けられる。存在しないものは、青色を付けられる。他の関連のある故障ノードは、対応するIDと共に、黒色を付けられる。徴候に関係する他の幾つかの故障がある場合に、それらは、「0」として分類される1つのノードにグループ化されて表示される。レイアウト中の全故障ノードの上には、それらの対応する最初の事後確率が表示されている。
【0049】
レイアウトにおいて、故障と徴候との最初のリンクは、グレー色で示される。リンク値における示唆される上方への変化は、暗い赤色で示される。リンク値における示唆される下方への変化は、暗い青色で示される。リンク値における以前に承認された上方への変化は、明るい赤色で示される。リンク値における以前に承認された下方への変化は、明るい青色で示される。
【0050】
ユーザが、この更新の示唆を承認する場合は、図11に示されているような表示によって、更なる情報が提示される。ユーザが、その更新の示唆と、更に、連続的な更新の示唆を承認する場合は、図12に示されているようなディスプレイによって、更なる情報が提示される。
【0051】
上述の例は、更新支援アプリケーションによって検出された元のシステムモデルにおける欠落したリンクと、提案された新たなリンクとを示している。リンクが欠落し、更に隠れているという状況もあり得る。故障例データの使用のみによって、これらを容易に視覚化することはできなない。このような状態に対処する例示的な画面表示は、図13に示されている。この例では、故障例の中に、故障78と、徴候334、335、360、361、1104とが存在していることが認められ得る。徴候334、335は、故障10のみに関係している。従って、この特定の故障例の中には、故障10は認められないが、徴候334と335との存在が、故障10の存在に対する強力な証拠を生成する。故障10が存在する確率が高いので、学習結果と状態とをその理由と共にユーザに表示するときに、故障10と徴候1104との間の欠落した隠れたリンクが生成される。
【0052】
上述の例は、存在している故障例を示しているが、存在していない故障が、更に現れるかもしれない。図14は、故障例の中に存在していない故障が現れる場合に提示され得る例示的な画面表示を示している。この例では、故障例の中に、故障177は存在しておらず、徴候1409が存在していることが認められ得る。徴候1409は、故障177のみと関係している。故障177が存在していないので、学習結果として、故障177を除く他の全ての故障と、徴候1409との間のリンクが作成されて、SMEに、理由と共に示唆される。それらのうちの1つは、故障67と徴候1409との間のリンクである。これは、上述の図10のレイアウトの例に提示されている。
【0053】
上述の実施形態は、非常に正確な更新されたシステムモデルを生成することができる。更に、これらは、システムモデルパラメータを更新するための示唆を生成して、示唆するための最も確率の高い理由の詳細を提供することができる。実施形態は、ユーザがシステムモデルパラメータを更新するのを助けることができ、更に、大きな故障例/証拠データの組の中における不正確なデータエントリをより容易に検出して、ユーザを支援することができる。
【符号の説明】
【0054】
100・・・システム、102・・・ポンプ、104A,104B・・・センサ、106・・・バルブ、110・・・コンピューティングデバイス、112・・・メモリ、114・・・システムモデルデータ、300・・・ベイズネットワーク、702・・・更新された示唆、704・・・示唆された変化に対する最も確率の高い理由、1002A−1002H・・・故障、1004−1004F・・・徴候。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援する方法であって、
複数のコンポーネントを含むシステムにおける1組の故障と、1組の徴候と、前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の関係性と、を表すシステムモデルデータを取得するステップと、
前記取得したシステムモデルデータに基づくパラメータを有するベイズネットワークであって、前記故障のうちの少なくとも幾つかと前記徴候とのうちの少なくとも幾つかとの間の確率に基づく関係性を記述する前記ベイズネットワークを作成するステップと、
各故障例が、前記徴候のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、前記故障のうちの少なくとも1つの存在/不存在とを記述している、複数の前記故障例を表わす故障例データを取得するステップと、
前記故障例データを使用して、前記ベイズネットワークにおいて学習動作を行なうステップと、
前記学習動作中における前記ベイズネットワークの前記パラメータの更新に対する、前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた寄与を評価するステップと、
前記少なくとも幾つかの故障例の前記評価された寄与を表す情報を表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記システムモデルデータにおける前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の前記関係性は、故障−徴候の条件付き確率を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた前記寄与を評価するステップは、前記故障例の尤度勾配の寄与を計算するサブステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベイズネットワークのパラメータ(P)の各々と、前記学習動作の各最適化期間(E)とに対する、前記少なくとも幾つかの故障例(C)の各々について、前記尤度勾配の寄与を計算する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記更新されたパラメータのうちの1つの選択を表す入力を受信するステップを更に含み、
前記表示される情報は、前記選択されたパラメータに関連する少なくとも1つの前記故障例を含み、
前記選択されたパラメータの前記更新に対する前記故障例の評価された寄与に従って、前記少なくとも1つの表示された故障例を選択する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記更新されて選択されたパラメータの容認又は否認を示す入力を受信するステップと、
前記入力が容認を示す場合に、前記システムモデルデータ中の前記更新されて選択されたパラメータに対応するデータを更新するステップと、
を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記学習動作によって計算された、前記故障と前記徴候との間の条件付き確率に対する新たな値を用いて、前記システムモデルデータを更新する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記学習動作によって計算された、徴候−漏れの確率又は故障の事前確率に対する新たな値を用いて、前記システムモデルデータを更新する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記表示される情報は、前記学習動作によって更新された前記パラメータに基づいて、前記故障と前記徴候との間の条件付き確率を上げる/下げる提案を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記表示される情報は、前記学習動作によって更新された前記パラメータに基づいて、前記故障と前記徴候との間の条件付き確率の関係性/リンクを削除/追加する提案を含む、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記尤度勾配の寄与の前記計算は、
三次元勾配分析オブジェクトを計算するステップと、
前記三次元勾配分析オブジェクトを使用して、二次元勾配分析テーブルを生成するステップと、
前記選択されたパラメータを含む前記生成された二次元勾配分析テーブルの中の列を、前記列の中の前記故障例の前記尤度勾配の寄与に従って分類するステップと、
1又は複数の前記尤度勾配の寄与のうちの最高を有する、前記分類された列の中の少なくとも1つの故障例を選択するステップと、
前記少なくとも1つの選択された故障例を正規化するステップと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記ベイズネットワークは、二値ノードの二層のノイジーオアベイズネットワークを含む、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記学習動作は、最尤学習動作を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータプログラムコード手段がロードされたときに、システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援する方法を、コンピュータに実行させるために、前記コンピュータプログラムコード手段を有する、コンピュータ読み出し可能媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記方法が、
複数のコンポーネントを含むシステムにおける1組の故障と、1組の徴候と、前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の関係性と、を表すシステムモデルデータを取得するステップと、
前記取得したシステムモデルデータに基づくパラメータを有するベイズネットワークであって、前記故障のうちの少なくとも幾つかと前記徴候とのうちの少なくとも幾つかとの間の確率に基づく関係性を記述するベイズネットワークを作成するステップと、
各故障例が、前記徴候のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、前記故障のうちの少なくとも1つの存在/不存在とを記述している、複数の前記故障例を表わす故障例データを取得するステップと、
前記故障例データを使用して、前記ベイズネットワークにおいて学習動作を行なうステップと、
前記学習動作中における前記ベイズネットワークの前記パラメータの更新に対する、前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた寄与を評価するステップと、
前記少なくとも幾つかの故障例の前記評価された寄与を表す情報を表示するステップと、
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
システムにおける故障を診断するモデルの更新を支援するように構成されている装置であって、
複数のコンポーネントを含むシステムにおける1組の故障と、1組の徴候と、前記故障と前記徴候とのうちの少なくとも幾つかの間の関係性と、を表すシステムモデルデータを取得するように構成されているデバイスと、
前記取得したシステムモデルデータに基づくパラメータを有するベイズネットワークであって、前記故障のうちの少なくとも幾つかと前記徴候とのうちの少なくとも幾つかとの間の確率に基づく関係性を記述するベイズネットワークを作成するように構成されているデバイスと、
各故障例が、前記徴候のうちの少なくとも1つの存在/不存在と、前記故障のうちの少なくとも1つの存在/不存在とを記述している、複数の前記故障例を表わす故障例データを取得するように構成されているデバイスと、
前記故障例データを使用して、前記ベイズネットワークにおいて学習動作を行なうように構成されているデバイスと、
前記学習動作中における前記ベイズネットワークの前記パラメータの更新に対する、前記故障例のうちの少なくとも幾つかによって行われた寄与を評価するように構成されているデバイスと、
前記少なくとも幾つかの故障例の前記評価された寄与を表す情報を表示するように構成されているデバイスと、
を含む、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−504810(P2012−504810A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529627(P2011−529627)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051277
【国際公開番号】WO2010/038063
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390038014)ビ−エイイ− システムズ パブリック リミテッド カンパニ− (74)
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
【Fターム(参考)】