説明

システムキッチン

【課題】本発明は、ワークトップをキッチン側と居間側の両方から利用可能とすると共に、清掃が容易でありながらワークトップ上にドライエリアを構成することができる全開放型のシステムキッチンを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明にかかるシステムキッチンの代表的な構成は、水栓および排水口を含むシンクと、ワークトップの一辺に沿って設けられシンクの縁よりも高く形成された棚部と、ワークトップの上面と棚部の上面とを傾斜して連続させる棚部側面とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクやコンロを一体に設けたシステムキッチンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シンクやコンロ、収納などの要素を組み合わせ、ワークトップ(天板)の下にまとめて構成したシステムキッチンが提供され、広く普及している。キッチンは、シンクからの湯水の跳ね返り等があることを前提に、天板全てがワークトップとして濡れてもよい構造になっており、また、そのワークトップには、水気を帯びることが想定される器材のみが置かれていた。
【0003】
しかし、ワークトップ上には調味料などの小物も多く載置され、必ずしも濡れてよいものばかりではない。従来はそのような濡らしたくないものは、引き出し収納の中に入れるか、ワークトップ上に載置した棚に収納していた。
【0004】
また近年は、特別な敷居を設けることなく、リビングとダイニングが1つの部屋で共存する全開放型の対面式オープンキッチンが増加している。オープンキッチンは屋内を全体的に広く感じることができ、また台所で調理している者と居間にいる者との間でコミュニケーションしやすいという利点を有している。しかしその反面、雑然とした調理中の作業状態や使用済みの食器が見えてしまうことなどを嫌う声もある。
【0005】
このため、従来からもオープンキッチンの不都合さを改善するための様々な工夫が成されている。例えば特許文献1(特開2005−204714)には、キッチンユニットの居間側に間仕切り部材を設け、油や食材が居間に飛散することを防止し、また居間からの目隠しとする構成が記載されている。
【特許文献1】特開2005−204714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、調味料などを引き出し収納の中に入れた場合は、使用中はやはりワークトップ上にあるため、濡らさないように気を使わなくてはならない点は変わらない。ワークトップ上に棚を設置すると、作業スペースが狭くなるうえ、ワークトップ上を掃除しにくくなってしまう。またオープンキッチンの場合に棚を設置すると、せっかく対面であることの意義が損なわれてしまうという問題もある。
【0007】
また従来はオープンキッチンとは言っても、台所で作業する人と居間にいる人とが対面できるに過ぎず、居間側からシステムキッチンを利用することは考慮されていなかった。しかしオープンキッチンは、いわば居間の中にあるともいうことができ、居間側からの利用も促進することによって設備の有効利用を図ることができる。
【0008】
さらにキッチンユニットに間仕切り部材などを設けると、目隠しとしての機能は十分であるが、清掃しなければならない必要性が生じる。大きな間仕切り部材は清掃も容易ではなく、設置するとしても最小限度に留めたい要請がある。
【0009】
そこで本発明は、ワークトップをキッチン側と居間側の両方から利用可能とすると共に、清掃が容易でありながらワークトップ上にドライエリアを構成することができる全開放型のシステムキッチンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシステムキッチンの代表的な構成は、水栓および排水口を含むシンクと、ワークトップの一辺に沿って設けられシンクの縁よりも高く形成された棚部と、ワークトップの上面と棚部の上面とを傾斜して連続させる棚部側面とを備えたことを特徴とする。
【0011】
上記のように、ワークトップ上にシンクの縁よりも高い(すなわち作業スペースよりも高い)棚部を設けることにより、水が飛散したとしても棚部には到達しにくい。従って棚部はドライエリア(濡れないことが前提の乾いた領域)となる。このドライエリアは、キッチン側および居間側の両方から利用可能な領域とすることができる。また棚部側面を傾斜させたことにより、棚部側面に付着した水滴は流れやすく、また入り隅の角度が浅くなるため清掃性に優れる。
【0012】
棚部はシンクに隣接し、シンクの棚部と隣接する側面に水栓が取り付けられていると共に、水栓の取付部周囲に上方に向かって後退する傾斜面を有し、傾斜面と棚部側面とが連続していることが好ましい。このようにシンク側面と棚部側面とを連続させることにより、棚部側面に飛散した水滴はそのままシンクから排水されるため、棚部側面の下端に水が溜まることがなく、汚れの付着を防止することができる。
【0013】
棚部はシステムキッチンの後方または側方に設けられていることが好ましい。システムキッチンの後方に棚部を設けた場合には、キッチン側および居間側の両方から棚部を利用することができる。また側方に設けた場合には、キッチン側、居間側、およびシステムキッチンの側面側の3方向から棚部を利用することが可能となる。
【0014】
水栓はシンクの棚部近傍に設置することができる。水栓はシンクの棚部と隣接する側面に設置されていることが好ましい。特に、水栓はシンク側面に設けた傾斜面に設置することが好ましい。これにより棚部は水の進行方向に対して後方側になることから、はねたとしても水が棚部に到達しにくくなり、より濡れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、全開放型のシステムキッチンにおいて、ワークトップをキッチン側と居間側の両方から利用可能とすると共に、清掃が容易でありながらワークトップ上にドライエリアを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について図を用いて説明する。なお、以下の実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
本発明の実施形態によるシステムキッチンとして、ここでは、特別な敷居を設けることなく、リビングとダイニングが1つの部屋で共存する対面式のオープンキッチンを挙げる。かかるオープンキッチンでは、対面式カウンタータイプのキッチンにより、家族や友人とのコミュニケーションがとりやすく、また、キッチン周辺でくつろいだ時間を過ごすことができる。ここで、システムキッチンは、シンク等のキッチン設備を機能的に一体化したものを指す。
【0018】
図1は第一実施形態にかかるシステムキッチン100の概略構成を説明するための外観斜視図である。かかるシステムキッチン100は、対面式カウンタ110と壁側戸棚120とに大別できる。
【0019】
対面式カウンタ110には、シンク140と、シンク140に対して湯水を供給する水栓142と、加熱調理器144と、加熱調理器144からの湯気および熱を屋外に放出するレンジフード146と、煙および熱をレンジフード146に案内する半透明の案内板148と、ワークトップ150と、が設けられ、さらに、軽食やおやつ等を楽しめるカフェテーブル160と、複数の椅子162と、本を収納可能なマガジン収納部164と、を備えることができる。そして、カフェテーブル160はキッチン本体側からの照明に照らされる。
【0020】
ここで、水回りを形成するシンク140は、樹脂やステンレス鋼板等の金属を材料として用い、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等により水切り凹部や排水口と一体的に形成される。また、加熱調理器144は、ガス加熱調理器や石油加熱調理器を利用することができるが、図示したように上面に耐熱ガラス版やセラミック板を設けたIHヒータであってもよい。
【0021】
また、対面式カウンタ110に対向する壁側戸棚120には、戸棚170と、大容量の壁側収納部172とが設けられ、壁側収納部172の上面は、戸棚170底面で発光する照明に照らされる。また、戸棚170の内部にも照明が設けられ、戸棚170の上面および前面に設けられた透明または半透明の板材を介して間接的に発光する。かかる光は、戸棚170が設置された壁面上方を柔らかく照らし、その壁面に広がる間接照明によって、高級感および美観を向上する。
【0022】
次に、本実施形態による引出を説明する。かかる引出はカフェテーブル160と反対面に設けられ、シンク140に対応した位置に配置される。
【0023】
図2はワークトップ150の平面図および部分断面図である。図に示すように、ワークトップ150の長手方向の一辺に沿って、棚部152が設けられている。棚部152とシンク140は隣接して配置している。棚部152は、シンク140の縁140aよりも高く(すなわちワークトップ150の上面よりも高く)形成されている。すなわち棚部152は、キッチンの後方の辺を隆起させた形状として構成されている。
【0024】
ワークトップ150の上面と棚部152の上面とは棚部側面154によって連続されている。棚部側面154は、上方に向かって棚部152側に後退するように傾斜している。
【0025】
またシンク140には、水栓142のほか、排水口141が設けられている。水栓142は棚部152の近傍、すなわち棚部152と隣接する側面(シンク140の後方側の側面)に設置されている。
【0026】
シンク140の棚部152と隣接する側面には、上方に向かって後退する傾斜面140bが形成されている。傾斜面140bはシンク側面の中央部、すなわち水栓142の取付部の周囲のみに設けられており、傾斜面140bの両側に垂直面140cを有している。傾斜面140bと垂直面140cとの境界である段部140dは上方に行くほど傾斜が大きくなり、ワークトップ150の上面となだらかに連続している。
【0027】
そして水栓142の取付部周囲の傾斜面140bは、棚部側面154と連続するように形成されている。すなわち水栓142の後方において、棚部側面154からシンク140の底までなだらかに連続する傾斜面が形成されている。
【0028】
本実施形態においてワークトップ150の幅W1は800mmであり、棚部152の幅W2は195mmである。また本実施形態において棚部152の高さは40mmである。 上記説明した如く、ワークトップ150上にシンク140の縁よりも高い(すなわち作業スペースよりも高い)棚部152を設けることにより、水が飛散したとしても棚部152には到達しにくい。従って棚部152はドライエリア(濡れないことが前提の乾いた領域)となる。また水栓をシンク140の棚部近傍に設置していることも、棚部152は水の進行方向に対して後方側になることから、棚部152の上まで水がはねることを防止する効果がある。
【0029】
これにより、キッチンで調理をする者は、調味料、キッチンタイマーなどの濡らしたくない小物を棚部152に置くことができる。従って引き出しに逐一収納する必要がなく、また棚を設置する必要もない。
【0030】
また棚部152はキッチンの後方、すなわち居間側に設けられているため、キッチン側および居間側の両方から利用可能な領域とすることができる。したがって居間側からも置物や本、時計やラジオなどを置いて利用することができ、オープンキッチン(システムキッチン)を居間に設けられた設備の一つとして有効に利用することができる。
【0031】
また棚部側面154を傾斜させたことにより、棚部側面154に付着した水滴は流れやすい。ここで棚部側面154のうち、シンク140の傾斜面140bに対応する部分はシンク140の底まで傾斜面がなだらかに連続し、それ以外の部分においては棚部側面154の下端とワークトップ150の上面との間に入り隅が形成される。傾斜面140bに連続する部分においては、棚部側面154に飛散した水滴はそのままシンク140から排水されるため、棚部側面154の下端に水が溜まることがなく、汚れの付着を防止することができる。入り隅においては棚部側面154が傾斜していることから角度が浅くなるため、拭き取りやすく、清掃性に優れている。
【0032】
また棚部152がワークトップ150の後方(居間側)に設けられていることにより、ワークトップ上の目隠しとすることができる。したがって雑多な食材や調理道具、雑然とした作業状態などを居間側から見にくくすることで、居間からの美観を向上させることができる。
【0033】
これらのことから、本実施形態によれば、ワークトップ150上にドライエリアを構成してキッチン側と居間側の両方から利用可能とすると共に、清掃が容易でありながらワークトップ150上の目隠しをすることができる全開放型のシステムキッチン100を提供することができる。
【0034】
[第2実施形態]
本発明の第二実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図3は第2実施形態にかかるシステムキッチン200の概略構成を説明するための外観斜視図である。上記第一実施形態において棚部152は、ワークトップ150の長手方向の一辺に沿って設けるよう説明した。これに対し本実施形態は、ワークトップ250の側方、すなわち短手方向の一辺に沿って棚部252を設けている。
【0036】
図3に示すように、ワークトップ250にはシンク140、加熱調理器144、案内板148が備えられている。シンク140と棚部252は隣接して配置されており、棚部252はシステムキッチン200の筐体からデッキ状に突出している。シンク140において水栓142は棚部近傍に設置されており、キッチン側および居間側の両方に対して横向きに設置されている。
【0037】
図4はワークトップ250の平面図および部分断面図である。図に示すように、棚部252は、シンク140の縁140aよりも高く(すなわちワークトップ250の上面よりも高く)形成されている。すなわち棚部252は、キッチンの側方の辺にデッキを追加したような形状として構成されている。
【0038】
ワークトップ250の上面と棚部252の上面とは、棚部側面254によって連続されている。棚部側面254は、上方に向かって棚部252側に後退するように傾斜している。またシンク140の水栓142の取付部周囲の傾斜面140bは、棚部側面254と連続するように形成されている。
【0039】
本実施形態においてワークトップ250の幅W1は800mmであり、棚部252の幅W2は325mmである。また棚部252の高さは、第一実施形態と同様に40mmである。
【0040】
上記構成の棚部252は、第一実施形態に説明した棚部152と同様に水はねを防止したドライエリアとなり、濡らしたくない物を載置することができる。そして棚部252はワークトップ250の側方に設置したことからある程度の幅を備えることができ、調理や配膳のための一時置き場として利用できるほか、本棚や電話、FAX、コンピュータなどを設置するスペースとしても利用することができる。
【0041】
また棚部252が側方にあることから、キッチン側、居間側、およびシステムキッチンの側面側の3方向から棚部252を利用することが可能となる。また棚部252が長手方向になく、水栓142が横向きに設置されていることから、ワークトップ250およびシンク140はキッチン側と居間側の両方から利用することができ、複数人でわいわいと調理を行うことが可能なシステムキッチン200を提供することができる。
【0042】
なお棚部252の下方は、図に示すように何も設けないことにより、例えば食卓を入り込ませて設置することができる。しかしさらに棚や引き出しを設けたり、タオル掛けを設置するなど、さまざまな空間利用が考えられる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、シンクやコンロを一体に設けたシステムキッチンに関する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第一実施形態にかかるシステムキッチンの概略構成を説明するための外観斜視図である。
【図2】第一実施形態にかかるワークトップの平面図および部分断面図である。
【図3】第2実施形態にかかるシステムキッチンの概略構成を説明するための外観斜視図である。
【図4】第2実施形態にかかるワークトップの平面図および部分断面図である。
【符号の説明】
【0046】
100、200…システムキッチン、110…対面式カウンタ、120…壁側戸棚、140…シンク、140a…縁、140b…傾斜面、140c…垂直面、140d…段部、141…排水口、142…水栓、144…加熱調理器、146…レンジフード、148…案内板、150、250…ワークトップ、152、252…棚部、154、254…棚部側面、160…カフェテーブル、162…椅子、164…マガジン収納部、170…戸棚、172…壁側収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓および排水口を含むシンクと、
ワークトップの一辺に沿って設けられ前記シンクの縁よりも高く形成された棚部と、
前記ワークトップの上面と前記棚部の上面とを傾斜して連続させる棚部側面と、
を備えたことを特徴とするシステムキッチン。
【請求項2】
前記棚部はシンクに隣接し、
前記シンクの前記棚部と隣接する側面に前記水栓が取り付けられていると共に、該水栓の取付部周囲に上方に向かって後退する傾斜面を有し、
前記傾斜面と前記棚部側面とが連続していることを特徴とする請求項1記載のシステムキッチン。
【請求項3】
前記棚部は前記システムキッチンの後方または側方に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシステムキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−253318(P2008−253318A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95889(P2007−95889)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】