説明

シッピングプラグ

【課題】 プラグ本体Pの全体の強度を維持しつつ、その装着性を高めることである。
【解決手段】 プラグ本体Pの胴部12とシール突部15との間に屈折部14を設け、胴部12の肉厚を十分に厚くしても、シール突部15が内側に柔軟に折れ曲がりやすくしている。このように胴部12の肉厚を厚くしているので、当該プラグ本体Pを管接手11に押し込むときにも、プラグ本体Pが変形したりせず、シッカリと押し込むことができる。しかも、プラグ本体Pを管接手11に装着する過程で、上記屈折部14が図3に示すように、内側に柔軟に折れ曲がり、シール突部15が雄ねじ部11aを乗り越えやすくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体圧機器等の出荷時や搬送時に、それらから突出したポートあるいはそれらに取り付けられた管継手から機器内にゴミ等が入り込んだり、管継手に塗料が付着しないようにしたり、あるいは機器内に充填した油等の内容物が外部に漏れ出さないようにするためのシッピングプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして特許文献に記載されたシッピングプラグが従来から知られているが、この従来のシッピングプラグを本願の図6として示した。
この図6に示した従来のシッピングプラグは、プラグ本体1を、ゴム等の弾性素材でキャップ状に一体的に形成したもので、管継手2の雄ねじ部2aを覆うことができる大きさを備えている。ただし、プラグ本体1の円筒状の胴部1aの内径は、雄ねじ部2aの外径よりも少し小さくしている。
【0003】
上記のように胴部1aの内径を、雄ねじ部2aの外径よりも少し小さくしたのは、当該プラグ本体1を管接手2に装着したとき、上記胴部1aを雄ねじ部2aに弾力的に密着させ、そのシール性を高めるためである。
【0004】
また、プラグ本体1の開口縁全周には、シール突部1bを一体に形成し、このシール突部1bの内径を、上記雄ねじ部2aのねじ込み方向前方に形成される首部2bの外径よりも小さくしている。したがって、プラグ本体1を管接手2に装着したとき、シール突部1bが上記首部2bに圧接して、そのシール機能を発揮するようにしている。
なお、上記首部2bの外径は、上記雄ねじ部2aの外径よりも小さくしている。
【0005】
上記のようにしたプラグ本体1を、油圧機器Hに固定した管接手2に装着するときには、先ずシール突部1bを管接手2の先端部2cに当てるとともに、プラグ本体1の天井部1cに例えば親指を当てがい、その親指の力で押し込むようにする。
このようにすれば、先ずシール突部1bが雄ねじ部2aに当たって内側に折れ曲がりながら押し込まれ、その折れ込んだシール突部1bが雄ねじ部2aを通過したところで、おり曲がり力が開放されて元の状態に戻り、図6に示すように首部2bをシールする。
【0006】
そして、上記プラグ本体1は胴部1a、シール突部1b及び天井部1cの肉厚を全て均一にしている。ところが、上記したようにシール突部1bはそれが内側に折れ曲がらなければ押し込めないので、このシール突部1bはそれが上記のように折れ曲がるだけの柔軟性を維持するために肉厚を薄くしなければならない。そのために、プラグ本体1は全体に肉厚を薄くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2010−139050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにした従来のシッピングプラグでは、シール突部1bの折れ曲がりを維持するためにプラグ本体1の全体の肉厚を薄くしているので、プラグ本体1を管接手2に被せて上記のように親指で押し込むときに、プラグ本体1が柔らかすぎて変形してしまい、それを素早く押し込むことができないという問題があった。
【0009】
また、プラグ本体1を管接手2に完全に被せたとき、上記従来のシッピングプラグでは、プラグ本体1の天井部1cと管接手2の開口との間に十分な間隔を保つようにしていた。このように十分な間隔を保つようにしていたのは、上記したようにプラグ本体1の天井部1cに親指をあてがって、その親指の力でそれを押し込むときの押し込み方向の変形分を考慮した押し込み代を確保するためである。
【0010】
しかし、上記したようにプラグ本体1の全体の肉厚を薄くしているので、図示のようにプラグ本体1を管接手2に完全に被せたとき、上記間隔を保った部分の強度を維持できない。そのために、例えば、出荷時に当該油圧機器等をビニール袋で覆い、それに輪ゴム掛けをしたとき、プラグ本体がこの輪ゴムの弾性力に負けて変形し、管継手から脱落しまうということもあった。
【0011】
この発明の目的は、プラグ本体を押し込みやすく、しかも、それをポートあるは管接手に被せたときにも輪ゴム等の弾性力に負けない強度を維持できるシッピングプラグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、弾性素材によりキャップ状に形成したプラグ本体を、流体圧機器に設けたポートあるいは管接手にはめるシッピングプラグに関する。
そして、第1の発明は、上記プラグ本体が、上記ポートあるいは管接手の雄ねじ部外径よりも内径を小さくした円筒状の胴部と、この胴部の上部を塞ぐ天井部と、上記天井部とは反対側における胴部の先端に設けた屈折部と、この屈折部の先端に設けるとともに、プラグ本体の内側に向けて突出させ、その突出端が形成する内径が、上記ポートあるいは管接手の雄ねじ部のねじ込み方向前方に形成される首部の外径よりも小さくしたシール突部とを備えている。さらに、上記胴部に対して屈折部の断面の厚さを薄くし、当該プラグ本体をポートあるいは管接手にはめ入れる過程で、上記シール突部が上記雄ねじ部に接触しながら内側に柔軟に折れ曲がるとともに、上記胴部の内面が上記雄ねじ部に弾力的に密着する一方、上記屈折部から折れ曲がったシール突部が上記雄ねじ部を通過したとき、屈折部の折れ曲がり力が開放されてシール突部がポートあるいは管接手の上記首部に密着する構成にしている。
【0013】
上記のようにしたシッピングプラグは、例えば油圧機器等のハウジングと一体化したポートであって、当該ハウジングから突出したポートに対して適用できるし、上記ハウジングとは別の管接手を設けたものにも適用できるものである。
【0014】
第2の発明は、上記胴部と天井部とを連続させるコーナー部を円弧状にするとともにその断面の厚さを、胴部及び天井部の断面厚さよりも厚くしたものである。
【0015】
第3の発明は、上記シール突部がポートあるいは管接手の首部に密着した状態で、天井部とポートあるいは管接手の開口との対向間隔が狭くなる構成にしたものである。
第4の発明は、上記天井部の外側につまみ用突部を設けた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、プラグ本体の胴部とシール突部との間に屈折部を設け、この屈折部の断面の厚さを上記胴部に対して薄くしたので、例えば胴部の断面の厚さは、その強度を維持するために必要な厚さに保つことができる。したがって、例えば、プラグ本体の天井部に親指をあてがい、その親指の力でプラグ本体を押し込むときにも、プラグ本体が簡単に変形しないので、プラグ本体の装着作業がスムーズにできるようになる。
【0017】
第2の発明によれば、プラグ本体の胴部と天井部とを連続させるコーナー部を円弧状にするとともにその断面の厚さを、胴部及び天井部の断面厚さよりも厚くしたので、上記のように親指で押し込むときのプラグ本体の強度をさらに大きくすることができる。
【0018】
第3の発明によれば、プラグ本体のシール突部がポートあるいは管接手の首部に密着した状態で、天井部とポートあるは管接手の開口との対向間隔が狭くなる寸法関係を保ったので、例えば当該油圧機器等にビニール袋をかぶせて輪ゴム掛けするときにも、プラグが簡単に外れたりしなくなる。
第4の発明によれば、ポートあるいは管接手に装着したプラグ本体を、ペンチなどの手工具でつまみ用突部をつまんで取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の管接手から外したプラグ本体の断面図である。
【図2】第1実施形態の管接手の先端にシール突部をはめた状態のプラグ本体の断面図である。
【図3】第1実施形態の管接手の雄ねじ部にシール突部を押し込んだ状態のプラグ本体の断面図である。
【図4】第1実施形態の管接手に完全にはめた状態のプラグ本体の断面図である。
【図5】第2実施形態の管接手に完全にはめた状態のプラグ本体の断面図である。
【図6】管接手に完全にはめた状態の従来のプラグ本体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図4に示した第1実施形態において、プラグ本体Pは、ゴム等の弾性素材でキャップ状に一体的に形成したもので、油圧機器Hの開口に設けた管接手11に被せるものである。そして、このプラグ本体Pは、その雄ねじ部11aの外径よりも内径を小さくした円筒状の胴部12と、この胴部12の上部を塞ぐ天井部13と、上記天井部13とは反対側における胴部12の先端に設けた屈折部14と、この屈折部14の先端に設けたシール突部15とを備えている。
【0021】
そして、上記屈折部14及びシール突部15は、胴部12の断面積のほぼ半分の厚さにするとともに、このシール突部15はプラグ本体Pの内側に向けて突出させ、その突出端が形成する内径が、上記管接手11の雄ねじ部11aのねじ込み方向前方に形成される首部11bの外径よりも小さくしている。
さらに、上記胴部12と天井部13とを連続させるコーナー部16を円弧状にするとともにその断面の厚さを、胴部12及び天井部13の断面厚さよりも厚くし、その部分の強度を大きくしている。
【0022】
上記のようにしたプラグ本体Pを管接手11に装着する場合には、図1に示すように、プラグ本体Pを管接手11の開口11cの上方に保つ。
この状態からプラグ本体Pを徐々に押し下げていくとともに、図2に示すように、プラグ本体Pのシール突部15を管接手11の先端にはめ合わせる。この図2の状態では、シール突部15が多少開き、その開く力で胴部12が少し反り気味になる。
【0023】
上記の状態からプラグ本体Pをさらに押し込むと、図3に示すように、シール突部15が管接手11の雄ねじ部11aに乗り上げるが、このときにはシール突部15が雄ねじ部11aに接触しながら、屈折部14から内側に柔軟に折れ曲がる。この状態では、胴部12がさらに反り返る。
【0024】
そして、プラグ本体Pをさらに押し込むと、シール突部15がプラグ本体Pの雄ねじ部11aを完全に乗り越えるが、このように雄ねじ部11aを完全に乗り越えると、屈折部14の折れ曲がり力が開放されてシール突部15が管接手11の首部11bに密着する。
上記のようにしてシール突部15が雄ねじ部11aを完全に乗り越えて首部11bに密着したときには、シール突部15で首部11bがシールされるとともに、胴部12が反り返り気味になって当該胴部12の内面が雄ねじ部11aに弾力的に密着し、この雄ねじ部11aをシールする。
【0025】
上記のようにプラグ本体Pを管接手11に装着するが、この第1実施形態では、胴部12の断面の肉厚をある程度厚くすることができる。なぜなら、シール突部15は屈折部14を介して折れ曲がるので、胴部12の断面の厚さを厚くしたとしても、シール突部15の折り曲げに支障をきたさないからである。このように胴部12の肉厚を厚くできるので、上記のように天井部13に親指を当てながらプラグ本体Pを押し込んだときにも、プラグ本体Pが変形せず、当該プラグ本体Pを管接手11にスムーズに装着することができる。しかも、プラグ本体Pのコーナー部16の肉厚も胴部12を含んだ他の部分よりも厚くしているので、この部分の変形も少なくなり、より一層、装着がスムーズになる。
【0026】
また、プラグ本体Pを管接手11に装着した状態において、図4に示すように、管接手11の開口11cと天井部13との対向間隔が狭くなる寸法関係を維持したので、胴部12の上側が変形しにくくなる。したがって、例えば、従来のように輪ゴム掛けをしたとしても、プラグ本体Pの先端部分が変形したりせず、当該輪ゴムが接触することでプラグが外れてしまうこともなくなる。
【0027】
なお、上記第1実施形態において、図1〜図4からも明らかなように、上記屈折部14の肉厚は、胴部12の肉厚に対してほぼ半分程度にしているが、屈折部14と胴部12との肉厚の相対差は、プラグ本体Pを構成する材質に応じて相対的に定まるものである。
【0028】
いずれにしても、プラグ本体Pの各部の肉厚は、上記図2〜図4に示す変形をしながら、シール突部15が首部11bまで到達するだけの柔軟性が必要である。したがって、その柔軟性を維持できれば、各部の肉厚は全て相対的に定まることになる。ただし、胴部12に対して屈折部14の肉厚を薄くして、この屈折部14が図3に示すように折れ曲がりやすくしておくことは必要である。
【0029】
図5に示した第2実施形態は、プラグ本体Pの天井部13の外側につまみ用突部17を形成したもので、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。
上記のようにつまみ用突部17を設けたのは、例えばペンチなどの手工具でこのつまみ用突部17をつまんで、管接手11に装着したプラグ本体Pを取り外せるようにするためのものである。
なお、上記屈折部14は、上記第1,2実施形態と異なり、胴部12の外周を一周する環状凹部としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
スプールバルブのバルブ本体に取り付けた管接手を塞ぐためのシッピングプラグに最適である。
【符号の説明】
【0031】
P プラグ本体
11 管接手
11a 雄ねじ部
11b 首部
11c 開口
12 胴部
13 天井部
14 屈折部
15 シール突部
16 コーナー部
17 つまみ用突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性素材によりキャップ状に形成したプラグ本体を、流体圧機器に設けたポートあるいは管接手にはめるシッピングプラグにおいて、上記プラグ本体は、上記ポートあるいは管接手の雄ねじ部外径よりも内径を小さくした円筒状の胴部と、この胴部の上部を塞ぐ天井部と、上記天井部とは反対側における胴部の先端に設けた屈折部と、この屈折部の先端に設けるとともに、プラグ本体の内側に向けて突出させ、その突出端が形成する内径が、上記ポートあるいは管接手の雄ねじ部のねじ込み方向前方に形成される首部の外径よりも小さくしたシール突部とを備え、上記胴部に対して屈折部の断面の厚さを薄くし、当該プラグ本体をポートあるいは管接手にはめ入れる過程で、上記シール突部が上記雄ねじ部に接触しながら内側に柔軟に折れ曲がるとともに、上記胴部の内面が上記雄ねじ部に弾力的に密着する一方、上記屈折部から折れ曲がったシール突部が上記雄ねじ部を通過したとき、屈折部の折れ曲がり力が開放されてシール突部がポートあるいは管接手の上記首部に密着する構成にしたシッピングプラグ。
【請求項2】
上記胴部と天井部とを連続させるコーナー部を円弧状にするとともにその断面の厚さを、胴部及び天井部の断面厚さよりも厚くした請求項1記載のシッピングプラグ。
【請求項3】
上記シール突部がポートあるいは管接手の首部に密着した状態で、天井部とポートあるいは管接手の開口との対向間隔が狭くなる構成にした請求項1または2記載のシッピングプラグ。
【請求項4】
上記天井部の外側につまみ用突部を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のシッピングプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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