説明

シャッター装置及び真空処理装置

【課題】本発明における課題は、開閉動作時の遮蔽範囲の偏りを低減できるIBEのシャッター装置を提供することにある。
【解決手段】本発明における解決手段として、IBE1と基板Wとの間を遮蔽するシャッター板11を備えるシャッター装置9は、IBS5を囲んで回転可能に配置された回転リンク部材の回転に同期して、IBE5を挟んで対称位置に配置された2枚のシャッター板11が開閉動作することができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置及び真空処理装置に係り、特に、スパッタ装置及びエッチング装置などの真空処理装置において各々のプロセスを行う際に、イオン源や蒸発源と基板との間を遮蔽するシャッター板を備えるシャッター装置及び該シャッター装置を備えた真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空処理装置として物理蒸着装置やエッチング装置が一般的に用いられる。物理蒸着装置はルツボやカソードなどの蒸発源を備えており、また、エッチング装置はイオン源などのエッチング源を備えている。蒸発源やエッチング源から発生する成膜材料やイオンビームは、均一かつ安定させておくことが望ましい。そのためには基板処理前に蒸発源やエッチング源の準備動作として、スパッタ膜やエッチングビームをあらかじめ発生させておく動作が必要になる。
【0003】
この準備動作の際にも、基板にスパッタ膜やエッチングビームが基板に付着するため、処理する基板が成膜材料やエッチングビームの影響を受けないように遮蔽しておく必要がある。また、基板処理終了時にも所定のタイミングで処理を終了させる必要があるため、基板を成膜材料やエッチングビームから素早く遮蔽する必要がある。飛来する成膜材料やエッチングビームから基板を遮蔽するために、これらの真空処理装置は開閉するシャッター機構を備えている(例えば、特許文献1乃至8参照)。
【0004】
従来のシャッター機構の一例を説明する。まず、特許文献1と特許文献2に開示されているシャッター機構を図6と図7にそれぞれ示す。図6に示したシャッター機構(振り子動作タイプ)は、回転軸の回りに左右方向に移動して開閉動作するシャッター板111を備えている。また、図7に示したシャッター機構(直線動作タイプ)は、前後方向に移動して開閉動作するシャッター板112を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−300560号公報
【特許文献2】特開2002−353172号公報
【特許文献3】特開2007−016298号公報
【特許文献4】特開2001−110344号公報
【特許文献5】特開2002−075968号公報
【特許文献6】特開2000−294187号公報
【特許文献7】特開2009−155706号公報
【特許文献8】特開2002−167661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示す「振り子動作タイプ」や、図7に示す「直線動作タイプ」のシャッター機構はシャッター板が水平移動をする。図6(c),図7(c)に示すように開閉動作は基板などの被遮蔽物Gの一端側から他端側へシャッター板が動作するために、動作中は部分的に遮蔽される部分aと、遮蔽されない部分bが生じることになる。すなわち、シャッター板の動作中に遮蔽範囲が偏るという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、開閉動作時の遮蔽範囲の偏りを低減できるシャッター装置及び真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシャッター装置は、真空容器内に配置されたプロセス発生源と基板との間を遮蔽するシャッター板を備えるシャッター装置であって、真空容器に支持された回転軸を中心に回転する複数のシャッター板と、プロセス発生源の周囲に回転可能に配置された回転リンク部材と、回転リンク部材を回転駆動する駆動源と、を備え、回転リンク部材はプロセス発生源の放出部を囲んで配置され、回転リンク部材の回転に伴って複数のシャッター板が回転軸を中心に回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシャッター装置を用いることで、開閉動作時の遮蔽範囲の偏りを低減できる。また、シャッターを分割化したことにより、個々のシャッター板の動作範囲が減少するため動作スピードを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るIBE装置を側面から見た断面概略図である。
【図2】図1のA方向から見たシャッター装置の矢視図(正面図)((a)シャッター開時、(b)シャッター閉時)である。
【図3】図2のII−II断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るシャッター装置の動作説明図((a)I−I断面図、(b)A矢視図)である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るシャッター装置の正面図((a)シャッター開時、(b)シャッター閉時)である。
【図6】従来のシャッター装置の概略説明図である。
【図7】従来のシャッター装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変できることは勿論である。なお、本明細書中の「プロセス発生源」という用語は、IBSなどのイオン源、及びスパッタリングカソードやルツボなどの蒸発源のいずれをも示すものとして用いられる。
【0012】
なお、本実施形態では真空処理装置としてイオンビームエッチング装置(IBE装置)を例に挙げて説明するが本発明はこの限りではない。例えば、他のエッチング装置やスパッタ成膜、PVD装置、CVD装置などの真空処置装置にも本発明に係るシャッター装置は好適に適用可能である。また、真空処理装置内に本実施形態に係るシャッター装置が設置された場合にも、真空中大気中問わず全ての動作機構に利用可能なものである。さらにIBE装置のシャッター装置以外にも蒸着源から基板を遮蔽するシャッター装置として適用できることはもちろんである。
【0013】
図1乃至4は本発明の第1の実施形態に係るシャッター装置若しくはイオンビームエッチング装置(IBE装置)についての図であり、図1はIBE装置を側面から見た断面概略図、図2は図1のA方向から見たシャッター装置の矢視図(正面図)((a)シャッター開時、(b)シャッター閉時)、図3は図2のII−II断面図、図4はシャッター装置の動作説明図((a)I−I断面図、(b)A矢視図)である。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0014】
図1に示したイオンビームエッチング装置1(IBE装置1)は、真空容器3内にエッチング源5(イオンビームソース,IBS)と基板ステージ7とシャッター装置9を少なくとも備えており、IBS5は真空容器3の側面に備えられ、基板ステージ7はIBS5に対向して配設されている。
【0015】
IBE装置1は、基板ステージ7に載置された基板Wに対してIBS5からイオンを照射し、基板Wの所定の積層膜をエッチングする装置である。基板ステージ7は、基板Wを保持する基板保持部7aと、基板保持部7aを真空容器3に対して支持する回動支持部(不図示)とを主要構成要素としている。
【0016】
基板保持部7aはメカニカルチャック機構で基板Wを保持、又は静電チャック機構により基板Wを吸着して保持することができ、基板Wを基板保持部7aともに回転させることができる。また、回動支持部は、真空容器3に対して回動可能であり、基板保持部7aの向きを変えることができる。すなわち、IBS5からのイオンの入射方向に対する基板成膜面の角度を変化させることができる。基板成膜面へのイオンの入射角度を変化させることで、基板Wの成膜面に斜め方向からイオンを入射させることができ、より高精度なエッチングを行うことができる。
【0017】
IBS5は、プラズマによりガスをイオン化して基板Wに対して照射する装置である。本実施形態においてはArガスをイオン化しているが、照射するイオンはArイオンに限られない。例えば、KrガスやXeガス,O2ガス等である。また、IBS5から照射されるイオンの電荷を中和するためのニュートラライザ(不図示)がIBS5の側方の壁面に設けられている。
【0018】
シャッター装置9は、IBS5と基板ステージ7上の基板Wの間に設けられており、シャッター板11と、シャッター板11を開閉制御するリンク機構21を主要構成部材として有している。シャッター装置9の開閉動作によりIBS5より基板Wに対して照射されるイオンを基板Wに届く前に遮蔽することができる。
なお、IBE装置1は、リンク機構21が配置される空間とエッチング等を行うプロセス空間Pとを分ける仕切り8を備えている。仕切り8により、リンク機構がある空間内で発生したパーティクルのプロセス空間Pへの流出を低減することができる。
【0019】
図2(a),(b)に示したシャッター装置の正面図に基づいて、シャッター装置9の構成について説明する。シャッター装置9は、シャッター板11と、回転リング部材23などから成るリンク機構21とを有して構成されている。
【0020】
シャッター板11は、いわゆる2分割シャッターであり、略半円状の板状部材を2枚一組として用いられる。2枚のシャッター板11は、回転軸としてのシャッター回転軸13(13a,13b)をそれぞれ回転中心にして回動する。2枚のシャッター板11は、それぞれ逆方向に回転動作させることができ、シャッター板11の直線部11a同士が接する位置に回転させることでIBS5の基板側を遮蔽することができる(図2(a)参照)。なお、IBS5がシャッター板11で遮蔽された状態(図2(a)の状態)を「閉じた状態」とする。
【0021】
また、2枚のシャッター板11の距離を離した配置とすることでIBS5から放出されたイオンを基板側に入射させることができる。特に、直線部11aの間の距離dをIBS5のイオン放出部5aの直径よりも離した状態では、IBS5の基板側を大きく開放することができる(図2(b)参照)。このシャッター板11が開放された状態(図2(b)の状態)を「開いた状態」とする。
【0022】
シャッター回転軸13(13a,13b)は、シャッター板11を支持する略棒状の支柱であり、真空容器3の壁側に回転自在に取り付けられている。略半円状のシャッター板11には、一部から延設された延設部14が形成されており、この延設部14にシャッター回転軸13(13a,13b)と後述する連結部15がそれぞれ取り付けられている。
【0023】
連結部15は、シャッター回転軸13よりも外側の所定距離離れた位置に形成された係止部分であり、この連結部15に後述する連結リンク部材25の一端部側が回転自在に係止される。すなわち、シャッター板11は連結リンク部材25を介して連結部15に進退方向の駆動力を与えることにより、シャッター回転軸13を回転中心に回転運動させることができる。
【0024】
リンク機構21は、シャッター板11の連結部15に駆動力を伝達して、シャッター板11を開閉動作させる機構である。図2に基づいてシャッター装置9の構成について説明する。
リンク機構21は、連結部15に一端部が連結される連結リンク部材25、連結リンク部材25の他端に連結される回転リンク部材23、回転リンク部材23に回転力を伝達する駆動リンク部材27、駆動リンク部材27を駆動する駆動源29、及び回転リンク部材23を回転自在に支持する4つのベアリング31とを有して構成されている。
【0025】
連結リンク部材25は、略棒状の四角柱であり、両端側に連結部15と連結部16がそれぞれ連結されている。連結リンク部材25の一端側は、延設部14の連結部15と回転自在に係止される構造となっている。同様に、連結リンク部材25の他端側は、連結部16を介して回転リンク部材23に回転自在に係止される構造となっている。なお、本実施形態における連結部15、16、17,18は、被連結部材の連結される角度がスムーズに変えられるようにベアリングを有して構成されるものであってもよい。
【0026】
回転リンク部材23は、IBS5の外周を囲んで回転可能に設置されたリング状の部材であり、その外周部に配置された4つのベアリング31によって外周を回転自在に支持されている。具体的には、回転リンク部材23はIBS5のイオン放出部5a(プロセス源放出部)を囲んで配置されており、回転リンク部材23が回転する際の回転中心はイオン放出部5aの中心に設定されている。なお、本実施形態では回転リンク部材23はリング状に形成されているがC字状でもよいことはもちろんである。また、回転リンク部材23の回転中心は回転リンク部材23が取り付けられる範囲の内側であればよく、イオン放出部5aの中心以外に設定することもできることはもちろんである。回転リンク部材23には、3ヶ所の開口(係止部)が形成されている。そのうちの2つの開口(連結部16)は180°対称の位置にあり、それぞれに異なる連結リンク部材25が係止されている。
【0027】
すなわち、連結リンク部材25は回転リンク部材23の回転によりシャッター板11側に動力を伝達させ、シャッター板11を回転させることができる。また、回転リンク部材23に形成された残り1つの開口(連結部17)には、後述する駆動リンク部材27の一端部側が係止されている。
【0028】
駆動リンク部材27は、回転リンク部材23と駆動源29とを連結する略棒状の四角柱状の部材である。駆動リンク部材27の一端部は、連結部17を介して回転リンク部材23に係止される構造となっている。一方、駆動リンク部材27の他端部は、連結部18を介して駆動源29に係止される構造となっている。従って、駆動源29を駆動することによって、駆動リンク部材27を介して回転リンク部材23を回転駆動することができる。
【0029】
駆動源29は、駆動回転軸29aを中心に有限の角度を反復回転動作するシャッター装置9の動作駆動源であり、上述したように駆動源29には、駆動リンク部材27の他端部(連結部18)が連結されている。
【0030】
従って、駆動リンク部材27は、動力源29が回転動作すると回転リンク部材23に動力を伝達し、回転リンク部材を回転させる。そして、回転リンク部材23の回転は、連結リンク部材25を介してシャッター板11を回転させる。なお、駆動源29の有する有限角度が、シャッター板11の「閉じた状態」と「開いた状態」の位置を決めている。なお、シャッター板11には閉じる方向と開く方向の両側に付勢する引張りばね(不図示)が取り付けてあり、動力源29を駆動するときの加減速時の振動や、動力源29を駆動していないときの外部からの振動を低減することができる。
【0031】
図3に示した図2のII−II断面図に基づいて、回転リンク部材23の支持構造について説明する。回転リンク部材23は外周部(外周)にV字溝19(溝部)を有しており、4つのベアリング31はそれぞれ外周部(外周)に凸状の曲面部31a(円弧状の断面を有する凸部)を有している。回転リンク部材23のV字溝19にベアリング31の曲面部31aをそれぞれ嵌め込むように支持している。
【0032】
そのため、ベアリング31は、V字溝19から脱輪することなく、スムーズに回転リンク部材23を回転動作させることができる。なお、回転リンク部材23のV字溝19とベアリング31の曲面部31aは点接触しているため、回転の内外輪差による擦れ接触が無い。従って、回転リンク部材23の回転動作時に発生する発塵を少なくすることできる。
【0033】
本実施形態では、ベアリング31を4つ用いて回転リンク部材23を支持しているが、3つ若しくは5つ以上のベアリング31を使用する構成であってもよいことはもちろんである。さらに、本実施形態とは逆に、ベアリング31の外周部(外周)にV字溝(溝部)を形成し、回転リンク部材23の外周部(外周)に凸状の曲面部(凸部)を形成する組み合わせであってもよいことはもちろんである。さらに、本実施形態とは逆に、回転リンク部材23の内周部がV字溝を有し、その内周部に設置されたベアリング31によって内周を回転自在に支持されている組み合わせであってもよいことはもちろんである。
【0034】
ここで、図4(a),(b)のシャッター装置の動作説明図に基づいて、シャッター装置9の動作について説明する。図4(a)は図1のI−I断面図、図4(b)は図1のA方向からの矢視図(正面図)である。
駆動源29が回転する動作(ACT1)と、駆動リンク部材27が回転リンク部材23を引っ張るため(ACT2)、回転リンク部材23は回転する(ACT3)。回転リンク部材23が回転すると連結リンク部材25がシャッター板11を引っ張るため(ACT4)、シャッター板11はシャッター回転軸13を中心に回転し開動作を行う(ACT5)。なお、このACT1〜ACT5は、1つの駆動源29の動きに連動する。従って、ACT5で分割された2つのシャッター板11が駆動源29の回転角度に伴って各々開動作を行うが、その際、2つのシャッター板11は同期した動きを行う。また、2つのシャッター回転軸13はイオン放出部5aの中心を挟んで対称位置に配置されており、2つのシャッター板11は、幾何学的に対称な配置を保ちつつ動作する。
【0035】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係るシャッター装置の正面図であり、図5(a)、図5(b)はそれぞれシャッター装置の閉状態、開状態を示している。なお、以下に記載する本実施形態において、第1の実施形態と同様部材、配置等には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係るシャッター装置39は、シャッターが8分割されたものである。8枚のシャッター板41が、それぞれのシャッター回転軸43を有するとともに連結リンク部材45に連結されている。なお、それぞれの連結リンク部材45は第1の実施形態に係るシャッター装置と同様に回転リンク部材23に連結されている。また、連結リンク部材45のベアリング31による支持機構や駆動リンク部材27との連結構造などは、第1の実施形態のシャッター装置と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0037】
8分割された個々のシャッター板41は、略三角形状に形成されている。また個々のシャッター板は、回転リンク部材23の回転に伴い、連結リンク部材45を介してシャッター回転軸43を中心に回転することができる。このとき、シャッター板41は、隣り合うシャッター板と僅かな隙間を有した状態で回転するため、8枚のシャッター板41全体では、8角形の開口領域が広がる、若しくは縮むように動作することになる。すなわち、IBS5から照射されたイオンビームの幅を調整する絞りとしての機能を有している。
【0038】
なお、シャッター板41の数を増やすと開口領域が円形に近づくため、絞られたイオンビームの形状をさらに円形状に近づけることができる。また、それぞれのシャッター板41の辺を曲線状にすることでも開口領域の形状を円形に近づけることができる。
【0039】
8つに分割されているシャッター板41は、それぞれの隣り合うシャッター板41との間に隙間が生じないように構成されている。本実施形態では、隣り合うシャッター板41を上下方向に段差を設けて配置し、隣り合うシャッター板41の縁部同士を上下方向に重ねる構造が採用されている。このように配置することで、シャッター装置を閉じたときに、隣り合うシャッター板41の縁部同士が上下方向(プロセス源の飛行方向)に重なる配置となり、プロセス発生源と基板との間を確実に遮蔽することができる。なお、個々のシャッター板41をスクリューのように傾けて配置しても同様の効果を得ることができる。
【0040】
さらに、隣り合うシャッター板41の縁部同士を重ねる構造だけでは不十分な場合には、ラビリンス構造を採用するとより高い遮蔽効果を得ることができる。具体的には、シャッター板41の縁部分を上下方向に二重に構成し、シャッターを閉じたときに、その二重に構成された隙間に隣のシャッター板41の縁部が入り込むように構成されると好適である。
【0041】
また、シャッター板を3枚以上有する構成では、シャッターの中心部を完全に閉じることが精度上難しくなる。そのため、シャッター板のうちの1枚だけを、シャッターの中心部分を遮蔽する形状とすると望ましい。特に、上下方向に段差を設けて配置されたシャッター板ではこの構造は好適に採用できる。
【0042】
本発明の第1の実施形態及び第2実施形態に共通する他の効果について以下に説明する。
本発明に係るシャッター装置9,39を用いることで、分割されたそれぞれのシャッター板11,41が収納できるサイズのスペースがあればよく、装置の小型化や設計の自由度の向上を図ることができる。そして、シャッター板11,41を収納するためのスペースとしても、イオン源や蒸着源(プロセス発生源)の回りに個々のシャッター板11,41を配置できるスペースを分散配置させることができる。また、これらのシャッター板のシャッター回転軸はイオン放出部5aの中心を挟んで対称位置に配置されている。このため、シャッター板11,41やその他の構成部材を幾何学的に対称な配置とすることができ、真空容器3内の環境をより均一な条件とすることができる。
【0043】
また、シャッター板11,41を分割しても駆動源29は1つであるため、回転リンク部材23を介して複数のシャッター板11,41の動作を同期させることができる。
駆動源29は駆動リンク部材27を介して回転リンク部材23と接続をすることによりシャッター回転軸43より離れた場所に駆動源29を設置することができる。さらに、シャッターを分割化したことにより、個々のシャッター板11,41の動作範囲が減少するため、シャッター装置9,39の動作スピードを上げることができる。
【0044】
回転リンク部材23の支持は、外周に形成されたV字溝19にベアリング31の曲面部31aを嵌め込む構造であるため、脱輪を防止する機能を有する。また、V字溝19と曲面部31aは擦れること無く接触(点接触)するため発塵を低減する効果がある。
さらに、駆動源29,回転リング部材23等の可動部材(リンク機構21)が配置される空間とエッチング等を行うプロセス空間Pとを仕切り8にて分けることにより、リンク機構がある空間内で発生したパーティクルのプロセス空間Pへの流出を低減することができる。
【0045】
本発明に係るシャッター装置として、2分割されたシャッター板11、8分割されたシャッター板41について説明したが、4分割や5分割などであっても構成できることはもちろんである。また、上述したシャッター装置9,39では、各シャッター板が幾何学的に対称に動作するように構成されている。上述したように、真空容器3内の電位などの条件を均一にするには幾何学的に対称に動作させることが望ましいためである。しかし、本発明に係るシャッター装置は各シャッター板を幾何学的に対称な動作や配置に限定するものではない。真空容器3内のスペースが偏っている場合にはシャッター板を動作させる方向や配置も偏ったものになりうる。
【0046】
本発明に係るシャッター装置を用いることで、開閉動作時の遮蔽範囲の偏りを低減できる。また、シャッターを分割化したことにより、個々のシャッター板の動作範囲が減少するため動作スピードを上げることができる。或いは、本発明に係るシャッター装置を用いることで、分割されたそれぞれのシャッター板が収納できるサイズのスペースがあればよく、装置の小型化や設計の自由度の向上を図ることができる。そして、シャッター板を収納するためのスペースとしても、イオン源や蒸着源(プロセス発生源)の回りに個々のシャッター板を配置できるスペースを分散配置させることができる。このため、シャッター板やその他の構成部材を幾何学的に対称な配置とすることができ、真空容器内の条件をより均一にすることができる。
【0047】
また、シャッター板を分割しても駆動源は1つであるため、回転リンク部材を介して複数のシャッター板の動作を同期させることができる。駆動源は駆動リンク部材を介して回転リンク部材と接続をすることによりシャッター回転軸より離れた場所に駆動源を設置することができる。
【0048】
回転リンク部材の支持は、外周に形成されたV字溝にベアリングの曲面部を嵌め込む構造であるため脱輪を防止する機能を有する。また、V字溝と曲面部は擦れること無く接触(点接触)するため発塵を低減する効果がある。さらに、駆動源,回転リング部材等の可動部材(リンク機構)が配置される空間とエッチング等を行うプロセス空間とを仕切りにて分けることにより、リンク機構がある空間内で発生したパーティクルのプロセス空間への流出を低減することができる。
【符号の説明】
【0049】
W 基板
P プロセス空間
1 イオンビームエッチング装置(IBE装置)
3 真空容器
5 イオンビームソース(IBS)
5a イオン放出部(プロセス源放出部)
7 基板ステージ
7a 基板保持部
8 仕切り
9,39 シャッター装置
11,41 シャッター板
11a 直線部
13,13a,13b,43 シャッター回転軸
14 延設部
15、16、17,18 連結部
19 V字溝(溝部)
21 リンク機構
23 回転リンク部材
25,45 連結リンク部材
27 駆動リンク部材
29 駆動源
29a 駆動回転軸
31 ベアリング
31a 曲面部(凸部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に配置されたプロセス発生源と基板との間を遮蔽するシャッター板を備えるシャッター装置であって、
前記真空容器に支持された回転軸を中心に回転する複数の前記シャッター板と、
前記プロセス発生源の周囲に回転可能に配置された回転リンク部材と、
前記回転リンク部材を回転駆動する駆動源と、を備え、
前記回転リンク部材は前記プロセス発生源のプロセス源放出部を囲んで配置され、
前記回転リンク部材の回転に伴って複数の前記シャッター板が前記回転軸を中心に回転することを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
複数の前記シャッター板は、幾何学的に対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記シャッター板は、前記回転軸と所定距離離れた位置に連結部を有し、
前記回転リンク部材と前記シャッター板の連結部との間で動力を伝達する連結リンク部材をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記回転リンク部材は、少なくとも3つのベアリングによって外周を回転自在に支持され、
前記ベアリングに接する前記回転リンク部材の外周には溝部が形成され、
前記回転リンク部材の外周に接する前記ベアリングの外周には円弧状の断面を有する凸部が形成され、
それぞれの前記凸部は、前記溝部に接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記回転リンク部材は、少なくとも3つのベアリングによって外周を回転可能に支持され、
前記ベアリングに接する前記回転リンク部材の外周には円弧状の断面を有する凸部が形成され、
前記回転リンク部材の外周に接する前記ベアリングの外周には溝部が形成され、
それぞれの前記凸部は、前記溝部に接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記駆動源と前記回転リンク部材との間で動力を伝達する駆動リンク部材を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項7】
前記駆動源を1つだけ備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項8】
前記シャッター板を2枚備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項9】
前記シャッター板を8枚備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシャッター装置を備えることを特徴とする真空処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−190530(P2011−190530A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285356(P2010−285356)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】