説明

シャッター装置

【課題】急降下停止装置のタイミング車と、従動スプロケットとが噛み合った状態で急降下停止装置を位置決めできるシャッター装置を提供する。
【解決手段】シャッター装置において、巻取シャフトの軸首を回転自在に支持するブラケット19と、ブラケット19を貫通した軸首に固定され開閉機の駆動スプロケットとチェーンにて連結される従動スプロケット33と、従動スプロケット33にタイミング車63を噛み合わせ巻取シャフトの異常回転時にタイミング車63を介して従動スプロケット33に対する停止機能を発揮する急降下停止装置61と、急降下停止装置61が固定され従動スプロケット33の偏心量がスプロケット歯丈75またはタイミング車歯丈77のいずれか小さい距離の範囲である場合に、従動スプロケット33に対し少なくとも上記の距離範囲で接近離反する方向に調整移動自在となってブラケット19に固定される取付板69と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急降下停止装置を備えるシャッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッター装置において、開閉機の回転をシャッターカーテンの巻取軸に伝達するチェーンが破断したり外れたりしたとき、シャッターカーテンが自重によって制御不能に降下してしまうことを防止するための異常降下防止機構を備えたものが知られている。例えば特許文献1に開示される建築用シャッターは、開閉機取付側のブラケットの、駆動スプロケットと従動スプロケットとチェーンとで囲まれた領域でかつ従動スプロケットと対向する位置に急降下停止装置を取り付ける。この装置を、ブラケットに固定されるケーシングと、ケーシング内に回転自在に支持され且つケーシングに設けた開口部を通して従動スプロケットと噛み合うタイミング車と、タイミング車と一体的に回転しかつ周縁部に複数の収容溝が形成されたロック車と、ロック車の各収容溝に各々収容された複数の回転体とにより構成する。巻き取りドラムの異常回転時にロック車の収容溝から遠心力で飛び出す回転体がケーシングの内周面側に形成した嵌合溝の終端部で挟まれることにより停止機能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−133110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従動スプロケットの固定される巻取シャフトは、軸首など多数の部品で組み立てられ、且つブラケットに対して軸受を介して組み付けられるため、設計段階でのブラケットに設定される従動スプロケットの取付中心位置に対し、実際にブラケットに従動スプロケットが組み付けられた状態での従動スプロケットの回転中心に振れ(偏心)の生じることがある。一方、急降下停止装置は、ブラケットに対して一定の位置、すなわち従動スプロケットの設計上の取付中心位置を基準とした位置で固定される。このため、巻取シャフト側の偏心により、すなわち従動スプロケットの振れにより、従動スプロケットの最外周位置である歯の位置が、ブラケットを基準とする回転中心位置に対して定まらず、この従動スプロケットと対向する急降下停止装置のタイミング車との間隔距離が接離することとなって噛み合い状態が定まらない場合がある。このことから、急降下停止装置のタイミング車と従動スプロケットとが噛み合わない位置が発生してしまう虞があり、急降下停止装置によるシャッターカーテンの異常降下を防止できない虞がある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、急降下停止装置のタイミング車と、従動スプロケットとが必ず噛み合った状態で、急降下停止装置の位置を決定できるシャッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のシャッター装置11は、建物躯体13に固定され巻取シャフト15の軸首17を回転自在に支持するブラケット19と、
前記ブラケット19を貫通した前記軸首17に固定され開閉機41の駆動スプロケット45とチェーン47にて連結される従動スプロケット33と、
前記従動スプロケット33にタイミング車63を噛み合わせ前記巻取シャフト15の異常回転時に該タイミング車63を介して前記従動スプロケット33に対する停止機能を発揮する急降下停止装置61と、
前記急降下停止装置61が固定され前記従動スプロケット33の偏心量がスプロケット歯丈75またはタイミング車歯丈77のいずれか小さい距離の範囲である場合において前記従動スプロケット33に対して少なくとも前記距離の範囲で接近離反する方向に調整移動自在となって前記ブラケット19に固定される取付板69と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
このシャッター装置11では、タイミング車63が噛み合うこととなる従動スプロケット33が偏心していても、タイミング車63を有する急降下停止装置61の固定された取付板69がブラケット19に移動自在となって固定できるので、従動スプロケット33からのタイミング車63の外れが防止できる。なお、従動スプロケット33の偏心量は、スプロケット歯丈75またはタイミング車歯丈77のいずれか小さい距離の範囲であるものとする。いずれか小さい歯丈よりも大きい距離を移動すれば噛み合いが外れるからである。従って、偏心によりスプロケット歯39が最もタイミング車63に近接する状態で、タイミング車歯底85に、スプロケット歯先を配置して取付板69が固定されれば、従動スプロケット33とタイミング車63との噛み合い状態が常に維持される。すなわち、互いの噛み合い状態が外れることがない。また、従動スプロケット33によりタイミング車63が押されることがなく、噛み合い状態がキャンセルされない。
【0008】
本発明の請求項2記載のシャッター装置11は、請求項1記載のシャッター装置11であって、
前記取付板69が前記ブラケット19の内側から固定されることを特徴とする。
【0009】
このシャッター装置11では、シャッター装置11の設置時やメンテナンス時における取付板69の位置調整のためのアクセスが容易となる。
【0010】
本発明の請求項3記載のシャッター装置11は、請求項1または2記載のシャッター装置11であって、
前記取付板69が該取付板69に穿設される長穴79と、該長穴79に挿通されて前記ブラケット19の固定ネジ穴81に螺合する調整固定ネジ83とによって移動自在となることを特徴とする。
【0011】
このシャッター装置11では、ブラケット19に螺合される調整固定ネジ83に対して長穴79を介して取付板69が長穴79の長手方向に移動自在となる。急降下停止装置61が作動した時、取付板69から調整固定ネジ83へ作用する押圧力が長穴79の長手方向直交方向となり、取付板69が少ないクリアランスで高強度に固定される。
【0012】
本発明の請求項4記載のシャッター装置11は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載のシャッター装置11であって、
前記取付板69が前記従動スプロケット33に対して接近する方向に付勢されていることを特徴とする。
【0013】
このシャッター装置11では、急降下停止装置61のタイミング車63が、常に従動スプロケット33と噛み合う位置に配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載のシャッター装置によれば、急降下停止装置のタイミング車と、従動スプロケットとが必ず噛み合った状態で、急降下停止装置の取り付け固定位置を決定できる。
【0015】
本発明に係る請求項2記載のシャッター装置によれば、取付板の位置調整作業をシャッター収納部内から容易に行うことができる。
【0016】
本発明に係る請求項3記載のシャッター装置によれば、固定強度を低下させずに簡単な構造で取付板を移動自在に固定できる。
【0017】
本発明に係る請求項4記載のシャッター装置によれば、取付板を従動スプロケット側に付勢できるので、タイミング車を従動スプロケットから徐々に離反させながら取付板の位置を調整でき、調整作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るシャッター装置の急降下停止装置近傍の分解斜視図である。
【図2】図1に示したシャッター装置の急降下停止装置近傍の平面図である。
【図3】図2に示したブラケットを内側から見た側面図である。
【図4】図3に示した取付板の分解斜視図である。
【図5】タイミング車及び従動スプロケットの噛み合い代と取付板の調整幅との関係を表す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るシャッター装置の急降下停止装置近傍の分解斜視図、図2は図1に示したシャッター装置の急降下停止装置近傍の平面図、図3は図2に示したブラケットを内側から見た側面図、図4は図3に示した取付板の分解斜視図である。
シャッター装置11は、建物躯体13に固定され巻取シャフト15の軸首17を回転自在に支持するブラケット19を有する。巻取シャフト15は、外周に図示しないシャッターカーテンを巻装し、回転方向を変えることによってシャッターカーテンを巻き取り、または繰り出す。巻取シャフト15の両端には同軸の軸首17が固定され、軸首17は軸受18を介してブラケット19に回転自在に支持される。
【0020】
ブラケット19は、鋼板からなり、躯体13に固定される固定片21が後端に形成され、上下には上縁補強片23と下縁補強片25とが形成される。ブラケット19の前端には後端に向かって切り込まれたU字状のガイド溝27が開口される。ガイド溝27は、溝上縁29と溝下縁31とが平行に形成される。
【0021】
軸受18に支持されることでブラケット19を貫通した軸首17には従動スプロケット33が同軸に固定されている。従動スプロケット33には同軸にボス35が形成され、このボス35を軸首17が貫通する。軸首17とボス35とにはキー37が挟入され、キー37は軸首17とボス35との相対回転を規制する。従動スプロケット33の外周には、複数のスプロケット歯39が円周方向に等間隔で形成されている。従動スプロケット33は、図3に示す開閉機41の出力軸43に固定された駆動スプロケット45とチェーン47にて連結される。
【0022】
開閉機41は、開閉機取付ベース49に固定され、この開閉機取付ベース49を介してブラケット19に固定される。開閉機取付ベース49には上下一対のボルト穴51が穿設される。このボルト穴51には固定ボルト53が挿通される。ブラケット19の外側から挿通された固定ボルト53は、内側に配置された開閉機取付ベース49を貫通して、貫通先端にナット55が螺着固定される。ブラケット19にはこの固定ボルト53を挿通する図1に示すベース固定穴57とベース固定長穴59とが穿設される。開閉機取付ベース49は、ベース固定長穴59を固定ボルト53が移動することで、チェーン47の張力が調整可能となって固定される。
【0023】
従って、巻取シャフト15は、開閉機41が駆動されると、開閉機41の出力軸43に固定された駆動スプロケット45が回転し、その回転がチェーン47を介して従動スプロケット33に伝えられることで回転される。巻取シャフト15が回転することで、シャッターカーテンは、巻取シャフト15の外周から繰り出され、または、巻き取られることになる。駆動スプロケット45と従動スプロケット33とは、チェーン47を介して同期して回転される。ここで、チェーン47が外れた場合や切断,損壊した場合、巻取シャフト15は空転状態となり、例えば巻き取り状態であったシャッターカーテンは、落下することになる。
【0024】
シャッター装置11では、このシャッターカーテンの落下を防止するための急降下停止装置61がブラケット19に固定される。急降下停止装置61は、従来と同様の構成を有する。すなわち、ブラケット19に固定されるケーシングと、ケーシング内に回転自在に支持されかつケーシングに設けた開口部を通して従動スプロケット33と噛み合う図5に示すタイミング車63と、タイミング車63と一体的に回転しかつ周縁部に複数の収容溝が形成された略歯車形状のロック車(図示せず)と、ロック車の各収容溝に各々収容された複数の回転体(図示せず)とにより構成される。
【0025】
巻取シャフト15の異常回転時にロック車の収容溝から遠心力で飛び出す回転体がケーシングの内周面側に形成した嵌合溝(図示せず)の終端部で挟まれることにより従動スプロケット33に対する停止機能を発揮する。すなわち、急降下停止装置61は、シャッターカーテンの開放方向の回転には作用しない。シャッターカーテンが閉まる方向の閉鎖方向の回転時に、その回転速度が早くなると機能する。
【0026】
急降下停止装置61の側面にはU字状の凸部65が形成され、凸部65はガイド溝27内にスライド自在に係合する。凸部65をガイド溝27に係合した急降下停止装置61は、図4に示すように、凸部65が溝上縁29と溝下縁31とに挟まれて上下移動が規制されつつ、ガイド溝27に沿う方向に移動自在となる。急降下停止装置61は、ブラケット19の外側から凸部65をガイド溝27に係合することで、凸部65の表面がブラケット19の内側に表出する。この凸部65の表面には複数、本実施形態では2つの取付板固定ネジ穴67が上下に形成されている。
【0027】
凸部65の表面には取付板69が固定される。取付板69は、翼状に形成され、ブラケット19の内側面に当接する。取付板69には複数の装置固定穴71が形成される。取付板69は、この装置固定穴71に挿通された装置固定ネジ73が、凸部65の取付板固定ネジ穴67に固定される。つまり、急降下停止装置61は、取付板69とでブラケット19を挟持して、ガイド溝27にスライド自在に取り付けられる。
【0028】
ところで、取付板69は、従動スプロケット33の偏心量がスプロケット歯丈75(図5参照)またはタイミング車歯丈77(図5参照)のいずれか小さい距離の範囲である場合において、従動スプロケット33に対して少なくとも上記距離の範囲で接近離反する方向に調整移動自在となってブラケット19に固定される。
【0029】
本実施形態において、取付板69は、この取付板69に穿設される長穴79と、長穴79に挿通されてブラケット19の固定ネジ穴81に螺合する調整固定ネジ83とによって移動自在となる。長穴79は、ガイド溝27に沿う方向に長く形成され、ガイド溝27を挟んで上下一対形成されている。つまり、取付板69は、ブラケット19に螺合される調整固定ネジ83に対して長穴79を介して、長穴79の長手方向に移動自在となる。急降下停止装置61が作動した時、取付板69から調整固定ネジ83へ作用する押圧力は、長穴79の長手方向直交方向となる。これにより、取付板69は、少ないクリアランスで高強度にブラケット19に固定され、固定強度を低下させずに簡単な構造で移動自在に固定される。
【0030】
また、取付板69は、ブラケット19の内側から固定されることで、シャッター装置11の設置時やメンテナンス時における取付板69の位置調整のためのアクセスが容易となっている。これにより、取付板69の容易な位置調整作業を実現している。
【0031】
以上のように構成されるシャッター装置11の作用を説明する。
図5はタイミング車63及び従動スプロケット33の噛み合い代と取付板69の調整幅との関係を表す要部拡大側面図である。
シャッター装置11では、タイミング車63が噛み合うこととなる従動スプロケット33が偏心していると、タイミング車63を有する急降下停止装置61の固定された取付板69がブラケット19に移動されて、調整固定される。ここで、従動スプロケット33の偏心量は、スプロケット歯丈75またはタイミング車歯丈77のいずれか小さい距離の範囲であるものとする。いずれか小さい歯丈よりも大きい距離を移動すれば噛み合いが外れるからである。
【0032】
急降下停止装置61を調整固定するには、先ず、調整固定ネジ83を緩めた状態で、急降下停止装置61と取付板69とでガイド溝27を挟んだ状態で、急降下停止装置61をガイド溝27に沿って移動自在とする。次いで、巻取シャフト15をゆっくり回転する。そして、偏心によりスプロケット歯39が最もタイミング車63に近接する状態で、タイミング車歯底85に、スプロケット歯先を配置する。この状態で、調整固定ネジ83によって取付板69をブラケット19に締結固定する。これにより、従動スプロケット33とタイミング車63とは、噛み合い状態が常に維持され、従動スプロケット33からのタイミング車63の外れが防止される。また、従動スプロケット33によりタイミング車63が押されすぎることがなくなり、押されすぎによって従動スプロケット33からタイミング車63が離れ、噛み合い状態がキャンセルされることもなくなる。
【0033】
従って、本実施形態に係るシャッター装置11によれば、急降下停止装置61のタイミング車63と、従動スプロケット33とが必ず噛み合った状態で、急降下停止装置61の取り付け固定位置を決定できる。
【0034】
なお、上記実施形態では、取付板69がガイド溝27に係合固定されるのみであったが、取付板69は、従動スプロケット33に対して接近する方向に付勢されていてもよい。例えばバネ等の付勢部材を用いることで、急降下停止装置61のタイミング車63が、常に従動スプロケット33と噛み合う位置に配置される。これにより、取付板69を従動スプロケット側に付勢できるので、タイミング車63を従動スプロケット33から徐々に離反させながら取付板69の位置を調整でき、調整作業を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0035】
11…シャッター装置
13…躯体
15…巻取シャフト
17…軸首
19…ブラケット
33…従動スプロケット
41…開閉機
45…駆動スプロケット
47…チェーン
61…急降下停止装置
63…タイミング車
69…取付板
75…スプロケット歯丈
77…タイミング車歯丈
79…長穴
81…固定ネジ穴
83…調整固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に固定され巻取シャフトの軸首を回転自在に支持するブラケットと、
前記ブラケットを貫通した前記軸首に固定され開閉機の駆動スプロケットとチェーンにて連結される従動スプロケットと、
前記従動スプロケットにタイミング車を噛み合わせ前記巻取シャフトの異常回転時に該タイミング車を介して前記従動スプロケットに対する停止機能を発揮する急降下停止装置と、
前記急降下停止装置が固定され前記従動スプロケットの偏心量がスプロケット歯丈またはタイミング車歯丈のいずれか小さい距離の範囲である場合において前記従動スプロケットに対して少なくとも前記距離の範囲で接近離反する方向に調整移動自在となって前記ブラケットに固定される取付板と、
を具備することを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
請求項1記載のシャッター装置であって、
前記取付板が前記ブラケットの内側から固定されることを特徴とするシャッター装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のシャッター装置であって、
前記取付板が該取付板に穿設される長穴と、該長穴に挿通されて前記ブラケットの固定ネジ穴に螺合する調整固定ネジとによって移動自在となることを特徴とするシャッター装置。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載のシャッター装置であって、
前記取付板が前記従動スプロケットに対して接近する方向に付勢されていることを特徴とするシャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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