説明

シャープペンシル

【課題】筆圧を加えることにより芯9を一定量回転させるシャープペンシルを提供する。
【解決手段】内軸13に開口溝13Aを構成し、この開口溝13Aの一方の側壁は前部が大きく傾斜されるとともに後部が略垂直に形成される。また、開口溝13Aの他方の側壁は略同一に傾斜されて形成される。更に、連結具5に前記開口溝13Aに係合される突起5Dを構成するとともに、連結具5の後端に係止爪5Eを形成する。更に、内軸13に対して回動自在に設けられた回転部材7の前端に周方向に多数のカム歯7Bを形成する。更に、前記回転部材7に対しチャック1を長手方向には摺動自在で回動不能に構成する。更にまた、連結具5と回転部材7の間にリターンスプリング11を張架し、通常連結具5の係止爪5Eと回転部材7のカム歯7Bを適宜離間して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆圧を加えることにより芯を一定量回転させるシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に筆記具は若干傾けて筆記するが、シャープペンシルを傾けて筆記すると芯が片減りしてしまうために、芯の端面が楕円状になってしまい筆記幅が次第に太くなってしまうものであった。そのため、細い筆記幅を保つためにはシャープペンシルを回転する必要があった。
【0003】
この点を解消するために、チャック体に把持された芯の後退動作によってチャック体が回転するチャック体回転手段を備え、そのチャック体回転手段は、摺動子とその摺動子に当接する回転子、並びに、前記軸筒の内壁面に設けられたカム部とから構成されたシャープペンシルが知られている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特許第3882272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来知られている摺動子とその摺動子に当接する回転子、並びに、前記軸筒の内壁面に設けられたカム部によりチャック体回転手段を構成したものは、構造上軸筒の内壁面に設けられた縦溝部の間隔が細かく出来ず、1回の押圧動作で芯が大きく回転してしまい非常に筆記しにくいものであった。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するシャープペンシルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本体と、本体内に内蔵されたチャックと、チャックの頭部に外嵌される締具と、チャックを長手方向後方に付勢するチャックスプリングとを有し、チャックの頭部が締具に押圧され、チャックが閉じられることによって芯を保持し、前記締具を受け止める連結具に先部材を取り付け、チャックを前進させることにより芯を繰り出すシャープペンシルであって、内軸に開口溝を構成し、この開口溝の一方の側壁は前部が大きく傾斜されるとともに後部が略垂直に形成され、かつ、他方の側壁は略同一に傾斜されて形成され、更に、連結具に前記開口溝に係合される突起を構成するとともに、連結具の後端に係止爪を形成し、前記内軸に対し回動自在に設けられた回転部材の前端に周方向に多数のカム歯を形成し、前記回転部材に対しチャックを長手方向には摺動自在で回動不能に構成し、前記連結具と回転部材の間にリターンスプリングを張架し、かつ、回転部材を前記リターンスプリングより大きい取付時荷重のスプリングにより長手方向前方に付勢し、回転部材を前記内軸に押圧するとともに、通常連結具の係止爪と回転部材のカム歯を適宜離間して構成したことを第1の要旨とする。
【0007】
また、回転部材と押圧部材の間にスプリングを張架したことを第2の要旨とする。
【0008】
更に、チャックの後部に連結されたコネクターと押圧部材の間に重量体を遊嵌し、重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出すことを第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシャープペンシルは、芯に筆圧を加えると、芯は順次回転して片減りせず、常に細い筆記幅で筆記を行うことができる。更に、一回毎の芯の回転量を微少に設定できるので、芯のエッジ部が満遍なく摩耗し、芯のエッジがなくなって紙面に芯が引っ掛かってしまう恐れもなくなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
筆圧を加えることにより順次芯が回転して芯が片減りせず、常に細い筆記幅で筆記を行うことができるシャープペンシルを実現した。
【実施例1】
【0011】
以下、図1、図2、図3、図4、図5および図6に基づいて本発明における実施例1のシャープペンシルを説明する。また、図1の左側を前方とし右側を後方とする。更に、前方に向かって左回転方向を左回転とし、前方に向かって右回転方向を右回転とする。先ず、黄銅等からなる金属製のチャック1の前部を3分割して構成し、このチャック1の後部に合成樹脂製のコネクター2を圧入固着する。更に、コネクター2の後部に合成樹脂製のパイプ材からなる芯タンク3を圧入固着する。また、前記コネクター2に後方から伸びたキー溝2Aを相対位置に形成する。
【0012】
前記チャック1の頭部1Aには締具4が外嵌され、締具4を受け止める連結具5の内段5Aとコネクター2の前端との間に150g程度の取付時荷重でチャックスプリング6を張架し、チャック1を長手方向後方に付勢する。
【0013】
更に、前記連結具5には、両側に切溝5Bが形成された弾性片5Cを形成し、この弾性片5Cに突起5Dを形成する。また、連結具5の後端から後方に突出した係止爪5Eを形成する。この係止爪5Eは先端が尖って形成される。前記芯タンク3には、後方から被せられた回転部材7が設けられ、回転部材7の内側に形成されたキー7Aがコネクター2のキー溝2Aに係合され、回転部材7はコネクター2に対して長手方向には摺動自在で回転不能に構成される。また、回転部材7の前端には、周方向に多数のカム歯7Bが形成され、このカム歯7Bは鋸歯状に形成され傾斜面を有している。
【0014】
更に、連結具5には芯ガイド部材8が着脱可能に嵌合され、この芯ガイド部材8には芯9を適度の力で保持する芯ホルダー10が内蔵される。
【0015】
更に、連結具5と回転部材7の間にはリターンスプリング11が設けられるとともに、芯タンク3に重量体12が遊嵌される。
【0016】
更に、内軸13に開口溝13Aを形成し、この開口溝13Aの左側側壁13Bは前部が大きく右回転方向に傾斜されるとともに後部は略垂直に形成される。また、開口溝13Aの右側側壁13Cは略同一に右回転方向に傾斜されて形成される。
【0017】
この内軸13の開口溝13Aに、前記連結具5の突起5Dを弾性片5Cを撓ませながら挿入し、開口溝13Aに突起5Dを係合させる。また、回転部材7は内軸13内に回動自在に挿入される。更に、回転部材7の後部にワッシャー14を設ける。このワッシャー14の前端には、周方向等間隔に複数の突起14Aが設けられ、この突起14Aは略半球状に形成されて前方に突出している。
【0018】
前述した内軸13、芯ガイド部材8、連結具5、回転部材7、チャック1、コネクター2、芯タンク3およびチャックスプリング6からなる機構部を軸筒15の後方から挿入する。また、軸筒15の前端より突出した連結具5に先部材16を着脱可能に螺合する。更に、軸筒15に押圧部材17を挿入するとともに、前記ワッシャー14と押圧部材17の間にスプリング18を設ける。前記押圧部材17の後部内側に消しゴム19を取り付けるとともに、後部外側に消しゴム19を覆うノブ20を外嵌する。更に、軸筒15の後部に頭冠21を取り付け、機構部および押圧部材17の抜けを防止する。前記、先部材16、軸筒15および頭冠21により本体を構成する。この状態では、ワッシャー14と押圧部材17の間に張架されるスプリング18は、取付時荷重が300g程度に設定されて、回転部材7を内軸13に当接する。また、押圧部材17は頭冠21に当接される。更に、連結具5と回転部材7の間に張架されるリターンスプリング11は70g程度の取付時荷重に設定され、連結具5の係止爪5Eと回転部材7のカム歯7Bは離間されて構成される。また、連結具5の突起5Dは内軸13の開口溝13Aの前端に当接される。
【0019】
上記した実施例1のシャープペンシルは、軸筒15を振ることにより生じる重量体12の慣性力によりチャック1が前進され、芯9が一定量繰り出される。また、ノブ20を押圧すればチャック1が前進して芯タンク3内の予備芯9がチャック1内に追従される。
【0020】
次に、芯ガイド部材8より一定量芯9が突出した状態で筆記を行うと、芯9が紙面22に押される。すると、先ずリターンスプリング11が圧縮され、チャック1が芯9とともに一定量後退する。この時、連結具5の突起5Dは傾斜された右側側壁13Cに沿って左回転しながら後退する。
【0021】
そして、連結具5の係止爪5Eが回転部材7のカム歯7Bに当接すると、連結具5とともに回転部材7も左回転する。尚、回転部材7はワッシャー14の略半球状の突起14Aに当接しているので、摩擦抵抗が減少され回転部材7はスムーズに回転する。この時、コネクター2のキー溝2Aに回転部材7のキー7Aが係合されているので、回転部材7とともにチャック1及び芯9も一定量左回転する。更に芯9が後退し、突起5Dが開口溝13Aの後端に当接されて図5および図6に示した状態になると、芯9は停止し筆記が行われる。
【0022】
筆記を終了し芯9を紙面22から離すと、突起5Dが開口溝13Aの左側側壁13Bの後部に沿って前進する。この後部は略垂直に形成されているので、連結具5は回転することなく前進する。そして、連結具5の係止爪5Eが回転部材7のカム歯7Bより離間した後、突起5Dが大きく傾斜された左側側壁13Bの前部に沿って右回転しながら前進する。ただし、連結具5と回転部材7は離間しているので回転部材7およびチャック1は回転しない。そして、突起5Dが開口溝13Aの前端に当接し、図1の状態に復帰する。したがって、芯9は一定量左回転することができる。つまり、芯9を紙面22に押して筆記を行う毎に芯9は一定量ずつ左回転し、筆記を続けても芯9は片減りすることはない。
【0023】
この実施例1の場合には、内軸13の開口溝13Aと連結具5の突起5Dを係合させるとともに、内軸13内で連結具5の係止爪5Eを回転部材7のカム歯7Bに当接することにより回転部材7を左回転させるので、回転部材7を回転させる機構が長手方向に長くならず、重量体12の摺動距離が十分に得られ、振出式シャープペンシルが実用可能となる利点を有する。
【実施例2】
【0024】
以下、図7および図8に基づいて本発明における実施例2のシャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。合成樹脂製の芯タンク103の前部にキー103Aを相対位置に形成し、この芯タンク103の後部内側に消しゴム19を取り付けるとともに、後部外側に消しゴム19を覆うノブ20を外嵌する。更に、芯タンク103の前部に回転部材107を前方から被せ、回転部材107のキー溝107Cに芯タンク103のキー103Aを挿入し、回転部材107に対して芯タンク103を長手方向には摺動自在で回転不能に構成される。この芯タンク103の前部にチャック1の後部を圧入固着する。
【0025】
前記芯タンク103の前端と連結具5の内段5Aとの間に300g程度の取付時荷重でチャックスプリング106を張架し、チャック1を長手方向後方に付勢する。
【0026】
次に、内軸113、芯ガイド部材8、連結具5、回転部材107、チャック1、芯タンク103およびチャックスプリング106からなる機構部を前軸23の後方から挿入する。この前軸23に後軸24を着脱可能に螺合し、ワッシャー14と後軸24の前端との間に150g程度の取付時荷重でスプリング18が張架される。前記先部材16、前軸23および後軸24により本体を構成する。
【0027】
上記した実施例2のシャープペンシルは、ノブ20を押圧してチャック1を前進し芯9を繰り出すとともに芯タンク103内の予備芯9をチャック1内に追従する。
【0028】
芯ガイド部材8より一定量芯9が突出した状態で筆記を行うと、芯9が紙面に押される。すると、先ずリターンスプリング11が圧縮され、チャック1が芯9とともに一定量後退する。この時、連結具5の突起5Dは内軸113に形成された開口溝113Aの傾斜された右側側壁に沿って左回転しながら後退する。
【0029】
そして、連結具5の係止爪5Eが回転部材107のカム歯107Bに当接すると、連結具5とともに回転部材107も左回転する。尚、回転部材107はワッシャー14の略半球状の突起14Aに当接しているので、摩擦抵抗が減少され、回転部材107はスムーズに回転する。この時、芯タンク103のキー103Aが回転部材107のキー溝107Cに係合されているので、回転部材107とともにチャック1及び芯9も一定量左回転する。更に芯9が後退し、突起5Dが開口溝113Aの後端に当接されて芯9が停止し、筆記が行われる。
【0030】
筆記を終了し芯9を紙面から離すと、突起5Dが開口溝113Aの左側側壁の後部に沿って前進する。この左側側壁の後部は略垂直に形成されているので、連結具5は回転することなく前進する。そして、連結具5の係止爪5Eが回転部材107のカム歯107Bより離間した後、突起5Dが大きく傾斜された右側側壁の前部に沿って右回転しながら前進する。ただし、連結具5と回転部材107は離間しているので回転部材107およびチャック1は回転しない。そして、突起5Dが開口溝113Aの前端に当接し、図7の状態に復帰する。したがって、芯9は一定量左回転することができる。つまり、芯9を紙面に押して筆記を行う毎に芯9は一定量ずつ左回転し、筆記を続けても芯9は片減りすることはない。
【0031】
この実施例2の場合には、内軸113、連結具5および回転部材107により回転部材107を左回転させるので、部品点数が少なくかつ構成が簡単になり、低コストで生産できる。また、芯を繰り出すための押圧力もチャックスプリングの300g程度と弱くなる利点を有する。
【0032】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、軸筒、内軸、回転部材あるいは押圧部材といった部材は、複数の部材を固着あるいは嵌合して一体化することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
筆記を行うことにより一定量ずつ芯を回転することができる機構を、簡単な構造でしかも小型に構成し、小空間に組み込むシャープペンシルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1のシャープペンシルを示す断面図である。(実施例1)
【図2】図1のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図3】図1のB−B線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図1における開口溝と突起の係合状態および係止爪とカム歯の係合状態を示す展開図である。(実施例1)
【図5】本発明の実施例1のシャープペンシルにおいて、芯を紙面に押圧して一定量回転した状態を示す断面図である。(実施例1)
【図6】図5における開口溝と突起の係合状態および係止爪とカム歯の係合状態を示す展開図である。(実施例2)
【図7】本発明の実施例2のシャープペンシルを示す断面図である。(実施例2)
【図8】図7のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0035】
1 チャック
1A チャック1の頭部
2 コネクター
4 締具
5 連結具
5D 連結具5の突起
5E 連結具5の係止爪
6 チャックスプリング
7 回転部材
7B 回転部材7のカム歯
9 芯
11 リターンスプリング
12 重量体
13 内軸
13A 内軸13の開口溝
16 先部材
17 押圧部材
18 スプリング
106 チャックスプリング
107 回転部材
107B 回転部材107のカム歯
113 内軸
113A 内軸113の開口溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、本体内に内蔵されたチャックと、チャックの頭部に外嵌される締具と、チャックを長手方向後方に付勢するチャックスプリングとを有し、チャックの頭部が締具に押圧され、チャックが閉じられることによって芯を保持し、前記締具を受け止める連結具に先部材を取り付け、チャックを前進させることにより芯を繰り出すシャープペンシルであって、内軸に開口溝を構成し、この開口溝の一方の側壁は前部が大きく傾斜されるとともに後部が略垂直に形成され、かつ、他方の側壁は略同一に傾斜されて形成され、更に、連結具に前記開口溝に係合される突起を構成するとともに、連結具の後端に係止爪を形成し、前記内軸に対し回動自在に設けられた回転部材の前端に周方向に多数のカム歯を形成し、前記回転部材に対しチャックを長手方向には摺動自在で回動不能に構成し、前記連結具と回転部材の間にリターンスプリングを張架し、かつ、回転部材を前記リターンスプリングより大きい取付時荷重のスプリングにより長手方向前方に付勢し、回転部材を前記内軸に押圧するとともに、通常連結具の係止爪と回転部材のカム歯を適宜離間して構成したことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
回転部材と押圧部材の間にスプリングを張架したことを特徴とする請求項1記載のシャープペンシル。
【請求項3】
チャックの後部に連結されたコネクターと押圧部材の間に重量体を遊嵌し、重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出すことを特徴とする請求項1又は2記載のシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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