説明

シュードモナス・フルオレッセンスにおける哺乳動物タンパク質の発現

【課題】治療目的のために単離し精製することができる、哺乳動物の組み換え型タンパク質、特にヒト組み換え型タンパク質を生産するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、シュードモナス菌、特にシュードモナス・フルオレッセンス生物内で発現させることによる、哺乳動物の組み換え型タンパク質の改善された生産方法である。本方法は哺乳動物のタンパク質、特にヒトのタンパク質またはヒトに由来するタンパク質の生産を改善し、類似の環境において、公知の発現系、たとえばエシェリキア・コリを凌ぐ。単離された哺乳動物の、特にヒトのタンパク質の生産が改善された方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行出願への言及)
本出願は、2004年4月22日に出願された、「シュードモナス・フルオレッセンス
(Pseudomonas fluorescens)における哺乳動物タンパク質の発現」という名称の米国仮出
願第60/564,798号についての優先権、および2004年1月16日に出願され
た、「タンパク質発現系」という名称の第60/537,148号についての優先権を主
張する。
【0002】
本発明は、シュードモナス菌内、とりわけシュードモナス・フルオレッセンス生物内で
発現させることによる、哺乳動物の組み換え型タンパク質を生産するために改良された方
法に関する。本方法は、哺乳動物のタンパク質発現の生産を改良したものであり、公知の
発現系を凌いでいる。
【背景技術】
【0003】
全世界で3億2500万人を超える人々が、米国食品医薬品局(FDA)が認可した155
を超えるバイオテクノロジー薬剤およびワクチンによって助けられてきた。さらに現在の
ところ、種々のガン、アルツハイマー病、心疾患、糖尿病、多発性硬化症、AIDSおよ
び関節炎を含む200を超える疾病をターゲットとする、370を超えるバイオテクノロ
ジー製剤およびワクチンが臨床試験の状態にある。古典的な化学合成を経て生産される従
来の小分子での治療法とは異なり、タンパク質は通常、生きている細胞内で非効率的かつ
高コストで生産される。この高コストと複雑さのせいで、タンパク質に基づく治療のため
の生産能力は不足している。
【0004】
生産物を生産するために微生物の細胞を使用することには、非常に長い歴史がある。早
くも1897年には、Buchnerは酵母から抽出された酵素が糖をアルコールに効率
的に変換することを発見し、微生物を利用した重要な工業用化学薬品の生産を導いた。1
940年代までには、発酵を経たペニシリンの大規模生産が実現した。外来遺伝子を細菌
内に挿入するための最初の技術は1970年代の前半に開発された。哺乳動物の組み換え
型タンパク質の細菌による、商業的に実現可能な生産が最初に活用されたのは、ヒトイン
スリンの生産においてであった(Goeddel, et al., 1979a; Wong, 1997)。現在の発酵およ
び細胞培養は、アルコール、抗生物質、生化学的物質および治療用タンパク質の工業生産
の大半の基礎となっている。しかしながら、治療的に有用なタンパク質の開発および生産
の大部分が、これらの外因性タンパク質を発現させるために用いられる現在の生物が制限
されていることによって妨害されてきた。
【0005】
原核生物のタンパク質発現対真核生物のタンパク質発現
多くの場合、細菌の発現系を用いて真核生物の組み換え型タンパク質を生産しているが
、得られるタンパク質が、それらのオリジナルの複製物とは明らかに異なっていることが
通常である。一般的に、エシェリキア・コリの発現系で真核生物の二次構造および三次構
造を再現することは困難が多い。その反面、現在の真核生物の発現系で真核生物の組み換
え型タンパク質の二次構造および三次構造を形成させることはより可能性は高いが、これ
らの系が組み換え型タンパク質を大量に生産する能力には限界がある。
【0006】
翻訳後修飾は、原核生物のタンパク質発現と真核生物のタンパク質発現との間での最も
顕著な相違点の代表である。原核生物(すなわち細菌)は極めて単純な細胞構造を有し、
膜結合性の細胞小器官を持たない。真核生物においては、タンパク質が最初に生産された
後で修飾を受けることが多い。多くの場合、これらの修飾は、ペプチドを機能を有する形
態に転換することに必要である。従って、現存する細菌の発現系が正確な一次構造を伴う
タンパク質を生産する場合でさえ、そのタンパク質が翻訳後修飾を受けないことがあり、
その結果、多くの場合機能しない。一般的な修飾としては、ジスルフィド結合の形成、グ
リコシル化、アセチル化、アシル化、リン酸化およびγ−カルボキシル化が挙げられ、こ
れらのすべてがタンパク質の折りたたみと生物活性とを制御することができる。一般的に
、細菌の発現系では、真核生物のタンパク質の正確なグリコシル化、アセチル化、アシル
化、リン酸化およびγ−カルボキシル化はなされない。
【0007】
細菌、たとえばエシェリキア・コリはジスルフィド結合を形成できるが、その結合は生
物活性に必要な立体配置とは異なる状態に形成されることが多い;従って、真核生物の活
性なタンパク質を生産するためには、通常は変性と再折りたたみとが必要である。それ以
外のタンパク質の折りたたみを促進する分子シャペロンタンパク質は、原核生物および真
核生物の両方に存在する。このようなシャペロンが存在しない場合、折りたたまれていな
いかまたは部分的に折りたたまれたポリペプチド鎖が細胞内で不安定に存在し、不正確な
折りたたみまたは凝集して不溶性複合体となることが多い。シャペロンの結合によってこ
れらの折りたたまれていないポリペプチドを安定化させ、それによって不正確な折りたた
みまたは凝集を防止し、そのポリペプチド鎖がその正確な立体配置をとれるような折りた
たみを可能とする。しかしながら、シャペロンは細胞のそれぞれのタイプにおいて異なっ
ており、細胞外の条件に基づいて違った形で発現され得る。
【0008】
現在の発現系に伴う課題
エシェリキア・コリ(E. coli)は、最も広範囲にかつ日常的に用いられている、タンパ
ク質の発現系である。エシェリキア・コリで生産することは、あまり高価ではなく、迅速
でかつ十分に特徴づけられている。さらに、スケールアップと回収が可能であり、cGM
Pの生産が十分に確立されている。しかしながら、エシェリキア・コリの使用には明確な
制限があり、特に哺乳動物の組み換え型タンパク質の発現の際に、このことを克服するこ
とは多くの場合困難であることが分かっている。
【0009】
上記の制限と共に、エシェリキア・コリ内での組み換え遺伝子産物の高レベル発現は多
くの場合、対象タンパク質の折りたたみの間違い、細胞性プロテアーゼによるその後の分
解、または封入体として知られている生物学的に不活性な凝集物への沈積が生じる。封入
体で見られるタンパク質は通常、抽出され、復元されて活性を回復し、プロセスへの時間
とコストとを追加されるはずである。典型的な復元方法には、高濃度の変性剤で凝集物を
溶解させ、次いで希釈によってその変性剤を除去するという試みが含まれる。封入体の形
成に関与すると示唆されている因子のいくつかとしては、タンパク質の局部での高濃度化
;ジスルフィド結合の形成を妨害する細胞質内での環境の還元化(エシェリキア・コリの
細胞質は高レベルのグルタチオンを有する);タンパク質の溶解性を高め得る翻訳後修飾
の欠如;シャペロンとインビボでの折りたたみに関与するその他の酵素との間の不適切な
相互作用;ジスルフィド結合またはその他の共有結合を介する分子間架橋形成;ならびに
溶解性が制限されていることによる折りたたみ中間物の凝集物の増加が挙げられる。これ
らの因子が組み合わさること、ならびにシャペロンの入手可能性が制限されていることも
あり得、このことが封入体形成のほとんどすべてを導く。
【0010】
酵母の発現系、たとえばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ま
たはピチア・パストリス(Pichia pastoris)も、タンパク質の生産のために一般的に用い
られる。これらの系は十分に特徴づけられており、良好な発現レベルを提供し、比較的迅
速であり、そしてその他の真核生物の発現系よりも高価ではない。しかしながら、酵母は
制限された翻訳後のタンパク質修飾しか達成し得ず、そのタンパク質は再折りたたみが必
要となり、その細胞壁の特性によるタンパク質の回収が課題となり得る。
【0011】
昆虫細胞の発現系も、タンパク質発現系の魅力的な代替系として浮上しつつあるが、高
価である。一般的な翻訳後修飾を受けて正確に折りたたまれたタンパク質を生産すること
もでき、細胞外の発現も実現している。しかしながら、細菌および酵母と同程度に迅速で
はなく、スケールアップも一般的に困難を伴う。
【0012】
哺乳動物細胞の発現系、たとえばチャイニーズハムスター卵巣細胞が複合タンパク質の
発現に用いられることは多い。この系は通常、適切な翻訳後修飾によって正確に折りたた
まれたタンパク質を生産し、そのタンパク質を細胞外で発現させることもできる。しかし
ながら、この系は極めて高価であり、スケールアップは緩慢であり実施不可能なことも多
く、得られるタンパク質はその他のあらゆる系よりも少ない。
【0013】
シュードモナス・フルオレッセンス(P. fluorescens)
シュードモナス・フルオレッセンスは、土壌、水および植物表面の環境でコロニーを形
成する一般的な非病原性の腐生菌の一群を包含する。シュードモナス・フルオレッセンス
は、農業および工業上のプロセス、たとえば非哺乳動物の工業上および農業上のタンパク
質の商業的生産、で広く用いられている。シュードモナス・フルオレッセンスに由来する
非哺乳動物の酵素は、環境汚染を減らすための洗剤の添加物として、および立体選択的な
加水分解のために用いられてきた。1980年代の中ごろに、Mycogen社はシュー
ドモナス・フルオレッセンスで細菌の組み換え型タンパク質を発現させることに着手し、
シュードモナス・フルオレッセンスでバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringi
ensis)毒素を発現させることに関する最初の特許出願(「生物農薬の細胞内カプセル化(
Cellular encapsulation of biological pesticides)」)を、1985年1月22日に
出願した。1985年〜2004年の間では、Mycogen社、後のDow Agro
Sciences社ならびにその他の企業が、農薬、殺虫剤および殺線虫性毒素の生産
に関する特許出願、ならびに特定の毒素配列およびこれらの発現を促進するための遺伝子
操作に関する特許出願におけるシュードモナス・フルオレッセンスの農業上の利用に出資
した。シュードモナス・フルオレッセンスでの細菌の組み換え型タンパク質の発現を対象
とする特許出願の具体例としては、次のものが挙げられる:米国特許第3,844,89
3号;同第3,878,093号、同第4,169,010号;同第5,292,507
号;同第5,558,862号;同第5,559,015号;同第5,610,044号
;同第5,622,846号;同第5,643,774号;同第5,662,898号;
同第5,677,127号;同第5,686,282号;同第3,844,893号;同
第3,878,093号;同第4,169,010号;同第5,232,840号;同第
5,292,507号;同第5,558,862号;同第5,559,015号;同第5
,610,044号;同第5,622,846号;同第5,643,774号;同第5,
662,898号;同第5,677,127号;同第5,686,282号;同第5,6
86,283号;同第5,698,425号;同第5,710,031号;同第5,72
8,574号;同第5,731,280号;同第5,741,663号;同第5,756
,087号;同第5,766,926号;同第5,824,472号;同第5,869,
038号;同第5,891,688号;同第5,952,208号;同第5,955,3
48号;同第6,051,383号;同第6,117,670号;同第6,184,44
0号;同第6,194,194号;同第6,268,549号;同第6,277,625
号;同第6,329,172号;同第6,447,770号;並びにPCT公報第WO0
0/15761号;同第WO00/29604号;同第WO01/27258号;同第W
O02/068660号;同第WO02/14551号;同第WO02/16940号;
同第WO03/089455号;同第WO04/006657号;同第WO04/011
628号;同第WO87/05937号;同第WO87/05938号;同第WO95/
03395号;同第WO98/24919号;同第WO99/09834号;および同第
WO99/53035号。
【0014】
2003年10月8日、Dow AgroSciences社は、「抗ウイルス物質、
アジュバントおよびワクチン促進剤の生産および送達のために修正された組み換え細胞(A
RCs)」という名称のPCT公報第04/087864号を出願した。この出願には、ケモ
カインまたはサイトカインをコードする少なくとも一つの異種遺伝子を含み得る組み換え
細胞、および免疫応答を促進するためにこのような細胞を宿主に投与することが記載され
ている。この出願では、シュードモナス・フルオレッセンスでのウシインターフェロン−
αおよびインターフェロン−γの生産を実証している。
【0015】
Dow Global Technologies社は最近、組み換え型タンパク質を
生産するためのシュードモナス・フルオレッセンスを用いる分野の係属中の特許出願を抱
えている。2003年2月13日にDow Global Technologies社
により出願された、「Over-Expression of Extremozyme Genes in Pseudomonas and Clos
ely Related Bacteria」という名称のPCT出願WO 03/068926号では、シュー
ドモナス菌、特にシュードモナス・フルオレッセンスにおける発現系を、エキストレモザ
イム酵素を生産するための宿主細胞として用いることができることが開示されている。こ
れらの酵素は典型的には古くからあり、原核生物、真核生物、たとえば真菌、酵母、地衣
類、原生生物および原虫、藻類およびコケ類、緩歩動物ならびに魚類で見出される。この
特許では、特定の好極限性(extremophilic)の真菌および酵母から酵素を導くことができ
るが、好極限性の細菌から導くことが通常であることが開示されている。
【0016】
2003年4月22日にDow Global Technologies社により出
願された、「Low-Cost Production of Peptides」という名称のPCT公報WO 03/
089455号では、シュードモナス菌、特にシュードモナス・フルオレッセンスにおい
て、小ペプチド、主として抗菌性ペプチドをコンカタメリック(concatameric)な前駆体と
して生産する方法が記載されている。
【0017】
Dow Global Technologies社による、「Benzoate and Antrani
late Inducible Promoters」という名称のPCT公報WO 04/005221号からは
、シュードモナス・フルオレッセンスから、新規安息香酸エステルまたはアントラニル酸
エステル誘導性プロモーター、ならびに新規タンデムプロモーター、その変異型および改
善された突然変異型が提供され、これらは市販の原核生物の発酵系にとって有用である。
【0018】
Monsanto社による米国特許第5,232,840号では、原核生物細胞内で特
定のタンパク質の発現を促進するために、新規のリボゾーム結合部位を用いることが記載
されている。一例においては、この細胞を用いて、いくつかの生命体、たとえばエシェリ
キア・コリ、シュードモナス・フルオレッセンスおよびシュードモナス・プチダ(P. puti
da)においてブタ成長ホルモンを発現している。このデータから、シュードモナス・フル
オレッセンスは、エシェリキア・コリと比べて成長ホルモン発現の効率が低いことが示さ
れる。これとは対照的に、細菌タンパク質を発現させる場合、シュードモナス・フルオレ
ッセンスは、同等の条件下でのエシェリキア・コリと比べて、タンパク質生産の効率がは
るかに高い。実際のところ、この特許に記載されたシュードモナス・フルオレッセンス細
胞は、エシェリキア・コリと比べて数倍を超える量の細菌由来のβ−ガラクトシダーゼを
生産する(表4と、表1および表2との比較)。
【0019】
商業上関心のあるタンパク質を生産することの進歩はなされてきたが、哺乳動物の組み
換え型タンパク質、特にヒトタンパク質の能力と生産レベルとを改善するという強い要求
も依然として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の目的は、治療目的のために単離し精製することができる、哺乳動物の
組み換え型タンパク質、特にヒトタンパク質を生産するための方法、およびこの方法を実
現させることができる細胞を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、哺乳動物の活性な組み換え型タンパク質、たとえば哺乳動物
の複合タンパク質を生産するための改善された方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、哺乳動物の組み換え型タンパク質、特にヒトタンパク質を高
レベルで生産するための改善された方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、可溶性または不溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質を高
い発現レベルで供給する、形質転換された生命体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
シュードモナス・フルオレッセンスが、組み換え型タンパク質、特に哺乳動物の組み換
え型タンパク質、たとえばヒトの組み換え型タンパク質を生産するための優れた生命体で
あることが発見された。これらの発見に基づいて、本発明は、シュードモナス・フルオレ
ッセンスにおいて、哺乳動物の組み換え型タンパク質または哺乳動物に由来するタンパク
質を生産する方法を提供する。さらに本発明は、哺乳動物の組み換え型タンパク質、たと
えばヒトタンパク質を生産するために形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス
を提供する。
【0025】
一つの実施形態においては、本発明は、細胞あたりまたは発酵反応物1リットルあたり
、同等の条件下でのエシェリキア・コリ生物よりも高いレベルまたは濃度でタンパク質が
生産されるところのシュードモナス・フルオレッセンス生物で、哺乳動物のタンパク質を
生産する方法を提供する。さらに別の実施形態においては、本発明は、組み換えエシェリ
キア・コリ生物の対応するバッチよりも、1リットルあたりのタンパク質をより多く生産
するシュードモナス・フルオレッセンス生物でバッチ培養で、哺乳動物のタンパク質を生
産する方法を提供する。
【0026】
同等の条件または実質的に同等の条件とは具体的には、異なる生命体において、同様の
機能するように結合した転写プロモーターおよびリボゾーム結合部位を用い、そして同じ
初期誘導条件を用いることによる、組み換え型タンパク質の発現を意味する。同等の条件
としては、同じベクターと関連する調節エレメント、たとえばこれらに限定されるわけで
はないが、エンハンサー配列、終止配列および開始又は複製配列、を用いることも含まれ
得る。同等の条件としては、細胞発酵反応物が同じ総体積であることも含まれ得る。同等
の条件としては、反応物1リットルあたりの総細胞濃度が同じであることも含まれ得る。
一つの実施形態においては、この条件は、(測定前の)総誘導時間が同程度または同じで
あることも含む。しかしながら、別の実施形態においては、生命体に応じて誘導時間を変
えてもよい。具体的には、エシェリキア・コリ細胞のほとんどが変化しない時点において
シュードモナス・フルオレッセンスにおけるタンパク質生産を測定できるように、シュー
ドモナス・フルオレッセンスは、タンパク質生産を減らすこと無く、エシェリキア・コリ
を超えて長時間増殖する能力を有する。同等の条件を測定する一つの方法は、全細胞タン
パク質あたりの組み換え型タンパク質のパーセントを比較することである。さらに同等の
条件は、同一の培地を必要としない。培地を調整して、個々の生命体にとって最適な生産
を確実にすることができる。
【0027】
別の実施形態においては、本発明は、シュードモナス・フルオレッセンス生物でタンパ
ク質を生産する工程、および生産されたタンパク質を単離する工程によって、哺乳動物の
組み換え型タンパク質を生産するための方法を提供する。一つの下位実施形態においては
、本方法は、タンパク質を実質的に精製する工程を含む。一つの実施形態においては、こ
のタンパク質はヒトタンパク質に由来するか、またはヒト化されたものである。
【0028】
本発明は、少なくとも次の実施形態におけるシュードモナス・フルオレッセンスの使用
をも提供する:
(i)1〜75全細胞タンパク質パーセント(%tcp)の間の範囲、または特に少な
くとも約5%tcp、10%tcp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcp
またはそれ以上を超える範囲の量、細胞に存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、た
とえばヒトタンパク質の生産;
(ii)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%t
cp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の
量、細胞の細胞質に存在する、可溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒト
タンパク質の生産;
(iii)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%
tcp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲
の量、細胞の細胞質に存在する、不溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒ
トタンパク質の生産;
(iv)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%t
cp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の
量、細胞のペリプラズム内にある、可溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえば
ヒトタンパク質の生産;
(v)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%tc
p、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の量
、細胞のペリプラズム内にある、不溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒ
トタンパク質の生産;
(vi)少なくとも40g/Lの細胞密度で培養した場合における、1〜75%tcp
の間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%tcp、少なくとも15%tc
p、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の量、細胞に存在する哺乳動物
の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタンパク質の生産;
(vii)細胞内に活性型で存在する、哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒ
トタンパク質の生産;
(viii)活性型の哺乳動物の複数サブユニット型の組み換え型タンパク質、たとえ
ばヒトタンパク質の生産;
(ix)次いで単離され精製される、哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒト
タンパク質の生産;および
(x)復元される、哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタンパク質の生産

【0029】
一つの実施形態においては、哺乳動物の組み換え型タンパク質は、複数サブユニット型
のタンパク質、血液運搬タンパク質、酵素、全長抗体、抗体断片または転写因子からなる
群より選択される。
【0030】
別の実施形態においては、本発明は、次のものを包含する:
(i)実質的に一致する条件下で培養した場合、対応するエシェリキア・コリ生物より
も高いレベルまたは濃度で哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタンパク質を
生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物;
(ii)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%t
cp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の
量、細胞に存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタンパク質およびペ
プチドを生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物;
(iii)細胞に活性型で存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタ
ンパク質を生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物;
(iv)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%t
cp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の
量、細胞の細胞質に可溶性で存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタ
ンパク質を生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物;
(v)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%tc
p、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の量
、細胞の細胞質に不溶性で存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトタン
パク質を生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物;
(vi)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%t
cp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲の
量、細胞のペリプラズムに可溶性で存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえば
ヒトタンパク質を生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物

(vii)1〜75%tcpの間の範囲、または特に少なくとも約5%tcp、10%
tcp、少なくとも15%tcp、少なくとも20%tcpまたはそれ以上を超える範囲
の量、細胞のペリプラズムに不溶性で存在する哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえ
ばヒトタンパク質を生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生
物;
(viii)ヒトを含む哺乳動物の複数サブユニット型の組み換え型タンパク質を生産
するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生物;
(ix)細胞内に活性型で存在する、ヒトを含む哺乳動物の複数サブユニット型の組み
換え型タンパク質を生産するように形質転換されたシュードモナス・フルオレッセンス生
物。
【0031】
代替的な実施形態においては、以下に詳述するように、シュードモナス生物およびフル
オレッセンス以外の近接する細菌を本発明における宿主細胞として用いる。一つの実施形
態においては、シュードモナス属から、具体的には非病原性のシュードモナス種から、宿
主細胞を一般的に選択することができる。同様に、あらゆるシュードモナス・フルオレッ
センス株、たとえばこれらに限定されるわけではないがMB101株か、または少なくと
も一つのLacリプレッサータンパク質をコードするlacI導入遺伝子の、少なくとも
一つの宿主細胞で発現可能な挿入されたコピーを含むように改変された株、たとえばMB
214およびMB217を用いて、発明の所望の目的を達成することができる。このシュ
ードモナス生物を、必要に応じて、一つ以上の遺伝子を付加または削除する遺伝子改変を
行って、能力、プロセシングまたはその他の特性を改善してもよい。
【0032】
一つの実施形態においては、シュードモナス生物は、複数サブユニット型のタンパク質
、血液運搬タンパク質、酵素、全長抗体、抗体断片または転写因子からなる群より選択さ
れる哺乳動物の組み換え型タンパク質をコードする核酸で形質転換される。一つの実施形
態においては、シュードモナス・フルオレッセンス生物は、複数サブユニット型のタンパ
ク質、血液運搬タンパク質、酵素、全長抗体、抗体断片または転写因子からなる群より選
択される哺乳動物の組み換え型タンパク質を発現する。
【0033】
発現された、哺乳動物の組み換え型タンパク質またはヒトタンパク質は、典型的には少
なくとも約1kDの質量、そして最大で約100、200、300、400または500
kDの質量を有し、多くの場合は約10kD〜約100kDの間の質量を有し、そして通
常は約30kDを超える質量を有するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、シュードモナス・フルオレッセンスサンプルの可溶性画分から精製されたhu−γ−IFNが、市販の標準と同等の活性を示すことを示すグラフである。
【図2】図2は、シュードモナス・フルオレッセンスおよびエシェリキア・コリ内における、精製されたGal13の活性を示すELISAの図である。
【図3】図3は、ヒト成長ホルモン発現構築物を表す。その天然の分泌シグナル配列を欠くヒト成長ホルモンのアミノ酸配列をAに示す。シュードモナス・フルオレッセンスにおける発現のためのプラスミド構築物(pDOW2400)およびエシェリキア・コリのそれ(412−001.hGH)をBに示す。
【図4】図4は、シュードモナス・フルオレッセンスおよびエシェリキア・コリで発現したhGHの可溶性および不溶性画分のSDS−PAGE分析の図である。誘導後の時間を、I0、I24、I48、0または3で示す。大きな矢印は、21kDaのhGHタンパク質の位置を示す。
【図5】図5は、エシェリキア・コリ細胞対シュードモナス・フルオレッセンス細胞におけるγ−IFNの発現のSDS−PAGE分析を示す。誘導から0、3、24および48時間後に取り出した(I0など)サンプルの可溶性画分(S)および不溶性画分(I)を溶解させた。γ−IFNを発現したエシェリキア・コリをパネルAに、γ−IFNを発現したシュードモナス・フルオレッセンスをパネルBに示す。5μLのA575−20サンプルを10%のBis−Tris NuPAGEゲル上に負荷し、1X MESで溶解させた。矢印は、組み換え型タンパク質の位置を示す。ウエスタン分析を、パネルC(エシェリキア・コリ)およびD(シュードモナス・フルオレッセンス)に示す。
【図6】図6は、pMYC1803のSpeI部位およびXhoI部位において、BGI遺伝子でBuiBui毒素遺伝子を置換することを示す。
【図7】図7は、挿入されたDNAの配列を決定して検証したように、選択されたすべての形質転換体が所望のインターフェロン挿入物を有したことを示す。
【図8】図8は、リン酸結合タンパク質−gal2一本鎖抗体融合体タンパク質についてのヌクレオチド配列を表す。
【図9】図9は、リン酸結合タンパク質−gal2一本鎖抗体融合体タンパク質についてのアミノ酸配列を表す。
【図10】図10は、リン酸結合タンパク質−ヒト成長ホルモン融合体タンパク質についてのヌクレオチド配列を表す。
【図11】図11は、リン酸結合タンパク質−ヒト成長ホルモン融合体タンパク質についてのアミノ酸配列を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
哺乳動物の組み換え型タンパク質を生産するための方法
本発明は、方法と、哺乳動物の組み換え型タンパク質を生産する、形質転換されたシュ
ードモナス・フルオレッセンス生物とを提供する。
【0036】
一つの実施形態においては、本発明は、シュードモナス・フルオレッセンス生物でタン
パク質を生産する工程、および生産されたタンパク質を単離する工程によって、哺乳動物
の組み換え型タンパク質を生産するための方法を提供する。発現後に、本技術分野におい
て公知の技術、たとえばこれらに限定されるわけではないが、アフィニティークロマトグ
ラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、抗体親和性、サイズ排除、またはタンパク質
から細胞の残骸のほとんどの部分を取り除くその他の任意の方法によって、このタンパク
質を単離することができる。一つの下位実施形態においては、この方法によって、実質的
に精製されたタンパク質が提供される。単離されたタンパク質は、それが由来するところ
の天然のタンパク質のものと同様の活性を有することができる。このタンパク質を、天然
のタンパク質のそれと近い、正確に折りたたまれた状態または立体配置で単離することが
でき、またはさらに復元または改変して、正確に折りたたまれた立体配置を取らせること
ができる。一つの下位実施形態においては、このタンパク質はヒトタンパク質に由来する
か、またはヒト化されたものである。「ヒト化」タンパク質とは典型的には、ヒトに由来
するタンパク質配列から部分的に成るキメラ性の哺乳動物型タンパク質である。ヒト化は
抗体生産において特に有用であり、ヒト化抗体の開発は広範囲にわたって、たとえば米国
特許第6,800,738号に記載されている。
【0037】
一つの実施形態においては、宿主細胞によるタンパク質の発現に続いて、タンパク質の
単離を行う。別の実施形態においては、ペプチドのタンパク質を精製する。代替的な実施
形態においては、タンパク質の単離の後で、そのタンパク質を精製する。活性なタンパク
質を生産させるために、必要に応じて、単離されたまたは精製されたタンパク質の復元ま
たは再折りたたみを行ってもよい。
【0038】
別の実施形態においては、本発明は、エシェリキア・コリ生物よりも高いレベルまたは
濃度でタンパク質が生産されるところのシュードモナス・フルオレッセンス生物で、哺乳
動物のタンパク質を生産する方法を提供する。シュードモナス・フルオレッセンス生物が
、哺乳動物のタンパク質の高レベル生産に適しているかどうかは、従来技術においてこれ
らの生命体にてこのようなタンパク質の生産が成功しなかったことが理由で、予想されて
いなかった。本発明者らは、これらの生命体が哺乳動物のタンパク質を高レベルで生産す
る能力を本当に有すること、そして対応する評価法で試験した場合、エシェリキア・コリ
よりも高い収率すなわち高いレベルでタンパク質を発現することが通常であることを見出
した。別の実施形態においては、本発明は、組み換えエシェリキア・コリ生物の対応する
バッチよりも、1リットルあたりのタンパク質をより多く生産するシュードモナス・フル
オレッセンス生物のバッチ培養で、哺乳動物のタンパク質を生産する方法を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンスにおいて、活性型
の哺乳動物の組み換え型タンパク質、たとえばヒトの複数サブユニット型のタンパク質を
生産すること;シュードモナス・フルオレッセンスにおいて、哺乳動物の組み換え型血液
輸送タンパク質、たとえばヒトの血液運搬タンパク質、具体的にはトランスフェリンおよ
びアルブミンを生産すること;シュードモナス・フルオレッセンスにおいて、活性型の哺
乳動物の組み換え型酵素、たとえば哺乳動物の組み換え型酵素を生産すること;シュード
モナス・フルオレッセンスにおいて、抗体および抗体断片、たとえば一本鎖抗体およびF
ab断片を生産すること;ならびにシュードモナス・フルオレッセンスにおいて、哺乳動
物の組み換え型、たとえばヒト転写因子を生産することを含む方法が提供される。
【0040】
一つの実施形態においては、哺乳動物の組み換え型タンパク質を多量体として、または
コンカタメリックな前駆体で、たとえば少なくとも二つの小ペプチド(1−15アミノ酸
)単位で一列に並んだ形態で生産する。代替的な実施形態においては、哺乳動物の組み換
え型タンパク質を多量体として、またはコンカタメリックな前駆体では生産しないが、そ
の代わりに一本鎖のポリペプチドとして生産する。
【0041】
生体分子のスクリーニング
本発明の別個の実施形態は、所望の活性または特性を示す少なくとも一つのものを特定
するための哺乳動物の生体分子のスクリーニングライブラリーのプロセスに、シュードモ
ナス・フルオレッセンス生物を提供する。シュードモナス・フルオレッセンス細胞を、試
験することが望ましい哺乳動物に由来する多数の核酸で形質転換し、形質転換された宿主
細胞のライブラリーを作製することができる。発現と同時に、細胞質またはその細胞から
その後に回収されるもののいずれかを試験するための、少なくともいくつかの核酸でコー
ドされたポリペプチドが生産される。その試験が行われるであろう活性および特性の例と
しては、次のものが挙げられる:ポリペプチドの発現レベル;ポリペプチドの安定性;お
よび生体触媒活性および特性。生体触媒活性および特性の実例としては、次のものが挙げ
られる:酵素活性;タンパク質の相互作用/結合性;タンパク質安定性;基質の使用法;
産物の形成;反応条件、たとえばpH、塩分濃度もしくは反応温度;所定の触媒反応につ
いての生体触媒パラメータ、たとえばKmおよびVmax;ならびに安定性の挙動、たと
えば熱安定性および生体触媒の寿命の半分。得られたこの試験結果を、さらなる開発のた
めにライブラリーのメンバーの選択に用いてもよい。
【0042】
タンパク質の発現
本発明の重要な側面は、シュードモナス・フルオレッセンス生物における発現によって
、哺乳動物、たとえばヒトの組み換え型タンパク質を、1〜75全細胞タンパク質パーセ
ント(%tcp)の間の範囲という高レベルで発現することである。この発現されたタン
パク質は、シュードモナス・フルオレッセンス細胞内にある時は可溶性または不溶性であ
り得る。このような高レベルの可溶性または不溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質は
、哺乳動物のタンパク質の既存の公知の発現系を凌ぐ改善であり得る。特に、大規模な発
酵反応物において回収される高レベルの哺乳動物のタンパク質は、公知の技術によっては
通常不可能である。
【0043】
一つの実施形態においては、本発明は、エシェリキア・コリの発現系で見出されるそれ
を上回る、哺乳動物のタンパク質の発現レベルを提供する。一つの実施形態においては、
それぞれの細胞における組み換え型タンパク質の濃度は、比較評価においてエシェリキア
・コリで見られる濃度よりも高い。一つの実施形態においては、シュードモナス・フルオ
レッセンスの発現系において測定される全細胞タンパク質と比較した組み換え型タンパク
質のレベルは、エシェリキア・コリにおいて発現する同じ組み換え型タンパク質のそれよ
りも高い。別の実施形態においては、本明細書で記載されるシュードモナス・フルオレッ
センスの発現系における可溶性タンパク質のレベルまたは量は、類似のエシェリキア・コ
リの発現系における可溶性の組み換え型タンパク質のレベルまたは量よりも高い。別の実
施形態においては、活性なタンパク質の総量は、エシェリキア・コリの発現系に由来する
量よりも多い。別個の実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンスの発現系
において測定される全細胞タンパク質と比較した活性な組み換え型タンパク質のレベルは
、エシェリキア・コリにおいて発現する同じ組み換え型タンパク質のそれよりも高い。一
つの実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンスにおいて発現するタンパク
質のレベル、濃度または量は、エシェリキア・コリにおいて発現する組み換え型タンパク
質の、類似の評価法でのレベル、濃度または量の少なくとも2x、少なくとも3x、少な
くとも4x、少なくとも5x、少なくとも6x、少なくとも7x、少なくとも8x、少な
くとも9x、少なくとも10xまたはそれ以上である。
【0044】
シュードモナス・フルオレッセンスの発現系としての利点の一つは、それらのタンパク
質生産能力に否定的な影響を与えること無く、大規模な培養で細胞を培養できることであ
る。この能力は、その他の細菌系、たとえばエシェリキア・コリにおいて見られる能力を
凌いでいる。別の実施形態においては、本方法は、エシェリキア・コリのバッチ培養より
も高い総レベルで、シュードモナス・フルオレッセンスにて組み換え型タンパク質が生産
されるところのバッチ培養で哺乳動物のタンパク質生産することを含む。さらに別の実施
形態においては、本発明は、組み換えエシェリキア・コリ生物の対応するバッチよりも、
1リットルあたりのタンパク質をより多く生産するシュードモナス・フルオレッセンス生
物のバッチ培養で哺乳動物のタンパク質を生産する方法を提供する。
【0045】
本発明は一般的に、方法と、1−75全細胞タンパク質(tcp)%の発現レベルを、
可溶性または不溶性の哺乳動物の組み換え型タンパク質に与える能力を有する、形質転換
されたシュードモナス・フルオレッセンス生物とを提供する。細胞内で発現される哺乳動
物の組み換え型タンパク質は、活性型で発現され得る。その他の実施形態においては、シ
ュードモナス・フルオレッセンスは、少なくとも1、5、10、15、20、25、30
、40、50、55、60、65、70または75%tcpの哺乳動物の組み換え型タン
パク質を提供する。
【0046】
これらのタンパク質は可溶性でもよく、可溶性の場合では、生産の間は、細胞の細胞質
またはペリプラズム内に存在し得る。可溶性タンパク質は、たとえばこれらに限定される
わけではないが、圧力によって細胞膜を破裂させる方法(すなわち「フレンチ」プレス法
)、または細胞膜のリゾチーム分解法によって、細胞から容易に放出される。界面活性剤
(detergents)、たとえば非イオン性界面活性剤を用いると、通常は細胞を溶解させること
もできる。可溶性のタンパク質を、緩衝液の構成要素、たとえば緩衝液のpH、塩濃度ま
たはさらなるタンパク質成分(たとえば複数サブユニット型の複合体)を調節することに
よって、さらに安定化させることができる。たとえば遠心分離および/またはクロマトグ
ラフィー、具体的にはサイズ排除クロマトグラフィー、アニオンもしくはカチオン交換ク
ロマトグラフィー、またはアフィニティークロマトグラフィーによって、その他のタンパ
ク質および細胞の残骸から、可溶性タンパク質を単離または精製することができる。
【0047】
タンパク質は不溶性でもよい。不溶性タンパク質は通常、細胞質の封入体内で見られる
が、ペリプラズム内で見られることも多い。すべての不溶性タンパク質が封入体内にある
わけではなく、小タンパク質凝集物のような膜凝集物、または細胞質もしくはペリプラズ
ム内のその他のあらゆる不溶型にも見られることがある。不溶性タンパク質は通常、たと
えば還元剤、具体的には尿素または塩酸グアニジンを用いて復元することができる。たと
えば遠心分離および/またはクロマトグラフィー、具体的にはサイズ排除クロマトグラフ
ィーによって、不溶性タンパク質またはタンパク質凝集物を単離することができる。不溶
性凝集物内のタンパク質は通常、たとえばVinogradov, et al. (2003) Anal Biochem. 15
; 320 (2): 234-8に記載のミセルまたは逆ミセルを用いての凝集物の可溶化によって分離
することができる。
【0048】
特定の実施形態においては、無機塩培地(すなわち約4℃〜約55℃を含む温度範囲内
)で培養すると、シュードモナスの宿主細胞は、少なくとも1%tcpの発現レベルかつ
少なくとも40g/Lの細胞密度の哺乳動物の組み換え型ペプチド、ポリペプチド、タン
パク質またはその断片を有することができる。特定の実施形態においては、発現系はペプ
チドの組み換え型タンパク質、たとえば少なくとも10リットルの発酵規模の無機塩培地
(すなわち約4℃〜約55℃を含む温度範囲内)で培養すると少なくとも5%tcpの発
現レベルかつ少なくとも40g/Lの細胞密度の哺乳動物の組み換え型タンパク質を有す
るだろう。
【0049】
本技術分野において公知の標準的な技術によって、発現レベルを測定することができる
。一つの実施形態においては、タンパク質の量(グラム)は、所定のサンプルにおける全
細胞タンパク質のグラムの量に匹敵する。別の実施形態においては、この測定は1リット
ルあたりの組み換え型タンパク質のレベルである。別の実施形態においては、公知の標準
、たとえばBSAコントロールに照らして、このレベルまたは量を測定することができる
。たとえば精製タンパク質の吸光度を分析することによって、タンパク質(具体的には抗
体親和性)についてのマーカーの親和性を公知の標準と比較して測定することによって、
または活性のレベルを公知の標準(たとえば既知量の精製した活性なタンパク質)と比較
して測定することによって、組み換え型タンパク質のレベルまたは量を測定することがで
きる。
【0050】
特定の状況においては、シュードモナス・フルオレッセンス細菌を発現用宿主細胞とし
て用いる場合、ジスルフィド結合を含む標的ポリペプチドを活性な可溶型で回収するため
に、さらなるジスルフィド結合を促進しない条件または薬剤を必要とすることが分かった
。従って、一つの実施形態においては、遺伝子導入ペプチド、ポリペプチド、タンパク質
または断片は、その天然の状態の分子内ジスルフィド結合を少なくとも一つ含む。その他
の実施形態においては、タンパク質は、最大で2、4、6、8、10、12、14、16
、18または20を超える、その天然の状態のジスルフィド結合を有し得る。
【0051】
いくつかの実施形態においては、精製または単離前の生産過程において、細胞のペリプ
ラズム内でタンパク質が発現するか見出される。適切な分泌シグナル配列に融合すること
によって、タンパク質をペリプラズム内に分泌させることができる。一つの実施形態にお
いては、シグナル配列は、シュードモナス・フルオレッセンスのゲノムを原産とするシグ
ナル配列である。具体的な実施形態においては、シグナル配列は、リン酸結合タンパク質
、Lys−Arg−Orn結合タンパク質(LAObpまたはKRObp)分泌シグナル
ペプチド、外膜ポーリンE(OpreE)分泌シグナルペプチド、アズリン分泌シグナル
ペプチド、鉄(III)結合タンパク質(Fe(III)bp)分泌シグナルペプチドま
たはリポタンパク質B(LprB)分泌シグナルペプチドである。
【0052】
一つの実施形態においては、組み換え型ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはそ
れらの断片は、その活性状態で折りたたまれた分子内立体配置を有する。シュードモナス
・フルオレッセンスは通常、正確に折りたたまれた立体配置の哺乳動物のタンパク質をよ
り効率的に生産する。一つの実施形態においては、50%を超えて発現された、遺伝子導
入ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生産されたそれらの断片を、可溶性、活性
型または不溶性の状態の一本鎖ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはそれらの断片
として生産できるが、細胞質内またはペリプラズム内では復元可能な形態である。別の実
施形態においては、発現されたタンパク質の約60%、70%、75%、80%、85%
、90%、95%を活性型で得ることができ、または活性型に復元することができる。
【0053】
定義
本明細書を通して、「タンパク質」という用語は、アミノ酸のあらゆるコンカテマーま
たはポリマーを含むものとして用いられる。「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タ
ンパク質」という用語は、相互に交換して用いることができ、その中の一つ以上のアミノ
酸残基が、対応する天然のアミノ酸の人工的な化学的アナログであるところのアミノ酸の
ポリマー、ならびに天然のアミノ酸のポリマーを含む。
【0054】
「単離された」という用語は、細胞内の天然の状態で見られるような普通に随伴するそ
の他の物質成分、たとえばその他の細胞内成分を実質的にまたは本質的に含まない核酸、
タンパク質またはペプチドを意味する。
【0055】
「精製された」または「実質的に精製された」という用語は、タンパク質がその他の細
胞成分から分離されること、およびタンパク質との天然の複合体には存在しない細胞で見
られるその他のタンパク質およびペプチドから分離されることを意味するものとして用い
られる。特定の実施形態においては、精製タンパク質は、標準的なcGMPガイドライン
で規定されるような治療にまたは獣医に用いることが承認された純度、またはFDAによ
って承認された純度である。
【0056】
「全細胞タンパク質のパーセント」(「tcp」)という用語は、凝集した細胞内タンパ
ク質のパーセントとしての宿主細胞におけるタンパク質の量を意味する。あるいは、この
用語は、その細胞によって発現された所定のタンパク質の相対量を表す全細胞タンパク質
の割合の基準を意味する。
【0057】
「機能できるように結合」という用語は、そこでの転写調節エレメントおよび翻訳調節
エレメント、それらの調節エレメントはコード配列の発現を導くことができる、が、その
コード配列に関連して宿主細胞内で作用するような配置で、コードする配列に共有結合し
ているあらゆる立体配置を意味する。
【0058】
本明細書で用いられるように、「哺乳動物」という用語は、哺乳綱のあらゆる動物を含
むまたは示すことを意味し、たとえばヒトまたは非ヒトの哺乳動物、具体的にはこれらに
限定されるわけではないが、ブタ(porcine)、ヒツジ(ovine)、ウシ(bovine)、げっ歯類、
有蹄類、ブタ(pigs)、ブタ(swine)、ヒツジ(sheep)、仔ヒツジ、ヤギ、ウシ(cattle)、シ
カ、ラバ、ウマ、サル(monkeys)、サル(apes)、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスが挙げ
られる。
【0059】
本明細書で用いられるように、「哺乳動物の組み換え型タンパク質」またはペプチドと
いう用語は、哺乳動物の天然のタンパク質配列に由来するタンパク質または哺乳動物の天
然の核酸配列に由来するもしくはそれから生じるタンパク質を含むことを意味する。哺乳
動物の天然のmRNAに実質的に一致する核酸配列から、またはcDNAまたはその断片
に実質的に一致する核酸配列から、このような組み換え型タンパク質を生産することがで
きる。本技術分野において用途が知られている特定の宿主細胞のコドンに従って、この配
列を調節することができる。
【0060】
二つの核酸またはポリペプチドに照らして、「実質的に一致する」というフレーズは、
タンパク質のドメイン全体にわたって最も一致するように揃えて、本技術分野において公
知のアルゴリズムを用いて測定した場合に、二つの配列において、残基が少なくとも50
%、60%、70%、80%、90%またはそれを超える同一性を有することを意味する
。比較のために配列を最大限揃えることを、本技術分野において公知のアルゴリズム(た
とえばSmith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2: 482; Needleman and Wunsch (1
970) J. Mol. Biol. 48: 443; Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. US
A 85: 2444 ; Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410 (BLAST))によって
、これらのアルゴリズムをコンピュータで実施することによって(Wisconsin Genetics So
ftware Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr. , Madison, Wis.のGAP、B
ESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または検査によって実施することができる。BLAST分析
を実施するためのソフトウェアは、全国バイオテクノロジー情報センター(http ://www.
ncbi. nlm. nih. gov/)を通して公に利用することができる。
【0061】
「断片」という用語は、ヌクレオチド、タンパク質またはペプチドの配列の一部の配列
または部分配列を意味する。
【0062】
本明細書で用いられるように、「可溶性」という用語は、生理学的条件下の緩衝液で1
0−30分間回転させた場合において、約5,000×重力〜20,000×重力の間で
の遠心分離によって、タンパク質が沈殿しないことを意味する。可溶性タンパク質は、封
入体またはその他の沈殿物の一部分ではない。
【0063】
本明細書で用いられるように、「不溶性」という用語は、生理学的条件下の緩衝液で1
0−30分間回転させた場合において、5,000×重力〜20,000×重力の間での
遠心分離によって沈殿し得るタンパク質を意味する。不溶性タンパク質は、封入体または
その他の沈殿物の一部分であり得る。
【0064】
「封入体」という用語は、細胞内に含まれる任意の細胞内の物体であって、タンパク質
の封鎖された凝集物を包含することを意味する。
【0065】
本明細書で用いられるように、「相同」という用語は、i)所定のオリジナルのタンパ
ク質の配列と少なくとも70、75、80、85、90、95または98%類似したアミ
ノ酸配列を有するタンパク質であって、オリジナルのタンパク質の所望の機能を保持する
ものか、またはii)所定の核酸の配列と少なくとも70、75、80、85、90、9
5または98%類似した配列を有する核酸であって、オリジナルの核酸配列の所望の機能
を保持するもの、のいずれかを意味する。本発明および開示のすべての実施形態において
は、開示された任意のタンパク質、ペプチドまたは核酸を、所望の機能を保持する、相同
または実質的に相同なタンパク質、ペプチドまたは核酸と置換することができる。本発明
および開示のすべての実施形態において、任意の核酸が開示される場合、本発明は、その
開示される核酸にハイブリッド形成するすべての核酸をも包含するものとみなされるべき
である。
【0066】
一つの制限されない実施形態においては、相同なポリペプチドの同一ではないアミノ酸
配列は、表1に示される15の保存的または半保存的な基のいずれか一つの一員であるア
ミノ酸であり得る。
【表1】

【0067】
生産された哺乳動物のタンパク質のタイプ
一般的に、哺乳動物の組み換え型タンパク質は、そのアミノ酸配列が、公知のあらゆる
哺乳動物のタンパク質、またはアミノ酸配列が推定されるあらゆる推定される哺乳動物タ
ンパク質又は哺乳動物に由来するタンパク質であり得る。このタンパク質を、複数サブユ
ニット型のタンパク質、血液運搬タンパク質、酵素、全長抗体、抗体断片または転写因子
からなる群より選択することができる。
【0068】
タンパク質のアミノ酸配列を改変して、所望の特質に調節すること、たとえば相互作用
の特定のタイプを保証することができる。この配列を調節して、たとえばその免疫反応性
を調節して小さくしたり、または吸光度を高めたり、排出を抑制したり、さもなければ生
命体、具体的には哺乳動物におけるバイオアベイラビリティを促進することができる。従
って、このタンパク質のアミノ酸配列を調節して、特定の翻訳後修飾またはタンパク質の
立体配置を保証することができる。
【0069】
一つの実施形態においては、哺乳動物のタンパク質はケモカインまたはサイトカインで
ある。別の実施形態においては、哺乳動物のタンパク質は、次のタンパク質のいずれか一
つである:IL−1、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−
5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、
IL−12elasti、IL−13、IL−15、IL−16、IL−18、IL−1
8BPa、IL−23、IL−24、VIP、エリスロポエチン、GM−CSF、G−C
SF、M−CSF、血小板由来増殖因子(PDGF)、MSF、FLT−3リガンド、E
GF、線維芽細胞増殖因子(FGF;たとえばaFGF(FGF−1)、bFGF(FG
F−2)、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6またはFGF−7)、イン
スリン様増殖因子(たとえばIGF−1、IGF−2);腫瘍壊死因子(たとえばTNF
、リンホトキシン)、神経成長因子(たとえばNGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)
;インターフェロン(たとえばIFN−α、IFN−β、IFN−γ);白血病抑制因子
(LIF);毛様体神経栄養因子(CNTF);オンコスタチンM;幹細胞因子(SCF
);トランスフォーミング増殖因子(たとえばTGF−α、TGF−β1、TGF−β1
、TGF−β1);TNFスーパーファミリー(たとえばLIGHT/TNFSF14、
STALL−l/TNFSF13B(BLy5、BAFF、THANK)、TNFアルフ
ァ/TNFSF2およびTWEAK/TNFSF12);またはケモカイン(BCA−1
/BLC−1、BRAK/Kec、CXCL16、CXCR3、ENA−78/LIX、
エオタキシン−1、エオタキシン−2/MPIF−2、エクソダス−2/SLC、フラク
タルカイン/ニューロタクチン、GROアルファ/MGSA、HCC−1、I−TAC、
リンフォタクチン/ATAC/SCM、MCP−1/MCAF、MCP−3、MCP−4
、MDC/STCP−1/ABCD−1、MIP−1α、MIP−1β、MIP−2α/
GROβ、MIP−3α/エクソダス/LARC、MIP−3α/エクソダス−3/EL
C、MIP−4/PARC/DC−CK1、PF−4、RANTES、SDF1α、TA
RCまたはTECK)。
【0070】
あるいは、このタンパク質はケモカインまたはサイトカインではない。別の実施形態に
おいては、哺乳動物のタンパク質は、次のタンパク質の一つではない:IL−1、IL−
1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、I
L−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−12elasti、I
L−13、IL−15、IL−16、IL−18、IL−18BPa、IL−23、IL
−24、VIP、エリスロポエチン、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、血小板由
来増殖因子(PDGF)、MSF、FLT−3リガンド、EGF、線維芽細胞増殖因子(
FGF;たとえばaFGF(FGF−1)、bFGF(FGF−2)、FGF−3、FG
F−4、FGF−5、FGF−6またはFGF−7)、インスリン様増殖因子(たとえば
IGF−1、IGF−2);腫瘍壊死因子(たとえばTNF、リンホトキシン)、神経成
長因子(たとえばNGF)、血管内皮増殖因子(VEGF);インターフェロン(たとえ
ばIFN−α、IFN−β、IFN−γ);白血病抑制因子(LIF);毛様体神経栄養
因子(CNTF);オンコスタチンM;幹細胞因子(SCF);トランスフォーミング増
殖因子(たとえばTGF−α、TGF−β1、TGF−β1、TGF−β1);TNFス
ーパーファミリー(たとえばLIGHT/TNFSF14、STALL−1/TNFSF
13B(BLy5、BAFF、THANK)、TNFアルファ/TNFSF2およびTW
EAK/TNFSF12);またはケモカイン(BCA−1/BLC−1、BRAK/K
ec、CXCL16、CXCR3、ENA−78/LIX、エオタキシン−1、エオタキ
シン−2/MPIF−2、エクソダス−2/SLC、フラクタルカイン/ニューロタクチ
ン、GROアルファ/MGSA、HCC−1、I−TAC、リンフォタクチン/ATAC
/SCM、MCP−1/MCAF、MCP−3、MCP−4、MDC/STCP−l/A
BCD−1、MIP−1α、MIP−1β、MIP−2α/GROβ、MIP−3α/エ
クソダス/LARC、MIP−3α/エクソダス−3/ELC、MIP−4/PARC/
DC−CK1、PF−4、RANTES、SDF1α、TARCまたはTECK)。一つ
の実施形態においては、このタンパク質はブタタンパク質ではなく、特にブタ増殖因子で
はない。
【0071】
現時点での本開示のさらなる実施形態では、哺乳動物の組み換え型タンパク質、それら
の断片またはその他の誘導体またはそれらのアナログは抗体であり得る。これらの抗体と
しては、たとえば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。本発明の
この側面としては、キメラ性の抗体、一本鎖抗体、およびヒト化抗体、ならびにFab断
片またはFab発現ライブラリーの産物も挙げられる。
【0072】
複数サブユニット型のタンパク質の生産
本発明の一つの実施形態においては、シュードモナス種の宿主細胞による、哺乳動物の
組み換え型の複数サブユニット型タンパク質の生産が提供される。別の実施形態において
は、哺乳動物の組み換え型の複数サブユニット型タンパク質を発現するように形質転換さ
れたシュードモナス種の宿主細胞が提供される。一つの実施形態においては、複数サブユ
ニット型のタンパク質、たとえば哺乳動物またはヒトの組み換え型タンパク質、がシュー
ドモナスの宿主細胞内で発現する。一つの実施形態においては、宿主細胞による複数サブ
ユニット型のタンパク質の発現の後、複数サブユニット型のタンパク質が単離される。別
の実施形態においては、ペプチドの複数サブユニット型のタンパク質が精製される。この
タンパク質は、精製もしくは単離前の細胞によって会合することができ、または単離もし
くは精製の間もしくは後で、さらに会合することができる。必要に応じて、このタンパク
質またはその任意の一部の復元または再折りたたみを行って、活性なタンパク質を生産す
ることができる。
【0073】
種々のベクターおよび発現系のあらゆるものを用いて、宿主細胞内で複数サブユニット
型のタンパク質を発現させることができる。この複数サブユニットを単一のベクター上に
位置させてもよく、必要に応じて種々のプロモーターに機能するように結合させてもよく
、必要に応じてポリシストロン配列内に位置させてもよい。それぞれのサブユニットが異
なるベクター上にあってもよい。複数のベクターを用いることができる。それぞれのサブ
ユニットが、一つ以上の選択マーカーの制御下にあってもよい。調節エレメントをベクタ
ー上、たとえばペリプラズムの分泌シグナル配列、インターナルリボゾームエントリーサ
イト、アクチベーター配列、プロモーターおよび終止シグナル上に含めてもよい。
【0074】
一つの実施形態においては、2004年11月19日にDow Global Tec
hnologies社から出願された米国特許出願第10/994,138号に記載され
ているように、栄養素要求性選択マーカーを伴う発現系を用いて、シュードモナス内で複
数サブユニット型のタンパク質が発現される。この出願では、サブユニットをコードする
それぞれの核酸の制御が、栄養素要求性選択マーカーの制御下にある。発現することが可
能な複数サブユニット型のタンパク質としては、ホモメリックタンパク質およびヘテロメ
リックタンパク質が挙げられる。複数サブユニット型のタンパク質は二以上のサブユニッ
トを含んでもよく、サブユニットは同一でも異なっていてもよい。たとえば、このタンパ
ク質は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超えるサブユニ
ットを含むホモメリックタンパク質であってもよい。このタンパク質は、2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超えるサブユニットを含むヘテロメリ
ックタンパク質であってもよい。
【0075】
哺乳動物の複数サブユニット型のタンパク質の具体例としては:レセプター、たとえば
イオンチャネルレセプター;シグナルタンパク質、たとえばキナーゼ、GTPアーゼ、A
TPアーゼ;膜貫通型タンパク質;細胞外マトリックスタンパク質、たとえばコンドロイ
チン;コラーゲン;免疫調整剤、たとえばMHCタンパク質、全鎖抗体および抗体断片;
酵素、たとえばRNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ;ならびに膜タンパク質が
挙げられる。
【0076】
血液タンパク質の生産
本発明の一つの実施形態においては、哺乳動物の組み換え型血液タンパク質を生産する
ことが提供される。一つの実施形態においては、宿主細胞による血液タンパク質の発現に
続けて、血液タンパク質が単離される。別の実施形態においては、血液タンパク質が精製
される。別の実施形態においては、血液タンパク質を単離した後、血液タンパク質が精製
される。必要に応じて、このタンパク質の復元または再折りたたみを行って、活性なタン
パク質を生産することができる。一般的に、適切な宿主細胞、たとえばシュードモナス・
フルオレッセンス宿主細胞を、血液タンパク質をコードする核酸構築物で形質転換する工
程、形質転換された宿主細胞を、発現に適した条件下で培養する工程、そして任意に、そ
の細胞によって発現された組み換え型血液タンパク質を単離し、または単離して精製する
工程によって、本発明の組み換え型血液タンパク質を生産する。
【0077】
別の実施形態においては、哺乳動物の組み換え型血液タンパク質を発現するように、提
供される対象の血液タンパク質の発現に適切な遺伝子および調節エレメントを含むベクタ
ーで形質転換された、シュードモナスシュードモナス種の宿主細胞が提供される。
【0078】
発現することができる血液タンパク質としては、たとえばこれらに限定されるわけでは
ないが、運搬タンパク質、たとえばアルブミン、具体的にはヒトアルブミン(配列番号:
1、表2)およびウシアルブミン;トランスフェリン、たとえばヒトトランスフェリン(
配列番号:2、表2)、ウシトランスフェリン、ラットトランスフェリン、組み換え型ト
ランスフェリン、組み換え型トランスフェリンの半分子、特性が改変された組み換え型ト
ランスフェリンの半分子;ハプトグロビン;フィブリノーゲンおよびその他の凝固因子;
補体成分;免疫グロブリン;酵素インヒビター;基質前駆体、たとえばアンギオテンシン
およびブラジキニン;インスリン;エンドセリン;グロブリン、たとえばアルファ、ベー
タおよびガンマ−グロブリン;ならびに哺乳動物の血中に主に見られるその他のタイプの
タンパク質、ペプチドおよびそれらの断片が挙げられる。多数の血液タンパク質について
、アミノ酸配列が報告されており(S. S. Baldwin (1993) Comp. Biochem Physiol. 106b
: 203-218を参照すること)、たとえば、ヒト血清アルブミン(Lawn, L. M., et al. (198
1) Nucleic Acids Research 9: 22; pp 6103-6114)およびヒト血清トランスフェリン(Yan
g, F. el al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81; pp. 2752-2756)についてのアミ
ノ酸配列が挙げられる。
【0079】
具体的な実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス内でのアルブミンの
生産が提供され、アルブミンの発現のための単数または複数の核酸配列と調節エレメント
とを含む発現ベクターで、シュードモナス・フルオレッセンス宿主細胞を形質転換する工
程、アルブミンの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する工程、およびシュードモナス
・フルオレッセンスによって発現されたアルブミンを回収する工程を含む。この実施形態
によると、発現されるアルブミンは、ヒトアルブミン、ウシアルブミン、ウサギアルブミ
ン、ニワトリアルブミン、ラットアルブミンおよびマウスアルブミンからなる群より選択
される。別の実施形態においては、アルブミンを治療的に活性なポリペプチドと融合する
ことができ、このポリペプチドは、哺乳動物起源でも、または非哺乳動物起源でもよい。
【0080】
さらに具体的な実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス内でのトラン
スフェリンの生産が提供され、トランスフェリンの発現のための核酸と調節エレメントと
を含む発現ベクターで、シュードモナス・フルオレッセンス宿主細胞を形質転換する工程
、トランスフェリンの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する工程を含む。別の実施形
態においては、トランスフェリンの発現後、および一つの実施形態においてはタンパク質
を単離する工程。さらなる実施形態においては、単離後にトランスフェリンを精製するこ
とができる。発現されるトランスフェリンは、ヒト血清トランスフェリン、グリコシル化
ヒトトランスフェリン、非グリコシル化ヒトトランスフェリン、ヒトトランスフェリンの
N末端の半分子、ウシトランスフェリン、ラットトランスフェリン、マウストランスフェ
リン、霊長類のトランスフェリン、組み換え型トランスフェリン、組み換え型トランスフ
ェリンの半分子、特性が改変された組み換え型トランスフェリンの半分子、トランスフェ
リンポリヌクレオチド、トランスフェリンポリペプチドにコードされたトランスフェリン
ポリペプチド、トランスフェリンポリペプチド、トランスフェリン抗体、トランスフェリ
ン断片および治療的に活性なポリペプチドに融合したトランスフェリンからなる群より選
択される。
【0081】
さらに別の実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス内でのグロブリン
の生産が提供され、グロブリンの発現のための核酸と調節エレメントとを含む発現ベクタ
ーで、シュードモナス・フルオレッセンス宿主細胞を形質転換する工程、グロブリンの発
現に適した条件下で宿主細胞を培養する工程、および必要に応じてタンパク質を単離する
工程を含む。さらなる実施形態においては、発現の後にグロブリンを単離し、宿主細胞か
ら精製される。発現されるグロブリンは、ヒトグロブリン、ウシグロブリン、ウサギグロ
ブリン、ラットグロブリン、マウスグロブリン、ヒツジグロブリン、サルグロブリン、ス
テロイド結合グロブリンおよび治療的に活性なポリペプチドと融合したグロブリンからな
る群より選択される。
【0082】
さらなる実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス内でのインスリンの
生産が提供され、インスリンの発現のための核酸と調節エレメントとを含む発現ベクター
で、シュードモナス・フルオレッセンス宿主細胞を形質転換する工程、インスリンの発現
に適した条件下で宿主細胞を培養する工程、および任意にタンパク質を単離する工程を含
む。さらなる実施形態においては、宿主細胞によってインスリンを生産した後、インスリ
ンを単離し精製することができる。発現されるインスリンは、ヒトインスリン、ウシイン
スリン、マウスインスリン、ラットインスリン、ブタインスリン、サルインスリンおよび
治療的に活性なポリペプチドと融合したインスリンからなる群より選択される。ヒトイン
スリンの遺伝子についての受入番号はJ00265であり、合成されたヒトインスリンの
遺伝子についての受入番号はJ02547である。
【0083】
組み換え型血液タンパク質を生産するための全長DNA、または血液タンパク質または
その部分のアミノ末端部もしくはカルボキシ末端部のいずれかをコードする切断型DNA
を、利用可能な源から得ることができるか、または標準的な手法による公知の配列に従っ
て合成することができる。
【表2】

【0084】
酵素の生産
本発明の一つの実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス種の宿主細胞
による哺乳動物の組み換え型酵素またはコファクターの生産が提供される。別の実施形態
においては、哺乳動物の組み換え型酵素またはコファクターを発現するように形質転換さ
れたシュードモナス種の宿主細胞が提供される。
【0085】
本実施形態において発現される酵素およびコファクターとしては、たとえばこれらに限
定されるわけではないが、アルドラーゼ、アミンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、
アスパルターゼ、B12依存性酵素、カルボキシペプチダーゼ、カルボキシエステラーゼ、
カルボキシリアーゼ、ケモトリプシン、CoA要求性酵素、シアノヒドリンシンテターゼ
、シスタチオンシンターゼ、デカルボキシラーゼ、デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒド
ロゲナーゼ、デヒドラターゼ、ジアフォラーゼ、ジオキシゲナーゼ、エノアートレダクタ
ーゼ、エポキシドヒドラーゼ、フメラーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースイソ
メラーゼ、グルコースオキシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、メチルトランスフ
ェラーゼ、ニトリルヒドラーゼ、ヌクレオシドホスホリラーゼ、オキシドレダクターゼ、
オキシニチラーゼ、ペプチダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼお
よび治療的に活性なポリペプチドに融合した酵素が挙げられる。
【0086】
別の実施形態においては、酵素は中温性酵素のポリペプチド、たとえばヒトおよび/ま
たは獣医上の治療および/または診断用途に適したものでもよい。このような治療用の中
温性酵素の例としては、たとえば、組織プラスミノゲンアクチベータ;ウロキナーゼ、レ
プチラーゼ、ストレプトキナーゼ;カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ;DNア
ーゼ、アミノ酸ヒドロラーゼ(たとえばアスパラギナーゼ、アミドヒドロラーゼ);カル
ボキシペプチダーゼ;プロテアーゼ、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、パパイン
、ブロメライン、コラゲナーゼ;ノイラミニダーゼ;ラクターゼ、マルターゼ、スクラー
ゼおよびアラビノフラノシダーゼが挙げられる。
【0087】
さらに別の実施形態では、組み換え型酵素代替物の発現のための核酸と調節エレメント
とを含む発現ベクターで、シュードモナス・フルオレッセンス宿主細胞を形質転換する工
程、および組み換え型酵素代替物の発現に適した条件下でその細胞を培養する工程による
、シュードモナス・フルオレッセンス細胞内での組み換え型酵素代替物の生産が提供され
る。宿主細胞内で発現される組み換え型酵素代替物は、アルガシダーゼ・ベータ、ラロニ
ダーゼおよび治療的に活性なポリペプチドに融合した組み換え型酵素代替物からなる群よ
り選択される。
【0088】
哺乳動物の抗体および抗体断片の生産
本発明の一つの実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス種の宿主細胞
による、哺乳動物の組み換え型の一本鎖、Fab断片および/または全鎖抗体またはそれ
らの断片もしくは部分の生産が提供される。一つの実施形態においては、タンパク質の発
現の後、そのタンパク質を単離することができ、任意に精製することができる。必要に応
じて、このタンパク質を復元して、活性なタンパク質を生産することができる。生産の間
に、この抗体または抗体断片を、任意に、細胞内での標的としての分泌シグナル配列に結
合する。
【0089】
別の実施形態においては、哺乳動物の組み換え型の一本鎖、Fab断片および/または
全鎖抗体またはそれらの断片もしくは部分を発現するように形質転換された、シュードモ
ナス種の宿主細胞が提供される。
【0090】
一つの実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス細胞は、一本鎖抗体ま
たはそれらの断片もしくは部分を生産することができる。一本鎖抗体には、安定的に折り
たたまれた単一のポリペプチド鎖上の、抗体の抗原結合領域が含まれ得る。一本鎖抗体は
、伝統的な免疫グロブリンよりもそのサイズが小さいが、抗体の抗原特異的結合特性を保
持することができる。一本鎖抗体を治療、たとえば「むき出しの」一本鎖抗体、二重特異
性抗体バインダー、放射性複合体、またはエフェクタードメインとの融合体、診断薬、た
とえば腫瘍の画像化もしくはインビボもしくはエクスビボのガンマーカーアッセイ、研究
道具、たとえばタンパク質精製および検出、具体的には新規の治療用標的の同定およびキ
ャラクタライゼーション、抗体マイクロアレイ、表示技術および/または遺伝子もしくは
薬物送達のための媒体に用いることができる。
【0091】
別の実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス細胞は、Fab断片また
はその部分を生産する。Fab断片は特定の抗体の一部でもよい。Fab断片は抗原結合
部位を含むことができる。Fab断片は2本の鎖:軽鎖断片および重鎖断片を含むことが
できる。これらの断片を、リンカーまたはジスルフィド結合を解して結合することができ
る。
【0092】
本発明のその他の実施形態においては、全鎖抗体を、シュードモナス・フルオレッセン
ス内、およびその他のシュードモナス種内で発現させることができる。Fc領域を含むイ
ンタクトな抗体はインビボでの分解およびクリアランスに対してより強く抵抗することが
でき、それによって、血液循環においてより長い生物学的半減期を有する。このような抗
体を、継続した治療が必要な疾患のための治療剤として用いることができる。
【0093】
一つの実施形態においては、別個のシストロン配列またはポリシストロン配列を含む発
現ベクターを提供することによる、シュードモナス種内で機能を有する抗体またはその断
片を生産する方法が提供される。別個のシストロン発現ベクターは、軽鎖および重鎖の発
現が、別個のプロモーターによって独立して制御されるように、免疫グロブリンの軽鎖を
発現させるための第一のプロモーター−シストロンペアと、免疫グロブリンの重鎖を発現
させるための第二のプロモーター−シストロンペアとを含むことができる。発現カセット
のポリヌクレオチド内のそれぞれのシストロンは、全長抗体の軽鎖または重鎖をコードす
る核酸配列に機能するように結合した翻訳開始領域(TIR)を含み得る。一つの実施形
態においては、TIR配列を操作して、軽鎖および重鎖についての異なる翻訳強度の組み
合わせを提供することができる。代替的な実施形態においては、重鎖コード配列は、軽鎖
コード配列と同じプラスミド上に位置することができる。代替的な実施形態においては、
重鎖配列および軽鎖配列は、単一のプラスミド内におけるポリシストロン配列に見られる
か、または宿主のゲノム内にコードされる。
【0094】
別の実施形態においては、機能を有する抗体の軽鎖および重鎖をそれぞれコードする二
つの別個の翻訳単位で形質転換された宿主細胞内で、その抗体またはその断片を生産する
ための方法が提供される。一つの実施形態においては、この方法は次の工程を含む:a)
軽鎖および重鎖が逐次的に発現するように、それに適する条件下で宿主細胞を培養し、そ
れによって軽鎖および重鎖の生産を時間的に分ける工程;ならびにb)軽鎖および重鎖を
会合させて、機能を有する抗体またはその断片を形成させる工程。
【0095】
さらなる実施形態においては、シュードモナスの発現系は、治療用のヒト一本鎖、Fa
b断片もしくは全鎖抗体またはそれらの部分、たとえばこれらに限定されるわけではない
が、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)2−ロイシンジッパー、Fv、ds
Fv、抗CD18抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または以下の表3に記載さ
れたもの、を発現することができる。
【表3】



【0096】
転写因子の生産
本発明の一つの実施形態においては、シュードモナス・フルオレッセンス種の宿主細胞
による哺乳動物の組み換え型転写因子の生産が提供される。一つの実施形態においては、
タンパク質発現の後、そのタンパク質を単離することができる。別の実施形態においては
、そのタンパク質を精製することができる。必要に応じて、このタンパク質を復元して、
活性なタンパク質を生産させることができる。別の実施形態においては、哺乳動物の組み
換え型転写因子を発現するように形質転換された、シュードモナス種の宿主細胞が提供さ
れる。
【0097】
本発明の発現系内への挿入に適する転写因子としては、ヘリックス・ターン・ヘリック
ス・ファミリーおよびPacファミリーのメンバー、ならびに本技術分野において公知の
その他の転写因子ファミリーのものが挙げられる。本発明での使用に適するこれらのファ
ミリーのメンバーとしては、哺乳動物および哺乳動物のホモログおよびアナログ:転写レ
ギュレータ;ASNCファミリーの転写因子、たとえばASNC_trans_reg、
推定される転写レギュレータ;luxRファミリーの細菌調節タンパク質;細菌調節ヘリ
ックス・ターン・ヘリックス転写因子;arsRファミリーの細菌調節タンパク質;ヘリ
ックス・ターン・ヘリックスドメインの転写因子、特にrpiRファミリー;細菌調節タ
ンパク質転写因子、細菌調節ヘリックス・ターン・ヘリックス転写因子;DNA結合ドメ
イン転写因子;転写因子のMarRファミリー;転写因子のROKファミリー;調節タン
パク質のMerRファミリー;アルギニンリプレッサー転写因子;フィルミキュート転写
因子;鉄取り込み調節転写因子;シグマ転写因子;応答調節レシーバー転写因子;トリプ
トファンRNA結合アテニュエータータンパク質転写因子;推定される糖結合ドメイン転
写因子;PRDドメイン転写因子;窒素調節タンパク質転写因子;遺伝能力のネガティブ
レギュレータ、たとえばMecA;ネガティブ転写レギュレータ転写因子;細菌転写レギ
ュレータ転写因子;グリセロール−3−リン酸反応性転写因子;鉄依存性リプレッサー転
写因子;および転写レギュレータ転写因子に特異的な多数の種が挙げられる。
【0098】
シュードモナス種によって発現される転写因子を、診断用、治療用および研究用に利用
することができる。
【0099】
ベクターの調製
ポリヌクレオチド
哺乳動物の組み換え型タンパク質およびペプチドを、そこから宿主細胞がそのタンパク
質を発現させることができるところの機能遺伝子を形成する転写調節エレメントおよび翻
訳調節エレメントに、その中の標的ポリペプチドのコード配列が機能するように結合した
ポリヌクレオチドから発現させることができる。このコード配列は、入手できるのであれ
ば、標的ポリペプチドについての天然のコード配列であり得るが、選択された発現用宿主
細胞で用いるために:たとえば、シュードモナス種、たとえばシュードモナス・フルオレ
ッセンスのコドン使用頻度(bias)を反映した遺伝子を合成することによって、選択された
、改良されたまたは最適化されたコード配列を用いることもできる。結果として生じるこ
れらの遺伝子は、一つ以上のベクター内に構築されるか、またはそのベクター内に挿入さ
れることになり、次いで発現用の宿主細胞内に形質転換されるだろう。「発現可能な型」
で提供されると言われる核酸またはポリヌクレオチドとは、選択された細菌の発現用宿主
細胞によって発現され得る少なくとも一つの遺伝子を含む核酸またはポリヌクレオチドを
意味する。
【0100】
調節エレメント
本明細書で用いられる調節エレメントは、遺伝子をコードする標的の哺乳動物の組み換
え型タンパク質に、機能するように結合することができる。本明細書で用いられるタンパ
ク質をコードする遺伝子コード配列は、成熟したポリペプチドのコード配列および転写調
節エレメントに加えて、さらにコード化エレメント、たとえば一つ以上のペプチドタグ、
プレペプチド、プロペプチド、プレプロペプチドについてのコード配列、または選択され
た発現用宿主細胞内で機能する分泌シグナルペプチド以外の、本技術分野において公知の
その他の一般的に利用されるコード化エレメントを含むことができる。
【0101】
本明細書で用いられるように、「機能するように結合した」という用語は、転写調節エ
レメントおよび任意の翻訳調節エレメントがその中で、コード配列に関連して、調節エレ
メントがコード配列を直接発現させることができるような配置でコード配列と共有結合し
ているところの任意の立体配置を意味する。一つの実施形態においては、調節エレメント
は宿主細胞内に形質転換される前の全遺伝子の一部であろう;しかしながら、その他の実
施形態においては、調節エレメントは別の遺伝子の一部であり、その遺伝子は、宿主のゲ
ノムの一部、別の生命体のゲノムの一部、またはそれらに由来するものであり得る。
【0102】
プロモーターおよびアクセサリーエレメント
本発明により使用されるプロモーターは構成的プロモーターでもよく、または調節プロ
モーターでもよい。有用な調節プロモーターの一般的な例としては、lacプロモーター
(すなわちlacZプロモーター)に由来するファミリーのもの、特にDeBoerによ
る米国特許第4,551,433号に記載のtacプロモーターおよびtrcプロモータ
ー、ならびにPtac16、Ptac17、PtacII、PlacUV5およびT7l
acプロモーターが挙げられる。
【0103】
本発明による発現系に有用な非lac型プロモーターの一般的な例としては、たとえば
、表4に列挙されたものが挙げられる。
【表4】

【0104】
たとえば、次のものを参照すること:J. Sanchez-Romero and V. De Lorenzo (1999) M
anual of Industrial Microbiology and Biotechnology (A. Demain and J. Davies, eds
.) pp.460-74 (ASM Press, Washington, D.C.); H. Schweizer (2001) Current Opinion
in Biotechnology, 12:439-445; and R. Slater and R. Williams (2000) Molecular Bio
logy and Biotechnology (J. Walker and R. Rapley, eds.) pp.125-54。選択された細菌
の宿主細胞を起源とするプロモーターのヌクレオチド配列を有するプロモーターを用いて
、ターゲットポリペプチド、たとえばシュードモナスのアントラニル酸塩または安息香酸
塩オペロンプロモーター(Pant,Pben)をコードする導入遺伝子の発現をコント
ロールしてもよい。配列が同一か否かにもかかわらず、その中で二つ以上のプロモーター
が別のものと共有結合しているタンデムプロモーター、たとえば、Pant−Pbenタ
ンデムプロモーター(プロモーター間のハイブリッド)またはPlac−Placタンデ
ムプロモーターを用いてもよい。
【0105】
調節プロモーターは、プロモーターがその一部である遺伝子の転写をコントロールする
ために、プロモーター調節タンパク質を利用する。本明細書で調節プロモーターを用いる
場合、対応するプロモーター調節タンパク質も本発明による発現系の一部となるだろう。
プロモーター制御タンパク質の例としては:アクチベータタンパク質たとえばエシェリキ
ア・コリのカタボライトアクチベータタンパク質、MalTタンパク質;AraCファミ
リー転写活性化因子;リプレッサータンパク質、たとえばエシェリキア・コリのLacI
タンパク質;および二重機能制御タンパク質、たとえばエシェリキア・コリのNagCタ
ンパク質が挙げられる。多数の調節プロモーター/プロモーター制御タンパク質のペアが
本技術分野において知られている。
【0106】
プロモーター制御タンパク質は、プロモーターのコントロール下で、遺伝子の少なくと
も一つのDNA転写制御領域から離れるかまたは結合することができるように、エフェク
ター化合物、すなわちその制御タンパク質と可逆的にまたは不可逆的に結合する化合物と
相互作用する。それによって、遺伝子の転写を開始する際に、転写酵素の作用を可能にし
たりまたは阻止する。エフェクター化合物はインデューサーまたはコリプレッサーのいず
れかとして分類され、これらの化合物は天然のエフェクター化合物および無償性のインデ
ューサー化合物を含む。多数の調節プロモーター/プロモーター制御タンパク質/エフェ
クター化合物のトリオが本技術分野において知られている。細胞培養または発酵の間を通
してエフェクター化合物を用いることができるが、調節プロモーターを用いる一つの実施
形態においては、宿主細胞の生物体量が所望の量または密度にまで培養した後、適切なエ
フェクター化合物を順番に直接的にまたは間接的に培養液に添加し、その結果、所望の単
数(または複数)のターゲット遺伝子を発現させる。
【0107】
一例として、lacプロモーターのファミリーを利用する場合、lacI遺伝子が系内
に存在してもよい。このlacI遺伝子、(通常は)構成的に発現された遺伝子である、
は、これらのプロモーターのlacオペレーターと結合するLacリプレッサータンパク
質(LacIタンパク質)をコードする。従って、lacプロモーターのファミリーを利
用する場合、lacI遺伝子をその発現系内に含ませてその中で発現させることができる
。lacプロモーターのファミリーの一員、たとえばtacプロモーターの場合において
は、エフェクター化合物はインデューサーであり、好ましくは無償性のインデューサー、
たとえばIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド、「イソプロピ
ルチオガラクトシド」とも称される)である。
【0108】
その他のエレメント
その他の調節エレメントは、発現構築物内に含まれてもよい。このようなエレメントと
しては、たとえばこれらに限定されるわけではないが、転写エンハンサー配列、翻訳エン
ハンサー配列、その他のプロモーター、アクチベータ、翻訳開始シグナルおよび翻訳終止
シグナル、転写ターミネーター、シストロニックレギュレーター、ポリシストロニックレ
ギュレーター、タグ配列、たとえばヌクレオチド配列の「タグ」および「タグ」ペプチド
コード配列、であって、発現されたポリペプチドの同定、分離、精製または単離を促進さ
せるものが挙げられる。
【0109】
本発明によるタンパク質をコードする遺伝子は少なくとも、哺乳動物のタンパク質のコ
ード配列に加えて、機能できるように結合した次の調節エレメント:プロモーター、リボ
ソーム結合部位(RBS)、転写ターミネーター、翻訳開始シグナルおよび翻訳終止シグナル
を含むことができる。発現系において宿主細胞として有用な種のいずれかから、たとえば
選択された宿主細胞から、有用なRBSを得ることができる。多くの種および種々のコン
センサスRBSが知られており、たとえば、D. Frishmanら(1999)、Gene 234(2):257-65
;およびB.E. Suzekら(2001)、Bioinformatics 17(12): 1123-30に記載され引用されるも
のである。さらに、天然のまたは合成のいずれかのRBSを用いてもよく、たとえば EP
0207459号(合成RBS);O. Ikehata et al.(1989)、Eur. J. Biochem
. 181(3):563-70 (天然のRBS配列のAAGGAAG)に記載のものである。本発明に
おいて有用な方法、ベクターおよび翻訳エレメントおよび転写エレメント、ならびにその
他のエレメントのさらなる例は、たとえば、Gilroyらによる米国特許第5,055
,294号および第5,128,130号;Rammlerらによる第5,281,53
2号;Barnesらによる第4,695,455号および第4,861,595号;G
rayらによる第4,755,465号;ならびにWilcoxによる第5,169,7
60号に記載されている。
【0110】
ベクター
本発明の酵素をコードするDNAのシュードモナスによる転写を、エンハンサー配列を
ベクターまたはプラスミド内に挿入することによって促進させる。典型的なエンハンサー
は、プロモーターに作用してその転写を促進させる、通常約10から300bpのサイズ
のシス作用性DNAエレメントである。例としては、本明細書の他の箇所に記載されたよ
うな種々のシュードモナスのエンハンサーが挙げられる。
【0111】
一般的に、組み換え発現ベクターは、シュードモナスの宿主細胞の形質転換を可能とす
る複製起点および選択マーカー、たとえばシュードモナス・フルオレッセンスの抗生物質
を含まない耐性遺伝子、ならびに下流の構造配列の転写を導くための高度に発現された遺
伝子に由来するプロモーターを含むだろう。このようなプロモーターは、酵素、たとえば
3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、酸性ホスファターゼまたは特に熱ショックタン
パク質をコードするオペロンに由来するものでもよい。適切な段階で、翻訳開始配列およ
び翻訳終止配列、そして一つの実施形態においては翻訳後の酵素の分泌を導くことが可能
なリーダー配列を伴う異種構造配列が集合する。任意に、この異種配列が、所望の特性、
たとえば安定性または発現された組み換え型生産物を容易に精製できることを付与するN
−末端同定ペプチドを含む融合酵素をコードしてもよい。
【0112】
酵素の発現の際にシュードモナス・フルオレッセンスで用いるのに有用な発現ベクター
を、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を適切な翻訳開始シグナルおよび終止
シグナルと共に、機能的プロモータを有する読み取り可能なリーディング相に挿入するこ
とによって構築する。このベクターは、一つ以上の表現型選択マーカーおよびベクターの
維持を確かにするための複製起点を含むことになり、必要であれば、宿主内での増幅能が
付与される。
【0113】
本技術分野において、ベクターは、宿主細胞内で組み換え型タンパク質を発現させるた
めに有用なものとして知られており、それらのいずれかを、本発明による遺伝子を発現さ
せるために用いてもよい。このようなベクターとしては、たとえばプラスミド、コスミド
およびファージ発現ベクターが挙げられる。有用なプラスミドベクターの例としては、た
とえばこれらに限定されるわけではないが、発現プラスミドpBBR1MCS、pDSK
519、pKT240、pML122、pPS10、RK2、RK6、pRO1600お
よびRSF1010が挙げられる。このような有用なベクターのその他の例としては、た
とえば:N. Hayase (1994) Appl. Envir. Microbiol. 60(9):3336-42; A.A. Lushnikov e
t al. (1985) Basic Life Sci. 30:657-62; S. Graupner and W. Wackernagel (2000) Bi
omolec. Eng. 17(1):11-16.; H.P. Sctiweizer (2001) Curr. Opin. Biotech. 12(5):439
-45; M. Bagdasarian and K.N. Timmis (1982) Curr. Topics Microbiol. Immunol. 96:4
7-67; T. Ishii et al. (1994) FEMS Microbiol. Lett. 116(3):307-13; I.N. Olekhnovi
ch and Y.K. Fomichev (1994) Gene 140(1):63-65; M. Tsuda and T. Nakazawa (1993) G
ene 136(1-2):257-62; C. Nieto et al. (1990) Gene 87(1):145-49 ; J.D. Jones and N
. Gutterson (1987) Gene 61(3):299-306; M. Bagdasarian et al. (1981) Gene 16(1-3)
:237-47 ; H.P. Schweizer et al. (2001) Genet. Eng. (NY) 23:69-81; P. Mukhopadhya
y et al. (1990) J. Bact. 172(l):477-80; D.O. Wood et al. (1981) J. Bact. 145(3):
1448-51 ;およびR. Holtwick et al. (2001) Microbiology 147(Pt 2):337-44 に記載さ
れたものが挙げられる。
【0114】
シュードモナスの宿主細胞において有用となり得る発現ベクターのさらなる例としては
、示されたレプリコンに由来するような、表5に列挙されたものが挙げられる。
【表5】

【0115】
発現プラスミドのRSF1010は、たとえばF. Heffron et al. (1975) Proc. Natl
Acad. Sci. USA 72(9):3623-27、およびK. Nagahari and K. Sakaguchi (1978) J. Bact.
133(3):1527-29に記載されている。プラスミドRSF1010およびその派生物は、本
発明において特に有用なベクターである。典型的には、本技術分野において知られている
RSF1010の有用な派生物としては、たとえばpKT212、pKT214、pKT
231および関連するプラスミド、ならびにpMYC1050および関連するプラスミド
(たとえばThompsonらによる米国特許第5,527,883号および第5,84
0,554号を参照すること)が挙げられ、例えばpMYC1803がある。プラスミド
pMYC1803はRSF1010に基づくプラスミドpTJS260(Wilcoxに
よる米国特許第5,169,760号を参照すること)に由来するものであり、これは制
御されたテトラサイクリン耐性マーカーならびにRSF1010プラスミドに由来する複
製座および移動座を保持している。その他の典型的な有用なベクターとしては、Puhl
erらによる米国特許第4,680,264号に記載されたものが挙げられる。
【0116】
一つの実施形態においては、発現プラスミドを発現ベクターとして用いる。別の実施形
態においては、RSF1010またはその派生物を発現ベクターとして用いる。さらに別
の実施形態においては、pMYC1050もしくはその派生物、またはpMYC1803
もしくはその派生物を、発現ベクターとして用いる。
【0117】
選択マーカー遺伝子を用いて、宿主細胞内にプラスミドを維持することができ、プラス
ミド内に存在させることもできる。これは単数(または複数)の抗生物質耐性遺伝子でも
よく、この場合において対応する単数(または複数)の抗生物質は発酵培地に添加される
ことになり、あるいは、本技術分野において有用であると知られている選択マーカー遺伝
子のその他の任意のタイプのもの、たとえばプロトトロフィー復元遺伝子でもよく、この
場合においてプラスミドは対応する形質、具体的には生体触媒性の形質、たとえばアミノ
酸生合成もしくはヌクレオチドを生合成する形質または炭素源を利用する形質、について
の栄養素要求株である宿主細胞内で用いられることになる。
【0118】
分子遺伝学および遺伝子操作技術に必要な多数の配列情報は、広く公に利用可能である
。哺乳動物ならびにヒトの完全なヌクレオチド配列、遺伝子、cDNA配列、アミノ酸配
列およびゲノムにアクセスすることは、URLアドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/En
trezにおけるGenBankから実行できる。Weizmann Institute of Science Genome a
nd Bioinformatics(http://bioinformatics.weizmann.ac.il/cards/)から、遺伝子および
それらの生産物についての情報ならびに生物医学的な応用について統合された電子百科事
典であるGeneCardsから、さらなる情報を得ることもできる。ヌクレオチド配列の情報も
、EMBL Nucleotide Sequenceデータベース(http://www.ebi.ac.uk/embl/)またはDNA
Databankまたは日本(DDBJ,http://www.ddbi.nig.ac.jp/)から入手することがで
きる;アミノ酸配列についての情報のさらなるサイトには、Georgetown's protein infor
mation resource website(http://www-nbrf.georgetown.edu/pir/)およびSwiss-Prot(htt
p://au.expasy.org/sprot/sprot-top.html)が挙げられる。
【0119】
形質転換
本技術分野において公知の形質転換の任意の方法を利用して、シュードモナス宿主細胞
を単数(または複数)のベクターで形質転換してもよく、その細菌の宿主細胞をインタク
トな細胞として、またはプロトプラスト(すなわち細胞質体を含む)として形質転換して
もよい。典型的な形質転換の方法としては、ポレーションの方法、たとえばエレクトロポ
レーション、プロトプラスト融合、細菌の接合および二価カチオンによる処理、たとえば
塩化カルシウム処理すなわちCaCl/Mg2+処理、または本技術分野におけるその他の
周知の方法が挙げられる。たとえば、Morrison (1977) J. Bact, 132:349-351; Clark-Cu
rtiss and Curtiss (1983) Methods in Enzymology, 101:347-362, Sambrook et al. (19
89) Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed.); Kriegler (1990) Gene Trans
fer and Expression: A Laboratory Manual; and Ausubel et al., eds., (1994) Curren
t Protocols in Molecular Biologyを参照すること。
【0120】
シュードモナス生物
本明細書での主要な発明はシュードモナス・フルオレッセンスを用いることであるが、
その他のシュードモナス生物および近接する細菌も有用であり得る。シュードモナスおよ
び近接するbacteriaは一般的に、「グラム(-)プロテオバクテリアのサブグループ1」すな
わち「Gram-Negative Aerobic Rods and Cocci」(Buchanan and Gibbons (eds.) (1974)
Bergey's Manual of Determinative Bacteriology, pp. 217-289)として定義されるグル
ープの一部である。
【表6】

【0121】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ1」は、この分類に用いられる基準に
従って、この表題に分類されるであろうプロテオバクテリアをも含む。この表題は、この
欄に既に分類された群をも含むが、もはや、たとえばアシドボラクス(Acidovorax)属、ブ
レブンジモナス(Brevundimonas)属、ブルクホルデリア(Burkholderia)属、ヒドロジェノ
ファーガ(Hydrogenophaga)属、オシアニモナス(Oceanimonas)属、ラルストニア(Ralstoni
a)属およびストエノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属、スフィンゴモナス(Sphingomo
nas)属(およびそれに由来するブラストモナス(Blastomonas)属)、キサントモナス属(の
種であると既に呼ばれているもの)に属する生物を再編することで生じたもの、アシドモ
ナス(Acidomonas)属、アセトバクター属に属する生物を再編することで生じたもの、のよ
うな、Bergey (1974)に定義されたようなものではない。さらに、宿主は、シュードモナ
ス属、シュードモナス・エナリア(enalia)(ATCC 14393)、シュードモナス・ニグリファシ
エンス(nigrifaciens)(ATCC 19375)およびシュードモナス・プトレファシエンス(putrefa
ciens)(ATCC 8071)に由来する細胞を含むことができ、これらはそれぞれアルテロモナス
・ハロプランクティス(Alteromonas haloplanktis)、アルテロモナス・ニグリファシエン
ス(nigrifaciens)およびアルテロモナス・プトレファシエンス(putrefaciens)として再分
類されている。同様に、たとえばシュードモナス・アシドボランス(acidovorans)(ATCC 1
5668)およびシュードモナス・テストステロニ(testosteroni)(ATCC 11996)は、それぞれ
コマモナス(Comamonas)・アシドボランスおよびコマモナス・テストステロニとして再分
類されており、ならびにシュードモナス・ニグリファシエンス(ATCC 19375)およびシュー
ドモナス・ピシシダ(piscicida)(ATCC 15057)は、それぞれシュードアルテロモナス・ニ
グリファシエンス(Pseudoalteromonas nigrifaciens)およびシュードアルテロモナス・ピ
シシダとして再分類されている。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ1」は
、シュードモナダセアエ科、アゾトボアクテラセアエ(Azotoboacteraceae)科(現在では
しばしはシュードモナダセアエ科の「アゾトバクターグループ」の異名で呼ばれている)
、リゾビアセアエ科およびメチロモナダセアエ科(現在ではしばしは「メチロコッカセア
エ(Methylococcaceae)科」の異名で呼ばれている):の科のいずれかに属するものとして
分類されているプロテオバクテリアをも含む。その結果、これらの属に加えて、「グラム
陰性プロテオバクテリアのサブグループ1」に含まれる、ここに記載されたもの以外のさ
らなるプロテオバクテリア属としては:1)アゾトバクターグループのアゾリゾフィルス
(Azorhizophilus)属の細菌;2)シュードモナダセアエ科のセルビブリオ(Cellvibrio)属
、オリジェラ(Oligella)属およびテレジニバクター(Teredinibacter)属の細菌;3)リゾ
ビアセアエ科のケラトバクター(Chelatobacter)属、エンシフェラ(Ensifer)属、リベリバ
クター(Liberibacter)属(「カンジダタス(Candidatus)・リベリバクター」とも呼ばれる
)およびシノリゾビウム(Sinorhizobium)属の細菌;ならびに4)メチロコッカセアエ科の
メチロバクター(Methylobacter)属、メチロカルダム(Methylocaldum)属、メチロミクロビ
ウム(Methylomicrobium)属、メチロサルシナ(Methylosarcina)属およびメチロスファエラ
(Methylosphaera)属の細菌が挙げられる。
【0122】
別の実施形態においては、「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ2」から宿
主細胞を選択することができる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ2」は
、次の属のプロテオバクテリアの群と定義される(丸括弧内に、目録に列挙され、公に利
用可能な状態で寄託されたその株の総数を示し、別記がない限り、すべてがATCCに寄
託されている):アシドモナス(Acidomonas)(2);アセトバクター(93);グルコノ
バクター(37);ブレブンジモナス(23);ベイジェリンキア(13);デルキシア
(2);ブルセラ(4);アグロバクテリウム(79);ケラトバクター(2);エンシ
フェラ(3);リゾビウム(144);シノリゾビウム(24);ブラストモナス(1)
;スフィンゴモナス(27);アルカリゲンス(88);ボルデテラ(43);ブルクホ
ルデリア(73);ラルストニア(33);アシドボラクス(20);ヒドロジェノファ
ーガ(9);ズーグロエア(9);メチロバクター(2);メチロカルダム(NCIMB
において1);メチロコッカス(2);メチロミクロビウム(2);メチロモナス(9)
;メチロサルシナ(1);メチロスファエラ;アゾモナス(9);アゾリゾフィルス(5
);アゾトバクター(64);セルビブリオ(3);オリジェラ(5);シュードモナス
(1139);フランシセラ(4);キサントモナス(229);ストエノトロフォモナ
ス(50);およびオシアニモナス(4)。
【0123】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ2」の典型的な宿主細胞の種としては
、次の細菌(丸括弧内に単数(または複数)のその典型的な株のATCC番号またはその
他の寄託番号を示す)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない:アシドモナス
・メタノリサ(methanolica)(ATCC 43581);アセトバクター・アセチ(aceti)(ATCC 15973)
;グルコノバクター・オキシダンス(oxydans)(ATCC 19357);ブレブンジモナス・ジミニ
ュータ(diminuta)(ATCC 11568);ベイジェリンキア・インディカ(indica)(ATCC 9039およ
びATCC 19361);デルキシア・グモーサ(gummosa)(ATCC 15994);ブルセラ・メリテンシス
(melitensis)(ATCC 23456)、ブルセラ・アボラタス(abortus)(ATCC 23448);アグロバク
テリウム・チューメファシエンス(tumefaciens)(ATCC 23308)、アグロバクテリウム・ラ
ジオバクター(radiobacter)(ATCC 19358)、アグロバクテリウム・リゾーゲネス(rhizogen
es)(ATCC 11325);ケラトバクター・ヘインチ(heintzii)(ATCC 29600);エンシフェラ・
アドヘエレンス(adhaerens)(ATCC 33212);リゾビウム・レグミノザラム(leguminosarum)
(ATCC 10004);シノリゾビウム・フレンジ(fredii)(ATCC 35423);ブラストモナス・ナタ
トリア(natatoria)(ATCC 35951);スフィンゴモナス・パウチモビリス(paucimobilis)(AT
CC 29837);アルカリゲンス・フェイシャリス(faecalis)(ATCC 8750);ボルデテラ・パー
ツシス(pertussis)(ATCC 9797);ブルクホルデリア・セパシア(cepacia)(ATCC 25416);
ラルストニア・ピケッチ(pickettii)(ATCC 27511);アシドボラクス・ファシリス(facili
s)(ATCC 11228);ヒドロジェノファーガ・フラバ(flava)(ATCC 33667);ズーグロエア・
ラミジェラ(ramigera)(ATCC 19544);メチロバクター・ルーテウス(luteus)(ATCC 49878)
;メチロカルダム・グラシーレ(gracile)(NCIMB 11912);メチロコッカス・カプスラタス
(capsulatus)(ATCC 19069);メチロミクロビウム・アギール(agile)(ATCC 35068);メチ
ロモナス・メタニカ(methanica)(ATCC 35067);メチロサルシナ・フィブラータ(fibrata)
(ATCC 700909);メチロスファエラ・ハンソニイ(hansonii)(ACAM 549);アゾモナス・ア
ギリス(agilis)(ATCC 7494);アゾリゾフィルス・パスパリ(paspali)(ATCC 23833);アゾ
トバクター・クロオコクム(chroococcum)(ATCC 9043);セルビブリオ・ミクタス(mixtus)
(UQM 2601);オリジェラ・ウレサラリス(urethralis)(ATCC 17960);シュードモナス・ア
エルギノーサ(ATCC 10145)、シュードモナス・フルオレッセンス(ATCC 35858);フランシ
セラ・ツラレンシス(tularensis)(ATCC 6223);ストエノトロフォモナス・マルトフィア(
maltophilia)(ATCC 13637);キサントモナス・カンペストリス(campestris)(ATCC 33913)
;およびオシアニモナス・ドウドロッフィ(doudoroffii)(ATCC 27123)。
【0124】
別の実施形態においては、「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ3」から宿
主細胞を選択する。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ3」は、次の属のプ
ロテオバクテリアの群と定義される:ブレブンジモナス;アグロバクテリウム;リゾビウ
ム;シノリゾビウム;ブラストモナス;スフィンゴモナス;アルカリゲンス;ブルクホル
デリア;ラルストニア;アシドボラクス;ヒドロジェノファーガ;メチロバクター;メチ
ロカルダム;メチロコッカス;メチロミクロビウム;メチロモナス;メチロサルシナ;メ
チロスファエラ;アゾモナス;アゾリゾフィルス;アゾトバクター;セルビブリオ;オリ
ジェラ;シュードモナス;テレジニバクター;フランシセラ;ストエノトロフォモナス;
キサントモナス;およびオシアニモナス。
【0125】
別の実施形態においては、「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ4」から宿
主細胞を選択する。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ4」は、次の属のプ
ロテオバクテリアの群と定義される:ブレブンジモナス;ブラストモナス;スフィンゴモ
ナス;ブルクホルデリア;ラルストニア;アシドボラクス;ヒドロジェノファーガ;メチ
ロバクター;メチロカルダム;メチロコッカス;メチロミクロビウム;メチロモナス;メ
チロサルシナ;メチロスファエラ;アゾモナス;アゾリゾフィルス;アゾトバクター;セ
ルビブリオ;オリジェラ;シュードモナス;テレジニバクター;フランシセラ;ストエノ
トロフォモナス;キサントモナス;およびオシアニモナス。
【0126】
一つの実施形態においては、「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ5」から
宿主細胞を選択する。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ5」は、次の属の
プロテオバクテリアの群と定義される:メチロバクター;メチロカルダム;メチロコッカ
ス;メチロミクロビウム;メチロモナス;メチロサルシナ;メチロスファエラ;アゾモナ
ス;アゾリゾフィルス;アゾトバクター;セルビブリオ;オリジェラ;シュードモナス;
テレジニバクター;フランシセラ;ストエノトロフォモナス;キサントモナス;およびオ
シアニモナス。
【0127】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ6」から宿主細胞を選択することがで
きる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ6」は、次の属のプロテオバクテ
リアの群と定義される:ブレブンジモナス;ブラストモナス;スフィンゴモナス;ブルク
ホルデリア;ラルストニア;アシドボラクス;ヒドロジェノファーガ;アゾモナス;アゾ
リゾフィルス;アゾトバクター;セルビブリオ;オリジェラ;シュードモナス;テレジニ
バクター;ストエノトロフォモナス;キサントモナス;およびオシアニモナス。
【0128】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ7」から宿主細胞を選択することがで
きる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ7」は、次の属のプロテオバクテ
リアの群と定義される:アゾモナス;アゾリゾフィルス;アゾトバクター;セルビブリオ
;オリジェラ;シュードモナス;テレジニバクター;ストエノトロフォモナス;キサント
モナス;およびオシアニモナス。
【0129】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ8」から宿主細胞を選択することがで
きる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ8」は、次の属のプロテオバクテ
リアの群と定義される:ブレブンジモナス;ブラストモナス;スフィンゴモナス;ブルク
ホルデリア;ラルストニア;アシドボラクス;ヒドロジェノファーガ;シュードモナス;
ストエノトロフォモナス;キサントモナス;およびオシアニモナス。
【0130】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ9」から宿主細胞を選択することがで
きる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ9」は、次の属のプロテオバクテ
リアの群と定義される:ブレブンジモナス;ブルクホルデリア;ラルストニア;アシドボ
ラクス;ヒドロジェノファーガ;シュードモナス;ストエノトロフォモナス;およびオシ
アニモナス。
【0131】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ10」から宿主細胞を選択することが
できる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ10」は、次の属のプロテオバ
クテリアの群と定義される:ブルクホルデリア;ラルストニア;シュードモナス;ストエ
ノトロフォモナス;およびキサントモナス。
【0132】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ11」から宿主細胞を選択することが
できる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ11」は、次の属のプロテオバ
クテリアの群と定義される:シュードモナス;ストエノトロフォモナス;およびキサント
モナス。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ12」から宿主細胞を選択する
ことができる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ12」は、次の属のプロ
テオバクテリアの群と定義される:ブルクホルデリア;ラルストニア;シュードモナス。
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ13」から宿主細胞を選択することがで
きる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ13」は、次の属のプロテオバク
テリアの群と定義される:ブルクホルデリア;ラルストニア;シュードモナス;およびキ
サントモナス。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ14」から宿主細胞を選
択することができる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ14」は、次の属
のプロテオバクテリアの群と定義される:シュードモナスおよびキサントモナス。「グラ
ム陰性プロテオバクテリアのサブグループ15」から宿主細胞を選択することができる。
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ15」は、シュードモナス属のプロテオ
バクテリアの群と定義される。
【0133】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ16」から宿主細胞を選択することが
できる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ16」は、次のシュードモナス
種(丸括弧内に単数(または複数)の典型的な株のATCC番号またはその他の寄託番号
を示す)のプロテオバクテリアの群と定義される:シュードモナス・アビエタニフィラ(a
bietaniphila)(ATCC 700689);シュードモナス・アエルギノーサ(ATCC 10145);シュード
モナス・アルカリゲンス(ATCC 14909);シュードモナス・アングリセプチサ(anguillisep
tica)(ATCC 33660);シュードモナス・シトロネロリス(citronellolis)(ATCC 13674);シ
ュードモナス・フラベセンス(flavescens)(ATCC 51555);シュードモナス・メンドシナ(A
TCC 25411);シュードモナス・ニトロレデュセンス(nitroreducens)(ATCC 33634);シュ
ードモナス・オレオボランス(oleovorans)(ATCC 8062);シュードモナス・シュードアル
カリゲネス(pseudoalcaligenes)(ATCC 17440);シュードモナス・レジノボランス(resino
vorans)(ATCC 14235);シュードモナス・ストラミネア(straminea)(ATCC 33636);シュー
ドモナス・アガリシ(agarici)(ATCC 25941);シュードモナス・アルカリフィラ(alcaliph
ila);シュードモナス・アルギノボラ(alginovora);シュードモナス・アンデルソニイ(a
ndersonii);シュードモナス・アスプレニ(asplenii)(ATCC 23835);シュードモナス・ア
ゼラシア(azelaica)(ATCC 27162);シュードモナス・ベイジェリンキ(beijerinckii)(ATC
C 19372);シュードモナス・ボレアリス(borealis);シュードモナス・ボレオポリス(bor
eopolis)(ATCC 33662);シュードモナス・ブラシカセラム(brassicacearum);シュードモ
ナス・ブタノボラ(butanovora)(ATCC 43655);シュードモナス・セルローサ(cellulosa)(
ATCC 55703);シュードモナス・アウランチアカ(aurantiaca)(ATCC 33663);シュードモ
ナス・クロロラフィス(chlororaphis)(ATCC 9446、ATCC 13985、ATCC 17418、ATCC 17461
);シュードモナス・フラジ(fragi)(ATCC 4973);シュードモナス・ルンデンシス(lunden
sis)(ATCC 49968);シュードモナス・タエトロレンス(taetrolens)(ATCC 4683);シュー
ドモナス・シッシコラ(cissicola)(ATCC 33616);シュードモナス・コロナファシエンス(
coronafaciens);シュードモナス・ジテルペニフィラ(diterpeniphila);シュードモナス
・エロンガータ(elongata)(ATCC 10144);シュードモナス・フレクテンス(flectens)(ATC
C 12775);シュードモナス・アゾトフォルマンス(azotoformans);シュードモナス・ブレ
ンネリ(brenneri);シュードモナス・セドレラ(cedrella);シュードモナス・コルガータ
(corrugata)(ATCC 29736);シュードモナス・エクストレモリエンタリス(extremoriental
is);シュードモナス・フルオレッセンス(ATCC 35858);シュードモナス・ゲッサルジ(ge
ssardii);シュードモナス・リバネンシス(libanensis);シュードモナス・マンデリイ(m
andelii)(ATCC 700871);シュードモナス・マルジナリス(marginalis)(ATCC 10844);シ
ュードモナス・ミグラエ(migulae);シュードモナス・ムシドレンス(mucidolens)(ATCC 4
685);シュードモナス・オリエンタリス(orientalis);シュードモナス・ローデシアエ(r
hodesiae);シュードモナス・シンカンサ(synxantha)(ATCC 9890);シュードモナス・ト
ラーシ(tolaasii)(ATCC 33618);シュードモナス・ベローニ(veronii)(ATCC 700474);シ
ュードモナス・フレデリクスベルゲンシス(frederiksbergensis);シュードモナス・ゲニ
クラタ(geniculata)(ATCC 19374);シュードモナス・ジンゲリ(gingeri);シュードモナ
ス・グラミニス(graminis);シュードモナス・グリモンティ(grimontii);シュードモナ
ス・ハロデニトリフィカンス(halodenitrificans);シュードモナス・ハロフィリア(halo
phila);シュードモナス・ヒビスキコラ(hibiscicola)(ATCC 19867);シュードモナス・
フッチエンシス(huttiensis)(ATCC 14670);シュードモナス・ハイドロゲノボラ(hydroge
novora);シュードモナス・ジェッセンイ(jessenii)(ATCC 700870);シュードモナス・キ
ロネンシス(kilonensis);シュードモナス・ランセオラタ(lanceolata)(ATCC 14669);シ
ュードモナス・リニ(lini);シュードモナス・マルギナタ(marginata)(ATCC 25417);シ
ュードモナス・メフィチサ(mephitica)(ATCC 33665);シュードモナス・デニトリフィカ
ンス(denitrificans)(ATCC 19244);シュードモナス・ペルツシノゲナ(pertucinogena)(A
TCC 190);シュードモナス・ピクトラム(pictorum)(ATCC 23328);シュードモナス・サイ
クロフィラ(psychrophila);シュードモナス・フルバ(fulva)(ATCC 31418);シュードモ
ナス・モンテイリ(monteilii)(ATCC 700476);シュードモナス・モッセリイ(mosselii);
シュードモナス・オリジハビタンス(oryzihabitans)(ATCC 43272);シュードモナス・プ
レコグロッシシダ(plecoglossicida)(ATCC 700383);シュードモナス・プチダ(ATCC 1263
3);シュードモナス・レアクタンス(reactans);シュードモナス・スピノサ(spinosa)(AT
CC 14606);シュードモナス・バレアリカ(balearica);シュードモナス・ルテオラ(luteo
la)(ATCC 43273);シュードモナス・スツッツェリ(stutzeri)(ATCC 17588);シュードモ
ナス・アミグダリ(amygdali)(ATCC 33614);シュードモナス・アバラナエ(avellanae)(AT
CC 700331);シュードモナス・カリカパパヤエ(caricapapayae)(ATCC 33615);シュード
モナス・シッコリ(cichorii)(ATCC 10857);シュードモナス・フィクセレクタエ(ficuser
ectae)(ATCC 35104);シュードモナス・フソコバギナエ(fuscovaginae);シュードモナス
・メリアエ(meliae)(ATCC 33050);シュードモナス・シリンジャエ(syringae)(ATCC 1931
0);シュードモナス・ビルジフラバ(viridiflava)(ATCC 13223);シュードモナス・サー
モカルオキシドボランス(thermocarhoxydovorans)(ATCC 35961);シュードモナス・サー
モトレランス(thermotolerans);シュードモナス・チベルバレンシス(thivervalensis);
シュードモナス・バンコウベレンシス(vancouverensis)(ATCC 700688);シュードモナス
・ウィスコンシネンシス(wisconsinensis);およびシュードモナス・キアメンシス(xiame
nensis)。
【0134】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ17」から宿主細胞を選択することが
できる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ17」は、たとえば次のシュー
ドモナス種に属するものを含む「蛍光性シュードモナス」として本技術分野において知ら
れているプロテオバクテリアの群と定義される:シュードモナス・アゾトフォルマンス;
シュードモナス・ブレンネリ;シュードモナス・セドレラ;シュードモナス・コルガータ
;シュードモナス・エクストレモリエンタリス;シュードモナス・フルオレッセンス;シ
ュードモナス・ゲッサルジ;シュードモナス・リバネンシス;シュードモナス・マンデリ
イ;シュードモナス・マルジナリス;シュードモナス・ミグラエ;シュードモナス・ムシ
ドレンス;シュードモナス・オリエンタリス;シュードモナス・ローデシアエ;シュード
モナス・シンカンサ;シュードモナス・トラーシ;およびシュードモナス・ベローニ。
【0135】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ18」から宿主細胞を選択することが
できる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ18」は、シュードモナス・フ
ルオレッセンス種の亜種、変種、株およびその他の特定の下位のユニットのすべての群と
定義され、たとえば、(丸括弧内に示された代表的な株のATCCまたはその他の受託番
号を伴った)次のもの属するものが挙げられる:シュードモナス・フルオレッセンス・バ
イオタイプA、次亜種1すなわち次亜種I(ATCC 13525)とも呼ばれる;シュードモナス・
フルオレッセンス・バイオタイプB、次亜種2すなわち次亜種II(ATCC 17816)とも呼ば
れる;シュードモナス・フルオレッセンス・バイオタイプC、次亜種3すなわち次亜種I
II(ATCC 17400)とも呼ばれる;シュードモナス・フルオレッセンス・バイオタイプF、
次亜種4すなわち次亜種IV(ATCC 12983)とも呼ばれる;シュードモナス・フルオレッセ
ンス・バイオタイプG、次亜種5すなわち次亜種V(ATCC 17518)とも呼ばれる;シュード
モナス・フルオレッセンス次亜種VI;シュードモナス・フルオレッセンスPf0−1;
シュードモナス・フルオレッセンスPf−5(ATCC BAA-477);シュードモナス・フルオレ
ッセンスSBW25;ならびにシュードモナス・フルオレッセンス・サブスピーシーズ・
セルロサ(NCIMB 10462)。
【0136】
「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ19」から宿主細胞を選択することが
できる。「グラム陰性プロテオバクテリアのサブグループ19」は、シュードモナス・フ
ルオレッセンス・バイオタイプAのすべての株の群と定義される。このバイオタイプの特
定の株は、シュードモナス・フルオレッセンスMB101株(Wilcoxによる米国特
許第5,169,760号を参照すること)、およびその誘導体である。その誘導体の例
は、シュードモナス・フルオレッセンスMB214株であり、MB101染色体のasd
(アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子)座内、天然のエシェリキア・コリのPlac
I−lacI−lacZYA構築物(すなわちその中ではPlacZが欠失していた)に
挿入することによって構築される。
【0137】
一つの実施形態においては、宿主細胞は、シュードモナダレス目のプロテオバクテリア
の任意のものである。特定の実施形態においては、宿主細胞は、シュードモナダセアエ科
のプロテオバクテリアの任意のものである。
【0138】
本発明において用いることができるさらなるシュードモナス・フルオレッセンス株とし
ては、シュードモナス・フルオレッセンス・ミグラおよびシュードモナス・フルオレッセ
ンス・ロイトキトクが挙げられ、次のようなATCCが指定されている:(NCIB82
86);NRRLB−1244;NCIB8865株CO1;NCIB8866株CO2
;1291(ATCC17458;IFO15837;NCIB8917;LA;NRR
L B−1864;ピロリジン;PW2(ICMP3966;NCPPB967;NRR
L B−899);13475;NCTC10038;NRRL B−1603(6;I
FO15840);52−1C;CCEB488−A(BU140);CCEB553(
IEM15/47);IAM1008(AHH−27);IAM1055(AHH−23
);1(IFO15842);12(ATCC25323;NIH11;den Doo
ren de Jong216);18(IFO15833;WRRL P−7);93
(TR−10);108(52−22;IFO15832);143(IFO15836
;PL);149(2−40−40;IFO15838);182(IFO3081;P
J73);184(IFO15830);185(W2L−1);186(IFO158
29;PJ79);187(NCPPB263);188(NCPPB316);189
(PJ227;1208);191(IFO15834;PJ236;22/1);19
4(Klinge R−60;PJ253);196(PJ288);197(PJ29
0);198(PJ302);201(PJ368);202(PJ372);203(
PJ376);204(IFO15835;PJ682);205(PJ686);20
6(PJ692);207(PJ693);208(PJ722);212(PJ832
);215(PJ849);216(PJ885);267(B−9);271(B−1
612);401(C71A;IFO15831;PJ187);NRRLB−3178
(4;IFO15841);KY8521;3081;30−21;(IFO3081)
;N;PYR;PW;D946−B83(BU2183;FERM−P3328);P−
2563(FERM−P2894;IFO13658);IAM−1126(43F);
M−1;A506(A5−06);A505(A5−05−1);A526(A5−26
);B69;72;NRRLB−4290;PMW6(NCIB11615);SC12
936;A1(IFO15839);F1847(CDC−EB);F1848(CDC
93);NCIB10586;P17;F−12;AmMS257;PRA25;613
3D02;6519E01;N1;SC15208;BNL−WVC;NCTC2583
(NCIB8194);H13;1013(ATCC11251;CCEB295);I
FO3903;1062;またはPf−5。
【0139】
発酵
「発酵」という用語は、文字通りの発酵が用いられる実施形態およびその他の非発酵性
の培養モードが用いられる実施形態の両方を含む。発酵は任意の規模で実施してもよい。
一つの実施形態においては、発酵培地をリッチな培地、最少培地および無機塩培地の中か
ら選択してもよい;リッチな培地を用いても良いが、避けたほうが好ましい。別の実施形
態においては、最少培地または無機塩培地のいずれかが選択される。さらに別の実施形態
においては最少培地が選択される。
【0140】
無機塩培地は、無機塩、および炭素源、たとえばグルコース、ショ糖またはグリセロー
ルからなる。無機塩培地の具体例としては、たとえば、M9培地、シュードモナス用培地
(ATCC 179)、Davis and Mingioli培地(BD Davis and ES
Mingioli (1950) in J. Bact. 60:17-28を参照すること)が挙げられる。無機塩培地を作
製するために用いられる無機塩としては、たとえばリン酸カリウム、硫酸アンモニウムま
たは塩化アンモニウム、硫酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムならびに微量元素、た
とえば塩化カルシウム、鉄、銅、マンガンおよび亜鉛のホウ酸塩および硫酸塩から選択さ
れるものが挙げられる。典型的には、無機塩培地には、有機窒素源、たとえばペプトン、
トリプトン、アミノ酸または酵母エキスは含まれない。その代わりとして無機窒素源を用
い、これは、たとえばアンモニウム塩、アンモニア水およびアンモニアガスの中から選択
すればよい。典型的な無機塩培地は、グルコースを炭素源として含むものであろう。無機
塩培地と比較すれば、最少培地は無機塩および炭素源を含むことができるが、たとえば低
レベルのアミノ酸、ビタミン、ペプトンまたはその他の成分を追加することができるが、
それらの追加は極めて微量のレベルである。
【0141】
一つの実施形態においては、以下の表7に列挙された成分を用いて培地を調製すること
ができる。これらの成分を次の順序で添加することができる:最初に(NH4)HPO4
KH2PO4およびクエン酸を約30リットルの蒸留水に溶解すればよい;次いで、微量元
素の溶液を添加し、次いで消泡剤、たとえばUcolub N 115を添加することが
できる。次いで、(たとえば約121℃で)加熱滅菌した後、グルコース、MgSO4
よびチアミン塩酸塩の滅菌溶液を添加すればよい。アンモニア水を用いてpHを約6.8
にコントロールすることができる。次いで、滅菌蒸留水を添加して、最初の体積を371
からグリセロールストック分(123mL)引いたものに調整することができる。薬品は
種々の供給業者、たとえばMerck社から市販されている。この培地によって、シュー
ドモナス種および類縁の細菌の高い細胞密度での培養(HCDC)が可能となる。バッチプロセ
スとしてHCDCを開始することができ、次いで、二相供給式バッチ培養とする。バッチ
部における無制限の培養の後、生物体量の濃度が数倍に高まり得る時間であるところの3
倍化する時間にわたって、培養をコントロールして培養の比速度を低下させることができ
る。このような培養手段についてのさらに詳細な点は、Riesenberg, D et al. (1991) 「
High cell density cultivation of Escherichia coli at controlled specific growth
rate」 J Biotechnol: 20(1) 17-27に記載されている。
【表7】

【0142】
本発明による発現系を任意の発酵形式で培養することができる。本明細書では、たとえ
ばバッチ発酵モード、フェドバッチ発酵モード、半連続発酵モードおよび連続発酵モード
を採用してもよい。
【0143】
本発明による発現系は、任意の規模(すなわち体積)の発酵における導入遺伝子の発現
にとって有用である。従って、たとえばマイクロリットルスケール、センチリットルスケ
ールおよびデシリットルスケールの発酵体積を採用すればよい;そして1リットルスケー
ルおよびより大きな発酵体積を採用することができる。一つの実施形態においては、発酵
体積は1リットルかまたはそれを超えたものとなるだろう。別の実施形態においては、発
酵体積は、5リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、5
0リットル、75リットル、100リットル、200リットル、500リットル、1,0
00リットル、2,000リットル、5,000リットル、10,000リットルもしく
は50,000リットルかまたはそれを超えたものとなるだろう。
【0144】
本発明においては、形質転換された宿主細胞の増殖、培養および/または発酵を、宿主
細胞が生存可能な温度範囲、たとえば約4℃から約55℃の範囲内の温度で行う。さらに
、「増殖(growth)」は、活発な細胞分裂および/または拡張の生物学的状態、ならびに分
裂していない細胞および/または非拡張性の細胞が代謝を維持している生物学的状態の両
方を示すために用いられ、後者の使用は「維持(maintenance)」という用語と同義である

【0145】
細胞密度
哺乳動物の組み換え型タンパク質を発現させる際にシュードモナス・フルオレッセンス
を用いることのさらなる利点には、シュードモナス・フルオレッセンスが、エシェリキア
・コリまたはその他の細菌の発現系に比較して高い細胞密度で培養できるという能力が含
まれる。このために、本発明によるシュードモナス・フルオレッセンスの発現系は、約2
0g/L以上の細胞密度を提供することができる。本発明によるシュードモナス・フルオ
レッセンスの発現系も同様に、体積あたりの生物体量に関して述べられたように、少なく
とも約70g/Lの細胞密度を提供することができる。ここでこの生物体量は乾燥細胞重
量として測定される。
【0146】
一つの実施形態においては、細胞密度は少なくとも20g/Lとなるだろう。別の実施
形態においては、細胞密度は少なくとも25g/L、30g/L、35g/L、40g/
L、45g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、10
0g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/Lまたは少なくとも
150g/Lとなるだろう。
【0147】
別の実施形態においては、誘導時の細胞密度は、20g/Lと150g/Lとの間;2
0g/Lと120g/Lとの間;20g/Lと80g/Lとの間;25g/Lと80g/
Lとの間;30g/Lと80g/Lとの間;35g/Lと80g/Lとの間;40g/L
と80g/Lとの間;45g/Lと80g/Lとの間;50g/Lと80g/Lとの間;
50g/Lと75g/Lとの間;50g/Lと70g/Lとの間;40g/Lと80g/
Lとの間となるだろう。
【0148】
単離および精製
本発明のタンパク質を単離し、本技術分野において周知の標準的な技術によって、実質
的に純粋となるまで精製してもよい。かかる技術としては、硫酸アンモニウム沈殿または
エタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセル
ロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマ
トグラフィー、ニッケルクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
、逆相クロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、調製用電気泳動、界面活性剤
による可溶化、カラムクロマトグラフィーのような基質を伴う選択的な沈降、免疫精製法
およびその他の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。たとえば、分子
付着性が立証されているタンパク質を、逆にリガンドと融合させてもよい。適切なリガン
ドと共に、タンパク質を精製用カラムに選択的に吸着させて、次いで比較的純粋な形態で
カラムから放つことができる。次いで、酵素活性によって融合タンパク質を除去する。さ
らに、免疫アフィニティーカラムまたはNi−NTAカラムを用いてタンパク質を精製す
ることができる。一般的な技術は、たとえば、R. Scopes (1982) Protein Purification:
Principles and Practice, Springer- Verlag: N.Y.; Deutscher (1990) Guide to Prot
ein Purification, Academic Press;米国特許第4,511,503号; S. Roe (2001) P
rotein Purification Techniques: A Practical Approach, Oxford Press; D. Bollag, e
t al. (1996) Protein Methods, Wiley-Lisa, Inc.; AK Patra et al. (2000) Protein E
xpr Purif, 18(2): 182-92;およびR. Mukhija, et al. (1995) Gene 165(2): p. 303-6に
さらに記載されている。さらに、たとえばDeutscher (1990) 「Guide to Protein Purifi
cation,」 Methods in Enzymology vol. 182,およびこのシリーズのその他の巻; Coliga
n, et al. (1996 and periodic Supplements) Current Protocols in Protein Science W
iley/Greene, NY;ならびにタンパク質精製生産に使用する際の製造業者の文献、たとえ
ばPharmacia, Piscataway, NJ., or Bio-Rad, Richmond, Calif. 組み換え技術を組み合
わせることによって、適切なセグメント、たとえばFLAG配列との融合またはプロテア
ーゼにより切断可能な配列を介して融合可能なそれに匹敵する配列との融合が可能になる
、も参照すること。さらに、たとえば、Hochuli (1989) Chemische Industrie 12:69-70;
Hochuli (1990) 「Purification of Recombinant Proteins with Metal Chelate Absorb
ent」in Setlow (ed.) Genetic Engineering, Principle and Methods 12:87-98, Plenum
Press, NY; and Crowe, et al. (1992) QIAexpress: The High Level Expression and P
rotein Purification System QUIAGEN, Inc., Chatsworth, Califも参照すること。
【0149】
本技術分野において公知の方法によって発現されたタンパク質の検出を行い、たとえば
ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティング技術または免疫沈降が挙げられる。
【0150】
遺伝子組み換えによって生産され発現した酵素を、数え切れないほど多くの方法によっ
て組み換え細胞培養液から回収し精製することができる。たとえば高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)を、必要に応じて最終的な精製工程で採用することができる。
【0151】
本発明において発現された特定のタンパク質は不溶性凝集物(「封入体」)を形成して
もよい。いくつかのプロトコールが、封入体からのタンパク質の精製に適している。たと
えば、封入体の精製は通常、たとえば、50mM TRIS/HCl pH 7.5、5
0mM NaCl、5mM MgCl2、1mM DTT、0.1mM ATPおよび1
mM PMSFの緩衝液でインキュベーションを行うことによる宿主細胞の破壊によって
、封入体の抽出、分離および/または精製が必要である。通常、加圧型細胞破壊装置(Fre
nch Press)を介して2−3回通過させることを利用して、細胞懸濁液を溶解させる。Po
lytron(Brinkrnan Instruments社)を用いて、または氷上
で音波処理を行って、細胞懸濁液をホモジナイズしてもよい。細菌を溶解する別の方法は
、当業者にとって自明である(たとえばSambrook, J., E.F. Fritsch and T. Maniatis e
ds. (1989) 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」 2d ed., Cold Spring Harbor
Laboratory Press; Ausubel et al , eds. (1994) Current Protocols in Molecular Bi
ologyを参照すること)。
【0152】
必要に応じて、封入体を可溶化してもよく、典型的にはその溶解した細胞懸濁液を遠心
分離に付して不要な不溶性物を除去してもよい。封入体を形成したタンパク質を、適合性
を有する緩衝液で希釈または透析を行うことによって再生してもよい。適切な溶媒として
は、(約4Mから約8Mの)尿素、(体積/体積ベースで少なくとも約80%の)ホルム
アミドおよび(約4Mから約8Mの)グアニジン塩酸塩が挙げられるが、これらに限定さ
れるわけではない。グアニジン塩酸塩および類似の薬剤は変性剤ではあるが、この変性は
不可逆的ではなく、(たとえば透析による)変性剤の除去または希釈によって再生するだ
ろう。このことによって、免疫学的におよび/または生物学的に活性なタンパク質の再構
成が可能となる。その他の適切な緩衝液は、当業者にとって公知である。
【0153】
あるいは、宿主のペリプラズムから組み換え型タンパク質を精製することも可能である
。組み換え型タンパク質が宿主細胞のペリプラズム内に移動した場合、宿主細胞を溶解し
た後では、低温浸透圧ショックを本技術分野において公知のその他の方法に付加すること
によって、細菌のペリプラスム画分を単離することができる。ペリプラズムから組み換え
型タンパク質を単離するためには、たとえば、細菌細胞を遠心分離に付してペレットを形
成させればよい。このペレットを、20%ショ糖を含む緩衝液に再懸濁させてもよい。こ
の細胞を溶解するために、細菌を遠心分離に付して、ペレットを氷冷の5mM MgSO
4に再懸濁させ、氷浴内で約10分間維持してもよい。細胞懸濁液を遠心分離に付して、
その上清についてデカンテーションを行って保存してもよい。上清内に存在する組み換え
型タンパク質を、当業者が周知の標準的な分離技術によって、宿主のタンパク質から分離
することができる。
【0154】
初期の塩の分画化によって、関心対象の組み換え型タンパク質から、多数の不要な宿主
細胞のタンパク質(または細胞の培地に由来するタンパク質)を分離することができる。
このようなものの一例は、硫酸アンモニウムであろう。硫酸アンモニウムは、タンパク質
混合物内の水分量を効果的に減少させることによって、タンパク質を沈殿させる。次いで
、タンパク質がそれらの溶解性に基づいて沈殿する。タンパク質の疎水性がより強ければ
、より低濃度の硫酸アンモニウムで沈殿すると思われる。典型的なプロトコールとしては
、結果として生じる硫酸アンモニウム濃度が20−30%の間となるように、飽和硫酸ア
ンモニウムをタンパク質溶液に添加することが挙げられる。この濃度では、ほとんどの疎
水性タンパク質が沈殿するだろう。次いで(関心対象のタンパク質が疎水性でない限り)
沈殿を廃棄し、関心対象のタンパク質が沈殿することが分かっている濃度にまで硫酸アン
モニウムをその上清に添加する。次いで、沈殿を緩衝液で可溶化し、必要に応じて、透析
またはダイアフィルトレーションのいずれかによって過剰の塩を除去する。タンパク質の
溶解性を利用するその他の方法、たとえば冷エタノール沈殿、は当業者にとって周知であ
り、タンパク質複合体混合物を分画するために用いることができる。
【0155】
組み換え型タンパク質の分子量を利用して、より大きなサイズまたはより小さなサイズ
のタンパク質からそれを単離することができ、異なる孔径の膜(たとえばAmicon社
またはMillipore社の膜)を介する限外ろ過を用いて行う。第一工程としては、
関心対象のタンパク質の分子量よりも低分子量のものを遮断する孔径の膜を介して、タン
パク質混合物の限外ろ過を行えばよい。次いで、限外ろ過の残留液の限外ろ過を、関心対
象のタンパク質の分子量よりも大きい分子量のものを遮断する膜に対して行えばよい。組
み換え型タンパク質はその膜を通過して、ろ液内に移るだろう。次いで、このろ液を下記
のようなクロマトグラフィーに付せばよい。
【0156】
そのサイズ、正味の表面電荷、疎水性およびリガンドに対するアフィニティーに基づい
て、組み換え型タンパク質をその他のタンパク質から分離することもできる。さらに、タ
ンパク質に対して惹起された抗体をカラムの基質に結合させて、タンパク質を免疫精製す
ることもできる。これらの方法のすべては本技術分野において周知である。当業者にとっ
て、クロマトグラフィーの技術を、任意の規模でかつ多数の異なる製造業者(たとえばP
harmacia Biotech社)からの装置を用いて実施できることは自明であろ
う。
【0157】
再生および再度の折りたたみ
不溶性タンパク質を再生または再度折りたたんで、タンパク質の二次構造および三次構
造の配置を生み出すことができる。組み換え型生産物の配置を完成させる際に、必要に応
じてタンパク質の再折りたたみ工程を利用することができる。本技術分野において公知の
、タンパク質の解離/会合を促進させるための薬剤を利用して、再折りたたみおよび再生
を完成することができる。たとえば、タンパク質をジチオスレイトールと共にインキュベ
ートし、次いで酸化型グルタチオンのニナトリウム塩と共にインキュベートし、次いで再
度折りたたむための薬剤、たとえば尿素を含む緩衝液と共にインキュベートすることがで
きる。
【0158】
たとえば、リン酸緩衝食塩水(PBS)かまたは50mM Na−酢酸、pH6緩衝液
+200mM NaClに対して透析することによって、組み換え型タンパク質も再生す
ることができる。あるいは、カラム、たとえばNi NTAカラム上で固定化している間
に、プロテアーゼインヒビターを含む500mM NaCl、20%グリセロール、20
mM Tris/HCl pH7.4の液で、6M−1Mの尿素の直線勾配を利用するこ
とによって、タンパク質を再度折りたたむことができる。1.5時間以上をかけて、再生
を実施することができる。再生後、250mMイミダゾールを添加することによってタン
パク質を溶出することができる。PBSかまたは50mM酢酸ナトリウムpH6の緩衝液
+200mM NaClの液に対する最後の透析工程で、イミダゾールを除くことができ
る。精製されたタンパク質を4℃で貯蔵するか、または−80℃で凍結させることができ
る。
【0159】
その他の方法としては、たとえば、MH Lee et al. (2002) Protein Expr. Purif., 25(
1): p. 166-73, W.K. Cho et al. (2000) J. Biotechnology, 77(2-3): p. 169-78; Deut
scher (1990) 「Guide to Protein Purification」, Methods in Enzymology vol. 182,
およびこのシリーズの他の巻、Coligan, et al. (1996 and periodic Supplements) Curr
ent Protocols in Protein Science Wiley/Greene, NY; S. Roe (2001) Protein Purific
ation Techniques: A Practical Approach, Oxford Press; D. Bollag, et al. (1996) P
rotein Methods, Wiley-Lisa, Inc.に記載されたものが挙げられる。
【0160】
活性なタンパク質またはペプチドの分析
典型的には、「活性」なタンパク質には、対応する天然のタンパク質に匹敵する生物学
的機能または生物学的作用を有するタンパク質が含まれる。タンパク質との関連において
、典型的にはこのことは、標準的なパラメータとして用いる対応する天然のタンパク質と
比較して、そのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの生物学的機能または生物学的作用
が少なくとも約20%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%
、約90%、約95%、約98%または100%の活性であることを意味する。特定のタ
ンパク質についてのアッセイであって、対応する標準の、目標とされる生物学的な比較ア
ッセイを利用して、タンパク質の活性測定を行うことができる。組み換え型タンパク質の
生物学的機能または生物学的作用が、組み換え型ポリペプチドが天然のポリペプチドと免
疫学的に交差反応するという一つの指摘。
【0161】
活性なタンパク質は、哺乳動物の天然のタンパク質の比活性の少なくとも20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の比活性を持つこと
が典型的である。さらに、基質特異性(kcat/Km)は、必要に応じて哺乳動物の天然の
タンパク質と実質的に同じでよい。典型的には、kcat/Kmは、天然のタンパク質のそれ
の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%であろう。
タンパク質およびペプチドの活性ならびに基質特異性(kcat/Km)をアッセイする方法
および定量する方法は、当業者にとって周知である。
【0162】
哺乳動物の組み換え型タンパク質の活性を、任意のタンパク質に特異的な、本技術分野
において公知の従来のすなわち標準的なインビトロアッセイまたはインビボアッセイによ
って測定することができる。シュードモナスが生産した哺乳動物の組み換え型タンパク質
の活性を、対応する哺乳動物の天然のタンパク質の活性と比較することができ、同じか類
似の生理学的条件下で一般的に見られる天然のタンパク質の活性に対して、哺乳動物の組
み換え型タンパク質が、実質的に同等または等価の活性を示すかどうかを決定することが
できる。
【0163】
組み換え型タンパク質の活性を、既に明らかにされた天然のタンパク質の標準的な活性
と比較することができる。あるいは、組み換え型タンパク質の活性を、天然のタンパク質
との同時の、または実質的に同時の比較アッセイにて測定することができる。たとえば、
インビトロアッセイを用いて、組み換え型タンパク質と、ターゲットとの間、たとえば発
現された酵素と基質との間、発現されたホルモンおよびホルモンレセプターとの間、発現
された抗体と抗原との間などにある、検出可能なあらゆる相互作用を測定することができ
る。このような検出としては、比色の変化の測定、増殖の変化の測定、細胞死の測定、細
胞の反発性の測定、放射能の変化の測定、溶解性の変化の測定、ゲル電気泳動および/ま
たはゲル排除方法によって測定される分子量の変化の測定、リン酸化能力の測定、抗体特
異性のアッセイ、たとえばELISAアッセイなどを挙げることができる。さらに、イン
ビボアッセイとしては、天然のタンパク質の生理学的影響、たとえば重量の増加、電解質
のバランスの変化、血液凝固時間の変化、血栓分解の変化および抗原による応答の誘導と
比較しての、シュードモナスが生産したタンパク質の生理学的影響を検出するためのアッ
セイが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。一般的に、あらゆるインビトロ
アッセイまたはインビボアッセイを用いて、シュードモナスが生産する哺乳動物の組み換
え型タンパク質の活動的な性質を測定することができ、そのような活性がアッセイ可能で
ある限り、天然のタンパク質に対する比較分析が可能となる。あるいは、タンパク質と、
通常はタンパク質と相互作用する分子、たとえば天然のタンパク質が通常総合作用するよ
うなシグナル経路の基質または成分、との間の相互作用を促進するかまたは阻害する能力
について、本発明において生産されるタンパク質をアッセイすることができる。典型的に
は、このようなアッセイは、タンパク質がターゲット分子と相互作用し、そしてタンパク
質とターゲット分子とによる相互作用の生化学的な影響を検出できる条件下で、タンパク
質を基質分子と結合させる工程を含んでもよい。
【0164】
タンパク質の活性を測定するために利用することができるアッセイは、たとえば、Ralp
h, P. J., et al. (1984) J. Immunol. 132:1858; Saiki et al. (1981) J. Immunol. 12
7:1044, .Steward, W. E. II (1980) The Interferon Systems. Springer-Verlag, Vienn
a and New York, Broxmeyer, H. E., et al. (1982) Blood 60:595; Sambrook, J., E.F.
Fritsch and T. Maniatis eds. (1989) 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」,
2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press; Berger, S.L. and A.R. Kimmel eds.
(1987) 「Methods in Enzymology: Guide to Molecular Cloning Techniques」 Academic
Press; AK Patra et al. (2000) Protein Expr Purif, 18(2): 182-92, Kodama et al.
(1986) J. Biochem. 99: 1465-1472; Stewart et al. (1993) Proc. Natl Acad. Sci. US
A 90: 5209-5213; Lombillo et al. (1995) J. Cell Biol. 128:107-115; Vale et al. (
1985) Cell 42:39-50に記載されている。
【0165】
<実施例>
細菌株および培養条件
別に明記しない限り、シュードモナス発現のすべての試験で用いた株のすべては、シュ
ードモナス・フルオレッセンスMB101株を基礎とした。エシェリキア・コリJM10
9株(Promega社)、XL2 Blue (Stratagene社)またはTo
p 10(Invitrogen社)を、一般的なクローニングに用いた。エシェリキア
・コリ発現の研究のために、BL21 (DE3) Goldを用いた。シュードモナス
・フルオレッセンス株を、必要に応じて15μg/mLのテトラサイクリンおよび30μ
g/mLのカナマイシンを追加した、LB培地または最小塩類培地のいずれかで、30℃
で培養した。必要に応じて30μg/mLのカナマイシンおよび/または15μg/mL
のクロラムフェニコールもしくは15μg/mLのテトラサイクリンを追加したLBで、
エシェリキア・コリ株を37℃で培養した。増殖期に達した後、細胞を0.3mMのIP
TGで誘導した。
【0166】
タンパク質活性の検出(ELISAアッセイ)
PBS(pH7.6)中で10μg/mLのβ−ガラクトシダーゼ溶液の200μLを
マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに添加して、プレートをコーティングした
。プレートを室温で16時間インキュベートし、次いで200μLのPBS+0.1%の
Tween−20(PBS−T)で3回洗浄した。一次抗体を2%(w/v)の脱脂粉乳
を含むPBSで希釈した。200μLの希釈抗体をそれぞれのウェルに添加し、室温で1
時間インキュベートした。このプレートを次いで200μLのPBS−Tで4回洗浄した
。二次抗体も2%(w/v)の脱脂粉乳を含むPBSで希釈し、それぞれのウェルに20
0μLを添加し、室温で1.5−2時間インキュベートした。このプレートを次いでPB
S−Tで4回洗浄した。三次抗体を用いてscFv抗体:アルカリホスファターゼ結合ヒ
ツジ抗マウス抗体(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA、カ
タログ番号A5324)を検出した。それぞれの所望のウェルに200μLの希釈抗体溶
液(またはPBS−T)を添加し、室温で1.5時間インキュベートした。このプレート
を次いでPBS−Tで4回洗浄した。それぞれのウェルに200μLの新しく調製したS
igma Fast pNPP基質(Sigma社カタログ番号R−2770)を添加し
た。30分後に、50μLの3M NaOHをそれぞれのウェルに添加してこの反応を停
止させ、405nmでの吸光度を読み取った。
【0167】
発酵
シュードモナス・フルオレッセンスについての発酵槽での培養のための接種材料を、6
00mLの化学的に規定された、酵母抽出物およびデキストロースを追加した培地を含む
振盪フラスコに接種することによって作製する。典型的には、テトラサイクリンを添加し
て、一晩のインキュベートの間でのスターターカルチャーにおいて、ならびに発酵槽にお
いて、組み換えプラスミドが確実に維持できるようにする。次いで、振盪フラスコ培養物
を、酵母抽出物を添加せずに高バイオマスを支持するように設計された、化学的に規定さ
れた培地を含む20Lの発酵槽に無菌で移す。気流を発酵槽内への気流と撹拌器の撹拌速
度とを調節すること;アンモニア水を添加してpHが6.0を超えるように維持すること
によって、液体培養内での酸素は陽性レベルを維持する。フェドバッチ高密度発酵プロセ
スは、約24時間の初期の増殖期と、インデューサを添加して組み換え遺伝子の発現を開
始させる遺伝子発現(誘導)期とに分けられる。制限された濃度で、発酵プロセスの全体
を通して、グルコースをコーンシロップの形態で供給する。誘導期を開始させる標的細胞
密度は通常、575nmにて150OD単位である。発酵の誘導期は通常、約45〜55
時間まで達することが可能である。この期の間、種々の分析のために発酵槽からサンプル
を回収し、標的遺伝子発現、細胞密度のレベルなどを測定する。
【0168】
エシェリキア・コリについてのそれぞれの発酵実験のために、凍結したグリセロールス
トックを−80℃の貯蔵庫から取り出し、カナマイシンを添加した600mLのLB培地
を含む振盪フラスコに接種する前に解凍し、希釈する。振盪フラスコ培養物を300rp
mで振盪させながら一晩、37℃でインキュベートし、次いで、複合培地を含む20Lの
発酵槽に無菌で移す。発酵槽内の温度を37℃に維持し、アンモニア水およびリン酸を添
加してpHを7とし、そして20%を超えるように酸素を溶解させる。短時間の初期バッ
チ期の後、速度を段階的に高めてグリセロールを供給して過剰の炭素を維持する。600
nmでの細胞密度が24−28OD単位に達した時点で、インデューサ、たとえばイソプ
ロピルチオガラクトシド(IPTG)を添加することによって、組み換え発現を実施する。発酵
の誘導期は通常、発酵槽の容積に達する時まで、または増殖速度が顕著に低下し始める時
まで、約3〜5時間継続する。この期の間、種々の分析のために発酵槽からサンプルを回
収し、標的遺伝子発現、細胞密度のレベルなどを測定する。
【0169】
細胞分画およびSDS−PAGE分析
サンプルをA575=30に標準化し、1mLの標準化培養物をペレット化する。細胞
を1mLの溶解緩衝液(50mMのTris塩基;200mMのNaCl;5%v/vの
グリセロール;20mMのEDTA二ナトリウム塩;0.5%v/vのTritonX−
100;1mMのDTT)で再懸濁させる。細菌溶解物に特異的なプロテアーゼインヒビ
ターカクテル(Sigma社#P8465)を1X濃度で添加する。再懸濁させた細胞を
、0.1mmのガラスビーズと一緒に、2mlのネジ込み式マイクロフュージチューブの
全体の約3/4まで添加し、最も強い設定でBioSpecビーズミルにて4,1分間の
インキュベートを用いて細胞を機械的に溶解させる。インキュベートの間、細胞を氷上に
置く。約100μLの溶解細胞溶液をビーズから取り除き、新しいチューブに移してペレ
ット化する。その上清(可溶性画分)を新しいチューブに移す。そのペレット(不溶性画
分)を等量の溶解緩衝液+プロテアーゼインヒビター(100μL)で再懸濁する。それ
ぞれのサンプルの5μLを5μLの2X LDS負荷緩衝液(Invitrogen社)
に添加し、4−12%または10%のBis−Tris NuPAGEゲル(Invit
rogen社)上に負荷し、示されるように1X MES緩衝液または1X MOPS緩
衝液のいずれかで稼動させる。
【実施例1】
【0170】
実施例1:細胞質におけるscFVの発現
一本鎖抗体断片(scFV)が診断薬および治療剤としての使用が増加していることが
分かっている。これらの比較的小さいタンパク質は、免疫グロブリンの可変性の軽鎖およ
び重鎖をコードする互いの遺伝子を融合することによって作られる。
【0171】
Gall3 scFvのクローニング
ファージディスプレイベクターpCANTAB6内にクローニングされたGall3
scFv遺伝子(Genbank受入番号AF238290)(P Martineau et al. (199
8) J. Mol. Biol. 280 (1): 117-27を参照すること)を、774塩基対の産物を増幅するた
めの鋳型として用いた。続いてこれをpCR2.1 TOPOベクター(Invitro
gen,Carlsbad,CA,USA)内にクローニングした。SpeI制限酵素お
よびSalI制限酵素(New England Biolabs,Beverly,M
A,USA)で、TOPOベクターからscFv遺伝子を切り出し、シュードモナス・フ
ルオレッセンスベクターpMYC1803のSpeI部位XhoI部位内、Ptacプロ
モーターの下流、にクローニングして、pDOW1117を生産した。得られたプラスミ
ドをシュードモナス・フルオレッセンス内にエレクトロポレートした。SalI部位およ
びNcoI部位がコード配列に隣接するように、増幅した後、Gal13遺伝子をpET
24d+発現ベクター(Novagen,Madison,WI,USA)内にクローニ
ングした。このPCR産物をSalIおよびNcoIで消化して、pET24d+ベクタ
ーのT7プロモーターの下流の同じ部位内にクローニングした。次いで、新たに形成され
た構築物を用いて、XL2 Blueコンピテント細胞を形質転換した。配列を確認する
と、すぐにそのDNA構築物を用いてBL21 (DE3) Gold (Strata
gene,San Diego,CA,USA)を発現用に形質転換した。
【0172】
エシェリキア・コリおよびシュードモナス・フルオレッセンスにおける一本鎖抗体断片
(scFv)の発現
エシェリキア・コリおよびシュードモナス・フルオレッセンスの両方で、scFv分子
を発現させた。これらの中で、scFvはエシェリキア・コリタンパク質のβ−ガラクト
シダーゼ一本鎖抗体gal13(P. Martineau et al. ,「Expression of an antibody fr
agment at high level in the bacterial cytoplasm」 J. Mol. Biol. 280 (1) : 117-27
(1998))への結合活性を有する。シュードモナス・フルオレッセンスは、20Lの発酵の
間に、エシェリキア・コリの約6倍を超えてタンパク質を発現し、SDS−PAGEおよ
びデンシトメトリーで測定されるように、シュードモナス・フルオレッセンスにおいては
3.1 g/Lの収量、およびエシェリキア・コリにおいては0.5g/Lの収量であっ
た(表8を参照すること)。シュードモナス・フルオレッセンスは、約96%の可溶性タ
ンパク質を発現したのに対して、エシェリキア・コリはわずかに48%の可溶性タンパク
質を発現した。
【表8】

図2に示されるように、両者の発現系から精製された成分が、酵素結合免疫吸着法(E
LISA)によって活性であることが分かった。両方の株の溶解物から、等量のわずかの
溶解物の可溶性画分からも、アフィニティークロマトグラフィーを用いて成分を精製した
。最後に、シュードモナス・フルオレッセンスについての全体量の回収プロセスは、エシ
ェリキア・コリについてのそれよりも約20倍を超えて効率的であり、1.34g/L対
0.07g/Lであった。
【実施例2】
【0173】
実施例2:細胞質内でのヒトγ−IFNの発現
ヒトガンマ−インターフェロンのクローニング
PW Gray et al. (1982) Nature 298 : 859-63に記載のMet−Cys−Tyr−Cy
s−Gln−Asp−Proから始まる組み換え型γ−IFNのN末端を伴う天然の分泌
シグナルが欠如するように、ヒトガンマ−インターフェロン(hu−γIFN、Genb
ank受入番号X13274)を、ヒト脾臓のcDNAライブラリー(Invitrog
en,Carlsbad,CA,USA;カタログ番号10425−015)から増幅し
た。得られた産物をpCR2.1 TOPOベクター内にクローニングし、その配列を確
認した。SpeI制限酵素およびXhoI制限酵素でhu−γIFN遺伝子をTOPOベ
クターから切り出し、pMYC1803の同じ部位内にクローニングした。別個の反応に
おいて、AflIII部位およびXhoI部位がコード配列に隣接するように、hu−γ
IFNを増幅した。得られた断片をTOPO−TAベクター(Invitrogen社)
内にクローニングし、化学的にコンピテント化されたエシェリキア・コリJM109細胞
(Promega,Madison,WI,USA)内に形質転換した。AflIIIお
よびXhoI(New England Biolabs社)で消化することによってこ
の遺伝子を単離し、pET24d+(Novagen,Madison,WI,USA)
のT7プロモーターの下流のNcoI部位およびXhoI部位内にクローニングし、JM
109内に形質転換した。陽性クローンをエシェリキア・コリBL21 (DE3)細胞
(Novagen社)内に形質転換し、発現について試験した。
【0174】
ヒトガンマ−インターフェロンの精製
シュードモナス・フルオレッセンス培養物からの凍結した細胞ペーストを解凍し、溶解
緩衝液(50mMのNaCl、10mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸、カタログ
番号BPII8−500、Fisher Scientific,Springfiel
d,NJ,USA)、1mMのPMSF(フェニルメチルスルホニルフロリド、カタログ
番号P−7626、Sigma,St.Louis,MO)、1mMのジチオスレイトー
ル(カタログ番号D−0632、Sigma社)、および1mMのベンズアミジン(カタ
ログ番号B−6506、Sigma社)を含む50mMのリン酸カリウム、pH7.2)
で、2mLの溶解緩衝液あたり約1グラムの細胞ペーストの割合で再懸濁した。マイクロ
フリューダイザ(モデル110Y,Microfluidics Corporatio
n,Newton,MA,USA)に3回通すことによって、細胞を破壊した。細胞の残
骸および破壊されなかった細胞を、遠心分離(Beckman Coulter遠心分離
装置;モデルJA 25.50,Beckman Coulter,Inc.,Full
erton,CA,USAを用いて4℃、23,708xgで60分間)によって除去し
た。得られた上清(細胞を含まない抽出物)を、10%w/vの珪藻土(セライト産物、
World Minerals,Inc.,Goleta,CA,USA)を添加して清
澄にし、得られたものを減圧ろ過にて、ろ紙(Whatman 1、カタログ番号100
1−150、 Whatman Paper Ltd.,Maidstone,Kent
,UK)に通した。
【0175】
清澄化した細胞抽出物を、緩衝液Aにて0.5mL/分の流速で平衡化したSP−Se
pharose FAST FLOW (6%の架橋アガロースビーズ成分;カタログ番
号17−0709−10、Amersham Biosciences,Piscata
way,NJ,USA)の3.2cmx13.5cmのクロマトグラフィーカラムに添加
した。緩衝液Aの組成は次の通りであった:50mMのHEPES、pH7.8(すなわ
ちN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン)N’−(2−エタンスルホン酸)、Fis
her Scientific社、カタログ番号BP−310−100から)、50mM
のNaCl、1mMのEDTA、および0.02%のアジ化ナトリウム(カタログ番号7
1289、Sigma Chemical社)。負荷後、このカラムをカラム体積の3倍
量(カラム体積=108mL)の緩衝液Aと、カラム体積の5倍量の0.4MのNaCl
を含む緩衝液Aとで洗浄した。さらに、2mL/minの流速で合計カラム体積の7倍分
の、同じ緩衝液の0.4M〜1Mの勾配を付けたNaClを添加して、カラムを展開した
。次いで、純粋なIFN−γを含む画分を集めて、1X PBS(リン酸緩衝化塩類溶液
、pH7.2)に対して4℃で透析した。限外ろ過(YM30限外ろ過膜を使用;カタロ
グ番号13722、Millipore,Bedford,MA USAより)によって
、タンパク質を濃縮した。次いで、液体窒素で凍結させて80℃で貯蔵した。
【0176】
エシェリキア・コリおよびシュードモナス・フルオレッセンスにおけるヒトγ−インタ
ーフェロンの発現
γ−IFN遺伝子を発現するエシェリキア・コリの発酵によって、ヒトγ−インターフ
ェロンを商業的に生産する。このタンパク質を不溶型および不活性型の状態で、細胞質内
で発現させる。組み換え体ポリペプチドを活性な医薬成分として生産するために、インタ
ーフェロンを回収し、溶解させ、再折りたたみさせ、次いで精製しなければならない。こ
れらの単位操作のすべては、タンパク質の原価(COG)をかなり上昇させる。ヒト脾臓のc
DNAライブラリーを、天然のシグナル配列を含まないγIFN cDNAを増幅するた
めの鋳型として用い、エシェリキア・コリの発現ベクターおよびシュードモナス・フルオ
レッセンスの発現ベクター内にクローニングする。典型的な20Lの発酵反応の間に、シ
ュードモナス・フルオレッセンス構築物は約4g/LのγIFNタンパク質を生産した。
可溶性画分および不溶性画分のSDS−PAGEおよびウエスタン分析から、タンパク質
の大部分(95%)が可溶性画分内に存在することが示される。図1は、シュードモナス
・フルオレッセンスサンプルの可溶性画分から精製されたhu−γ−IFNが、市販の標
準に匹敵する活性を示すことを示す。図5および表9は、エシェリキア・コリの発現系と
シュードモナス・フルオレッセンスの発現系との間でのγ−IFNの発現の比較を示す。
【表9】

【0177】
ヒトガンマ−インターフェロン活性の評価
セルラインおよび培地:Hela細胞(カタログ番号CCL−2)および脳心筋炎ウイ
ルス(ECMV、カタログ番号VR−129B)を、American Type Cu
lture Collection (Manassas,VA)から入手した。10%
ウシ胎血清(Gibco,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を
有するイーグル改変必須培地(Cellgro EMEM,Mediatech,Her
don,VA,USA)で、37℃/5%のCO2にて、HeLa細胞を維持した。
【0178】
既述のウイルス阻害アッセイ(JA Lewis (1987) in Lymphokines and Interferons : A
Practical Approach MJ Clemens et al. (eds.) (IRL Press Ltd,Oxf
ord,England)を用いて、精製hu−γIFNの活性を評価した。概略を言え
ば、HeLa細胞を96ウェルマイクロタイタープレートにウェルあたり3X104で播
種した。24時間後、シュードモナス・フルオレッセンスから単離された精製hu−γI
FN、またはエシェリキア・コリ組み換え体hu−γIFN(R and D Syst
emsより、Minneapolis,MN,USA)を、ウェルあたり0、0.01ま
たは0.05ngにて三通り、ウェルに添加した。hu−γIFNと共に細胞を24時間
のプレインキュベートした後、ECMVを種々の希釈率で添加して、三通りのウェルを設
定した。細胞を5日間インキュベートし、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(カタロ
グ番号1647229、Roche Molecular Biochemicals,
Indianapolis,IN,USA)の取り込みを監視する細胞増殖ELISAを
利用して、その後細胞の生存性を測定した。活発に分裂する(生きている)細胞数の存在
がより多いことによって、吸光度がより大きくなるという吸光単位として結果を表す。
【実施例3】
【0179】
実施例3:細胞質内でのhGHの発現
ヒトcDNAライブラリーからヒト成長ホルモン(hGH)を増幅するようなプライマ
ーを設計した。この研究のために、製造業者のプロトコールに従ってAmpliTaqポ
リメラーゼ(Perkin Elmer社)を用い、鋳型としての上記のプラスミドと、
プライマーELVIrevおよびhgh−sigを用い、そして95℃で2分間(95℃
で60秒間・42℃で120秒間・72℃で3分間)を25回行うPCRサイクリングプ
ロフィールによってhGHを増幅した。Wizard PCR DNA精製キット(Pr
omega社)を用い、SpeI制限酵素およびXhoI制限酵素(New Engla
nd Biolabs社)で消化して、得られた産物を精製し、pMYC1803の同じ
部位内にクローニングした(図3)。増幅されたhGHで見つかった変異体を、ELVI
revを伴うhgh−sigcorrプライマーと、PCRおよびクローニング手法を繰
り返し利用して集めた。
【表10】

【0180】
hGHの精製
20Lの発酵の後、0.25MのNaCl工程の代わりにDEAE FF溶出と0〜0
.5MのNaCl勾配を用いた間を除いて、エシェリキア・コリ細胞およびシュードモナ
ス・フルオレッセンス細胞の不溶性画分から、hGHを精製した。
【0181】
エシェリキア・コリ内対シュードモナス・フルオレッセンス内のヒト成長ホルモンの発

ヒト下垂体cDNAライブラリーから、ヒト成長ホルモンをコードするcDNAを増幅
した。細菌による発現のために、天然の分泌シグナル配列を除去し、N末端のメチオニン
を改変して構築物内とした。エシェリキア・コリの発現のために、hGH遺伝子を含むp
ET25ベクターをBL21(DE3)内に形質転換した。これは、hGHの転写に必須
の組み込まれたT7ポリメラーゼ遺伝子を含む。シュードモナス・フルオレッセンスの発
現の研究はMB214株にて行った。これは、Ptacプロモーターからの発現を制御す
るための、組み込まれたlacI遺伝子を含む。20Lの発酵規模で、両方の発現系を評
価した。表10に示されるように、1グラムの乾燥生物体量あたりの生産されたタンパク
質の量において、シュードモナス・フルオレッセンス(Pf)はエシェリキア・コリ(E
C)より高効率であった(1.6倍に等しい)。
【表11】

細胞分画化およびSDS−PAGE分析から、両方の発現系(図4)において、hGH
が不溶性画分に見出されることが示される。驚くべきことに、乾燥生物体量1グラムあた
りのタンパク質生産はわずかに1.6倍の違いしかないにも関わらず、エシェリキア・コ
リと比較して、約7Xを超えるhGHモノマーを、シュードモナス・フルオレッセンスか
ら精製した。
【表12】

【実施例4】
【0182】
実施例4:ペリプラズム内でのタンパク質の発現
分泌シグナルペプチドのキャラクタライゼーション
アルカリホスファターゼ(phoA)コード配列−ゲノムDNA融合体の形成および発現によ
って、シュードモナス・フルオレッセンスの分泌シグナルペプチドを発見した。そしてこ
のペプチドは、2004年11月22日に出願された米国出願第10/996,007号
により詳細に記載されている。発現された融合体のうちの六つを、さらに次のように特徴
づけた。
【0183】
phoA融合体として特定された、分泌された遺伝子についてのシグナル配列の切断部
位を、その他のシュードモナス菌からの相同なタンパク質と、SPScanプログラム(M
enne et al, 2000)によって比較することで推定した。推定されるリポタンパク質の切断
部位を、シグナルペプチダーゼIIモチーフと比較することで推定した;シグナルペプチ
ダーゼIIは特異的にリポタンパク質のシグナル配列を切断する。六つのシグナルペプチ
ドのすべてを、SignalP(推定されるシグナルペプチドの分析のためのソフトウェ
アプログラム;Center for Biological Sequence Analysis of the Technical Universit
y of Denmarkより、http://www.cbs.dtu.dklservices/SignalP/にて利用可能)を用いて
分析した。さらに、Nielson et al. (1997) Protein Engineering 10: 1-6を参照するこ
と。いくつかの場合において、追加された供給源を用いてシグナルペプチドの同一性をさ
らに特徴づけた。この情報を表12に提示する。
【表13】

【0184】
融合タンパク質を検出するためのphoA融合タンパク質のウエスタン分析
融合タンパク質が生産されたかどうかを分析するために、遠心分離によって全細胞画分
(細胞質およびペリプラズム)と細胞を含まない培地画分とに分けられた培養物に関して
、アルカリホスファターゼに対する抗体を用いたウエスタン分析を実施した。挿入部位が
決定された5株のうち、4つ(推定されるアズリン、推定されるリン酸結合タンパク質、
推定されるペリプラズムのリポタンパク質B、推定されるFe(III)結合タンパク質
)が、予想されたサイズの融合タンパク質を生産し、そして一つ(推定されるoprEタ
ンパク質)が予想よりも約40kD小さいタンパク質を生産した。そして一つ(推定され
るLys−Arg−Orn結合タンパク質)が予想よりも約20kD小さいタンパク質を
生産した。
【0185】
タンパク質をSDS−PAGEで分離し、Xcell SureLockTM Min
i−CellおよびXCell II TM Blot Module (Invitr
ogen社)を用いて、40Vで一時間かけて、ニトロセルロース膜に移した。Supe
rSignal West HisProbeTM Kit (Pierce社)から提
供の説明書を用いて、ウエスタン実験を実施した。
【0186】
pbp−hGH融合体の構築、発現および特徴付け
シュードモナス・フルオレッセンスのリン酸結合タンパク質分泌リーダーを、ヒト成長
ホルモン(hGH)遺伝子の成熟したドメインのN末端と融合させ、発現および分泌につ
いて試験した。
【0187】
シュードモナス・フルオレッセンスのクローンから、pbpシグナル配列を鋳型として
、そしてsig_pbp for(gctctagaggaggtaacttatgaaactgaaacg)プライマーおよびpbp_hgh (g
ggaatggttgggaaggccaccgcgttggc)プライマーを用いて、pbpシグナル配列コード領域を
PCR増幅し、次いでゲルで精製した。これによって、結果的にpbpシグナルペプチド
CDSおよびhGHの成熟したドメインの5’末端についてのコード配列を含むオリゴヌ
クレオチド断片が生産された。
【0188】
プライマーELVIfor(agagaactagtaaaaaggagaaatccatggctacaggctcccggacgtcc)およびELV
Irev(agagactcgagtcattagaagccacagctgccctccac)を用いて、ヒト下垂体cDNAライブラ
リー(Clontech,Palo Alto CA)から、ヒト成長ホルモンをコード
するcDNAをPCR増幅した。これらのプライマーは、hGHの成熟したドメインのみ
を増幅し、pMYCl 803/SpeI XhoI内にクローニングしてpDOW24
00を形成するように設計されていた。プライマーpbp_hgh_revcomp(gccaacgcggtggccttc
ccaaccattccc)およびhgh_rev(agagactcgagtcattagaagccacagctgccctccacagagcggcac)を用
いて、pDOW2400からこの成熟したhGH遺伝子を増幅した。次いで、Strat
aprepカラム(Stratagene社)で精製してプライマーおよびその他の反応
成分を除去した。pbp−hGH融合体をコードするポリヌクレオチドを作製するために
、二つのPCR反応物を混ぜ合わせて、二つの断片を結合させるために、sig_pbp
forおよびhgh_revを用いて再び増幅した。予想された681bp断片を、上
記のようなStrataprepを用いて精製し、XbaIおよびXhoIで制限消化し
、脱リン酸化pDOW1269/XhoISpeIと連結してpDOW 1323−10
を形成させ、pMYC1803に類似のベクター内にてtacプロモーターの制御下にp
bp−hGHを置いたが、tetRテトラサイクリン耐性マーカー遺伝子に代えてpyr
F選択マーカーを用いた。連結混合物をMB101 pyrF proC lacIQ1
に形質転換した。Dow Chemical Companyのものによって、上記の方
法を利用して挿入物の配列を決定した。この融合体のDNA配列およびアミノ酸配列を、
(図10)および(図11)にそれぞれ提示する。
【0189】
得られた株をまず振盪フラスコ規模で試験した。プロセシングされたまたはプロセシン
グされなかったものの予想されたサイズの誘導されたバンド(それぞれ22.2kDaお
よび24.5kDa)をSDS−PAGEで検出した。タンパク質のほぼ半分がプロセシ
ングされ(ペリプラズムに局在化していることを示す)、そしてプロセシングされたもの
の約半分が可溶性画分に、半分が不溶性画分にあった。発現の研究を20Lのバイオリア
クターにスケールアップした。クーマシーで染色されたSDS−PAGEゲルのデンシト
メトリーから、生産された総hGHの18%がプロセシングされて可溶性となったことが
示された。この株はすべての型のhGHを3.2g/L生産した;プロセシングされて可
溶性となったものは0.6g/Lであった。
【0190】
pbp−scFv融合体の構築、発現および特徴付け
リン酸結合タンパク質(すなわちMet1など)の推定される24アミノ酸のシグナル
配列を、+2アミノ酸(Ala)の位置で、gal2のscFv遺伝子(gal2)のオ
ープンリーディングフレームと融合した。図8および図9を参照すること。このシグナル
配列はプロセシングを受けているように思われ、ペリプラズムに分泌されたことが示唆さ
れる。さらに、細胞を含まない培養上清内でタンパク質が検出されたことから、培地への
分泌も存在する。驚くべきことに、リン酸結合タンパク質のシグナル配列に融合すること
は、シュードモナス・フルオレッセンス内でのgal2 scFvの発現を改善するよう
である。アミノ末端で融合された分泌シグナルなしでは、gal2 scFvの発現が検
出できなかった。
【0191】
Gal2のクローニング
プライマーsig_pbp for(上記)およびpbp_gal2SOE rev(ctgcacctgggcggccaccgcgtt)、
これはpbp_gal2SOE for(aaccgcggtggccgcccaggtgcag)の逆相補鎖を含む、を用い、そして
シュードモナス・フルオレッセンスのpbp分泌シグナルペプチドをコードするプラスミド
を鋳型としてを用いてPCRを実施した。これによって、結果的に、pbpシグナルペプ
チドコード配列(CDS)およびgal2一本鎖抗体(scAbまたはscFv)の5’
末端についてのCDSを含むオリゴヌクレオチド断片が生産された。
【0192】
プライマーpbp_gal2SOE forおよびscFv2rev(acgcgtcgacttattaatggtg atgatggtgatgtgc
ggccgcacgtttgatc)を用い、そしてgal2をコードするポリヌクレオチドを鋳型として
用いてPCRを実施した。これによって、結果的に、pbpシグナルペプチドの3’末端
をコードするCDSと、オープンリーディングフレーム(ORE)をコードするgal2
とを含むポリヌクレオチド断片が生産された。
【0193】
反応産物を精製した。それぞれ約15ngを、プライマーsig_pbp_forおよ
びscFv2revを用いてのさらなるPCR反応における「鋳型」DNAとして用いた
。これによって、結果的に、gal2コード配列に融合したpbpシグナルペプチドCD
Sを伴う核酸断片が生産された。
【0194】
予想された、シグナル配列の−1アミノ酸(これは切断部位がプロポーズされる前の最
後のアミノ酸)を、gal2 scFv(Ala)の+2アミノ酸と融合した。得られた
融合体を、Ptacプロモーターの制御下のシュードモナス・フルオレッセンスベクター
pMYC1803内にクローニングし、プラスミドおよびpDOW1123(pbp:g
al2)を生産させた。このプラスミドを、プラスミドpCN51−lacI(2004
年11月19日に出願された米国出願第10/994,138号に記載されている)を保
持するシュードモナス・フルオレッセンスMB101株内に形質転換した。
【0195】
推定されるリン酸結合タンパク質のシグナル配列のgal2 scFvとの融合
リン酸結合タンパク質のシグナル配列を一本鎖抗体遺伝子と融合し、ペリプラズムおよ
び/または培養上清への分泌について試験した。
【表14】

【0196】
得られた株をまず振盪フラスコ規模で試験した。不溶性タンパク質画分内で、プロセシ
ングされたまたはプロセシングされなかったgal2の予想されたサイズの誘導されたバ
ンド(29kDaおよび27kDa)をSDS−PAGEで検出した(データは示さず)
。発現の研究を20Lの発酵にスケールアップした。再度のSDS−PAGE分析から、
誘導されたタンパク質の大部分が不溶性タンパク質画分に見られることが示された。
【0197】
ウエスタン分析から、いくらかのプロセシングされたgal2が、pbp:gal2(
pDOW1123)についての可溶性タンパク質画分に存在することも示された。(Ep
icentre細胞膜キットを用いての)pDOW1123を保持する株から調製された
ペリプラズム画分のウエスタン分析から、可溶性gal2タンパク質が存在することが示
された。
【0198】
Qiagen Ni−NTAプロトコールを利用して、組み換え体gal2 scFv
を、振盪フラスコ実験の細胞抽出物から単離し、次いでP. Martineau et al. , J Mol. B
iol. 280 : 117-127 (1998)に記載のように再折りたたみを行わせた。この抗体は、ELISA
アッセイにおいて、β−ガラクトシダーゼに対して活性を持つことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の組み換え型タンパク質の発現を増加させるための方法であって:
a.シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)の宿主細胞を、哺
乳動物の組み換え型タンパク質をコードする核酸で形質転換する工程;および
b.哺乳動物の組み換え型タンパク質の発現が可能な条件下で、その細胞を培養する工
程;を含み、
エシェリキア・コリ(E. coli)の発現系内で実質的に同等の条件下でのタンパク質の発現
レベルと比較したときにそのタンパク質の発現レベルが増加している方法。
【請求項2】
哺乳動物の組み換え型タンパク質を単離する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
哺乳動物の組み換え型タンパク質を実質的に精製する工程をさらに含む、請求項2の方
法。
【請求項4】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が可溶型で該宿主細胞内に存在する、請求項1の方法

【請求項5】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が不溶型で該細胞内に存在する、請求項1の方法。
【請求項6】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が活性型で該細胞内に存在する、請求項1の方法。
【請求項7】
哺乳動物の組み換え型タンパク質がヒトのペプチドである、請求項1の方法。
【請求項8】
組み換え型タンパク質が、全細胞タンパク質の約5%を超えるように生産される、請求
項1の方法。
【請求項9】
組み換え型タンパク質が、全細胞タンパク質の約10%を超えるように生産される、請
求項1の方法。
【請求項10】
組み換え型タンパク質が、少なくとも10g/Lの濃度で生産される、請求項1の方法

【請求項11】
組み換え型タンパク質が、少なくとも20g/Lの濃度で生産される、請求項1の方法

【請求項12】
組み換え型タンパク質が、少なくとも40g/Lの濃度で生産される、請求項1の方法

【請求項13】
シュードモナス・フルオレッセンスの宿主細胞内で哺乳動物の組み換え型タンパク質を
生産するための方法であって:
a.宿主細胞を哺乳動物の組み換え型タンパク質をコードする核酸で形質転換する工程

b.哺乳動物の組み換え型タンパク質の発現が可能な条件下で、その細胞を培養する工
程;および
c.哺乳動物の組み換え型タンパク質を単離する工程、を含む方法。
【請求項14】
哺乳動物の組み換え型タンパク質を実質的に精製する工程をさらに含む、請求項13の
方法。
【請求項15】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が可溶型で宿主細胞内に存在する、請求項13の方法

【請求項16】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が不溶型で宿主細胞内に存在する、請求項13の方法

【請求項17】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が活性型で宿主細胞内に存在する、請求項13の方法

【請求項18】
哺乳動物の組み換え型タンパク質がヒトのペプチドである、請求項13の方法。
【請求項19】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が少なくとも約1kD〜約500kDの間の質量を有
する、請求項13の方法。
【請求項20】
哺乳動物の組み換え型タンパク質が約30kDを超える質量を有する、請求項19の方
法。
【請求項21】
組み換え型タンパク質が、全細胞タンパク質の約5%を超えるように生産される、請求
項13の方法。
【請求項22】
組み換え型タンパク質が、全細胞タンパク質の約10%を超えるように生産される、請
求項13の方法。
【請求項23】
組み換え型タンパク質が、少なくとも10g/Lの濃度で生産される、請求項13の方
法。
【請求項24】
組み換え型タンパク質が、少なくとも20g/Lの濃度で生産される、請求項13の方
法。
【請求項25】
組み換え型タンパク質が、少なくとも40g/Lの濃度で生産される、請求項13の方
法。
【請求項26】
宿主細胞内でヒトの組み換え型タンパク質を生産するための方法であって:
a.宿主細胞をヒトの組み換え型ペプチドをコードする核酸で形質転換する工程;およ

b.ヒトの組み換え型ペプチドの発現が可能な条件下で、その細胞を培養する工程;を
含み、
宿主細胞がシュードモナス・フルオレッセンスである方法。
【請求項27】
ヒトの組み換え型タンパク質が可溶型で宿主細胞内に存在する、請求項26の方法。
【請求項28】
ヒトの組み換え型タンパク質が活性型で宿主細胞内に存在する、請求項26の方法。
【請求項29】
ヒトの組み換え型ペプチドをコードする核酸を含む、シュードモナス・フルオレッセン
ス細胞。
【請求項30】
ヒトの組み換え型ペプチドを発現する、請求項29の細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−172599(P2011−172599A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132011(P2011−132011)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2006−549690(P2006−549690)の分割
【原出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】