説明

ショートアーク型水銀ランプ

【課題】放電ランプとしての耐圧特性や電極の位置精度を有しつつ、プロジェクター装置に適した小型化の光源を提供することである。
【解決手段】内部に一対の電極(20)が対向配置し、0.15mg/mm以上の水銀とハロゲンを含む包囲体よりなる発光部(11)を有する構成において、発光部(11)の外表面には、光取出用開口(31)を除いて、全表面に反射部材(30)が施されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はショートアーク型水銀ランプに関する。特に、プロジェクター装置に使われる小型化したショートアーク型水銀ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクター装置は、より一層の小型軽量化が進展し、装置内部に収納される光源もさらなる小型軽量化が求められている。
従来の光源は、例えば、特開2003−132702に開示されるように、放電ランプ(光源ランプ)は凹面形状の反射鏡(リフレクター)の中に組み込まれる。
この場合、プロジェクター装置の大きさは、反射鏡の寸法に大きく依存し、インテグレータ、平面ミラーなどの光学素子は反射鏡の前面開口の大きさに応じて設計されていることがわかる。つまり、プロジェクター装置を小型化するという課題は、すなわち、反射ミラーを小さくするという課題にほかならない。
【0003】
一方、光源を小型化した構造として、例えば、特開2005−70411号がある。
この文献には、放電ガスや電極を含む発光管を透光性の円筒部材で構成し、この円筒部材の一端から放射する投射装置が提案され、出射光の損失を抑えつつ、小型化が可能で、かつ、冷却効率に優れた光源を提供している。
しかし、透光性の円筒部材で放電空間は形成することが困難であり、点灯時の圧力が極めて高くなる場合の耐圧構造や、電極間距離を正確にするための配置構造を、精度良く作ることは事実上できない。
【特許文献1】特開2003−132702号
【特許文献2】特開2005−070411号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、放電ランプとしての耐圧特性や電極の位置精度を有しつつ、プロジェクター装置に適した小型化の光源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明に係るショートアーク型水銀ランプは、内部に一対の電極が対向配置し、0.15mg/mm以上の水銀とハロゲンを含む発光部よりなる発光部を有する構成において、前記発光部の外表面には、光取出用開口を除いて、全表面に反射部材が施されたことを特徴とする。
【0006】
また、光取出用開口には、前記発光部と一体的に外側に突出するレンズが形成されたことを特徴とする。
【0007】
また、光取出用開口は、発光管残部の位置に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、この発明に係るショートアーク型水銀ランプは、
第一に、発光管の外表面に反射部材を施して反射機能も持たせるため、ランプと物理的に別部材である反射鏡を持たず、このため装置全体を極めて小さくできる。
第二に、放電ランプの形態を基本的にそのまま維持するため、十分な耐圧構造を保持しつつ、電極の位置なども精度よく設計できる。
第三に、放電ランプから放射される光を、ほぼ全て光取出用開口から放射するため、極めて高い光の利用効率を達成できる。
【実施例】
【0009】
図1は本発明に係るショートアーク型水銀ランプを示す。
放電ランプ10は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された概略球形の発光部11を有する。この発光部11の中には一対の電極20が3mm以下の間隔で対向配置している。また、発光部11の両端部には封止部12が形成される。この封止部12には、モリブデンよりなる導電用金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設される。金属箔13の一端には電極20の軸部が接合しており、また、金属箔13の他端には外部リード14が接合して外部の給電装置から給電が行なわれる。
発光部11には、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360〜780nmの放射光を得るためのもので、0.15mg/mm以上封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時150気圧以上で極めて高い蒸気圧となる。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧250気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクター装置に適した光源を実現できる。
【0010】
希ガスは、例えば、アルゴンガスが約13kPa封入される。その機能は点灯始動性を改善することにある。ハロゲンは、沃素、臭素、塩素などが水銀あるいはその他の金属と化合物の形態で封入される。ハロゲンの封入量は、10−6μmol/mm〜10−2μmol/mmの範囲から選択される。ハロゲンの機能は、いわゆるハロゲンサイクルを利用した長寿命化であるが、本発明の放電ランプのように極めて小型できわめて高い点灯蒸気圧のものは、放電容器の失透防止という作用もある。
放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の最大外径10mm、電極間距離3.0mm、発光管内容積70mm、定格電圧100V、定格電力20Wであり交流点灯される。
また、この種の放電ランプは、小型化するプロジェクター装置に内蔵されるものであり、全体寸法として極めて小型化が要請させる一方で高い発光光量も要求される。このため、発光部内の熱的影響は極めて厳しいものとなる。ランプの管壁負荷値は0.8〜2.0W/mm、具体的には1.5W/mmとなる。
このような高い水銀蒸気圧や管壁負荷値を有することがプロジェクター装置やオーバーヘッドプロジェクターのようなプレゼンテーション用機器に搭載された場合に、演色性の良い放射光を提供できる。
【0011】
反射部材30が発光部11の外表面のほぼ全領域には施されている。ただし、一部には反射部材30が形成されていない光取出用開口31が存在する。すなわち、発光部11から放射される光は反射部材30により反射され、場合よっては多数回反射を繰り返して、最終的に光取出用開口31から放射される。
ここで、発光部11が球形である場合、幾何学的にはアーク輝点から放射される光は、反射部材30で反射されてもアーク輝点に戻ることとなるが、現実には、アークは有限の領域を有するので放射光は最終的には光取出用開口31から放射することができる。
【0012】
反射部材30は、例えば、ジルコニア(ZrO2)と酸化シリコン(SiO2)の多層膜あるいは、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)の多層膜から構成される。また、光取出用開口31は、例えば、φ5mm以下の小径からなる。
【0013】
このような構成により、第一に、発光部11の外表面に反射部材30を施しているので、物理的に別部材の凹面反射鏡を必要とすることなく放射光を反射できる。また、物理的に別部材の凹面反射鏡を必要としないことから装置全体を極めて小型にできる。このことは、A4版サイズやB5版サイズのプロジェクター装置から、モバイル型プロジェクター装置を提供することが可能となり、さらに、パソコン本体にプロジェクター装置を内蔵することも可能となる。また、別部材の凹面反射鏡を必要としないことから、放電ランプを冷却するための構造上の自由度が増し、容易に冷却することができる。
【0014】
第二に、放電ランプの形態を基本的にそのまま維持しているため、十分な耐圧構造を保持しつつ、電極の位置なども精度よく設計できる。特に、0.15mg/mm以上の水銀が封入される放電ランプにあっては、点灯時圧力が150気圧以上の高圧になるが、それに耐えうる構造を容易に提供できる。第三に、放電ランプから放射される光を、ほぼ全て光取出用開口から放射するため、極めて高い光の利用効率を達成できる。
【0015】
図2は本発明に係るショートアーク型水銀ランプの他の実施形態を示す。
図1と同一番号は同一の構成を示し、図1と異なるところは、光取出用開口31からレンズ部材32を伸びており、このレンズ部材32は発光部11を構成する部材を一体的に形成される。
従って、ランプ10からの放射光は、ほぼ全てが光取出用開口31から取り出されるが、当該光はレンズ部材32の中をファイバー効果によって伝達することで良好に導かれる。
【0016】
図3は本発明に係るショートアーク型水銀ランプの他の実施形態を示す。
図1と同一番号は同一の構成を示し、図1と異なるところは、光取出用開口31が排気管残部32の位置に形成されている。排気管残部32は、放電ランプの製造工程において、発光部からガスを排気する場合などに使う排気管を最終的に切除した場合に残るものであり、通常はチップと称するように、小さなガラスの塊となる。この実施形態は、排気管残部32を光取出用開口31の位置に設けることでレンズ効果を持たせるものである。なお、排気管残部32の外表面は平滑化することが望ましい。
【0017】
放電ランプの製造方法を簡単に説明する。まず、放電ランプの形状にできあがった石英ガラスを旋盤に取り付けて回転させる。発光部に相当する位置にカーボンローラーを押し当てて発光部表面を成形する。この状態は電極や金属箔あるいは水銀などの発光物質は封入しておらず、石英ガラスだけである。
次に、放電ランプの形状をした石英ガラスを旋盤から取り外し、成形型の中に入れた状態で石英ガラスの内部に圧縮空気を加圧させる。これは一般にブローニングと呼ばれる製法で型に突起に相当する形を凹部として作っておくことで、石英ガラスの外表面にレンズを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係るショートアーク型水銀ランプを示す。
【図2】図1は本発明に係るショートアーク型水銀ランプを示す。
【図3】図1は本発明に係るショートアーク型水銀ランプを示す。
【符号の説明】
【0019】
10 放電ランプ
11 発光部
12 封止部
13 金属箔
14 外部リード
20 電極
30 反射部材
31 光取出用開口
32 排気管残部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極が対向配置し、0.15mg/mm以上の水銀とハロゲンを含む包囲体よりなる発光部を有するショートアーク型水銀ランプにおいて、
前記発光部の外表面には、光取出用開口を除いて、全表面に反射部材が施されたことを特徴とするショートアーク型水銀ランプ。
【請求項2】
前記光取出用開口には、前記発光部と一体的に外側に突出するレンズが形成されたことを特徴とする請求項1のショートアーク型水銀ランプ。
【請求項3】
前記光取出用開口は、発光管残部の位置に設けられたことを特徴とする請求項1のショートアーク型水銀ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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