ショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置、及びそれらの各製造方法
【課題】放電特性の安定性、耐久性、信頼性の向上を図る。
【解決手段】それぞれ高融点金属から成る電極芯軸3の先端部に電極本体1が配置されて成るショートアーク型高圧放電電極の製造方法であって、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を、電極芯軸3の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体12とする仮焼結を行い、電極芯軸3の先端部を電極本体2の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体21を構成し、放電電極構体21を焼結熱処理し、電極本体2の本焼結と、電極本体2と電極芯軸3との収縮率の差によって両者の結合を行い、内部ひずみの残存の回避により、クラック等の発生が回避され、放電特性の安定性、耐久性、信頼性の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】それぞれ高融点金属から成る電極芯軸3の先端部に電極本体1が配置されて成るショートアーク型高圧放電電極の製造方法であって、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を、電極芯軸3の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体12とする仮焼結を行い、電極芯軸3の先端部を電極本体2の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体21を構成し、放電電極構体21を焼結熱処理し、電極本体2の本焼結と、電極本体2と電極芯軸3との収縮率の差によって両者の結合を行い、内部ひずみの残存の回避により、クラック等の発生が回避され、放電特性の安定性、耐久性、信頼性の向上を図ることができるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置、及びそれらの各製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの投射型プロジェクタの光源や自動車用照明灯において、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプなどのH.I.D.(High-Intensity-Discharge)ランプが広く用いられる。
【0003】
メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ等においては、動作中に、その放電電極の少なくとも一部が、2000℃以上にも及ぶ高温になる。
このため、通常、この放電電極は、タングステンなどの高融点金属によって構成される。
放電ランプにおいて要求される電極特性は、形状寸法精度や耐熱強度の信頼性などが挙げられる。
例えば液晶プロジェクタTVなどの表示装置の光源として用いられるメタルハライドランプや、超高圧水銀ランプなどのショートアーク型高圧放電管による光源ランプでは、特にその点光源としての放電安定性が重要である。
すなわち、この場合、アークスポットの変動やアーク温度の違いは、ちらつきやランプ輝度のばらつきを来たすことから好ましくない。
【0004】
図12は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等におけるショートアーク型高圧放電管の概略断面図である。
この放電管100は、中央に封止中空101を有する放電管体102内に、対の放電電極103が配置されて成る。対の放電電極は、封止中空101内において、その放電先端が相互に所要の間隔を保持して対向するように配置される。そして、両電極103からの給電端子104が放電管体12の両端から外部に気密的に封着されて導出される。
【0005】
図13は、従来一般の放電電極103の側面図である。この放電電極103は、実質的に放電を生じさせる電極先端となる電極本体105が、通電導体兼機械的支持がなされる電極芯軸106の先端に取着されて構成される。
図14A及びBは、それぞれ、放電電極103の電極本体105および電極芯軸106をそれぞれ構成する本体部材105aおよび芯軸部材106aの側面図である。
本体部材105aは、タングステンなどの高融点金属を主成分とする線材を例えば放熱効果を高めることができるように、表面積を大きくする形状の2層のコイル状とされる。
また、芯軸部材106aは、同様にタングステンなどの高融点金属を主成分とする円柱状とされる。
【0006】
そして、芯軸部材106aの先端部を、コイル状の本体部材105aの中心孔に貫通させその先端部の芯軸部材106aおよび本体部材105aを、YAGレーザ光等照射によって溶融し、図13に示すような、先端部を滑らかに湾曲するほぼ球面形状の釣鐘形状のショートアーク型高圧放電電極103を構成する。
【0007】
ところが、この製造方法および構造においては、YAGレーザによる溶融に際し、必要なレーザ照射部が、奥行きおよび広がりをもっていることから、レーザ光の1点照射によることができない。そのため、各部でレーザ照射のフォーカスがずれやすく、照射パワーが不均一となり、これによって放電動作時の電極温度にばらつきが生じ、アークスポットの変動、アーク温度の不均一などを生じ、この放電電極によって構成したショートアーク型高圧放電管の光学特性にばらつきを来たし、歩留まりの低下を来たす。
【0008】
これに対して、焼結電極の提案がなされている(特許文献1参照)。この焼結電極は、上述した電極芯軸に相当する棒芯ピンが用意され、この棒芯ピンの周りに焼結電極を構成する粉末が圧縮されて焼結されることによって棒芯ピンに結合された焼結電極を形成する。あるいは、棒芯ピンを圧縮成形型内に配置して、この周りに電極を構成する混合物を注入して焼結することによって棒芯ピンに結合された焼結電極を形成するというものである。
しかし、このような構成による場合、焼結に際して、棒芯ピンの周りに、焼結電極を構成する金属粉末とともに、バインダが含まれる材料圧縮されることから、このバインダに、棒芯ピンが接触した状態で、高温熱処理をされる。このとき、棒芯ピンにバインダによる不純物による再結晶脆化が促進することになる。
また、未焼結状態の電極が焼結されることから、焼結電極と棒芯ピンとの収縮率が大きく相違する。このため、破損が生じたり、ひずみが残存した放電電極が構成されることになる。
このような脆化、ひずみの存在等によって、不良品発生率が高くなるとか、特性の均一性に劣るとか、動作時の高温加熱、非動作時の降温の熱サイクルに対する耐久性、信頼性に問題が生じるおそれがある。
【0009】
また、上述した問題の解決をはかるべく、電極本体に形成した中心孔に電極芯軸を圧入することが考えられるが、タングステンの焼結体は、弾性に乏しいことから、これを適用することができない。
【0010】
一方、ショートアーク型高圧放電電極、放電管、放電光源装置等においては、更なる輝度信頼性向上のために、発光効率の更なる向上が望まれる。
【0011】
因みに、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ等においては、従来一般の放電電極103(図13参照)と類似の電極を搭載しているが、例えば発光効率を上げるためには、一般的に投入電力を上げて放電管内壁の温度を上げることによって、発光金属蒸気圧を上げる方法がある。しなしながら、主にイオン衝撃による電極の温度上昇が起き、熱による電極消耗や石英管内壁の結晶化(いわゆる失透)の促進による短寿命化が問題となる。その対策として、電極芯軸の径を太くする手段があるが、電極芯軸径を太くすると、石英管封止部における電極材のタングステンW(タングステンを主成分とする)と石英(SiO2)の熱膨張率差から石英に歪みが生じることで破裂に至る危険性が増す。
【0012】
本発明者らは、図13及び図14に示す従来の放電電極の場合、図15の断面構造に示すように、電極本体105と電極芯軸106とは一部空洞を有した状態で接合されているため、放電管の動作時に、電極本体105の先端から電極芯軸106を経由して放電管体(例えば石英管体)102への熱伝導が悪く、管体内壁温度を効率よく上げることができず、発光効率が上がらないことを見い出した。
【特許文献1】特表2000−505939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、タングステンを主成分とする電極構成とする場合においても、特性の安定性、均一性を有し、耐久性、信頼性にすぐれたショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置、及びこれらの各製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、それぞれ高融点金属から成る電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、本焼成された電極芯軸が、仮焼結された電極本体の中心孔に挿入されて焼結合体された構成を有することを特徴とする。
本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極にあって、上記電極本体および電極芯軸が、タングステンを主成分とする高融点金属から成る。
【0015】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有し、電極本体と電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2に設定されて成ることを特徴とする。
【0016】
本発明よるショートアーク型高圧放電電極の製造方法は、それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成るショートアーク型高圧放電電極の製造方法であって、高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、該放電電極構体の焼結熱処理工程とを有し、該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とを行なうことを特徴とする。ここで高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸とは、高融点金属の粉末冶金後、線引き加工したものや、高融点金属粉末を用いた粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による粉末成型法によって棒状体の成型体を作製後、焼結したものを言う。
【0017】
本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記本焼結された電極芯軸は、空孔率を10%以下とされて成ることを特徴とする。
また、本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記放電電極構体の本焼結熱処理工程は、上記電極本体の空孔率を10%以下とする焼結熱処理であることを特徴とする。
また、本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記高融点金属粉末は、タングステン、もしくは5重量%以下の添加材を有するタングステンで、平均粒径が1μm〜10μmの金属粉末とされたことを特徴とする。
また、本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記粉末成型工程が、粉末射出成型法もしくは粉末プレス法によることを特徴とする。
【0018】
本発明によるショートアーク型高圧放電管は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、本焼成された電極芯軸が、仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成ることを特徴とする。
【0019】
本発明によるショートアーク型高圧放電管は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、電極本体と電極芯軸との接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2に設定されて成ることを特徴とする。
【0020】
本発明によるショートアーク型高圧放電管の製造方法は、それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が、所定の間隔を保持して放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管の製造方法であって、上記ショートアーク型高圧放電電極の作製工程が、高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、 該放電電極構体の焼結熱処理工程とを有し、該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有することを特徴とする。
【0021】
本発明によるショートアーク型高圧放電光源装置は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、本焼成された電極芯軸が仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成ることを特徴とする。
【0022】
本発明によるショートアーク型高圧放電光源装置は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、電極本体と電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2に設定されて成ることを特徴とする。
【0023】
本発明によるショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法は、それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管と、該ショートアーク型高圧放電管からの発光を、所定方向に照射するリフレクタとを有するショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法であって、上記ショートアーク型高圧放電管の作製工程が、高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、該放電電極構体の焼結熱処理工程とを有し、該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有し、該ショートアーク型高圧放電管を、上記リフレクタに対して所定の位置関係に配置することを特徴とする。
【0024】
また、上述した本発明によるショートアーク型高圧放電管の製造方法およびショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法にあって、上記放電電極構体の熱処理工程の少なくとも一部を、上記ショートアーク型高圧放電管の組み立て後に、上記対の放電電極間に放電を開始させ、該放電による発熱によって行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上述の本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、電極本体が、電極芯軸の先端部すなわち放電が発生する先端側に配置された構成を有し、電極本体に対する通電路が電極芯軸によって構成され、かつ、この電極芯軸によって電極本体が支持された構成とされるものであるが、この構成にあって、本発明においては、仮焼結された電極本体、すなわち仮焼結によってバインダが実質的消失された電極本体と焼結がなされた電極芯軸とが焼結合体された構成とされていることから、前述したバインダによる電極芯軸の脆化を回避できる。
また、仮焼結電極本体と電極芯軸との焼結合体構造であることから、両者の焼結合体の収縮率が所要に近づけられる。そのため、ひずみや、クラック等の破損が生じにくい構成を有する。
【0026】
このショートアーク型高圧放電電極を適用して形成したショートアーク型高圧放電管及びショートアーク型高圧光源装置は、均一な特性を有し、耐久性、信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極の製造方法によれば、粉末成型工程、具体的には、粉末射出成型法、あるいは粉末プレス法によって電極本体を形成し、一方、十分焼結した電極芯軸を構成し、これらを焼結合体する方法としたことから、焼結合体時における収縮率の相違を、必要程度に残しつつ、十分小とすることができることによって、収縮率の大きな差によって、ひずみやクラックの発生を回避できる。
同時に、その収縮率の所要の差によって、電極本体によって電極芯軸を締め付けつつ焼結合体することができる。
したがって、歩留まりの向上、均一な特性を有し、耐久性、信頼性の高いショートアーク型高圧放電電極を製造することができる。
【0028】
したがって、このショートアーク型高圧放電電極の製造方法を適用して形成した本発明によるショートアーク型高圧放電管およびショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法は、それぞれ信頼性が高く、特性が安定した、耐久性にすぐれたショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置を製造することができる。
【0029】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、その電極本体と電極芯軸との接触面積を0.9mm2 〜3.2mm2とすることにより、放電管あるいは光源装置に適用した場合に、電極本体の先端から電極芯軸を経由して放電管体の放電空間内壁への熱伝導率が大きくなり、放電管内壁温度を効率よく上昇させることができる。これによって、発光効率がより向上する。したがって、更なる輝度信頼性の向上を図ることができる。
【0030】
本発明によるショートアーク型高圧放電管及びショートアーク型高圧光源装置は、電極本体と電極芯軸との接触面積を0.9mm2〜3.2mm2としたショートアーク型高圧放電電極を適用することにより、発光効率がより向上し、更なる輝度信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置の各製造方法と、ショートアーク型高圧放電電極の実施の形態例を説明する。しかしながら、本発明は、この形態例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0033】
[ショートアーク型高圧放電電極の実施の形態例]
図1A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1の一例の概略側面図および概略断面図である。
このショートアーク型高圧放電電極1は、それぞれ高融点金属から成る仮焼結された電極本体2の中心孔2hに、棒状の電極芯軸3の先端部が挿入され、これら電極本体2と電極芯軸3が焼結合体された構成を有する。
電極本体2と電極芯軸3とは、同一組成とすることが望ましく、タングステンを主成分として、これに対して例えば脆化改善のためのタングステン(W)に脆化対策としてカリウム(K)やレニウム(Re)などの(いわゆる)ドープ剤を5%以内添加した構成とすることができる。
【0034】
電極本体2は、先端が滑らかに凸に湾曲した例えば球面状、楕円面状、あるいは放物面状等をなし、軸心すなわち中心孔2hの軸心に対して回転対称の、例えば釣鐘状に形成する。
電極本体2の周面には、必要に応じて電極本体2の軸心を中心として環状に突出する放熱フィン4が一体に成型される。
図2A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1の他の例の概略側面図および概略断面図である。この例においては、電極本体2の周面に軸方向に沿って延長するように突出させた放熱フィン4を一体に成型して設けた場合である。図2において、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0035】
電極本体2の中心孔2aは、図1B、図2Bに示されるように、先端が閉塞された構成とするに限らず、貫通孔によって形成し、電極芯軸3の先端が電極本体2の頂部に突出した構成とすることもできる。例えば、図3に示すように、ショートアーク型高圧放電電極1は、前述と同様の先端が滑らかに凸に湾曲した例えば球面状、楕円状、あるいは放物面状等をなし、軸心に対して回転対称の電極本体2を形成し、その軸心に中心貫通孔2bを形成し、電極芯軸3をその先端3aが電極本体2の頂部から突出するように中心貫通孔2b内に挿入し、貫通して構成することができる。
【0036】
[ショートアーク型高圧放電電極の他の実施の形態例]
本発明によるショートアーク型高圧放電電極の他の実施の形態は、上述した図1〜図3で示すような、それぞれ高融点金属の焼結体による電極本体2と電極芯軸3とからなるショートアーク型高圧放電電極1にあって、その電極本体2と電極芯軸3との固着接触面積を大きくした構成を有する。すなわち、電極芯軸3が電極本体2の中心孔2aあるいは中心貫通孔2bに挿入され合体された状態での、電極本体2と電極芯軸3との接触面積は、0.9mm2 以上あることが望ましく、好ましくは0.9mm2 〜3.2mm2 の範囲とする。ここで、接触面積は、熱伝導に影響する程度の接触として定義し、ミクロン単位の空孔状焼結体で接触する場合は全て接触面積とする。
【0037】
接触面積が0.9mm2 以上であれば発光効率がより上がる。接触面積が、0.9mm2 よりも小さいと後述するショートアーク型高圧放電管に適用した場合に、管体(例えば石英管)内の温度低下により石英管内壁に黒化などの症状が現れる。接触面積が3.2mm2 よりも大きいと物理的に電極が長くなり、管体に入りきらないという不都合が生じる。
【0038】
また、電極芯軸3の径は、熱伝導の効率と放電管封止部の破裂の回避とを勘案して、0.25mm〜0.5mm、好ましくは0.25mm〜0.35mmとするのが良い。電極芯軸の径とは、例えば断面円形の場合にはその直径であり、断面角形(四角形、それ以上の多角形など)の場合にはその中心を通る線幅である。電極芯軸3の径が0.25mmより小さいと熱伝導効率が低下し、0.5mmより大きいと放電管封止部で破裂が起こる恐れがある。
【0039】
本実施の形態のショートアーク型高圧放電電極としては、後述するように、金属粉末射出成形法や粉末プレス法によって得られた電極を用いることで、電極本体2と電極芯軸3の接触面積を大きくかつ安定させることができる。
【0040】
なお、発光効率の観点からみると、電極本体と電極芯軸の接触面積を0.9mm2〜3.2mm2とする構成は、後述の製法、電極材料に限らずに、広くショートアーク型高圧放電電極に適用可能である。
【0041】
[ショートアーク型高圧放電電極の製造方法の実施の形態例]
まず、電極本体2を製造する仮焼結電極本体12を作製する。
図4Aは、仮焼結電極本体12の概略断面図である。
一方、電極芯軸3を用意する。図4Bは、電極芯軸3の概略断面図である。この電極芯軸3は、高融点金属の粉末冶金後、線引き加工によって作製されるが、高融点金属粉末を用いた粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による粉末成型法によって円柱状棒状体の成型体を作製してもよい。そして、この成型体を焼結することによって電極芯軸3を作製する。
【0042】
また、上述した仮焼結電極本体12は、まず、高融点金属粉末を用いた粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による粉末成型法によって、最終的に製造される電極本体2の形状に対応する形状の粉末成型体を作製する。
この粉末成型体は、これを成型金型、もしくはプレス機から取り出す取り扱い作業ができる程度の自己保持ができる成型体とされる。
この粉末成型体は、最終的に形成する電極本体2に対応する形状とされる。すなわち、前述したように先端が滑らかに凸に湾曲した例えば球面状、楕円面状、あるいは放物面状等をなし、軸心に対して回転対称の、例えば釣鐘状に形成される。そして中心孔2aに対応する中心孔12aが形成され、またその周面に放熱フィン4が設けられる場合には、その周面にこの放熱フィン4に対応するフィン14が一体に成型される。
このようにして形成された電極本体の粉末成型体を、仮焼結して仮焼結電極本体12を作製する。
【0043】
そして、この仮焼結電極本体12の中心孔12aに、電極芯軸3の先端部を挿入して放電電極構体を得る。図5は、この放電電極構体21の概略断面図である。
次に、この放電電極構体21に対し、本焼結熱処理を行なう。
このように、本焼成することによって、仮焼結成型体12を本焼結して真密度化した電極本体2を形成すると同時に、この電極本体2と、これに挿入された電極芯軸3とを焼結合体、すなわち両者の接触部において相互に焼結することによって機械的に結合一体化する。電極本体2を形成する。すなわち電極本体2に関しては、上述の仮焼結による第1の焼結と、放電電極構体21に対する本焼結による第2の焼結との少なくとも2回の焼結処理がなされる。
このようにして、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1が得られる。
【0044】
上述した粉末成型体に対する仮焼結は、その仮焼結電極本体12の焼結度が、上述した本焼成による焼結合体前における電極芯軸3の空孔率より、高い空孔率が残存する程度の焼結度による焼結を指称するものであり、かつ、粉末成型体に存在していたバインダが殆ど消失されて、残存するバインダによって、仮焼結電極本体12と電極芯軸3との接触部において、電極芯軸3の特性に実質的に影響を与えることがない程度にバインダの排除が必要十分になされる焼結度を指称する。
【0045】
また、仮焼結電極本体12が上述したように仮焼結状態で必要十分にバインダの排除がなされる程度の燒結がなされていて、焼結合体における本焼結に際して仮焼結電極本体12より電極芯軸3の収縮率を小さくすることから、用意される電極芯軸3は、その空孔率が10%以下望ましくは5%以下の電極芯軸であればよいものである。
【0046】
電極本体2の粉末成型は、例えば金属粉末射出成型法 (Metal-Injection-Mold→M.I.M.)、あるいは粉末プレス法によることができるが、工程数の減少、安定した電極形状を得ることができる製造方法としては、金属粉末射出成型法によることが望ましい。電極芯軸3も電極本体2と同様に粉末成型してもよいが、空孔率が小さく真密度に近いほうが望ましく、かつ機械的強度を考慮すると、粉末冶金後線引き加工されたものが好ましい。
【0047】
ショートアーク型高圧放電電極は、上述したように、本焼成された電極芯軸に、仮り焼成された電極本体に挿入された後、焼結熱処理を経て作成されるが、このとき、電極芯軸と電極本体との接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2 となるように作成することが望ましい。
【0048】
(実施例1)
この実施例においては、金属粉末射出成型法によって粉末成型体を得た。
この場合、まず、金属粉末とバインダとが、混練された練り状の混練物によるペーストを得る。
金属粉末は、タングステン粉末、あるいはタングステン(W)などを主成分として、これに例えば再結晶化を抑制し脆化を抑制するカリウム(K)やレニウム(Re)などの、いわゆるドープ剤を5重量%以内好ましくは100ppm以内で添加したタングステン粉末を用いることができる。そして、この金属粉末と、パラフィン系などのバインダとを混練して、上述したペーストを得る。この、ペーストを必要に応じて100℃から200℃程度加熱しながら、目的とする電極本体2の外形状に対応する内形状を有する金型内に加圧射出成型する。このようにして成型された粉末成型体を金型から取り出す。
【0049】
この粉末成型体を、仮焼結すなわち第1の焼結処理を行って図4Aで示した仮焼結電極本体12を作製する。この仮焼結は、前述したように、脱バインダ、すなわちバインダの排除と、この仮焼結電極本体12をつまみ上げるなどのハンドリングが可能な程度の強度が得られる程度の焼結とする。このときの仮焼結電極本体12の密度は、例えばタングステンの場合、真密度の85%以下とする。
【0050】
上述の粉末射出成型における金属粉末、例えばタングステン粉末を用いる場合、その平均粒径は、1〜10μm、好ましくは1〜3μm、例えば2μmとする。この金属粉末粒径の選定は次の理由による。粒径があまり小さいと表面積の増大によって、酸化が急激に進行するとか、粉末同士の接触表面積が大きくなることによる急激な結晶成長を生じるという好ましくない現象が生じるおそれがある。粒径があまり大きいと焼結がおきにくくなる。
【0051】
一方、図4Bで示す本焼結された電極芯軸3を構成する。この電極芯軸3は、電極本体1と同一材料によって構成することが望ましく、同様に例えば金属粉末射出成型によって電極芯軸3を構成する粉末成型体を作製し、これを本焼結熱処理して、低空孔率、高真密度の電極芯軸3を構成する。
【0052】
そして、この本焼結された電極芯軸3の先端部を、仮焼結電極本体12の中心孔12aに、挿入して図5で示した放電電極構体21を構成する。
次に、この放電電極構体21に対する焼結、すなわち上述した第2の焼結を行って仮焼結電極本体12を電極本体2とし、かつこの電極本体2と電極芯軸3とが焼結結合されて、ショートアーク型高圧放電電極1が構成されるようにする。
【0053】
このショートアーク型高圧放電電極1の製造における放電電極構体21の組み立てにあって、中心孔12aの全内周面とこれに挿入される電極芯軸3の外周面とが過不足なく密着することができるように、また、第2の焼結による収縮によって電極芯軸3を締め付けて電極芯軸3と焼結結合が良好に行われるように、仮焼結電極本体12の収縮率、寸法形状の選定がなされる。この選定のための設計は、精度良く行うことができるものである。
【0054】
上述の製造方法において、電極本体を構成する粉末成型体の第1の焼結温度は、14000℃とした。この焼結温度は、余り低いとハンドリング強度が乏しく、また、バインダの残存の問題が生じる。そして、高過ぎると、クラックや、割れの発生や寸法精度が低下してくることから、1100℃〜1400℃、好ましくは1300℃〜1400℃で3時間行う。
【0055】
また、上述した第2の焼結、すなわち放電電極構体に対する焼結、すなわち第2の焼結温度は、タングステン粉末にあっては、1900℃では70分とすることができる。この焼結温度は、1750℃〜2000℃(タングステンの理論再結晶温度)、好ましくは1900℃〜2000℃とする。そして、1750℃での保持温度は180分、1900℃では70分となる。図6は、焼結時の最高温度と保持時間との関係を示した図である。この第2の焼結で、電極本体2密度は、真密度の95%以上となるようにする。
【0056】
この第2の焼結で、この焼結前の空孔率が電極芯軸のそれより大きい仮焼結電極本体12の収縮率が、電極芯軸3のそれより大きいことから、焼結された電極本体2とその中心に配置された電極芯軸3とは強固に焼結結合する。
この電極本体2における収縮率は、粉末成型体における体積に対して20%程度の収縮の収縮が生じるようにした。
また、この第2の焼結に際して、電極本体2は、第1の焼結による仮焼結で、バインダが排除されているか、ほとんど排除されていることから、電極芯軸3は、不純物による再結晶脆化が回避されるものである。
また、この第2の焼結は、ガス出しを兼ねるものであり、このため、この第2の焼結は、1×10−3Pa前後の真空中で行う。
【0057】
このようにして得られたショートアーク型高圧放電電極1は、この電極1の製造後において、通常行われているガス出し目的の真空高温加熱処理が不要とされる。
すなわち、粉末射出成型法で成型した場合の、焼結処理後の成型体について、実際にオージェ分析による深さ方向の酸化度炭化度の分析を行った結果では、従来の場合と同等の深さに観察され、その酸化炭化の表面からの深さは6〜7nmであると考えられ良好な結果がえられる。
【0058】
また焼結後はそのまま発光管へ挿入組立可能であるので、このショートアーク型高圧放電電極1によってショートアーク型高圧放電管を製造する場合において、その製造工程が簡略化される。
【0059】
(実施例2)
この実施例2においては、粉末成型体の製造方法を粉末プレスによった場合である。
この粉末プレス法は、プレス金型内に、実施例1で説明したと同様のタングステンもしくはドープ材を添加したタングステン粉末に例えばパラフィン系のバインダを混合した顆粒状に造粒した造粒粉を充填し、例えば上下パンチ方式などでプレス成型する。
このようにして、電極本体の粉末成型体を作製する。この粉末成型体に対して、実施例1と同様の仮焼結すなわち第1の焼結を行って仮焼結電極本体12を製造する。
【0060】
一方、実施例1におけると同様に電極芯軸3が用意され、仮焼結電極本体12の中心孔a内に電極芯軸3を挿入し、実施例1におけると同様の第2の焼結をおこなって、電極本体2と電極芯軸3とが、焼結結合されて一体化されたショートアーク型高圧放電電極1を製造する。
この実施例2もまた、実施例1におけると同様のすぐれたショートアーク型高圧放電電極1が得られる。
【0061】
(実施例3)
この実施例では、実施例1、あるいは実施例2の製造方法において、電極芯軸3と電極本体2の接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2 となるようにして、ショートアーク型高圧放電電極1を作成する。実施例3では、実施例1、2におけると同様のすぐれたショートアーク型高圧放電電極が得られると同時に、さらに発光効率が上昇したショートアーク型高圧放電電極1が得られる。
【0062】
このようにして製造されるショートアーク型高圧放電電極1を用いてショートアーク型高圧放電管を製造する。
[ショートアーク型高圧放電管及びその製造方法の実施の形態例]
図7は、この実施の形態例によって得たショートアーク型高圧放電管30の一例の概略断面図である。また、図8は、ショートアーク型高圧放電管の一例の製造過程における概略断面図である。
この場合、上述した本発明製造方法によって作製した本発明による対のショートアーク型高圧放電電極1の各電極芯軸3の端部に、放電時の2000℃を超える高温による熱の伝導を抑制する例えばモリブデン箔よりなる封着金属箔33が溶接される。更に、この封着金属箔33の外端に、リード34が溶接される。
【0063】
ショートアーク型高圧放電管30は、両端が封着された例えば石英放電管体32よりなり、図8に示すように、管体32内に、その両端から、上述した封着金属箔33およびリード34が取着された、対のショートアーク型高圧放電電極1が、各先端が所要の間隔を保持するように挿入される。
この状態で、図7に示すように、放電管32を、ショートアーク型高圧放電電極1の先端部の配置部を封入する封止中空31を形成して、これより両外端の封着金属箔33におおいて放電管体32を加熱軟化によって封着する。この封着状態において各リード34の外端を外部に導出する。この際、必要に応じて各部品や溶接後に洗浄やガス出しを兼ねたアニール処理などを行う。
【0064】
モリブデン金属箔33の厚さは、例えば20μmとすることができる。
放電管体32は、上述した石英管、あるいは透光性セラミック容器によって構成することができる。
このショートアーク型高圧放電管の製造においては、放電管体32は、洗浄やアニール処理を必要に応じて行い、その後、上述したように、封着金属箔33およびリード34が取着されたショートアーク型高圧放電電極1を挿入し、管体内を排気しながら、CO2レーザや酸素水素混合ガスバーナーなどに石英を軟化させて管体の一方の端部側を封着、いわゆるシュリンクシールを行う。あるいは軟化した石英を機械的にシールするピンチシール方式によって封着する。
【0065】
その後、他方の端部から、管体内に始動ガスや緩衝ガスとして希ガスの例えば Ar、Xe、Krのいずれかと、発光金属の例えば水銀やヨウ化金属、さらには必要に応じてハロゲンサイクル用の臭素や臭化金属などを挿入する。その後、この端部を前述したと同様に封着金属箔33において封着し、その端部から、他方のリード34を外部に導出する。
そして、両ショートアーク型高圧放電電極1の電極間隔は、例えば1mm〜4.5mm、好ましくは1mm〜2mmとする。
このようにしてショートアーク型高圧放電管30が構成される。
【0066】
〔ショートアーク型高圧放電管及びその製造方法の他の実施の形態例〕
本実施の形態によるショートアーク型高圧放電管30は、基本的には図6で示す構成であるが、ショートアーク型高圧放電電極1として、上述の本発明製造方法によって作製した、電極本体2と電極芯軸3の接触面積を、0.9mm2 〜3.2mm2 としたショートアーク型高圧放電電極を用いて構成される。
【0067】
具体例では、電極本体2と電極芯軸3の固着において、完成体の電極本体2と電極芯軸3の接触面積を、3.3mm2 とし、電極芯軸3の直径を0.4mmとした。発光管容器としては、例えば石英の放電管体32を用いた。なお、発光管容器としては、その他の透光性セラミックなどからなる放電管体を用いることもできる。
【0068】
このショートアーク型高圧放電管の製造においては、放電管体32に対して洗浄やアニール処理が必要に応じて行なわれる。その後、上述したように一対のリード付き電極アセンブリー、すなわち電極1と封着金属箔33とリード34とが一体に固着された電極アセンブリーのうち、一方の電極アセンブリーを、放電管体32の一方側に挿入し、管体32内を排気しながら、CO2レーザや、酸素水素混合ガスバーナーなどによって石英を軟化させて管体の一方の端部側の封着、いわゆるシュリンクシールを行う。あるいはシュリンクシールではなく、軟化した石英を機械的にシールするピンチシール方式によって封着する。
【0069】
その後、一方側が封止された放電管体32内に、他方の端部から始動ガスや緩衝ガスとして希ガス(Ar,Xe,Krのいずれか)、本例ではXeと、発光金属としてヨウ化金属(本例ではヨウカ化ディスプロシウム0.5mgとヨウ化ルテチウム0.5mgと、さらにヨウ化ガリウム0.2mg)とを挿入する。次いで、放電管体32の他方側にリード付き電極アセンブリーを挿入し、電極間隔を1mm〜4,5mなど所望間隔に調整し、シュリンクシールを行い、ショートアーク型高圧放電管30を完成する。具来例では、電極間隔を1.3mm、放電空間容積を60mm3 とした。
このようにして、ショートアーク型高圧放電管30を作製する。
【0070】
このように作製した具体例のショートアーク型高圧放電管30を100w動作させ、同様の構成物の従来型電極103を搭載した放電管と比較した。従来型電極103では、図13及び図14に示す電極芯軸106と、電極本体105とみなすYAGレーザによる溶融部との接触面積が0.6mm2 であり、芯軸106の直径が0.4mmである。両者を比較したところ、ランプ電流は従来型が4Aであるのに対して、本発明は3.4Aと低減され、発光効率は同じく従来型の36ml/Wに対して、本発明が48lm/Wと30%向上した。図9に、本発明(実線)と従来型(破線)との分光スペクトルを示す。この分光スペクトルから、本発明のショートアーク型高圧放電管は可視光波長の全域に均一な強度をもつことが認められる。
【0071】
実際に液晶プロジェクタなどに使用するには、ショートアーク型高圧放電管30は、後述するリフレクタ41に挿入しアライメント固着され、搭載される。本例はメタルハライドランプとして説明したが、超高圧水銀ランプ(UHP)においても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0072】
電極本体と電極芯軸の固着部分における接触面積と発光効率の関係を調査したところ、従来型電極における接触面積(電極本体105(YAGレーザ溶融部)と電極芯軸106において、溶融前の芯軸長さと径から計算した、釣鐘状溶融部の内部接触面積)が0.6mm2 であったのに対して、本実施の形態の接触面積が0.9mm2 以上であれば従来型よりも発光効率が上昇することを確認した。従来型であっても芯軸106の径を大きくすれば発光効率が上がる場合もあるが、放電管封止部の破裂の危険が増すことになる。従って、できるだけ芯軸径は小さいままで電極本体との接触面積を増やす方が望ましい。
【0073】
電極本体と電極芯軸との接触面積が大きくなると発光効率が上昇するする理由を説明する。放電管の動作中は、電極本体の温度が上昇するが、この熱は電極芯軸を経由して石英管体の放電空間内壁へ伝わる。ここで、電極本体と電極芯軸との接触面積が大きくなると、熱伝導が大きくなり石英管内壁が効率よく温度上昇する。石英管内壁温度が上昇することで、アーク放電部分における発光金属蒸気圧(飽和蒸気圧)が上がり、電極間に形成されるプラズマ密度が高密度化し、電極間のランプ電圧が上昇して発光効率が上昇する。
【0074】
また、発光金属蒸気圧が上がると、一対の電極本体間でアーク収縮(いわゆるアークプラズマの自己収縮)を起こして、より点光源に近い放電状態が得られる。
【0075】
図10に、電極本体と電極芯軸との接触面積に対するランプ電圧の関係を示す。図10は、横軸に接触面積(mm2 )をとり、縦軸にランプ電圧の相対値(すなわち、従来型のランプ電圧を1としてその倍数)をとって示した。図10によれば、電極芯軸の径は0.25mm〜0.5mmの範囲、好ましくは0.25mm〜0.35mmとし、接触面積を0.9mm2 〜3.2mm2 (好ましくは2.5mm2 以上)までとすればランプ電圧が従来に比べて上昇する。図10はメタルハライドランプの例であるが、超高圧水銀ランプ(UHP)においてもこの関係は同様である。前述したように、接触面積が0.9mm2 よりも小さいと、石英管内壁に、石英管内の温度低下による黒化などの症状が現れる。接触面積が2.5mm2 以上ではランプ電圧が飽和する。接触面積が3.2mm2 状は、物理的に電極が長くなり管体に入りきれない恐れがあり、実用的に3.2mm2 が上限となる。
【0076】
そして、本発明においては、このようにして製造されたショートアーク型高圧放電管30を用いて、例えば液晶プロジェクタなどの光源として使用されるショートアーク型高圧放電光源装置50を製造する。図11は、このショートアーク型高圧放電光源装置50の一例の概略断面図である。
【0077】
[ショートアーク型高圧放電光源装置及びその製造方法の実施の形態例]
このショートアーク型高圧放電光源装置40は、例えば放物面状をなすコーン状のリフレクタ41と、このリフレクタ41の前方開放側に封着された透明前面パネル42が配置され、リフレクタ41と前面パネル42とによって、包囲空間が構成される。
【0078】
そして、この包囲空間内のリフレクタ41の軸心上に、上述した本発明製造方法によって製造されたショートアーク型高圧放電管30が、収容配置され、これよりの放電発光による発光を、リフレクタ41によって所定方向に照射するようになされる。
ショートアーク型高圧放電光源装置30の前方側のリード34は、導出リード43が接続されてリフレクタの中腹から外部に端子導出がなされる。
また、他方のリード34は、リフレクタの後端から外部に電気的に端子導出がなされる。
【0079】
このようにして製造されたショートアーク型高圧放電光源装置40は、そのショートアーク型高圧放電管の放電発光特性は安定しており、100時間放電後に解体して放電電極の観察を行ったところ、電極本体2に放電前の初期の状態と変化がなく良好な形状を保持していることが確認された。
【0080】
上述した例では、第2の焼結を、ショートアーク型高圧放電電極1の製造工程のみで行った場合であるが、例えばこの焼結工程の少なくとも一部を、例えばショートアーク型高圧放電管30、あるいはショートアーク型高圧放電光源装置40にショートアーク型高圧放電電極1を、マウントして、その点灯を例えば5分程度の短時間、動作、例えばエージングすることによって、イオン衝撃などによる発熱による2000℃以上に昇温することを利用して、第2の焼結作業を進行させるようにすることもできる。このとき、放電管体内に封入された発光金属なども管体内に蒸発しているが、焼結後のランプ消灯過程では既に電極本体の空孔は実質的に塞がっており、なおかつ管内の温度分布によって冷却が速い部分(電極芯軸や管壁)に集まるため、電極本体内部に金属蒸気が入り込むおそれはないものである。
【0081】
ショートアーク型高圧放電光源装置40は、そのショートアーク高圧放電管として、放電電極の電極本体と電極芯軸との接触面積を0.9mm2〜3.2mm2である放電管を備えるときは、さらに放電効率が向上すると共に、前述したようにより点光源に近い放電状態が得られる。 このショートアーク型高圧放電光源装置40を、例えば液晶プロジェクタに使用した場合には、可視光全域にわたり均一に発光強度が上がることによるスクリーン輝度、すなわち光利用効率が上昇すると共に、発光金属蒸気圧上昇によるアーク収縮により、より点光源に近くなるので、スクリーン輝度を上昇することが可能になる。
【0082】
上述したように、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1は、従来における電極本体の先端をレーザ光照射による溶融成形作業等を回避するなど、その製造工程数が減少されたことによって、製造時の外部からの汚染の減少が図られ、品質管理もしやすいという利点がある。
また、レーザ照射時は、酸化防止対策として、Ar,Heなどの不活性ガスを噴射したりするが、複数回に渡りレーザ光照射を行って溶融形成を行うと、外部からの汚染を取り込む危険が増し、酸化や炭化なども発生しやすく、形成後の洗浄やガス出し熱処理などの対策工程も増える結果をまねくことになる。さらに製造工程の歩留が低下してしまうという問題も発生し、製造が安定して行えないという欠点がある。また、放電加工による釣鐘部形成にしても問題点は同様である。
【0083】
さらに、冒頭に述べた従来のコイルによって電極本体を製造する方法による場合、長期例えば100時間を超える点灯を行った場合、コイル部分が巻き乱れを起こして温度分布変化を起こしたり、電界が集中して点灯時の放電が乱れたりして、電極の形状品質の信頼性に問題があるものであるが、本発明によるときは、この改善が図られ安定化が図られる。
【0084】
さらに、金属粉末射出成型法(MIM法)で製造された電極は、金型と焼結条件によって形状寸法が決まるため、従来技術製造法の電極に比べて極めて安定した精度が保証されるものである。
また、複雑な形状に対応が可能であるにもかかわらず、従来技術で発生するようなコイル変形等の問題がなく、また、冒頭に述べたクラックの等の発生、したがって、信頼性、特性の不安定性、歩留まりの低下等の改善が図られる。
【0085】
また、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1は、その電極本体2と電極芯軸3との接触面積を0.9mm2 〜3.2mm2 に設定することにより、放電管に適用した場合に発光効率が向上し、輝度信頼性を向上することができる。従って、従来と同等の投入出力動作において高発光効率のショートアーク型高圧放電管が得られるものである。
【0086】
また、発光金属蒸気圧が上がると、一対の電極本体間でアーク収縮(いわゆるアークプラズマの自己収縮)を起こして、より点光源に近い放電状態があらわれる。従って、このようなショートアーク型高圧放電管をリフレクタに挿入しアライメント固着してなる光源装置を例えば液晶プロジェクタなどに使用すれば、より点光源に近い光源が得られるので、スクリーン輝度を上げることが可能となる。
【0087】
また、本発明では、図9の発光スペクトルに示すように、可視光波長全域に均一な光強度を得ることができるので、例えば液晶プロジェクタなどの光源装置に適用した場合、赤、緑及び青の各色光が均一に得られる。同時に、光利用率を向上することができる。
【0088】
なお、図11で示すように、ショートアーク型高圧放電光源装置は、その透明前面パネル42とリフレクタ41を密閉状態に配置した構成としてもよく、あるいは透明前面パネル42の一部にリフレクタ41の内部と外部を連通する開口部を設けた構成、さらには透明前面パネルを省略した構成とすることもできる。
【0089】
図3の電極芯軸3の先端3aが電極本体2より突出して成るショートアーク型高圧放電電極は、放電管に適用した場合、電極芯軸3自体が加熱される元となり、石英管体内壁への熱伝導にさらに有利な構造となる。但し、電極芯軸3のみで電極を構成し、電極本体2が無い構造(例えば、自動車用などに使用される)では、熱容量が小さく、電極芯軸の先端温度が上がり過ぎてしまうので液晶プロジェクタ用の光源装置に適さない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極の一例の概略側面図および概略断面図である。
【図2】A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1の他の例の概略側面図および概略断面図である。
【図3】本発明によるショートアーク型高圧放電電極1のさらに他の例の概略断面図である。
【図4】AおよびBは、仮焼結電極本体および電極芯軸の一例をしめす概略断面図である。
【図5】この放電電極構体21の概略断面図である。
【図6】焼結時の最高温度と保持時間との関係を示した図である。
【図7】本発明製造方法によって得るショートアーク型高圧放電管の一例の概略断面図である。
【図8】図6の製造方法の製造過程におけるショートアーク型高圧放電管の一例の概略断面図である。
【図9】本発明及び従来のショートアーク型高圧放電管の分光スペクトル図である。
【図10】ショートアーク型高圧放電電極における電極本体と電流芯軸との接触面積とランプ電圧の関係を示すグラフである。
【図11】ショートアーク型高圧放電光源装置50の一例の概略断面図である。
【図12】従来のショートアーク型高圧放電管の概略断面図である。
【図13】従来一般の放電電極の側面図である。
【図14】A及びBは、従来のショートアーク型高圧放電電極の電極本体および芯軸部材の側面図である。
【図15】従来のショートアーク型高圧放電電極の概略断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1……ショートアーク型高圧放電電極、2……電極本体、3……電極芯軸、4……放熱フィン、12……仮焼結電極本体、2a,12a……中心孔、21……放電電極構体、30……ショートアーク型高圧放電管、31……封止中空、32……放電管体、33封着金属箔、34……リード、40……ショートアーク型高圧放電光源装置、41……リフレクタ、42……透明前面パネル、43……導出リード、100……ショートアーク型高圧放電管、101……封止中空、102……放電管体、103……放電電極、104……給電端子、105……電極本体、106……電極芯軸、105a……本体部材、106a……芯軸部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置、及びそれらの各製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの投射型プロジェクタの光源や自動車用照明灯において、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプなどのH.I.D.(High-Intensity-Discharge)ランプが広く用いられる。
【0003】
メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ等においては、動作中に、その放電電極の少なくとも一部が、2000℃以上にも及ぶ高温になる。
このため、通常、この放電電極は、タングステンなどの高融点金属によって構成される。
放電ランプにおいて要求される電極特性は、形状寸法精度や耐熱強度の信頼性などが挙げられる。
例えば液晶プロジェクタTVなどの表示装置の光源として用いられるメタルハライドランプや、超高圧水銀ランプなどのショートアーク型高圧放電管による光源ランプでは、特にその点光源としての放電安定性が重要である。
すなわち、この場合、アークスポットの変動やアーク温度の違いは、ちらつきやランプ輝度のばらつきを来たすことから好ましくない。
【0004】
図12は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等におけるショートアーク型高圧放電管の概略断面図である。
この放電管100は、中央に封止中空101を有する放電管体102内に、対の放電電極103が配置されて成る。対の放電電極は、封止中空101内において、その放電先端が相互に所要の間隔を保持して対向するように配置される。そして、両電極103からの給電端子104が放電管体12の両端から外部に気密的に封着されて導出される。
【0005】
図13は、従来一般の放電電極103の側面図である。この放電電極103は、実質的に放電を生じさせる電極先端となる電極本体105が、通電導体兼機械的支持がなされる電極芯軸106の先端に取着されて構成される。
図14A及びBは、それぞれ、放電電極103の電極本体105および電極芯軸106をそれぞれ構成する本体部材105aおよび芯軸部材106aの側面図である。
本体部材105aは、タングステンなどの高融点金属を主成分とする線材を例えば放熱効果を高めることができるように、表面積を大きくする形状の2層のコイル状とされる。
また、芯軸部材106aは、同様にタングステンなどの高融点金属を主成分とする円柱状とされる。
【0006】
そして、芯軸部材106aの先端部を、コイル状の本体部材105aの中心孔に貫通させその先端部の芯軸部材106aおよび本体部材105aを、YAGレーザ光等照射によって溶融し、図13に示すような、先端部を滑らかに湾曲するほぼ球面形状の釣鐘形状のショートアーク型高圧放電電極103を構成する。
【0007】
ところが、この製造方法および構造においては、YAGレーザによる溶融に際し、必要なレーザ照射部が、奥行きおよび広がりをもっていることから、レーザ光の1点照射によることができない。そのため、各部でレーザ照射のフォーカスがずれやすく、照射パワーが不均一となり、これによって放電動作時の電極温度にばらつきが生じ、アークスポットの変動、アーク温度の不均一などを生じ、この放電電極によって構成したショートアーク型高圧放電管の光学特性にばらつきを来たし、歩留まりの低下を来たす。
【0008】
これに対して、焼結電極の提案がなされている(特許文献1参照)。この焼結電極は、上述した電極芯軸に相当する棒芯ピンが用意され、この棒芯ピンの周りに焼結電極を構成する粉末が圧縮されて焼結されることによって棒芯ピンに結合された焼結電極を形成する。あるいは、棒芯ピンを圧縮成形型内に配置して、この周りに電極を構成する混合物を注入して焼結することによって棒芯ピンに結合された焼結電極を形成するというものである。
しかし、このような構成による場合、焼結に際して、棒芯ピンの周りに、焼結電極を構成する金属粉末とともに、バインダが含まれる材料圧縮されることから、このバインダに、棒芯ピンが接触した状態で、高温熱処理をされる。このとき、棒芯ピンにバインダによる不純物による再結晶脆化が促進することになる。
また、未焼結状態の電極が焼結されることから、焼結電極と棒芯ピンとの収縮率が大きく相違する。このため、破損が生じたり、ひずみが残存した放電電極が構成されることになる。
このような脆化、ひずみの存在等によって、不良品発生率が高くなるとか、特性の均一性に劣るとか、動作時の高温加熱、非動作時の降温の熱サイクルに対する耐久性、信頼性に問題が生じるおそれがある。
【0009】
また、上述した問題の解決をはかるべく、電極本体に形成した中心孔に電極芯軸を圧入することが考えられるが、タングステンの焼結体は、弾性に乏しいことから、これを適用することができない。
【0010】
一方、ショートアーク型高圧放電電極、放電管、放電光源装置等においては、更なる輝度信頼性向上のために、発光効率の更なる向上が望まれる。
【0011】
因みに、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ等においては、従来一般の放電電極103(図13参照)と類似の電極を搭載しているが、例えば発光効率を上げるためには、一般的に投入電力を上げて放電管内壁の温度を上げることによって、発光金属蒸気圧を上げる方法がある。しなしながら、主にイオン衝撃による電極の温度上昇が起き、熱による電極消耗や石英管内壁の結晶化(いわゆる失透)の促進による短寿命化が問題となる。その対策として、電極芯軸の径を太くする手段があるが、電極芯軸径を太くすると、石英管封止部における電極材のタングステンW(タングステンを主成分とする)と石英(SiO2)の熱膨張率差から石英に歪みが生じることで破裂に至る危険性が増す。
【0012】
本発明者らは、図13及び図14に示す従来の放電電極の場合、図15の断面構造に示すように、電極本体105と電極芯軸106とは一部空洞を有した状態で接合されているため、放電管の動作時に、電極本体105の先端から電極芯軸106を経由して放電管体(例えば石英管体)102への熱伝導が悪く、管体内壁温度を効率よく上げることができず、発光効率が上がらないことを見い出した。
【特許文献1】特表2000−505939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、タングステンを主成分とする電極構成とする場合においても、特性の安定性、均一性を有し、耐久性、信頼性にすぐれたショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置、及びこれらの各製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、それぞれ高融点金属から成る電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、本焼成された電極芯軸が、仮焼結された電極本体の中心孔に挿入されて焼結合体された構成を有することを特徴とする。
本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極にあって、上記電極本体および電極芯軸が、タングステンを主成分とする高融点金属から成る。
【0015】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有し、電極本体と電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2に設定されて成ることを特徴とする。
【0016】
本発明よるショートアーク型高圧放電電極の製造方法は、それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成るショートアーク型高圧放電電極の製造方法であって、高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、該放電電極構体の焼結熱処理工程とを有し、該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とを行なうことを特徴とする。ここで高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸とは、高融点金属の粉末冶金後、線引き加工したものや、高融点金属粉末を用いた粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による粉末成型法によって棒状体の成型体を作製後、焼結したものを言う。
【0017】
本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記本焼結された電極芯軸は、空孔率を10%以下とされて成ることを特徴とする。
また、本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記放電電極構体の本焼結熱処理工程は、上記電極本体の空孔率を10%以下とする焼結熱処理であることを特徴とする。
また、本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記高融点金属粉末は、タングステン、もしくは5重量%以下の添加材を有するタングステンで、平均粒径が1μm〜10μmの金属粉末とされたことを特徴とする。
また、本発明は、上述したショートアーク型高圧放電電極の製造方法にあって、上記粉末成型工程が、粉末射出成型法もしくは粉末プレス法によることを特徴とする。
【0018】
本発明によるショートアーク型高圧放電管は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、本焼成された電極芯軸が、仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成ることを特徴とする。
【0019】
本発明によるショートアーク型高圧放電管は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、電極本体と電極芯軸との接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2に設定されて成ることを特徴とする。
【0020】
本発明によるショートアーク型高圧放電管の製造方法は、それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が、所定の間隔を保持して放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管の製造方法であって、上記ショートアーク型高圧放電電極の作製工程が、高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、 該放電電極構体の焼結熱処理工程とを有し、該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有することを特徴とする。
【0021】
本発明によるショートアーク型高圧放電光源装置は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、本焼成された電極芯軸が仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成ることを特徴とする。
【0022】
本発明によるショートアーク型高圧放電光源装置は、一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、電極本体と電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2に設定されて成ることを特徴とする。
【0023】
本発明によるショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法は、それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管と、該ショートアーク型高圧放電管からの発光を、所定方向に照射するリフレクタとを有するショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法であって、上記ショートアーク型高圧放電管の作製工程が、高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、該放電電極構体の焼結熱処理工程とを有し、該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有し、該ショートアーク型高圧放電管を、上記リフレクタに対して所定の位置関係に配置することを特徴とする。
【0024】
また、上述した本発明によるショートアーク型高圧放電管の製造方法およびショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法にあって、上記放電電極構体の熱処理工程の少なくとも一部を、上記ショートアーク型高圧放電管の組み立て後に、上記対の放電電極間に放電を開始させ、該放電による発熱によって行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上述の本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、電極本体が、電極芯軸の先端部すなわち放電が発生する先端側に配置された構成を有し、電極本体に対する通電路が電極芯軸によって構成され、かつ、この電極芯軸によって電極本体が支持された構成とされるものであるが、この構成にあって、本発明においては、仮焼結された電極本体、すなわち仮焼結によってバインダが実質的消失された電極本体と焼結がなされた電極芯軸とが焼結合体された構成とされていることから、前述したバインダによる電極芯軸の脆化を回避できる。
また、仮焼結電極本体と電極芯軸との焼結合体構造であることから、両者の焼結合体の収縮率が所要に近づけられる。そのため、ひずみや、クラック等の破損が生じにくい構成を有する。
【0026】
このショートアーク型高圧放電電極を適用して形成したショートアーク型高圧放電管及びショートアーク型高圧光源装置は、均一な特性を有し、耐久性、信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極の製造方法によれば、粉末成型工程、具体的には、粉末射出成型法、あるいは粉末プレス法によって電極本体を形成し、一方、十分焼結した電極芯軸を構成し、これらを焼結合体する方法としたことから、焼結合体時における収縮率の相違を、必要程度に残しつつ、十分小とすることができることによって、収縮率の大きな差によって、ひずみやクラックの発生を回避できる。
同時に、その収縮率の所要の差によって、電極本体によって電極芯軸を締め付けつつ焼結合体することができる。
したがって、歩留まりの向上、均一な特性を有し、耐久性、信頼性の高いショートアーク型高圧放電電極を製造することができる。
【0028】
したがって、このショートアーク型高圧放電電極の製造方法を適用して形成した本発明によるショートアーク型高圧放電管およびショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法は、それぞれ信頼性が高く、特性が安定した、耐久性にすぐれたショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置を製造することができる。
【0029】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極は、その電極本体と電極芯軸との接触面積を0.9mm2 〜3.2mm2とすることにより、放電管あるいは光源装置に適用した場合に、電極本体の先端から電極芯軸を経由して放電管体の放電空間内壁への熱伝導率が大きくなり、放電管内壁温度を効率よく上昇させることができる。これによって、発光効率がより向上する。したがって、更なる輝度信頼性の向上を図ることができる。
【0030】
本発明によるショートアーク型高圧放電管及びショートアーク型高圧光源装置は、電極本体と電極芯軸との接触面積を0.9mm2〜3.2mm2としたショートアーク型高圧放電電極を適用することにより、発光効率がより向上し、更なる輝度信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
本発明によるショートアーク型高圧放電電極、ショートアーク型高圧放電管、ショートアーク型高圧放電光源装置の各製造方法と、ショートアーク型高圧放電電極の実施の形態例を説明する。しかしながら、本発明は、この形態例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0033】
[ショートアーク型高圧放電電極の実施の形態例]
図1A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1の一例の概略側面図および概略断面図である。
このショートアーク型高圧放電電極1は、それぞれ高融点金属から成る仮焼結された電極本体2の中心孔2hに、棒状の電極芯軸3の先端部が挿入され、これら電極本体2と電極芯軸3が焼結合体された構成を有する。
電極本体2と電極芯軸3とは、同一組成とすることが望ましく、タングステンを主成分として、これに対して例えば脆化改善のためのタングステン(W)に脆化対策としてカリウム(K)やレニウム(Re)などの(いわゆる)ドープ剤を5%以内添加した構成とすることができる。
【0034】
電極本体2は、先端が滑らかに凸に湾曲した例えば球面状、楕円面状、あるいは放物面状等をなし、軸心すなわち中心孔2hの軸心に対して回転対称の、例えば釣鐘状に形成する。
電極本体2の周面には、必要に応じて電極本体2の軸心を中心として環状に突出する放熱フィン4が一体に成型される。
図2A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1の他の例の概略側面図および概略断面図である。この例においては、電極本体2の周面に軸方向に沿って延長するように突出させた放熱フィン4を一体に成型して設けた場合である。図2において、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0035】
電極本体2の中心孔2aは、図1B、図2Bに示されるように、先端が閉塞された構成とするに限らず、貫通孔によって形成し、電極芯軸3の先端が電極本体2の頂部に突出した構成とすることもできる。例えば、図3に示すように、ショートアーク型高圧放電電極1は、前述と同様の先端が滑らかに凸に湾曲した例えば球面状、楕円状、あるいは放物面状等をなし、軸心に対して回転対称の電極本体2を形成し、その軸心に中心貫通孔2bを形成し、電極芯軸3をその先端3aが電極本体2の頂部から突出するように中心貫通孔2b内に挿入し、貫通して構成することができる。
【0036】
[ショートアーク型高圧放電電極の他の実施の形態例]
本発明によるショートアーク型高圧放電電極の他の実施の形態は、上述した図1〜図3で示すような、それぞれ高融点金属の焼結体による電極本体2と電極芯軸3とからなるショートアーク型高圧放電電極1にあって、その電極本体2と電極芯軸3との固着接触面積を大きくした構成を有する。すなわち、電極芯軸3が電極本体2の中心孔2aあるいは中心貫通孔2bに挿入され合体された状態での、電極本体2と電極芯軸3との接触面積は、0.9mm2 以上あることが望ましく、好ましくは0.9mm2 〜3.2mm2 の範囲とする。ここで、接触面積は、熱伝導に影響する程度の接触として定義し、ミクロン単位の空孔状焼結体で接触する場合は全て接触面積とする。
【0037】
接触面積が0.9mm2 以上であれば発光効率がより上がる。接触面積が、0.9mm2 よりも小さいと後述するショートアーク型高圧放電管に適用した場合に、管体(例えば石英管)内の温度低下により石英管内壁に黒化などの症状が現れる。接触面積が3.2mm2 よりも大きいと物理的に電極が長くなり、管体に入りきらないという不都合が生じる。
【0038】
また、電極芯軸3の径は、熱伝導の効率と放電管封止部の破裂の回避とを勘案して、0.25mm〜0.5mm、好ましくは0.25mm〜0.35mmとするのが良い。電極芯軸の径とは、例えば断面円形の場合にはその直径であり、断面角形(四角形、それ以上の多角形など)の場合にはその中心を通る線幅である。電極芯軸3の径が0.25mmより小さいと熱伝導効率が低下し、0.5mmより大きいと放電管封止部で破裂が起こる恐れがある。
【0039】
本実施の形態のショートアーク型高圧放電電極としては、後述するように、金属粉末射出成形法や粉末プレス法によって得られた電極を用いることで、電極本体2と電極芯軸3の接触面積を大きくかつ安定させることができる。
【0040】
なお、発光効率の観点からみると、電極本体と電極芯軸の接触面積を0.9mm2〜3.2mm2とする構成は、後述の製法、電極材料に限らずに、広くショートアーク型高圧放電電極に適用可能である。
【0041】
[ショートアーク型高圧放電電極の製造方法の実施の形態例]
まず、電極本体2を製造する仮焼結電極本体12を作製する。
図4Aは、仮焼結電極本体12の概略断面図である。
一方、電極芯軸3を用意する。図4Bは、電極芯軸3の概略断面図である。この電極芯軸3は、高融点金属の粉末冶金後、線引き加工によって作製されるが、高融点金属粉末を用いた粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による粉末成型法によって円柱状棒状体の成型体を作製してもよい。そして、この成型体を焼結することによって電極芯軸3を作製する。
【0042】
また、上述した仮焼結電極本体12は、まず、高融点金属粉末を用いた粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による粉末成型法によって、最終的に製造される電極本体2の形状に対応する形状の粉末成型体を作製する。
この粉末成型体は、これを成型金型、もしくはプレス機から取り出す取り扱い作業ができる程度の自己保持ができる成型体とされる。
この粉末成型体は、最終的に形成する電極本体2に対応する形状とされる。すなわち、前述したように先端が滑らかに凸に湾曲した例えば球面状、楕円面状、あるいは放物面状等をなし、軸心に対して回転対称の、例えば釣鐘状に形成される。そして中心孔2aに対応する中心孔12aが形成され、またその周面に放熱フィン4が設けられる場合には、その周面にこの放熱フィン4に対応するフィン14が一体に成型される。
このようにして形成された電極本体の粉末成型体を、仮焼結して仮焼結電極本体12を作製する。
【0043】
そして、この仮焼結電極本体12の中心孔12aに、電極芯軸3の先端部を挿入して放電電極構体を得る。図5は、この放電電極構体21の概略断面図である。
次に、この放電電極構体21に対し、本焼結熱処理を行なう。
このように、本焼成することによって、仮焼結成型体12を本焼結して真密度化した電極本体2を形成すると同時に、この電極本体2と、これに挿入された電極芯軸3とを焼結合体、すなわち両者の接触部において相互に焼結することによって機械的に結合一体化する。電極本体2を形成する。すなわち電極本体2に関しては、上述の仮焼結による第1の焼結と、放電電極構体21に対する本焼結による第2の焼結との少なくとも2回の焼結処理がなされる。
このようにして、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1が得られる。
【0044】
上述した粉末成型体に対する仮焼結は、その仮焼結電極本体12の焼結度が、上述した本焼成による焼結合体前における電極芯軸3の空孔率より、高い空孔率が残存する程度の焼結度による焼結を指称するものであり、かつ、粉末成型体に存在していたバインダが殆ど消失されて、残存するバインダによって、仮焼結電極本体12と電極芯軸3との接触部において、電極芯軸3の特性に実質的に影響を与えることがない程度にバインダの排除が必要十分になされる焼結度を指称する。
【0045】
また、仮焼結電極本体12が上述したように仮焼結状態で必要十分にバインダの排除がなされる程度の燒結がなされていて、焼結合体における本焼結に際して仮焼結電極本体12より電極芯軸3の収縮率を小さくすることから、用意される電極芯軸3は、その空孔率が10%以下望ましくは5%以下の電極芯軸であればよいものである。
【0046】
電極本体2の粉末成型は、例えば金属粉末射出成型法 (Metal-Injection-Mold→M.I.M.)、あるいは粉末プレス法によることができるが、工程数の減少、安定した電極形状を得ることができる製造方法としては、金属粉末射出成型法によることが望ましい。電極芯軸3も電極本体2と同様に粉末成型してもよいが、空孔率が小さく真密度に近いほうが望ましく、かつ機械的強度を考慮すると、粉末冶金後線引き加工されたものが好ましい。
【0047】
ショートアーク型高圧放電電極は、上述したように、本焼成された電極芯軸に、仮り焼成された電極本体に挿入された後、焼結熱処理を経て作成されるが、このとき、電極芯軸と電極本体との接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2 となるように作成することが望ましい。
【0048】
(実施例1)
この実施例においては、金属粉末射出成型法によって粉末成型体を得た。
この場合、まず、金属粉末とバインダとが、混練された練り状の混練物によるペーストを得る。
金属粉末は、タングステン粉末、あるいはタングステン(W)などを主成分として、これに例えば再結晶化を抑制し脆化を抑制するカリウム(K)やレニウム(Re)などの、いわゆるドープ剤を5重量%以内好ましくは100ppm以内で添加したタングステン粉末を用いることができる。そして、この金属粉末と、パラフィン系などのバインダとを混練して、上述したペーストを得る。この、ペーストを必要に応じて100℃から200℃程度加熱しながら、目的とする電極本体2の外形状に対応する内形状を有する金型内に加圧射出成型する。このようにして成型された粉末成型体を金型から取り出す。
【0049】
この粉末成型体を、仮焼結すなわち第1の焼結処理を行って図4Aで示した仮焼結電極本体12を作製する。この仮焼結は、前述したように、脱バインダ、すなわちバインダの排除と、この仮焼結電極本体12をつまみ上げるなどのハンドリングが可能な程度の強度が得られる程度の焼結とする。このときの仮焼結電極本体12の密度は、例えばタングステンの場合、真密度の85%以下とする。
【0050】
上述の粉末射出成型における金属粉末、例えばタングステン粉末を用いる場合、その平均粒径は、1〜10μm、好ましくは1〜3μm、例えば2μmとする。この金属粉末粒径の選定は次の理由による。粒径があまり小さいと表面積の増大によって、酸化が急激に進行するとか、粉末同士の接触表面積が大きくなることによる急激な結晶成長を生じるという好ましくない現象が生じるおそれがある。粒径があまり大きいと焼結がおきにくくなる。
【0051】
一方、図4Bで示す本焼結された電極芯軸3を構成する。この電極芯軸3は、電極本体1と同一材料によって構成することが望ましく、同様に例えば金属粉末射出成型によって電極芯軸3を構成する粉末成型体を作製し、これを本焼結熱処理して、低空孔率、高真密度の電極芯軸3を構成する。
【0052】
そして、この本焼結された電極芯軸3の先端部を、仮焼結電極本体12の中心孔12aに、挿入して図5で示した放電電極構体21を構成する。
次に、この放電電極構体21に対する焼結、すなわち上述した第2の焼結を行って仮焼結電極本体12を電極本体2とし、かつこの電極本体2と電極芯軸3とが焼結結合されて、ショートアーク型高圧放電電極1が構成されるようにする。
【0053】
このショートアーク型高圧放電電極1の製造における放電電極構体21の組み立てにあって、中心孔12aの全内周面とこれに挿入される電極芯軸3の外周面とが過不足なく密着することができるように、また、第2の焼結による収縮によって電極芯軸3を締め付けて電極芯軸3と焼結結合が良好に行われるように、仮焼結電極本体12の収縮率、寸法形状の選定がなされる。この選定のための設計は、精度良く行うことができるものである。
【0054】
上述の製造方法において、電極本体を構成する粉末成型体の第1の焼結温度は、14000℃とした。この焼結温度は、余り低いとハンドリング強度が乏しく、また、バインダの残存の問題が生じる。そして、高過ぎると、クラックや、割れの発生や寸法精度が低下してくることから、1100℃〜1400℃、好ましくは1300℃〜1400℃で3時間行う。
【0055】
また、上述した第2の焼結、すなわち放電電極構体に対する焼結、すなわち第2の焼結温度は、タングステン粉末にあっては、1900℃では70分とすることができる。この焼結温度は、1750℃〜2000℃(タングステンの理論再結晶温度)、好ましくは1900℃〜2000℃とする。そして、1750℃での保持温度は180分、1900℃では70分となる。図6は、焼結時の最高温度と保持時間との関係を示した図である。この第2の焼結で、電極本体2密度は、真密度の95%以上となるようにする。
【0056】
この第2の焼結で、この焼結前の空孔率が電極芯軸のそれより大きい仮焼結電極本体12の収縮率が、電極芯軸3のそれより大きいことから、焼結された電極本体2とその中心に配置された電極芯軸3とは強固に焼結結合する。
この電極本体2における収縮率は、粉末成型体における体積に対して20%程度の収縮の収縮が生じるようにした。
また、この第2の焼結に際して、電極本体2は、第1の焼結による仮焼結で、バインダが排除されているか、ほとんど排除されていることから、電極芯軸3は、不純物による再結晶脆化が回避されるものである。
また、この第2の焼結は、ガス出しを兼ねるものであり、このため、この第2の焼結は、1×10−3Pa前後の真空中で行う。
【0057】
このようにして得られたショートアーク型高圧放電電極1は、この電極1の製造後において、通常行われているガス出し目的の真空高温加熱処理が不要とされる。
すなわち、粉末射出成型法で成型した場合の、焼結処理後の成型体について、実際にオージェ分析による深さ方向の酸化度炭化度の分析を行った結果では、従来の場合と同等の深さに観察され、その酸化炭化の表面からの深さは6〜7nmであると考えられ良好な結果がえられる。
【0058】
また焼結後はそのまま発光管へ挿入組立可能であるので、このショートアーク型高圧放電電極1によってショートアーク型高圧放電管を製造する場合において、その製造工程が簡略化される。
【0059】
(実施例2)
この実施例2においては、粉末成型体の製造方法を粉末プレスによった場合である。
この粉末プレス法は、プレス金型内に、実施例1で説明したと同様のタングステンもしくはドープ材を添加したタングステン粉末に例えばパラフィン系のバインダを混合した顆粒状に造粒した造粒粉を充填し、例えば上下パンチ方式などでプレス成型する。
このようにして、電極本体の粉末成型体を作製する。この粉末成型体に対して、実施例1と同様の仮焼結すなわち第1の焼結を行って仮焼結電極本体12を製造する。
【0060】
一方、実施例1におけると同様に電極芯軸3が用意され、仮焼結電極本体12の中心孔a内に電極芯軸3を挿入し、実施例1におけると同様の第2の焼結をおこなって、電極本体2と電極芯軸3とが、焼結結合されて一体化されたショートアーク型高圧放電電極1を製造する。
この実施例2もまた、実施例1におけると同様のすぐれたショートアーク型高圧放電電極1が得られる。
【0061】
(実施例3)
この実施例では、実施例1、あるいは実施例2の製造方法において、電極芯軸3と電極本体2の接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2 となるようにして、ショートアーク型高圧放電電極1を作成する。実施例3では、実施例1、2におけると同様のすぐれたショートアーク型高圧放電電極が得られると同時に、さらに発光効率が上昇したショートアーク型高圧放電電極1が得られる。
【0062】
このようにして製造されるショートアーク型高圧放電電極1を用いてショートアーク型高圧放電管を製造する。
[ショートアーク型高圧放電管及びその製造方法の実施の形態例]
図7は、この実施の形態例によって得たショートアーク型高圧放電管30の一例の概略断面図である。また、図8は、ショートアーク型高圧放電管の一例の製造過程における概略断面図である。
この場合、上述した本発明製造方法によって作製した本発明による対のショートアーク型高圧放電電極1の各電極芯軸3の端部に、放電時の2000℃を超える高温による熱の伝導を抑制する例えばモリブデン箔よりなる封着金属箔33が溶接される。更に、この封着金属箔33の外端に、リード34が溶接される。
【0063】
ショートアーク型高圧放電管30は、両端が封着された例えば石英放電管体32よりなり、図8に示すように、管体32内に、その両端から、上述した封着金属箔33およびリード34が取着された、対のショートアーク型高圧放電電極1が、各先端が所要の間隔を保持するように挿入される。
この状態で、図7に示すように、放電管32を、ショートアーク型高圧放電電極1の先端部の配置部を封入する封止中空31を形成して、これより両外端の封着金属箔33におおいて放電管体32を加熱軟化によって封着する。この封着状態において各リード34の外端を外部に導出する。この際、必要に応じて各部品や溶接後に洗浄やガス出しを兼ねたアニール処理などを行う。
【0064】
モリブデン金属箔33の厚さは、例えば20μmとすることができる。
放電管体32は、上述した石英管、あるいは透光性セラミック容器によって構成することができる。
このショートアーク型高圧放電管の製造においては、放電管体32は、洗浄やアニール処理を必要に応じて行い、その後、上述したように、封着金属箔33およびリード34が取着されたショートアーク型高圧放電電極1を挿入し、管体内を排気しながら、CO2レーザや酸素水素混合ガスバーナーなどに石英を軟化させて管体の一方の端部側を封着、いわゆるシュリンクシールを行う。あるいは軟化した石英を機械的にシールするピンチシール方式によって封着する。
【0065】
その後、他方の端部から、管体内に始動ガスや緩衝ガスとして希ガスの例えば Ar、Xe、Krのいずれかと、発光金属の例えば水銀やヨウ化金属、さらには必要に応じてハロゲンサイクル用の臭素や臭化金属などを挿入する。その後、この端部を前述したと同様に封着金属箔33において封着し、その端部から、他方のリード34を外部に導出する。
そして、両ショートアーク型高圧放電電極1の電極間隔は、例えば1mm〜4.5mm、好ましくは1mm〜2mmとする。
このようにしてショートアーク型高圧放電管30が構成される。
【0066】
〔ショートアーク型高圧放電管及びその製造方法の他の実施の形態例〕
本実施の形態によるショートアーク型高圧放電管30は、基本的には図6で示す構成であるが、ショートアーク型高圧放電電極1として、上述の本発明製造方法によって作製した、電極本体2と電極芯軸3の接触面積を、0.9mm2 〜3.2mm2 としたショートアーク型高圧放電電極を用いて構成される。
【0067】
具体例では、電極本体2と電極芯軸3の固着において、完成体の電極本体2と電極芯軸3の接触面積を、3.3mm2 とし、電極芯軸3の直径を0.4mmとした。発光管容器としては、例えば石英の放電管体32を用いた。なお、発光管容器としては、その他の透光性セラミックなどからなる放電管体を用いることもできる。
【0068】
このショートアーク型高圧放電管の製造においては、放電管体32に対して洗浄やアニール処理が必要に応じて行なわれる。その後、上述したように一対のリード付き電極アセンブリー、すなわち電極1と封着金属箔33とリード34とが一体に固着された電極アセンブリーのうち、一方の電極アセンブリーを、放電管体32の一方側に挿入し、管体32内を排気しながら、CO2レーザや、酸素水素混合ガスバーナーなどによって石英を軟化させて管体の一方の端部側の封着、いわゆるシュリンクシールを行う。あるいはシュリンクシールではなく、軟化した石英を機械的にシールするピンチシール方式によって封着する。
【0069】
その後、一方側が封止された放電管体32内に、他方の端部から始動ガスや緩衝ガスとして希ガス(Ar,Xe,Krのいずれか)、本例ではXeと、発光金属としてヨウ化金属(本例ではヨウカ化ディスプロシウム0.5mgとヨウ化ルテチウム0.5mgと、さらにヨウ化ガリウム0.2mg)とを挿入する。次いで、放電管体32の他方側にリード付き電極アセンブリーを挿入し、電極間隔を1mm〜4,5mなど所望間隔に調整し、シュリンクシールを行い、ショートアーク型高圧放電管30を完成する。具来例では、電極間隔を1.3mm、放電空間容積を60mm3 とした。
このようにして、ショートアーク型高圧放電管30を作製する。
【0070】
このように作製した具体例のショートアーク型高圧放電管30を100w動作させ、同様の構成物の従来型電極103を搭載した放電管と比較した。従来型電極103では、図13及び図14に示す電極芯軸106と、電極本体105とみなすYAGレーザによる溶融部との接触面積が0.6mm2 であり、芯軸106の直径が0.4mmである。両者を比較したところ、ランプ電流は従来型が4Aであるのに対して、本発明は3.4Aと低減され、発光効率は同じく従来型の36ml/Wに対して、本発明が48lm/Wと30%向上した。図9に、本発明(実線)と従来型(破線)との分光スペクトルを示す。この分光スペクトルから、本発明のショートアーク型高圧放電管は可視光波長の全域に均一な強度をもつことが認められる。
【0071】
実際に液晶プロジェクタなどに使用するには、ショートアーク型高圧放電管30は、後述するリフレクタ41に挿入しアライメント固着され、搭載される。本例はメタルハライドランプとして説明したが、超高圧水銀ランプ(UHP)においても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0072】
電極本体と電極芯軸の固着部分における接触面積と発光効率の関係を調査したところ、従来型電極における接触面積(電極本体105(YAGレーザ溶融部)と電極芯軸106において、溶融前の芯軸長さと径から計算した、釣鐘状溶融部の内部接触面積)が0.6mm2 であったのに対して、本実施の形態の接触面積が0.9mm2 以上であれば従来型よりも発光効率が上昇することを確認した。従来型であっても芯軸106の径を大きくすれば発光効率が上がる場合もあるが、放電管封止部の破裂の危険が増すことになる。従って、できるだけ芯軸径は小さいままで電極本体との接触面積を増やす方が望ましい。
【0073】
電極本体と電極芯軸との接触面積が大きくなると発光効率が上昇するする理由を説明する。放電管の動作中は、電極本体の温度が上昇するが、この熱は電極芯軸を経由して石英管体の放電空間内壁へ伝わる。ここで、電極本体と電極芯軸との接触面積が大きくなると、熱伝導が大きくなり石英管内壁が効率よく温度上昇する。石英管内壁温度が上昇することで、アーク放電部分における発光金属蒸気圧(飽和蒸気圧)が上がり、電極間に形成されるプラズマ密度が高密度化し、電極間のランプ電圧が上昇して発光効率が上昇する。
【0074】
また、発光金属蒸気圧が上がると、一対の電極本体間でアーク収縮(いわゆるアークプラズマの自己収縮)を起こして、より点光源に近い放電状態が得られる。
【0075】
図10に、電極本体と電極芯軸との接触面積に対するランプ電圧の関係を示す。図10は、横軸に接触面積(mm2 )をとり、縦軸にランプ電圧の相対値(すなわち、従来型のランプ電圧を1としてその倍数)をとって示した。図10によれば、電極芯軸の径は0.25mm〜0.5mmの範囲、好ましくは0.25mm〜0.35mmとし、接触面積を0.9mm2 〜3.2mm2 (好ましくは2.5mm2 以上)までとすればランプ電圧が従来に比べて上昇する。図10はメタルハライドランプの例であるが、超高圧水銀ランプ(UHP)においてもこの関係は同様である。前述したように、接触面積が0.9mm2 よりも小さいと、石英管内壁に、石英管内の温度低下による黒化などの症状が現れる。接触面積が2.5mm2 以上ではランプ電圧が飽和する。接触面積が3.2mm2 状は、物理的に電極が長くなり管体に入りきれない恐れがあり、実用的に3.2mm2 が上限となる。
【0076】
そして、本発明においては、このようにして製造されたショートアーク型高圧放電管30を用いて、例えば液晶プロジェクタなどの光源として使用されるショートアーク型高圧放電光源装置50を製造する。図11は、このショートアーク型高圧放電光源装置50の一例の概略断面図である。
【0077】
[ショートアーク型高圧放電光源装置及びその製造方法の実施の形態例]
このショートアーク型高圧放電光源装置40は、例えば放物面状をなすコーン状のリフレクタ41と、このリフレクタ41の前方開放側に封着された透明前面パネル42が配置され、リフレクタ41と前面パネル42とによって、包囲空間が構成される。
【0078】
そして、この包囲空間内のリフレクタ41の軸心上に、上述した本発明製造方法によって製造されたショートアーク型高圧放電管30が、収容配置され、これよりの放電発光による発光を、リフレクタ41によって所定方向に照射するようになされる。
ショートアーク型高圧放電光源装置30の前方側のリード34は、導出リード43が接続されてリフレクタの中腹から外部に端子導出がなされる。
また、他方のリード34は、リフレクタの後端から外部に電気的に端子導出がなされる。
【0079】
このようにして製造されたショートアーク型高圧放電光源装置40は、そのショートアーク型高圧放電管の放電発光特性は安定しており、100時間放電後に解体して放電電極の観察を行ったところ、電極本体2に放電前の初期の状態と変化がなく良好な形状を保持していることが確認された。
【0080】
上述した例では、第2の焼結を、ショートアーク型高圧放電電極1の製造工程のみで行った場合であるが、例えばこの焼結工程の少なくとも一部を、例えばショートアーク型高圧放電管30、あるいはショートアーク型高圧放電光源装置40にショートアーク型高圧放電電極1を、マウントして、その点灯を例えば5分程度の短時間、動作、例えばエージングすることによって、イオン衝撃などによる発熱による2000℃以上に昇温することを利用して、第2の焼結作業を進行させるようにすることもできる。このとき、放電管体内に封入された発光金属なども管体内に蒸発しているが、焼結後のランプ消灯過程では既に電極本体の空孔は実質的に塞がっており、なおかつ管内の温度分布によって冷却が速い部分(電極芯軸や管壁)に集まるため、電極本体内部に金属蒸気が入り込むおそれはないものである。
【0081】
ショートアーク型高圧放電光源装置40は、そのショートアーク高圧放電管として、放電電極の電極本体と電極芯軸との接触面積を0.9mm2〜3.2mm2である放電管を備えるときは、さらに放電効率が向上すると共に、前述したようにより点光源に近い放電状態が得られる。 このショートアーク型高圧放電光源装置40を、例えば液晶プロジェクタに使用した場合には、可視光全域にわたり均一に発光強度が上がることによるスクリーン輝度、すなわち光利用効率が上昇すると共に、発光金属蒸気圧上昇によるアーク収縮により、より点光源に近くなるので、スクリーン輝度を上昇することが可能になる。
【0082】
上述したように、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1は、従来における電極本体の先端をレーザ光照射による溶融成形作業等を回避するなど、その製造工程数が減少されたことによって、製造時の外部からの汚染の減少が図られ、品質管理もしやすいという利点がある。
また、レーザ照射時は、酸化防止対策として、Ar,Heなどの不活性ガスを噴射したりするが、複数回に渡りレーザ光照射を行って溶融形成を行うと、外部からの汚染を取り込む危険が増し、酸化や炭化なども発生しやすく、形成後の洗浄やガス出し熱処理などの対策工程も増える結果をまねくことになる。さらに製造工程の歩留が低下してしまうという問題も発生し、製造が安定して行えないという欠点がある。また、放電加工による釣鐘部形成にしても問題点は同様である。
【0083】
さらに、冒頭に述べた従来のコイルによって電極本体を製造する方法による場合、長期例えば100時間を超える点灯を行った場合、コイル部分が巻き乱れを起こして温度分布変化を起こしたり、電界が集中して点灯時の放電が乱れたりして、電極の形状品質の信頼性に問題があるものであるが、本発明によるときは、この改善が図られ安定化が図られる。
【0084】
さらに、金属粉末射出成型法(MIM法)で製造された電極は、金型と焼結条件によって形状寸法が決まるため、従来技術製造法の電極に比べて極めて安定した精度が保証されるものである。
また、複雑な形状に対応が可能であるにもかかわらず、従来技術で発生するようなコイル変形等の問題がなく、また、冒頭に述べたクラックの等の発生、したがって、信頼性、特性の不安定性、歩留まりの低下等の改善が図られる。
【0085】
また、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1は、その電極本体2と電極芯軸3との接触面積を0.9mm2 〜3.2mm2 に設定することにより、放電管に適用した場合に発光効率が向上し、輝度信頼性を向上することができる。従って、従来と同等の投入出力動作において高発光効率のショートアーク型高圧放電管が得られるものである。
【0086】
また、発光金属蒸気圧が上がると、一対の電極本体間でアーク収縮(いわゆるアークプラズマの自己収縮)を起こして、より点光源に近い放電状態があらわれる。従って、このようなショートアーク型高圧放電管をリフレクタに挿入しアライメント固着してなる光源装置を例えば液晶プロジェクタなどに使用すれば、より点光源に近い光源が得られるので、スクリーン輝度を上げることが可能となる。
【0087】
また、本発明では、図9の発光スペクトルに示すように、可視光波長全域に均一な光強度を得ることができるので、例えば液晶プロジェクタなどの光源装置に適用した場合、赤、緑及び青の各色光が均一に得られる。同時に、光利用率を向上することができる。
【0088】
なお、図11で示すように、ショートアーク型高圧放電光源装置は、その透明前面パネル42とリフレクタ41を密閉状態に配置した構成としてもよく、あるいは透明前面パネル42の一部にリフレクタ41の内部と外部を連通する開口部を設けた構成、さらには透明前面パネルを省略した構成とすることもできる。
【0089】
図3の電極芯軸3の先端3aが電極本体2より突出して成るショートアーク型高圧放電電極は、放電管に適用した場合、電極芯軸3自体が加熱される元となり、石英管体内壁への熱伝導にさらに有利な構造となる。但し、電極芯軸3のみで電極を構成し、電極本体2が無い構造(例えば、自動車用などに使用される)では、熱容量が小さく、電極芯軸の先端温度が上がり過ぎてしまうので液晶プロジェクタ用の光源装置に適さない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極の一例の概略側面図および概略断面図である。
【図2】A及びBは、本発明によるショートアーク型高圧放電電極1の他の例の概略側面図および概略断面図である。
【図3】本発明によるショートアーク型高圧放電電極1のさらに他の例の概略断面図である。
【図4】AおよびBは、仮焼結電極本体および電極芯軸の一例をしめす概略断面図である。
【図5】この放電電極構体21の概略断面図である。
【図6】焼結時の最高温度と保持時間との関係を示した図である。
【図7】本発明製造方法によって得るショートアーク型高圧放電管の一例の概略断面図である。
【図8】図6の製造方法の製造過程におけるショートアーク型高圧放電管の一例の概略断面図である。
【図9】本発明及び従来のショートアーク型高圧放電管の分光スペクトル図である。
【図10】ショートアーク型高圧放電電極における電極本体と電流芯軸との接触面積とランプ電圧の関係を示すグラフである。
【図11】ショートアーク型高圧放電光源装置50の一例の概略断面図である。
【図12】従来のショートアーク型高圧放電管の概略断面図である。
【図13】従来一般の放電電極の側面図である。
【図14】A及びBは、従来のショートアーク型高圧放電電極の電極本体および芯軸部材の側面図である。
【図15】従来のショートアーク型高圧放電電極の概略断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1……ショートアーク型高圧放電電極、2……電極本体、3……電極芯軸、4……放熱フィン、12……仮焼結電極本体、2a,12a……中心孔、21……放電電極構体、30……ショートアーク型高圧放電管、31……封止中空、32……放電管体、33封着金属箔、34……リード、40……ショートアーク型高圧放電光源装置、41……リフレクタ、42……透明前面パネル、43……導出リード、100……ショートアーク型高圧放電管、101……封止中空、102……放電管体、103……放電電極、104……給電端子、105……電極本体、106……電極芯軸、105a……本体部材、106a……芯軸部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ高融点金属から成る電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、
本焼成された電極芯軸が、仮焼結された電極本体の中心孔に挿入されて焼結合体された構成を有する
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電電極。
【請求項2】
上記電極本体および電極芯軸が、タングステンを主成分とする高融点金属から成る
ことを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型高圧放電電極。
【請求項3】
それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と、該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有し、
前記電極本体と前記電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2に設定されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電電極。
【請求項4】
前記電極芯軸の径が0.25mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項3記載のショートアーク型高圧放電電極。
【請求項5】
それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成るショートアーク型高圧放電電極の製造方法であって、
高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、
高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、
該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、
上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、
該放電電極構体の焼結熱処理工程と
を有し、
該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とを行なう
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項6】
上記本焼結された電極芯軸は、空孔率を10%以下とされて成る
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項7】
上記放電電極構体の本焼結熱処理工程は、上記電極本体の空孔率を10%以下とする焼結熱処理である
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項8】
上記高融点金属粉末は、タングステン、もしくは5重量%以下の添加材を有するタングステンで、平均粒径が1μm〜10μmの金属粉末とされた
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項9】
上記粉末成型工程が、粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項10】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、
本焼成された電極芯軸が、仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電管。
【請求項11】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と、該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、前記電極本体と前記電極芯軸との接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2に設定されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電管。
【請求項12】
前記電極芯軸の径が0.25mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項11記載のショートアーク型高圧放電管。
【請求項13】
それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が、所定の間隔を保持して放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管の製造方法であって、
上記ショートアーク型高圧放電電極の作製工程が、
高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、
高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、
該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、
上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、
該放電電極構体の焼結熱処理工程と
を有し、
該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、
該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有する
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電管の製造方法。
【請求項14】
上記放電電極構体の熱処理工程の少なくとも一部を、上記ショートアーク型高圧放電管の組み立て後に、上記対の放電電極間に放電を開始させ、該放電による発熱によって行う ことを特徴とする請求項13に記載のショートアーク型高圧放電管の製造方法。
【請求項15】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、
前記ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、
本焼成された電極芯軸が、仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電光源装置。
【請求項16】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、
前記ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と、該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、前記電極本体と前記電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2 に設定されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電光源装置。
【請求項17】
前記電極芯軸の径が0.25mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項16記載のショートアーク型高圧放電光源装置。
【請求項18】
それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管と、該ショートアーク型高圧放電管からの発光を、所定方向に照射するリフレクタとを有するショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法であって、
上記ショートアーク型高圧放電管の作製工程が、
高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、
高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、
該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、
上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、
該放電電極構体の焼結熱処理工程と
を有し、
該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、
該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有し、
該ショートアーク型高圧放電管を、上記リフレクタに対して所定の位置関係に配置することを特徴とするショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法。
【請求項19】
上記放電電極構体の熱処理工程の少なくとも一部を、上記ショートアーク型高圧放電管の組み立て後に、上記対の放電電極間に放電を開始させ、該放電による発熱によって行うことを特徴とする請求項18に記載のショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法。
【請求項1】
それぞれ高融点金属から成る電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、
本焼成された電極芯軸が、仮焼結された電極本体の中心孔に挿入されて焼結合体された構成を有する
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電電極。
【請求項2】
上記電極本体および電極芯軸が、タングステンを主成分とする高融点金属から成る
ことを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型高圧放電電極。
【請求項3】
それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と、該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有し、
前記電極本体と前記電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2に設定されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電電極。
【請求項4】
前記電極芯軸の径が0.25mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項3記載のショートアーク型高圧放電電極。
【請求項5】
それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成るショートアーク型高圧放電電極の製造方法であって、
高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、
高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、
該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、
上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、
該放電電極構体の焼結熱処理工程と
を有し、
該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とを行なう
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項6】
上記本焼結された電極芯軸は、空孔率を10%以下とされて成る
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項7】
上記放電電極構体の本焼結熱処理工程は、上記電極本体の空孔率を10%以下とする焼結熱処理である
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項8】
上記高融点金属粉末は、タングステン、もしくは5重量%以下の添加材を有するタングステンで、平均粒径が1μm〜10μmの金属粉末とされた
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項9】
上記粉末成型工程が、粉末射出成型法もしくは粉末プレス法による
ことを特徴とする請求項5に記載のショートアーク型高圧放電電極の製造方法。
【請求項10】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、
本焼成された電極芯軸が、仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電管。
【請求項11】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入された構成を有し、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と、該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、前記電極本体と前記電極芯軸との接触面積が0.9mm2 〜3.2mm2に設定されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電管。
【請求項12】
前記電極芯軸の径が0.25mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項11記載のショートアーク型高圧放電管。
【請求項13】
それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が、所定の間隔を保持して放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管の製造方法であって、
上記ショートアーク型高圧放電電極の作製工程が、
高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、
高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、
該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、
上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、
該放電電極構体の焼結熱処理工程と
を有し、
該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、
該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有する
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電管の製造方法。
【請求項14】
上記放電電極構体の熱処理工程の少なくとも一部を、上記ショートアーク型高圧放電管の組み立て後に、上記対の放電電極間に放電を開始させ、該放電による発熱によって行う ことを特徴とする請求項13に記載のショートアーク型高圧放電管の製造方法。
【請求項15】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、
前記ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属からなる電極本体と、該電極本体が先端に配置される電極芯軸とを有し、
本焼成された電極芯軸が、仮焼成された電極本体の中心孔に挿入されて焼成合体されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電光源装置。
【請求項16】
一対の放電電極が管体内に所要の電極間隔を置いて封入されたショートアーク型高圧放電管と、
前記ショートアーク型高圧放電管からの発光を所定方向に照射するリフレクタとを備え、
前記放電電極は、それぞれ高融点金属の焼結体からなる電極本体と、該電極本体内に先端部が配置された電極芯軸とを有して、前記電極本体と前記電極芯軸との接触面積が0.9mm2〜3.2mm2 に設定されて成る
ことを特徴とするショートアーク型高圧放電光源装置。
【請求項17】
前記電極芯軸の径が0.25mm〜0.5mmである
ことを特徴とする請求項16記載のショートアーク型高圧放電光源装置。
【請求項18】
それぞれ高融点金属から成る電極芯軸の先端部に電極本体が配置されて成る対のショートアーク型高圧放電電極が放電管体内に収容配置されて成るショートアーク型高圧放電管と、該ショートアーク型高圧放電管からの発光を、所定方向に照射するリフレクタとを有するショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法であって、
上記ショートアーク型高圧放電管の作製工程が、
高融点金属よりなり本焼結された電極芯軸を用意する工程と、
高融点金属粉末によって、中心孔を有する上記電極本体の成型体を形成する粉末成型工程と、
該電極本体の粉末成型体を、上記電極芯軸の空孔率より高い空孔率を残す仮焼結成型体を得る仮焼結工程と、
上記電極芯軸の上記先端部を上記電極本体の仮焼結成型体の中心孔に挿入して放電電極構体を構成する工程と、
該放電電極構体の焼結熱処理工程と
を有し、
該放電電極構体の焼結熱処理工程によって上記電極本体の本焼結と、該電極本体と上記電極芯軸との収縮率の差によって上記電極本体と該電極本体の中心孔内に挿入された上記電極芯軸との焼結合体とがなされ、
該放電電極構体の上記焼結熱処理工程がなされて作製されたショートアーク型高圧放電電極を上記放電管体内に封入配置してショートアーク型高圧放電管を組み立てる工程を有し、
該ショートアーク型高圧放電管を、上記リフレクタに対して所定の位置関係に配置することを特徴とするショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法。
【請求項19】
上記放電電極構体の熱処理工程の少なくとも一部を、上記ショートアーク型高圧放電管の組み立て後に、上記対の放電電極間に放電を開始させ、該放電による発熱によって行うことを特徴とする請求項18に記載のショートアーク型高圧放電光源装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−95665(P2007−95665A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198639(P2006−198639)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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