説明

シラン塗被組成物、塗被システム、及び方法

本発明は塗被システム及び基体の塗被システムに関する。一つの実施形態でこの発明は基体、基体に配置され、光反応性基を有するシラン化合物または光反応性基を有するシラン化合物の反応生成物を含む基層、および基層に配置され、基層に末端固定されるポリマーを含むポリマー層を含む製品を包含する。一つの実施形態でこの発明は製品被膜を包含する。一つの実施形態でこの発明は基体に被膜を沈着する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願はPCT国際特許出願として2008年2月19日に提出され、サーモディクス・インク(SurModics, Inc.)、米国国定法人、の名のもとに米国を除くすべての国の指定についての出願人、およびBruce M. Jelle,米国民、Sara Macklin,米国民、及びRobert W. Hergenrother,米国民、米国のみの指定についての出願人、「シラン塗料、塗被システム、及び方法」(“Silane Coating Compositions, Coating Systems, And Methods”)と題を付けられ、2007年2月22日に提出された米国特許出願第11/677819号の優先権を主張し;内容はここで引用により組み入れられる。
【0002】
この発明は塗被システムならびに基材の塗被システムに関する。もっと厳密に言えばこの発明は別層または基材に末端に定着される層を含む塗被システムに関する。
【背景技術】
【0003】
被膜は物体表面に時々準備され、物体を異なる種類の損傷から保護する。例えば、被膜は頻繁に電子回路及び回路基板の上に遮断層として準備され、回路を腐蝕のような損傷から保護する。パリレン被膜はパリレンの溶剤及びガスの両方に対する遮断性のため及びパリレンの相似被覆層を形成する能力のために頻繁に使用される。
【0004】
多くの異なる種類の物体はそれらの使用条件に依存して保護する必要がある。例えば、移植可能医療用装置のような物体は体組織に存在する広く多様な生物成分にさらされる。もっとはっきり言えば移植可能医療用装置は体内の埋め込み位置に依存して酸、塩基、イオン、等を含む薬剤にさらされることができる。多少のこれらの薬剤は装置材料を分解することができ、損傷または装置故障さえもたらす。
【0005】
ほかに保護と別々にまたはそれに加えてまたいくらかの種類の装置の表面特性を改質することは好ましいことがある。例として医療用装置の表面をもっと滑性または生体適合性にすることは好ましいことがある。それ故に必要は移植可能医療用装置を保護する方法ならびに被膜としては存在する。必要はまた被膜を表面に沈積する有効な方法としては存在する。必要はまた医療用装置の表面特性を改質する方法ならびに被膜としては存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は塗被システム及び基体の塗被システムに関する。一つの実施形態でこの発明は基体、基体に配置され、光反応性基を有するシラン化合物、または光反応性基を有するシラン化合物の反応生成物を含む基層、および基層に配置され、基層に末端固定されるポリマーを含むポリマー層を含む物品を包含する。
【0007】
一つの実施形態でこの発明は基体、基体に配置され、光反応性基を有する化合物、または光反応性基を有する化合物の反応生成物を含む基層、および基層に配置され、基層に末端固定されるポリマーを含むポリマー層を含む物品を包含する。
【0008】
一つの実施形態でこの発明は物品向け被膜を包含し、被膜は基体、基体に配置され、光反応性基を有するシラン化合物を含む第一層、および第一層に配置され、末端固定される重合体鎖を含む第二層を含む。
【0009】
一つの実施形態でこの発明は基体上に被膜を沈積する方法を含み、方法はシラン化合物を基体上に適用し、シラン化合物は光反応性基を含み、塗布溶液をシラン化合物に加え、塗布溶液は単量体、低重合体、または高重合体を含み、化学線エネルギーをシラン化合物の光反応性基に加え、かつ単量体、低重合体、または高重合体からシラン化合物に末端固定される重合体鎖を形成することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の上述の要約は本発明の各論じられる実施形態を記述することを予定されない。これはあとに続く図解及び詳細な説明の目的である。
【0011】
ここで記述される本発明の実施形態は網羅的であることまたは発明を以下の詳細な説明で開示される正味形態に限定することを予定されない。むしろ実施形態は当該分野で熟練を要するほかのものが本発明の原理及び実際を認識して理解することができるように選択され、記述される。
【0012】
ここで挙げられるすべての刊行物及び特許はこれによって参照により受け入れられる。ここで開示される刊行物及び特許は単にそれらの開示に用意される。ここで何も発明者はどの刊行物及び/又はここで引用される特許を含む刊行物及び/又は特許どれにも先立つ権利がない容認として解釈されるものではない。
【0013】
移植可能医療用装置は装置を劣化するかそうでなく装置に損傷を与えることができる多様な成分にさらされる。体内の埋込み位置に依存して移植可能装置はかなりの種類の物質に腐蝕性であるかもしれない酸、塩基、イオン等にさらされることができる。いくらかの医療用装置は集積回路を含む。集積回路は装置の適した作用に決定的でありがちな導電路(例えば、細線)を含有する。これらの導電路は特に異なる種類の損傷を装置が埋め込まれている間に受けやすいことがある。
【0014】
移植可能医療用装置を損傷から保護する1つの手段方法は潜在的有害成分に対する暴露を物理遮断壁で防止または制限することである。遮断壁は装置の適した作用を害してはならないので特定装置の機能要求は保護に適当な遮断壁を考慮することで関連性がある。例えば、移植可能装置の最大寸法は眼内埋込みでのように身体埋込み現場により限定されることが可能である。それ故にかなりの応用で保護遮断物は比較的薄く残存することが好ましい。
【0015】
理論により拘束されることを予定されないところが保護する装置への遮断物の付着度は遮断物が装置に与える保護度に影響を及ぼすことができることが考えられる。遮断物と移植可能医療用装置の間の接着は移植可能医療用装置の保護を増加することができる。遮断物と移植可能医療用装置の間の接着は結合強さとも呼ばれることがある。本発明の実施形態は被膜と基体の間の増加結合強さを準備する。例として本発明の実施形態は疎水性ポリマー層と基体の間の増加結合強さを準備する。
【0016】
移植可能医療用装置を損傷から保護することを超えて遮断層はまた他の利点も提供することができる。例として遮断層は非生体適合材料を体質に対する暴露から隔離するようにはたらくことができる。
【0017】
移植可能医療用装置を保護することに加えて被膜は医療用装置に準備されることができ、異なった好ましい性質を装置に分与する。医療用装置に関連して多くの異なる好ましい性質があることは認められるものである。例として多少の実施形態で被膜は医療用素子の表面に準備されることができ、表面をもっと滑性にする。多少の実施形態で被膜は医療用素子の表面に準備されることができ、表面をもっと血液適合性にするように表面をもっと生体適合性にする。
【0018】
基体
ここで使用されるときは術語「基体」は支持材を言う。いくらかの実施形態で基体は無機質基体である。いくらかの実施形態で基体は金属または半金属を含有する。例示的金属は鉄、チタン、ニッケル、クロム、コバルト、タンタル、またはそれらの合金を含む。適当な合金はステンレス鋼、ニチノール(ニッケルとチタンの合金)、等を含む。金属はまた例えば、白金、金、パラジウム、イリジウム、またはそれらの合金のような金属であることができる。例示的半金属はシリコン、ゲルマニウム、アンチモン等を含む。いくらかの実施形態で基体はセラミック材料、無機物、またはガラスを含有する。そのような基体は炭化珪素、窒化珪素、ジルコニウム、アルミナ、ヒドロキシアパタイト、石英、シリカ等から調製されることができる。いくらかの実施形態で基体は半導体である。いくらかの実施形態で基体は燐、砒素、硼素、またはガリウムをドープされたシリコンである。いくらかの実施形態で基体は集積回路を含む。
【0019】
基体の実施形態は移植可能及び非移植性医療用装置の両方を含むことができる。基体のいくらかの実施形態は哺乳動物体に挿入されることができる医療用装置を含む。そのような医療用装置はこれらに限定されないが、案内線材、ステント、ステント移植片、被覆ステント、カテーテル、弁、遠位保護装置、動脈瘤閉塞装置、中隔欠損クロージャー、及び人工心臓のような導管装置;細動除去器、脈拍調整装置、及び整調リードのような心臓補助装置;接合移植片及び骨折修復装置のような整形外科用装置;歯科用移植片及び破裂修復装置のような歯科用装置;眼病用装置及び緑内障排液シャント;陰茎、括約筋、尿道、尿管、膀胱、及び腎装置のような泌尿器科用装置;及び胸部プロテーゼ及び人工臓器のような合成プロテーゼを含む。
【0020】
一つの実施形態で基体は集積回路を含む。集積回路(IC)はトランジスタまたは抵抗器のような少なくとも2つの相互接続される半導体素子からなる細片である。
【0021】
基剤塗被層
多少の実施形態でこの発明の基層はシラン化合物と光反応性架橋剤を含む。多少の実施形態でこの発明の基層は光反応性シラン化合物を含む。多少の実施形態でこの発明の基層はシラン化合物、光反応性架橋剤、および/または光反応性シラン化合物の組合せを含む。この発明のシラン化合物、光反応性架橋剤、及び光反応性シラン化合物は順番に細大もらさず議論されるものである。
【0022】
シラン化合物
一つの実施形態で基剤塗被層はシラン化合物、シラン化合物の加水分解(または加溶媒分解)反応生成物、シラン化合物の加水分解反応生成物から形成される重合反応生成物、またはそれらの組合せを含む。塩素、窒素、アルキロキシ基、または珪素に直接結合するアセトキシ基は個々にクロロシラン、シリルアミン(シラザン)、アルコキシシラン、及びアクリロキシシランを生ずることができる。この発明のシラン化合物はこれらの種類の反応性シラン部分を含むことができる。一つの実施形態でシラン化合物は一以上のトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を有することができる。適当な基はトリメトキシシリル、トリエトキシシリル、及びトリプロポキシシリル、及びそれらの組合せを含む。いくらかの実施形態でシラン化合物は少なくとも2つのトリメトキシシリル基を有する。一つの実施形態でシランはスルフィド基のような基体に結び付くことができる別基がない。
【0023】
シラン化合物、シラン化合物の加水分解(または加溶媒分解)反応生成物、加水分解反応生成物から形成される重合反応生成物、またはそれらの組合せは無機質基体の表面でオキシドまたはヒドロキシド基と反応することで無機質基体の表面に結び付くことができる。共有結合は無機質基体と下塗層の少なくとも一の化合物の間に形成する。基体は処理されてヒドロキシドまたはオキシド基を表面で発生することができる。例えば、基体は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等のような強塩基で処理されることができる。金属の場合は金属は酸化電位をかけられて金属表面でオキシドまたはヒドロキシド座を発生することができる。
【0024】
理論により拘束されることを予定しないところが少なくとも2つのトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基はいずれにせよ各トリ(C1〜C3)アルコキシシリル基が結果は表面との結合(Si-O-Metal)になることができるからもっと加水分解安定結合を基体に提供することができる。いくらかの実施形態でシラン化合物は少なくとも2つのトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を有する。適当トリ(C1〜C3)アルコキシシリル含有シラン化合物の例はこれらに限定されないがビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメチオキシシリル)エタン、及びビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンを含む。トリ(C1〜C3)アルコキシシリルシラン化合物の混合物は使用可能である。一つの実施形態でシラン化合物は1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンである。一つの実施形態でシラン化合物は加水分解安定結合を基体に形成できるものから選択される。
【0025】
一つの実施形態でシラン化合物はγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを単独か他のシランと組み合わせていずれか含むことができる。一つの実施形態でシラン化合物はγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及び1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンを含む。
【0026】
いくらかの実施形態でシラン化合物は疎水性を有することができる。例としてシラン化合物は3-(3-メトキシ-4-メタクリロイロキシフェニル)プロピルトリメトキシシランを含むことができる。
【0027】
典型的に少なくともトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基のあるものは加水分解を受ける。シラン化合物の加水分解反応生成物は他のシランと重合することができ、重合反応生成物を形成する。トリメチルシリル基は通例は加水分解そして続いて起こる重合をトリエトキシシリル基かトリプロポキシシリル基いずれかよりもっと急速に受ける。結果として生ずる高分子物質層は典型的に無機質基体の表面に共有結合する。シランまたはアルコキシシリル基は酸または塩基触媒されることができる。
【0028】
光反応性架橋剤
一つの実施形態で基剤塗被層は少なくとも1つの光反応性架橋剤を含む。光反応性架橋剤は適正化学線エネルギー源にさらされれば化学的反応性になることができる少なくとも2つの潜在光反応性基を有する。ここで使用されるときは慣用句「潜在光反応性基」及び「光反応性基」は互換使用され、標準貯蔵条件の下で不活性状態(すなわち基底状態)に存続するために十分安定であり、しかし化学線エネルギー源のような適正エネルギー源に当てられれば不活性状態から活性状態に転位を受けることができる化学部分をいう。光反応性基は特定の加外界刺激に感応し、例えば、同異分子により提供されるような結果として生じる隣接化学構造に対する共有結合に加えて活性種類発生を受ける。適当な光反応性基は米国特許第5002582号明細書に記述され、内容はここで参照により取入れられる。
【0029】
光反応性基は異なった一部分の化学線に感じやすいように選択されることができる。典型的に基は紫外線か可視線いずれかを用いて光活性化されることができるものを選択される。適当な光反応性基は例えば、アジド、ジアゾ化合物、ジアジリン、ケトン、及びキノン化合物を含む。光反応性基は例えば、ニトレン、カルベン、および電磁エネルギーの吸収で励起状態のケトンを含む遊離基のような活性種を発生する。
【0030】
一つの実施形態で光反応性架橋剤の各反応性基はシラン化合物、シラン化合物の加水分解生成物、シラン化合物の加水分解生成物から形成される重合反応生成物、もしくはそれらの組合せかまたは疎水性ポリマー層かいずれかのアルキル基から水素原子を取り出すことができる。共有結合は光反応性架橋剤とシラン化合物の間および光反応性架橋剤と疎水性ポリマー層の間に形成することができる。シラン化合物と疎水性ポリマー層の両方に共有結合することで光反応性架橋剤は付着を促進し、および/または結合強さを増加する。
【0031】
いくらかの実施形態で光反応性基はアセトフェノン、ベンゾフェノン、アントロン、およびアントロン状複素環(すなわちN,O,またはSを10-位に有するもののようなアントロンの複素環式類似化合物)またはそれらの置換(例えば、環置換)誘導体のようなアリールケトンである。アリールケトンの例はアクリドン、キサントン、及びチオキサントン、ならびにそれらの環置換誘導体を含むアントロンの複素環式誘導体を包含する。
【0032】
そのようなアリールケトンの官能基は多重活性化/失活/再活性化循環過程を経験することができる。例えば、ベンゾフェノンは三重項状態にわたる相互系を経験する励起一重項状態の初期形成をもって光化学励起が可能である。励起三重項状態は水素原子の抽出(例えば、重合体塗被層から)により炭素-水素結合に挿入されることができ、かくしてラジカル対を与える。続いて起こるラジカル対の崩壊は新規炭素-炭素結合の形成をもたらす。ラジカル対、または遊離基はまた適切な単量体が存在するならば連鎖重合を刺激するために使用可能である。反応性結合(例えば、炭素/水素)が結合に利用できないとすればベンゾフェノン基の紫外線誘発励起は可逆であり、分子はエネルギー源の除去で基底状態エネルギー準位に戻る。ベンゾフェノン及びアセトフェノンのような光反応性アリールケトンは水で多重再活性化を受けることができ、この故に増加塗被効率を提供することができる。
【0033】
アジ化物は別類の光反応性基を構成し、フェニルアジド及び4-フロロ-3-ニトロフェニルアジドのようなアリールアジド(C6R5N3);ベンゾイルアジド及びp-メチルベンゾイルアジドのようなアシルアジド(―CO―N3);エチルアジドホルメート及びフェニルアジドホルメートのようなアジドホルメート(―O―CO―N3);ベンゼンスルホニルアジドのようなスルホニルアジド(―SO2―N3);及びジフェニルホスホリルアジド及びジエチルホスホリルアジドのようなホスホリルアジド(RO)2PON3を含む。
【0034】
ジアゾ化合物は別類の光反応性基を構成し、ジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタンのようなジアゾアルカン(―CHN2);ジアゾアセトフェノン及び1-トリフルオロメチル-1-ジアゾ-2-ペンタノンのようなジアゾケトン(―CO―CHN2);ジアゾ酢酸t-ブチル及びジアゾ酢酸フェニルのようなジアゾアセテート(―O―CO―CHN2);及びt-ブチルアルファジアゾアセトアセテートのようなベータ(β)-ケト-アルファ(α)-ジアゾアセテート(―CO―CN2―CO―O―)を含む。
【0035】
他の光反応性基は3-トリフルオロメチル-3-フェニルジアジリンのようなジアジリン(―CHN2);及びケテン及びジフェニルケテンのようなケテンCH=C=O)を含む。
【0036】
一つの実施形態で光反応性架橋剤は非イオン性であることができる。理論により拘束されることを予定されないところが非イオン架橋剤は一般にもっと疎水性であり、それ故に移植環境で被膜の遮断性に寄与するので増進保護を移植環境で提供することができる。一つの実施形態で光反応性架橋剤は疎水性である。一つの実施形態で光反応性架橋剤は疎水性反応生成物を形成する。
【0037】
異なる種類の非イオン光反応性架橋剤は使用可能である。一つの実施形態で非イオン光反応性架橋剤は化学式
【0038】
【化1】

ただし、R1、R2、R3、及びR4は潜在光反応性基を含む根基である。
【0039】
を有する。間隔基が中心炭素原子と光反応性基の間にありうる。適当な間座は、例えば―(CH2O)n―(式中、nは1〜4の整数である。)、―(C2H4O)m―(式中、mは1〜3の整数であって類似基である。)を含む。好ましくは間座は光反応性基のシラン化合物または疎水性ポリマー層への結び付きに匹敵するほど配向された原子または原子団を有しない。
【0040】
一つの実施形態で非イオン光反応性架橋剤はテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)もしくはペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエステル)を含む。発明のこの側面で反応性基の一以上はシラン化合物と反応することができ、反応性基の一以上は疎水性ポリマー層と反応することができる。光反応性架橋剤はそれ故にシラン化合物を疎水性ポリマー層に結び付ける。
【0041】
いくらかの実施形態で光反応性架橋剤はイオン性であることができる。例えば、多少の実施形態で少なくとも1つのイオン光反応性架橋剤は基層に包含される。適当なイオン光反応性架橋剤はどれも使用可能である。いくらかの実施形態でイオン光反応性架橋剤は化学式Iの化合物:
【0042】
【化2】

【0043】
ただし、Yは少なくとも1つの酸根、塩基性基、またはそれらの塩を含有する根基であり、X1及びX2は各々独立に潜在光反応性基を含有する根基である、
である。
【0044】
光反応性基は非イオン光反応性架橋剤としては前述されるものと同じであることができる。非イオン光反応性架橋剤について記述されるもののような間座は潜在光反応性基と一緒にX1またはX2の一部分であることができる。いくらかの実施形態で潜在光反応性基はアリールケトンまたはキノンを含む。
【0045】
化学式Iのいくらかの実施形態でYは少なくとも1つの酸性基またはそれらの塩を含有する根基である。そのような光反応性架橋剤は塗布組成物のpHに依存して陰イオン性であることができる。適当な酸性基は例えば、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸等を含む。そのような基の適当塩は例えば、スルホン酸塩、カルボン酸塩、及びホスフェート塩を含む。いくらかの実施形態でイオン性架橋剤はスルホン酸またはスルホネート基を含む。適当な対イオンはアルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、プロトネート化アミン、等を含む。
【0046】
例えば、化学式Iの化合物はスルホン酸またはスルホネート基を含有する根基Yを有することができる;X1及びX2はアリールケトンのような光反応性基を含有する。そのような化合物は4,5-ビス(4-ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,3-ジスルホン酸または塩;2,5-ビス(4-ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,4-ジスルホン酸または塩;2,5-ビス(4-ベンゾイルメチレンオキシ)ベンゼン-1-スルホン酸または塩;N,N-ビス[2-(4-ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]-2-アミノエタンスルホン酸または塩、等を含む。米国特許第6278018号明細書を参照し、ここで参考により取入れられる。塩の対イオンは例えば、アンモニウムまたはナトリウム、カリウム、もしくはリチウムのようなアルカリ金属であることができる。
【0047】
化学式Iの他の実施形態でYは塩基性基またはそれらの塩を含有する根基である。そのようなY基は例えば、アンモニウム、ホスホニウム、またはスルホニウム基を含むことができる。基は塗被組成物のpHに依存して中性または陽イオン性であることができる。いくらかの実施形態で根基Yはアンモニウム基を含む。適当な対イオンは例えば、カルボキシレート、ハロゲン化物、スルフェート、及びホスフェートを含む。
【0048】
例えば、化学式Iの化合物はアンモニウム基を含有するY基を有することができる;X1及びX2はアリールケトンを含む光反応性基を含有する。そのような光反応性架橋剤はエチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)塩、ヘキサメチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)塩、1,4-ビス(4-ベンゾイルベンジル)-1,4-ジメチルピペラジンジウム)塩、ビス(4-ベンゾイルベンジル)ヘキサメチレンテトラアミンジウム塩、ビス[2-(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニオ)エチル]-4-ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム塩、4,4-ビス(4-ベンゾイルベンジル)モルホリニウム塩、エチレンビス[(2-(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニオ)エチル)-4-ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム]塩、及び1,1,4,4-テトラキス(4-ベンゾイルベンジル)ピペラジンジウム塩を含む。米国特許第5714360号明細書を参照し、ここで参考により取入れられる。対イオンは典型的にカルボキシレートイオンまたはハロゲン化物である。一つの実施形態でハロゲン化物は臭化物である。
【0049】
単独の光反応性架橋剤または光反応性架橋剤の任意の組合せは使用可能である。いくらかの実施形態でペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)のような少なくとも1つの非イオン性架橋剤は少なくとも1つのイオン性架橋剤と使用されることが可能である。例えば、少なくとも1つの非イオン光反応性架橋剤はエチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)塩のような少なくとも1つの陽イオン光反応性架橋剤もしくは4,5-ビス(4-ベンゾイル-フェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,3-ジスルホン酸または塩のような少なくとも1つの陰イオン光反応性架橋剤と使用されることが可能である。別例でイオン性および非イオン性架橋剤の組合せは使用可能である。
【0050】
光反応性シラン化合物
光反応性シラン化合物は少なくとも1つの光反応性基をそれに有するシラン化合物である。光反応性シラン化合物は基体にも結び付き、次に光活性化後に疎水性ポリマー層にも結び付くことができるので好ましくあることができる。それ故にいくらかの実施形態で塗被適用工程は一の化合物だけが適用され、二以上の異なる種類の化合物の代わりに疎水性ポリマー層を基体に結び付けるので簡単にされることができる。
【0051】
一つの実施形態で基剤塗被層は光反応性シラン化合物を含む。塩素、窒素、アルキロキシ基、または珪素に直接結合するアセトキシ基はクロロシラン、シリルアミン(シラザン)、アルコキシシラン、及びアシルオキシシランを個々に生ずることができる。この発明の光反応性シラン化合物はこれらの種類の反応性シラン部分を含むことができる。光反応性シラン化合物はモノ-、ジ-、またはトリ-、シラン部分を有するものを含むことができる。一つの実施形態で光反応性シラン化合物は少なくとも一のトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基及び前に定義される少なくとも一の光反応性基を有する。適当なトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基はトリメトキシシリル、トリエトキシシリル、及びトリプロポキシシリル、及びそれらの組合せを含む。光反応性シラン化合物の例は米国特許第6773888号(リー他(Li et al.))に開示され、内容はここで参照により取入れられる。
【0052】
いくらかの実施形態で光反応性シラン化合物はアミン基を含む。一つの実施形態で光反応性シラン化合物は(4-ベンゾイルベンゾイル)アミノ(C1〜C3)アルキルトリ(C1〜C3)アルコキシシランである。一つの実施形態で光反応性シラン化合物は(4-ベンゾイルベンゾイル)アミノプロピルトリメトキシシランである。一つの実施形態で光反応性シラン化合物は(4-ベンゾイルベンゾイル)アミノエチルトリメトキシシランである。
【0053】
光反応性シラン化合物はまたシラン化合物および/または前に記述される光反応性架橋剤と共に使用されることもできることが認められるであろう。それ故に一つの実施形態で基剤塗被層は光反応性シラン化合物及び非光反応性シランを含む。一つの実施形態で基剤塗被層は光反応性シラン化合物とγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含む。γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランはユナイテッド・ケミカル・テクノロジーズ、インク(United Chemical Technologies, Inc., Bristol)から商業的利用可能である。
【0054】
疎水性ポリマー層
この発明の一つの実施形態で疎水性ポリマー層は基剤塗被層の上に配置される。例として疎水性ポリマー層が基剤塗被層の上に配置される後に化学線エネルギー源は基剤塗被層の光反応性基を活性化するために使用可能である。基剤塗被層の光反応性基は次に疎水性ポリマー層加えて基剤塗被層の他化合物にも共有結合することができる。
【0055】
ポリマーの疎水性を規定する一方法はポリマーの溶解パラメーター(またはヒルデブランド助変数)によってである。溶解パラメーターは物質の分子間の誘引強さを記述する。溶解パラメーターは方程式1:
【0056】
【数1】

【0057】
式中、δ=溶解パラメーター((cal/cm3)1/2
ΔEV=気化エネルギー(cal)
V=モル容積(cm3
により表わされる。
【0058】
溶解パラメーターは重合体についてそれらの不揮発性のために気化熱データから計算されることができない。よって溶解パラメーターは間接的に計算されなければならない。一つの方法はポリマーが熱または容積の変化なく溶解する溶媒を同定し、次にポリマーの溶解パラメーターを同定溶媒の溶解パラメーターと同じであるように規定することが必要である。溶解パラメーターのもっと完全な議論及び同計算方法はブランダプ他(Brandup et al.)、「高分子便覧」(“Polymer Handbook”)、第4版、John Wiley & Sons, N.Y.(1999年)に求められることができ、VII p.675で始まる。
【0059】
通常、溶解パラメーターδの値はポリマーの疎水性の程度に逆比例する。かくして大変疎水性である重合体は低溶解パラメーターを有することが可能である。この一般命題は特に生理学的温度以下のガラス転移温度を有する重合体に適用できる。一つの実施形態ではこの発明で使用される疎水性ポリマーは溶解パラメーター約11.0 (cal/cm3)1/2未満を有する。一つの実施形態ではこの発明で使用される疎水性ポリマーは約10 (cal/cm3)1/2未満の溶解パラメーターを有する。一つの実施形態でこの発明で使用される疎水性ポリマーは約8.5 (cal/cm3)1/2未満の溶解パラメーターを有する。
【0060】
この発明の疎水性ポリマーは蒸着ポリマー、プラズマ沈積ポリマー、溶媒沈積ポリマー、粉体塗料、熱溶融沈着ポリマー等を含むことができる。この発明の疎水性ポリマーは取り出し可能水素を有するものを含むことができる。一つの実施形態で疎水性ポリマー層の疎水性ポリマーはパリレン、ポリウレタン、珪素樹脂、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリブタジエンを含む群から選択される。
【0061】
この発明の疎水性ポリマーはパリレンを包含することができる。「パリレン」(“Parylene”)はp-キシレンを基材とした既知群のポリマーの総称及び未置換形態のポリマーの名称の両方である。例として無置換パリレンポリマーは反復構造-(p-CH2-C6H4-CH2)-を有することができる。術語「パリレン」(“parylene”)はp-キシレンを基材として気相またはプラズマ相重合により製造される既知群のポリマーを含む。一般のパリレンはポリ2-クロロ-パラキシリレン(パリレンC(parylene C))、ポリパラキシリレン(パリレンN(parylene N))、ポリ2,5-ジクロロ-パラキシリレン(パリレンD(parylene D))、ポリ2,3,5,6-テトラフルオロ-パラキシリレン、ポリ(ジメトキシ-p-キシリレン)、ポリ(スルホ-p-キシリレン)、ポリ(イオド-p-キシリレン)、ポリ(トリフルオロ-p-キシリレン)、ポリ(ジフルオロ-p-キシリレン)、及びポリ(フルオロ-p-キシリレン)を含む。この発明の実施形態で使用されるパリレンはモノ-、ジ-、トリ-、及びテトラ-ハロ置換ポリパラ-キシリレンを含むことができる。パリレンは異なった量で適用されることができ、異なった厚さのパリレン層を生ずる。一例にパリレン層は約0.01マイクロメートル〜約20.0マイクロメートル厚さであることができる。多少の実施形態でパリレン層は約0.05マイクロメートル〜約2.5マイクロメートル厚さである。パリレン及びパリレン誘導体は多様な供給源からまたはそれを通して商業的利用可能であり、スペシャルティ・コーティング・システムズ(Specialty Coating Systems (Clear Lake, WI))、パラ・テック・コーティング、インク(Para Tech Coating, Inc. (Aliso Viejo, CA))及びアドバンスド・サーフェス・テクノロジー、インク(Advanced Surface Technology, Inc. (Billerica, MA))を含む。
【0062】
この発明の疎水性ポリマーはポリマーの組合せを含むことができる。例としてこの発明の疎水性ポリマーは第一ポリマー及び第二ポリマーを含むことができる。第一ポリマーの例はポリ(アルキル(メト)アクリレート)、詳細にはアルキル鎖長2〜8個炭素をもって分子量50キロドルトン〜900キロドルトンを有するものを含む。ここで使用されるときは術語「(メト)アクリレート」とは重合体を記述するのに使用されるならばメチル基を含む形態(メタクリレート)またはメチル基のない形態(アクリレート)をいうものとする。例示的第一ポリマーはポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)である。そのようなポリマーは例えば、オールドリッチ(Aldrich)から商業的利用可能であり、約200000ドルトン〜約320000ドルトンで変化する分子量をもって、変動内部粘度、溶解性、及び形態(例えば、結晶または粉末)を有する。
【0063】
適当な第一ポリマーの例はまたポリ(アリール(メト)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)、及びポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)からなる群から選択される疎水性ポリマーを含む。そのような術語はポリマー構造を記述するために使用され、少なくとも一の炭素鎖と少なくとも一の芳香環はアクリル基、典型的にはエステルと組み合わされ、当発明の組成物を提供する。詳細には例示的ポリマー構造は6〜16個炭素原子を有するアリール基をもって、重量平均分子量約50〜約900キロドルトンを有するものを含む。適当なポリ(アラルキル(メト)アクリレート)、ポリ(アリールアルキ(メト)アクリレート)またはポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)は芳香族部分も含有するアルコールから誘導される芳香族エステルから製造されることができる。
【0064】
適当な第二ポリマーの例は商業的に利用可能であり、約10%〜約50%(12%、14%、18%、25%、33%変種は商業的利用可能である)の酢酸ビニル濃度を有し、粒状、ペレット、グラニュール等の形態のポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)(pEVA)を含み、低パーセント酢酸ビニルを有するpEVA共重合体は典型溶剤に漸増的不溶性になり、ところが高パーセント酢酸ビニルを有するものは漸減的耐久性になる。
【0065】
この発明で用いる例示的疎水性ポリマー混合物はpBMAとpEVAの混合物を含む。このポリマー混合物は約0.25〜約70.0%(重量)の絶対ポリマー濃度(すなわち、塗布材料で両方のポリマーの全総合濃度)で使用可能である。また約0.05〜約70%(重量)の塗料溶液における各個のポリマー濃度で使用可能である。一つの実施形態でポリマー混合物は100キロドルトン〜900キロドルトンの分子量を有するpBMAと24〜36重量%の酢酸ビニル含有量を有するpEVA共重合体を含む。一例にポリマー混合物は200キロドルトン〜400キロドルトンの分子量を有するpBMAと30〜34重量%の酢酸ビニル含有量を有するpEVA共重合体を含むことができる。塗布混合物に溶解または懸濁される活性剤の濃度は最終塗布材料の重量に基づいて0.01〜90 wt%で変化することができる。
【0066】
疎水性ポリマーは:(a)(i)ポリ(アルキレン-co-アルキル(メト)アクリレート、(ii)他のアルキレンとのエチレンコポリマー、(iii)ポリブテン、(iv)非芳香族ポリマー及びコポリマー、(v)疎水性芳香族基含有コポリマー、及び(vi)エピクロロヒドリン含有ポリマーからなる群から選択される一以上のポリマーを含む第一ポリマー成分;および(b)ポリ(アルキル(メト)アクリレート)及びポリ(芳香族(メト)アクリレート)からなる群から選択されるポリマーを含む第二ポリマー成分の合わせて疎水性である組合せを生む組合せを含むことができる。
【0067】
活性剤層
一つの実施形態でこの発明の被膜は疎水性ポリマー層の上に配置される活性剤層を含む。活性剤層は活性剤及び一以上のポリマーを含むことが可能である。例として活性剤層は組織に埋込み場所で効果を媒介することができる一以上の活性剤を溶離することができる。それ故に一つの実施形態でこの発明の被膜は薬剤送出装置としての移植可能医療用装置機能を作成するために使用可能である。ここで記述の目的のために、参照は「活性剤」になされるものであり、しかし単称術語の使用は予期される活性剤の適用を限定せず、任意数の活性剤はここで教授を用いて準備されることができることは言うまでもない。ここで使用されるときは術語「活性剤」とは特別の希望活性を有する化合物をいう。例えば、活性剤は特定活性を対象に発揮する治療化合物であることができる。いくらかの実施形態で活性剤は代わるがわるペプチド、蛋白質、炭水化物、核酸、脂質、多糖もしくはそれらの組合せ、またはこれらに限定されないが鳥及び人を含む哺乳動物を含む動物に生体内で投与されるならば望ましい生物学的効果をもたらす合成無機もしくは有機分子を言うものである。
【0068】
活性剤層のポリマーは疎水性または親水性であることができる。活性剤層のポリマーはポリ(アルキル(メト)アクリレート)、ポリ(アリール(メト)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート、または前述されるポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレートを含むことができる。活性剤層のポリマーはまた前述されるポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)も含むことができる。一つの実施形態で活性剤層のポリマーはポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)とポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)(pEVA)を含む。
【0069】
活性剤層のポリマーは:(a)(i)ポリ(アルキレン-co-アルキル(メト)アクリレート、(ii)他のアルキレンを有するエチレンコポリマー、(iii)ポリブテン、(iv)非芳香族ポリマー及びコポリマーから誘導されるジオレフィン、(v)芳香族基含有コポリマー、及び(vi)エピクロロヒドリン含有ポリマーからなる群から選択される一以上のポリマーを含む第一ポリマー成分、及び(b)前述されるポリ(アルキル(メト)アクリレート)及びポリ(芳香族(メト)アクリレート)からなる群から選択されるポリマーを含む第二ポリマー成分の組合せを含むことができる。
【0070】
活性剤層のポリマーはまた生分解性ポリマーを含む。例示的生分解性ポリマー物質は多糖、ポリエステルアミドならびにポリ(エチレングリコール)およびポリ(ブチレンテレフタレート) のようなポリ(エーテルエステル)多数ブロックコポリマーまたはポリ(エチレングリコール)とDL-ラクチド、グリコリド、及びε-カプロラクトンのようなプレポリマー構成ブロックを含む。生分解性ポリマー物質は分解して無毒性であり、身体からかなりの逆反応をもたらさない崩壊生成物を形成できる。
【0071】
この発明によって有用な活性剤は埋込み場所へ施用について好ましい治療特性がある物質を含む。本発明で有用な活性剤はトロンビン阻害剤、抗トロンボゲン剤、血栓分解性薬剤、フィブリン分解性薬剤、凝固防止剤、抗血小板剤、血管痙攣抑制剤、カルシウム経路遮断剤、ステロイド、血管拡張神経薬、高血圧抑制剤、抗微生物剤、抗生物質、抗細菌剤、抗寄生体及び/又は抗原生動物溶質、防腐剤、抗菌剤、脈管形成剤、抗脈管形成剤、表面糖蛋白質受容体の阻害剤、抗有糸分裂性物質、微小管防止剤、抗分泌剤、アクチン阻害剤、改型阻害剤、アンチセンスヌクレオチド、代謝拮抗物質、縮瞳剤、抗増殖剤、制癌化学療法薬剤、抗新生物剤、ポリメラーゼ阻害剤、抗ウイルス物質、抗AIDS物質、抗炎症ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症剤、鎮痛薬、解熱薬、免疫抑制剤、免疫調節剤、生長ホルモン拮抗薬、生長因子、放射線療法薬剤、ペプチド、蛋白質、酵素、細胞外基質成分、ACE阻害剤、キレート化剤、抗酸化剤、光力学治療薬剤、遺伝子治療薬剤、麻酔薬、抗毒素、神経毒素、オピオイド、ドーパミン作用薬、催眠薬、抗ヒスタミン薬、精神安定薬、抗痙攣薬、筋弛緩薬及び抗パーキンソン物質、鎮痙薬及び筋緊縮促進剤、抗コリン作用薬、眼病用薬剤、抗緑内障溶質、プロスタグランジン、抗欝薬、抗精神病薬物質、神経伝達物質、制吐剤、画像化剤、特定目標達成剤、細胞感応改良剤を含む多くの種類の療法を含むことができる。
【0072】
もっと具体的に言うと実施形態で活性剤はヘパリン、共有ヘパリン、合成ヘパリン塩、または別のトロンビン阻害剤;ヒルジン、ヒルログ、アーガトロバン、D-フェニルアラニル-L-ポリ-L-アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒト組織プラスミノゲン活性化因子、または別の血栓分解性薬剤;フィブリン分解性薬剤;血管痙攣抑制剤;カルシウム経路遮断剤、ニトレート、酸化窒素、酸化窒素促進剤、酸化窒素供与体、ジピリダモル、または別の血管拡張神経薬;HYTRIN(登録商標)または別の抗高血圧薬剤;糖蛋白質IIb/IIIa阻害剤(abciximab)または別の表面糖蛋白質受容体阻害剤;アスピリン、チクロピジン、クロピドグレルまたは別の抗血小板剤;クロヒチンまたは別の抗有糸分裂、または別の微小管防止剤;ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイド、または別の抗分泌剤;サイトカラシンまたは別のアクチン阻害剤;細胞周期阻害剤;改型阻害剤;デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチド、または分子遺伝学的介入向けの別の薬剤;メトトレキセート、または別の代謝拮抗物質または抗増殖剤;タモキシフェンシトレート、TAXOL(登録商標)、パクリタクセル、もしくはそれらの誘導体、ラパミシン(または他のラパログ)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンオレルビン、エトポシド、テノポシド、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラクリン、マイトキサントロン、ブレオマイシン、プライカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミド及びその類似物、クロラムブチル、エチレンイミン、メチルメラミン、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(カルムスチン等)、ストレプトゾーシン、メトトレキセート(多くの適応症で使用される)、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2-クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、オキシ尿素、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマーまたは他の制癌化学療法薬剤;シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、ピメクロリムス、アザチオプリン、マイコフェノレートモフェチル、mTOR阻害剤、または別の免疫抑制薬剤;コルチゾール、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾン誘導体、ベータメタゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、6U-メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロンアセトニド)、または別のステロイド性薬剤;トラパジル(PDGF拮抗薬)、アンギオペプシン(生長ホルモン拮抗薬)、アンギオゲニン、生長因子(脈管内皮生長因子(VEGF)のような)、または抗生長因子抗体(例えば、ranibizumab、商用名LUCENTIS(登録商標)のもとで販売される)、または別の生長因子拮抗薬または作用薬;ドーパミン、ブロモクリプチンメシレート、ペリゴリドメシレート、または別のドーパミン作用薬;60Co(5.3年半減期)、192Ir(73.8日)、32P(14.3日)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99Tc(6時間)、または別の放射線療法薬剤;沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、白金、タングステンまたは放射線不透過剤として機能する別の重金属;ペプチド、蛋白質、細胞外基質成分、細胞成分または別の生物的薬剤;カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤;アンギオテンシン受容体遮断剤;酵素阻害剤(生長因子符号導入キナーゼ阻害剤を含む);アスコルビン酸、アルファトコフェロール、超酸化物不均化酵素、デフェロキサミン、21-アミノステロイド(ラサロイド)または別の鉄分キレート化剤もしくは抗酸化剤;14C-、3H-、131I-、32P-または36S-放射性同位元素識別形態または任意の前述のものの他放射性同位元素識別形態;エストロゲン(エストラジオール、エストリオール、エストロン等のような)または別の性ホルモン;AZTまたは他のポリメラーゼ阻害剤;アシクロビル、ファムシクロビル、リマンタジン塩酸塩、ガンシクロビルナトリウム、ノルビル、クリキシバン、または他の抗ウイルス剤;5-アミノレブリニック酸、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロジンクフタロシアニン、テトラメチルヘマトプロフィリン、ローダミン123または他の光力学治療薬剤;シュードモナスアエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A予防しかもA431類表皮癌種細胞と反応性IgG2カッパ抗体、ノルアドレナリン作用酵素ドーパミンベータ水酸化酵素予防サポリン共役単クローン抗体、または他の抗体標的治療薬剤;遺伝子治療薬剤;エナラプリル及び他のプロドラッグ;PROSCAR(登録商標)、HYTRIN(登録商標)または良性前立腺増生(BHP)を取扱う他の薬剤;マイトタン、アミノグルテチミド、ブレベリン、アセトアミノフェン、エトダラク、トルメチン、ケトロラク、イブプロフェン及び誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン、ナブメトン、アウラノフィン、オーロチオグルコース、金ナトリウムチオマレート、任意のこれらの混合物、または任意のこれらの誘導体を含むことができる。
【0073】
活性剤層にまた含まれることができる他の生物学的に有用化合物はこれらに限定されないが、ホルモン、β-遮断剤、抗狭心症剤、心筋肉収縮剤、コルチコステロイド、鎮痛薬、抗炎症剤、抗不整脈薬剤、免疫抑制薬、抗菌剤、抗高血圧症剤、抗マラリア薬、抗新生物薬剤、抗原生動物薬剤、抗甲状腺剤、鎮静剤、催眠薬及び神経弛緩薬、利尿薬、抗パーキンソン症候群薬剤、胃腸薬剤、抗ウイルス剤、抗糖尿病薬、抗癲癇性剤、抗真菌剤、ヒスタミンH-受容体拮抗薬、脂質調節剤、筋弛緩薬、ビタミンならびに無機質のような栄養剤、興奮薬、核酸、ポリペプチド、及びワクチンを含む。
【0074】
抗生物質は微生物の生長を抑制するかそれを弱める物質である。抗生物質は合成的にまたは微生物により生成されることができる。抗生物質の例はペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、マイノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン類似体、セファロスポリン等を含む。セファロスポリンの例はセファロチン、セファピリン、シファゾリン、セファレキシン、セフラジン、シファドロキシル、シファマンドール、シフォキシチン、シファクロール、シフロキシム、シフォニシド、シフォルアニド、シフォタクシム、モクサラクタム、シフチゾキシム、シフトリアキソン、及びシフォペラゾンを含む。
【0075】
防腐剤は通常は特異的に例えば、活性を阻害するかそれを破壊するかいずれかにより微生物の生長または働きを防止または抑止する物質と認められている。防腐剤の例は銀スルファジアジン、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、フェノール系化合物、沃素担体化合物、第四アンモニウム化合物、含塩素化合物を含む。
【0076】
抗ウイルス剤はウイルスの複製を破壊または抑制できる物質である。抗ウイルス剤の例はα-メチル-1-アダマンタンメチルアミン、ヒドロキシ-エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5-ヨード-2'-デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、アデニンアラビノシドを含む。
【0077】
酵素阻害剤は酵素反応を制止する物質である。酵素阻害剤の例は塩化エドロホニウム、N-メチルフィソスチグミン、臭化ネオスチグミン、硫酸フィソスチグミン、タクリンHCL、タクリン、1-ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン、p-ブロモテトラミゾール、10-(α-ジメチルアミノプロピオニル)-塩酸フェノチアジン、塩化カルミダゾリウム、ヘミコロニウム-3,3,5-ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3-フェニルプロプアルギルアミン、N-モノメチル-L-酢酸アルギニン、カルビドーパ、3-ヒドロキシベンジルヒドラジンHCl、ヒドララジンHCl、クロルギリン-HCl、デプレニルHCl L(-)、デプレニルHCl D(+)、ヒドロキシルアミンHCl、イプロニアジドホスフェート、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリド-インドール、ニアラミド、パルギリンHCl、キナクリンHCl、セミカルバジドHCl、トラニルシプロミンHCl、N,N-ジメチルアミノエチル-2,2-塩酸ジフェニルバレレート、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、パパベリンHCl、インドメタシン、2-シクロオクチル-2-塩酸ヒドロキシエチルアミン、2,3-ジクロロ-α-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-2-塩酸ベンズアゼピン、p-アミノグルテチミド、p-アミノグルテチミドタルトレートR(+)、p-アミノグルテチミドタルトレートS(-)、3-ヨードチロシン、アルファ-メチルチロシンL(-)、アルファ-メチルチロシンD(-)、セタゾールアミド、ジクロロフェンアミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、アロプリノールを含む。
【0078】
解熱薬は熱を軽減または減少できる物質である。抗炎症剤は炎症を妨げまたは抑制できる物質である。そのような薬剤の例はアスピリン(サリチル酸)、インドメタシン、ナトリウムインドメタシン三水和物、サリチルアミド、ナプロキセン、コルヒチン、フェノプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ジクロフェナク、インドプロフェン及びナトリウムサリチルアミドを含む。
【0079】
局所麻酔薬は局部領域における麻酔効果を有する物質である。そのような麻酔薬の例はプロカイン、リドカイン、テトラカイン、及びジブカインを含む。
【0080】
画像化剤は望まれる場所例えば、腫瘍を生体内で画像化できる薬剤である。画像化剤の例は生体内で検出可能である標識を有する物質、例えば蛍光標識に結び付けられた抗体を含む。術語抗体は全抗体またはその断片を含む。
【0081】
細胞感応改良剤は血小板由来生長因子(PDGF)のような化学配列型因子である。ほかの化学配列型因子は好中球活性化蛋白質、単球化学誘引物質蛋白質、マクロファージ炎症性蛋白質、SIS(小誘導分泌される)、血小板因子、血小板基礎蛋白質、メラノーマ生長刺激活性、表皮生長因子、形質転換生長因子アルファ、繊維芽細胞生長因子、血小板由来内皮細胞生長因子、インスリン様生長因子、神経生長因子、骨生長/軟骨誘発因子(アルファ及びベータ)、基質金属プロテイナーゼ阻害剤を含む。他の細胞感応改良剤はインターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキン阻害剤、アルファ、ベータ、及びガンマを含むインターフェロン;エリトロポエチンを含む造血因子、顆粒球コロニー刺激因子、組織球コロニー刺激因子;アルファ及びベータを含む腫瘍壊死因子;ベータ-1、ベータ-2、ベータ-3を含む形質転換生長因子(ベータ)、インヒビン、アクチビン、及び任意のこれらの蛋白質、アンチセンス分子、雄性ホルモン物質受容体遮断剤及びスタチン剤の生成のために符号化するDNAを含む。
【0082】
一つの実施形態で活性剤は微粒子であることができる。一つの実施形態で微粒子は活性剤層の表面に分散されることができる。
【0083】
活性剤にあるとすることができる活性剤層重量は与えられた活性剤に所定の施用で望まれるどの範囲でもあることができる。
【0084】
いくらかの実施形態で一超の活性剤は活性剤層で使用可能である。具体的に言うと共同薬剤もしくは共同医薬物質は使用可能である。共同薬剤もしくは共同医薬物質は第一薬剤もしくは医薬物質より差別的に効くことができる。共同薬剤もしくは共同医薬物質は第一薬剤もしくは医薬物質と異なる溶離側面を有することができる。
【0085】
特別の活性剤、または活性剤の組合せは一以上の次の要因:装置の施用、処置される医療条件、予想処置時間、移植場所特性、活用される活性剤の数及び種類、等に依存して選択されることができる。
【0086】
活性剤層で活性剤濃度は約0.001 wt%〜約90 wt%の範囲で準備されることができる。一つの実施形態で活性剤は活性剤層で約75 wt%かそれより少ない範囲の、もしくは約50 wt%かそれより少ない量で存在する。
【0087】
被膜沈積法
この発明の実施形態は被膜を移植可能医療用装置に沈着する方法を含む。この発明のかなりの実施形態で被膜はシラン化合物と光反応性架橋剤を有する基層を含む。多少の実施形態で被膜は光反応性シラン化合物を有する基層を含む。多少の実施形態で被膜はシラン化合物、光反応性架橋剤、および/または光反応性シラン化合物を有する基層を含む。
【0088】
予工程として基体表面は洗浄され、シラン化合物もしくは光反応性シラン化合物が適切に結び付くことができるように調製される。例としてシラン化合物の結合を妨げるかもしれない汚れは除去される。基体表面はまた薬剤で基体表面が配置されるオキシドまたはヒドロキシル基を有するように処理されることが可能である。例えば、基体は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等のような強塩基で処理されることができる。金属の場合は金属は酸化電位をかけられることができ、オキシドまたはヒドロキシド座を金属の表面に発生する。
【0089】
基層がシラン化合物及び光反応性架橋剤で形成される実施形態ではシラン化合物は適当溶媒に光反応性架橋剤と混合され、基剤層塗被溶液を形成する。かくしてシラン化合物及び光反応性架橋剤は同時に同じ溶液の一部として塗布されることができる。選択的にシラン化合物溶液は調製されることができ、別個の光反応性架橋剤溶液が調製されることができる。この実施形態でシラン化合物及び光反応性架橋剤は同時に同じ溶液の一部として塗布されない。異なる種類のシラン化合物は異なる種類の光反応性架橋剤ができるように組合せられることができることを認めるものである。
【0090】
基剤層塗被溶液が光反応性架橋剤と混合されるシラン化合物から形成される実施形態では基剤層塗被溶液は基体に塗布される。異なる種類の技法は基剤層塗被溶液を基体表面に適用するために使用されることができる。例としてシラン化合物は浸漬塗布、ナイフ塗布、スポンジ塗布等される基体表面に吹付けられることができる。シラン化合物は次に中間結合機作工程を通過後に基体の表面に対する共有結合を形成する。具体的に言うとアルコキシシランの場合はアルコキシ基はシラノールに加水分解する。シラノールは次に基体の金属ヒドロキシル基と配位し、オキサン結合を形成して水を脱離する。この点で光反応性架橋剤は主としてシラン化合物に未結合にとどまり、かくして基体は大抵この点で薄めて塗られないか光反応性架橋剤は失われるであろう。所望により下塗層を有する基体は光反応性架橋剤をシラン層と反応させるために化学線エネルギー、例えば紫外線に暴露されうる。化学線暴露後に基体及び下塗層はどの未結合シランも除去するために洗われうる。
【0091】
代替的にシラン化合物と光反応性架橋剤が別個溶液の一部であるところで別々に塗布されることができる。それ故にシラン化合物は最初に塗布されることができ、そして基体に対する結合を許容するのに十分時間後に洗い工程は未結合シラン化合物を除去するために実行されうる。この実施形態で光反応性架橋剤は次に別々に基体に塗布されうる。しかしながらいずれの実施形態でも光反応性架橋剤は、例えば疎水性ポリマー層または適切なように他の部分に結び付くか遊離基を単量体、低重合体、もしくは高重合体の誘因連鎖重合に生ずるさらなる反応に利用可能である光反応性基を保持するだろう。
【0092】
基層が光反応性シラン化合物を含む実施形態ではこの化合物は適当溶剤で混合され、基剤層塗被溶液を形成する。異なる種類の光反応性シラン化合物は組合せられることができることを認めるものである。基体に結合させておくのに十分量の時間を許容する後に洗い工程は実行されることができ、未結合光反応性シラン化合物を除去する。所望によりシラン化合物および/または光反応性架橋剤は光反応性シラン化合物を含む基剤層塗被溶液に加えられることができる。しかしながら光反応性架橋剤は洗い工程が化学線エネルギーを加える前に実行されたら失われることがあることは認められるだろう。
【0093】
次いで疎水性ポリマー層は基剤塗被層上に配置される。前述されるように疎水性ポリマー層の疎水性ポリマーは溶剤沈着ポリマーに加えて蒸気またはプラズマ沈積ポリマーの両方を含むことができる。溶剤沈着ポリマーは漬け塗または吹付塗技法を含むどの方法を用いても塗布されることができる。一つの実施形態で疎水性ポリマーはパリレンであり、基層に蒸着される。
【0094】
次いで化学線エネルギー源は光反応性架橋剤か光反応性シラン化合物の光反応性基を活性化するのに使用される。光反応性基はそれからシラン化合物および/または光反応性シラン化合物に加えて疎水性ポリマー層の疎水性ポリマーにも結び付くことができる。有効にその後に疎水性ポリマー層は次には基体に共有結合される基層の成分に共有結合されることができる。
【0095】
理論により拘束されることを予定しないところが光反応性シラン化合物を含有する基剤塗被層溶液を使用することに関連した利点があることができる。例として基剤塗被層溶液は溶剤と一緒に一成分であることを要するだけであるので簡単にされることができる。さらに一度結合が起こることを許容されたら洗い工程は未結合光反応性架橋剤の予定されない損失なく実行されることができる。未結合成分を洗い落とすことは被膜が薄く及び/又はもっと均一になることを許容することができる。未結合材を洗い落とすことはまた疎水性ポリマー層及び基体間の全接着強さを改良できる。
【0096】
所望により活性剤層は疎水性ポリマー層の上に配置されることができる。例として活性剤層溶液は一以上のポリマーを活性剤と共に適正溶剤で混合することにより調製されることができる。活性剤層は疎水性ポリマー層に吹付塗、漬け塗、ナイフ塗布を含む適当な技法どれを通しても加えられることができる。
【0097】
末端固定ポリマー層
いくらかの実施形態でこの発明は基体、基体に配置され、光反応性基を有するシラン化合物、または光反応性基を有するシラン化合物の反応生成物を含む基層、及び基層に配置され、基層に末端固定されるポリマーを含むポリマー層を含む製品を含む。
【0098】
術語「末端固定される」とはここでポリマーに関して使用されるときは基体、基体の化合物、または塗被系統層に重合体鎖の末端基に共有結合によって結び付けられる重合体鎖を言うものとする。理論により拘束されることを予定しないところが末端固定ポリマーの使用は異なった利点を提供することができる。例として塗被系統で末端固定されるポリマーの使用は入り組んだ医療用装置表面のように複雑外形の被膜の余裕をみておくことができる。末端固定される重合体鎖は「グラース状」層を装置の表面に形成する。末端定着されるポリマー層で各個重合体鎖にあっては重合体鎖は一般にどの実質的方法によっても互いに架橋されないが重合体鎖端、または末端で表面に固定される。別の潜在的利点は微細特徴の偶然収蔵を塗面で避ける能力である。例えば、微細孔または口を含む基体を塗被することに関連して末端固定される重合体鎖は末端基を除いた位置で固定される重合体鎖より細孔または口を収蔵するようになるほどでないと考えられる。いくらかの場合に末端固定ポリマーの使用は好ましくは比較的薄く均一塗被を見込むことができる。
【0099】
末端定着されるポリマー層を与える一手段方法は重合体鎖を現場で基体または基体上の下にある層に形成することである。この手段方法の一例に光反応性基は基体または下にある層に配置されることができる。例えば、ここで記述される光反応性シラン化合物は無機質基体に結び付けられることができる。単量体または低重合体は適用されることができ、単量体または低重合体それ自体は光反応性基を含有しない。単量体は望まれるように異なった性質を提供する分子であることができる。例えば、単量体はアクリルアミド、グリコール、またはビニルピロリドンのような親水性部分、疎水性もしくはスルホネート、ヘパリン、またはホスホネートのような生体適合性部分を有することができる。いくらかの実施形態で一種類の単量体だけが使用される。ほかの実施形態で多数の単量体類型が使用される。多少の実施形態で高重合体は使用可能である。
【0100】
次いで基体または下にある層の光反応性基は単量体から発生期重合体鎖の生長が光反応性基により開始されるように活性化されることができる。生ずる重合体鎖は末端基で基体または下にある層に結び付けられ、通常は互いに架橋されない。一般に生ずる重合体鎖は線状である。
【0101】
重合体鎖は反応が反応性基の消滅か後続単量体供給の欠乏いずれかを通して停止されるまで生長を続けることができる。例えば、化学線エネルギーを加えることで活性化されるベンゾフェノン基に関連して遊離基が発生され、これらの遊離基はビニル基のような重合官能性を有する化合物に反復単位を付加することにより生長させ、線状ポリマー鎖を形成するものである。線状重合体鎖はもはや遊離基が存在しなくなるまでかもはや現存重合性分子がなくなるまで生長を続けるものである。たとえば、重合反応は遊離基を消滅できる酸素分子の導入により停止されることができる。重合体鎖生長過程のために平均重合体鎖長は酸素を加えるようにゆっくりした反応の終息によるか反応溶液の単量体濃度を調節することを通していずれかで制御されることができる。また光重合は誘導の間に加えた光の強さを調整することで制御されることができ、それによってラジカル発生を調整する。
【0102】
いくらかの実施形態で重合体鎖は親水性ポリマーおよび/または親水性部分を含むことができる。親水性ポリマーはアクリル単量体、ビニル単量体、エーテル単量体、またはそれらの組合せのような陽電気、陰電気を帯びるか中性荷電された単量体から調製されることができる。電気的中性親水構造単位を含む適当な単量体の例はアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド(例えば、N,N-ジメチルアクリルアミドまたはメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、及びグリセロールモノアクリレート)を含む。適正pH水準で陰電気を帯びて荷電される適当な単量体重合性分子の例はアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、AMPS(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、ビニル燐酸、ビニル安息香酸、等を含む。適正なpH水準で陽に荷電される適当な単量体分子の例は3-アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、等を含む。
【0103】
発明のさらなる実施形態
本発明の範囲を限定しないところが例示的な特有実施形態は次のとおり開示される。一つの実施形態でこの発明は表面を有する基体、基体の表面に共有結合され、光反応性シラン化合物または光反応性シラン化合物の反応生成物を含む基剤塗被層、光反応性シラン化合物は少なくとも1つの光反応性基を含み;および基剤塗被層に配置され、疎水性ポリマーを含む疎水性ポリマー層を有する製品を含む。基体は無機質基体を包含することができる。基体は金属酸化物を含むことができる。基体は一以上のステンレス鋼、ニチノール、及びコバルト-クロムを含むことができる。基体は珪素を含むことができる。基体は表層シラノールを含むことができる。疎水性ポリマー層は疎水性ポリマー混合物を含むことができる。疎水性ポリマーはパリレン、ポリウレタン、珪素樹脂、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリブタジエンの群から選択される少なくとも一つのものを含むことができる。疎水性ポリマーは少なくとも一のポリ2-クロロ-パラキシリレン(パリレンC)、ポリパラキシリレン(パリレンN)、またはポリ2,5-ジクロロ-パラキシリレン(パリレンD)を含むことができる。シラン化合物は非イオン性であることができる。シラン化合物は疎水性であることができる。シラン化合物はトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を含むことができる。シラン化合物は(4-ベンゾイルベンゾイル)アミノプロピルトリメトキシシランであることができる。光反応性反応基は光反応性ベンゾフェノンを含むことができる。製品はまた一以上のポリマーと活性剤を有する活性剤層も含むことができる。活性剤層はまたポリアルキル(メト)アクリレートを含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)を含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)とポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)(pEVA)を含むことができる。
【0104】
一つの実施形態でこの発明は基体;シラン化合物、シラン化合物の加水分解反応生成物、シラン化合物の加水分解反応生成物から形成される重合反応生成物、またはそれらの組合せを含む基剤塗被層、基剤塗被層はさらに少なくとも2つの光反応性基を有する光反応性架橋剤を含み;および基剤塗被層に配置される疎水性ポリマー層を有する製品であることができる。基体は無機質基体を包含することができる。基体は一以上のステンレス鋼、ニチノール、コバルト-クロムを含むことができる。基体は珪素を含むことができる。基体は表層シラノールを有することができる。疎水性ポリマー層は疎水性ポリマー混合物を含むことができる。疎水性ポリマーはパリレン、ポリウレタン、珪素樹脂、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリブタジエンの群から選択される少なくとも一つのものを含むことができる。疎水性ポリマーは少なくとも一のポリ2-クロロ-パラキシリレン(パリレンC)、ポリパラキシリレン(パリレンN)、またはポリ2,5-ジクロロ-パラキシリレン(パリレンD)を含むことができる。シラン化合物は非イオン性であることができる。シラン化合物は疎水性であることができる。シラン化合物はトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を含むことができる。シラン化合物は少なくとも2つのトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を含むことができる。シラン化合物は1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンであることができる。光反応性反応基は光反応性ベンゾフェノンであることができる。光反応性架橋剤はペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)またはテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエステル)を含むことができる。光反応性架橋剤はテトラキス(4-ベンゾイルフェニルメトキシメチル)メタンであることができる。製品はまた一以上のポリマーと活性剤を含む活性剤層を含むこともできる。活性剤層はポリアルキル(メト)アクリレートを含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)を含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)とポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)(pEVA)を含むことができる。
【0105】
一つの実施形態でこの発明は基剤層塗被溶液を基体に適用して基層を形成し、基剤層塗被溶液は光反応性シラン化合物を含み;疎水性ポリマー層を基層に適用し、疎水性ポリマー層は疎水ポリマーを含み;および化学線エネルギーを基体に加えることを含む製品形成する方法である。基体は無機質基体を包含することができる。基体は金属酸化物を含むことができる。基体は一以上のステンレス鋼、ニチノール、及びコバルト-クロムを含むことができる。基体は珪素を含むことができる。基体は表層シラノールを有することができる。疎水性ポリマー層はパリレン、ポリウレタン、シリコーン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリブタジエンの群から選択される少なくとも一つのものを含むことができる。疎水性ポリマーは少なくとも一のポリ2-クロロ-パラキシリレン(パリレンC)、ポリパラキシリレン(パリレンN)、またはポリ2,5-ジクロロ-パラキシリレン(パリレンD)を含むことができる。シラン化合物は非イオン性であることができる。シラン化合物は疎水性であることができる。シラン化合物はトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を含むことができる。シラン化合物は(4-ベンゾイルベンジル)アミノプロピルトリメトキシシランであることができる。シラン化合物は単層であることができる。光反応性反応基は光反応性ベンゾフェノンを含むことができる。方法はまた活性剤層を疎水性ポリマー層の上に施用することを含むことができ、活性剤層は一以上のポリマーと活性剤を含む。活性剤層はポリアルキル(メト)アクリレートを含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)を含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)とポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)(pEVA)を含むことができる。
【0106】
一つの実施形態でこの発明は基剤層塗被溶液を基体に適用して基層を形成し、基剤層塗被溶液はシラン化合物と光反応性架橋剤を含み;疎水性ポリマー層を基層に適用し、疎水性ポリマー層は疎水性ポリマーを含み;および化学線エネルギーを基体に加えることを含む製品形成する方法を含む。基体は無機質基板を包含することができる。基体は金属酸化物を含むことができる。基体は一以上のステンレス鋼、ニチノール、及びコバルト-クロムを含むことができる。基体は珪素を含むことができる。基体は表層シラノールを有することができる。疎水性ポリマー層は疎水性ポリマー混合物を含むことができる。疎水ポリマーはパリレン、ポリウレタン、シリコーン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリブタジエンの群から選択される少なくとも一つのものを含むことができる。疎水性ポリマーは少なくとも一のポリ2-クロロ-パラキシリレン(パリレンC)、ポリパラキシリレン(パリレンN)、またはポリ2,5-ジクロロ-パラキシリレン(パリレンD)を含むことができる。シラン化合物は非イオン性であることができる。シラン化合物は疎水性であることができる。シラン化合物はトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を有することができる。シラン化合物は少なくとも2つのトリ(C1〜C3)アルコキシシリル基を含むことができる。シラン化合物は1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンであることができる。光反応性反応基は光反応性ベンゾフェノンであることができる。光反応性架橋剤はペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)またはテトラキス(4-ベンゾイルベンジルステル)であることができる。光反応性架橋剤はテトラキス(4-ベンゾイルフェニルメトキシメチル)メタンであることができる。方法はまた活性剤層を疎水性ポリマー層の上に施用することを含むことができ、活性剤層は一以上のポリマーと活性剤を含む。活性剤層はポリアルキル(メト)アクリレートを含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)を含むことができる。活性剤層はポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)とポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)(pEVA)を含むことができる。
【0107】
一つの実施形態でこの発明は基剤層塗被溶液を移植可能医療用装置の表面に適用し、基層を形成し、基剤層塗被溶液はシラン化合物および/または光反応性シラン化合物を含有し;疎水性ポリマー層を基層に適用し、疎水性ポリマー層は疎水性ポリマーを含み;および化学線エネルギーを基層に加えることを含む疎水性ポリマー層と移植可能医療用装置基体の間の結合強さを増加する方法を含む。基剤層塗被溶液は光反応性架橋剤を含むことができる。
【0108】
一つの実施形態でこの発明は基剤層塗被溶液を基体に適用して基層を形成し、基剤層塗被溶液はシラン化合物および/または光反応性シラン化合物を含み;疎水性ポリマー層を基層に適用し、疎水性ポリマー層は疎水性ポリマーを含み;および化学線エネルギーを基層に加えることを含む移植可能医療用装置を分解から保護する方法を含む。
【0109】
本発明は次の実施例を参照してよく理解されることが可能である。これらの実施例が発明の特定実施形態を表すことを予定され、発明の範囲を限定すると解釈されない。
【実施例】
【0110】
実施例1:(4-ベンゾイルベンゾイル)アミノプロピルトリメトキシシラン(BBA-Si)の形成
4-ベンゾイル安息香酸(BBA)は還流濃縮器及び頭上攪拌機を装備された乾燥フラスコに加えられ、塩化チオニル及びトルエンの添加が続いた。ジメチルホルムアミドが加えられ、混合物は還流させながらある一期間加熱された。冷却後に溶剤は減圧下に取り除かれ、残留塩化チオニルはトルエンを用いる三蒸発で取り除かれた。生成物、塩化4-ベンゾイルベンゾイル(BBA-CL)は1:4トルエン:ヘキサンから再結晶化され、真空オーブンで乾燥された。
【0111】
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリエチルアミン、及びクロロホルムは三口丸底フラスコに窒素ガス下に導入された。混合物は氷浴で冷却された。クロロホルムに溶解したBBA-Clは撹拌すると共に滴様に添加された。氷浴は添加後に除去され、混合物はさらに2時間撹拌された。4-ベンゾイルベンゾイル)アミノプロピルトリメトキシシラン(BBA-Si)は反応混合物を2回0.1M HCLで洗い、溶剤を真空で除去することにより単離された。
【0112】
構造はNMRで確認された。物質は帯灰白色蝋質固体であった。収率は88%であった。
【0113】
実施例2:ペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)(tetra-BBE-PET)の調製
ペンタエリトリトール(Aldrich, St. Louis, MO)(2.0 g;14.71 mmole;60℃で<1 mm Hgにおいて1時間乾燥される)、4-ブロモメチルベンゾフェノン(20.0 g;72.7 mmole;4-メチルベンゾフェノン(Aldrich, St.Louis, MO)の遊離基臭素化により調製される)、鉱油中80%(w/w)水素化ナトリウム(Aldrich, St.Louis, MO)(NaH 1.23g;41.0 mmole)、及びテトラヒドロフラン(“THF”,120 ml)は34時間アルゴン雰囲気で還流された。添加量の80%NaH(2.95 g;98.3 mmole)は次に反応混合物に加えられ、追加の7時間アルゴン下に還流された。反応は8 mlの氷酢酸(HOAc)の添加により冷まされた。急冷反応は遠心力を作用されてTHF不溶分の除去を援助する。
【0114】
液体は静かに注がれ、不溶分は3個の50 ml部のクロロホルム(CHCl3)で洗われた。沈殿分離液体(主にTHF)及びCHCl3洗浄物は組み合わされ、蒸発されて18.7 gの粗黄色半固体残留物を与える。粗生成物の一部(2 g)は急速蒸発クロマトグラフィーにより40 mm(1.58 in.)直径×200 mm(8 in.)長シリカゲルカラムを用いて精製され、下記の表1(さもなければ示されない限り、比率はすべてv/vである)に従ってCHCl3及びジエチルエーテル(Et2O)で溶離された:
【0115】
【表1】

【0116】
淡黄色油状生成物(0.843 g;59%理論収率)は組合せて留分81〜105(理論で1.43 g tetra-BBE-PETの収量はカラムに配置された粗生成物の2.0 gから予想されるだろう)を蒸発することにより得られた。精製淡黄色生成物はBeckman Acculab 2赤外(“IR”)分光計及びVarian FT-80 NMR分光計を用いる分析により確認された。3500 cm-1のピークの欠如がヒドロキシル官能性の欠如を示した。核磁気共鳴分析(1H NMR(CDCl3))は望まれる生成物と一致した:脂肪族メチレンδ 3.6(s, 8 H)、ベンジル基メチレンδ 84.5(s, 8 H)、及び芳香族δ 7.15〜7.65(m, 36 H)対テトラメチルシラン内部標準。
【0117】
実施例3:二成分基剤層塗被溶液及びパリレンの珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)はイソプロピルアルコール(IPA)を含む小形容器に配置され、音波処理される。次いで基体はIPAでぬぐわれ、洗浄液の音波処理が続いた。基体は温水道水でゆすがれ、洗浄剤の大部分を除去し、次に温水道水で音波処理された。基体は脱イオン水でゆすがれ、脱イオン水で音波処理が続いた。基体は次にIPAで音波処理され、室温で乾燥が続いた。
【0118】
基剤層塗被溶液を作製するためにIPAはTEFLON(登録商標)被覆撹拌棒を有するガラスビーカーに加えられ、撹拌された。1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンは加えられ、NMP(N-メチルピロリドン)に溶解されたtetra-BBE-PET(実施例2でのように調製される)が続いて混合することを許容された。脱イオン水はゆっくり溶液に加えられる。結果として生ずる溶液は完全混合される。
【0119】
基剤塗被層を適用するために前述されるような調製基板は基剤層塗被溶液に浸され、ある時間浸漬を許容される。基体はゆっくり基剤層塗被溶液から取り除かれる。基体は室温で乾燥され、オーブンでさらなる乾燥が続く。
【0120】
基体は次にパリレン塗布工(Parylene coater)に装入される。例示的パリレン塗布機はクックソン・スペシャルティ・コーティング・システムズ(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolis, IN)から利用可能なPDS 2010 LABCOTER 2である。パリレン-C二量体(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolisから入手可能)は次にパリレン塗布機に装入され、付着作業周期はLABCOTERの運転指令に従って開始される。付着作業周期が終わった後にパリレン塗被基体はパリレン塗布機から取り除かれる。
【0121】
基体は次にほぼ40 cm離れ、400 watt水銀蒸気灯を含み、330〜340 nmで照明距離において1.5 mW/cm2を産出する対向ELC 4000ランプ(Electro-Lite Corp., Danbury, CT)間で中ほどに吊るされる。基体は回転され、照射されて被膜の一様硬化の保証となる。
【0122】
実施例4:一成分基剤層塗被溶液及びパリレンの珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)はIPAを含む小形容器に配置され、音波処理される。次いで、基体はIPAでぬぐわれ、洗浄液の音波処理が続いた。基体は温水道水でゆすがれ、洗浄剤の大部分を取り除き、次に温水道水で音波処理された。基体は次にIPAで音波処理され、室温で乾燥が続いた。
【0123】
基剤層塗被溶液を作製するために実施例1において記述されるように調製されるBBA-Siの一部はイソプロピルアルコール(IPA)及び脱イオン水に加えられる。生ずる溶液は完全混合され、基剤層塗被溶液を与える。
【0124】
基剤塗被層を適用するために前述されるような調製基板は基剤層塗被溶液に浸され、浸漬を許容された。基体は次に基剤層塗被溶液からゆっくり取り除かれた。塗被基体は次にIPAでゆすがれ、未結合BBA-Siを除去する。基体は室温で乾燥され、オーブンでさらなる乾燥が続いた。
【0125】
基体は次にパリレン塗布工に装入される。例示的パリレン塗布機はクックソン・スペシャルティ・コーティング・システムズ(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolis, IN)から利用可能なPDS 2010 LABCOTER 2である。パリレン-C二量体(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolisから入手可能)は次にパリレン塗布機に装入され、付着作業周期はLABCOTERの運転指令に従って開始される。付着作業周期が終わった後にパリレン塗被基体はパリレン塗布機から取り除かれる。
【0126】
基体は次にほぼ40 cm離れ、400 watt 水銀蒸気灯を含み、330〜340 nmで照明距離において1.5 mW/cm2を産出する対向ELC 4000ランプ(Electro-Lite Corp., Danbury, CT)の間で中ほどに吊られた。基体は回転され、照射されて被膜の一様硬化の保証となる。
【0127】
実施例5:二成分基剤塗被層溶液及びパリレンの珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)はイソプロピルアルコール(IPA)を含む小形容器に配置され、音波処理される。次いで基体はIPAでぬぐわれ、洗浄液の音波処理が続いた。基体は温水道水でゆすがれ、洗浄剤の大部分を除去し、次に温水道水で音波処理された。基体は脱イオン水でゆすがれ、脱イオン水の音波処理が続いた。基体は次にIPAで音波処理され、室温で乾燥が続いた。
【0128】
基剤層塗被溶液を作製するためにIPAはTEFLON(登録商標)被覆攪拌棒を有するガラスビーカーに加えられ、撹拌された。IPAに溶解されたBBA-Siは、IPAに溶解されたγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが続いてビーカーに加えられる。脱イオン水はゆっくり溶液に加えられる。結果として生ずる溶液は完全混合される。
【0129】
基剤塗被層を適用するために前述されるような調製基材は基剤層塗被溶液に漬けられ、ある時間浸透を許容される。基体はゆっくり基剤層塗被溶液から取り除かれる。被膜は脱イオン水でゆすがれることが可能であり、基体は室温で乾燥され、オーブンでさらなる乾燥が続いた。
【0130】
基体は次にパリレン塗布工に装入される。例示的パリレン塗布機はクックソン・スペシャルティ・コーティング・システムズ(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolis, IN)から利用可能なPDS 2010 LABCOTER 2である。パリレン-C二量体(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolisから入手可能)は次にパリレン塗布機に装入され、付着作業周期はLABCOTERの運転指令に従って開始される。付着作業周期が終わった後にパリレン塗被基体はパリレン塗布機から取り除かれる。
【0131】
基体は次にほぼ40 cm離れ、400 watt水銀蒸気灯を含み、330〜340 nmで照明距離において1.5 mW/cm2を産出する対向ELC 4000ランプ(Electro-Lite Corp., Danbury, CT)の間で中ほどに吊られる。基体は回転され、照射されて被膜の一様硬化の保証となる。
【0132】
実施例6:一成分基剤層塗被溶液、パリレン及び活性剤層の珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)は基剤層及び実施例4で記述される疎水性ポリマー層を塗被される。活性剤層塗被溶液はそこでテトラヒドロフラン(THF)において次のとおり調製される。pEVA(ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート))(SurModics, Inc., Eden Prairie, MN)及びpBMA(ポリ(n-ブチル)メタクリレート)(SurModics, Inc., Eden Prairie, MN)ポリマーはTHFに加えられ、夜通し溶解され、ところが一方振盪機で室温で混合される。ポリマーの溶解後にトリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide (TA))(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)が加えられ、混合物は振盪機に戻され、活性剤塗被組成物を形成する。活性剤塗被組成物は吹付塗装置を使用して塗布される。塗被基体は次に溶剤蒸発により室温で乾燥される。
【0133】
実施例7:一成分基剤層塗被溶液及びパリレンのステンレス鋼基体塗被
第一シラン溶液は実施例1で調製したままのBBA-Siを10%H2O及び90%イソプロピルアルコール溶媒とほぼ0.5 wt%BBA-Siの濃度で混合することにより形成された。
【0134】
第二シラン溶液はBBA-Siをイソプロピルアルコール溶媒とほぼ1 wt%BBA-Siの濃度で混合することにより形成された。
【0135】
ステンレス鋼面材は10%Valtron SP2200塩基性洗剤を使用して温水道水で5〜10分間洗浄された。ステンレス鋼面材は温水道水ですすがれ、洗浄剤の大部分を取り除き、次に温水道水で音波処理された。音波処理後にステンレス鋼面材は脱イオン水でゆすがれた。ステンレス鋼面材は各群で3つの平面材を有する4つの実験群に分けられた。第一及び第二群の平面材(試料1〜6)は第一シラン溶液にほぼ180秒間に中間点で(7 cm長のほぼ3.5〜4.0 cm)漬けられ、ところが一方で第三及び第四群の平面材(試料7〜12)は中間点で第二シラン溶液にほぼ180秒間漬けられた。全平面材はほぼ中間点でシラン溶液に漬けられただけであるので各平面材の半分だけがシラン物質の被膜を有した。平面材は次に第一または第二シラン溶液いずれかからほぼ0.1 cm/sの速度で引き出され、ほぼ2分間風乾を許容された。平面材は次にオーブンで110℃でほぼ3分間加熱硬化された。平面材は次にイソプロピルアルコールでほぼ20秒間ゆすがれ、脱イオン水流のもとでほぼ30秒間ゆすがれた。平面材は次に窒素で吹込乾燥された。
【0136】
平面材は秤量された。平面材は次にパリレン-Cの2 g二量体装入量を有する真空蒸着室(Cookson Specialty Coating Systems, Indianapolisから利用可能なPDS 2010 LABCOTER 2)に配置された。塗被作業周期は開始され、パリレン層は平面材の全表面に沈着された。かくして各平面材はパリレンのすぐ下にシラン化合物を含んだ部分とシラン化合物なしにパリレンがステンレス鋼に直接沈着された部分があった。平面材は塗被作業周期後に再度秤量された。パリレン沈積の詳細は下記の表2である:
【0137】
【表2】

【0138】
次いで群1及び群3からの平面材はほぼ3分間UV線照射された。具体的に言うと平面材はほぼ40 cm離れ、400 watt水銀蒸気灯を含み、330〜340 nmで照明距離において1.5 mW/cm2を産出する対向ELC 4000ランプ(Electro-Lite Corp., Danbury, CT)の間で中ほどに吊るされた。平面材は回転される一方で照射され、被膜の一様硬化の保証となる。
【0139】
次いで塗被平面材は手引剥離試験にかけられた。剥離試験としては金属の安全かみそり刃は被膜の表面に斜交直線模様で約2 mmの刃通過間平均距離をもって刻み目を付けるために使用された。接着標識テープ(Time Med Labeling Systems, Inc., Burr Ridge, IL)は次に刻み目を付けられた塗面に添付され、指圧を均一に加えることによりしっかりと設置された。接着標識テープは次に表面に90度角で引くことにより塗面からもぎとられた。被膜は次に光学鏡検法を用いて検査され、どの被膜が基体から無理に取り除かれたかどうかを評価する。基体から塗膜材料どれかの無理な取り除きは破損剥離試験と判断された。塗膜材料が基体からこの手順で取り去られなければ試験は合格と判断された。各平面材について剥離試験はシラン化合物被膜をパリレンの下に有する平面材領域で一回、シラン化合物被膜をパリレンの下に有しない平面材領域で一回実施された。剥離試験の結果は以下表3に示される。
【0140】
【表3】

【0141】
すべての実験群にわたってBBA-Siで塗被されなかった平面材の剥離試験区域は100%破損率の結果になった。対照的にすべての実験群にわたってシラン組成物で塗被された平面材の剥離試験区域は66%合格率(8/12)の結果になった。かくしてこの実施例はシラン化合物はパリレンのような疎水性ポリマー層の接着を増加するために使用可能であることを証明する。UV線照射された平面材(群1及び群3)のUV線照射されなかった平面材(群2及び群4)に対する結果を比較して、UV線照射された群はシラン組成物とパリレン層の両方を有する領域で100%合格率(6/6)があり、ところが一方でUV線照射されなかった群はシラン組成物とパリレンの両方を有する領域で33%合格率(2/6)があった。よってこの実施例は光反応性シラン化合物のような光反応性基を有する化合物は光反応性基が疎水性ポリマー層に結合されれば疎水性ポリマー層の接着を増加するために使用可能であることを証明する。
【0142】
実施例8:一成分基剤層塗被溶液及びポリウレタンのステンレス鋼基体塗被
実施例1において記述されるように調製され、0.5%BBA-Siに10%水及び89.5%イソプロパノールで稀釈されたBBA-Siシランの下塗は2つのステンレス鋼面材試料各自の面積の70%に適用された。ステンレス鋼面材の面積の残存30%はBBA-Si溶液で塗被されなかった。ステンレス鋼面材を調製し、漬け塗る手順は実施例7で記述された。THFの2%ポリウレタン溶液はバイオスパンポリウレタン(Biospan Polyurethane)(PTG医療用LLC, CA Lot#: IO1898、1 qt.容器でジメチルアセトアミドに24+2%)を用いて調製された。ポリウレタン溶液は平面材試料をポリウレタン溶液で漬け塗り、約15秒間一時停止し、約0.5 cm/secで取り出すことによりステンレス鋼面材に塗布された。試料平面材は110℃でオーブン加熱硬化される前に10分間風乾された。結果として生ずるポリウレタン塗膜は薄く、可視的にはっきりした虹効能を示した。結果として生ずる漬け塗平面材はポリウレタン塗層(試料平面積のほぼ30%)だけを含んだ領域とBBA-Si塗層をポリウレタン塗層(試料平面積のほぼ70%)のすぐ下に含んだ領域を有した。塗被手順に続いて試料は110℃で16分間加熱硬化され、実施例7で記述されるように光線照射された。被膜は実施例7で記述されるものに類似する手引剥離試験にかけられた。平面材から持ち上げられる材料だけがBBA-Si下塗なしでポリウレタン塗層がある領域から生じた。
【0143】
塗被平面材は次に10%Valtron SP2200塩基性洗剤の溶液で温水道水に5〜10分間音波処理された。すすぎでポリウレタンの大部分はポリウレタン塗層だけの平面領域から除去されしかも少しもBBA-Si下塗は除去されなかった。塗被平面材は次に乾燥され、手引剥離試験は繰返された。第二剥離試験後にポリウレタンの下にあるBBA-Si下塗がない領域に残存するポリウレタンはなかった。鮮明に対比してBBA-Si塗層をポリウレタンのすぐ下に含まない領域をはずれるポリウレタンもなかった。この実施例はBBA-Siのような光反応性シラン化合物はポリウレタンのような疎水性ポリマーの基体に対する接着を増加するために使用可能であることを証明する。
【0144】
実施例9:一成分基剤層塗被溶液、パリレン及び活性剤層の珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)は実施例4で記述される基層及び疎水性ポリマー層を塗被される。活性剤層塗被溶液は次にテトラヒドロフラン(THF)で次のとおり調製される。pBMA(ポリ(n-ブチル)メタクリレート)(SurModics, Inc., Eden Prairie, MN)ポリマー及びPBD(ポリブタジエン)(SurModics, Inc., Eden Prairie, MN)ポリマーはTHFに加えられ、夜通し溶解される一方振盪機で室温で混合する。ポリマーの溶解後にトリアムシノロンアセトニド(triamicinolone acetonide(TA))(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO))は添加され、混合物は振盪機に戻され、活性剤塗被組成物を形成する。活性剤塗被組成物は吹付塗装置を使用して塗布される。塗被基体は次に溶剤蒸発により室温で乾燥される。
【0145】
実施例10:一成分基剤層塗被溶液、パリレン及び活性剤層の珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)は実施例4で記述される基層及び疎水性ポリマー層を塗被される。活性剤層塗被組成物は次にテトラヒドロフラン(THF)で次のとおり調製される。PBD(ポリブタジエン)(SurModics, Ink., Eden Prairie, MN)ポリマーはTHFに加えられ、夜通し溶解される一方振盪機で室温で混合する。ポリマーの溶解後にトリアムシノロンアセトニド(triamncinolone acetonide (TA))(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO))が添加され、混合物は振盪機に戻され、活性剤塗被組成物を形成する。活性剤塗被組成物は吹付塗装置を使用して塗布される。塗被基体は次に溶剤蒸発で室温で乾燥される。
【0146】
実施例11:一成分基剤層塗被溶液、ポリブタジエン(PBD)ならびに活性剤層の珪素基体塗被
珪素角形片(「基体」)は実施例4で記述される基層を塗被される。疎水性ポリマー溶液はPBD(SurModics, Ink., Eden Prairie, MN)ポリマーをTHFに加え、夜通し溶解する一方振盪機で室温で混合することにより形成される。疎水性ポリマー溶液は吹付塗装置を使用して塗布される。塗被基体は次に溶剤蒸発により室温で乾燥される。乾燥後に試料/被膜は化学線エネルギー、例えばUV光線にさらされ、PBD層をシラン基剤層に共有結合する。
【0147】
活性剤層塗被溶液はそれからPBD(SurModics, Inc., Eden Prairie, MN)ポリマーをTHFに加え、振盪機で室温で混合する間に夜通し溶解することにより調製される。トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide(TA))(Sigma-Aldrich, St.Louis, MO)は次にPBD溶液に添加され、混合物は振盪機に戻されて活性剤塗被組成物を形成する。活性剤塗被組成物は吹付塗装置を使用して基体に塗布される。塗被基体は次に溶剤蒸発により室温で乾燥される。
【0148】
実施例12:末端定着ポリマー層の付着物
100%IPAに0.5%BBA-Si溶液の第一試薬は実施例1において記述されるように作製された。アクリルアミド(“AA”,Sigma, St.Louis, MN)及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩溶液(“AMPS”,Lubrizol, Wickliffe, OH)の混合物の第二試薬溶液は作製されて100%脱イオン水に7%AA/3%AMPSを含有する。
【0149】
ステンレス鋼棒304Vとしては5 mm × 1.041 mm(Small Parts, Inc., FL)がIPAのぬぐい取りにより洗浄され、10%Valtron SP2200塩基性洗剤で10分音波処理が続いた。ステンレス鋼棒の洗浄は脱イオン水で5分間音波処理で完了された。
【0150】
ステンレス鋼棒はBBA-Si溶液に以下のパラメーターを用いて漬け塗られ、各棒材表面を5 mm塗被する。各棒材はBBA-Si溶液に2.0 cm/secの速度で浸漬された。棒材はBBA-Si溶液に3分間一時停止することを許容された。棒材はBBA-Si溶液から0.5 cm/secの速度で取り除かれた。棒材は10分間風乾され、次に110℃に設定されたオーブンで10分間加熱硬化された。熱処理に続いて棒材は100%IPAでゆすがれ、5分間風乾を許容された。
【0151】
AA/AMPS試薬はBBA-Si表面に次の手順を用いて配剤された。米国特許第7041174号に記載されるような装置は一般にこれで与えられ、窒素で45分間全出入口を開けてパージされた。全出入口は次に閉じられた。4個の10cc注入器は塗被装置口に挿入され、8mlのAA/AMPS試薬は各々の注入器に加えられた。BBA-Si処理ステンレス鋼棒はAA/AMPS溶液を含む注入器に配置した。全集成装置は窒素で45分間泡立たせられる。泡立て後に注入器を含む集成装置は紫外線にさらされた。同時に使用され、5分暴露時間を有する3個紫外線電球(EXFO, Quebec, CA)はBBA-SiにAA/AMPS試薬重合を開始した。紫外線電球から表層漬塗組成物までの距離はほぼ3 cm離れていた。紫外線処理後にステンレス鋼棒は注入器から取り除かれ、残留AA/AMPS試薬は脱イオン水でゆすがれた。
【0152】
ステンレス鋼棒は平滑性及び滑性について試験された。ステンレス鋼棒表面で滑性付着層の存在はトルイジンブルーO(Sigma, St.Louis, MO)の0.1%水溶液で染色により検証された。水道水の流れの下でステンレス鋼棒表面を広く薄め塗ること及び保護膜を親指及び人指し指の間で摩擦すること(ほぼ30秒)は強付着滑性保護膜を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体;
該基体に配置され、光反応性基を有するシラン化合物、または光反応性基を有するシラン化合物の反応生成物を含む基層;および
該基層に配置され、該基層に末端固定されるポリマーを含むポリマー層を含む、製品。
【請求項2】
該基層に末端固定されるポリマーは親水性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
該基層に末端固定されるポリマーはアクリルアミド基を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
該基層に末端固定されるポリマーは生体適合性部分を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
該基層に末端固定されるポリマーは該基層に共有結合される、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
該基層に末端固定されるポリマーは単層を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
該基層は該基体に共有結合される、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
該基層は単層を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項9】
該光反応性基はアジド、ジアゾ、ジアジリン、ケテン、ケトン、及びキノンからなる群から選択される、請求項1に記載の製品。
【請求項10】
該光反応性基はアリールケトン基を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項11】
該光反応性基はベンゾフェノンを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項12】
該シラン化合物は4-ベンゾイルベンゾイル)アミノプロピルトリメトキシシランを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項13】
該基体は無機物質を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項14】
基体;
該基体に配置され、光反応性基を含む化合物、または光反応性基を含む化合物の反応生成物を含む基層;および
該基層に配置され、該基層に末端固定されるポリマーを含むポリマー層を含む、製品。
【請求項15】
該化合物は光反応性架橋剤を含む光反応性基を含む、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
製品被膜であって、該被膜は、
基体;
該基体に配置され、光反応性基を有するシラン化合物、または光反応性基を有するシラン化合物の反応生成物を含む第一層;および
該第一層に配置され、末端固定される重合体鎖を含む第二層を含む、被膜。
【請求項17】
該末端固定される重合体鎖は親水性部分を含む、請求項16に記載の被膜。
【請求項18】
該末端固定される重合体鎖はアクリルアミド基を含む、請求項16に記載の被膜。
【請求項19】
該末端固定される重合体鎖は該基層に共有結合される、請求項16に記載の被膜。
【請求項20】
被膜を基体に沈着する方法であって、該方法は、
光反応性基を含むシラン化合物を基体上に適用し;
単量体を含む塗被溶液を該シラン化合物に加え;
化学線エネルギーを該シラン化合物の該光反応性基に加え;かつ
該単量体から該シラン化合物に末端固定される重合体鎖を形成することを含む、方法。

【公表番号】特表2010−519090(P2010−519090A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550978(P2009−550978)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/054297
【国際公開番号】WO2008/103668
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】