説明

シラン官能性非含有高圧ポリオレフィンを含む低誘電損失電力ケーブル外装

外装層(例えば、絶縁層)を含む電力ケーブルが、シラン官能性非含有高圧ポリオレフィン(例えば、高圧低密度ポリエチレン)と、分子の少なくとも50パーセントが最大でも1つのヒドロキシル官能性を含むポリエーテルポリオールとの混合物から製造される。好ましくは、電力ケーブルは中電圧電力ケーブル又は高電圧電力ケーブルであり、ポリオレフィンは、外装層が製造されるときに、及び/又は、外装層を製造した後で架橋される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力ケーブルに関する。1つの態様において、本発明は、1つ又はそれ以上の絶縁外装を含む電力ケーブルに関し、一方で、別の態様において、本発明は、そのような1つ又はそれ以上の絶縁外装がシラン官能性非含有高圧ポリオレフィンを含む電力ケーブルに関する。さらに別の態様において、本発明はシラン官能性非含有高圧ポリオレフィン(high pressure polyolefin free of silane functionality)の製造に関し、一方で、なおさらに別の態様において、本発明は、そのようなポリオレフィン製造プロセスのための高圧を生じさせるために使用されるハイパーコンプレッサ(hypercompressor)において使用される潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な送電ケーブルは一般に、第1の半導電性シールド層(導体シールド又はストランドシールド)、絶縁層、第2の半導電性シールド層(絶縁シールド)、金属のテープシールド又はワイヤシールド、及び、保護外皮を含めて、数層のポリマー材によって取り囲まれるケーブルコアに1つ又はそれ以上の導体を含む。外側の半導電性シールドは絶縁材に結合され得るか、又は、剥離可能であり得るかのどちらかであり、ほとんどの適用では、剥離可能なシールドが使用される。この構造の内部に存在するさらなる層(例えば、水分不透過材など)が多くの場合には組み込まれる。
【0003】
多くのケーブル外装が、例えば、絶縁外装、保護外皮などが、様々な高圧ポリオレフィンから、例えば、高圧低密度ポリエチレン(HPLDPE)から調製される。これらのポリオレフィンの製造では、それらの名が意味するように、高い運転圧力が要求され、例えば、70〜350メガパスカル(MPa、すなわち、約10,000〜50,000psi)の運転圧力が典型的であり、240MPa〜310MPa(約35,000psi〜45,000psi)の運転圧力が好ましい。これらの高圧を達成するために、1つ又はそれ以上のハイパーコンプレッサが用いられ、また、この設備の運転では、潤滑剤の使用が要求される。残念なことに、このような高い運転圧力、及び、市販されているハイパーコンプレッサ用シールの性質を考えた場合、潤滑剤が必然的に、非常に低いレベル(例えば、百万部あたり数部)ではあるが、反応槽の中に漏れて、反応物(例えば、エチレン、コモノマー、溶媒、触媒など)、及び、最終的には、反応生成物(すなわち、高圧ポリオレフィン)と混合し、それらの一部となる。
【0004】
従来、鉱油がハイパーコンプレッサ潤滑剤として使用されており、しかし、これには、ハイパーコンプレッサについての相当の保守時間が伴う。ポリヒドロキシ官能性のポリアルキレンオキシドコポリオール、例えば、UCON(商標)PE−320(これは、The Dow Chemical Companyから入手可能である)などが、ハイパーコンプレッサ潤滑剤の別の一群である。これらの潤滑剤は一般に、ハイパーコンプレッサの保守という状況では鉱油よりも良好である一方で、高圧ポリオレフィン製造物におけるそれらの存在は、潤滑剤が数ppmの量で存在するにすぎない場合でさえ、ポリオレフィンが最終的には架橋されるプロセスにおいて、また、その意図された使用におけるポリオレフィンの性能においてそれらの両方でポリオレフィン製造物の使用に対する有害な影響を有し得る。
【0005】
多数のヒドロキシル基、及び、親水性のエチレンオキシド基が存在することのために、これらの潤滑剤はかなり親水性である。このことが、ポリマーによる増大した水の取り込みを生じさせることになり、また、このことは結果として、そのようなポリマーから作製される物品の特性に対して悪影響を及ぼすことになる。例えば、潤滑剤表面における望まれない水の存在及びポリヒドロキシル官能性の存在は、外装が中電圧電力ケーブル又は高電圧電力ケーブルの高い電気的応力条件にさらされるとき、そのようなポリオレフィンから作製された絶縁外装の電気損失を増大させ得る。増大した電気損失は結果として、電力ケーブルの有用寿命を短くする。その上、潤滑剤表面における望まれない水の存在及びポリヒドロキシル官能性の存在は、スコーチ、すなわち、ポリオレフィンの早すぎる架橋を、絶縁外装を製造するプロセスの期間中に生じさせ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ポリマー製造業界、特に、ワイヤ及びケーブルの業界は、中電圧電力ケーブル及び高電圧電力ケーブルにおける電気損失を低下させる、高圧ポリオレフィンを含むケーブル外装を調製するための組成物及び方法に関心を持ち続けている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、(i)シラン官能性非含有高圧ポリオレフィンと、(ii)分子の少なくとも50パーセント(すなわち、バルクポリマー分子の50パーセント)が最大でも1つのヒドロキシル官能性を含むポリエーテルポリオールとを含む組成物である。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、架橋されたシラン官能性非含有高圧ポリオレフィンと、分子の少なくとも50パーセント(すなわち、バルクポリマー分子の50パーセント)が最大でも1つのヒドロキシル官能性を含むポリエーテルポリオールとを含む押出し品又は成形品である。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、シラン官能性非含有高圧ポリオレフィンと、分子の少なくとも50パーセント(バルクポリマー分子の50パーセント)が最大でも1つのヒドロキシル官能性を含むポリエーテルポリオールとの混合物から製造される外装層(例えば、絶縁層)を含む電力ケーブルである。好ましくは、電力ケーブルは中電圧電力ケーブル又は高電圧電力ケーブルであり、ポリオレフィンは、外装層が製造されるときに、又は、外装層を製造した後で架橋される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】UCON(商標)PE−320コンプレッサ潤滑剤とともに作製されるポリエチレン、及び、UCON(商標)PE−305コンプレッサ潤滑剤とともに作製されるポリエチレンの、0〜25キロボルト/ミリメートル(kV/mm)の応力レベルにおける75℃での散逸率(誘電損失)の比較を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
【0012】
本開示における数値範囲は概略的であり、従って、別途示されない限り、範囲外の値を含む場合がある。数値範囲は、少なくとも2単位の隔たりが、任意の下方値と、任意の上方値との間に存在するならば、1単位のきざみで、下方値及び上方値を含めて、下方値及び上方値に由来するすべての値を含む。一例として、組成上の特性、物理的特性又は他の特性、例えば、分子量、粘度、メルトインデックスなどが100〜1,000であるならば、すべての個々の値、例えば、100、101、102など、及び、部分範囲、例えば、100〜144、155〜170、197〜200などが明示的に列挙されることが意図される。1よりも小さい値を含有する範囲、又は、1よりも大きい端数数字(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。10未満の1桁の数字を含有する範囲(例えば、1〜5)については、1単位は、典型的には、0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されることの例にすぎず、列挙された最小値と、最大値との間における数値のすべての可能な組合せが、本開示において明示的に述べられていると見なされなければならない。様々な数値範囲が、とりわけ、バルクポリエーテルポリオールにおけるヒドロキシル官能性の量、シラン官能性非含有ポリオレフィンポリマーに対する潤滑剤の量、並びに、様々な温度範囲及び他のプロセス範囲について、本開示の中で提供される。
【0013】
「ケーブル」、「電力ケーブル」及び同様な用語は、保護外皮又は保護外装の内部における少なくとも1つのワイヤ又は光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には共通の保護外皮又は保護外装において一緒に束ねられる2つ以上のワイヤ又は光ファイバーである。外皮の内側にある個々のワイヤ又はファイバーはむきだしであり得るか、又は、被覆され得るか、又は、絶縁され得る。結合ケーブルは、電気ワイヤ及び光ファイバーの両方を含有する場合がある。このようなケーブルなどは、低電圧用途、中電圧用途及び高電圧用途のために設計され得る。典型的なケーブル設計が、米国特許第5,246,783号、同第6,496,629号及び同第6,714,707号において例示される。
【0014】
「ポリマー」は、同じ種類のモノマー又は異なる種類のモノマーであっても、モノマーを重合することによって調製される重合体化合物を意味する。従って、ポリマーという総称的用語は、ホモポリマーの用語(これは通常、1種のみのモノマーから調製されるポリマーを示すために用いられる)、及び、下記で定義されるようなインターポリマーの用語を包含する。
【0015】
「インターポリマー」、「コポリマー」及び同様な用語は、少なくとも異なる2種のモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。これらの総称的用語には、コポリマー(これは通常、異なる2種のモノマーから調製されるポリマーを示すために用いられる)、及び、異なる3種以上のモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」には、様々なインターポリマーのすべての形態(例えば、ランダム、ブロックなど)が含まれる。
【0016】
「バルクポリマー」及び同様な用語は、反応槽における形成された時のポリマー、すなわち、個々のポリマー分子の集団を意味する。バルクポリマーの個々の分子はすべてが、すべての点において、例えば、長さ、モノマー配列、官能性などにおいて同じであるとは限らない。
【0017】
「ポリオレフィン」及び同様な用語は、1つ又はそれ以上の単純なオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなど)に由来するポリマーを意味する。オレフィンモノマーは置換され得るか、又は、非置換であり得る。置換されるならば、置換基は広範囲に変化し得る。本発明の目的のために、置換されたオレフィンモノマーには、ビニルトリメトキシシラン、ビニルアセテート、C2〜6アルキルアクリレート、共役ジエン及び非共役ジエン、ポリエン、ビニルシロキサン、一酸化炭素、並びに、アセチレン系化合物が含まれる。ポリオレフィンが、不飽和を含有することになるならば、好ましくは、コモノマーの少なくとも1つが、少なくとも1つの非共役ジエン(例えば、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエンなど)、又は、式CH=CH−[Si(CH−O]−Si(CH−CH=CH(式中、nは少なくとも1である)のシロキサンである。多くのポリオレフィンが熱可塑性であり、また、本発明の目的のために、ゴム相を含むことができる。ポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン及びそれらの様々なインターポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
「高圧ポリオレフィン」及び同様な用語は、高圧条件下において、例えば、少なくとも70MPa(10,000psi)の圧力で製造されているポリオレフィンを意味する。代表的な高圧ポリオレフィンが、米国特許第6,407,191号及び同第6,569,962号に記載される高圧プロセスによって作製される高圧ポリオレフィンである。
【0019】
「疎水性ポリエーテルポリオール」及び同様な用語は、このようなポリエーテルポリオールは、100%の湿度での平衡状態にあるとき、周囲条件下で10wt%以下の水を吸収することを意味する。例として、UCON PE−305及びUCON PE−320はともに、ポリアルキレンオキシドポリオールであり、しかし、前者は疎水性であり、一方、後者は親水性である。
【0020】
表現「式によって特徴づけられる」は、限定であることが意図されず、「含む(comprising)」が一般に使用されるのと同じ様式で使用される。用語「独立して選択される」は、R基、例えば、R及びRが同一であり得るか、又は、異なり得ることを示すために使用される(例えば、R及びRがヒドロカルビルである場合があり、又は、Rがヒドロカルビルである場合があり、Rが不活性置換のヒドロカルビル基である場合がある)。単数形の使用は複数形の使用を包含し、逆に、複数形の使用は単数形の使用を包含する。指定されたR基は一般に、その名称を有するR基に対応するとして当分野で認識される構造を有する。これらの定義は、当業者には公知である定義を捕捉および例示するために意図され、当業者には公知である定義を排除するためには意図されない。
【0021】
「ヒドロカルビル」は、一価のヒドロカルビル基、典型的には、1個〜30個の炭素原子を含有する一価のヒドロカルビル基、好ましくは、1個〜24個の炭素原子を含有する一価のヒドロカルビル基、最も好ましくは、1個〜12個の炭素原子を含有する一価のヒドロカルビル基を意味し、これには、分岐型又は非分岐型の飽和又は不飽和の化学種、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアリール基などが含まれる。
【0022】
「不活性置換されたヒドロカルビル」及び同様な用語は、得られるカップリングされたポリマーの所望の反応又は所望の特性を不都合に妨害しない1つ又はそれ以上の置換可能な原子又は基(例えば、芳香族置換基)により置換されるヒドロカルビルを意味する。
【0023】
「エンドキャップ基(end-capping radical又はend-capping group)」及び同様な用語は、本発明のシラン官能性非含有ポリオレフィンの硬化プロセス又は架橋プロセスの期間中に存在する他の試薬又は生成物との反応性がない基(radical又はgroup)を意味し、これには、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル、好ましくはC1〜8アルキル)、エステル基及びウレタン基が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
「アルキル」は、直鎖の、分岐型又は非分岐型の飽和炭化水素基を意味する。好適なアルキル基には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(又は2−メチルプロピル)、ヘキシル、オクチルなどが含まれる。本発明の特定の実施形態において、アルキルは1個〜200個の間の炭素原子を有し、通常の場合には1個〜50個の間の炭素原子を有し、より典型的には1個〜20個の間の炭素原子を有し、一層より典型的には1個〜12個の間の炭素原子を有する。
【0025】
「アリール」は、1つだけの芳香族環であり得る芳香族置換基、或いは、縮合して一緒になり、又は、共有結合により連結され、又は、共通の基(例えば、メチレン成分又はエチレン成分)に連結される複数の芳香族環であり得る芳香族置換基を意味する。そのような芳香族環には、とりわけ、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びビフェニルが含まれ得る。特定の実施形態において、アリールは1個〜200個の間の炭素原子を有するか、又は、1個〜50個の間での炭素原子を有するか、又は、1個〜20個の間の炭素原子を有する。
【0026】
「高圧低密度ポリエチレン」、「HPLDPE」及び同様な用語は、少なくとも70MPa(10,000psi)の圧力下でのフリーラジカル重合によって調製される、長鎖分岐(LCB)を含有するエチレンホモポリマー又はエチレンコポリマーを意味する。コポリマーならば、コモノマーは、エチレンモノマーとの重合のために利用可能なエチレン性の基を有する任意の分子が可能であり、しかし、コモノマーは、典型的には、少なくとも1つのC3〜20アルファ−オレフィン(α−オレフィン)であり、より典型的には、少なくとも1つのC3〜12アルファ−オレフィン(α−オレフィン)である。好ましいα−オレフィンには、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが含まれる。
【0027】
「長鎖分岐」、「LCB」及び同様な用語は、例えば、HPLDPEポリマーの関連では、分岐鎖がポリマー骨格から伸び、その分岐鎖が2個以上の炭素原子を含むことを意味する。HPLDPEがコポリマーであるならば、LCBは、エチレンと共重合する最長コモノマーの総長さよりも小さい、1個の炭素、3個以上の炭素を含む。例えば、エチレン/1−オクテンのHPLDPEポリマーでは、LCBは、長さが少なくとも7個の炭素原子である。実際問題として、LCBは、ポリマー骨格へのコモノマーの取り込みから生じる側鎖よりも長い。HPLDPEのポリマー骨格は、カップリングされたエチレンユニットを含む。
【0028】
「ブレンド配合物」、「ポリマーブレンド配合物」及び同様な用語は、2つ以上のポリマーのブレンド配合物を意味する。そのようなブレンド配合物は混和性である場合があるか、又は、混和性でない場合がある。そのようなブレンド配合物は相分離する場合があるか、又は、相分離しない場合がある。そのようなブレンド配合物は、当分野では公知である透過電子顕微鏡観察、光散乱、x線散乱及び他の何らかの方法から明らかにされるように、1つ又はそれ以上のドメイン形態を含有する場合があるか、又は、そのようなドメイン形態を含有しない場合がある。
【0029】
「組成物」及び同様な用語は、2つ以上の成分の混合物又はブレンド配合物を意味する。ケーブル外装又は他の製造品が製造される材料のミックス混合物又はブレンド配合物の関連では、組成物はミックス混合物の全成分を含み、例えば、シラン官能性非含有ポリオレフィン、潤滑剤、フィラー及び何らかの他の添加剤(例えば、硬化触媒、酸化防止剤、難燃剤など)を含む。
【0030】
「触媒量」は、2つの成分の反応を、検出可能なレベルで、好ましくは、商業的に受け入れられ得るレベルで促進させるために必要な量を意味する。
【0031】
「重量平均分子量」(Mw)及び「数平均分子量」(Mn)はポリマー分野では周知であり、例えば、国際公開第2004/031250A1号に記載されるようなゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0032】
潤滑剤
【0033】
本発明の実施において使用される潤滑剤は、バルクポリマーの分子の少なくとも50パーセント(好ましくは少なくとも75パーセント、より好ましくは少なくとも99パーセント)が最大でも1つのヒドロキシル官能性を含む疎水性のポリエーテルポリオール、すなわち、1又は0のどちらかのヒドロキシル官能性を含む疎水性のポリエーテルポリオールである。ポリエーテルのモノヒドロキシル官能性分子又はヒドロキシル非官能性分子は、そのポリヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシド含有等価体よりも多い炭素含有量を有し、下記の式によって特徴づけられる:
R−[O−R−O−R
式中、Rは、水素、或いは、C1〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基であり、RはC2〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基であり、Rはエンドキャップ基であり、nは2〜1000の整数である。R及びRは直鎖型又は分岐型が可能であり、例えば、[O−R]がエチレンオキシドに由来するならば、Rは−CH−CH−であり、[O−R]がプロピレンオキシドに由来するならば、Rは−CH−CH(CH)−であり、この場合、(CH)は分岐を表す。好ましくは、RはC3〜20ヒドロカルビルである。1つの実施形態において、エンドキャップ基はアルキル基又は不活性置換されたアルキル基である。
【0034】
最大でも1つのヒドロキシル官能性を含有する分子の割合をポリエーテルポリオールのバルクポリマーにおいて測定又は決定するための様々な手法が当業者には公知であり、これらは、都合に合わせて異なり得る。好都合な1つの手法が、ヒドロキシル官能性が適切なマーカー(例えば、フェニルイソシアネート)により標識されるゲル浸透クロマトグラフィーである。1又は0のヒドロキシル官能性を含む分子の割合を、バルクポリマーの総重量に基づく重量パーセントによって表すことができる。
【0035】
様々なポリエーテルポリオールを、開始剤へのエポキシド(環状エーテル)の触媒的付加によって製造することができる。環状エーテルには、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、及び、これらのオキシドの2つ以上の様々な混合物が含まれるが、これらに限定されない。これらのオキシドは、開始剤として示される活性水素含有化合物と反応する。そのような活性水素含有化合物には、水、グリコール、ポリオール及びアミンが含まれるが、これらに限定されない。従って、様々な構造、鎖長及び分子量を有する広範囲の様々な組成物が可能である。適正なオキシド又はオキシド混合物、開始剤、並びに、反応条件及び触媒を選択することによって、低分子量のポリグリコールから高分子量の樹脂にまで及ぶ一連のポリエーテルポリオールを合成することが可能である。
【0036】
様々なポリエーテルポリオールを、工業的には、アルキレンオキシドを、塩基触媒(これには、水酸化カリウム(KOH)が含まれるが、これに限定されない)により多官能性の開始剤化合物(これには、アルコール、酸又はアミンが含まれるが、これらに限定されない)に重付加することによって調製することができる(例えば、Gum, Riese & Ulrich (ed.): "Reaction Polymers"、Hanser Verlag、Munich、1992、pp.75-96を参照のこと)。重付加完了後、塩基性触媒が、何らかの好適な方法(これには、中和、蒸留及びろ過が含まれるが、これらに限定されない)を使用してポリエーテルポリオールから除かれる。その上、鎖長が増大するにつれ、塩基触媒によって調製されるポリエーテルポリオールは、末端が二重結合で終わるモノ官能性ポリエーテルの数が増大する。
【0037】
モノヒドロキシルポリエーテルポリオール、すなわち、バルクポリマーの50パーセント以上が、最大でも1つのヒドロキシル官能性を含有する分子を含むポリエーテルポリオールを、多当量のエポキシドを低分子量のモノヒドロキシル開始剤(これには、メタノール、エタノール、各種フェノール、アリルアルコール、長鎖アルコール、及び、これらのアルコールの2つ以上の様々な混合物が含まれるが、これらに限定されない)に付加することによって形成することができる。好適なエポキシドには、上記で記載されたエポキシドが含まれる。これらのエポキシドは、周知の技術及び様々な触媒(これには、アルカリ金属、アルカリ金属の水酸化物及びアルコキシド、二重金属シアニド錯体が含まれるが、これらに限定されない)を使用して重合させることができる。好適なモノヒドロキシル開始剤はまた、例えば、ジオール又はトリオールを最初に作製し、その後、残留するヒドロキシル基の1つを除いてすべてを、エーテル基、エステル基又は他の非反応性基に変換することによって作製することができる。
【0038】
本発明における有用なモノヒドロキシルポリエーテルは、Mwが100から3000にまで及び、好ましくは、200から2200にまで及ぶ。他のアルキレンオキシド、又は、アルキレンオキシドのブレンド配合物が有用であり、これらには、2000のMwを有するモノヒドロキシル官能性のブタノール開始型プロピレンオキシドが含まれるが、これに限定されない。ヒドロキシル官能性を有しない、ポリエーテルポリオールのハイパーコンプレッサ潤滑剤には、上記の酸形態、イソシアネート形態及び炭素キャップ化形態が含まれる。様々なアルキレンオキシド、及び、アルキレンオキシドのブレンド配合物を、当分野では周知である様々な方法を使用して調製することができる。
【0039】
ポリオレフィン
【0040】
本発明の実施において使用されるポリオレフィンは、シラン官能性非含有の高圧ポリオレフィン(具体的には、HPLDPE)である。「シラン官能性非含有」は、ポリオレフィンが、シラン基(silane group又はsilane radical)、例えば、(i)エチレン性不飽和のヒドロカルビル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基又はガンマ−(メタ)アクリルオキシアリル基)、及び、(ii)加水分解可能な基(例えば、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルボニルオキシ基又はヒドロカルビルアミノ基など)を含むシランに由来するシラン基などを含有しないこと、或いは、その骨格に組み込まれるか、又は、その骨格にグラフト化されるかのどちらかであっても、ほんのわずかな量を含有するだけであることを意味する。代表的なシラン官能性には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランに由来するシラン官能性がある。そのような官能性は吸湿性をポリオレフィンに与える。このことは、中電圧(3kV〜60kV)又は高電圧(60kV超)の電力ケーブルにおける絶縁外装については望まれない性質である。
【0041】
シラン官能性非含有HPLDPEは、高圧下の反応槽で製造されており、本発明の実施において使用される好ましいポリオレフィンである。高圧低密度ポリエチレンの分子構造は非常に複雑である。その単純な組み立てブロックの配置における順列は本質的には無限である。高圧樹脂が、入り組んだ、長鎖分岐の分子構造様式によって特徴づけられる。これらの長鎖分岐は、樹脂の溶融レオロジーに対する劇的な影響を有する。高圧低密度ポリエチレン樹脂はまた、樹脂の結晶性(密度)を制御する、長さが一般には1個〜8個の炭素原子の様々な短鎖分岐を有する。これらの短鎖分岐の頻度分布は、平均して、ほとんどの鎖が同じ平均数の分岐を有するような頻度分布である。高圧低密度ポリエチレンを特徴づけるこの短鎖枝分かれ分布は狭いと考えられ得る。
【0042】
シラン官能性非含有HPLDPEポリマーのMwは典型的には少なくとも30,000であり、より典型的には少なくとも40,000であり、一層より典型的には少なくとも50,000である。本発明のシラン官能性非含有HPLDPEポリマーの最大Mwは典型的には750,000を超えず、より典型的には、本発明のシラン官能性非含有HPLDPEポリマーの最大Mwは500,000を超えず、一層より好ましくは、本発明のシラン官能性非含有HPLDPEポリマーの最大Mwは400,000を超えない。これらのポリマーの分子量分布又は多分散性又はMw/Mnは典型的には3よりも大きく、より典型的には3〜6の間であり、好ましくは3〜5の間である。
【0043】
本発明において使用されるHPLDPEポリマーのメルトインデックス(MI)は典型的には少なくとも0.03であり、より典型的には少なくとも0.05であり、一層より典型的には少なくとも0.1である。本発明のHPLDPEポリマーの最大MIは典型的には50を超えず、より典型的には、本発明のHPLDPEポリマーの最大MIは30を超えず、一層より典型的には、本発明のHPLDPEポリマーの最大MIは20を超えない。MIは、ASTM D1238(条件E)(190C/2.16kg)によって測定される。
【0044】
これらのポリマーの密度は典型的には0.900〜0.950の間であり、より典型的には0.905〜0.945の間であり、好ましくは0.910〜0.940の間である。密度は米国材料試験協会(ASTM)法のASTM D792−00(方法B)に従って求められる。
【0045】
本発明の実施において使用される高圧重合プロセスは当分野では周知である。例えば、米国特許第6,407,191号及び同第6,569,962号を参照のこと。ほとんどの市販されている低密度ポリエチレンは、40,000ポンド/平方インチ(psi)又はそれ以上までの圧力において肉厚のオートクレーブ又は管状反応槽で重合される。温度は典型的には70℃〜320℃の間であり、好ましくは100℃〜320℃の間であり、より好ましくは120℃〜320℃の間である。HPLDPEがコポリマーであるならば、使用されるコモノマーの量は、エチレン及びコモノマーの総合重量に基づいて、典型的には0.5重量パーセント〜35重量パーセントの間であり、好ましくは2重量パーセント〜30重量パーセントの間であり、より好ましくは5重量パーセント〜25重量パーセントの間である。テロマー及び他のプロセス添加剤が、公知の量及び公知の方法で、所望されるように使用される。
【0046】
別の実施形態において、シラン官能性非含有ポリオレフィンポリマーには、エステル含有量がコポリマーの重量に基づいて少なくとも約5wt%である、エチレン及び不飽和エステルのコポリマーが含まれるが、これに限定されない。エステル含有量は80wt%もの高さであることが多く、これらのレベルにおいて、主モノマーはエステルである。
【0047】
この実施形態に対する1つの変形例において、エステル含有量の範囲が10wt%〜約40wt%である。重量比パーセントはコポリマーの総重量に基づく。不飽和エステルの例には、ビニルエステル、並びに、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが挙げられる。様々なエチレン/不飽和エステルのコポリマーが通常、従来の高圧プロセスによって作製される。これらのコポリマーは密度を約0.900g/cc〜0.990g/ccの範囲に有し得る。さらに別の実施形態において、これらのコポリマーは密度を0.920g/cc〜0.950g/ccの範囲に有する。これらのコポリマーはまた、メルトインデックスを約1g/10分〜約100g/10分の範囲に有し得る。なおさらに別の実施形態において、これらのコポリマーはメルトインデックスを約5g/10分〜約50g/10分の範囲に有し得る。
【0048】
エステルは4個〜約20個の炭素原子を有することができ、好ましくは4個〜約7個の炭素原子を有することができる。ビニルエステルの例には、ビニルアセテート;ビニルブチレート;ビニルピバラート;ビニルネオノナノアート;ビニルネオデカノアート;及びビニル2−エチルヘキサノアートがある。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの例には、メチルアクリレート;エチルアクリレート;t−ブチルアクリレート;n−ブチルアクリレート;イソプロピルアクリレート;ヘキシルアクリレート;デシルアクリレート;ラウリルアクリレート;2−エチルヘキシルアクリレート;ラウリルメタクリレート;ミリスチルメタクリレート;パルミチルメタクリレート;ステアリルメタクリレート;3−メタクリルオキシ−プロピルトリメトキシシラン;3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン;シクロヘキシルメタクリレート;n−ヘキシルメタクリレート;イソデシルメタクリレート;2−メトキシエチルメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;オクチルメタクリレート;2−フェノキシエチルメタクリレート;イソボルニルメタクリレート;イソオクチルメタクリレート;イソオクチルメタクリレート;及びオレイルメタクリレートがある。メチルアクリレート、エチルアクリレート、及び、n−ブチルアクリレート又はt−ブチルアクリレートが好ましい。アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの場合において、アルキル基は1個〜約8個の炭素原子を有することができ、好ましくは、1個〜4個の炭素原子を有する。
【0049】
本発明のシラン官能性非含有高圧ポリオレフィンポリマーにはまた、エチレンエチルアクリレート、エチレン、ブチルアクリレート、エチレンビニルアセテート、ビニルエーテル、エチレンビニルエーテル、及び、メチルビニルエーテルが含まれる。市販されているエチレンビニルアセテートの一例が、The Dow Chemical Companyから入手可能なAMPLIFY(商標)101である。
【0050】
本発明の実施において使用されるシラン官能性非含有高圧ポリオレフィンは単独で使用することができ、或いは、1つ又はそれ以上の他のポリオレフィンとの組合せで使用することができ、例えば、モノマー組成及びモノマー含有量、触媒的調製方法などによって互いに異なる2つ以上のポリオレフィンポリマーのブレンド配合物で使用することができる。ポリオレフィンが2つ以上のポリオレフィンのブレンド配合物であるならば、ポリオレフィンを任意の反応槽内プロセス又は反応槽後プロセスによって混合することができる。
【0051】
ポリマー組成物
【0052】
ケーブル外装又は他の製造品が製造されるポリマー組成物は、シラン官能性非含有ポリオレフィンと、ヒドロキシル官能性が1であるか、又は、ヒドロキシル官能性を何ら有しないポリエーテルポリオールとを含む。ヒドロキシル官能性が1であるか、又は、ヒドロキシル官能性を何ら有しないポリエーテルポリオールのハイパーコンプレッサ潤滑剤が、典型的には、組成物の百万部あたり300部(300ppm)未満を構成し、好ましくは、組成物の100ppm未満を含む。
【0053】
上記で記載されるようなポリマー組成物を伴うケーブル外装(これには、絶縁外皮が含まれるが、これに限定されない)の調製により、電気損失の量が、シラン官能性非含有ポリオレフィンポリマーでは、ポリヒドロキシル官能性を有するポリエーテルポリオール(すなわち、2つ以上のヒドロキシル官能性を有するポリエーテルポリオール)を含むポリマー組成物と比較して低下する。加えて、潤滑剤の極性が、ヒドロキシル官能性が1であるか、又は、ヒドロキシル官能性を何ら有しないポリエーテルポリオールを使用することによって、ポリヒドロキシル官能性を有するポリエーテルポリオールを使用する場合と比較して低下する。
【0054】
ケーブル外装又は他の製造品が作製されるポリマー組成物はフィラー添加又はフィラー非添加であり得る。フィラー添加されるならば、存在するフィラーの量は、シラン改質ポリオレフィンの電気的特性及び/又は機械的特性の低下を引き起こすと考えられる量を超えてはならない。典型的には、存在するフィラーの量は、ポリマーの重量に基づいて、0重量パーセント超〜60重量パーセントの間であり、好ましくは0重量パーセント〜30重量パーセントの間である。代表的なフィラーには、粘土、水酸化マグネシウム、シリカ、炭酸カルシウムが含まれる。
【0055】
他の添加剤を本発明のポリマー組成物の調製において使用することができ、また、本発明のポリマー組成物に存在させることができ、これらには、酸化防止剤、加工助剤、顔料及び潤滑剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
シラン官能性非含有ポリオレフィンポリマーと、潤滑剤とを配合することを、当業者には公知の標準的手段によって達成することができる。配合設備の例には、様々な密閉式回分ミキサーがあり、例えば、Banbury(商標)密閉式ミキサー又はBolling(商標)密閉式ミキサーがある。代替では、連続式の単軸スクリューミキサー又は二軸スクリューミキサーを使用することができ、例えば、Farrel(商標)連続ミキサー、Werner and Pfleiderer(商標)二軸スクリューミキサー、又は、Buss(商標)混練連続押出し機などを使用することができる。利用されるミキサーのタイプ、及び、ミキサーの運転条件は、組成物の特性(例えば、粘度、体積抵抗率及び押出しされた表面平坦度など)に影響を及ぼす。
【0057】
製造品
【0058】
本発明のポリマー組成物は、公知の量で、また、公知の方法によって、(例えば、米国特許第5,246,783号及び同第4,144,202号に記載される設備及び方法を用いて)外装としてケーブルに適用することができる。典型的には、ポリマー組成物が、ケーブル被覆用のダイを備える反応槽−押出し機で調製され、その後、組成物の成分が配合された後で、ケーブルがダイから引き抜かれるとき、組成物がケーブルを覆って押出しされる。典型的には、ポリオレフィンは、外装層が製造されるときに、及び/又は、外装層を製造した後で架橋される。本発明の1つの好ましい実施形態において、ポリオレフィンポリマーが長鎖又は他の種類の枝分かれを含有し、所定のメルトインデックス(1g/10分〜7g/10分のI)を有する場合、ケーブルに被覆された絶縁外装は周囲温度において1日〜10日で硬化する。
【0059】
本発明のポリマー組成物から、特に、高い圧力及び/又は高い湿度の条件のもとで調製することができる他の製造品には、ファイバー、リボン、シート、テープ、チューブ、パイプ、目詰め材、シール、ガスケット、フォーム、履き物及びベローズが含まれる。これらの物品は、公知の設備及び技術を使用して製造することができる。
【0060】
下記の実施例により、本発明がさらに例示される。別途述べられない限り、すべての部及び百分率が重量比である。
【0061】
具体的実施形態
実施例1
【0062】
ハイパーコンプレッサ及びUCON(商標)PE−320潤滑剤を使用して調製されるポリエチレンの電気的特性を、ハイパーコンプレッサ及びUCON(商標)PE−305潤滑剤を使用して調製されるポリエチレンの電気的特性と比較した。UCON(商標)PE−320及びUCON(商標)PE−305はともに、ポリアルキレングリコールに基づくストックポリマーから作製される合成潤滑剤であり、これらはともに、The Dow Chemical Companyから入手可能である。UCON(商標)PE−320潤滑剤の分子の50パーセント未満が1又は0のヒドロキシル官能性を有する。すなわち、分子の少なくとも50パーゼントが2つ以上のヒドロキシル官能性を含む。UCON(商標)PE−305の分子の少なくとも50%が最大でも1つのヒドロキシル官能性を有する。サンプルは300ppm未満の潤滑剤を含有した。
【0063】
調製されたポリエチレンの平坦な小板を高応力での電気的特性について試験した。ポリエチレンの小板を、1.3wt%〜1.7wt%の間のジクミルペルオキシド、並びに、フェニルホスフィト、ヒンダードアミン光安定剤及びジステアリルチオジプロピオナートを含む0.37wt%以下の酸化防止剤混合物と混合した後で圧縮し、成形した。
【0064】
小板調製のために、スチームプレス機を120Cに予熱した。ペレットを、2枚のMylarシートの間で、低圧(単プレスでは6.89MPa(1,000psig)、又は、二重プレスについては17.2MPa(2,500psig))のもとで2分間、そして、高圧(単プレスでは17.2MPa(2,500psig)、又は、二重プレスについては25トン)のもとで3分間、プレスした。小板を、高圧下で10分間、周囲温度に冷却した。
【0065】
ポリマーの理論及び実地における誘電損失が、McCrumらによる"Anelastic and Dielectric Effect in Polymer Solids"(Whiley Publisher)に詳述される。誘電損失を、適切な高電圧ブリッジ(例えば、Soken DAC−PSC−UAなど)を用いて測定した。ブリッジを、適切な参照コンデンサー及び高電圧電源とともにDAC−OBB−7のような試験セルに接続した。試験ポリマーのフィルムを試験セルに入れ、その後、試験セルを、高い電圧(典型的には1kV〜10kV)でのフラッシュオーバーを防止するための誘電性オイルで満たした。試験セルを、制御された温度のオーブンに入れ、浴との熱的平衡に至るようにした。電圧を加え、サンプルのタンジェントデルタ(電気損失)をブリッジから読み取った。
【0066】
本発明のポリエチレン、すなわち、UCON(商標)PE−320とともに製造されたDXM−496(2.3のメルトインデックス、0.92g/ccの低密度ポリエチレン)についてのタンジェントデルタを、UCON(商標)PE−305とともに製造されたDXM−496についてのタンジェントデルタと比較した。図1に示されるように、UCON(商標)PE−320とともに調製されたポリエチレンについてのタンジェントデルタは、UCON(商標)PE−305とともに調製されたポリエチレンについてのタンジェントデルタよりもはるかに低かった。PE−305の散逸率は、調べられた応力レベル(kV/mm)において鉱油と類似しており、UCON(商標)PR−320よりはるかに小さかった。
【0067】
UCON(商標)PE−305潤滑剤から調製されるポリエチレンは、UCON(商標)PE−320潤滑剤とともに調製される同じポリエチレンと比較して、低下した高応力誘電損失を示した。
【0068】
本発明が前記の明細書によって相当に詳しく記載されているが、この詳細は例示目的のためであり、下記の添付されている請求項に対する限定として解釈してはならない。すべての米国特許、特許査定された米国特許出願及び米国特許出願公開公報が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シラン官能性非含有高圧ポリオレフィンと、(ii)分子の少なくとも50パーセントが最大でも1つのヒドロキシル官能性を含む疎水性ポリエーテルポリオールとを含む組成物。
【請求項2】
前記シラン官能性非含有高圧ポリオレフィンが、HPLDPE、エチレンビニルアクリレート、エチレンブチルアクリレート及びエチレンエチルアセテートからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルポリオールが、下記の式:
R−[O−R−O−R
(式中、Rは、水素、或いは、C1〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基であり、RはC2〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基であり、Rはエンドキャップ基であり、nは2〜1000の整数である)
を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エンドキャップ基がアルキル基又は不活性置換されたアルキル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
がC3〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
Rが水素である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオールが組成物の300ppm未満を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
架橋されたシラン官能性非含有高圧ポリオレフィンと、分子の少なくとも50パーセントが最大でも1つのヒドロキシル官能性を含む疎水性ポリエーテルポリオールとを含む押出し品又は成形品。
【請求項9】
前記シラン官能性非含有高圧ポリオレフィンが、HPLDPE、エチレンビニルアクリレート、エチレンブチルアクリレート及びエチレンエチルアセテートからなる群より選択される、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記ポリエーテルポリオールが、下記の式:
R−[O−R−O−R
(式中、Rは、水素、或いは、C1〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基であり、RはC2〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基であり、Rはエンドキャップ基であり、nは2〜1000の整数である)
を有する、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記エンドキャップ基がアルキル基又は不活性置換されたアルキル基である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
がC3〜20のヒドロカルビル基又は不活性置換されたヒドロカルビル基である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
Rが水素である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記ポリエーテルポリオールが組成物の300ppm未満を構成する、請求項8に記載の物品。
【請求項15】
ケーブル外装の形態である、請求項8に記載の物品。
【請求項16】
電力ケーブルの絶縁層の形態である、請求項8に記載の物品。
【請求項17】
中電圧電力ケーブル又は高電圧電力ケーブルの絶縁層の形態である、請求項8に記載の物品。
【請求項18】
フィラーを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項19】
フィラーを含まない、請求項8に記載の物品。
【請求項20】
前記ポリエーテルポリオールの重量平均分子量が100g/mol〜3,000g/molの間である、請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−533741(P2010−533741A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516219(P2010−516219)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/069493
【国際公開番号】WO2009/012092
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】