説明

シラン架橋接着剤または封止コンパウンド、これらの製造方法および使用

本発明は、(a)一般式(I):


[式中、Rは、1価〜4価の炭化水素基であり、R1は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基であり、R2は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基であり、Aは、カルボキシル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ウレタンもしくはスルホネート結合または酸素原子であり、xは1〜8であり、nは1〜4である]で示される少なくとも1つのポリマー;および(b)カップリング剤、乾燥剤および/または反応性希釈剤;を含有するシラン架橋接着剤またはシーラントに関する。カップリング剤、乾燥剤および/または反応性希釈剤は、一般式(II):


[式中、R3は、ヘテロ原子を介してメチレン基に結合した有機基であり、R4は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはエトキシ基である]で示されるエトキシ基含有α-シランである。さらに本発明は、該接着剤またはシーラントの製造方法、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(a)以下の一般式(I)で示される少なくとも1つのポリマー:
【化1】

[式中、Rは、1価〜4価の炭化水素基であり、
1は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基であり、
2は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基であり、
Aは、カルボキシル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ウレタンもしくはスルホネートリンカーまたは酸素原子であり、
xは1〜8であり、
nは1〜4である];および
(b)接着プロモーター、乾燥剤および/または反応性希釈剤;
を含有するシラン架橋接着剤またはシーラントに関する。
【背景技術】
【0002】
シラン架橋接着剤およびシーラントは、アルコキシシラン末端のポリマーをバインダーとして含有する。反応性アルコキシシリル基を有するポリマー系は、以前から知られている。大気中湿気の存在下に、これらのアルコキシシラン末端ポリマーは、室温であっても互いに縮合することができ、この過程でアルコキシ基が脱離する。アルコキシシラン基の量およびその構造に依存して、主な生成物は、長鎖ポリマー(熱可塑性樹脂)、比較的広い網目の三次元ネットワーク(エラストマー)または高架橋した系(熱硬化性樹脂)である。
これらのポリマーは、一般に、末端にアルコキシシラン基を持つ有機骨格を有する。この有機骨格は、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルなどの骨格であってよい。
【0003】
独国特許出願公開DE19727029A1は、アルコキシシラン末端ポリウレタン、硬化触媒、および所望により、通常の添加剤を含有する一成分反応系組成物を開示している。
【0004】
国際特許出願公開WO99/48942A1は、アルコキシシラン末端ポリウレタンおよび対応するポリウレタン含有の調製物を開示している。この調製物は、アルコキシシリル化したポリウレタンと共に、溶剤、触媒、可塑剤、反応性希釈剤、充填剤などを含有することができる。
【0005】
国際特許出願公開WO96/34030A1に記載されるように、有機構成成分と共に、ポリマー骨格はオルガノシロキサンを含むこともできる。
【0006】
アルコキシシラン末端基を含み、先行技術に従って実際に使用されるポリマーは、一般に、メトキシシラン末端基を含んでいる。これらのバインダーは、NCO末端ポリウレタンの置換物として使用されることが多く、イソシアネートの不存在のゆえに、使用者にとっては明らかな毒物学的利点を有する。しかし、欠点は、硬化時の少量のメタノールの脱離である。
【0007】
現時点で典型的なシラン末端ポリマーは、一般に、ジメトキシメチルシリルまたはトリメトキシシリル末端基を含んでいる。メトキシ基をエトキシ基と交換すると、接着剤の硬化速度がもはや許容できない程度にまで、ポリマーの反応性が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、冒頭に記載した種類のシラン架橋接着剤またはシーラントであって、それを用いて、一方において比較的少ないメタノールが硬化時に放出され、他方において許容しうる硬化速度が達成されるシラン架橋接着剤またはシーラントを特定することである。さらに、成分の選択によって硬化速度を制御することが可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、上記目的は、メトキシシラン末端ポリマーと特定のエトキシシラン末端添加剤との組合せによって達成しうることがわかった。
即ち、本発明は、冒頭に記載した種類の接着剤またはシーラントであって、接着プロモーター、乾燥剤および/または反応性希釈剤が、以下の一般式(II):
【化2】

[式中、R3は、ヘテロ原子を介してメチレン基に結合した有機基であり、
4は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはエトキシ基である]
で示されるエトキシ官能性α-シランであることを特徴とする接着剤またはシーラントを提供するものである。
本発明の有利な態様は、従属請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一般式(II)のR3基は、有利には、メタクリロイルオキシ基またはカルバメート基、アミノ基またはアルコキシ基である。ポリマー骨格Rは、1価〜4価、好ましくは2価または3価の炭化水素基である(該基は、ヘテロ原子および/またはオルガノシロキサン基を含むことができる)。ポリマー骨格の例は、アルキド樹脂、油修飾したアルキド樹脂、不飽和ポリエステル、天然油、例えば、亜麻仁油、桐油、大豆油、さらに、エポキシド、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマーおよびターポリマー、アクリレート、例えば、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、これらの塩など、フェノール樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリスルフィドゴム、ニトロセルロース、酪酸ビニル、ビニルポリマー、例えば、塩化ビニルおよび/または酢酸ビニルを含むポリマー、エチルセルロース、酢酸セルロースおよび酪酸セルロース、レーヨン、セラック、ワックス、エチレンコポリマー、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-アクリレートコポリマー、例えば、有機ゴム、シリコーン樹脂などである。さらなる例には、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリテトラヒドロフランが含まれる。上記したポリマー骨格の中で、特に好ましいのは、ポリエーテル、ポリエステル、およびポリウレタンである。
【0011】
接着プロモーター、乾燥剤および/または反応性希釈剤として好ましいα-シランは、α-アミノシラン、α-メタクリロイルシラン、α-カルバメートシラン、およびα-アルコキシシランからなる群から選択される。適する例は、N-シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、N-(トリエトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメートおよびN-(メチルジエトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメートである。
【0012】
ポリマーおよびα-シランの他に、接着剤およびシーラントは、さらなる成分として、充填剤を含有するのが有利である。適する充填剤の例は、白亜または微粉砕石灰、沈降および/またはヒュームドシリカ、ゼオライト、ベントナイト、粉砕無機物、および当業者が精通している他の無機充填剤である。さらに、有機充填剤、特に繊維織物などを使用することもできる。ある種の用途には、接着剤またはシーラントにチキソトロピーを与える充填剤が好ましく、その例は膨潤性プラスチック、例えばPVCである。
【0013】
ポリマーおよびα-シランおよび充填剤の他に、接着剤およびシーラントは、さらなる通常の添加剤、例えば、可塑剤、溶剤、UV安定剤、酸化防止剤、触媒、乾燥剤、反応性希釈剤、および接着プロモーターを含有するのが有利である。
【0014】
本発明の接着剤またはシーラントは、5〜90重量部、好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは15〜50重量部のポリマー(a)、および0.1〜10重量部のα-シランを含有するのが有利である。
【0015】
また本発明は、シラン架橋接着剤またはシーラントの製造方法であって、ポリマー(a)、α-シラン(b)、および所望により充填剤を互いに混合することを特徴とする方法に関する。この場合、有利には5〜90重量部、好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは15〜50重量部のポリマー(a)を、0.1〜10重量部のα-シランと混合する。
【0016】
さらに本発明は、木材、プラスチック、金属、鏡、ガラス、セラミック、無機基材、皮革、繊維製品、紙、板およびゴムを結合するための、本発明の接着剤の使用に関する。それぞれの場合に、これら材料をそれ自体に、または任意に互いに結合することができる。
さらに本発明は、反応性の架橋後感圧接着剤としての、本発明の接着剤の使用に関する。
【0017】
また本発明は、シーラントとしての本発明のシーラントの使用に関する。また、本発明の組成物は、表面被覆材料として、水蒸気バリヤーとして、栓コンパウンド、穴充填コンパウンドまたはクラック充填コンパウンドとして、ならびに、成形品の製造のために、有利に使用することもできる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を挙げて、本発明を説明する。
ポリマー1(γ-トリエトキシシリル末端ポリプロピレングリコール)
450g(24mモル)のポリプロピレングリコール18000(OHN=6.1)を、1000mlの三口フラスコ中、減圧下に80℃で乾燥した。窒素雰囲気下、0.1gのジブチルスズラウレートを80℃で加え、次いで14g(54mモル)のイソシアナトプロピルトリエトキシシラン(NCO%=16.1)を加えた。80℃で1時間の撹拌後に、得られたポリマーを冷却し、9.3gのビニルトリエトキシシランを加えた。この生成物を、ガラス容器中および窒素雰囲気中、防湿気貯蔵下に置いた。
【0019】
ポリマー2(γ-トリメトキシシリル末端ポリプロピレングリコール)
450g(24mモル)のポリプロピレングリコール18000(OHN=6.1)を、1000mlの三口フラスコ中、減圧下に80℃で乾燥した。窒素雰囲気下、0.1gのジブチルスズラウレートを80℃で加え、次いで11.6g(54mモル)のイソシアナトプロピルトリメトキシシラン(NCO%=19.5)を加えた。80℃で1時間の撹拌後に、得られたポリマーを冷却し、9.3gのα-メタクリロイルトリエトキシシランを加えた。この生成物を、ガラス容器中および窒素雰囲気中、防湿気貯蔵下に置いた。
【0020】
ポリマー3(α-ジメトキシメチルシリル末端ポリプロピレングリコール)
450g(24mモル)のポリプロピレングリコール18000(OHN=6.1)を、1000mlの三口フラスコ中、減圧下に80℃で乾燥した。窒素雰囲気下、0.1gのジブチルスズラウレートを80℃で加え、次いで9.1g(54mモル)のイソシアナトメチルジメトキシメチルシラン(NCO%=25.0)を加えた。80℃で1時間の撹拌後に、得られたポリマーを冷却し、9.3gのメチルカルバメートメチルトリエトキシシランを加えた。この生成物を、ガラス容器中および窒素雰囲気中、防湿気貯蔵下に置いた。
【0021】
ポリマー4
ポリマー4として使用したポリマーは、Kanekaからのジメトキシメチルシリル末端ポリマーであるKaneka MS Polymer S 303 Hであった。
【0022】
ポリマー1〜4からの接着剤の配合
上記ポリマーを用いて接着剤配合物を製造した。これは、ポリマーに可塑剤(Palatinol N:BASF)を導入し、充填剤(Omyabond 302、Omya)を導入することによって行った。次いで、残りの添加剤を、記載した順序で導入した。
短縮形
AMMO=アミノプロピルトリメトキシシラン
AMEO=アミノプロピルトリエトキシシラン
VTMO:ビニルトリメトキシシラン
VTEO:ビニルトリエトキシシラン
DBTL:ジブチルスズジラウレート
DBTAc:ジブチルスズアセトネート
【0023】
【表1】

【0024】
説明/まとめ
γ-エトキシシリル末端ポリプロピレングリコールおよびエトキシシランに基づく接着剤配合物は、遅すぎ(比較例1)、大量のスズ触媒を用いたときであっても遅すぎる(比較例2)。
【0025】
γ-メトキシシリル末端ポリプロピレングリコールおよびメトキシシランに基づく接着剤配合物(=最新技術)は、良好な特性を有するが、>2%のメタノールを放出する(比較例3)。
【0026】
γ-メトキシシリル末端ポリプロピレングリコールおよびエトキシシランに基づく接着剤配合物は、良好な特性を有し、<0.3%のメタノールを放出する(実施例1および3)。
【0027】
α-メトキシメチルシリル末端ポリプロピレングリコールおよびエトキシシランに基づく接着剤配合物は、良好な特性を有し、実質的にスズ触媒を含まず、<0.2%のメタノールを放出する(実施例2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下の一般式(I)で示される少なくとも1つのポリマー:
【化1】

[式中、
Rは、1価〜4価の炭化水素基であり、
1は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基であり、
2は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基であり、
Aは、カルボキシル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ウレタンもしくはスルホネートリンカーまたは酸素原子であり、
xは1〜8であり、
nは1〜4である];および
(b)接着プロモーター、乾燥剤および/または反応性希釈剤;
を含有するシラン架橋接着剤またはシーラントであって、該接着プロモーター、乾燥剤および/または反応性希釈剤が、以下の一般式(II):
【化2】

[式中、
3は、ヘテロ原子を介してメチレン基に結合した有機基であり、
4は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはエトキシ基である]
で示されるエトキシ官能性α-シランであることを特徴とする接着剤またはシーラント。
【請求項2】
成分(a)として、以下の一般式(I):
【化3】

[式中、
Rは、2価のポリマー骨格であり、
AおよびA'は、同一または異なって、カルボキシル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ウレタンもしくはスルホネートリンカーまたは酸素原子である]
で示される少なくとも1つのポリマーを含有する請求項1に記載の接着剤またはシーラント。
【請求項3】
3が、メタクリロイルオキシもしくはカルバメート基、アミノ基またはアルコキシ基であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤またはシーラント。
【請求項4】
ポリマー骨格が、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤またはシーラント。
【請求項5】
α-シランが、α-アミノシラン、α-メタクリロイルシラン、α-カルバメートシラン、およびα-アルコキシシランからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤またはシーラント。
【請求項6】
ポリマーおよびα-シランに加えて、さらなる成分として、充填剤、可塑剤、溶剤、UV安定剤、酸化防止剤、触媒、乾燥剤、反応性希釈剤、および接着プロモーターを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤またはシーラント。
【請求項7】
5〜90重量部のポリマー(a)および0.1〜10重量部のα-シランを含有することを特徴とする請求項6に記載の接着剤またはシーラント。
【請求項8】
(a)以下の一般式(I)で示される少なくとも1つのポリマー:
【化4】

[式中、
Rは、1価〜4価の炭化水素基であり、
1は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基であり、
2は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基であり、
Aは、カルボキシル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ウレタンもしくはスルホネートリンカーまたは酸素原子であり、
xは1〜8であり、
nは1〜4である];および
(b)以下の一般式(II)で示されるα-シラン:
【化5】

[式中、
3は、ヘテロ原子を介してメチレン基に結合した有機基であり、
4は、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはエトキシ基である];
を互いに混合することを特徴とするシラン架橋接着剤またはシーラントの製造方法。
【請求項9】
成分(a)が、以下の一般式(I):
【化6】

[式中、
Rは、2価のポリマー骨格であり、
AおよびA'は、同一または異なって、カルボキシル、カルバメート、カーボネート、ウレイド、ウレタンもしくはスルホネートリンカーまたは酸素原子である]
で示されるポリマーであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
5〜90重量部のポリマー(a)を、0.1〜10重量部のα-シランと混合することを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
木材、プラスチック、金属、鏡、ガラス、セラミック、無機基材、皮革、繊維製品、紙、板およびゴムを結合するための請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤の使用であって、これら材料のそれぞれをそれ自体に、または任意に互いに結合することができる該接着剤の使用。
【請求項12】
シーラントとしての、請求項1〜7のいずれかに記載のシーラントの使用。

【公表番号】特表2008−546879(P2008−546879A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517337(P2008−517337)
【出願日】平成18年2月18日(2006.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001486
【国際公開番号】WO2006/136211
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】