説明

シリカゾルおよびその製造方法

【課題】本発明は、表面に疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、特に、ナトリウム、炭素などの含有割合が低レベルにある球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾル、および、その様なシリカゾルの製造方法を提供する。
【解決手段】表面に複数の疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、該球状シリカ微粒子のBET法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定される該シリカ微粒子の平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.9〜5.0の範囲にあり、該平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲にあり、ナトリウム含有割合が100質量ppm以下、炭素含有割合が0.1〜5質量%の範囲にあることを特徴とするシリカゾル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の表面粗度、真球度または粒子径の変動係数などで特定される表面に疣状突起を有する球状のシリカ微粒子が溶媒に分散したシリカゾルに関するものであり、特にナトリウムおよび炭素含有量が低く、研磨材、塗料添加剤、樹脂添加剤、インク受容層の成分、化粧料の成分などへの適用が可能なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の集積回路付基板の製造においては、シリコンウェーハ上に銅などの金属で回路を形成する際に凹凸あるいは段差が生じるので、これを研磨して表面の段差がなくなるように回路の金属部分を優先的に除去することが行われている。また、シリコンウェーハ上にアルミ配線を形成し、この上に絶縁膜としてシリカ等の酸化膜を設けると配線による凹凸が生じるので、この酸化膜を研磨して平坦化することが行われている。このような基板の研磨においては、研磨後の表面は段差や凹凸がなく平坦で、さらにミクロな傷等もなく平滑であることが求められており、また研磨速度が速いことも必要である。
【0003】
さらに、半導体材料は電気・電子製品の小型化や高性能化に伴い高集積化が進展しているが、例えばトランジスタ分離層にNaやK等の不純物等が残存した場合、性能が発揮されなかったり、不具合の原因となったりすることがある。特に研磨した半導体基板や酸化膜表面にNaが付着すると、Naは拡散性が高く、酸化膜中の欠陥などに捕獲され、半導体基板に回路を形成しても絶縁不良を起こしたり、回路が短絡したりすることがあり、また誘電率が低下することがあった。このため使用条件によって、或いは使用が長期にわたった場合に前記不具合を生じることがあるので、NaやKなどの不純物を殆ど含まない研磨用粒子が求められている。
【0004】
研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナなどが用いられている。
CMPで使用される研磨材は、通常、シリカ、アルミナ等の金属酸化物からなる平均粒子径が200nm程度の球状の研磨用粒子と、配線・回路用金属の研磨速度を早めるための酸化剤、有機酸等の添加剤及び純水などの溶媒から構成されているが、被研磨材の表面には下地の絶縁膜に形成した配線用の溝パターンに起因した段差(凹凸)が存在するので、主に凸部を研磨除去しながら共面まで研磨し、平坦な研磨面とすることが求められている。しかしながら、従来の球状の研磨用粒子では共面より上の部分を研磨した際に、凹部の下部にあった配線溝内の回路用金属が共面以下まで研磨される問題(ディッシング(過研磨)と呼ばれている。)があった。このようなディッシングが起きると配線の厚みが減少して配線抵抗が増加し、また、この上に形成される絶縁膜の平坦性が低下するなどの問題が生じるので、ディッシングを抑制することが求められている。
【0005】
なお、この様な研磨剤の用途としては、アルミニウムディスク(アルミニウムまたはその基材上のメッキ層)や半導体多層配線基板のアルミニウム配線、光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、ガラス質材料の鏡面加工などへの適用されている。
【0006】
非球状粒子を含むシリカゾルの製造方法としては、特開平1−317115号公報(特許文献1)に、画像解析法による測定粒子径(D1)と窒素ガス吸着法による測定粒子径
(D2 )の比D1/D2が5以上であり、D1は40〜500ミリミクロン、そして電子顕微鏡観察による5〜40ミリミクロンの範囲内の一様な太さで一平面内のみの伸長を有する細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体中に分散されてなるシリカゾルの製
造方法として、(a)所定の活性珪酸のコロイド水溶液に水溶性のカルシウム塩またはマグネシウム塩などを含有する水溶液を、所定量添加し、混合する工程、(b) 更に、ア
ルカリ金属酸化物、水溶性有機塩基又はそれらの水溶性珪酸塩をSiO2/M2O (但し、Mは上記アルカリ金属原子又は有機塩基の分子を表わす。)モル比として20〜200となるように加えて混合する工程、(c)前工程によって得られた混合物を60〜150℃で0.5〜40時間加熱する工程からなる製造方法が開示されている。
【0007】
また、別のタイプの粒子として、シリカ系微粒子の表面に突起状構造を有する例として、特開平3−257010号公報(特許文献2)には、シリカ粒子表面に電子顕微鏡で観察して、0.2〜5μmのサイズの連続的な凹凸状の突起を有し、平均粒子径が5〜100μm、BET法比表面積が20m2/g以下、且つ、細孔容積が、0.1mL/g以下であるシリカ粒子に関する記載がある。
特開2002−338232号公報(特許文献3)には、コロイダルシリカのシリカ粒子の電子線による透過投影像より求めた幾何学的平均粒子径(X1)と、シリカ粒子の表面積より算出した相当粒子径(X2)との比Y(X1/X2)が1.3から2.5の範囲であり、かつその幾何学的平均粒子径が20〜200nmの範囲であることを特徴とする二次凝集コロイダルシリカに関する発明が開示されている。より詳しくは、同二次凝集コロイダルシリカの製造方法として、単分散のコロイダルシリカにシリカ粒子の凝集剤を添加して球状の凝集二次粒子を作り、更に活性珪酸を添加して凝集粒子を一体化してなる製造方法が開示されている。
【0008】
特開2002−38049号公報(特許文献4)には、母体粒子全面に、実質上球状および/または半球状の突起物を有するシリカ系微粒子であって、該突起物が化学結合により母体粒子に結着していることを特徴とするシリカ系微粒子および母体粒子全面に、実質上球状および/または半球状の突起物を有するシリカ系微粒子であって、該突起物が化学結合により母体粒子に結着してなるシリカ系微粒子について記載がある。さらに、(A)特定のアルコキシシラン化合物を加水分解、縮合させてポリオルガノシロキサン粒子を生成させる工程、(B)該ポリオルガノシロキサン粒子を、表面吸着剤により表面処理する工程、および(C)上記(B)工程で表面処理されたポリオルガノシロキサン粒子全面に、該アルコキシシラン化合物を用いて突起を形成させる工程、を含むシリカ系微粒子の製造方法についても記載がある。
【0009】
また、特開2004−35293号公報(特許文献5)には、母体粒子全面に、実質上球状および/または半球状の突起物を有するシリカ系粒子であって、該突起物が化学結合により母体粒子に結着しており、かつ母体粒子と突起物における10%圧縮時の圧縮弾性率が、それぞれ異なることを特徴とするシリカ系粒子が開示されている。
【0010】
特開平3−257010号公報(特許文献2)および特開2002−338232号公報(特許文献3)の特許請求の範囲に記載されたシリカゾルについては、珪酸液を原料とするものであり、例えば、前記研磨用途に適用した場合、ナトリウムなどの不純物が電子用途に悪影響を及ぼすおそれがあった。特開2002−38049号公報(特許文献4)および特開2004−35293号公報(特許文献5)については、3官能性または2官能性のシラン化合物を原料とするものであり、シリカ微粒子が、[R-SiO3/2]単位(Rは有機基)を主構成単位とするものである。
【特許文献1】特開平1−317115号公報
【特許文献2】特開平3−257010号公報
【特許文献3】特開2002−338232号公報
【特許文献4】特開2002−38049号公報
【特許文献5】特開2004−35293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、表面に疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、特に、ナトリウム、炭素などの含有割合が低レベルにある球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを提供することにある。また、本発明は、その様なシリカゾルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]本発明のシリカゾルは、表面に複数の疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、該球状シリカ微粒子のBET法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定される該シリカ微粒子の平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.9〜5.0の範囲にあり、該平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲にあり、ナトリウム含有割合が100質量ppm以下、炭素含有割合が0.1〜5質量%の範囲にあることを特徴とする。
[2]また、前記[1]の球状シリカ微粒子の粒子径の変動係数が3.0〜20%の範囲にあることが好ましい。
[3]前記[1]または[2]の球状シリカ微粒子が[SiO4/2]単位を含有するもの
であることが好ましい。
[4]本発明の前記[1]、[2]または[3]のシリカゾルの製造方法は、水溶性有機溶媒および水を含む混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、そこに、1)下記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒溶液とを同時に、連続的または断続的に添加し、添加終了後、更に30〜150℃の温度範囲にて熟成することにより、該4官能性シラン化合物を加水分解縮合させてなるシリカゾルの製造方法において、該4官能性シラン化合物に対する水のモル比を2以上、4未満の範囲として、加水分解縮合を行うことを特徴とする。
一般式(1):(RO)4Si (Rは炭素数2〜4のアルキル基)
[5][4]に記載のシリカゾルの製造方法は、前記[4]の4官能性シラン化合物が、テトラエトキシシランであることが好ましい。
[6]さらに、前記[1]、[2]または[3]のシリカゾルからなる研磨材を提供することができる。
[7]また、前記[6]に記載の研磨材を含有してなる研磨用組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表面に疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルは、その構造に起因して、研磨材として高研磨レートを示すことが可能なものであり、特にナトリウム含有量および炭素含有量が低水準にあるため、電子用途または半導体用途の研磨材として好適なものである。また、本発明に係るシリカゾルは、その分散質である球状シリカ微粒子の有する特異な構造から、通常の球状シリカ微粒子とは異なる充填性、吸油性、電気特性、光学特性あるいは物理特性を示すことが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るシリカゾルの分散質である球状シリカ微粒子は、以下に示す、表面粗度、真球度または粒子径の変動係数等で特定される。この球状シリカ微粒子については、表面に多数の疣状突起を有したシリカ微粒子であって、特に4官能性シランの加水分解縮合により合成されたものであり、[SiO4/2]単位を主成分とする緻密な構造を有すること
を特徴とするものである。また、このシリカ微粒子は、原料の純度に起因して、ナトリウムまたは炭素などの不純物の含有量が低水準にあることを特徴としている。これらの特徴は、前記のシリコンウェーハの研磨を始めとする研磨用途において、優れた効果を示すも
のである。
【0015】
本発明に係るシリカゾルについては、特にその分散質である球状シリカ微粒子の性状および組成に特徴を有するものである。以下に、本発明に係るシリカゾルについて述べる。
【0016】
1.シリカゾル
[表面粗度]
本発明に係るシリカゾルの分散質である球状シリカ微粒子は、その表面に複数の疣状突起を有し、凹凸に富むものである。この様な複数の疣状突起を有する表面については表面粗度によりその範囲が規定される。本発明において表面粗度は、BET法により測定された比表面積(単位質量当りの表面積)の値を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積の値を(SA2)としたとき、表面粗度=(SA1)/(SA2)として定義される。
【0017】
画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積(SA2)については、透過型電子顕微鏡により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定し、その平均値を平均粒子径(D2)とした。
また、平均粒子径(D2)の値を次の式(2)に代入して、比表面積(SA2)を求めた。
【0018】
D2=6000/(ρ×SA2) ・・・ (1)
ここで、D2は前記平均粒子径[nm]、ρは試料の密度[g/cm3]であり、ここ
ではシリカの密度2.2を使用した。 この比表面積(SA2)の値は、平均粒子径D2を有する球状で表面が平滑なシリカ微粒子の比表面積に対応するものと言える。
【0019】
他方、BET法は、粒子への気体(通常は窒素ガス)の吸着量から、比表面積を算定する方法であり、実際の表面状態に対応した表面積を反映したものと言える。
ここで比表面積は単位質量当りの表面積を示すから、表面粗度(SA1)/(SA2)の値については、球状粒子の場合、粒子表面に多くの疣状突起を有する程、(SA1)/(SA2)の値は大きくなる。また、粒子表面の疣状突起が少なく、平滑であるほど、(SA1)/(SA2)の値は小さくなり、その値は1に近づく傾向にある。
【0020】
本発明において、前記シリカ微粒子の表面粗度は1.9〜5.0の範囲が好適である。表面粗度が1.9未満の場合、突起の割合が少ないかあるいは、疣状突起自体がシリカ微粒子の粒子径に比べて小さ過ぎ、球状シリカ微粒子に近くなる。表面粗度の値が5.0を超える場合は、合成が容易ではない。表面粗度のより好適な範囲としては、2.0〜4.0の範囲が推奨される。また、更に好適には、2.1〜3.7の範囲が推奨される。
【0021】
[真球度]
前記球状シリカ微粒子は、球状であることが必要であり、棒状、勾玉状、細長い形状、数珠状、卵状など、いわゆる異形粒子が含まれない。本発明において、球状とは、真球度が0.70〜1.00の範囲にある場合を言う。ここで真球度とは、透過型電子顕微鏡により写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、 それぞれ最大径(DL)を測定し、該最大径上で、該最大径を2等分する点(中心点)を求め、該中心点を通過し、該最大径に直交する径の長さ(DS)を測定し、(DL)/(DS)の値を求め、50個の粒子について平均値をとり、これを真球度とした。
【0022】
真球度が0.7未満の場合は、シリカ微粒子が球状とはいえず、前記の異形粒子に該当する場合が生じる。真球度の範囲については、より好適には0.80〜1.00の範囲が
推奨される。また、更に好適には0.90〜1.00の範囲が推奨される。
【0023】
[平均粒子径]
前記球状シリカ微粒子の画像解析法により測定される平均粒子径(D2)については、10〜150nmの範囲が好適である。10nm未満の場合は、必要な表面粗度をもった球状シリカ微粒子を調製することが容易ではない。平均粒子径(D2)が150nm超える場合は、原料の核微粒子の大きさにもよるが、一般に突起が平坦化する傾向が著しくなるため良好な性状の球状シリカ微粒子を得ることが容易ではない。平均粒子径の範囲については、より好適には、20〜100nmの範囲が推奨される。また、より好適には25〜50nmの範囲が推奨される。
【0024】
なお、前記球状シリカ微粒子の比表面積については、格別に限定されるものではないが、通常は10〜1000m2/gの範囲が推奨される。また、好適には100〜600m2/gの範囲が推奨される。
【0025】
[基本構成単位および炭素含有割合]
前記球状シリカ微粒子は、後記した様に4官能性シラン化合物の加水分解縮合により調製されるものであり、基本的に[SiO4/2]単位を含有するものである。 このため前
記球状シリカ微粒子は、加水分解縮合の進行度合にもよるが、例えば、トリエトキシシランおよび/またはジエトキシシランの加水分解縮合により得られる、[RSiO3/2]単
位(Rは有機基)および/または[R2SiO2/2]単位(Rは有機基)から構成されるシリカ微粒子に比べて、炭素含有割合が低くなるため、電子または半導体関係の研磨材用途などへの適用に好適となる。
【0026】
前記球状シリカ微粒子中の炭素含有割合については、0.1〜5質量%の範囲が望ましい。 より好ましくは0.1〜3質量%の範囲が推奨される。また、更に好適には0.1〜1質量%の範囲が推奨される。炭素含有割合が0.1質量%未満の場合については、炭素原子の含有割合が低く望ましいものの、調製することが容易ではない。
【0027】
一方、炭素含有割合が5質量%を越える場合、アルコキシ残基の増大による、粒子強度の低下が、実用的な研磨速度を損なう程度に達する場合があり望ましくない。また、炭素により汚染されるおそれのある用途には適さなくなる。
【0028】
[Na含有割合]
前記球状シリカ微粒子については、ナトリウム(Na)についてもその含有割合が低い水準にあることが望ましい。球状シリカ微粒子中のNa含有割合は球状シリカ微粒子中にNaとして100質量ppm以下、好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは20質量ppm以下であることが望ましい。Na含有割合が100質量ppmを越えると、シリカ粒子を用いて研磨した基板にNaが残存し、このNaが半導体基板に形成された回路の絶縁不良を起こしたり回路が短絡したりすることがあり、絶縁用に設けた膜(絶縁膜)の誘電率が低下し金属配線にインピーダンスが増大し、応答速度の遅れ、消費電力の増大等が起きることがある。また、Naイオンが移動(拡散)し、使用条件や使用が長期にわたった場合に前記不具合を生じることがある。
【0029】
[粒子径の変動係数(CV値)]
本発明に係るシリカゾルの分散質である球状シリカ微粒子の表面状態については、前記表面粗度で定められるものであるが、望ましくは、粒子径の変動係数(CV値)が3.0〜20%の範囲にあるものが推奨される。
【0030】
ここで、粒子径の変動係数(CV値)とは、粒子半径の不均一性の度合を意味する。具
体的には、電子顕微鏡による写真投影図における球状シリカ微粒子の最長径を2等分する位置を該球状シリカ微粒子の中心とし、該中心から最長径の一方の端を角度0度とし、そこから10度づつ0度から180度までの半径を測定し、それらの値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより、粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求める。本出願においては、任意の50個の粒子について、それぞれ粒子径の変動係数を求め、それらの平均値を粒子径の変動係数(CV値)とした。
粒子径の変動係数(CV値)については、好適には3.0〜20%の範囲が好ましい。粒子径の変動係数が3.0%未満の場合は、表面の起伏が少ない球状粒子に近くなる。粒子径の変動係数が20%を超える場合については、表面が極めて起伏に富む状態になるが、本発明に係る製造方法によって調製することは容易ではない。また、その様なシリカ微粒子は、その組成によっては、疣状突起部分の強度が低くなる場合があり、研磨材用途に適さない場合が生じかねない。粒子径の変動係数(CV値)については、好ましくは3.3〜15%の範囲が推奨される。また、更に好ましくは、5.0〜12%の範囲が推奨される。
【0031】
[溶媒]
前記球状シリカ微粒子が分散する分散媒としての溶媒については、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒のいずれであっても使用することができる。具体的には以下の例を挙げることができる。純水、超純水、イオン交換水などの水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などを例示することができる。また、これらの分散媒は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用しても構わない。
【0032】
2.製造方法
本発明に係るシリカゾルの製造方法は、4官能性シラン化合物と水の量を制御しながら、水溶性有機溶媒および水の混合溶媒に、4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液およびアルカリ触媒溶液とを同時に、連続的または断続的に添加し、熟成することを特徴とするものである。
【0033】
特にシリカ微粒子を得るためには、水溶性有機溶媒/水混合溶媒中、30〜150℃の温度範囲にて、4官能性シラン化合物に対し、モル比で2.以上、4.0未満の量の水により加水分解縮合することが必要である。
【0034】
これについては、この条件下においては、4官能性シラン化合物の有する4つのアルコキシ基の反応速度に違いが生じるため、加水分解縮合初期に非球状の歪んだ形状のシリカ微粒子(一次粒子)が形成され、その様な歪んだ一次粒子が二次凝集する結果、表面に疣状突起を有するシリカ微粒子が生成するものと推察される。
前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比が2.0未満の場合は、4官能性シラン化
合物の有する4個のアルコキシ基が完全に加水分解するモル量より少なくなるため、反応が充分に進行せず、反応中に凝集または沈殿が生じ易くなる。また、4官能性シラン化合物に対する水のモル比が4.0以上の場合は、水の量が過剰であるためアルコキシ基の反応速度に、充分な差異が生じないため結果的に球状で表面の起伏に乏しいシリカ微粒子が生成し易くなる。前記4官能性シラン化合物対する水のモル比の範囲については、好適には2.0〜3.8の範囲が推奨される。更に好適には2.0〜3.6の範囲が推奨される。
【0035】
[4官能性シラン化合物]
本発明に係る製造方法で使用される4官能性シラン化合物とは、次の一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を意味する。
一般式(1):(RO)4Si (Rは炭素数2〜4のアルキル基)
具体的には、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。炭素数5以上のアルコキシシランは、アルコキシ基の立体障害により、実用的な加水分解速度が得られない場合がある。また、テトラメトキシシランの場合は、加水分解反応の反応速度がテトラエトキシシランの場合より速く、実用的にシリカを合成するには望ましくない。実用上は、テトラエトキシシランの使用が推奨される。
【0036】
なお、本発明に係る製造方法において、通常、4官能性シラン化合物は、水溶性有機溶媒に溶解させて使用することが望ましい。水溶性有機溶媒に溶解させて使用するとにより、雰囲気中の水分の影響を低減することができる。具体的には、4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液中の4官能性シラン化合物の濃度が、5〜90質量%の範囲のものが好適に使用される。5質量%未満では、反応液中のシリカ濃度が低くなり、実用的とはいえない。90質量%を超える場合は、反応条件にもよるが、反応液中のシリカ濃度が高くなりすぎて、シリカの凝集や沈殿が生じ易くなる。該4官能性シラン化合物の濃度については、好適には10〜60質量%の範囲が推奨される。また、更に好適には20〜40質量%の範囲が推奨される。
【0037】
なお、4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液として、好適にはテトラエトキシシランのエタノール溶液の使用が推奨される。
【0038】
[水溶性有機溶媒]
本発明に係る製造方法で使用される水溶性有機溶媒としては、前記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物を溶解し、水溶性を示す有機溶媒が含まれる。この様な水溶性有機溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールなどを挙げることができる。水溶性有機溶媒の選択については、使用する4官能性シラン化合物との相溶性に優れるものが好適に使用される。
【0039】
[水溶性有機溶媒と水の混合溶媒]
水溶性有機溶媒と水の混合溶媒に含まれる水分量については、アルカリ触媒溶液が水分を含有しない場合は、前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比の範囲内であることが必要となる。また、アルカリ触媒溶液が水分を含有する場合にあっては、前記混合溶媒に含まれる水分量とアルカリ触媒溶液に含まれる水分量の合計量が、前記4官能性シラン化合物に対する水のモル比の範囲内であることが必要となる。前記混合溶媒についてはこの前提を満たしたものが使用されるが、望ましくは水溶性有機溶媒の濃度が30〜95質量%の範囲(水分が5〜70質量%の範囲)のものが使用される。水溶性有機溶媒の割合が30質量%未満の場合(水分が70質量%以上)は、4官能性シラン化合物の量や加水分解速度によるが、添加された4官能性シラン化合物と混合溶媒が混ざり難くなり、4官能性シラン化合物がゲル化する場合がある。また、水溶性有機溶媒の割合が95質量%を超える場合(水分が5質量%未満)は、加水分解に使用する水分が過少となる場合がある
。水溶性有機溶媒と水の混合溶媒における水の割合については、好適には40〜80質量%の範囲が推奨される。また、更に好適には50〜70質量%の範囲が推奨される。
【0040】
[アルカリ触媒]
本発明に係る製造方法で使用されるアルカリ触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤など、塩基性を示す化合物が用いられる。なお、触媒としてアルカリ金属水素化物を用いることもできるが、前記アルコキシシランのアルコキシ基の加水分解を促進し、このため得られる粒子中に残存アルコキシ基(炭素)が減少しより硬いものとなるため、研磨速度は高いもののスクラッチが発生する場合があり、さらにナトリウム水素化物を使用した場合は、Naの含有量が高くなる問題がある。
【0041】
アルカリ触媒の使用量については、所望の加水分解速度が得られる限り限定されるものではないが、通常は、4官能性シラン化合物1モル当たり、0. 005〜1モルの範囲
で添加されることが好ましい。 更に好ましくは0. 01〜0. 8モルの範囲となるように添加されていることが推奨される。なお、アルカリ触媒は、通常は水および/または水溶性有機溶媒で希釈して、アルカリ触媒溶液として使用することが好ましい。なお、この水溶性有機触媒に含まれる水分についても、加水分解に寄与するものであるので、当然に加水分解に使用される水分量に算入されるものである。
【0042】
通常は、アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒濃度については、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満では、実用的な触媒機能が得られない場合がある。また、20質量%以上の場合、触媒機能が平衡に達する場合が多く、過剰に使用することになる場合がある。
【0043】
アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒濃度については、より好適には、1〜15質量%の範囲が推奨される。更に好適には、2〜12質量%の範囲が推奨される。
アルカリ触媒については、例えば、アンモニア水溶液、アンモニウム水溶液とエタノールの混合物などが好適に使用できる。
【0044】
[製造工程]
本発明に係るシリカゾルの好適な製造方法について以下に述べるが、本発明に係るシリカゾルの製造方法は、これに限定されるものではない。前記水溶性有機溶媒と水の混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、1)4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒の水溶液とを同時に、連続的または断続的に30分から20時間かけて添加する。前記温度範囲については、30℃未満では、加水分解縮合が充分に進行しないため望ましくない。混合溶媒の沸点を超える場合は、オートクレーブなどの耐圧容器を用いて行う事ができるが、150℃を超える場合は、非常に高い圧力がかかるため工業的でないので、望ましくない。
【0045】
この温度範囲については好適には40〜100℃の範囲が推奨される。また、更に好適には、50〜80℃の範囲が推奨される。添加にかける前記の所要時間範囲については、好適には1〜15時間が推奨される。また、更に好適には、2〜10時間が推奨される。
【0046】
前記1)4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒の水溶液については、両者を同時に、連続的にまたは断続的に30分から20時間かけて、前記水溶性有機溶媒と水の混合溶媒に添加することが好ましい。両者の全量を一時に一括添加した場合、加水分解縮合が急激に進行するためゲル状物の発生を招き、シリカ微粒子を得ることができない。
【0047】
本発明に係る製造方法では、前記の通り、4官能性シラン化合物の反応速度の特性を利用してシリカゾルを調製するものである。例えばテトラメトキシシランを使用した場合は、その加水分解反応は、テトラエトキシシランの場合に比べて速いため、テトラエトキシシランの様にシリカゾルを形成することは容易ではない。
【0048】
加水分解縮合に必要な成分の添加が終了した後、所望により30〜150℃にて、0.5〜10時間の範囲で熟成することが好ましい。
例えば、未反応の4官能性シラン化合物が残存していた場合、熟成することにより、未反応の4官能性シラン化合物の反応を促進し、完結させることができる。なお、未反応の4官能性シラン化合物の残存量によっては、経時でシリカの凝集や沈殿が生じる場合がある。熟成時の前記温度範囲については好適には40〜100℃の範囲が推奨される。また、更に好適には、50〜80℃の範囲が推奨される。前記熟成時間範囲については、好適には1〜9時間が推奨される。また、更に好適には、2〜8時間が推奨される。
【0049】
[研磨材]
本発明に係る研磨材は、前記した研磨用シリカ粒子が分散媒に分散したものである。分散媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類など水溶性の有機溶媒を用いることができる。研磨材中の研磨用シリカ粒子の濃度は1〜50質量%、さらには3〜30質量%の範囲にあることが好ましい。濃度が1質量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。シリカ粒子の濃度が50質量%を越えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
【0050】
[研磨用組成物]
本発明の研磨材には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素などおよびこれらの混合物を添加して用いることができる。このような過酸化水素等を添加して用いると被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。また、必要に応じて硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物などを添加して用いることができる。この場合、複数種の材質の被研磨材を研磨する際に、特定成分の被研磨材の研磨速度を速めたり、遅くしたりすることによって、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。その他の添加剤として、例えば、金属被研磨材表面に不動態層あるいは溶解抑制層を形成して基材の浸食を防止するためにイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾールなどを用いることができる。また、上記不動態層を攪乱するためにクエン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、フタル酸、クエン酸等の有機酸あるいはこれらの有機酸塩などの錯体形成材を用いることもできる。研磨材スラリーの分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤を適宜選択して添加することができる。さらに、上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基を添加して研磨材スラリーのpHを調節することができる。
【0051】
[好適な態様1]
表面に複数の疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、該球状シリカ微粒子が、以下の1)〜5)の条件を満たすものであることを特徴とするシリカゾル。
【0052】
1)BET法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定される該シリカ微粒子の平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表
面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.9〜5.0の範囲
2)該球状シリカ微粒子の平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲
3)該球状シリカ微粒子のナトリウム含有割合が100質量ppm以下
4)該球状シリカ微粒子の炭素含有割合が0.1〜5質量%の範囲
5)該球状シリカ微粒子の粒子径の変動係数が3〜20%の範囲
[好適な態様2] 表面に複数の疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、該球状シリカ微粒子が、以下の1)〜5)の条件を満たすものであることを特徴とするシリカゾル。
1)BET法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定される該シリカ微粒子の平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.9〜5.0の範囲
2)該球状シリカ微粒子の平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲
3)該球状シリカ微粒子のナトリウム含有割合が100質量ppm以下
4)該球状シリカ微粒子の炭素含有割合が0.1〜5質量%の範囲
5)該球状シリカ微粒子の粒子径の変動係数が3〜20%の範囲
6)該球状シリカ微粒子が[SiO4/2]単位を含有するものである
【0053】
[好適な態様3]
エタノールおよび水を含む混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、そこに、1)テトラエトキシシランのエタノール溶液および2)アルカリ触媒の水溶液とを同時に、連続的または断続的に30分から20時間かけて添加し、添加終了後、更に30〜150℃の温度範囲にて熟成することにより、テトラエトキシシランを加水分解縮合させてなるシリカゾルの製造方法において、テトラエトキシシランに対する水のモル比を、2以上、4未満の範囲にして、加水分解縮合を行うことを特徴とするシリカゾルの製造方法。
【実施例】
【0054】
[実施例および比較例で用いた測定方法等]
[1]動的光散乱法による平均粒子径の測定方法
試料シリカゾルを0.58%アンモニア水にて希釈して、シリカ濃度1質量調整し、下記粒径測定装置を用いて平均粒子径を測定した。
【0055】
〔粒径測定装置〕
レーザーパーティクルアナライザー(製造元:大塚電子社、型番「レーザー粒径解析システム、LP−510モデルPAR−III」、測定原理 動的光散乱法 測定角度90°、受光素子 光電子倍増管2インチ、測定範囲3nm〜5μm、光源 He-Neレーザー 5mW 632.8nm、温度調整範囲5〜90℃、
温度調整方式ペルチェ素子(冷却)、セラミックヒーター(加熱)、セル 10mm角 プラスチックセル、
測定対象:コロイド粒子
【0056】
[2]BET法(窒素吸着法)による比表面積測定方法
シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加
え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
【0057】
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試
料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカゾルの比表面積を算出した。
【0058】
[3]画像解析による平均粒子径(D2)の測定方法および比表面積(SA2)の算定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定し、その平均値を平均粒子径(D2)とした。また、平均粒子径(D2)の値を次の式(2)に代入して、比表面積(SA2)を求めた。
【0059】
D2=6000/(ρ×SA2) ・・・ (1)
ここで、D2は平均粒子径[nm]、ρは試料の密度[g/cm3]であり、ここでは
シリカの密度2.2を使用した。
【0060】
[4]真球度の測定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、それぞれ最大径(DL)を測定し、該最大径上で、該最大径を2等分する点(中心点)を求め、該中心点を通過し、該最大径に直交する径の長さ(DS)を測定し、(DL)/(DS)の値を求め、50個の粒子について平均値をとり、これを真球度とした。
【0061】
[5]粒子径の変動係数の算定
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍ないし50万倍で写真撮影して得られる写真投影図における球状シリカ微粒子の最長径を2等分する位置を該球状シリカ微粒子の中心とし、該中心から最長径の一方の端を角度0度とし、そこから10度づつ0度から180度までの半径を測定する。そして、その値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求めた。この測定および算定を任意の50個の粒子について行い、粒子径の変動係数の平均値をとり、その値を粒子径の変動係数(CV値)とした。なお、粒子径の変動係数(CV値)については、粒子径の変動係数(CV値)[%]=(粒子径の標準偏差/粒子径の平均値)×100として表示した。
【0062】
[6]Naの定量方法
次の手順によりナトリウムの含有量を測定した。
1)試料シリカゾル約10gを白金皿に採取し、0.1mgまで秤量する。
2)硝酸5mlと弗化水素酸20mlを加えて、サンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。3)液量が少なくなったら、更に弗化水素酸20mlを加えてサンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。
4)室温まで冷却後、硝酸2mlと水を約50ml加えて、サンドバス上で加熱溶解する。5)室温まで冷却後、フラスコ(100ml)に入れ、水で100mlに希釈して試料溶液とする。
6)原子吸光分光光度計(株式会社日立製作所製、Z-5300、測定モード:原子吸光、測定波長:190〜900nm、シリカ試料の場合におけるNaの検出波長は589.0nm)にて、試料溶液中に存在する各金属の含有量を測定した。この原子吸光分光光度計
は、フレームにより試料を原子蒸気化し、その原子蒸気層に適当な波長の光を照射し、その際の原子によって吸収された光の強さを測定し、これにより試料中の元素濃度を定量するものである。
7)試料シリカゾル10gに50%硫酸水溶液2mlを加え、白金皿上にて蒸発乾固し、得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量する。次に、秤量した固形物を微量の50%硫酸水溶液に溶かし、更にフッ化水素酸20mlを加えてから、白金皿
上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量する。これらの重量差よりシリカ含有量を求めた。
8)上記6)と7)の結果からSiO2分に対するNaの割合を算出した。
【0063】
[7]熱酸化膜に対する研磨特性の評価方法
研磨スラリーの調製 各実施例および各比較例で得たシリカ濃度12.6質量%のシリカゾルに、KOHを添加して、pHを10に調整した。
【0064】
被研磨基板 被研磨基板として、シリコンウェーハを1050℃でウエット熱酸化させた熱酸化膜基板を使用した。
研磨試験 上記被研磨基板を、研磨装置(ナノファクター(株)製:NF330)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「IC-1000」)を使用し、基板荷重0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用研磨スラリーを20g/分の速度で5分間供給して研磨を行った。研磨前後の膜厚を短波長エリプソメーターで測定し、研磨速度を計算した。
【0065】
[8]C(炭素)の含有量測定方法
C(炭素)の含有量については、EMIA−320V(HORIBA社製)にて測定した。
【0066】
以下の実施例および比較例で調製したシリカゾルおよびその分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記した。また、以下の実施例および比較例における、4官能性シラン化合物(テトラエトキシシラン)、水、水溶性有機溶媒(エタノール)、アルカリ触媒(アンモニア溶液)などの使用量および調製条件を表2‐1および表2‐2に記した。
【0067】
[実施例1]
超純水237.3gにエタノール355.8gとを混合した混合溶媒を65℃に加熱して、これにテトラエトキシシラン(多摩化学製エチルシリケート28、SiO2=28.8
質量%)1188gとエタノール2255gを混合したテトラエトキシラン溶液、および
超純水100gと29.1%アンモニア水溶液40.5gを混合したアンモニア希釈液とを同時に3時間かけて添加した。添加終了後、さらに65℃で3時間熟成した。そして、限外濾過膜で固形分濃度15質量%まで濃縮し、未反応のテトラエトキシシランを除去した。さらにロータリーエバポレーターでエタノール、アンモニアをほぼ除去し、固形分濃度12.6質量%のシリカゾルを得た。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0068】
[実施例2]
実施例1の混合溶媒に代えて、超純水177gにエタノール416.1gを添加してなる混合溶媒を使用し、さらに、実施例1のアンモニア希釈液に代えて、エタノール160.3gと29.1%アンモニア水溶液40.5gを混合したアンモニア希釈液を使用し、それ以外は、実施例1と同様にシリカゾルの調製を行った。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0069】
[実施例3]
実施例1のアンモニア希釈液に代えて、エタノール100gと29.1%アンモニア水溶液40.5gを混合したアンモニア希釈液を使用し、テトラエトキシラン溶液とアンモニア希釈液の添加時間を6時間とし、それ以外は実施例1と同様にシリカゾルの調製を行った。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。また、このシリカゾルの電子顕微鏡写真(倍率30万倍)を図1に記す。
【0070】
[実施例4]
実施例1の混合溶媒に代えて、超純水177gにエタノール416.1gを添加してなる混合溶媒を使用し、実施例1のアンモニア希釈液に代えて、エタノール100gと29.1%アンモニア水溶液40.5gを混合したアンモニア希釈液を使用し、テトラエトキシラン溶液とアンモニア希釈液の添加時間を10時間とし、それ以外は実施例1と同様にシリカゾルの調製を行った。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0071】
[実施例5]
実施例1のアンモニア希釈液に代えて、エタノール100gと29.1%アンモニア水溶液40.5gを混合したアンモニア希釈液を使用し、テトラエトキシラン溶液とアンモニア希釈液の添加時間を10時間とし、それ以外は実施例1と同様にシリカゾルの調製を行った。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0072】
[比較例1]
テトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製:エチルシリケート28、SiO2 =28質量%)532. 5gを、水−メタノール混合溶媒[水とメタノールの重量比=2:8
]2450gに溶解させてなるテトラエトキシシラン溶液2982. 5gと、濃度0. 25質量%のアンモニア水溶液596. 4gとを、60℃に保持した水−メタノール混
合溶媒(純水139. 1gとメタノール169. 9gからなる)に、同時に20時間かけて添加した。なお、アンモニア/テトラエトキシシラン=0. 034(モル比)だっ
た。添加終了後、さらに65℃で、3時間熟成した。
【0073】
その後、限外濾過膜で未反応のテトラエトキシシラン、メタノール、アンモニアをほぼ完全に除去し、両イオン交換樹脂で精製し、ついで限外濾過膜で濃縮し、固形分濃度20質量%のシリカゾルを得た。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0074】
[比較例2]
触媒化成工業株式会社製カタロイド(商標)SI−50(BET法により測定された比表面積から換算された平均粒子径:25nm)をシリカ濃度20質量%に調整し、炭素含有量、Na含有量を測定し、結果を表1に示した。
【0075】
[比較例3]
超純水599gにエタノール899gとを混合した混合溶媒を65℃に加熱して、これにテトラエトキシシラン(多摩化学製エチルシリケート28、SiO2=28.8質量%)10.00kgとエタノール18.99kgを混合したテトラエトキシラン溶液、および超純水10.41kgと29.1%アンモニア水溶液169.5gを混合したアンモニア希釈液とを同時に10時間かけて添加した。 添加終了後、さらに65℃で3時間熟成した。そして、限外濾過膜で固形分濃度15質量%まで濃縮し未反応のテトラエトキシシランを除去した。さらに、ロータリーエバポレーターでエタノール、アンモニアをほぼ除去し固形分濃度12.6質量%のシリカゾルを得た。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0076】
[比較例4]
超純水851.2gにメタノール567.7gを添加した混合溶媒を65℃に加熱して
、これにテトラメトキシシラン(メチルシリケートSiO2=39.6質量%)8,297.6gとメタノール21,589.4gを混合したテトラメトキシラン溶液及び、超純水11,242.1gと29.1質量%アンモニア水溶液786.2gとを同時に18時間か
けて同時に添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。その後限外濾過膜で固形分濃度15質量%まで濃縮し未反応のテトラメトキシシランを除去した。さらにロータリーエバポレーターでメタノール、アンモニアをほぼ除去し固形分濃度12.6質量%のシリカ微粒子分散液を得た。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0077】
[比較例5]
超純水2,632gに0.28質量%アンモニア水溶液57.8gと陰イオン性界面活性剤(花王株式会社製ペレックスSS-L)の3.0gを混合したものをゆっくり添加し、30分攪拌した。さらにメチルトリメトキシラン(信越化学株式会社製KBM-13)の
300gを室温にて、13.5時間かけて添加した。添加終了後、室温で、さらに3時間
熟成した。得られたゾルを限外濾過膜で固形分濃度12質量%まで濃縮し、未反応のメチルトリメトキシシランを除去した。このシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子に関する測定結果を表1に記す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のシリカゾルは、シリコンウェーハ、化合物半導体ウェーハ、磁気ディスク基板、アルミニウム基板などの電子材料の研磨加工時に用いられる研磨材または研磨用組成物として好適である。また、化粧料の原料、インク受容層の成分、樹脂組成物用の充填材、被膜形成用組成物の充填材などに好適に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例3で調製したシリカゾルの電子顕微鏡写真(倍率:300、000倍で撮影したもので、100nmを10等分した目盛を写真上に示した)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の疣状突起を有する球状シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルであって、
該球状シリカ微粒子のBET法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定される該シリカ微粒子の平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.9〜5.0の範囲にあり、該平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲にあり、ナトリウム含有割合が100質量ppm以下、炭素含有割合が0.1〜5質量%の範囲にあることを特徴とするシリカゾル。
【請求項2】
前記球状シリカ微粒子の粒子径の変動係数が3.0〜20%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のシリカゾル。
【請求項3】
前記球状シリカ微粒子が[SiO4/2]単位を含有するものであることを特徴とする請
求項1または請求項2に記載のシリカゾル。
【請求項4】
水溶性有機溶媒および水を含む混合溶媒の温度範囲を30〜150℃に維持し、そこに、1)下記一般式(1)で表される4官能性シラン化合物の水溶性有機溶媒溶液および2)アルカリ触媒溶液とを同時に、連続的または断続的に添加し、添加終了後、更に30〜150℃の温度範囲にて熟成することにより、該4官能性シラン化合物を加水分解縮合させてなるシリカゾルの製造方法において、該4官能性シラン化合物に対する水のモル比を2以上、4未満の範囲として、加水分解縮合を行うことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のシリカゾルの製造方法。
一般式(1):(RO)4Si (Rは炭素数2〜4のアルキル基)
【請求項5】
前記4官能性シラン化合物が、テトラエトキシシランであることを特徴とする請求項4記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項6】
請求項1、請求項2または請求項3記載のシリカゾルからなる研磨材。
【請求項7】
請求項6記載の研磨材を含有してなる研磨用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−161371(P2009−161371A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339796(P2007−339796)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】