説明

シリカ分散液の製造方法及びインクジェット記録材料の製造方法

【課題】本発明の課題は、シリカ分散液を保存した際の経時による粘度上昇が改善された、優れた経時安定性を有するシリカ分散液の製造方法を提供することにある。また経時したシリカ分散液を用いた場合でも優れたインク吸収性を有するインクジェット記録材料の製造方法を提供することにある。
【解決手段】シリカ粒子を水を主体とする分散媒中で、分散剤と次亜リン酸塩の存在下で分散することを特徴とするシリカ分散液の製造方法及びインクジェット記録材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ分散液の製造方法、及びインクジェット記録材料の製造方法に関するものである。詳しくは微粒化しても長期間に亙って経時安定性に優れたシリカ分散液、及びこれを用いたインクジェット記録材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ分散液は、シリコンに代表される半導体ウェハーを研磨する時やIC製造工程中で絶縁層などを研磨する時の研磨剤、メガネレンズなどのプラスチック用のハードコート剤、インクジェット用記録材料やOHP用コート剤、更に各種フィルムのアンチブロッキング剤、ガラス繊維等の接着助剤、エマルジョンやワックス等の安定剤として使用されている。
【0003】
このようなシリカ分散液に用いるシリカとしては、四塩化珪素を原料として酸水素炎中で燃焼させて作る気相法シリカ、珪酸ソーダを中和して作る沈降法シリカやゲル法シリカといった湿式シリカがあり、これらのシリカを使用したシリカ分散液がかかる目的として注目されている。これらのシリカ分散液は、前記シリカを高圧ホモジナイザーやビーズミル等の分散機で分散媒(水や有機溶剤又はそれらの混合物)に分散されて作製される。
【0004】
しかしながら、シリカをこれらの各種分散機で分散することでシリカ分散液は得られるが、機械的な剪断力だけでは、シリカ分散液を保存した際の経時に伴い粘度が上昇し取り扱いが困難となった。特に比表面積の大きなシリカ粒子からなるシリカ分散液は粘度上昇が大きく取り扱いが困難であった。
【0005】
シリカ分散液の粘度上昇の改善についてはいくつかの技術が開示されている。例えば、特開2004−149373号公報にはシリカ及び分散媒を一定量分散機に供給しながら分散する技術が開示されている。また、特開2004−285308号公報(特許文献1)には水溶性多価金属を含有する分散媒中で分散する技術などが開示されている。しかしながらシリカ分散液の粘度上昇についてはこれらの技術では不十分であった。
【0006】
更に、特開2001−105725号公報には水分散液の濾液電気伝導度が50μS/cm未満のシリカを使用する技術が開示されている。また、特開2005−262092号公報(特許文献2)には高分子分散剤と金属塩とで分散する技術などが開示されているが、シリカ分散液の粘度上昇についてはこれらの技術でも十分満足できるものではなかった。
【0007】
また、シリカ分散液はインクジェット記録方式に使用される記録材料の原料としても注目されており、インクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカとポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0008】
例えば、特開昭55−51583号公報、特開昭56−157号公報、特開昭57−107879号公報、特開昭57−107880号公報、特開昭59−230787号公報、特開昭62−160277号公報、特開昭62−184879号公報、特開昭62−183382号公報、及び特開昭64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0009】
また、特公平3−56552号公報、特開平2−188287号公報、特開平8−132728号公報、特開平10−81064号公報、特開平10−119423号公報、特開平10−175365号公報、特開平10−203006号公報、特開平10−217601号公報、特開平11−20300号公報、特開平11−20306号公報、特開平11−34481号公報には、気相法による合成シリカ粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数十nm以下の超微粒子であり、これを用いたインクジェット記録材料は高い光沢と高いインク吸収性が得られるという特徴がある。
【0010】
しかしながら、上記気相法シリカに代表されるように、平均一次粒径の小さい無機微粒子を用いた場合は高い光沢は得られるが、上記した様な経時により増粘したシリカ分散液を用いてインクジェット記録材料用塗布液(以下、塗布液と称す)を作製する際に粘度が高くなる場合がある。一般的に塗布液を塗布する際には塗布故障を招くようなゴミ、チリ等を取り除く目的で濾過を行うが、塗布液の粘度が高い場合には送液ポンプの圧力損失が大きくなり、塗布量の減少を招く場合があり、均一な塗布が困難となることがあった。
【0011】
従来からシリカ微粒子分散液を後工程で更に分散する技術として、例えば、特開2004−195779号公報(特許文献3)には気相法シリカ分散液と湿式シリカ分散液を混合した後分散する技術が開示されている。また、特開2002−79741号公報には気相法シリカ分散液とホウ酸及びホウ砂を混合・混練した後分散する技術が開示されている。しかしながらこれらの技術では均一な塗布が困難となることがあった。
【0012】
また、シリカ分散液は固形分濃度を上げて作製する等の目的で分散剤を必要に応じて添加することが知られている。例えば、特開平11−321079号公報(特許文献4)、特開2000−239536号公報(特許文献5)、特開2001−19421号公報(特許文献6)にはカチオン性ポリマーを含有する分散媒中に無機微粒子を分散する方法が開示されている。更に特開2006−232586号公報(特許文献7)にはシリカ分散液の製造工程中もしくは製造工程後に、該シリカ分散液のpHを上昇させる操作を行い塗布液の安定性を向上させる技術が開示されている。しかし、これらに記載されている方法により得られたシリカ分散液は保存経時により増粘するため均一な塗布が困難であり、また十分なインク吸収性が得られなかった。
【特許文献1】特開2004−285308号公報(第3頁〜第5頁)
【特許文献2】特開2005−262092号公報(第3頁〜第4頁)
【特許文献3】特開2004−195779号公報(第15頁〜第16頁)
【特許文献4】特開平11−321079号公報(第15頁〜第17頁)
【特許文献5】特開2000−239536号公報(第3頁〜第4頁)
【特許文献6】特開2001−19421号公報(第3頁〜第4頁)
【特許文献7】特開2006−232586号公報(第4頁〜第9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、シリカ分散液を保存した際の経時による粘度上昇が改善された、優れた経時安定性を有するシリカ分散液の製造方法を提供することにある。また経時したシリカ分散液を用いた場合でも優れたインク吸収性を有するインクジェット記録材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の前記目的は、下記の方法により達成された。
【0015】
1.シリカ粒子を水を主体とする分散媒中で、分散剤と次亜リン酸塩の存在下で分散することを特徴とするシリカ分散液の製造方法。
2.該次亜リン酸塩の添加量がシリカ粒子100質量部に対して0.005〜0.05質量部である上記に記載のシリカ分散液の製造方法。
3.上記1又は2の何れか1項に記載のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、バインダーとを少なくとも含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥するインクジェット記録材料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリカ分散液を保存した際の経時による粘度上昇が改善された、優れた経時安定性を有するシリカ分散液の製造方法が得られる。また経時したシリカ分散液を用いた場合でも優れたインク吸収性を有するインクジェット記録材料の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明者らはシリカ分散液の粘度上昇に関して鋭意検討を行った結果、シリカ分散液を保存した際の経時による粘度上昇は、以下に記載する効果によって改善されるものと推測する。即ち、分散剤を用いて分散されたシリカ分散液は、シリカ粒子表面に分散剤が吸着することで電気二重層を形成し安定化される。その電気二重層が厚いほどシリカ粒子は安定化される。そして、分散によりシリカ粒子を微粒化しても再凝集を起こさない程厚く安定な電気二重層を形成するためには、多くの分散剤を効率よくシリカ表面に吸着させることが重要であり、その吸着が次亜リン酸塩によって促進されているのではないのかと推測する。シリカ分散液が含有するシリカ粒子の平均二次粒子径が小さい程、分散剤をシリカ粒子表面に吸着させることが困難となるため、上記シリカ分散液を保存した際の経時による粘度上昇はより顕著に表れる。具体的には平均二次粒子径が500nm以下になるまで分散されたシリカ粒子を含有するシリカ分散液において、上記粘度上昇が顕著に表れ、更に平均二次粒子径が200nm以下に分散されることでより顕著に表れる。従って、シリカ分散液に含有するシリカ粒子を平均二次粒子径500nm以下、更には200nm以下に分散する場合において、本発明はより効果を奏する。なお、本発明の平均二次粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定計の体積平均中位径である。かかる測定装置としては、堀場製作所(株)製のLA920により測定される。
【0018】
本発明で用いる次亜リン酸塩の具体例としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸バリウム、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸亜鉛等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる次亜リン酸塩の添加量はシリカ粒子100質量部に対して0.001〜0.1質量部であり、好ましい範囲は0.005〜0.05質量部である。更に好ました範囲は0.01〜0.03である。前記添加量を超えると分散剤の働きを悪くしてしまい、分散直後からシリカ分散液の粘度を高くしてしまう場合がある。逆に前記添加量未満にすると粘度上昇の抑制効果が低い場合がある。また上記次亜リン酸塩は一度に添加しても良いし、複数回に分割して添加しても良い。
【0020】
本発明のシリカ分散液の製造方法はシリカ粒子を水を主体に含有する分散媒中で、分散剤と次亜リン酸塩の存在下で分散する。ここでいう主体とは、全分散媒に対して水の占める割合が50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることを意味する。また本発明のシリカ分散液の分散媒は、本発明の効果を損なわない範囲で少量の有機溶剤(低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)を含んでも良い。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明のシリカ分散液の製造方法は前記分散媒中で、分散剤と次亜リン酸塩の存在下で分散する。ここで存在下とは後述する一次分散及び二次分散が実施される工程において、少なくとも分散過程にあるシリカ分散液が分散剤と次亜リン酸塩を含有した状態で分散されることを意味する。従って本発明に用いられる次亜リン酸塩と分散剤をシリカ分散液に添加する時期としては、シリカ粒子を添加する前の分散媒に予め添加しておいても良く、一次分散又は、二次分散の何れかの分散過程の途中の任意の時期に添加しても良いが、二次分散が終了するまでに添加する必要がある。本発明において次亜リン酸塩と分散剤の添加は、シリカ粒子を添加する前の分散媒に次亜リン酸塩と分散剤を予め添加することが好ましい。これらの時期に添加することで、次亜リン酸塩を効率よく作用させることができる。また次亜リン酸塩と分散剤の添加順序としては次亜リン酸塩が先であっても後であっても良い。
【0022】
後述する様にインクジェット記録材料はシリカ分散液とバインダーとを少なくとも含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥することで得られる。従って本発明のシリカ分散液の製造方法において分散媒が全バインダー又はバインダーの一部を含有していても良いが、本発明で用いられる次亜リン酸塩は、少なくともバインダーを添加する前に添加することが好適である。バインダーを添加した後では、バインダーの持つ保護コロイド作用のために、シリカ粒子表面に吸着している分散剤に作用するまでに時間がかかるため、生産性の観点からあまり好ましいものではない。
【0023】
本発明を更に説明する。本発明に用いられる合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカは、更に製造法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。こうして得られた沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールLP、(株)トクヤマからトクシール、ファインシール、DSL.ジャパン(株)からSIPERNAT、カープレックス、イネオスシリカ社からガシルとして市販されており入手することができる。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さな粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。こうして得られたゲル法シリカとしては、例えば水澤化学工業(株)からミズカシル、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェット、東ソー・シリカ(株)からニップジェル、富士シリシア化学(株)からサイリシアとして市販されており入手することができる。
【0024】
気相法シリカ(ヒュームドシリカ)は、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独又は四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0025】
本発明はこれらのシリカ粒子でも沈降法シリカ、及び気相法シリカに好適である。前記両シリカは、緩やかな凝集構造を有するため、機械的に大きな負荷を必要とせず、平均二次粒子径が200nm以下に分散することが可能である。更に本発明のシリカ分散液の製造方法によって沈降法シリカ又は気相法シリカを含有するシリカ分散液を製造し、そのシリカ分散液を用いてインクジェット記録材料を製造した場合、優れたインク吸収性が得られる。
【0026】
本発明に用いる分散剤としては当業界で公知の分散剤を用いることができ、例えばカチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物、界面活性剤等を挙げることができる。これらの分散剤は単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても良い。特に好ましい分散剤はシリカ表面をカチオン処理するカチオン性ポリマーである。カチオン性ポリマーは、シリカ分散液の経時安定性を向上させるため好適である。
【0027】
本発明の分散剤として好ましく用いられるカチオン性ポリマーは、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基或いはホスホニウム塩基を有するポリマー等が用いられる。中でも水溶性ポリマーが好ましく、特に平均分子量が10万以下のポリマーが好ましい。
【0028】
上記カチオン性ポリマーの中でも、特にポリジアリルアミン誘導体の構成単位を有するカチオンポリマーが好ましく、下記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を構成単位とするカチオンポリマーである。これらの誘導体はジアリルアミン化合物の環化縮合によって得られ、ユニセンスCP101A〜103A(センカ(株))、ジェットフィックス110(里田化工(株))、PAS−H(日東紡績(株))として市販されている。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、R1及びR2は各々、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、又はヒドロキシエチル基等の置換アルキル基を表す。一般式(3)及び(4)において、Yはラジカル重合可能なモノマー(例えば、スルホニル、アクリルアミド及びその誘導体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等)を表す。一般式(1)及び(2)において、nは10〜10000である。一般式(3)及び(4)において、n/m=9/1〜2/8、l=5〜10000である。X-はアニオンを表す。
【0034】
一般式(3)又は(4)で示されるポリジアリルアミンの誘導体の具体的な例としては、特開昭60−83882号公報記載のSO2基を繰り返し単位に含むもの、特開平1−9776号公報に記載されているアクリルアミドとの共重合体等が挙げられる。本発明に用いられるポリジアリルアミン誘導体のカチオン性ポリマーの平均分子量は、2000〜10万程度がより好ましい。
【0035】
上記カチオン性ポリマーの添加量はシリカ粒子100質量部に対して1〜10質量%が好ましい。またカチオン性ポリマーは一度に添加しても良いし、複数回に分割して添加しても良い。
【0036】
本発明の分散剤として用いられる水溶性多価金属化合物は、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム等から選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
【0037】
具体例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、塩化コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム等が挙げられる。
【0038】
また、本発明に係る水溶性多価金属化合物における「水溶性」とは、20℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。
【0039】
前記水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族(18族長周期表4族)金属元素(例えばジルコニウム、チタン)を含む化合物が好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、無機塩として塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等、また更に無機系の含アルミニウムカチオン性ポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0040】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、主成分が下記の一般式(5)、(6)又は(7)で表され、
[Al2(OH)nCl6-nm 一般式(5)
[Al(OH)3nAlCl3 一般式(6)
Aln(OH)mCl(3n-m) 〔0<m<3n〕 一般式(7)
例えば、[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+等の、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0041】
また、これらの市販品として、例えば、多木化学(株)製のポリ塩化アルミニウム(PAC)、水処理剤PAC#1000、タキバイン#1500、グレースジャパン(株)製のサイロジェットA200、(株)理研グリーン製のピュラケムWT、その他メーカー製の同様の目的で提供されている市販品から各種グレードの物を容易に入手することができる。
【0042】
上記の周期表4A族元素を含む化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
【0043】
前記水溶性多価金属塩の添加量はシリカ粒子100質量部に対して1〜10質量%が好ましい。また水溶性多価金属塩は一度に添加しても良いし、複数回に分割して添加しても良い。
【0044】
本発明の分散剤として用いられる界面活性剤は、アニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤を使用することができる。
【0045】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、N−アシルタウリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0047】
これらは単独で、又は2種以上併用して用いることができる。ただし、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤の併用はできない。また、ノニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を少量併用することは差し支えない。
【0048】
前記界面活性剤の添加量はシリカ粒子100質量部に対して0.01〜10質量%が好ましい。また界面活性剤は一度に添加しても良いし、複数回に分割して添加しても良い。
【0049】
次に、本発明のシリカ分散液の製造方法を説明する。通常、シリカ分散液はシリカ粉体を水分散媒中に混合し分散するため一次分散(予備分散)が行われる。この一次分散のための手段としては、インペラーミキサー等攪拌能力がある分散機が用いられるが、中でもノコギリ歯状の攪拌羽根を二軸で用いる一般的にディスパー或いはディゾルバーと呼ばれるタイプの分散機が有利である。
【0050】
一次分散に続いて二次分散(微粒化)が施される。二次分散する手段としては高圧ホモジナイザー、ボールミル及びサンドミル等メディアを充填したメディアミルを始めとして各種の装置が知られている中で、メディアミルを用いることが好ましい。
【0051】
前述のメディアミルとしては、例えばビーズミルを選択することができる。ビーズミルとは内部に攪拌装置を有する容器にビーズを充填し、容器内に液状物を入れて攪拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物に剪断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10.0mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1.0mm、更に好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズが小さすぎるとビーズ1個当たりのエネルギーが小さいために分散効率が悪く、大きすぎるとビーズの衝突回数が減るので分散効率が劣り均一な分散が得られにくい。ビーズにはガラスビーズ、セラミックビーズ、金属ビーズ等があるが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズ又はジルコンビーズが好ましい。容器中のビーズ充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜78容量%である。ビーズ充填率が低すぎると分散効率が低下し、高すぎるとビーズの摩耗が大きくなる他、過度に剪断がかかるために微粒化が破壊され凝集し易くなる。
【0052】
前記ビーズミル処理を連続して処理する場合には通し回数が1回では粗大粒子が残り易いので2回以上処理する方が好ましい。
【0053】
市販のビーズミルとしては、例えば(株)シンマルエンタープライゼス製のダイノミル、浅田鉄工(株)製のナノミル、アイメックス(株)製のウルトラビスコミル、(株)マツボー製のアミュラー型OBミル等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
上述した本発明のシリカ分散液の製造方法によって、シリカの固形分濃度が15質量%以上の高濃度のシリカ分散液が安定して製造できる。特に18質量%以上のシリカ分散液を製造する際に本発明は好適である。
【0055】
また、シリカ分散液中のシリカ濃度をより高濃度にするために、段階的にシリカを添加する方法を採用することもできる。
【0056】
次に、本発明のインクジェット記録材料の製造方法について説明する。本発明のインクジェット記録材料は、上述の本発明の製造方法によって得られたシリカ分散液と、バインダーとを少なくとも含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥してインクジェット記録材料を得る方法である。従って該塗布液は上記シリカ分散液とともにバインダーを含有する。バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることもできるが、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる水溶性バインダーが好ましい。特に好ましい水溶性バインダーとしてはポリビニルアルコールである。
【0057】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分又は完全ケン化したものである。平均重合度は200〜5000のものが好ましい。
【0058】
また前記塗布液はバインダーと共に架橋剤(硬膜剤)を含有することが好ましい。架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号明細書記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号明細書記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号明細書記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号明細書記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号明細書、米国特許第2,983,611号明細書記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号明細書記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号明細書記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機架橋剤等があり、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸又はほう酸塩が好ましい。
【0059】
本発明におけるインクジェット記録材料が有する支持体としては非吸水性支持体が好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙の両面にポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂被覆紙が挙げられる。本発明に用いられる非吸収性支持体の厚みは、50〜300μm程度が好ましい。紙等の吸水性支持体と異なり上記非吸水性支持体はコックリングが生じないため好適である。
【0060】
また上記非吸水性支持体はそれ自身がインク吸収性を有さないため、支持体上に設けられたインク受容層(上記本発明のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、バインダーとを少なくとも含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥して得られた層)に高いインク吸収性を付与することが好ましい。そのため本発明において好ましいインク受容層は、本発明のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液が含有するシリカ粒子100質量部に対して前述のバインダーの使用量を50質量%以下、好ましくは30質量%以下とすることで多孔質のインク受容層とすることが好ましい。またシリカ粒子の固形分濃度は、8〜50g/m2の範囲が好ましく、12〜40g/m2の範囲がより好ましく、特に15〜35g/m2の範囲が好ましい。
【0061】
本発明のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、バインダーとを少なくとも含有する塗布液を支持体上に塗布する際に用いる塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えばスライドリップ方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある
【0062】
以下に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明は実施例に限られるものではない。なお、部とは固形分質量部を意味する。
【実施例1】
【0063】
<シリカ分散液の一次分散>
イオン交換水4666mlを秤量し、この中に分散剤としてカチオン性ポリマー(ポリジアリルアミン誘導体、センカ(株)製、CP101A、平均分子量約50000、固形分濃度30質量%)を237g(シリカ粒子100部に対して3.6部)と次亜リン酸ナトリウムを60mg(シリカ粒子100部に対して0.003部)を添加して分散媒を作製した。次に、この分散媒に湿式法シリカ粉体を2000g(東ソー・シリカ(株)製、ニップシールLP)を添加して分散機(プライミクス(株)製、ハイビスディスパーミックス 3D−10型)を用い分散条件がディスパー周速21.0m/秒、プラネタリー回転数30rpmで60分間分散した。
【0064】
<シリカ分散液の二次分散>
上記一次分散後のシリカ分散液をビーズミル((株)シンマルエンタープライゼス製、ダイノミル)でディスク周速12.5m/秒、ポンプ流量300ml/分の条件で2回処理し、固形分濃度30質量%のシリカ分散液を得た。
【実施例2】
【0065】
実施例1の次亜リン酸ナトリウムの添加量を60mgから140mg(シリカ粒子100部に対して0.007部)に変更した以外は実施例1と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例3】
【0066】
実施例1の次亜リン酸ナトリウムの添加量を60mgから200mg(シリカ粒子100部に対して0.01部)に変更した以外は実施例1と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例4】
【0067】
実施例1の次亜リン酸ナトリウムの添加量を60mgから600mg(シリカ粒子100部に対して0.03部)に変更した以外は実施例1と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例5】
【0068】
実施例1の次亜リン酸ナトリウムの添加量を60mgから1400mg(シリカ粒子100部に対して0.07部)に変更した以外は実施例1と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例6】
【0069】
実施例3の次亜リン酸ナトリウムの代わりに、次亜リン酸カリウムを使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例7】
【0070】
実施例3の次亜リン酸ナトリウムの代わりに、次亜リン酸カルシウムを使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例8】
【0071】
実施例3の次亜リン酸ナトリウムの添加時期を、一次分散に使用するイオン交換水に添加せず、一次分散後のシリカ分散液に添加し、その後二次分散した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例9】
【0072】
実施例3のカチオン性ポリマーの代わりに、(株)理研グリーン製のピュラケムWTを使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【実施例10】
【0073】
実施例3の湿式シリカ粉体の代わりに、気相法シリカ粉体(日本アエロジル(株)製、アエロジル300)を使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【0074】
(比較例1)
実施例1の次亜リン酸ナトリウムを添加せず分散した以外は全て実施例1と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【0075】
(比較例2)
実施例3の次亜リン酸ナトリウムの代わりに、リン酸バリウムを使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【0076】
(比較例3)
実施例3の次亜リン酸ナトリウムの代わりに、リン酸水素ナトリウムを使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【0077】
(比較例4)
実施例3の次亜リン酸ナトリウムの代わりに、リン酸二水素ナトリウムを使用した以外は全て実施例3と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【0078】
(比較例5)
実施例10の次亜リン酸ナトリウムを添加せず分散した以外は全て実施例10と同様にしてシリカ分散液を作製した。
【0079】
実施例1〜10、比較例1〜5で得られたシリカ分散液について、下記の粘度測定、粒度分布評価を行った。その結果を表1に表す。
【0080】
<粘度評価>
上記方法で得られたシリカ分散液についてそれぞれ分散終了直後と常温で15日間経時のシリカ分散液の粘度を東機産業(株)製のB型粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0081】
<体積基準中位径評価>
分散終了直後と常温で15日間経時のシリカ分散液の粒度分布をレーザー回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所(株)製、LA−920)にて測定を行い体積基準中位径を求めた。
【0082】
【表1】

【0083】
表1の結果からも明らかなように、本発明によりシリカ分散液を保存した際の経時による粘度上昇が改善された優れた経時安定性を有するシリカ分散液が得られた。
【実施例11】
【0084】
実施例1で得たシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いて、下記組成のインクジェット記録材料用の塗布液を調整した。
【0085】
<インクジェット記録材料用塗布液の作製>
30質量%シリカ分散液 400g
5質量%ポリビニルアルコール水溶液 500g
(商品名:PVA235、(株)クラレ製、ケン化度88%、平均重合度3500)
4質量%ホウ酸水溶液 100g
界面活性剤 0.3g
(商品名:BT−9、日光ケミカルズ(株)製)
上記加剤を混合後、水で全量を1148gに調整した。そして固形分濃度13質量%の塗布液を得た。
【0086】
<インクジェット記録材料の作製>
支持体として、LBKP(50部)とLBSP(50部)のパルプ配合からなる120g/m2の基紙に、表面に低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布し、裏面に高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)からなる樹脂組成物を25g/m2を塗布してなる樹脂被覆紙を用意した。この支持体の表面に、上記インクジェット記録材料用塗布液を用いてシリカ粒子の塗布量が20g/m2となるようにエクストルージョン方式塗布装置でそれぞれ塗布し、乾燥して実施例11のインクジェット記録材料を作製した。
【実施例12】
【0087】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例2で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例13】
【0088】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例3で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例14】
【0089】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例4で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例15】
【0090】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例5で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例16】
【0091】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例6で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例17】
【0092】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例7で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例18】
【0093】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例8で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例19】
【0094】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例9で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【実施例20】
【0095】
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、実施例10で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0096】
(比較例6)
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、比較例1で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0097】
(比較例7)
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、比較例2で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0098】
(比較例8)
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、比較例3で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0099】
(比較例9)
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、比較例4で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0100】
(比較例10)
実施例11で使用したシリカ分散液の代わりに、比較例5で作製したシリカ分散液を常温で15日経時し、そのシリカ分散液を用いた。それ以外は全て実施例11と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0101】
実施例11〜20、比較例6〜10で得られたインクジェット記録材料について、以下に示すインク吸収性の結果を表2に示す。
【0102】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−880DC)を用いて、C、M、Yをそれぞれ120%で印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。評価は以下の基準を参考とした。
○:全く転写しない、又は僅かに転写するが実用上支障なし。
△:転写するが実使用下限。
×:転写する。
【0103】
【表2】

【0104】
表2の結果からも明らかなように、本発明の提案方法に従って得られたインクジェット記録材料は、シリカ分散液の経時に影響されることなくインク吸収性が優れる結果が得られた。なお、表2には記載しないが、実施例1〜10、及び比較例1〜5で得られた分散直後のシリカ分散液により作製された塗布液を支持体上に塗布、乾燥して得られたインクジェット記録材料のインク吸収性は何れも○評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子を水を主体とする分散媒中で、分散剤と次亜リン酸塩の存在下で分散することを特徴とするシリカ分散液の製造方法。
【請求項2】
該次亜リン酸塩の添加量がシリカ粒子100質量部に対して0.005〜0.05質量部である請求項1に記載のシリカ分散液の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載のシリカ分散液の製造方法により製造されたシリカ分散液と、バインダーとを少なくとも含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥するインクジェット記録材料の製造方法。

【公開番号】特開2009−126734(P2009−126734A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301412(P2007−301412)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】