説明

シリカ膜前駆体組成物の製造方法及びシリカ膜

【課題】酸素プラズマ耐性に優れたシリカ膜を形成することができ、且つ、安定性に優れたシリカ膜前駆体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】アルコキシシランと溶媒と酸触媒を混合してアルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせた後、前記アルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルのシリル化剤を添加して前記縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端をシリル化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ膜前駆体組成物の製造方法及びシリカ膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の層間絶縁膜等として、シリカ膜が使用されている。このようなシリカ膜は、例えば、アルコキシシランと溶媒とを原料とする塗布液(シリカ膜前駆体組成物)を作製し、これを基材に塗布して膜を形成した後、焼成する方法により製造されている(特許文献1等参照)。
【0003】
このような方法において、塗布液の段階での放置時間によって塗布液の特性が変化して、得られるシリカ膜の比誘電率等の特性が変化してしまう場合があるという問題がある。
【0004】
また、半導体素子の層間絶縁膜等として使用されるシリカ膜は、後工程で、例えばパターニングの際に使用したレジスト膜を剥離するために酸素プラズマ処理を施される場合があるため、酸素プラズマ耐性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−133350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、酸素プラズマ耐性に優れたシリカ膜を形成することができ、且つ、安定性に優れたシリカ膜前駆体組成物の製造方法及びシリカ膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のシリカ膜前駆体組成物の製造方法は、アルコキシシランと溶媒と酸触媒を混合してアルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせた後、前記アルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルのシリル化剤を添加して前記縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端をシリル化することを特徴とする。
そして、前記酸触媒が、無機酸であることが好ましい。
また、前記シリル化剤が、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルシリルジメチルアミン及びトリメチルシリルイミダゾールから選択される少なくとも一種であってもよい。
さらに、前記シリカ膜前駆体組成物は界面活性剤を含むものであり、前記シリカ膜は多孔質膜であってもよい。
また、本発明のシリカ膜は、上記シリカ膜前駆体組成物の製造方法により製造されたシリカ膜前駆体組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルコキシシランを酸触媒の存在下で加水分解反応及び縮重合反応させた原料液に、用いたアルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルのシリル化剤を添加して縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端をシリル化することにより、安定性に優れたシリカ膜前駆体組成物を製造することができる。また、このシリカ膜前駆体組成物を用いることにより、酸素プラズマ耐性に優れたシリカ膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシリカ膜前駆体組成物の製造方法は、アルコキシシランと溶媒と酸触媒を混合してアルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせた後、用いたアルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルのシリル化剤を添加して縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端をシリル化するものである。
【0010】
具体的には、まず、アルコキシシランと溶媒と酸触媒を混合して加水分解反応及び縮重合反応を生じさせる。
【0011】
アルコキシシランとしては、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの4級アルコキシシラン;トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリイソプロポキシフルオロシラン、トリブトキシフルオロシランなどの3級アルコキシフルオロシラン;トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシプロピルシランなどの3級アルコキシアルキルシラン;トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシクロロフェニルシラン、トリエトキシクロロフェニルシランなどの3級アルコキシアリールシラン;トリメトキシフェネチルシラン、トリエトキシフェネチルシランなどの3級アルコキシフェネチルシラン;ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシランなどの2級アルコキシアルキルシラン;アルコキシシランの2量体等のオリゴマーなどが挙げられる。また、2種類以上用いてもよい。
【0012】
溶媒は、アルコキシシランを溶解または分散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノールなどの一級アルコール;2−プロパノール、2−ブタノールなどの二級アルコール;ターシャリーブチルアルコールなどの三級アルコール;アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
酸触媒は、アルコキシシランを加水分解することができるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸を挙げることができ、また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。但し、有機酸を用いると、アセチル基等の有機酸の残渣が、得られるシリカ膜に残存してしまうことや、無機酸に比べて酸素プラズマ耐性に優れたシリカ膜を形成することができるという効果が低くなるため、無機酸を用いることが好ましい。
【0014】
また、アルコキシシランと溶媒と酸触媒に加えて、さらに、界面活性剤等を含有していてもよい。界面活性剤としては、ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物を使用することが好ましい。ポリアルキレンオキサイド構造としては、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、ポリメチレンオキシド構造、ポリブチレンオキシド構造等が挙げられる。このようなポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエーテルエステル型化合物等を挙げることができる。また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の状態は問われず、固体状態でも、溶媒に溶解した状態でもよい。
【0015】
上記界面活性剤は、溶液中でミセルを形成し、規則的に配列する。このミセルをテンプレートとして、シリカと複合体をつくり、後段の工程でテンプレートを除去すると、均一で規則的な細孔を有する多孔質シリカ膜を製造することができる。そして、多孔質の膜とすることにより、例えば、誘電率(k)≦2.5の低誘電率及び低屈折率を有する膜となる。
【0016】
このようなアルコキシシラン及び酸触媒や必要に応じて含有させる界面活性剤等の添加剤を溶媒に溶解または分散させて、アルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせて、原料液を形成する。加水分解反応や縮重合反応は、水を添加することにより生じるが、必要に応じて加熱や撹拌等してもよい。
【0017】
アルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応について、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランを用いた場合を例に、以下に説明する。テトラエトキシシランを用い酸触媒の存在下で行う加水分解反応は、下記式のように進む。そして、加水分解反応の後に、下記縮重合反応により、シリカネットワークを形成していく。
<加水分解反応>
Si(OC25)4+xH2O→Si(OH)x(OC25)4-x+xC25OH
<縮重合反応>
2Si(OH)x(OC25)4-x→Si2O[(OC25)4-x(OH)x-1]2+H2
【0018】
次いで、このアルコキシシラン及び酸触媒や必要に応じて含有させる界面活性剤等の添加剤を溶媒に溶解または分散させてアルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせて得られた原料液に、用いたアルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルのシリル化剤を添加することにより、本発明のシリカ膜前駆体組成物が製造される。シリル化剤は、縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端をシリル化することができるものであれば特に限定されないが、例えば、R123−Si−X(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に一価の炭化水素基、Xはハロゲン等の活性基。)である。具体例としては、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルシリルジメチルアミン及びトリメチルシリルイミダゾール等が挙げられる。
【0019】
そして、シリル化剤の添加量は、用いたアルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルである。0.2モルより多いと、安定性に優れたシリカ膜前駆体組成物を得ることができず、また、シリル化剤から遊離したハロゲン等の影響によりシリカ膜前駆体組成物がゲル化して流動性がなくなってしまう場合がある。また、0.005モル未満では、安定性に優れ且つ酸素プラズマ耐性が良好なシリカ膜を製造することができない。
【0020】
このように、アルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応が生じている原料液に、特定量のシリル化剤を添加することにより、縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端、すなわちアルコキシ基をシリル化する。これにより、縮重合反応が止まるため、シリカ膜前駆体組成物(塗布液)の経時変化が抑制されて、シリカ膜前駆体組成物の安定性が良好になる。したがって、本発明のシリカ膜前駆体組成物を長期間、例えば、2週間以上放置しても、ゾル液の縮重合反応が進むことによるシリカ膜前駆体組成物の特性変化を防ぐことができる。すなわち、寿命の長いシリカ膜前駆体組成物となる。
【0021】
また、シリル化剤を添加してアルコキシシランの重合体と反応させているため、得られるシリカ膜は、Si原子に結合したシリル化剤由来の炭化水素基が導入されたものとなる。したがって、シリカ膜の炭素量が多くなるため、シリカ膜に酸素プラズマを照射する酸素プラズマ処理に対する耐性(酸素プラズマ耐性)が良好なシリカ膜を製造することができる。なお、縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端を処理するために、本発明のようにシリル化剤ではなく、アセチル化剤やエステル化剤を用いることも考えられるが、アセチル化やエステル化ではSi−O−Cという構造が形成され、本発明のようにSi−O−Si−RといったSi原子に炭化水素基Rが直接結合した構造とすることはできず、酸素プラズマ耐性が良好なシリカ膜にはならない。
【0022】
ここで、本発明においては、アルコキシシランを加水分解するための触媒として、酸触媒を用いる必要がある。一方、アルカリ触媒を用いると、シリル化剤を添加しても重縮合反応を止めることはできず、シリカ膜前駆体組成物の安定性を良好にすることはできない。
【0023】
アルコキシシラン及び酸触媒や必要に応じて含有させる界面活性剤等の添加剤を溶媒に溶解または分散させてアルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせた原料液に、シリル化剤を添加するタイミングは、加水分解反応及び縮重合反応を所望の状態まで進めた時とすればよい。勿論、流動性がなくなった状態であるゲルになる前に、シリル化剤を添加する必要がある。なお、アルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応が生じた後ある程度時間(例えば20〜25時間)が経過すると、この加水分解反応及び縮重合反応の速度は遅くなるが、この加水分解反応及び縮重合反応の速度が遅くなった段階でシリル化剤を原料液に添加することが好ましい。縮重合反応が飽和近くまで進行している可能性が高いからである。
【0024】
そして、このシリカ膜前駆体組成物を基材に塗布して膜を形成した後、加熱して焼成することにより、シリカ膜を製造することができる。基材に特に限定はないが、例えば、ガラス、石英、シリコンウェハー、ステンレス等が挙げられ、その形状は板状、皿状等のいずれであってもよい。
【0025】
シリカ膜前駆体組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法等が挙げられる。スピンコート法の場合、スピナー上に基材を置き、この基材上にゾル液を滴下し、例えば、500〜10000rpmで回転させて行えばよい。
【0026】
なお、界面活性剤を用いた場合は、界面活性剤は焼成工程の加熱によりある程度消失して空孔を形成するが、焼成工程と同時または焼成工程の後に紫外線や電子線を照射する等して、界面活性剤の残渣を除去するようにしてもよい。
【0027】
このようにして得られたシリカ膜は、Si原子に結合したシリル化剤由来の炭化水素基が導入されたもので炭素量が多いため、酸素プラズマ耐性に優れている。したがって、半導体装置の層間絶縁膜等として、好適に用いることができる。また、安定性が良好なシリカ膜前駆体組成物を用いているため、シリカ膜前駆体組成物製造直後でも長期間放置後でも、同様の比誘電率等の特性を有するシリカ膜が形成される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
<シリカ膜前駆体組成物の作製>
テトラエトキシシラン(TEOS)0.022モルと、水4.13モル、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)0.0048モルと、非イオン系界面活性剤(商品名:P45、第一工業製薬社製、平均分子量:2300、HO(CHCHO)13(CH(CH)CHO)20(CHCHO)13H) 0.010モル、硝酸0.10モルをエタノールに加え、25℃で24時間撹拌し、透明で均一な溶液(原料液)を得た。この溶液に、クロロトリメチルシラン0.0097モル(原料のテトラエトキシシラン及びジメチルジエトキシシランのエトキシ基の総量1モルに対して0.1モル)を加え、25℃で3時間撹拌し、シリカ膜前駆体組成物を得た。
【0030】
<シリカ膜の作製>
上記シリカ膜前駆体組成物を作製後すぐに、得られたシリカ膜前駆体組成物を用いて、シリコン基板上に1200rpmでスピンコートして膜を形成した。次いで、この膜が形成されたシリコン基板を、5Paの真空雰囲気下、15分で350℃まで昇温し、この温度で1時間保ち焼成することにより、多孔質シリカ膜を得た。
【0031】
<シリカ膜前駆体組成物の2週間放置>
また、上記シリカ膜前駆体組成物を2週間放置した後、上記<シリカ膜の作製>と同様の操作により、シリコン基板上に多孔質シリカ膜を形成した。
【0032】
(実施例2)
硝酸0.10モルのかわりに塩酸0.10モルを用い、また、クロロトリメチルシラン0.0097モルのかわりにヘキサメチルジシラザン0.0097モル(原料のテトラエトキシシラン及びジメチルジエトキシシランのエトキシ基の総量1モルに対して0.05モル)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0033】
(実施例3)
クロロトリメチルシラン0.0097モルを0.0005モルとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0034】
(実施例4)
クロロトリメチルシラン0.0097モルを0.0195モルとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0035】
(実施例5)
硝酸0.10モルのかわりにコハク酸0.10モルを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0036】
(比較例1)
クロロトリメチルシランを用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0037】
(比較例2)
ヘキサメチルジシラザンを用いなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0038】
(比較例3)
硝酸0.10モルのかわりに水酸化ナトリウム0.10モルを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0039】
(比較例4)
クロロトリメチルシラン0.0097モルを0.0003モルとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0040】
(比較例5)
クロロトリメチルシラン0.0097モルを0.0250モルとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0041】
(比較例6)
硝酸0.10モルのかわりにコハク酸0.10モルとし、クロロトリメチルシラン0.0097モルを0.0003モルとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0042】
(比較例7)
硝酸0.10モルのかわりにコハク酸0.10モルとし、クロロトリメチルシラン0.0097モルを0.0250モルとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0043】
(試験例1)
実施例1〜5及び比較例1〜7の多孔質シリカ膜について、比誘電率、633nmの波長に対する屈折率、及び、ヤング率(GPa)を測定した。比誘電率は水銀プローブを用いた電気測定機器(4D社製 CV−Map)により測定し、屈折率は分光エリプソ(大日本スクリーン製RE−3000)により測定し、ヤング率はナノインデンター(MTS社製SA−2)により測定した。結果を表1に示す。
【0044】
表1に示すように、実施例1〜5では、製造後2週間経過したシリカ膜前駆体組成物を用いても、製造直後のシリカ膜前駆体組成物と同等の特性を示す膜を形成することができることが確認された。一方、シリル化剤を用いなかった比較例1〜2、アルカリ触媒を用いた比較例3や、シリル化剤の添加量がアルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し0.005〜0.2モルの範囲外の比較例4〜7は、製造直後のシリカ膜前駆体組成物を用いた場合と、製造後2週間経過したシリカ膜前駆体組成物を用いた場合とで、特性が大きく異なっていた。
【0045】
【表1】

【0046】
(試験例2)
製造直後のシリカ膜前駆体組成物を用いて形成した実施例1〜5及び比較例1〜7の多孔質シリカ膜、及び、製造後2週間放置したシリカ膜前駆体組成物を用いて形成した実施例1〜5及び比較例1〜7の多孔質シリカ膜を、アッシング機構を備えたチャンバにセットし、O:100sccm、圧力:10Pa、RFパワー:1kWで、酸素プラズマ処理を行った。酸素プラズマ処理後の各多孔質シリカ膜の比誘電率を、試験例1と同様の方法で測定した。結果を、酸素プラズマ処理前の比誘電率と共に、表2に示す。
【0047】
表2に示すように、実施例1〜5では、製造直後のシリカ膜前駆体組成物を用いた場合と製造後2週間放置したシリカ膜前駆体組成物を用いた場合の両方とも、酸素プラズマ処理前後の比誘電率の増加量は顕著に小さく、実施例1〜5は、酸素プラズマ耐性に優れていることが確認された。そして、無機酸を触媒として用いた実施例1〜4は、有機酸を触媒として用いた実施例5よりも、酸素プラズマ処理前後の比誘電率の増加量が小さかった。これは、OH基の一部がアセチル化しているため、シリル化される量が減少してしまったためと推測される。
一方、シリル化剤を用いなかった比較例1〜2やアルカリ触媒を用いた比較例3は、製造後2週間放置したシリカ膜前駆体組成物を用いた場合の酸素プラズマ処理前後の比誘電率の増加量が大きかった。
また、シリル化剤量が本発明の範囲よりも少ない比較例4及び6は、製造後2週間放置したシリカ膜前駆体組成物を用いた場合の酸素プラズマ処理前後の比誘電率の増加量は、シリル化剤を用いなかった比較例1と同程度であり、製造直後のシリカ膜前駆体組成物を用いた場合の酸素プラズマ処理前後の比誘電率の増加量は、比較例1よりも大きかった。
そして、シリル化剤量が本発明の範囲よりも多い比較例5及び7は、製造後2週間放置したシリカ膜前駆体組成物を用いた場合の酸素プラズマ処理前後の比誘電率の増加量は抑制されているが、縮重合が制御できず、比誘電率が高くなった。
【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシランと溶媒と酸触媒を混合してアルコキシシランの加水分解反応及び縮重合反応を生じさせた後、前記アルコキシシランのアルコキシ基1モルに対し、0.005〜0.2モルのシリル化剤を添加して前記縮重合反応により生じたアルコキシシランの重合体の反応末端をシリル化することを特徴とするシリカ膜前駆体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記酸触媒が、無機酸であることを特徴とする請求項1に記載するシリカ膜前駆体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記シリル化剤が、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルシリルジメチルアミン及びトリメチルシリルイミダゾールから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載するシリカ膜前駆体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記シリカ膜前駆体組成物は界面活性剤を含むものであり、前記シリカ膜は多孔質膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載するシリカ膜前駆体組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載するシリカ膜前駆体組成物の製造方法により製造されたシリカ膜前駆体組成物を用いて形成されたものであることを特徴とするシリカ膜。

【公開番号】特開2012−87020(P2012−87020A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235977(P2010−235977)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】