シリケート系オレンジ色蛍光体
【課題】約565nmを超えるピーク発光波長を有する光を発するように構成されている新規なオレンジ色蛍光体を提供する。これらは、白色LED照明システム、プラズマディスプレーパネルならびにオレンジ及び他の色のLEDシステムに用途がある。
【解決手段】式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、Mg、Ca、BaもしくはZnを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、B、Al、Ga、C、Ge、Pの少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、F、Cl及びBrを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含むオレンジ色蛍光体。
【解決手段】式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、Mg、Ca、BaもしくはZnを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、B、Al、Ga、C、Ge、Pの少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、F、Cl及びBrを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含むオレンジ色蛍光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、一般に、カラーLED及び白色光照明システム(たとえば白色発光ダイオード)で使用するための、スペクトルのオレンジ色領域で発光するように構成されたEu2+活性化シリケートの蛍光に関する。特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、Mg、Ca及びBaを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、B、Al、Ga、C、Ge、Pの少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、F、Cl及びBrを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含む。
【背景技術】
【0002】
白色LEDは当該技術で公知であり、比較的最近の技術革新である。電磁スペクトルの青/紫外線領域で発光するLEDが開発されてはじめて、LEDに基づく白色照明源を製造することが可能になった。経済的には、白色LEDは、特にその製造コストが下がり、技術がさらに進歩するにつれ、白熱光源(電球)に取って代わる潜在性を有している。特に、白色LEDの潜在性は、寿命、ロバストさ及び効率において白熱電球のそれよりも優れると考えられている。たとえば、LEDに基づく白色照明源は、100,000時間の作動寿命及び80〜90%の効率の工業規格に適合すると期待されている。高輝度LEDは、交通信号のような社会の分野に対してすでに実質的な影響を及ぼして白熱電球に取って代わっており、ほどなく、家庭及びビジネスならびに他の日常用途で一般化している照明要求に応じるということは驚くべきことではない。
【0003】
発光性蛍光体に基づく白色光照明システムを製造するための一般的手法がいくつかある。今日まで、大部分の白色LED市販品は、図1Aに示す、放射線源からの光が白色光照明の色出力に直接寄与する(蛍光体に励起エネルギーを提供することに加えて)ような手法に基づく。図1Aのシステム10を参照すると、放射線源11(LEDであってもよい)が電磁スペクトルの可視部分で光12、15を発する。光12及び15は同じ光であるが、説明のために二つの別個のビームとして示されている。放射線源11から発される光の一部分、すなわち光12が、放射線源11からエネルギーを吸収したのち光14を発することができるフォトルミネセンス物質である蛍光体13を励起する。光14は、スペクトルの黄色領域の実質的に単色であることもできるし、緑と赤、緑と黄又は黄と赤などの組み合わせであることもできる。放射線源11はまた、蛍光体13によって吸収されない可視領域で青色の光を発する。これは、図1Aに示す青色可視光15である。青色可視光15が黄色光14と混合して、図示する所望の白色照明16を提供する。
【0004】
あるいはまた、より新規な手法は、紫外線(UV)領域で光を発する非可視性放射線源を使用することである。この概念が、放射線源から出る光が照明システムによって発される光に実質的に寄与しないような、非可視領域で発光する放射線源を含む照明システムを示す図1Bに示されている。図1Bを参照すると、実質的に非可視性の光が光22、23として放射線源21から発される。光22は光23と同じ特性を有するが、以下の点を示すために二つの異なる参照番号が使用されている。光22は、蛍光体、たとえば蛍光体24又は25を励起するために使用することができるが、放射線源21から発された、蛍光体に衝突しない光23は、人の眼には実質的に見えないため、蛍光体からの色出力28に寄与しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要望されていることは、従来技術のオレンジ色蛍光体に対する、放射線源11からオレンジ色光への同等以上の転換効率によって少なくとも部分的に表される改良である。本実施態様の増強されたオレンジ色蛍光体は、従来技術のオレンジ色蛍光体よりも高い効率を有する。本オレンジ色蛍光体は、放射線源11としてのUV、青色、緑色又は黄色LEDと組み合わせて使用されると、色出力が安定であり、色の混合が所望の均一な色温度及び所望の演色指数を生じさせるオレンジ色及び/又は赤色の光を発することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様は、一般に、カラーLED及び白色光照明システム(たとえば白色発光ダイオード)で使用するための、スペクトルのオレンジ色領域で発光するように構成されたEu2+活性化シリケートの蛍光に関する。特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、Mg、Ca、BaもしくはZnを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、B、Al、Ga、C、Ge、Pの少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、F、Cl及びBrを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の間の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含む。式は、A1カチオンがSrに取って代わり、A2カチオンがSiに取って代わり、A3アニオンがOに取って代わることを示すように書かれている。A1が実質的に等しい数の1+及び3+カチオンの組み合わせである場合、この全体的な電荷は、同じ数の2+カチオンによって達成される電荷に実質的に等しくなるように平均化される。
【0007】
特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、Mg、Ca、Ba又はZnである少なくとも一つの二価アルカリ土類元素Mを、式(Sr1-xMx)3SiO5:Eu2+によって一般に示される関係で有するシリケート系化合物を含む。代替態様では、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5(式中、Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、0≦x≦0.5であり、2.6≦y≦3.3であり、0.001≦z≦0.5である)で示される。これらの蛍光体は、約565nmを超えるピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されている。
【0008】
代替態様では、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(M1-xEux)ySiO5:H(式中、Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、0.01≦x≦0.1であり、2.6≦y≦3.3であり、Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)で示される。これらのハロゲン含有オレンジ色蛍光体は、あるいはまた、(M1-xEux)ySiO5H6zと書くこともでき、その場合、M及びHは上記と同じであり、x及びyの値は上記と同じであり、組成中のハロゲンの量を表すzは0<z≦0.1によって定義される。
【0009】
本発明のさらなる実施態様で、本オレンジ色蛍光体は、白色LEDにおいて使用することができる。そのような白色光照明システムは、約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約565nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成されたシリケート系オレンジ色蛍光体とを含むことができる。このオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1、A2、A3及びxの値は先に定義したとおりである)で示される。
【0010】
本オレンジ色蛍光体を製造する方法としては、ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法がある。例示的な共沈法は、
a)Sr(NO3)3を水に溶解するステップ、
b)Eu2O3を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む。
【0011】
励起スペクトルは、本オレンジ色蛍光体が、約480〜560nmの範囲の波長で励起されると、効率的に蛍光を発するということを示す。本オレンジ色蛍光体は、発光ピークのスペクトル位置及びピークの最大強度の両方を含め、従来技術の蛍光体に対して有利である発光特性を提供する。たとえば、本開示の実験で最大発光強度を示す蛍光体は、蛍光体(Sr0.97Eu0.03)3SiO5:Fであった。この蛍光体は、実験した5種の蛍光体のうちで最高強度の発光を示すだけでなく、二番目に長いピーク発光波長(約590nm)をも示す。この実験で最長波長発光を示す蛍光体は(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3SiO5:Eu2+Fであった(約600〜610nm)。
【0012】
ホスト格子中のアルカリ土類金属とケイ素との比率を変える影響、アルカリ土類金属のタイプ、Eu活性化剤の含量の影響及びハロゲンドーパントの役割が本開示で論じられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の新規なオレンジ色シリケート系蛍光体は、白色光照明システムにおける長波長発光性蛍光体成分としてだけでなく、オレンジ色又は他の色のLEDを使用することができるいかなる場合にも用途を有する。
【0014】
オレンジ色LEDは、発されるオレンジ色の長めの波長のおかげで、UV及び青色光源の両方によって励起することができる。本オレンジ色蛍光体の様々な実施態様を以下の順序で説明する。まず、新規なシリケート系オレンジ色蛍光体の概要を延べ、続いて、ホストシリケート格子の性質、ケイ素に対するアルカリ土類金属の相対量を変化させる効果及び種々のアルカリ土類金属の相対量を変化させる効果を論じる。次に、活性化剤含量を変化させる効果を開示し、続いて、ハロゲンのようなアニオンを含める効果を論じる。さらに、蛍光体処理及び製造方法を述べる。最後に、本発明の新規なオレンジ色蛍光体を含むことができる例示的な白色光照明システムを開示する。
【0015】
本実施態様の新規なオレンジ色蛍光体
本発明の実施態様は、一般に、カラーLED及び白色光照明システム(たとえば白色発光ダイオード)で使用するための、スペクトルのオレンジ色領域で発光するように構成されたEu2+活性化シリケートの蛍光に関する。特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)を含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)及びリン(P)の少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、フッ素(F)、塩素(Cl)及び臭素(Br)の少なくとも一つを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含む。式は、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることを示すように書かれている。
【0016】
本発明の新規なオレンジ色蛍光体は、一般に、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5(式中、Mは、Ba、Mg及びCaからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであるが、他の二価元素、たとえばZnをも含むことができる)によって表すことができる。x、y及びzの値は、以下の関係:0≦x≦0.5、2.6≦y≦3.3及び0.001≦z≦0.5に従う。この蛍光体は、約565nmを超えるピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されている。本発明の一部の実施態様では、蛍光体は、式Sr3EuzSiO5で示される。代替態様では、蛍光体は、(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)2.7EuzSiO5、(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3EuzSiO5又は(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)3EuzSiO5であってもよい。
【0017】
本発明の代替態様で、蛍光体は、式(MgxSr1-x)yEuzSiO5、(CaxSr1-x)yEuzSiO5、(BaxSr1-x)yEuzSiO5(式中、x及びyの値は、0<x<1.0及び2.6≦y≦3.3の規則に従い、yとzの関係は、y+zが3にほぼ等しいような関係である)で示される。
【0018】
G. BlasseらによってPhilips Research Reports Vol. 23, No. 1, pp. 1-120で教示されているように、系Me3SiO5(式中、Meは、Ca、Sr又はBaのいずれかである)に属する蛍光体のホスト格子は、結晶構造Cs3CoCl5を有する(又はこの結晶構造に関連する)。本発明の蛍光体のホスト格子が同じく結晶質であるということは、図2に示すX線回折図によって実証されている。図2の例示的な蛍光体は、共沈及びH2中1250℃で6時間の焼結によって調製した(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F0.18である。
【0019】
励起スペクトルは、励起エネルギーを変化させながら所定の波長での発光の強度の変化を観測することによって調製される(たとえば、the Phosphor Handbook, edited by S. Shinoya and W. M. Yen, CRC Press, New York, 1999, p. 684を参照)。例示的な蛍光体がBa3SiO5、Sr3SiO5、(Ba0.5Sr0.5)3SiO5及び(BaSrMg)SiO5である場合の本発明の例示的なオレンジ色蛍光体の励起スペクトルが図3に示されている。蛍光体の発光強度は590nmの波長で記録したものである。
【0020】
図3の励起スペクトルは、これらの蛍光体が約480〜560nmの範囲の波長で励起されると効率的に蛍光を発することを示す。590nmで発される光の強度は、蛍光体(Ba0.5Sr0.5)3SiO5の場合に最大であり、これは、励起放射線の波長が約545〜約550nmである場合に起こる。図3で二番目に高い発光強度を示す蛍光体は(Ba,Sr,Mg)3SiO5であり、これは、励起放射線の波長が540nmをわずかに超える場合に起こる(この式における、Ba、Sr及びMgの間のコンマ(,)は、これらの成分の合計とケイ素との比が約3:1である限り、これら3元素の間の数値的関係が特に限定されないことを示す)。発光において実質的に等しく強い(おそらくわずかに劣るとしても)ものは蛍光体Sr3SiO5であり、その最大発光は、励起放射線が540nmをわずかに下回る波長を有する場合に起こる。この例示的な系の4種の蛍光体のうち、Ba3SiO5が最低強度の発光を示した。この発光のピークは、励起放射線の波長が約510nmである場合に起こる。
【0021】
本オレンジ色蛍光体は、従来技術の蛍光体を上回る利点を有する発光特性を提供する。これらの特徴は、発光ピーク最大値のスペクトル位置(発光ピークの最大値が起こる波長)及びその強度を含む。これは、新規なオレンジ色蛍光体が白色LED照明システムによって発される白色光に対して加える寄与に関して特に当てはまる。図4は、式Sr3SiO5、(Ba0.1Sr0.9)3SiO5及び(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3SiO5で示される本発明の例示的な蛍光体に対する従来技術の蛍光体YAG:Ce及びTAG:Ceの発光スペクトルの集約を示す。同じく、比較のため、本発明者らによって開発された、式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)2SiO4によって示される蛍光体が含まれている。
【0022】
図4を参照すると、最大発光強度を示す蛍光体は、蛍光体(Ba0.1Sr0.9)3SiO5及び(Sr0.97Eu0.03)3SiO5:Fである。これらの蛍光体は、図4に示す5種の蛍光体の最高強度発光を示すだけでなく、電磁スペクトルのオレンジ色領域に十分入る約585〜600nmの範囲の、グラフ中の最長ピーク発光波長の一部をも示す。本発明の例示的な蛍光体のうち、図4で最短波長発光を示す蛍光体は、式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9Eu0.03)3SiO5:Fによって示される蛍光体であり、そのピーク発光波長は580nmをわずかに下回る。
【0023】
(Ba0.075Mg0.025Sr0.9Eu0.03)3SiO5:F蛍光体は、比較のために同じく図4に示す2種の黄色蛍光体に類似した発光強度を有する。これらの黄色蛍光体の第一のものは、従来技術の蛍光体YAG:Ceであり、そのピーク発光波長は約560nmである(電磁スペクトルの黄色領域に十分入る)。比較のための第二の黄色蛍光体は、本出願の発明者らを譲受人とする特許出願に記載されている新規な蛍光体であり、この蛍光体は、式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)2SiO4:Eu2+Fで示され、同じく黄色領域にあるが、YAG:Ceのピーク発光波長よりも長い約575nmのピーク発光波長を有している。比較のために発光スペクトルが測定された第五の蛍光体は市販のTAG:Ceであった。この蛍光体は、この系の5種の蛍光体うち最低の発光強度を有する。TAG:Ce蛍光体は、約575nmのピーク発光波長を示し、より黄色が強く、オレンジが弱い色である。
【0024】
本オレンジ色蛍光体のさらなる新規な特徴は、本蛍光体の種々の成分の間の関係を考慮することによって理解することができる。たとえば、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5におけるストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などとケイ素(Si)との含有比及び組成中の種々のアルカリ土類金属「M」の影響を特徴づけることができる。本蛍光体を特徴づけるさらなる方法は、蛍光体中のユーロピウム(Eu)活性化剤の濃度を変化させる効果を記すことである。
【0025】
ホスト格子中のアルカリ土類金属とケイ素の比率を変える効果
式(Sr0.97Eu0.03)ySiO5で示される一連の例示的な蛍光体におけるSr(又はBa、Caなど)とSiとの含量の比を変化させる効果の例が図5に示されている。このデータは、Siに対するSrの比が約3.1であるとき発光強度の最大値が見られるということを示す(この系では、アルカリ土類金属の含量に対してユーロピウム活性化剤の量を0.03に固定している)。二次的な強度最大値が約2.8で見られる。このグラフの要点は、組成M3SiO5に厳密に固執する必要がないことを示すことである(Mは、Sr、Ba、Ca、Euなどの量であり、ケイ素に対するアルカリ土類金属又は他の元素Mの比は約3.0の値で固定されている)。事実、発光強度を高めるためにこの比を従来の値に対して変化させることに利点がある。
【0026】
アルカリ土類金属のタイプの影響
本オレンジ色蛍光体中のアルカリ土類金属の性質(すなわち具体的な種)及び含量を変えることは、発光強度のピーク値及び発光波長の両方に対して影響を及ぼす。上記のように、アルカリ土類金属Mは、(MxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系中、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)からなる群より選択することができる。
【0027】
2種の異なるアルカリ土類金属Ca及びMgを含める効果が図6A、6Bならびに図7A及び7Bに示されている。図6Aは、式(CaxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5で示される一連の蛍光体の発光スペクトルの実測データであり、0.0、0.5及び1.0に等しいxの値を有する種々の蛍光体を試験したものである。発光強度が非常に異なり、どこでピーク波長が起こるのかを見極めることが困難であるため、三つのピークすべてがx=0組成の場合のピークと本質的に同じ高さを有するようにx=1及びx=0.5を正規化することによって図6Aのデータをプロットし直した。このプロットし直したデータが図6Bに示されている。
【0028】
この系では、中間的なCa対Sr比を有する組成物(換言すると、実質的に等しい量のCa及びSrを有する組成物)が約605〜610nmで最長のピーク波長発光を示した。これは、同系の他の2種の要素のいずれよりも赤に近く、黄色から離れている。大部分がカルシウムからなる組成物(x=1)は、黄色の緑側端に近い色である約510nmで最短のピーク発光波長を示した。すべてストロンチウムを有し、カルシウムを有しない組成物は、分布の中間であり、ピーク波長発光は約590nmであった。
【0029】
図7A及び7Bを参照すると、組成(MgxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5中のストロンチウムに代えてマグネシウムを用いることが発光の強度を下げるとともに、ピーク発光の波長をより短い波長にシフトするということを認めることができる。これは、蛍光体が403nmで励起された場合(図7A)及び450nmで励起された場合(図7B)の両方の状況に当てはまる。アルカリ土類金属成分としてすべてストロンチウムからなる組成物(x=0)は、両方の励起波長で最長の波長で発光し、ここでもまた、この発光は約590nmで起こっている。少量のマグネシウムを用いてストロンチウムに代えること(x=0.2)は、発光の強度を有意に下げるが、発光の波長を実質的に変えることはない。
【0030】
図7Bを参照すると、さらなる量のマグネシウムを用いて、まずx=0.30のレベルまで、次にさらにx=0.35のレベルまでストロンチウムに代えると、発光強度は、マグネシウムのゼロレベルの場合に実証された強度の完全な回復とはいえないが、x=0.2の組成の発光強度から増大する。ストロンチウムに代わるこの一連のマグネシウムの使用のこの点(レベルx=0.35)で、系中の二番目に高い発光強度が認められる。この濃度から、ストロンチウムに代えてマグネシウムをさらに用いると(x=0.4及びx=0.5の値まで)、強度は、まずは小さな程度に、次いでどちらかといえば実質的に低下する。組成x=0.3、0.35、0.4及び0.5のピーク発光波長は約530〜560nmの範囲である。
【0031】
比較のために(この段落で記載する蛍光体がスペクトルのオレンジ領域で特異的に発光するわけではないことを認めたうえで)、一般式Mg3SiO5で示される蛍光体の発光強度を従来のBAMの発光強度と比較した。従来のBAMは、蛍光体Mg3SiO5が青色を発光する理由で、比較のために選択した。
【0032】
この比較の結果が図8に示されている。図8は、Mg3SiO5蛍光体がスペクトルの青色で発光するため、M3SiO5蛍光体(Mはこの場合Mgである)を従来のBAMと比較するために示す、式Mg3SiO5を含む組成物の発光スペクトルである。Mg3SiO5蛍光体は、約470nmのピーク波長で、従来のBAMよりもずっと高い強度で発光する。Mg3SiO5化合物が高純度相ではないことに注目されたい。
【0033】
Eu活性化剤の含量の影響
組成物Me3SiO5中の最適な活性化剤含量は、アルカリ土類金属Me(Meは、Ca、Sr及びBaである)に対して数原子%のユーロピウムであると報告されており(BlasseらによるPhilips Research Reports, Vol. 23, No. 1, 1968の論文を参照)、同様な結果が本開示で見いだされ、報告される。式(Sr1-xEux)3SiO5によって示される本オレンジ色蛍光体組成物におけるユーロピウム活性化剤の含量を変化させる効果が図9に示されている。0.02のEu濃度を有する組成物の場合に最大発光強度が見られ、次に強い組成物がx=0.03である。
【0034】
本シリケート系オレンジ色蛍光体は、一般に、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5によって示すことができ、式中、ユーロピウム活性化剤のレベルが「z」パラメータによって記載されている。本発明の実施態様によると、zの値は約0.001≦z≦0.5である。
【0035】
ハロゲンアニオンドーパントの役割
次に、ハロゲンを本オレンジ色蛍光体、たとえば式(M1-xEux)ySiO5H6zで示される実施態様に含める効果を論じる。この実施態様では、Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンであり、ハロゲンが組成に含まれる量がパラメータ「z」によって記される。本発明の一つの実施態様では、zは0<z≦0.1である。
【0036】
いくつか特定の試験の結果が図10及び11に示されている。図10は、蛍光体(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F6zの発光の強度のグラフを示す。白色光照明システムで使用するための蛍光体へのハロゲンドーパントを含ませることは、本発明者らによると、当該産業にとって他に類を見ないことであると考えられる。ここでは、約0.3〜0.5の範囲のF濃度が発光強度における実質的な増強を提供することが示されている。
【0037】
化合物(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F0.18の発光スペクトルが図11に示されている。この実験の蛍光体は、約450nmの波長を有する放射線によって励起されたものであり、励起放射線は、左寄りの小さなピークによって示されるようにグラフに含められている。以前のデータと合致して、この蛍光体は約590nmで発光する(右寄りの大きめのピーク)。
【0038】
一つの実施態様では、フッ素がNH4Fドーパントの形態で蛍光体組成物に加えられる。本発明者らは、NH4Fドーパントの量が非常に小さい(約1%)とき、ピーク発光は短めの波長に位置し、より多くNH4Fが加えられるにつれ、波長がドーパント量とともに増大するということを見いだした。Euドープされた蛍光体のルミネセンスは、4f65d1から4f7への電子項遷移を受ける、化合物中のEu2+の存在によるものである。発光バンドの波長位置は、ホストの材料又は結晶構造に多分に依存して、スペクトルの近UV領域から赤領域まで変化する。この依存性は、5dレベルの結晶場分裂によるものと解釈されている。結晶場強度が増すにつれ、発光バンドはより長い波長にシフトする。5d−4f遷移のルミネセンスピークエネルギーは、電子間反発を規定する結晶パラメータ、換言するならば、Eu2+カチオンと包囲するアニオンとの間の距離ならびに遠いカチオン及びアニオンまでの平均距離によってもっとも影響を受ける。
【0039】
少量のNH4Fの存在では、フッ素アニオンドーパントは、焼結処理中に主として融剤として機能する。一般に、融剤は、二つの方法のいずれか一方で焼結処理を改善する。第一の方法は、液体焼結機構によって結晶成長を促進する方法であり、第二の方法は、結晶粒子から不純物を吸収、回収し、焼結材料の相純度を改善する方法である。本発明の一つの実施態様では、ホスト蛍光体は(Sr1-xBax)3SiO5である。Sr及びBaはいずれも非常に大きなカチオンである。不純物と見なすことができる、より小さなカチオン、たとえばMg及びCaが存在してもよい。したがって、ホスト格子のさらなる精製が、より完全な対称性の結晶格子及びカチオンとアニオンとの間のより大きな距離を生じさせて、その結果、結晶場強度が弱まる。これが、少量のNH4Fドーピングが発光ピークをより短い波長に移動する理由である。この少量のFドーピングによる発光強度の増大は、欠陥がほとんどない高品質結晶のおかげである。
【0040】
NH4Fの量がさらに増すと、F-アニオンのいくつかがO2-アニオンに取って代わり、格子に組み込まれる。電荷の中性を維持するため、カチオン空位が形成される。カチオン位置の空位はカチオンとアニオンとの間の平均距離を減らすため、結晶場強度が増す。したがって、カチオン空位の増加によってNH4F含有量が増すにつれ、発光曲線のピークはより長い波長に移動する。発光波長は、結晶場強度によってのみ決まる基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップと密接に関連する。フッ素及び塩素による発光波長増大の結果は、フッ素又は塩素がホスト格子中におそらくは酸素に取って代わって組み込まれることの強い証拠である。他方、リンイオンの添加は、予想どおり、発光波長を実質的に変化させない。これもまた、リンイオンがカチオンとして作用し、酸素に取って代わらず、したがって、容易には格子に組み込まれず、ホスト材料の結晶場強度を変化させないという証拠である。これは特に、本質的に酸素サイトからなるEu2+イオンを取り囲む結晶場に当てはまる。NH4H2PO4を加えることによって得られる発光強度の改善は、それが上述のように融剤として働くことを示す。
【0041】
蛍光体製造法
本実施態様の新規なシリケート系蛍光体を製造する方法は、一つの製造方法に限定されず、たとえば、1)出発原料のブレンド、2)出発原料ミックスの焼成、及び3)焼成材料に対して実施される、微粉砕及び乾燥をはじめとする種々の処理を含む3つの工程で製造することができる。出発原料は、種々の粉末、たとえばアルカリ土類金属化合物、ケイ素化合物及びユーロピウム化合物の粉末を含むことができる。アルカリ土類金属化合物の例は、アルカリ土類金属の炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩及びハロゲン化物を含む。ケイ素化合物の例は、酸化物、たとえば酸化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む。ユーロピウム化合物の例は、酸化ユーロピウム、フッ化ユーロピウム及び塩化ユーロピウムを含む。ゲルマニウムを含有する本発明の新規な黄緑色蛍光体のゲルマニウム材料としては、酸化ゲルマニウムのようなゲルマニウム化合物を使用することができる。
【0042】
出発原料は、所望の最終組成が達成されるようなやり方でブレンドする。一つの実施態様では、たとえば、アルカリ土類、ケイ素(及び/又はゲルマニウム)及びユーロピウム化合物を適切な比率でブレンドしたのち、焼成して所望の組成を達成する。ブレンドした出発原料を第二の工程で焼成し、ブレンドした材料の反応性を高めるため(焼成のいずれか又は種々の段階で)、融剤を使用してもよい。融剤は、種々のハロゲン化物及びホウ素化合物を含むことができ、それらの例は、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ユーロピウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化ユーロピウム、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム及びそれらの組み合わせを含む。ホウ素含有融剤化合物の例は、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸バリウム及びホウ酸カルシウムを含む。
【0043】
いくつかの実施態様では、融剤化合物は、モル%数が約0.1〜3.0の範囲であるような量で使用される。値は通常、約0.1〜1.0モル%の範囲であることができる。
【0044】
出発原料を混合する(融剤を用いる場合又は用いない場合)ための様々な技術としては、乳鉢の使用、ボールミルを用いる混合、V字形ミキサを用いる混合、クロスロータリーミキサを用いる混合、ジェットミルを用いる混合及び攪拌機を用いる混合がある。出発原料は、ドライブレンドしてもよいし、湿式ブレンドしてもよい。ドライブレンドとは、溶媒を使用しない混合をいう。湿式ブレンド法で使用することができる溶媒としては、水又は有機溶媒があり、有機溶媒は、メタノール又はエタノールであることができる。
【0045】
出発原料のミックスは、当該技術で公知の多数の技術によって焼成することができる。電気炉又はガス炉のような加熱器を焼成に使用することができる。加熱器は、出発原料ミックスが所望の温度で所望の時間焼成される限り、特定のタイプに限定されない。実施態様によっては、焼成温度は約800〜1600℃の範囲であることができる。焼成時間は約10分〜1000時間の範囲であることができる。焼成雰囲気は、空気、低圧雰囲気、真空、不活性ガス雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気、酸化性雰囲気及び/又は還元性雰囲気の中から選択することができる。焼成のどこかの段階でEu2+イオンを蛍光体に含めなければならないため、実施態様によっては、窒素と水素との混合ガスを使用して還元性雰囲気を提供することが望ましい。
【0046】
本蛍光体を調製するための例示的な方法としては、ゾルゲル法及び固相反応法がある。ゾルゲル法は、粉末蛍光体を製造するために使用することができる。例示的な手順は以下の工程を含むものであった。
【0047】
1.a)特定量のアルカリ土類硝酸塩(Mg、Ca、Sr及び/又はBa)ならびにEu2O3及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物を希釈硝酸に溶解し、
b)対応する量のシリカゲルを脱イオン水に溶解して第二の溶液を調製する工程。
【0048】
2.上記工程1a)及び1b)の二つの溶液の固形分を完全に溶解したのち、二つの溶液を混合し、2時間攪拌した。次いで、アンモニアを使用して混合物溶液中にゲルを生成した。ゲルの形成ののち、pHを約9.0に調節し、ゲル化溶液を約60℃で3時間連続的に攪拌した。
【0049】
3.蒸発によってゲル化溶液を乾燥させたのち、得られた乾燥ゲルを500〜700℃で約60分間分解して酸化物を得た。
【0050】
4.冷却し、工程1a)でアルカリ土類金属ハロゲン化物を使用しない場合、特定量のNH4F又は他のアンモニアハロゲン化物とともに粉砕したのち、粉末を還元雰囲気中で約6〜10時間焼結した。仮焼/焼結温度は約1200〜1400℃の範囲であった。
【0051】
特定の実施態様では、シリケート系蛍光体の場合にも固相反応法を使用した。固相反応法に使用される例示的な処理の工程は以下を含むことができる。
【0052】
1.所望の量のアルカリ土類酸化物又は炭酸塩(Mg、Ca、Sr及び/又はBa)と、Eu2O3及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物、対応するSiO2及び/又はNH4Fもしくは他のアンモニアハロゲン化物のドーパントとをボールミルで湿式ブレンドした。
【0053】
2.乾燥させ、粉砕したのち、得られた粉末を還元雰囲気中で約6〜10時間仮焼/焼結した。仮焼/焼結温度は1200〜1400℃の範囲であった。
【0054】
本蛍光体の調製に関する具体例では、二次イオン発光分光分析(SIMS)を使用して焼結蛍光体[(Sr1-xBax)0.98Eu0.02]2SiO4-yFy中のフッ素の濃度を測定した。その結果が図13に示されている。この実験では、フッ素をNH4Fとして蛍光体に加えた。結果は、出発原料中で約20モル%のフッ素モル%の場合、焼結蛍光体では最終的に約10モル%であった。原料中のフッ素の含有量が約75モル%である場合、焼結蛍光体中のフッ素含有量は約18モル%である。
【0055】
白色光及び「単色」照明の製造
本開示のこの最終部分で、創作性のある新規なオレンジ色蛍光体を使用して製造することができる白色光照明及び実質的に一つの色からなる照明を論じる。この最終部分の最初のセクションは、創作性のあるオレンジ色蛍光体を励起するために使用することができる例示的な青色LEDの記載で始まる。本オレンジ色蛍光体が、可視領域の青色部分を含む大きな範囲の波長の光を吸収することができ、そのような光によって励起されることができるということが、図3の励起スペクトルによって実証されている。図1Aの略図にしたがって、本発明オレンジ色蛍光体からの光を青色LEDからの光と組み合わせて白色照明を作ることができる。あるいはまた、図1Bに示すように、本発明オレンジ色蛍光体(非可視性UV励起光源からの光によって励起)からの光を別の蛍光体、たとえば黄色又は緑色の蛍光体からの光と合わせてもよい。このように、白色光の演色性は、他の蛍光体をシステムに含めることによって調節することができる。
【0056】
UV及び青色LED放射線源
特定の実施態様では、青色LEDは、約400nm以上かつ約520nm以下の波長範囲で主発光ピークを有する光を発する。この光は二つの目的に役立つ。1)励起放射線を蛍光体システムに提供し、2)青色光を提供し、その光が、蛍光体システムから発される光と合わさって、白色光照明の白色光を構成する。
【0057】
特定の実施態様では、青色LEDは、約420nm以上かつ約500nm以下の光を発する。さらに別の実施態様では、青色LEDは、約430nm以上かつ約480nm以下の光を発する。青色LEDの波長は450nmであることができる。
【0058】
本明細書では、本実施態様の青色発光素子を総称的に「青色LED」と記すが、当業者には、青色発光素子は、青色発光ダイオード、レーザダイオード、面発光レーザダイオード、共振空洞発光ダイオード、無機エレクトロルミネセンス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子の少なくともいずれかであればよい(いくつかが同時に作動することも考えられる)ということが理解されよう。青色発光素子が無機素子であるならば、それは、窒化ガリウム系化合物半導体、セレン化亜鉛半導体及び酸化亜鉛半導体からなる群より選択される半導体であることができる。
【0059】
代替態様では、新規なオレンジ色蛍光体は、400nmを実質的に下回る波長で発光する放射線源によって励起される。実質的に非可視性の光を発するこのような放射線源は、UV LED又は青色LEDに関して上記で挙げた他のタイプの放射線源のいずれかであることができる。
【0060】
図3は、本オレンジ/赤色蛍光体が約320〜560nmの範囲の放射線を吸収することができることを示す、これら新規な蛍光体の励起スペクトルである。
【0061】
創作性のあるオレンジ色蛍光体と他の蛍光体との組み合わせ
本発明の一つの実施態様では、約430nm〜480nmの範囲の発光ピーク波長を有するGaN系青色LED及び約590nm超〜600nmの発光ピーク波長を有する創作性のあるオレンジ色蛍光体を他の蛍光体と組み合わせて使用して白色照明素子を構築することができる。当業者には、本オレンジ色蛍光体から発された光を、とりわけ、可視青色放射線源からの光又は青、緑もしくは黄色蛍光体からの光と組み合わせることができることが理解されよう。
【0062】
上記概念に準じて使用することができる青色蛍光体の例が、発明者Ning Wang、Yi Dong、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる、2005年7月1日出願の、「Aluminate-based blue phosphors」と題する、米カリフォルニア州FremontのIntematix社を譲受人とする米国特許出願(ドケット番号034172−013)に記載されている。当然、市販のBAM蛍光体をはじめとする実質的にあらゆる青色蛍光体が本出願に適切であるが、Intematixの蛍光体が特に良好に作用する。これらの蛍光体は、一般式(M1-xEux)2-zMgzAlyO[1+(3/2)y](Mは、Ba又はSrの少なくとも一つである)によって表すことができる。これらの青色蛍光体は、約420〜560nmの範囲の波長で発光することができる。
【0063】
本オレンジ色蛍光体と上述の出願で記載されている青色蛍光体との組み合わせ(395nmの励起放射線を提供する非可視性UV LEDによって励起)から得ることができる白色光の例が図12に示されている。この白色光は、式Sr3SiO5:Eu2+Fで示されるオレンジ色蛍光体と式(Sr0.5Eu0.5)MgAl10O17で示される青色蛍光体との組み合わせによって発されたものである。このようにして発された白色光は、83.0のRa及び82.3のRallを示した。
【0064】
あるいはまた、本オレンジ色蛍光体は、黄色蛍光体、たとえば市販の黄色蛍光体(たとえばYAG:Ce蛍光体)又は発明者Ning Wang、Yi Dong、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる、2004年9月22日出願の、「Novel silicate based yellow-green phosphors」と題する米国特許出願第10/948,764号に記載されている概念に準じる黄色蛍光体と組み合わせて使用することもできる(青色LED励起光源からの青色光を用いるかどうは問わず、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体などを用いるどうかも問わない)。当然、実質的にあらゆる黄色蛍光体がこの出願に適切である。これらの蛍光体は、一般式A2SiO4:Eu2+D(Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属であり、Dは、F、Cl、Br、I、P、S及びNからなる群より選択されるドーパントである)によって表すことができる。これらの蛍光体は、代替的に、A2Si(O,D)4:Eu2+と書いて、Dドーパントがホスト結晶中の酸素格子サイトに存在し、ケイ素格子サイトには位置しないことを示すこともできる。これらは、約280〜490nmの範囲の波長を有する光を発するように構成されている。
【0065】
あるいはまた、本オレンジ色蛍光体は、市販の緑色蛍光体を含む緑色蛍光体と組み合わせて使用することもできる(青色LED励起光源からの青色光を用いるかどうは問わず、青色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体などを用いるどうかも問わない)。同じく適切なものは、発明者Ning Wang、Yi Dong、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる、2005年1月14日出願の、「Novel aluminate-based green phosphors」と題する米国特許出願に記載されている緑色蛍光体である。当然、実質的にあらゆる緑色蛍光体がこの出願に適切である。これらの蛍光体は、一般式M1-xEuxAlyO[1+(3/2)y](Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Mn、Zn、Cu、Sm、Tm及びCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属である)によって表すことができる。これらの蛍光体は、約500〜550nmの範囲の波長を有する光を発するように構成されている。
【0066】
同じく適切なものは、本発明者によって開発された新規な緑色シリケート系蛍光体である。これらのシリケート系緑色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(A1、A2及びA3は、オレンジ色蛍光体の場合と同じ意味を有し、xは同じ範囲の値を有する)によって表すことができる。換言するならば、新規なシリケート系オレンジ色蛍光体とともに使用することができるシリケート系緑色蛍光体は、A1、A2及びA3の選択及び相対量に調節を加えることにより、同じ一般式を共有する。あるいはまた、緑色シリケート系蛍光体は、式(Sr,A1)y(Si,A2)(O,A3)2+y:Eu2+(A1、A2及びA3は、オレンジ色蛍光体の場合と同じ要素であり、yは1.5〜2.5の範囲の値である)で示されることができる。
【0067】
白色LED及び他のカラーLEDを製造するために緑色及び黄色蛍光体と組み合わせて使用される本シリケート系オレンジ色蛍光体のさらなる例が図13、14及び15に示されている。図13は、オレンジ色蛍光体を様々な方法で緑色蛍光体又は2種の黄色蛍光体の一方と組み合わせた方法を示す表である。これらの実験で使用したオレンジ色蛍光体は、表では組成物「C」と標識した(Sr0.9Ba0.1)3SiO5:Eu2+Fであった。緑色蛍光体は、表では組成物「G2」と標識した(Ba0.7Sr0.3)2SiO4:Eu2+Fであった。この実験で使用した二つの黄色蛍光体は、表では組成物「A」と標識した(Ba0.3Sr0.7)2SiO4:Eu2+F及び図13の表では組成物「B」と標識した(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)2SiO4:Eu2+Fであった。
【0068】
図13のサンプル#1〜#9は、蛍光体A、B、C及びG2を様々な方法で組み合わせたものである。たとえば、サンプル#1の蛍光体は、B蛍光体約95重量%とC蛍光体5重量%との組み合わせである。蛍光体は、540nm青色LEDによって励起し、これは可視青色光であるため、このサンプルから得られた全体的な照明は、青色LED、B黄色蛍光体及びCオレンジ色蛍光体からのものである。
【0069】
光学的な結果が図14及び15に示されている。図14を参照すると、当業者は、オレンジ色及び黄色成分を有するLEDを製造することができ、そのため、いくらかピンク色のLEDを製造することを理解するであろう。これは、B及びC蛍光体をそれぞれ62及び38重量%有するサンプル#3ならびにB及びC蛍光体をそれぞれ78及び22重量%有するサンプル#5によって実証されている。
【0070】
サンプル#6、#7、#8及び#9に関する白色光照明システムの結果が図15に示されている。ここで、緑色蛍光体と組み合わせるオレンジ色蛍光体の相対量を変えることによって演色性を調節することができることが理解される。たとえば、サンプル#6及び#7は、オレンジ/緑の15/85重量%の組み合わせ(サンプル#6)及びオレンジ/緑の22/78重量%の組み合わせにおいて80を超える演色性Raを示す。
【0071】
上記で開示した発明の例示的な実施態様の多くの改変が当業者には容易に想到されよう。したがって、本発明は、請求の範囲に入るすべての構造及び方法を包含するものと解釈されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1a】可視領域で発光する放射線源及び放射線源からの励起に応答して発光する蛍光体を含む白色光照明システムであって、システムから発される光が蛍光体からの光と放射線源からの光との混合物であるシステムを構築するための一般的スキームの略図である。
【図1b】放射線源から出る光が照明システムによって発される光に実質的に寄与しないような、非可視領域で発光する放射線源を含む照明システムの略図である。
【図2】シリケートホスト格子の結晶性を示すための、式(Sr0.97Eu0.03)3SiO5:F0.18で示される例示的なオレンジ色蛍光体(共沈及びH2中1250℃で6時間の焼結によって調製)のX線回折図である。
【図3】Ba3SiO5、Sr3SiO5、(Ba0.5Sr0.5)3SiO5及び(BaSrMg)SiO5の励起スペクトル(蛍光体の発光強度を590nmの波長で記録したもの)を示し、これらの蛍光体が約280〜560nmの範囲の波長で励起されると効率的に蛍光を発することを示す図である。
【図4】従来技術の蛍光体、たとえばYAG:Ce及びTAG:Ceの発光スペクトルを、式SrSiO5、(Ba0.1Sr0.9)3SiO5及び(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3SiO5:Fでそれぞれ示される本発明の例示的な蛍光体に対して示し、これらの例示的な蛍光体が従来技術の蛍光体よりも長い発光波長及び場合によっては高い発光強度を有することを示す集約である。
【図5】M3SiO5:Eu2+(Mはこの例ではSrである)型のホスト格子中のアルカリ土類の含有の効果の一例を示し、(Sr0.97Eu0.03)ySiO5系中のSr対Siの比の関数としてのピーク発光強度のグラフである。
【図6A】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種の異なるアルカリ土類金属M及びN(この場合、MはCaであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(CaxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(図6Aは実測データを示す)。
【図6B】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種の異なるアルカリ土類金属M及びN(この場合、MはCaであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(CaxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(波長におけるピーク最大値の位置を比較しやすくするため二つの曲線の二つの強度を第三の曲線の高さに対して正規化したデータを示す)。
【図7A】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種のアルカリ金属M及びN(この場合、MはMgであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(MgxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(励起波長が403nmである)。
【図7B】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種のアルカリ金属M及びN(この場合、MはMgであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(MgxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(励起波長が450nmである)。
【図8】M3SiO5系蛍光体におけるMをMgにした効果を示すための、式M3SiO5を含む組成物の発光スペクトルを示し、Mg3SiO5蛍光体はスペクトルの青色領域で発光するため、その発光特性を従来のアルミン酸バリウムマグネシウム(BAM)蛍光体の発光特性と比較するグラフである。
【図9】一般式(Sr1-xEux)3SiO5で示される一連の蛍光体におけるEuドーピング濃度の関数としてのピーク発光強度を示し、スペクトルが、最高の発光強度が約2原子%の活性化剤濃度(アルカリ土類金属に対して)で起こることを示しているグラフである。
【図10】ハロゲンを、この場合は約2〜6%の濃度で含めることによって最大ピーク発光強度を高めることができることを示し、(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F6z系中の本発明の例示的な蛍光体の発光スペクトルである。
【図11】ハロゲンドーパント(この場合はフッ素)を含有する本発明の例示的な蛍光体、すなわち式(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F0.18で示される特定の蛍光体の発光スペクトルである。
【図12】本実施態様のオレンジ色蛍光体及び青色蛍光体を含み、オレンジ色蛍光体が式Sr3SiO5:Eu2+Fで示され、青色蛍光体が式(Sr0.5Eu0.5)MgAl10O17で示される白色光LED照明システムの発光強度を示し、この蛍光体パッケージは、395nmで発光するLEDチップによってUV励起したもの(したがって、図1Bに示す構成に相当する)を示すグラフである。
【図13】様々な方法で組み合わされ、可視青色LEDによって励起された例示的な蛍光体(したがって、図1Aの構成に相当する)の表であり、光学的結果を示し、発光スペクトルが図14及び15に示されているサンプルを特定する表である。
【図14】本オレンジ色蛍光体を図13の表によって説明した他の蛍光体と合わせて含む、450nmで励起された(図12のUV励起とは対照的)二つの異なる色のLEDの発光スペクトルの集約である。
【図15】同じく図13の表の蛍光体を組み合わせたいくつかの異なる白色LEDを450nm又は460nmで励起した場合の発光スペクトルの集約である。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、一般に、カラーLED及び白色光照明システム(たとえば白色発光ダイオード)で使用するための、スペクトルのオレンジ色領域で発光するように構成されたEu2+活性化シリケートの蛍光に関する。特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、Mg、Ca及びBaを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、B、Al、Ga、C、Ge、Pの少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、F、Cl及びBrを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含む。
【背景技術】
【0002】
白色LEDは当該技術で公知であり、比較的最近の技術革新である。電磁スペクトルの青/紫外線領域で発光するLEDが開発されてはじめて、LEDに基づく白色照明源を製造することが可能になった。経済的には、白色LEDは、特にその製造コストが下がり、技術がさらに進歩するにつれ、白熱光源(電球)に取って代わる潜在性を有している。特に、白色LEDの潜在性は、寿命、ロバストさ及び効率において白熱電球のそれよりも優れると考えられている。たとえば、LEDに基づく白色照明源は、100,000時間の作動寿命及び80〜90%の効率の工業規格に適合すると期待されている。高輝度LEDは、交通信号のような社会の分野に対してすでに実質的な影響を及ぼして白熱電球に取って代わっており、ほどなく、家庭及びビジネスならびに他の日常用途で一般化している照明要求に応じるということは驚くべきことではない。
【0003】
発光性蛍光体に基づく白色光照明システムを製造するための一般的手法がいくつかある。今日まで、大部分の白色LED市販品は、図1Aに示す、放射線源からの光が白色光照明の色出力に直接寄与する(蛍光体に励起エネルギーを提供することに加えて)ような手法に基づく。図1Aのシステム10を参照すると、放射線源11(LEDであってもよい)が電磁スペクトルの可視部分で光12、15を発する。光12及び15は同じ光であるが、説明のために二つの別個のビームとして示されている。放射線源11から発される光の一部分、すなわち光12が、放射線源11からエネルギーを吸収したのち光14を発することができるフォトルミネセンス物質である蛍光体13を励起する。光14は、スペクトルの黄色領域の実質的に単色であることもできるし、緑と赤、緑と黄又は黄と赤などの組み合わせであることもできる。放射線源11はまた、蛍光体13によって吸収されない可視領域で青色の光を発する。これは、図1Aに示す青色可視光15である。青色可視光15が黄色光14と混合して、図示する所望の白色照明16を提供する。
【0004】
あるいはまた、より新規な手法は、紫外線(UV)領域で光を発する非可視性放射線源を使用することである。この概念が、放射線源から出る光が照明システムによって発される光に実質的に寄与しないような、非可視領域で発光する放射線源を含む照明システムを示す図1Bに示されている。図1Bを参照すると、実質的に非可視性の光が光22、23として放射線源21から発される。光22は光23と同じ特性を有するが、以下の点を示すために二つの異なる参照番号が使用されている。光22は、蛍光体、たとえば蛍光体24又は25を励起するために使用することができるが、放射線源21から発された、蛍光体に衝突しない光23は、人の眼には実質的に見えないため、蛍光体からの色出力28に寄与しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要望されていることは、従来技術のオレンジ色蛍光体に対する、放射線源11からオレンジ色光への同等以上の転換効率によって少なくとも部分的に表される改良である。本実施態様の増強されたオレンジ色蛍光体は、従来技術のオレンジ色蛍光体よりも高い効率を有する。本オレンジ色蛍光体は、放射線源11としてのUV、青色、緑色又は黄色LEDと組み合わせて使用されると、色出力が安定であり、色の混合が所望の均一な色温度及び所望の演色指数を生じさせるオレンジ色及び/又は赤色の光を発することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様は、一般に、カラーLED及び白色光照明システム(たとえば白色発光ダイオード)で使用するための、スペクトルのオレンジ色領域で発光するように構成されたEu2+活性化シリケートの蛍光に関する。特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、Mg、Ca、BaもしくはZnを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、B、Al、Ga、C、Ge、Pの少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、F、Cl及びBrを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の間の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含む。式は、A1カチオンがSrに取って代わり、A2カチオンがSiに取って代わり、A3アニオンがOに取って代わることを示すように書かれている。A1が実質的に等しい数の1+及び3+カチオンの組み合わせである場合、この全体的な電荷は、同じ数の2+カチオンによって達成される電荷に実質的に等しくなるように平均化される。
【0007】
特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、Mg、Ca、Ba又はZnである少なくとも一つの二価アルカリ土類元素Mを、式(Sr1-xMx)3SiO5:Eu2+によって一般に示される関係で有するシリケート系化合物を含む。代替態様では、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5(式中、Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、0≦x≦0.5であり、2.6≦y≦3.3であり、0.001≦z≦0.5である)で示される。これらの蛍光体は、約565nmを超えるピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されている。
【0008】
代替態様では、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(M1-xEux)ySiO5:H(式中、Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、0.01≦x≦0.1であり、2.6≦y≦3.3であり、Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)で示される。これらのハロゲン含有オレンジ色蛍光体は、あるいはまた、(M1-xEux)ySiO5H6zと書くこともでき、その場合、M及びHは上記と同じであり、x及びyの値は上記と同じであり、組成中のハロゲンの量を表すzは0<z≦0.1によって定義される。
【0009】
本発明のさらなる実施態様で、本オレンジ色蛍光体は、白色LEDにおいて使用することができる。そのような白色光照明システムは、約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約565nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成されたシリケート系オレンジ色蛍光体とを含むことができる。このオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1、A2、A3及びxの値は先に定義したとおりである)で示される。
【0010】
本オレンジ色蛍光体を製造する方法としては、ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法がある。例示的な共沈法は、
a)Sr(NO3)3を水に溶解するステップ、
b)Eu2O3を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む。
【0011】
励起スペクトルは、本オレンジ色蛍光体が、約480〜560nmの範囲の波長で励起されると、効率的に蛍光を発するということを示す。本オレンジ色蛍光体は、発光ピークのスペクトル位置及びピークの最大強度の両方を含め、従来技術の蛍光体に対して有利である発光特性を提供する。たとえば、本開示の実験で最大発光強度を示す蛍光体は、蛍光体(Sr0.97Eu0.03)3SiO5:Fであった。この蛍光体は、実験した5種の蛍光体のうちで最高強度の発光を示すだけでなく、二番目に長いピーク発光波長(約590nm)をも示す。この実験で最長波長発光を示す蛍光体は(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3SiO5:Eu2+Fであった(約600〜610nm)。
【0012】
ホスト格子中のアルカリ土類金属とケイ素との比率を変える影響、アルカリ土類金属のタイプ、Eu活性化剤の含量の影響及びハロゲンドーパントの役割が本開示で論じられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の新規なオレンジ色シリケート系蛍光体は、白色光照明システムにおける長波長発光性蛍光体成分としてだけでなく、オレンジ色又は他の色のLEDを使用することができるいかなる場合にも用途を有する。
【0014】
オレンジ色LEDは、発されるオレンジ色の長めの波長のおかげで、UV及び青色光源の両方によって励起することができる。本オレンジ色蛍光体の様々な実施態様を以下の順序で説明する。まず、新規なシリケート系オレンジ色蛍光体の概要を延べ、続いて、ホストシリケート格子の性質、ケイ素に対するアルカリ土類金属の相対量を変化させる効果及び種々のアルカリ土類金属の相対量を変化させる効果を論じる。次に、活性化剤含量を変化させる効果を開示し、続いて、ハロゲンのようなアニオンを含める効果を論じる。さらに、蛍光体処理及び製造方法を述べる。最後に、本発明の新規なオレンジ色蛍光体を含むことができる例示的な白色光照明システムを開示する。
【0015】
本実施態様の新規なオレンジ色蛍光体
本発明の実施態様は、一般に、カラーLED及び白色光照明システム(たとえば白色発光ダイオード)で使用するための、スペクトルのオレンジ色領域で発光するように構成されたEu2+活性化シリケートの蛍光に関する。特に、本発明のオレンジ色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(式中、A1は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)を含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)又は1+及び3+カチオンの組み合わせであり、A2は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)及びリン(P)の少なくとも一つを含む3+、4+又は5+カチオンであり、A3は、フッ素(F)、塩素(Cl)及び臭素(Br)の少なくとも一つを含む1−、2−又は3−アニオンであり、xは、2.5〜3.5の任意の値である)で示されるシリケート系化合物を含む。式は、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることを示すように書かれている。
【0016】
本発明の新規なオレンジ色蛍光体は、一般に、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5(式中、Mは、Ba、Mg及びCaからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであるが、他の二価元素、たとえばZnをも含むことができる)によって表すことができる。x、y及びzの値は、以下の関係:0≦x≦0.5、2.6≦y≦3.3及び0.001≦z≦0.5に従う。この蛍光体は、約565nmを超えるピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されている。本発明の一部の実施態様では、蛍光体は、式Sr3EuzSiO5で示される。代替態様では、蛍光体は、(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)2.7EuzSiO5、(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3EuzSiO5又は(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)3EuzSiO5であってもよい。
【0017】
本発明の代替態様で、蛍光体は、式(MgxSr1-x)yEuzSiO5、(CaxSr1-x)yEuzSiO5、(BaxSr1-x)yEuzSiO5(式中、x及びyの値は、0<x<1.0及び2.6≦y≦3.3の規則に従い、yとzの関係は、y+zが3にほぼ等しいような関係である)で示される。
【0018】
G. BlasseらによってPhilips Research Reports Vol. 23, No. 1, pp. 1-120で教示されているように、系Me3SiO5(式中、Meは、Ca、Sr又はBaのいずれかである)に属する蛍光体のホスト格子は、結晶構造Cs3CoCl5を有する(又はこの結晶構造に関連する)。本発明の蛍光体のホスト格子が同じく結晶質であるということは、図2に示すX線回折図によって実証されている。図2の例示的な蛍光体は、共沈及びH2中1250℃で6時間の焼結によって調製した(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F0.18である。
【0019】
励起スペクトルは、励起エネルギーを変化させながら所定の波長での発光の強度の変化を観測することによって調製される(たとえば、the Phosphor Handbook, edited by S. Shinoya and W. M. Yen, CRC Press, New York, 1999, p. 684を参照)。例示的な蛍光体がBa3SiO5、Sr3SiO5、(Ba0.5Sr0.5)3SiO5及び(BaSrMg)SiO5である場合の本発明の例示的なオレンジ色蛍光体の励起スペクトルが図3に示されている。蛍光体の発光強度は590nmの波長で記録したものである。
【0020】
図3の励起スペクトルは、これらの蛍光体が約480〜560nmの範囲の波長で励起されると効率的に蛍光を発することを示す。590nmで発される光の強度は、蛍光体(Ba0.5Sr0.5)3SiO5の場合に最大であり、これは、励起放射線の波長が約545〜約550nmである場合に起こる。図3で二番目に高い発光強度を示す蛍光体は(Ba,Sr,Mg)3SiO5であり、これは、励起放射線の波長が540nmをわずかに超える場合に起こる(この式における、Ba、Sr及びMgの間のコンマ(,)は、これらの成分の合計とケイ素との比が約3:1である限り、これら3元素の間の数値的関係が特に限定されないことを示す)。発光において実質的に等しく強い(おそらくわずかに劣るとしても)ものは蛍光体Sr3SiO5であり、その最大発光は、励起放射線が540nmをわずかに下回る波長を有する場合に起こる。この例示的な系の4種の蛍光体のうち、Ba3SiO5が最低強度の発光を示した。この発光のピークは、励起放射線の波長が約510nmである場合に起こる。
【0021】
本オレンジ色蛍光体は、従来技術の蛍光体を上回る利点を有する発光特性を提供する。これらの特徴は、発光ピーク最大値のスペクトル位置(発光ピークの最大値が起こる波長)及びその強度を含む。これは、新規なオレンジ色蛍光体が白色LED照明システムによって発される白色光に対して加える寄与に関して特に当てはまる。図4は、式Sr3SiO5、(Ba0.1Sr0.9)3SiO5及び(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3SiO5で示される本発明の例示的な蛍光体に対する従来技術の蛍光体YAG:Ce及びTAG:Ceの発光スペクトルの集約を示す。同じく、比較のため、本発明者らによって開発された、式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)2SiO4によって示される蛍光体が含まれている。
【0022】
図4を参照すると、最大発光強度を示す蛍光体は、蛍光体(Ba0.1Sr0.9)3SiO5及び(Sr0.97Eu0.03)3SiO5:Fである。これらの蛍光体は、図4に示す5種の蛍光体の最高強度発光を示すだけでなく、電磁スペクトルのオレンジ色領域に十分入る約585〜600nmの範囲の、グラフ中の最長ピーク発光波長の一部をも示す。本発明の例示的な蛍光体のうち、図4で最短波長発光を示す蛍光体は、式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9Eu0.03)3SiO5:Fによって示される蛍光体であり、そのピーク発光波長は580nmをわずかに下回る。
【0023】
(Ba0.075Mg0.025Sr0.9Eu0.03)3SiO5:F蛍光体は、比較のために同じく図4に示す2種の黄色蛍光体に類似した発光強度を有する。これらの黄色蛍光体の第一のものは、従来技術の蛍光体YAG:Ceであり、そのピーク発光波長は約560nmである(電磁スペクトルの黄色領域に十分入る)。比較のための第二の黄色蛍光体は、本出願の発明者らを譲受人とする特許出願に記載されている新規な蛍光体であり、この蛍光体は、式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)2SiO4:Eu2+Fで示され、同じく黄色領域にあるが、YAG:Ceのピーク発光波長よりも長い約575nmのピーク発光波長を有している。比較のために発光スペクトルが測定された第五の蛍光体は市販のTAG:Ceであった。この蛍光体は、この系の5種の蛍光体うち最低の発光強度を有する。TAG:Ce蛍光体は、約575nmのピーク発光波長を示し、より黄色が強く、オレンジが弱い色である。
【0024】
本オレンジ色蛍光体のさらなる新規な特徴は、本蛍光体の種々の成分の間の関係を考慮することによって理解することができる。たとえば、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5におけるストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などとケイ素(Si)との含有比及び組成中の種々のアルカリ土類金属「M」の影響を特徴づけることができる。本蛍光体を特徴づけるさらなる方法は、蛍光体中のユーロピウム(Eu)活性化剤の濃度を変化させる効果を記すことである。
【0025】
ホスト格子中のアルカリ土類金属とケイ素の比率を変える効果
式(Sr0.97Eu0.03)ySiO5で示される一連の例示的な蛍光体におけるSr(又はBa、Caなど)とSiとの含量の比を変化させる効果の例が図5に示されている。このデータは、Siに対するSrの比が約3.1であるとき発光強度の最大値が見られるということを示す(この系では、アルカリ土類金属の含量に対してユーロピウム活性化剤の量を0.03に固定している)。二次的な強度最大値が約2.8で見られる。このグラフの要点は、組成M3SiO5に厳密に固執する必要がないことを示すことである(Mは、Sr、Ba、Ca、Euなどの量であり、ケイ素に対するアルカリ土類金属又は他の元素Mの比は約3.0の値で固定されている)。事実、発光強度を高めるためにこの比を従来の値に対して変化させることに利点がある。
【0026】
アルカリ土類金属のタイプの影響
本オレンジ色蛍光体中のアルカリ土類金属の性質(すなわち具体的な種)及び含量を変えることは、発光強度のピーク値及び発光波長の両方に対して影響を及ぼす。上記のように、アルカリ土類金属Mは、(MxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系中、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)からなる群より選択することができる。
【0027】
2種の異なるアルカリ土類金属Ca及びMgを含める効果が図6A、6Bならびに図7A及び7Bに示されている。図6Aは、式(CaxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5で示される一連の蛍光体の発光スペクトルの実測データであり、0.0、0.5及び1.0に等しいxの値を有する種々の蛍光体を試験したものである。発光強度が非常に異なり、どこでピーク波長が起こるのかを見極めることが困難であるため、三つのピークすべてがx=0組成の場合のピークと本質的に同じ高さを有するようにx=1及びx=0.5を正規化することによって図6Aのデータをプロットし直した。このプロットし直したデータが図6Bに示されている。
【0028】
この系では、中間的なCa対Sr比を有する組成物(換言すると、実質的に等しい量のCa及びSrを有する組成物)が約605〜610nmで最長のピーク波長発光を示した。これは、同系の他の2種の要素のいずれよりも赤に近く、黄色から離れている。大部分がカルシウムからなる組成物(x=1)は、黄色の緑側端に近い色である約510nmで最短のピーク発光波長を示した。すべてストロンチウムを有し、カルシウムを有しない組成物は、分布の中間であり、ピーク波長発光は約590nmであった。
【0029】
図7A及び7Bを参照すると、組成(MgxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5中のストロンチウムに代えてマグネシウムを用いることが発光の強度を下げるとともに、ピーク発光の波長をより短い波長にシフトするということを認めることができる。これは、蛍光体が403nmで励起された場合(図7A)及び450nmで励起された場合(図7B)の両方の状況に当てはまる。アルカリ土類金属成分としてすべてストロンチウムからなる組成物(x=0)は、両方の励起波長で最長の波長で発光し、ここでもまた、この発光は約590nmで起こっている。少量のマグネシウムを用いてストロンチウムに代えること(x=0.2)は、発光の強度を有意に下げるが、発光の波長を実質的に変えることはない。
【0030】
図7Bを参照すると、さらなる量のマグネシウムを用いて、まずx=0.30のレベルまで、次にさらにx=0.35のレベルまでストロンチウムに代えると、発光強度は、マグネシウムのゼロレベルの場合に実証された強度の完全な回復とはいえないが、x=0.2の組成の発光強度から増大する。ストロンチウムに代わるこの一連のマグネシウムの使用のこの点(レベルx=0.35)で、系中の二番目に高い発光強度が認められる。この濃度から、ストロンチウムに代えてマグネシウムをさらに用いると(x=0.4及びx=0.5の値まで)、強度は、まずは小さな程度に、次いでどちらかといえば実質的に低下する。組成x=0.3、0.35、0.4及び0.5のピーク発光波長は約530〜560nmの範囲である。
【0031】
比較のために(この段落で記載する蛍光体がスペクトルのオレンジ領域で特異的に発光するわけではないことを認めたうえで)、一般式Mg3SiO5で示される蛍光体の発光強度を従来のBAMの発光強度と比較した。従来のBAMは、蛍光体Mg3SiO5が青色を発光する理由で、比較のために選択した。
【0032】
この比較の結果が図8に示されている。図8は、Mg3SiO5蛍光体がスペクトルの青色で発光するため、M3SiO5蛍光体(Mはこの場合Mgである)を従来のBAMと比較するために示す、式Mg3SiO5を含む組成物の発光スペクトルである。Mg3SiO5蛍光体は、約470nmのピーク波長で、従来のBAMよりもずっと高い強度で発光する。Mg3SiO5化合物が高純度相ではないことに注目されたい。
【0033】
Eu活性化剤の含量の影響
組成物Me3SiO5中の最適な活性化剤含量は、アルカリ土類金属Me(Meは、Ca、Sr及びBaである)に対して数原子%のユーロピウムであると報告されており(BlasseらによるPhilips Research Reports, Vol. 23, No. 1, 1968の論文を参照)、同様な結果が本開示で見いだされ、報告される。式(Sr1-xEux)3SiO5によって示される本オレンジ色蛍光体組成物におけるユーロピウム活性化剤の含量を変化させる効果が図9に示されている。0.02のEu濃度を有する組成物の場合に最大発光強度が見られ、次に強い組成物がx=0.03である。
【0034】
本シリケート系オレンジ色蛍光体は、一般に、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5によって示すことができ、式中、ユーロピウム活性化剤のレベルが「z」パラメータによって記載されている。本発明の実施態様によると、zの値は約0.001≦z≦0.5である。
【0035】
ハロゲンアニオンドーパントの役割
次に、ハロゲンを本オレンジ色蛍光体、たとえば式(M1-xEux)ySiO5H6zで示される実施態様に含める効果を論じる。この実施態様では、Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンであり、ハロゲンが組成に含まれる量がパラメータ「z」によって記される。本発明の一つの実施態様では、zは0<z≦0.1である。
【0036】
いくつか特定の試験の結果が図10及び11に示されている。図10は、蛍光体(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F6zの発光の強度のグラフを示す。白色光照明システムで使用するための蛍光体へのハロゲンドーパントを含ませることは、本発明者らによると、当該産業にとって他に類を見ないことであると考えられる。ここでは、約0.3〜0.5の範囲のF濃度が発光強度における実質的な増強を提供することが示されている。
【0037】
化合物(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F0.18の発光スペクトルが図11に示されている。この実験の蛍光体は、約450nmの波長を有する放射線によって励起されたものであり、励起放射線は、左寄りの小さなピークによって示されるようにグラフに含められている。以前のデータと合致して、この蛍光体は約590nmで発光する(右寄りの大きめのピーク)。
【0038】
一つの実施態様では、フッ素がNH4Fドーパントの形態で蛍光体組成物に加えられる。本発明者らは、NH4Fドーパントの量が非常に小さい(約1%)とき、ピーク発光は短めの波長に位置し、より多くNH4Fが加えられるにつれ、波長がドーパント量とともに増大するということを見いだした。Euドープされた蛍光体のルミネセンスは、4f65d1から4f7への電子項遷移を受ける、化合物中のEu2+の存在によるものである。発光バンドの波長位置は、ホストの材料又は結晶構造に多分に依存して、スペクトルの近UV領域から赤領域まで変化する。この依存性は、5dレベルの結晶場分裂によるものと解釈されている。結晶場強度が増すにつれ、発光バンドはより長い波長にシフトする。5d−4f遷移のルミネセンスピークエネルギーは、電子間反発を規定する結晶パラメータ、換言するならば、Eu2+カチオンと包囲するアニオンとの間の距離ならびに遠いカチオン及びアニオンまでの平均距離によってもっとも影響を受ける。
【0039】
少量のNH4Fの存在では、フッ素アニオンドーパントは、焼結処理中に主として融剤として機能する。一般に、融剤は、二つの方法のいずれか一方で焼結処理を改善する。第一の方法は、液体焼結機構によって結晶成長を促進する方法であり、第二の方法は、結晶粒子から不純物を吸収、回収し、焼結材料の相純度を改善する方法である。本発明の一つの実施態様では、ホスト蛍光体は(Sr1-xBax)3SiO5である。Sr及びBaはいずれも非常に大きなカチオンである。不純物と見なすことができる、より小さなカチオン、たとえばMg及びCaが存在してもよい。したがって、ホスト格子のさらなる精製が、より完全な対称性の結晶格子及びカチオンとアニオンとの間のより大きな距離を生じさせて、その結果、結晶場強度が弱まる。これが、少量のNH4Fドーピングが発光ピークをより短い波長に移動する理由である。この少量のFドーピングによる発光強度の増大は、欠陥がほとんどない高品質結晶のおかげである。
【0040】
NH4Fの量がさらに増すと、F-アニオンのいくつかがO2-アニオンに取って代わり、格子に組み込まれる。電荷の中性を維持するため、カチオン空位が形成される。カチオン位置の空位はカチオンとアニオンとの間の平均距離を減らすため、結晶場強度が増す。したがって、カチオン空位の増加によってNH4F含有量が増すにつれ、発光曲線のピークはより長い波長に移動する。発光波長は、結晶場強度によってのみ決まる基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップと密接に関連する。フッ素及び塩素による発光波長増大の結果は、フッ素又は塩素がホスト格子中におそらくは酸素に取って代わって組み込まれることの強い証拠である。他方、リンイオンの添加は、予想どおり、発光波長を実質的に変化させない。これもまた、リンイオンがカチオンとして作用し、酸素に取って代わらず、したがって、容易には格子に組み込まれず、ホスト材料の結晶場強度を変化させないという証拠である。これは特に、本質的に酸素サイトからなるEu2+イオンを取り囲む結晶場に当てはまる。NH4H2PO4を加えることによって得られる発光強度の改善は、それが上述のように融剤として働くことを示す。
【0041】
蛍光体製造法
本実施態様の新規なシリケート系蛍光体を製造する方法は、一つの製造方法に限定されず、たとえば、1)出発原料のブレンド、2)出発原料ミックスの焼成、及び3)焼成材料に対して実施される、微粉砕及び乾燥をはじめとする種々の処理を含む3つの工程で製造することができる。出発原料は、種々の粉末、たとえばアルカリ土類金属化合物、ケイ素化合物及びユーロピウム化合物の粉末を含むことができる。アルカリ土類金属化合物の例は、アルカリ土類金属の炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩及びハロゲン化物を含む。ケイ素化合物の例は、酸化物、たとえば酸化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む。ユーロピウム化合物の例は、酸化ユーロピウム、フッ化ユーロピウム及び塩化ユーロピウムを含む。ゲルマニウムを含有する本発明の新規な黄緑色蛍光体のゲルマニウム材料としては、酸化ゲルマニウムのようなゲルマニウム化合物を使用することができる。
【0042】
出発原料は、所望の最終組成が達成されるようなやり方でブレンドする。一つの実施態様では、たとえば、アルカリ土類、ケイ素(及び/又はゲルマニウム)及びユーロピウム化合物を適切な比率でブレンドしたのち、焼成して所望の組成を達成する。ブレンドした出発原料を第二の工程で焼成し、ブレンドした材料の反応性を高めるため(焼成のいずれか又は種々の段階で)、融剤を使用してもよい。融剤は、種々のハロゲン化物及びホウ素化合物を含むことができ、それらの例は、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ユーロピウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化ユーロピウム、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム及びそれらの組み合わせを含む。ホウ素含有融剤化合物の例は、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸バリウム及びホウ酸カルシウムを含む。
【0043】
いくつかの実施態様では、融剤化合物は、モル%数が約0.1〜3.0の範囲であるような量で使用される。値は通常、約0.1〜1.0モル%の範囲であることができる。
【0044】
出発原料を混合する(融剤を用いる場合又は用いない場合)ための様々な技術としては、乳鉢の使用、ボールミルを用いる混合、V字形ミキサを用いる混合、クロスロータリーミキサを用いる混合、ジェットミルを用いる混合及び攪拌機を用いる混合がある。出発原料は、ドライブレンドしてもよいし、湿式ブレンドしてもよい。ドライブレンドとは、溶媒を使用しない混合をいう。湿式ブレンド法で使用することができる溶媒としては、水又は有機溶媒があり、有機溶媒は、メタノール又はエタノールであることができる。
【0045】
出発原料のミックスは、当該技術で公知の多数の技術によって焼成することができる。電気炉又はガス炉のような加熱器を焼成に使用することができる。加熱器は、出発原料ミックスが所望の温度で所望の時間焼成される限り、特定のタイプに限定されない。実施態様によっては、焼成温度は約800〜1600℃の範囲であることができる。焼成時間は約10分〜1000時間の範囲であることができる。焼成雰囲気は、空気、低圧雰囲気、真空、不活性ガス雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気、酸化性雰囲気及び/又は還元性雰囲気の中から選択することができる。焼成のどこかの段階でEu2+イオンを蛍光体に含めなければならないため、実施態様によっては、窒素と水素との混合ガスを使用して還元性雰囲気を提供することが望ましい。
【0046】
本蛍光体を調製するための例示的な方法としては、ゾルゲル法及び固相反応法がある。ゾルゲル法は、粉末蛍光体を製造するために使用することができる。例示的な手順は以下の工程を含むものであった。
【0047】
1.a)特定量のアルカリ土類硝酸塩(Mg、Ca、Sr及び/又はBa)ならびにEu2O3及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物を希釈硝酸に溶解し、
b)対応する量のシリカゲルを脱イオン水に溶解して第二の溶液を調製する工程。
【0048】
2.上記工程1a)及び1b)の二つの溶液の固形分を完全に溶解したのち、二つの溶液を混合し、2時間攪拌した。次いで、アンモニアを使用して混合物溶液中にゲルを生成した。ゲルの形成ののち、pHを約9.0に調節し、ゲル化溶液を約60℃で3時間連続的に攪拌した。
【0049】
3.蒸発によってゲル化溶液を乾燥させたのち、得られた乾燥ゲルを500〜700℃で約60分間分解して酸化物を得た。
【0050】
4.冷却し、工程1a)でアルカリ土類金属ハロゲン化物を使用しない場合、特定量のNH4F又は他のアンモニアハロゲン化物とともに粉砕したのち、粉末を還元雰囲気中で約6〜10時間焼結した。仮焼/焼結温度は約1200〜1400℃の範囲であった。
【0051】
特定の実施態様では、シリケート系蛍光体の場合にも固相反応法を使用した。固相反応法に使用される例示的な処理の工程は以下を含むことができる。
【0052】
1.所望の量のアルカリ土類酸化物又は炭酸塩(Mg、Ca、Sr及び/又はBa)と、Eu2O3及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物、対応するSiO2及び/又はNH4Fもしくは他のアンモニアハロゲン化物のドーパントとをボールミルで湿式ブレンドした。
【0053】
2.乾燥させ、粉砕したのち、得られた粉末を還元雰囲気中で約6〜10時間仮焼/焼結した。仮焼/焼結温度は1200〜1400℃の範囲であった。
【0054】
本蛍光体の調製に関する具体例では、二次イオン発光分光分析(SIMS)を使用して焼結蛍光体[(Sr1-xBax)0.98Eu0.02]2SiO4-yFy中のフッ素の濃度を測定した。その結果が図13に示されている。この実験では、フッ素をNH4Fとして蛍光体に加えた。結果は、出発原料中で約20モル%のフッ素モル%の場合、焼結蛍光体では最終的に約10モル%であった。原料中のフッ素の含有量が約75モル%である場合、焼結蛍光体中のフッ素含有量は約18モル%である。
【0055】
白色光及び「単色」照明の製造
本開示のこの最終部分で、創作性のある新規なオレンジ色蛍光体を使用して製造することができる白色光照明及び実質的に一つの色からなる照明を論じる。この最終部分の最初のセクションは、創作性のあるオレンジ色蛍光体を励起するために使用することができる例示的な青色LEDの記載で始まる。本オレンジ色蛍光体が、可視領域の青色部分を含む大きな範囲の波長の光を吸収することができ、そのような光によって励起されることができるということが、図3の励起スペクトルによって実証されている。図1Aの略図にしたがって、本発明オレンジ色蛍光体からの光を青色LEDからの光と組み合わせて白色照明を作ることができる。あるいはまた、図1Bに示すように、本発明オレンジ色蛍光体(非可視性UV励起光源からの光によって励起)からの光を別の蛍光体、たとえば黄色又は緑色の蛍光体からの光と合わせてもよい。このように、白色光の演色性は、他の蛍光体をシステムに含めることによって調節することができる。
【0056】
UV及び青色LED放射線源
特定の実施態様では、青色LEDは、約400nm以上かつ約520nm以下の波長範囲で主発光ピークを有する光を発する。この光は二つの目的に役立つ。1)励起放射線を蛍光体システムに提供し、2)青色光を提供し、その光が、蛍光体システムから発される光と合わさって、白色光照明の白色光を構成する。
【0057】
特定の実施態様では、青色LEDは、約420nm以上かつ約500nm以下の光を発する。さらに別の実施態様では、青色LEDは、約430nm以上かつ約480nm以下の光を発する。青色LEDの波長は450nmであることができる。
【0058】
本明細書では、本実施態様の青色発光素子を総称的に「青色LED」と記すが、当業者には、青色発光素子は、青色発光ダイオード、レーザダイオード、面発光レーザダイオード、共振空洞発光ダイオード、無機エレクトロルミネセンス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子の少なくともいずれかであればよい(いくつかが同時に作動することも考えられる)ということが理解されよう。青色発光素子が無機素子であるならば、それは、窒化ガリウム系化合物半導体、セレン化亜鉛半導体及び酸化亜鉛半導体からなる群より選択される半導体であることができる。
【0059】
代替態様では、新規なオレンジ色蛍光体は、400nmを実質的に下回る波長で発光する放射線源によって励起される。実質的に非可視性の光を発するこのような放射線源は、UV LED又は青色LEDに関して上記で挙げた他のタイプの放射線源のいずれかであることができる。
【0060】
図3は、本オレンジ/赤色蛍光体が約320〜560nmの範囲の放射線を吸収することができることを示す、これら新規な蛍光体の励起スペクトルである。
【0061】
創作性のあるオレンジ色蛍光体と他の蛍光体との組み合わせ
本発明の一つの実施態様では、約430nm〜480nmの範囲の発光ピーク波長を有するGaN系青色LED及び約590nm超〜600nmの発光ピーク波長を有する創作性のあるオレンジ色蛍光体を他の蛍光体と組み合わせて使用して白色照明素子を構築することができる。当業者には、本オレンジ色蛍光体から発された光を、とりわけ、可視青色放射線源からの光又は青、緑もしくは黄色蛍光体からの光と組み合わせることができることが理解されよう。
【0062】
上記概念に準じて使用することができる青色蛍光体の例が、発明者Ning Wang、Yi Dong、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる、2005年7月1日出願の、「Aluminate-based blue phosphors」と題する、米カリフォルニア州FremontのIntematix社を譲受人とする米国特許出願(ドケット番号034172−013)に記載されている。当然、市販のBAM蛍光体をはじめとする実質的にあらゆる青色蛍光体が本出願に適切であるが、Intematixの蛍光体が特に良好に作用する。これらの蛍光体は、一般式(M1-xEux)2-zMgzAlyO[1+(3/2)y](Mは、Ba又はSrの少なくとも一つである)によって表すことができる。これらの青色蛍光体は、約420〜560nmの範囲の波長で発光することができる。
【0063】
本オレンジ色蛍光体と上述の出願で記載されている青色蛍光体との組み合わせ(395nmの励起放射線を提供する非可視性UV LEDによって励起)から得ることができる白色光の例が図12に示されている。この白色光は、式Sr3SiO5:Eu2+Fで示されるオレンジ色蛍光体と式(Sr0.5Eu0.5)MgAl10O17で示される青色蛍光体との組み合わせによって発されたものである。このようにして発された白色光は、83.0のRa及び82.3のRallを示した。
【0064】
あるいはまた、本オレンジ色蛍光体は、黄色蛍光体、たとえば市販の黄色蛍光体(たとえばYAG:Ce蛍光体)又は発明者Ning Wang、Yi Dong、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる、2004年9月22日出願の、「Novel silicate based yellow-green phosphors」と題する米国特許出願第10/948,764号に記載されている概念に準じる黄色蛍光体と組み合わせて使用することもできる(青色LED励起光源からの青色光を用いるかどうは問わず、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体などを用いるどうかも問わない)。当然、実質的にあらゆる黄色蛍光体がこの出願に適切である。これらの蛍光体は、一般式A2SiO4:Eu2+D(Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属であり、Dは、F、Cl、Br、I、P、S及びNからなる群より選択されるドーパントである)によって表すことができる。これらの蛍光体は、代替的に、A2Si(O,D)4:Eu2+と書いて、Dドーパントがホスト結晶中の酸素格子サイトに存在し、ケイ素格子サイトには位置しないことを示すこともできる。これらは、約280〜490nmの範囲の波長を有する光を発するように構成されている。
【0065】
あるいはまた、本オレンジ色蛍光体は、市販の緑色蛍光体を含む緑色蛍光体と組み合わせて使用することもできる(青色LED励起光源からの青色光を用いるかどうは問わず、青色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体などを用いるどうかも問わない)。同じく適切なものは、発明者Ning Wang、Yi Dong、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる、2005年1月14日出願の、「Novel aluminate-based green phosphors」と題する米国特許出願に記載されている緑色蛍光体である。当然、実質的にあらゆる緑色蛍光体がこの出願に適切である。これらの蛍光体は、一般式M1-xEuxAlyO[1+(3/2)y](Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Mn、Zn、Cu、Sm、Tm及びCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属である)によって表すことができる。これらの蛍光体は、約500〜550nmの範囲の波長を有する光を発するように構成されている。
【0066】
同じく適切なものは、本発明者によって開発された新規な緑色シリケート系蛍光体である。これらのシリケート系緑色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+(A1、A2及びA3は、オレンジ色蛍光体の場合と同じ意味を有し、xは同じ範囲の値を有する)によって表すことができる。換言するならば、新規なシリケート系オレンジ色蛍光体とともに使用することができるシリケート系緑色蛍光体は、A1、A2及びA3の選択及び相対量に調節を加えることにより、同じ一般式を共有する。あるいはまた、緑色シリケート系蛍光体は、式(Sr,A1)y(Si,A2)(O,A3)2+y:Eu2+(A1、A2及びA3は、オレンジ色蛍光体の場合と同じ要素であり、yは1.5〜2.5の範囲の値である)で示されることができる。
【0067】
白色LED及び他のカラーLEDを製造するために緑色及び黄色蛍光体と組み合わせて使用される本シリケート系オレンジ色蛍光体のさらなる例が図13、14及び15に示されている。図13は、オレンジ色蛍光体を様々な方法で緑色蛍光体又は2種の黄色蛍光体の一方と組み合わせた方法を示す表である。これらの実験で使用したオレンジ色蛍光体は、表では組成物「C」と標識した(Sr0.9Ba0.1)3SiO5:Eu2+Fであった。緑色蛍光体は、表では組成物「G2」と標識した(Ba0.7Sr0.3)2SiO4:Eu2+Fであった。この実験で使用した二つの黄色蛍光体は、表では組成物「A」と標識した(Ba0.3Sr0.7)2SiO4:Eu2+F及び図13の表では組成物「B」と標識した(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)2SiO4:Eu2+Fであった。
【0068】
図13のサンプル#1〜#9は、蛍光体A、B、C及びG2を様々な方法で組み合わせたものである。たとえば、サンプル#1の蛍光体は、B蛍光体約95重量%とC蛍光体5重量%との組み合わせである。蛍光体は、540nm青色LEDによって励起し、これは可視青色光であるため、このサンプルから得られた全体的な照明は、青色LED、B黄色蛍光体及びCオレンジ色蛍光体からのものである。
【0069】
光学的な結果が図14及び15に示されている。図14を参照すると、当業者は、オレンジ色及び黄色成分を有するLEDを製造することができ、そのため、いくらかピンク色のLEDを製造することを理解するであろう。これは、B及びC蛍光体をそれぞれ62及び38重量%有するサンプル#3ならびにB及びC蛍光体をそれぞれ78及び22重量%有するサンプル#5によって実証されている。
【0070】
サンプル#6、#7、#8及び#9に関する白色光照明システムの結果が図15に示されている。ここで、緑色蛍光体と組み合わせるオレンジ色蛍光体の相対量を変えることによって演色性を調節することができることが理解される。たとえば、サンプル#6及び#7は、オレンジ/緑の15/85重量%の組み合わせ(サンプル#6)及びオレンジ/緑の22/78重量%の組み合わせにおいて80を超える演色性Raを示す。
【0071】
上記で開示した発明の例示的な実施態様の多くの改変が当業者には容易に想到されよう。したがって、本発明は、請求の範囲に入るすべての構造及び方法を包含するものと解釈されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1a】可視領域で発光する放射線源及び放射線源からの励起に応答して発光する蛍光体を含む白色光照明システムであって、システムから発される光が蛍光体からの光と放射線源からの光との混合物であるシステムを構築するための一般的スキームの略図である。
【図1b】放射線源から出る光が照明システムによって発される光に実質的に寄与しないような、非可視領域で発光する放射線源を含む照明システムの略図である。
【図2】シリケートホスト格子の結晶性を示すための、式(Sr0.97Eu0.03)3SiO5:F0.18で示される例示的なオレンジ色蛍光体(共沈及びH2中1250℃で6時間の焼結によって調製)のX線回折図である。
【図3】Ba3SiO5、Sr3SiO5、(Ba0.5Sr0.5)3SiO5及び(BaSrMg)SiO5の励起スペクトル(蛍光体の発光強度を590nmの波長で記録したもの)を示し、これらの蛍光体が約280〜560nmの範囲の波長で励起されると効率的に蛍光を発することを示す図である。
【図4】従来技術の蛍光体、たとえばYAG:Ce及びTAG:Ceの発光スペクトルを、式SrSiO5、(Ba0.1Sr0.9)3SiO5及び(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3SiO5:Fでそれぞれ示される本発明の例示的な蛍光体に対して示し、これらの例示的な蛍光体が従来技術の蛍光体よりも長い発光波長及び場合によっては高い発光強度を有することを示す集約である。
【図5】M3SiO5:Eu2+(Mはこの例ではSrである)型のホスト格子中のアルカリ土類の含有の効果の一例を示し、(Sr0.97Eu0.03)ySiO5系中のSr対Siの比の関数としてのピーク発光強度のグラフである。
【図6A】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種の異なるアルカリ土類金属M及びN(この場合、MはCaであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(CaxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(図6Aは実測データを示す)。
【図6B】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種の異なるアルカリ土類金属M及びN(この場合、MはCaであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(CaxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(波長におけるピーク最大値の位置を比較しやすくするため二つの曲線の二つの強度を第三の曲線の高さに対して正規化したデータを示す)。
【図7A】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種のアルカリ金属M及びN(この場合、MはMgであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(MgxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(励起波長が403nmである)。
【図7B】一般式(M,N)3SiO5:Eu2+で示される蛍光体中の2種のアルカリ金属M及びN(この場合、MはMgであり、NはSrである)の相対量の変化がピーク発光強度及びピーク発光波長に及ぼす効果を示し、(MgxSr1-x)2.91Eu0.09SiO5系の発光スペクトルの集約である(励起波長が450nmである)。
【図8】M3SiO5系蛍光体におけるMをMgにした効果を示すための、式M3SiO5を含む組成物の発光スペクトルを示し、Mg3SiO5蛍光体はスペクトルの青色領域で発光するため、その発光特性を従来のアルミン酸バリウムマグネシウム(BAM)蛍光体の発光特性と比較するグラフである。
【図9】一般式(Sr1-xEux)3SiO5で示される一連の蛍光体におけるEuドーピング濃度の関数としてのピーク発光強度を示し、スペクトルが、最高の発光強度が約2原子%の活性化剤濃度(アルカリ土類金属に対して)で起こることを示しているグラフである。
【図10】ハロゲンを、この場合は約2〜6%の濃度で含めることによって最大ピーク発光強度を高めることができることを示し、(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F6z系中の本発明の例示的な蛍光体の発光スペクトルである。
【図11】ハロゲンドーパント(この場合はフッ素)を含有する本発明の例示的な蛍光体、すなわち式(Sr0.97Eu0.03)3SiO5F0.18で示される特定の蛍光体の発光スペクトルである。
【図12】本実施態様のオレンジ色蛍光体及び青色蛍光体を含み、オレンジ色蛍光体が式Sr3SiO5:Eu2+Fで示され、青色蛍光体が式(Sr0.5Eu0.5)MgAl10O17で示される白色光LED照明システムの発光強度を示し、この蛍光体パッケージは、395nmで発光するLEDチップによってUV励起したもの(したがって、図1Bに示す構成に相当する)を示すグラフである。
【図13】様々な方法で組み合わされ、可視青色LEDによって励起された例示的な蛍光体(したがって、図1Aの構成に相当する)の表であり、光学的結果を示し、発光スペクトルが図14及び15に示されているサンプルを特定する表である。
【図14】本オレンジ色蛍光体を図13の表によって説明した他の蛍光体と合わせて含む、450nmで励起された(図12のUV励起とは対照的)二つの異なる色のLEDの発光スペクトルの集約である。
【図15】同じく図13の表の蛍光体を組み合わせたいくつかの異なる白色LEDを450nm又は460nmで励起した場合の発光スペクトルの集約である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示される、約565nmを超えるピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されているシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項2】
式Sr3EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項3】
式(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)2.7EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項4】
式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項5】
式(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)3EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項6】
式(MgxSr1-x)yEuzSiO5
(式中、
0<x<1.0であり、
2.6≦y≦3.3であり、
y+zは3にほぼ等しい)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項7】
式(MgxSr1-x)2.9Eu0.09SiO5で示される、請求項6記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項8】
式(CaxSr1-x)yEuzSiO5
(式中、
0<x<1.0であり、
2.6≦y≦3.3であり、
y+zは3にほぼ等しい)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項9】
式(CaxSr1-x)2.9Eu0.09SiO5で示される、請求項8記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項10】
式(BaxSr1-x)yEuzSiO5
(式中、
0<x<1.0であり、
2.6≦y≦3.3であり、
y+zは3にほぼ等しい)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項11】
式(BaxSr1-x)2.9Eu0.09SiO5で示される、請求項10記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項12】
式(M1-xEux)ySiO5:H
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項13】
MがSrである、請求項12記載のシリケート系蛍光体。
【請求項14】
HがFである、請求項12記載のシリケート系蛍光体。
【請求項15】
式(M1-xEux)ySiO5H6z
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0<z≦0.1であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項16】
MがSrである、請求項15記載のシリケート系蛍光体。
【請求項17】
HがFである、請求項15記載のシリケート系蛍光体。
【請求項18】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約565nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成されたシリケート系オレンジ色蛍光体と
を含み、前記オレンジ色蛍光体が、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示されるものである白色LED。
【請求項19】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約510nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成された緑色蛍光体をさらに含む、請求項18記載の白色LED。
【請求項20】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約420〜560nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された青色蛍光体をさらに含む、請求項18記載の白色LED。
【請求項21】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された黄色蛍光体をさらに含む、請求項18記載の白色LED。
【請求項22】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約565nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成されたシリケート系オレンジ色蛍光体と
を含み、前記オレンジ色蛍光体が、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示されるものであるオレンジ色LED。
【請求項23】
式(M1-xEux)ySiO5:H
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体を含むオレンジ色LED。
【請求項24】
式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体を製造する方法であって、
ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法からなる群より選択される方法。
【請求項25】
共沈法である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記共沈法が、
a)Sr(NO3)3を水に溶解するステップ、
b)Eu2O3を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
式(M1-xEux)ySiO5H6z
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0≦z≦0.1であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体を製造する方法であって、
ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法からなる群より選択される方法。
【請求項28】
共沈法である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記共沈法が、
a)Sr(NO3)3を水に溶解するステップ、
b)Eu2O3を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+
(式中、
A1は、2+カチオンの少なくとも一つであり、
A2は、3+、4+又は5+カチオンであり、
A3は、1−、2−又は3−アニオンであり、
xは、2.5〜3.5の任意の値である)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項31】
A1が、Mg、Ca及びBaからなる群より選択される、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項32】
A2が、B、Al、Ga、C、Ge及びPからなる群より選択される、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項33】
A3が、F、Cl及びBrからなる群より選択される、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項34】
A1が、全体の電荷が約+2に平均化するような実質的に等しい数の1+及び3+カチオンの組み合わせである、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項1】
式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示される、約565nmを超えるピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されているシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項2】
式Sr3EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項3】
式(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)2.7EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項4】
式(Ba0.075Mg0.025Sr0.9)3EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項5】
式(Ba0.05Mg0.05Sr0.9)3EuzSiO5で示される、請求項1記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項6】
式(MgxSr1-x)yEuzSiO5
(式中、
0<x<1.0であり、
2.6≦y≦3.3であり、
y+zは3にほぼ等しい)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項7】
式(MgxSr1-x)2.9Eu0.09SiO5で示される、請求項6記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項8】
式(CaxSr1-x)yEuzSiO5
(式中、
0<x<1.0であり、
2.6≦y≦3.3であり、
y+zは3にほぼ等しい)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項9】
式(CaxSr1-x)2.9Eu0.09SiO5で示される、請求項8記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項10】
式(BaxSr1-x)yEuzSiO5
(式中、
0<x<1.0であり、
2.6≦y≦3.3であり、
y+zは3にほぼ等しい)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項11】
式(BaxSr1-x)2.9Eu0.09SiO5で示される、請求項10記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項12】
式(M1-xEux)ySiO5:H
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項13】
MがSrである、請求項12記載のシリケート系蛍光体。
【請求項14】
HがFである、請求項12記載のシリケート系蛍光体。
【請求項15】
式(M1-xEux)ySiO5H6z
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0<z≦0.1であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項16】
MがSrである、請求項15記載のシリケート系蛍光体。
【請求項17】
HがFである、請求項15記載のシリケート系蛍光体。
【請求項18】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約565nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成されたシリケート系オレンジ色蛍光体と
を含み、前記オレンジ色蛍光体が、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示されるものである白色LED。
【請求項19】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約510nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成された緑色蛍光体をさらに含む、請求項18記載の白色LED。
【請求項20】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約420〜560nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された青色蛍光体をさらに含む、請求項18記載の白色LED。
【請求項21】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された黄色蛍光体をさらに含む、請求項18記載の白色LED。
【請求項22】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約565nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成されたシリケート系オレンジ色蛍光体と
を含み、前記オレンジ色蛍光体が、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示されるものであるオレンジ色LED。
【請求項23】
式(M1-xEux)ySiO5:H
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体を含むオレンジ色LED。
【請求項24】
式(Sr1-xMx)yEuzSiO5
(式中、
Mは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.5であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0.001≦z≦0.5である)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体を製造する方法であって、
ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法からなる群より選択される方法。
【請求項25】
共沈法である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記共沈法が、
a)Sr(NO3)3を水に溶解するステップ、
b)Eu2O3を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
式(M1-xEux)ySiO5H6z
(式中、
Mは、Sr、Ca、Ba、Zn及びMgからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.01≦x≦0.1であり、
2.6≦y≦3.3であり、
0≦z≦0.1であり、
Hは、F、Cl及びBrからなる群より選択されるハロゲンアニオンである)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体を製造する方法であって、
ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法からなる群より選択される方法。
【請求項28】
共沈法である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記共沈法が、
a)Sr(NO3)3を水に溶解するステップ、
b)Eu2O3を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+
(式中、
A1は、2+カチオンの少なくとも一つであり、
A2は、3+、4+又は5+カチオンであり、
A3は、1−、2−又は3−アニオンであり、
xは、2.5〜3.5の任意の値である)
で示されるシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項31】
A1が、Mg、Ca及びBaからなる群より選択される、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項32】
A2が、B、Al、Ga、C、Ge及びPからなる群より選択される、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項33】
A3が、F、Cl及びBrからなる群より選択される、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【請求項34】
A1が、全体の電荷が約+2に平均化するような実質的に等しい数の1+及び3+カチオンの組み合わせである、請求項30記載のシリケート系オレンジ色蛍光体。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−131843(P2007−131843A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−289541(P2006−289541)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289541(P2006−289541)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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