説明

シリコンウェハ及びシリコンウェハの製造方法

【課題】半導体デバイスにおいて強度及び電気抵抗を所望の強度及び電気抵抗にすることができるシリコンウェハの製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンウェハ1を製造するために、中間体10に対して、非酸化性の酸素外方拡散熱処理が行われる。この酸素外方拡散熱処理は、シリコン基板11の表層から所望の量の酸素を中間体10の外方に放出するための熱処理であり、この酸素外方拡散熱処理によって、シリコン基板11の上部に酸素含有量が低い表面層3が形成される。この際、シリコン基板11に対する熱処理は、酸化膜12を介して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ、及びシリコンウェハの表層酸素濃度制御のための熱処理を行うシリコンウェハの製造方法に関し、特に、半導体デバイスにおいて強度及び電気抵抗を所望の強度及び電気抵抗にすることができる、シリコンウェハ、及びシリコンウェハの表層酸素濃度制御のための熱処理を行うシリコンウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン単結晶インゴットからウェハ加工されて形成されたシリコン基板には、空洞欠陥であるCOPが存在する。このCOPはデバイス特性・歩留を悪化させる場合があるため、このCOPを除去を目的にアニール処理がシリコン基板に対して行われてシリコンウェハが製造されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、シリコン単結晶インゴットにおけるCOPの生成を抑制して、COPの生成或いはサイズを抑制したシリコンウェハを製造していた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−98047号公報
【特許文献2】特開平8−330316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アニール処理が行われたシリコン基板は、アニール処理によってシリコン基板の表面欠陥と共に酸素が除去され、製造されるシリコンウェハの表面に残存する酸素量が低下する。特に、アルゴン雰囲気下で行われるアルゴンアニール処理は、不活性ガス雰囲気下での熱処理のため、シリコンウェハの表面残存酸素量は極端に低下し、例えば1.0×1017atoms/cm(ASTM F121-83)以下まで低下していた。このようにシリコンウェハにおいて酸素含有量が極端に低下すると、デバイス構造周辺の応力によって歪が発生する。結果として、デバイスの動作不良或いは特性不良を引き起こす場合があった。
【0006】
また、COPの生成が抑制されたシリコン単結晶インゴットから形成されたシリコンウェハに対しては、アニール処理を行う必要がなく、シリコンウェハの表面酸素含有量の低下による強度低下の問題は発生しない。このようなシリコンウェハの酸素含有量は、シリコン単結晶インゴットの酸素含有量が維持されており、通常上記シリコン単結晶インゴットの酸素含有量は4.0×1017atoms/cm(ASTM F121-83)以上である。しかしながら、シリコンウェハへの配線工程における熱処理において、酸素とシリコンとが反応し、電気的に活性なサーマルドナーであるSiOxが形成される。シリコンウェハの電気的な抵抗値は、所望の値に設定されているが、この形成されるドナーによってシリコンウェハの電気的な抵抗値は上昇する。このため、COPの生成が抑制されたシリコン単結晶インゴットから形成されたシリコンウェハから製造された半導体デバイスにおいては、電気的な抵抗値の変化によって誤作動が起こるという問題があった。近年、フラッシュメモリ等の半導体デバイスの微細化或いは高性能化に伴う配線材料の変更によって、配線工程の熱処理の低温化・長時間化がより進み、当該サーマルドナーがより発生し易い状況となりつつある。
【0007】
このように、従来、半導体デバイスの強度及び電気抵抗を所望の強度及び電気抵抗にすることはできなかった。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の目的は、半導体デバイスにおいて強度及び電気抵抗を所望の強度及び電気抵抗にすることができるシリコンウェハ及びシリコンウェハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のシリコンウェハの製造方法は、シリコンウェハの表面酸素濃度を2.0×1017〜3.5×1017atoms/cm(ASTM F121-83)にするために、熱処理時の表面酸素を外方拡散するにあたり、熱処理前にウェハ表面に酸化膜を形成することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、外方拡散熱処理完了時に、前記酸化膜厚が自然酸化膜厚(10Å程度)になるように酸化膜厚を形成する。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るシリコンウェハは、ウェハ中心部の酸素濃度は4.0×1017atoms/cm以上かつ表面酸素濃度は2.0×1017〜3.5×1017atoms/cm(ASTM F121-83)の範囲内であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記表面酸素濃度内の表面層の厚さは少なくとも3μmある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシリコンウェハの製造方法によれば、シリコン基板の表面に酸化膜を形成し、シリコン基板の表面酸素のシリコン基板外方への拡散を行うにあたり、この酸化膜を介して熱処理を行うので、熱処理によってシリコン基板から除去される酸素量を調整することができ、製造されるシリコンウェハの表面層の残存酸素含有量を所望の値に調整することができる。従って、半導体デバイスにおける強度及び電気抵抗を所望の強度及び電気抵抗にすることができる。
【0014】
また、本発明に係るシリコンウェハの製造方法によれば、シリコン基板の表面層の酸素濃度調整のための表層酸素の外方拡散のための熱処理において、熱処理プロセス初期に表層酸化膜を形成し、且つ熱処理プロセス終了時に、前記酸化膜の厚さが自然酸化膜厚(10Å程度)になっており、酸化膜除去のための特別の後処理を不要にすることができる。
【0015】
また、本発明に係るシリコンウェハによれば、表面層が所定の酸素濃度を有するので、半導体デバイスにおけるその配線工程での熱処理による電気的抵抗のズレを許容範囲に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るシリコンウェハの概略構成を示す図である。
【図2】図1のシリコンウェハを製造するための中間体の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るシリコンウェハ1の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、シリコンウェハ1は、基部2と、基部2上に形成されたシリコンウェハ1の表面層3とを備える。シリコンウェハ1は、シリコン単結晶インゴットからウェハ加工されたシリコン基板に対して、後述する表面層酸素を外方拡散するためのシリコンウェハの熱処理を行って、所定の酸素濃度が得られたシリコンウェハである。
【0020】
表面層3は、シリコンウェハ1が加工されて製造される半導体デバイスにおける強度及び電気抵抗を所望の値にするために、所定の酸素濃度を有する。この所定の酸素濃度は、例えば、2.0×1017〜3.5×1017atoms/cm(ASTM F121-83)の範囲内である。
【0021】
基部2は、上記シリコン単結晶インゴットと同じ酸素量を有しており、例えば、基部2の有する酸素濃度は、4.0×1017atoms/cm以上である。
【0022】
シリコンウェハ1において、基部1全体の厚さw1は、例えば775±25μm(ウェハ直径300mmの場合)であり、表面層3の厚さw3は、少なくとも3μm程度は確保されていなければならない。
【0023】
結晶育成条件を調整することでウェハ全体の酸素濃度を当該2.0×1017〜3.5×1017atoms/cm(ASTM F121-83)の範囲内に制御するような手法の報告も過去あるが、この場合は基板2(厚さ:W2)の構造材料としての機能が不足し、つまり酸素含有量が少なすぎるためデバイス前工程での熱ストレス等でのウェハ変形が問題となる可能性が高い。
【0024】
上述のように、本発明の実施の形態に係るシリコンウェハ1によれば、表面層3が所定の酸素濃度を有するので、半導体デバイスにおける強度及び電気抵抗を所望の強度及び電気抵抗にすることができるとともに、基板2はデバイス前工程の熱ストレス等に耐えうる酸素を有する。
【0025】
また、表面層3は、2.0×1017〜3.5×1017atoms/cmの範囲内のシリコン単結晶インゴットよりも低い酸素濃度を有するので、半導体デバイス製造のためのシリコンウェハ1の製造処理における熱処理においても、従来のシリコンウェハの場合のように電気的に活性であるSiOxがデバイス特性に許容範囲外の影響を与えるほど形成されることはない。このため、シリコンウェハ1から製造される半導体デバイスの電気抵抗の増加を防止でき、半導体デバイスにおける配線工程後の電気抵抗値を許容範囲内に維持できるようになる。加えて、半導体デバイスの強度を所望の強度にすることができる。
【0026】
次いで、図1のシリコンウェハ1を製造するための中間体について説明する。
【0027】
図2は、図1のシリコンウェハ1を製造するための中間体10の概略構成を示す図である。
【0028】
図2に示すように、シリコンウェハ1を製造するための中間体10は、シリコン基板11と、シリコン基板11の表面に形成された酸化膜12とを備える。
【0029】
シリコン基板11は、シリコン単結晶インゴットからウェハ加工されて形成される。酸化膜12は、上記シリコン単結晶インゴットからウェハ加工されて形成されたシリコン基板11の表面に形成される。このため、シリコン基板11には、4.0×1017atoms/cm以上の酸素が含まれている。酸化膜12は、熱処理完了までの間にシリコン基板11の表層酸素の外方拡散を所望のように抑制できる程度の厚さが必要であり、後続の熱処理条件に応じて調整される。
【0030】
図1のシリコンウェハ1を製造するために、中間体10に対して、非酸化性の酸素外方拡散熱処理が行われる。この酸素外方拡散熱処理は、シリコン基板11の表層から所望の量の酸素を中間体10の外方に放出するための熱処理であり、この酸素外方拡散熱処理によって、シリコン基板11の上部に酸素含有量が低い表面層が形成される。この表面層は、図1のシリコンウェハ1の表面層3に相当する。また、この際、シリコン基板11に対する熱処理は、酸化膜12を介して行われる。このため、酸素外方拡散熱処理としてのアニールによってシリコン基板11の表面から除去される酸素量を調整することができ、シリコンウェハ1の表面層3の残存酸素含有量を所定の酸素濃度となるように調整することができる。そして、酸化膜12は除去されてシリコンウェハ1が生成される。
【0031】
中間体10において、酸化膜12の厚さは熱処理完了までの間にシリコン基板11からの表層酸素の外方拡散を所定の量に抑制できる程度必要であり、理想的には酸素外方拡散熱処理ステップ完了時には酸化膜12の厚さが自然酸化膜厚程度まで消滅しており特別の後処理を必要としないことが望ましい。
【0032】
例えばその厚さは、酸素外方拡散熱処理として最高温度1125℃程度の非酸化性熱処理を行った場合10Åである。この酸化膜は当該熱処理時の処理温度昇温時のガス中酸素分圧を調整することで成長させてもよい。この酸化膜は、表面酸素の外方拡散量を抑制するとともに、非酸化性雰囲気中でのウェハ面の荒れ防止にも役立つ。
【符号の説明】
【0033】
1 シリコンウェハ
2 基部
3 表面層
10 中間体
11 シリコン基板
12 酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハの表面酸素濃度を2.0×1017〜3.5×1017atoms/cm(ASTM F121-83)にするために、熱処理時の表面酸素を外方拡散するにあたり、熱処理前にウェハ表面に酸化膜を形成することを特徴とするシリコンウェハの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、外方拡散熱処理完了時に、前記酸化膜厚が自然酸化膜厚(10Å程度)になるように酸化膜厚を形成することを特徴とするシリコンウェハの製造方法。
【請求項3】
ウェハ中心部の酸素濃度は4.0×1017atoms/cm以上かつ表面酸素濃度は2.0×1017〜3.5×1017atoms/cm(ASTM F121-83)の範囲内であることを特徴とするシリコンウェハ。
【請求項4】
前記表面酸素濃度内の表面層の厚さは少なくとも3μmあることを特徴とする請求項3記載のシリコンウェハ。

【図1】
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【図2】
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