説明

シリコンウェーハの工程計画立案システム、工程計画立案方法及びプログラム

【課題】シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案システム、工程計画立案方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】工程計画立案装置1は、プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定する品質分布推定手段132と、生産装置の組合せによって得られる品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定する生産装置組合せ判定手段134と、判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示する工程計画決定手段135とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにてプロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して適切な工程計画を提示する工程計画立案システム、工程計画立案方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からのシリコンウェーハの工程計画は、各プロセスにおいて製品歩留りがよいと判断される生産装置から優先的に使用するように策定されてきた。即ち、個々のプロセスにおける品質の良否で工程計画が立てられていた。
【0003】
例えば、従来からのシリコンウェーハの工程計画を行う工程計画立案システム例を図10に示す。図10に示す工程計画立案システム200は、工程計画立案装置101と、複数のプロセスA,B,Cにおいてそれぞれ1つ以上の生産装置3−n,4−n,5−nとを備える。尚、nは、ゼロを除く自然数であり、各プロセスA,B,Cにおいて共通に“n”を用いるが、各プロセスA,B,Cで同数にすることを意味するものではない。例えば、プロセスA(例えば、粗研磨プロセス)では、生産装置3−1(a1号機)、生産装置3−2(a2号機)、生産装置3−3(a3号機)、・・・、生産装置3−n(an号機)のいずれかが用いられ、他のプロセスも同様に、プロセスB(例えば、鏡面研磨プロセス)では、生産装置4−n(bn号機)が用いられ、プロセスC(例えば、最終洗浄プロセス)では、生産装置5−n(cn号機)が用いられる。
【0004】
図10に示す工程計画立案システム200では、工程計画立案装置101に、生産計画入力情報として月当たりの生産量の情報が設定されると、或る原料(加工前のシリコンウェーハ)について各プロセスA,B,Cを経て製品(加工後のシリコンウェーハ)を得るために、各プロセスにおける1つ以上の生産装置3−n,4−n,5−nのうち、各プロセスにおいて製品歩留りがよいと判断される生産装置から優先的に使用するように、工程計画A,B,Cを立案する。
【0005】
一方、シリコンウェーハの製造に関するものではないが、従来技術の工程計画立案装置において、製品である印刷物の生産の際に、その品目の受注確定後、製版、印刷、加工に関する生産計画を効率よく立案する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この印刷物の生産の生産計画は、受注品目について一定の品質を維持しつつ納期までに仕上げる観点から、速やかに立案され、適切な内容で各工程部署に伝達される。
【0006】
特に、特許文献1における工程計画立案装置では、製品である印刷物の性質上、写真の有無や顧客要望の違いにより印刷物に関して各工程の要/不要データを入力し、各工程における複数の装置について、当該要/不要のデータに基づいて最適な装置の組合せを決定し、印刷物の生産計画を発行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−300570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来からのシリコンウェーハの工程計画を行うシステムでは、個々のプロセスにおける品質の良否で工程計画が立てられていたが、各プロセスを経て得られる生産装置の組合せによる品質結果や歩留り結果を考慮していない。即ち、シリコンウェーハの製造に関わる各工程における生産装置の組合せによって各プロセスにおける生産装置の品質結果から推測される品質結果とは異なる品質結果となる場合があるが、かかる場合について従来技術では何ら考慮していない。さらに云えば、各プロセスにおける生産装置のうち、品質結果が生産装置同士を組み合わせて工程計画を立てたとしても、トータル的な品質結果が良いとは限らなかった。
【0009】
また、特許文献1における工程計画立案装置をシリコンウェーハにおける複数のプロセスにてプロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して転用したとしても、顧客要望に応じた一定の品質で製造するための工程計画を提示することが可能であるが、シリコンウェーハにおける複数のプロセスを経て得られる品質の違いを考慮して、高品質化を図る工程計画の立案を効率よく行うことができない。即ち、シリコンウェーハの製造に関わる各工程における生産装置の組合せによって異なる品質となることを考慮していないために、高効率で高品質化を図る観点からは更なる工夫が必要である。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて為されたものであり、シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにてプロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して適切な工程計画を提示する工程計画立案システム、工程計画立案方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、シリコンウェーハの品質実績及び工程経路(各プロセスで使用された生産装置の組合せからなる経路情報)を蓄積したデータベースを利用して、複数プロセス(例えば、研磨や洗浄などのプロセス)にまたがる生産装置の組合せ(以下、「生産装置組合せ」と称する)により得られたシリコンウェーハの品質を統計学的に推定し、シリコンウェーハの品質規格が与えられている場合に歩留まりを推定し、好適には複数プロセスを経て得られる品質及び/又は歩留りについて高い値となる順から順序付け(ランキング)を行い、ランキングされた降順に、製造するシリコンウェーハに要求される規格に該当する高品質の生産装置組合せを選定して、各工程における工程計画を提示する。
【0012】
尚、「生産装置組合せ」とは、製造ライン上に配置された上流から下流における工程のうち、或る工程における生産装置群と他の工程における生産装置群の組合せを云う。また、「適切な生産装置組合せ」とは、本発明を適用する前の品質以上となる製品(シリコンウェーハ)を生産できる複数プロセスにまたがる生産装置群の組合せ、及び/又は、本発明を適用する前の歩留り以上となる製品(シリコンウェーハ)を生産できる複数プロセスにまたがる生産装置群の組合せを云う。従って、工程計画に適切な生産装置組合せを考慮するためには、各工程における生産装置の生産能力(生産速度)を考慮するのが好適である。
【0013】
即ち、本発明の工程計画立案システムは、シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案装置を備える工程計画立案装置システムであって、プロセス別に選択可能な複数の生産装置と、プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースとを備え、前記工程計画立案装置は、前記データベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定する品質分布推定手段と、前記生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定する生産装置組合せ判定手段と、判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示する工程計画決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、生産計画を設計する際に、生産効率、リードタイム等に加えて、製品(シリコンウェーハ)の高品質化を考慮して自動的に立案することができるため、現状の製造ラインで、より優れた品質の製品(シリコンウェーハ)を生産できるようになる。
【0015】
また、本発明の工程計画立案システムにおいて、前記生産装置組合せ判定手段は、前記品質分布推定手段によって推定した品質分布に対して、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす歩留りを推定し、所定の歩留りを満たし、且つ前記品質規格を満たす当該生産装置の組合せ毎の品質分布を有する生産装置の組合せを判定することを特徴とする。
【0016】
これにより、歩留りと高品質化を関連付けて製品(シリコンウェーハ)を生産できるようになるため、生産効率が向上し、リードタイムや製品の高品質化に加えて、低コスト化にも寄与するようになる。
【0017】
また、本発明の工程計画立案システムにおいて、前記生産装置組合せ判定手段は、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの各品質分布について品質及び/又は歩留りの高い品質分布を有する生産装置の組合せから降順に、前記品質規格を満たす生産装置の組合せを判定することを特徴とする。
【0018】
これにより、現状の製造ラインで、生産装置の組合せを高品質が得られる順に決定することができ、安定して、より優れた品質及び/又は歩留りの製品(シリコンウェーハ)を生産できるようになる。
【0019】
また、本発明の工程計画立案システムにおいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定する際に、予め規定された各生産装置の生産能力の情報から、製造するシリコンウェーハに対して要求される生産量を満たすのに実施できるか否かを判別して、前記生産装置の組合せを判定することを特徴とする。
【0020】
これにより、生産計画を設計する際に、製造するシリコンウェーハに対して要求される生産量を満たすのに実施できるか否かを判別してから生産装置の組合せを判定するため、より正確な生産計画を立案することができるようになる。
【0021】
また、本発明の工程計画立案システムにおいて、前記生産計画に基づいて製造されたシリコンウェーハについて、生産装置の組合せごとの品質及び歩留りの情報を監視する品質監視手段と、監視する生産装置の組合せについて所定の歩留りを満たしていないと判断する場合に、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を改めて決定し、生産計画を更新する更新型工程計画決定手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
これにより、生産計画を設計した後においても、生産効率、リードタイム等に加えて、製品の高品質化を考慮して自動的に生産計画を更新することができるため、現状の製造ラインで、より優れた品質の製品(シリコンウェーハ)を生産できるようになる。
【0023】
また、本発明の工程計画立案方法は、シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案方法であって、プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定するステップと、前記生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定するステップと、判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明のプログラムは、シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案装置として構成するコンピュータに、プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定するステップと、前記生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定するステップと、判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示するステップと、を実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、生産計画を設計する際に、生産効率、リードタイム等に加えて、製品の高品質化を考慮して自動的に立案することができるため、現状の製造ラインで、より優れた品質の製品(シリコンウェーハ)を生産できるようになる。例えば、シリコンウェーハの平坦度を品質の対象とする場合、全てのプロセス終了時に所望の平坦度が実現できていればよいことから、この場合、粗研磨プロセスでウェーハ中心部が平坦となり、鏡面研磨プロセスでウェーハ端部が平坦となり、プロセス終了時にウェーハ全面で平坦となるという極端な場合でも、各工程における生産装置の組合せを考慮することで最終的な高品質を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による実施例1の工程計画立案システムの概略図である。
【図2】本発明による実施例1の工程計画立案システムにおける工程計画立案装置のブロック図である。
【図3】本発明による実施例1の工程計画立案システムにおける工程計画立案装置の動作フロー図である。
【図4】本発明による実施例1の工程計画立案システムにおけるデータベース内の品質情報の一例を示す図である。
【図5】本発明による実施例1の工程計画立案システムにおける品質分布の一例を示す図である。
【図6】本発明による実施例1の工程計画立案システムにおける歩留り算出の一例を示す図である。
【図7】本発明による実施例1の工程計画立案システムにおける生産装置組合せの一例を示す図である。
【図8】本発明による実施例2の工程計画立案システムにおける工程計画立案装置のブロック図である。
【図9】本発明による実施例2の工程計画立案システムにおける工程計画立案装置の動作フロー図である。
【図10】従来の工程計画立案システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による一態様の工程計画立案システム10は、シリコンウェーハの品質実績及び工程経路(各プロセスで使用された生産装置の組合せからなる経路情報)を蓄積したデータベースを利用して、複数プロセス(例えば、研磨や洗浄などのプロセス)にまたがる生産装置組合せにより得られたシリコンウェーハの品質を統計学的に推定し、シリコンウェーハの品質規格が与えられている場合に歩留まりを推定し、好適には複数プロセスを経て得られる品質及び/又は歩留りについて高い値となる順から順序付け(ランキング)を行い、ランキングされた降順に、製造するシリコンウェーハに要求される規格に該当する高品質の生産装置組合せを選定して、各工程における工程計画を提示するシステムである。
【0028】
まず、本発明による実施例1の工程計画立案システムを説明する。
【実施例1】
【0029】
図1に、シリコンウェーハの製造に関する実施例1の工程計画立案システム10の概略図を示す。実施例1の工程計画立案システム10は、工程計画立案装置1と、データベース2と、複数プロセスにおいてそれぞれ1つ以上の生産装置3−n,4−n,5−nとを備える。尚、nは、ゼロを除く自然数であり、各プロセスA,B,Cにおいて共通に“n”を用いるが、各プロセスA,B,Cで同数にすることを意味するものではない。また、本発明に係る工程計画を立案するためのプロセスは、2以上のプロセスであればよい。さらに、生産装置組合せは、複数の工程経路、即ち複数の生産装置の組合せがあることを想定する。
【0030】
図1に示す工程計画立案システム10では、生産計画から設定された工程計画に対して、シリコンウェーハの最終品質(例えば、プロセスA,B,Cを経た品質)と、各シリコンウェーハが通過してきた各プロセスの生産装置ごとの組合せとに基づいて、製品(シリコンウェーハ)の品質及び/又は歩留りが向上するように、適切な「生産装置組合せ」を決定し、さらには生産速度を落とすことがないように、各工程における生産装置毎の生産能力に応じて工程計画を変更可能にする。
【0031】
「生産計画」は、主な受注製品である品種、数量、納期を基に生産すべき製品(シリコンウェーハ)の各工程について、開始時刻、終了時刻、及び使用する資源を決定して列挙したものである。この生産計画を基に設定された工程計画とは、製品の納期に合わせて、品種及び数量について、各品種のシリコンウェーハを各プロセスにおけるどの生産装置でどのように加工するかという計画を列挙したものである。シリコンウェーハの最終品質(例えば、プロセスA,B,Cを経た品質)とは、例えば最終工程終了時にて測定される各シリコンウェーハの平坦度、反り、シリコンウェーハ表面の付着物等の品質実績を意味するものとして例示する。製品(シリコンウェーハ)の品質を評価し、所定の規格内の品質であれば出荷製品として判断される。従って、品質は、所定の基準に従って数値化することができる。シリコンウェーハの最終品質及び各シリコンウェーハが通過してきた各プロセスの生産装置ごとの組合せは、全てデータベース2に蓄積される。また、データベース2内の情報は、定期的に更新することができる。データベース2は、各プロセスにおける生産装置毎の品質情報をも保持することができるが、本発明に係る品質情報は、所定数のプロセスを経て得られる品質情報を扱うことに留意する。
【0032】
以下に説明する実施例1の工程計画立案システム10において、「適切な生産装置組合せ」として、本発明を適用する前の品質以上となる製品(シリコンウェーハ)を生産できる複数プロセスにまたがる生産装置群の組合せであり、且つ本発明を適用する前の歩留り以上となる製品(シリコンウェーハ)を生産できる複数プロセスにまたがる生産装置群の組合せを選出する例を説明するが、本発明は、これに限定するものではない。即ち、「適切な生産装置組合せ」として、本発明を適用する前の品質以上となる製品(シリコンウェーハ)を生産できる複数プロセスにまたがる生産装置群の組合せとするか、又は本発明を適用する前の歩留り以上となる製品(シリコンウェーハ)を生産できる複数プロセスにまたがる生産装置群の組合せを選出するように構成することもできる。
【0033】
図2に、実施例1の工程計画立案装置1のブロック図を示す。また、図3に、実施例1の工程計画立案装置1の動作フローを示す。工程計画立案装置1は、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する装置であり、条件情報入力部11と、品質情報入力部12と、制御部13と、記憶部14と、工程計画出力部15とを備える。制御部13は、工程計画推定条件設定部131と、生産装置組合せ別品質分布推定部132と、歩留り推定部133と、生産装置組合せ判定部134と、工程計画決定部135とを有する。ここで、工程計画立案装置1は、コンピュータを用いて構成することができる。例えば、条件情報入力部11は、キーボードやマウスなどのマン−マシンインターフェースとすることができ、制御部13は、コンピュータ内部の中央演算処理装置(CPU)によって実現することができる。記憶部14は、コンピュータ内部(又は外部)のハードディスクやROM又はRAMを用いて実現することができ、制御部13における演算に必要なデータ及びプログラムを格納することができる。品質情報入力部12は、データベース2と通信して情報を入出力するための既知の通信インターフェースを用いて実現することができる。工程計画出力部15は、外部の装置(例えば、プリンタ、モニタ、又は他のコンピュータ)と通信して情報を出力するための既知の通信インターフェースを用いて実現することができる。
【0034】
図2及び図3を参照して説明するに、工程計画推定条件設定部131は、条件情報入力部11を介して製品に要求される品質規格情報及び生産量情報と各プロセスにおける生産装置3−n,4−n,5−nの生産能力情報(生産速度情報)を生産計画入力情報として入力し、後述する歩留り推定部133及び生産装置組合せ判定部134における演算条件として設定する(ステップS1)。ここで、生産量とは、例えば月当たりの生産量とすることができる。
【0035】
生産装置組合せ別品質分布推定部132は、品質情報入力部12を介してデータベース2から各プロセスA,B,C別に選択可能な複数の生産装置3−n,4−n,5−nを経て得られる工程経路(生産装置3−n,4−n,5−nの組合せ)ごとの品質情報(過去の実績データ)を取得し、全ての生産装置組合せ(生産装置3−n,4−n,5−nの組合せ)における品質の平均値と標準偏差を算出し、例えば正規分布を仮定して品質分布を統計学的に推定し、全ての生産装置組合せにおける品質分布を生成して歩留り推定部133に送出する(ステップS2)。
【0036】
例えば、プロセスA、プロセスB、及びプロセスCが、各々2種類の生産装置を有する場合の全組合せの例として、データベース2に格納する情報(品質の平均値と標準偏差)の例を図4に示す。品質の平均値(α1〜α8)と標準偏差(β1〜β8)は、それぞれ生産装置組合せごとに異なる値を持つことがある。尚、データベース2内の情報は、操業実績から、例えば1日毎に更新する。また、図4に示す品質の平均値と標準偏差から、図5に示すように、例えば正規分布を仮定して品質分布を推定することができる。
【0037】
歩留り推定部133は、工程計画推定条件設定部131によって設定された品質規格情報に基づいて、生産装置組合せ別品質分布推定部132から得られる全ての生産装置組合せにおける品質分布から、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす歩留りを推定し、生産装置組合せ判定部134に送出する(ステップS3)。
【0038】
例えば、図5に示す品質分布から、品質規格を与えることで、図6に示すように、歩留りを算出することができる。このように、過去の実績データを基に、全ての生産装置組合せにおける品質の平均値と標準偏差を算出し、例えば正規分布を仮定して品質分布を推定し、与えられた品質規格に基づいて、推定した品質分布から歩留りを推定することで、所定の歩留りを満たし、且つ製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置組合せを予測することができるようになる。
【0039】
生産装置組合せ判定部134は、歩留り推定部133から得られる全ての生産装置組合せにおける歩留り推定値の情報から、歩留りとして高い生産能力順に(歩留り推定値として降順に)順序付けを行って全ての生産装置組合せの順序を並び替える(ステップS4)。
さらに、生産装置組合せ判定部134は、工程計画推定条件設定部131によって設定された生産量情報及び生産能力情報に基づいて、高い生産能力順に並び替えられた生産装置組合せについて降順に、予め規定された各生産装置の生産能力の情報から、製造するシリコンウェーハに対して要求される生産量を満たすのに実施できるか否かを判別し、要求される生産量を満たすのに実施可能な生産装置組合せを高い生産能力順に選定して、工程計画決定部135に送出する(ステップS5)。
【0040】
ここで、生産装置組合せ判定部134は、品質として高い値の順に(高品質を表す値として降順に)順序付けを行って全ての生産装置組合せの順序を並び替えるように構成することもできる。従って、所定の歩留りを満たし、且つ製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす当該生産装置の組合せ毎の品質分布から、品質の高い順から選定する場合にはより高品質の製品を提供できるようになり、歩留りの高い順から選定する場合にはより低価格の製品を提供できるようになる。品質及び歩留りの双方を考慮して順序付けを行う場合には、品質及び歩留りの各々に対して優先度を設けるのが好適である。従って、生産装置組合せ判定部134は、工程計画推定条件設定部131によって設定された生産量情報及び生産能力情報に基づいて、高い品質及び/又は歩留りの高い値となる順に並び替えられた生産装置組合せについて降順に、予め規定された各生産装置の生産能力の情報から、製造するシリコンウェーハに対して要求される生産量を満たすのに実施できるか否かを判別し、要求される生産量を満たすのに実施可能な生産装置組合せを高い生産能力順に選定して、工程計画決定部135に送出するように構成することができる。
【0041】
工程計画決定部135は、工程計画決定部135によって決定された生産装置組合せに基づいて、各プロセスA,B,Cにおける工程計画(選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を規定する工程計画A,B,C)を決定し(ステップS6)、生産計画として工程計画出力部15を介して外部に送出する(ステップS7)。従って、工程計画A,B,Cは、それぞれ「生産計画」として規定される。
【0042】
これにより、最適な生産装置組合せに基づく品種及び数量についての工程ごとの工程計画を列挙した生産計画を決定することができる。
【0043】
尚、適切な生産装置組合せは、単独プロセス内の生産装置の品質の良否だけでなく、複数プロセスにまたがる生産装置組合せによって最終品質が変化するため、必ずしも単独プロセス内の生産装置のうち品質が最も優れた生産装置を選定したものが高品質の製品になるとは限らないことに留意する。
【0044】
図7に、鏡面研磨プロセスと最終洗浄プロセスを経て得られる全ての生産装置組合せにおける品質結果の例を示す。図7に示す品質を表す数値は、各工程経路別のシリコンウェーハにおけるLPD(Light Point Defect:シリコンウェーハ表面上の欠陥)の個数についての平均値(以下、「LPD値」と称する)を示している。従って、この品質を表すLPD値が低いほど高品質となる。図7から分かるように、鏡面研磨プロセス(プロセスb)における生産装置(b1〜b3号機)ではb1号機が最も低い平均LPD値を有し、最終研磨プロセス(プロセスc)における生産装置(c1〜c6号機)ではc2号機及びc5号機が最も低いLPD値を有することが示されているが、最も低い平均LPD値を示す生産装置組合せは、鏡面研磨プロセスにおけるb3号機と最終研磨プロセスにおけるc5号機である。つまり、各プロセスで品質評価を収集した結果と、各プロセスを経て得られる最終品質としての結果とを比較した場合も、各プロセスで最高品質となる生産装置を選定して組合せたものと、各プロセスを経て得られる最高品質となる生産装置組合せとは必ずしも一致しない。従って、生産装置組合せによる品質評価で各プロセスにおける生産装置を選定して工程計画を立案することが、各プロセス内で高品質の生産装置を選定することよりも品質が向上し、或いは歩留りが向上することになる。
【0045】
実施例1の工程計画立案システム10によれば、生産計画を設計する際に、生産効率、リードタイム等に加えて、製品の高品質化を考慮して自動的に立案することができ、現状の製造ラインで、より優れた品質及び/又は歩留りの製品(シリコンウェーハ)を生産できるようになる。
【0046】
次に、本発明による実施例2の工程計画立案システムを説明する。
【実施例2】
【0047】
図8に、実施例2の工程計画立案装置1のブロック図を示す。また、図9に、実施例2の工程計画立案装置1の動作フローを示す。実施例1と同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。実施例2の工程計画立案システム10の概略図は図1と同様であるが、実施例2の工程計画立案装置1は、実施例1と比較して、品質監視部136をさらに備え、工程計画決定部135の代わりに、更新型工程計画決定部135bを備える点で相違する。従って、実施例2の工程計画立案装置1は、実施例1の工程計画立案装置1の構成及びその利点を全て包含するものであり、相違する構成要素について説明する。
【0048】
品質監視部136は、実施例1と同様に決定した「生産装置組合せ」からなる生産計画に基づいて製造された製品の品質及び歩留りを継続して監視する(ステップS11)。より具体的には、品質監視部136は、データベース2から得られる品質情報に変化が生じているか否か、或いは又、生産装置組合せ別品質分布推定部132によって生成される品質分布に変化が生じているか否かを監視することができる。尚、品質情報の変化は、歩留りも変化しうる。例えば、品質監視部136は、監視する生産装置の組合せについて、所定の歩留りを満たし、且つ製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たしているか否かを監視する。
【0049】
品質監視部136は、所定の歩留りを満たし、且つ製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たしていると判断する場合(特に、歩留りが悪化していないと判断する場合)、継続して監視する。一方、品質監視部136は、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たしているが、所定の歩留りを満たしていないと判断する場合、ステップS13に進む(ステップS12)。
【0050】
ステップS13〜S16は、実施例1におけるステップS3〜S6と同様に、歩留り推定値から、生産能力を考慮した生産装置組合せを決定する。
【0051】
ステップS17にて、更新型工程計画決定部135bは、新たに決定した生産装置組合せに基づいて、各プロセスA,B,Cにおける工程計画を決定し、工程計画出力部15を介して外部に送出する。即ち、更新型工程計画決定部135bは、改めて判定される生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を更新する。
【0052】
これにより、最適な生産装置組合せに基づく品種及び数量についての工程ごとの工程計画を列挙した生産計画を決定することができるとともに、自動的に更新した生産計画を出力することができる(ステップS18)。特に、各プロセスにおける製造ラインの切替え可能な仕組みが設けられている場合には、製造ラインの自動切換えも可能となる。
【0053】
さらに、本発明の一態様として、各実施例の工程計画立案装置1を構成するコンピュータに工程計画立案装置1の各機能を実行させるためのプログラムを、記憶部14に格納することができる。このコンピュータ内のCPUによって、各処理内容を実行するための処理内容を記述した前記プログラムを、適宜、記憶部14から読み込んで各ステップを実行することができる。ここで、各ステップをハードウェアの一部で実現してもよい。
【0054】
また、この処理内容を記述したプログラムを、例えばDVD又はCD−ROMなどの可搬型記録媒体の販売、譲渡、貸与等により流通させることができるほか、そのようなプログラムを、例えばネットワーク上にあるサーバの記憶部に記憶しておき、ネットワークを介してサーバから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、流通させることができる。
【0055】
また、そのようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶部14に記憶することができる。また、このプログラムの別の実施態様として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。
【0056】
以上、具体例を挙げて本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明の特許請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であることは当業者に明らかである。例えば、プロセス例として研磨や洗浄を例として説明したが、複数の生産装置を有するプロセスを経るものであれば如何なるプロセスにも適用することができる。従って、本発明は上記の実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、最適な生産装置組合せに基づく品種及び数量についての工程ごとの工程計画を列挙した生産計画を決定することができるので、シリコンウェーハの製造に関する用途に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 工程計画立案装置
2 データベース
3−1,3−2,3−3,3−n プロセスAにおける生産装置
4−1,4−2,4−3,4−n プロセスBにおける生産装置
5−1,5−2,5−3,5−n プロセスCにおける生産装置
10 工程計画立案システム
11 条件情報入力部
12 品質情報入力部
13 制御部
14 記憶部
15 工程計画出力部
131 工程計画推定条件設定部
132 生産装置組合せ別品質分布推定部
133 歩留り推定部
134 生産装置組合せ判定部
135 工程計画決定部
135b 更新型工程計画決定部
136 品質監視部
200 工程計画立案システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案装置を備える工程計画立案装置システムであって、
プロセス別に選択可能な複数の生産装置と、
プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースとを備え、
前記工程計画立案装置は、
前記データベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定する品質分布推定手段と、
前記生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定する生産装置組合せ判定手段と、
判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示する工程計画決定手段と、
を備えることを特徴とする工程計画立案システム。
【請求項2】
前記生産装置組合せ判定手段は、
前記品質分布推定手段によって推定した品質分布に対して、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす歩留りを推定し、
所定の歩留りを満たし、且つ前記品質規格を満たす当該生産装置の組合せ毎の品質分布を有する生産装置の組合せを判定することを特徴とする、請求項1に記載の工程計画立案システム。
【請求項3】
前記生産装置組合せ判定手段は、
生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの各品質分布について品質及び/又は歩留りの高い品質分布を有する生産装置の組合せから降順に、前記品質規格を満たす生産装置の組合せを判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の工程計画立案システム。
【請求項4】
前記生産装置組合せ判定手段は、
製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定する際に、予め規定された各生産装置の生産能力の情報から、製造するシリコンウェーハに対して要求される生産量を満たすのに実施できるか否かを判別して、前記生産装置の組合せを判定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の工程計画立案システム。
【請求項5】
前記工程計画立案装置は、
前記生産計画に基づいて製造されたシリコンウェーハについて、生産装置の組合せごとの品質及び歩留りの情報を監視する品質監視手段と、
監視する生産装置の組合せについて所定の歩留りを満たしていないと判断する場合に、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を改めて決定し、生産計画を更新する更新型工程計画決定手段と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の工程計画立案システム。
【請求項6】
シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案方法であって、
プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定するステップと、
前記生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定するステップと、
判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示するステップと、
を含むことを特徴とする工程計画立案方法。
【請求項7】
シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案装置として構成するコンピュータに、
プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定するステップと、
前記生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定するステップと、
判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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