説明

シリコンウエハ中の金属汚染低減のための方法

【課題】表面および内側部分を有しているシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれらの組み合わせの中から選ばれる汚染物質を除去するための方法である。
【解決手段】この方法は、酸化開始温度またはそれ以上の温度から制御された雰囲気中でシリコンウエハを冷却すること、ならびに前記酸化開始温度にて酸素含有雰囲気流を開始してシリコンウエハ表面の周囲に酸化的雰囲気を形成し、シリコンウエハ表面に酸化物層を生じさせ、および前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の境界に歪み層を生じさせることを含んでなる。ウエハの冷却も、シリコンウエハ内側部分から歪み層への汚染物質の原子を拡散させるように制御される。シリコンウエハは、それから清浄化されて酸化物層および歪み層が除去され、それによって歪み層へ拡散した汚染物質が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電子部品の製造に用いられる半導体材料基板、特にシリコンウエハの製造に関する。本発明は、特に、1又はそれ以上のシリコンウエハを熱処理またはアニーリングして、ウエハ内部またはバルクから銅などの金属汚染物質の濃度を低減させる方法に関する。さらに、本発明の方法は、1又はそれ以上のシリコンウエハのバルク内および表面の凝集空孔欠陥の寸法または濃度を減少させるような様式で実施することができる。
【背景技術】
【0002】
シリコンデバイスの性能は、金属汚染物質によって低下する。銅、鉄およびニッケルを含む遷移金属は、集積回路(integrated circuit)の製造条件に伴う通常の熱のサイクルの間に、溶解しおよび拡散し得る。統合された集積回路の製造に伴う温度から冷却する間、銅およびその他の金属は、ウエハの表面で、境界で、欠陥部位でおよび例えばホウ素によってドープされた領域(例えば、P型のウエハもしくは領域)で、析出したりもしくは濃縮されたりし得る。これらの析出物は、一般に、汚染金属とシリコンとの反応生成物であると考えられている。銅の場合には、それらはケイ化銅析出物であると考えられる。析出物は、転位およびその他の欠陥の生成を結果としてもたらすことがしばしばある。析出物ならびにそれらに伴う転位および欠陥は、ウエハのデバイス製造領域に存在する場合、そのウエハから製造される集積回路を損なうことがあり得る。さらに、通常のエッチング処理およびブライト・ライト検査(bright light inspection)に付された場合に、ウエハの表面の上のヘイズとして現れる欠陥をその析出物が生じるため、ケイ化銅析出物はヘイズ欠陥(haze defect)と称されるものを生成し得る。これらの問題のため、集積回路製造業者は一般に、この技術分野において標準的な方法によって測定して、シリコンウエハの表面における銅濃度は、1×1010原子/cm〜1×1011原子/cmを越えないことを要求している。さらに、無作為なデバイスの故障の大部分のものは、ケイ化銅析出物に起因するとすることができるので、この要件が、5×10原子/cmの値、1×10原子/cmまたはそれ以下の値に低下し得ることは、予測できる。
【0003】
単結晶シリコンウエハは、一般に、チョクラルスキー法またはフローティングゾーン法によって形成された単結晶のシリコンインゴットの成長により開始させる方法によって製造される。一般に、結晶インゴットはワイヤソー(wire−saw)によってウエハにスライスされ、ウエハはラッピング(lapping)によって平坦化され、化学的エッチングがなされて機械的な損傷および汚染が除去される。エッチングが行われた後で、ウエハはその片側もしくは両側がポリッシュ(polish)される。ウエハは、COP(結晶起因パーティクル(crystal originated particles))欠陥を除くために、更に例えば熱アニーリング(thermal annealing)などの処理に付されることもあるが、処理は一般に技術水準の清浄化方法によって終了する。そのような清浄化の後で、ポリッシングしたウエハの表面における銅濃度は、全反射蛍光X線分光法(TXRF)測定によって測定して、一般に1×1010原子/cm未満である:C.ノイマン(C. Neumann)ら、Spectrochemica Acta, 10(1991)、第1369−1377頁;およびイングル(Ingle)およびクラウチ(Crouch)の、Spectrochemical Analysis、プレンティスホール(Prentice Hall)、1988年参照のこと。しかしながら、これらのウエハの表面銅濃度は、室温においてさえ、飽和に到達するまで経時的に増大する傾向がある。従って、清浄化の直後では、表面銅濃度についてのターゲット特性を満足しているウエハであっても、5〜10月も経過すると、この特性を満足しなくなることもあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、シリコンウエハの銅汚染の問題に対処することについて、3つの主要なアプローチがあった。第1のアプローチは、ポリッシング操作の間にシリコンに導入される銅および他の金属の量を減少させることを含むものである。特に、産業界は、最初に、可能な範囲までこれらの汚染物質のソースを識別すること、および可能な程度まで排除することに注目した。ポリッシング混合物中の金属の量を減少させることに加えて、例えばプリッジ(Prigge)らによって開示された他の方法(DE 3939661 A1)は、銅と配位錯体を成形するある種の薬剤をポリッシング薬剤と混合することによって、ポリッシング操作の間に、ウエハに組み入れられる銅の量を制限することを含んでいる。この配位錯体は、シリコンに入り込もうとする銅の能力を制限する特定のコンフォーメーションに、銅を維持する作用を果たす。ポリッシング混合物を変性させることはシリコンウエハ中の銅の汚染の程度を低下させる傾向があるが、そのことは一般に、他の銅の低減方法(reduction methods)の必要性を打ち消す程には十分に効果的ではなかった。さらに、シリコンウエハ中の金属汚染物質レベルに適用される制限が一層の厳格となっているため、ポリッシング混合物を変性させることは、集積回路の製造業者によって、シリコンウエハ中の金属汚染を制御するために相当にコストのかかる選択肢となっている。
【0005】
ポリッシングされたシリコンウエハの金属汚染に対処するための第2のアプローチは、銅およびその他の金属をトラップして、これらの金属がウエハのデバイス領域に到達することを防止するイントリンシック・ゲッタリング(intrinsic gettering)である。イントリンシック・ゲッタリング技術は、ウエハから加工された集積回路の機能性化(functioning)を損なわない部位(即ち、デバイス領域の下側のウエハ内部の領域であって、「バルク部(bulk)」、「ウエハ・バルク」もしくは「バルク領域」としばしば称される領域)において、ウエハの中に欠陥サイト(defect sites)を導入することを伴っている。しかしながら、ゲッタリング技術は、金属汚染物質を制御するために完全に(または十分に)受け入れられるとは判明していなかった。例えば、銅およびニッケルなどの金属のシリコン中における拡散率(diffusivity)が高いことによって、これらの金属はゲッタリングサイトを脱して、デバイス領域に達することが可能である。さらに、ゲッタリングシンクとしてシリコンに導入された欠陥は、例えば少数キャリアの再結合寿命(minority carrier recombination lifetime)を減少させることによって、シリコンの品質を低下させ得る。
【0006】
ポリッシングされたシリコンウエハの金属汚染の問題に対処するための第3のアプローチは、銅をシリコンウエハのバルク部からそれを除去することができる表面へ移動させる1又はそれ以上のいわゆる「低温アニーリング(low temperature anneals)」を用いることである。例えば、ファルスターら(Falster et al.)の米国特許第6,100,167号は、ウエハを、比較的短い時間(例えば、約5分〜約1.5時間)で、低温アニーリング(例えば、約225〜約300℃)に付することを一般に含んでなる、ウエハの表面に銅が拡散する速度を増大させる方法を開示している。銅は、表面に拡散した後、清浄化操作を実行することによって表面から取り去られる。これらの低温アニーリングは、銅を除去する清浄化を含めて、ケイ化銅析出物が生成することを防止するために、ポリッシングされたシリコンウエハを500℃を越える温度へ加熱する前に実施することができる。これらの低温アニーリングを用いて単結晶シリコンウエハから銅を有効に除去することもできるが、それらは典型的な製造プロセスにおいて実施されていなかった。それは、それらの処理はスループットをかなり減少させて、ウエハのコストを大幅に増大させることになるためである。この理由のために、これらの低温アニーリングは、実験室および試験的適用に限定されていた。
【0007】
要約すると、シリコンウエハの製造は多くの工程を含んでおり、それらの工程は、例えばウエハポリッシングは、金属汚染物質を導入するソースとなっている。金属汚染物質を防止または除去するための上述した方法の欠点を考慮すると、有害な析出物を生成せずに常套の製造方法に組み入れることができる、ポリッシングされたシリコンウエハから金属汚染物質を除去するための、簡単で、低コストで、効果的な方法に対する要求が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
従って、簡単には、本発明は、シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有するシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれの組合せから選ばれる汚染物質を除去するための方法に関する。この方法は、酸化開始温度からまたはそれより高い温度から、制御された雰囲気の中でシリコンウエハを冷却させることを含んでなる。前記酸化開始温度で酸素含有雰囲気の流れを開始させて、シリコンウエハ表面のまわりに酸化的雰囲気を形成し、シリコンウエハ表面に酸化物層を生成させおよび前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間に歪み層(strain layer)を生成させる。シリコンウエハ内側部分から歪み層への汚染物質の原子の拡散を許容するように、シリコンウエハの冷却を制御する。ウエハを清浄化(またはクリーニング)して酸化物層および歪み層を除去し、それによって歪み層へ拡散させた前記汚染物質を除去する。
【0009】
本発明は、シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有するシリコンウエハから、銅およびニッケルから選ばれる汚染物質を除去するためのもう1つの方法に関する。この方法は、シリコンウエハを少なくとも約1100℃の温度に加熱し、シリコンウエハ表面を、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる清浄化雰囲気にさらして、シリコンウエハ表面からシリコン酸化物を除去し、それによって脱酸素されたシリコンウエハを得ることを含んでなる。脱酸素されたシリコンウエハは、酸化的雰囲気にさらしてシリコンウエハ表面に酸化物層を生成させ、それによって前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の境界(またはインターフェイス)に歪み層を有する酸化されたシリコンウエハが生成する。酸化されたシリコンウエハの温度は、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質を拡散させるように制御される。その後、シリコンウエハを清浄化してシリコンウエハから歪み層へ拡散させた汚染物質を除去し、それによって清浄化されたシリコンウエハが得られる。
【0010】
本発明は、更に、シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有する多様なシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれの組合せから選ばれる汚染物質を除去するための方法に関する。この方法は、酸化開始温度からまたはそれより高い温度からシリコンウエハを冷却させることを含んでなり、その酸化開始温度は約800℃より低い温度である。前記酸化開始温度にて酸素含有雰囲気の流れを開始させ、シリコンウエハ表面の周囲に酸化的雰囲気を形成すると、シリコンウエハ表面に約5〜約20オングストロームの厚みの酸化物層が生成し、該酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の界面(または境界)に歪み層が生成する。シリコンウエハ内側部分から歪み層への汚染物質の原子の拡散を許容するように、シリコンウエハの冷却を制御する。その後、ウエハを清浄化して酸化物層および歪み層を除去し、それによって歪み層へ拡散させた前記汚染物質を除去する。
【0011】
さらに、本発明は、シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有する多様なシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれの組合せから選ばれる汚染物質を除去する処理の方法に関する。この方法は、シリコンウエハをアルゴンを含む加熱−冷却雰囲気にさらしながら、少なくとも約1100℃であるアニーリング温度へシリコンウエハの温度を上昇させることを含んでなる。シリコンウエハのアニーリングは、シリコンウエハがアニーリング温度にある間に、約30分から約90分間の範囲の時間で、シリコンウエハを、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの組合せからなる群から選ばれるアニーリング雰囲気にさらして、シリコンウエハ表面からシリコン酸化物を除去し、シリコンウエハ表面に現れた凝集空孔欠陥へのシリコン原子の移動を促進し、露出した凝集空孔欠陥の寸法を小さくさせることによって行う。シリコンウエハの温度は、シリコンウエハを加熱−冷却雰囲気にさらしながら、アニーリング温度から約800℃を越えない酸化開始温度へ降下させる。ウエハの温度を酸化開始温度から降下させながら、シリコンウエハを約10〜約100ppmの範囲の濃度で酸素を含有する酸化的雰囲気にさらして、シリコンウエハ表面に酸化物層を生成させ、および前記酸化物層とシリコンウエハの内側部分との間の境界に歪み層を生成させる。シリコンウエハの温度降下は、シリコンウエハ内側部分から歪み層への汚染物質の原子の拡散を許容するように制御する。ウエハを清浄化して、シリコンウエハから歪み層へ拡散させた汚染物質を除去する。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明および添付図面によって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明によって製造した単結晶シリコンウエハの構造を示している。
【図2】図2は、本発明によって形成することができるウエハの酸素析出物プロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、シリコン中の銅汚染物質に焦点を当てており、銅は金属汚染物質の問題に関して最も研究されており、かつ最も問題を含んでいる。銅に関して本明細書に記載する方法は、シリコン中に見出されるその他の金属(例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、クロム等)に見出されるその他の金属汚染物質にも適用することができる。
【0015】
いずれか特定の理論に結び付けられるのではないが、銅はホウ素とある種の錯体を形成し、その形態で、ホウ素がドーピングされたシリコンウエハ中に「蓄えられる(stored)」と考えられる。更に、これらの銅−ホウ素錯体は、室温であっても準安定(metastable)であると考えられる。従って、時間の経過と共に、これらの錯体は解離して、銅が格子間に位置すると推測することができる。銅はシリコン中において急速な拡散物質(diffuser)であって、すべての金属の中で最も速く、室温であってさえも非常に移動的である。しかしながら、銅のシリコン中での溶解性は温度に強く依存し、低温、例えば室温では、非常に低い。従って、低温において、格子間の銅はウエハ表面へ迅速に拡散する傾向を有する。従って、ウエハ表面における銅の濃度は、ある種の表面濃度限界(例えば、飽和限界)に達するまで、時間と共に増大する傾向を有する。時間依存性であることに加えて、表面への銅の拡散は、一部では、ポリッシングプロセスによってウエハに寄与した銅の量、および/または炉の部分および備品を含んでいる炭素および炭化ケイ素などのその他のソースの量に依存する。さらに、銅拡散の程度は、一部では、ウエハ中のホウ素の濃度に依存する。特に、ウエハのホウ素濃度が増大すると、銅のための「貯蔵」容量が増大し、従って、ウエハ表面における銅濃度の時間依存的増加の可能性が増大する。
【0016】
シリコンウエハのバルク部内における銅汚染の相対的な程度(または量)は、ウエハバルク部からウエハ表面への銅の拡散を促進する試験を行うことによって評価することができ、そのウエハ表面にて銅を除去して、測定することができる。そのような方法の1つには、ウエハを少なくとも約30秒間で、少なくとも約75℃の温度にて低温熱処理して、ウエハバルク部の銅を、ポリッシュした表面、その上のシリコン酸化物層、および/もしくはポリッシュした表面から数ナノメートル(例えば、約100nm未満)の距離だけ内側へ延びる歪んだシリコンの領域の中へ外方拡散(outdiffuse)させる方法がある。いずれか特定の理論に結び付けられるのではないが、表面におけるまたは表面近くの歪み領域または歪み層は、格子の分化(differentiation)(即ち、シリコンがシリコン酸化物へ、例えばSiOおよびSiOへ変化する境界において、体積に関して相対的に小さいシリコン相が占めていた空間に、体積に関して相対的に大きいシリコン酸化物が押し込まれ、それによって圧縮および歪みが生じること)に主として起因すると考えられる。歪みのある部分はシリコンとシリコン酸化物との膨張率の違いの結果であって、ウエハの温度が変化することによって応力および歪みが熱的に生じるとすることも可能である。低温熱処理は、約4時間の時間で、約250℃の温度へウエハを加熱することを含んでなることが好ましい。その後、熱処理したウエハは、外方拡散した銅の量を測定するための試験に付される。
【0017】
そのような試験の一例には、酸ドロップ/ICP−MS(誘導結合高周波プラズマ分光分析(inductively coupled plasma−mass spectroscopy))がある。この方法は、ウエハの表面を化学溶液(例えば、フッ化水素酸系の混合物)に接触させて、表面から銅および酸化物を溶解させ、溶解させた銅および酸化物を含む溶液を集め、ICP−MSを用いてその溶液中の銅の量を測定することを含む方法である。測定された銅の量はウエハ表面の1平方センチメートルあたりでの原子の数によって表現される銅濃度(copper concentration)に変換され、これは一般に「銅のバルク濃度」、「バルク銅濃度」、または「バルク銅」と称される。前述の方法に従って測定する場合に、多くの集積回路製造業者は、バルク銅濃度は5×1010原子/cm未満、好ましくは1×1010原子/cm未満であることを要求する。
【0018】
ポリッシングおよび清浄化されたウエハは、集積回路製造業者仕様の範囲内の許容される銅濃度(即ち、バルク濃度測定前における表面の銅の濃度)を有することもあるが、約5×1010原子/cmを越える銅のバルク濃度、約1×1011原子/cmを越える銅のバルク濃度、または約1.5×1011原子/cmを越える銅のバルク濃度を有することもある。例えば、結晶学的欠陥(crystallographic defects)を減少させるかまたは除去するために、高温、例えば1200℃にてポリッシングおよびアニーリングした後で、バルク銅濃度について分析したP型ウエハは、約2×1011原子/cmのバルク銅濃度を一般に有する。
【0019】
一般に、本発明の方法は、1又はそれ以上のシリコンウエハのバルク部から金属汚染物質を除去することに関する。特に、本発明は、金属汚染物質を含む1又はそれ以上のウエハを、相対的に高い温度(例えば、少なくとも約500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃もしくは1200℃またはそれ以上の温度)へ加熱すること、およびその金属汚染物質、特に銅をウエハの表面もしくはその近くの歪み領域へ拡散させる様式で冷却することを含んでなる熱処理またはアニーリングに関する。拡散させた金属汚染物質は、いずれか適当な清浄化方法、例えば従来のSC1、SC2清浄化操作によりウエハを清浄化することによって、ウエハから除去することができる。
【0020】
いずれか特定の理論に結び付けられるのではないが、ホウ素ドーピングした単結晶シリコンウエハを前述の方法に付すると、銅ホウ素錯体が解離する速度を向上させ、ならびに、拡散した銅がウエハから除去されるまで存在することが好ましい表面のもしくは表面近くの歪み層へ、ウエハのバルク部から銅を拡散させる速度を向上させると考えられる。解離および拡散の速度を向上させることによって、ウエハのバルク部内に既に存在していた銅の大部分を除去することができる。実際に、拡散させた銅を除去した後では、ウエハ中の銅のバルク濃度は、約1×1010原子/cmよりも低いレベルに低下させることができる。好ましくは、銅のバルク濃度は、約5×10原子/cmよりも低いレベルに低下する。さらに好ましくは、銅のバルク濃度を、約1×10原子/cmよりも低いレベルに低下させる。
【0021】
バルク銅濃度の低下は、製造プロセスにほとんどもしくは全く時間を付加することなく、達成することができることが有利である。それは、凝集空孔欠陥、例えば八面体ボイド(octahedral voids)として現れ、通常、結晶起因ピット/パーティクル(crystal originated pits/particles)と称され(または「COPs」とも称され)る凝集空孔欠陥を排除または低減させるために実施する、常套の熱処理、例えば水素アニールおよび/もしくはアルゴンアニール(または「水素−アルゴンアニール」(hydrogen−argon anneal)とも称される)の冷却操作部分に、本発明の方法を組み込むことができるためである。実際に、本発明の方法は、水素−アルゴン・アニールの冷却操作部分の間に組み入れることに特に好適であり、従って、本明細書の以下の説明も主としてそのような態様例に関する。本発明のもう1つの利点は、非常にまたは相対的に安価な原料(例えば、酸素)を使用するために、本質的にコストを追加することなく実施できることである。本発明によれば、常套の後アニーリング・清浄化・プロセスを変更することなく、銅を除去することが可能となる。
【0022】
シリコンウエハの特性
本発明に好ましい出発物質は、好ましくは、チョクラルスキー結晶成長方法の常套のバリエーションのいずれかによって成長させた単結晶シリコンインゴットからスライスされた、単結晶シリコンウエハであることが好ましい。チョクラルスキー法を用いて製造されるウエハは、一般に、約5×1017原子/cm〜約9×1017原子/cmの範囲の酸素濃度(換言すれば、約10ppmから約18ppm(即ち、ウエハ中において全体で1,000,000個の原子あたりで、約10〜約18個の酸素原子))(ASTM規格、F−121−80)、より一般的には、約6×1017原子/cm〜約8.5×1017原子/cm(即ち、約12ppm〜約17ppm)の酸素濃度を有する。酸素を含まないウエハが所望される場合、出発物質は、フローティングゾーン結晶成長方法の常套のバリエーションのいずれかによって成長させた単結晶シリコンインゴットからスライスされたものであることが好ましい。シリコンインゴットの成長、ならびに標準的なシリコンのスライシング、ラッピング、エッチング、およびポリッシング技術は、F. Shimuraの、Semiconductor Silicon Crystal Technology (Academic Press, 1989) ;ならびにSilicon Chemical Etching, (J. Grabmaier, 編集, Springer-Verlag, New York, 1982)に開示され、従来技術において知られている。また、本発明の方法は、シリコンウエハの少なくとも前方表面において鏡のような光沢を作り出す最終的なポリッシング操作の後であるが、最終的な清浄化操作の前における製造工程のいずれかの部分で、1又はそれ以上のシリコンウエハについて実施することが好ましい。
【0023】
ウエハに種々の所望される特性を付与するために、ウエハは一般に1又はそれ以上の微量添加物(ドーパント)を含んでいる。特に、ウエハは一般に、P型ウエハ(すなわち、周期表の第III族からの元素、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウムおよびインジウム、最も一般的にはホウ素によってドーピングされているウエハ)である。ウエハは、約100Ω−cmから約0.01Ω−cmの抵抗率を有するP型ウエハであることが好ましい。ホウ素ドーピングされたシリコンについての前述の抵抗率の値は、約1.3×1014原子/cm〜約8.5×1018原子/cmのドーパント濃度にそれぞれ対応する。本発明の方法は、例えば約20Ω−cm〜約1Ω−cm(一般にP−シリコンと称される)の範囲の抵抗率を有する比較的低いホウ素濃度を有するP型ウエハから銅を除去することについて有用であるが、例えば0.03Ω−cm〜約0.01Ω−cm(一般に「P+−シリコン」と称される)の範囲の抵抗率を有する比較的高いホウ素濃度を有するウエハについても特に有用である。
【0024】
ウエハは窒素を含むことも好ましい。窒素の存在は、シリコンウエハにいくつかの利点を提供する。特に、窒素がシリコンウエハを強化することは当業者に知られている。さらに、窒素の存在はシリコン内で空孔欠陥の拡散を遅延化させる傾向があって、それによってウエハ内のボイドの寸法および/もしくは濃度を低下させ得る。ウエハが適切なサーマルプロセスに付された場合に、より小さいボイドはより容易に溶解する傾向がある。空孔拡散の遅延化は、ウエハ内において、酸素析出物またはバルク微小欠陥(「BMD」もしくはBMDsとも称される)の密度または濃度を安定化させる傾向をも有する。成長中のシリコンインゴットにおける窒素濃度を制御するための方法は、当業者にはよく知られている。成長中のシリコンインゴットにおける窒素濃度を、そこからスライスされるウエハが約1×1012原子/cm(約0.00002ppma)〜約1×1015原子/cm(約0.02ppma)の範囲の窒素濃度を有するように、いずれか既知の方法によって制御することが好ましい。窒素濃度が、約1×1012原子/cm〜約1×1013原子/cm(約0.0002ppma)の範囲にあることがより好ましい。
【0025】
図1を参照すると、単結晶シリコンウエハは、中心軸8、該中心軸8に対して全体として垂直な前方表面3および後方表面5、ならびに前記前方表面と前記後方表面とからほぼ等距離にある仮想的中央平面7、前記前方表面および前記後方表面に連絡する外周縁部2、および前記中心軸から外周縁部へ延びる半径9を有している。シリコンウエハは、典型的には、ある程度の全体的な厚みの変動(TTV(total thickness variation))、反り(warp)および湾曲(bow)を有するので、前方表面の各点と後方表面の各点との中間点は、正確に1つの平面内に含まれ得るとは限らないということに注意されたい。しかしながら実際の問題として、TTV、反りおよび湾曲の程度は一般に非常にわずかであるので、近似的には、そのような中間点は仮想的中央平面に含まれると表現することができる。
【0026】
シリコンウエハの表面特性を向上させるためのアニーリング
ポリッシングされたウエハは、一般にその表面に、固化の後でインゴットが冷却される際に生成した望ましくない欠陥(例えばCOPs)を有している。この欠陥はレーザー散乱検査ツール(laser scatter inspection tools)によって検出することができる。そのような欠陥は、一部では、空孔欠陥および自己格子間点欠陥として知られている真性点欠陥(intrinsic point defects)が過剰に(即ち、溶解限度を超える濃度で)存在することによって生じる。メルトから成長させたシリコン結晶は、一般に、結晶格子空孔またはシリコン自己格子間原子欠陥のいずれか一方または他方の型の真性点欠陥を過剰に有して、形成されている。シリコン内において凝集した真性点欠陥は、複雑で高度に集積された回路の製造に関して、材料の生成ポテンシャルに重大な影響を与え得る。例えば、ゲート・オキシド・インテグリティ(GOI(Gate Oxide Integrity))欠陥は、ウエハ表面におけるCOPsの濃度に相関関係を有する。D.Graf、M.Suhren、U.Schmilke、A.Ehlert、W.v.AmmonおよびP.Wagner.、J.Electrochem.Soc.1998,145,275;M. Tamatsuka, T. Sasaki, K. Hagimoto and G. A. Rozgonyi, Proc. 6th. lnt. Symp. On Ultralarge Scale Integration Science and Technology "ULSI Science and Technology/1997," The Electrochemical Society 1997, PV 97−3, p. 183; and T. Abe, Electrochem. Soc. Proc. 1998, PV 98−1, 157; N. Adachi, T. Hisatomi, M. Sano, H. Tsuya, J. Electrochem. Soc. 2000, 147, 350。
【0027】
ウエハの表面において、COPsは、二酸化ケイ素被覆壁部を有するピットとして現れ、一般に、約50〜300nmの幅を有し、約300nmまでの深さを有し得る。特定の雰囲気においてウエハを熱処理すると、シリコン原子のCOPsへの移動を増大させ、それによって、COPsは、通常は自動化された検査ツールによって検出されない、浅い皿風の凹部(depressions)として現れるようになるまで、その深さが減少すると考えられている。既に説明した熱処理またはサーマル・アニーリングプロセスは、水素雰囲気における長時間の(例えば、約30分よりも長い時間の)アニーリングを含んでおり、それによって実際にCOPを有さない表面が得られる。D. Graf, U. Lambert M. Brohl, A. Ehlert, R. Wahlich, P. Wagner. , J. Electrochem. Soc. 1995, 142, 3189。アルゴン雰囲気中でウエハをアニーリングすることは、文献に開示されている。D. Graf, M. Suhren, U. Lambert,. R. Schmolke, A. Ehlert, W. v. Ammon and P. Wagner, Electrochem. Soc. Proc. 1996, 96−13, 117; lida, W. Kusaki, M. Tamatsura, E. lino, M. Kimura and S. Murasoka, Electrochem. Soc. Proc. 1999,99−1, 449。 更に、表面COP消失およびGOI向上とヘイズ(haze)における同様の向上のために、HとArとの混合物雰囲気中でウエハをアニーリングすることが試みられた。T. Abe, Electrochem. Soc. Proc. 1998, 98−1,157; M. Tamatsuka, N. Kobayashi, S. Tobe, and T. Masiu, Electrochem. Soc Proc, 1999, 99−1, 456); D. Graf, M. Suhren, U. Lambert, R. Schmolke, A. Ehlert, W. v.Ammon, and P. Wagner, Electrochem. Soc. Proc. 1996, 96−13, 117; and W, lida, M. Kusaki, E. Tamatsura, M. K. lino, S. Muraoka,Electrochem. Soc. Proc. 1999, 99−1,449。本発明の銅の除去方法は、ウエハの表面およびバルク部(例えば、表面から少なくとも約10μmの深さの内側へ延びる領域)に位置するCOPsを除去するための本質的に何らかの熱処理に組み入れることができると考えられることに注意することが重要である。
【0028】
シリコンウエハの表面における偏差(anomalies)は、粒子(例えば、ポリッシンググリット)であるか、凝集した自己格子間原子欠陥であるか、凝集した空孔欠陥(例えばCOPs)であるかを問わず、一般にレーザー散乱検査ツールによって検出される。商業的に入手可能なレーザー散乱検査ツールであって、好適なものの例には、アメリカ合衆国、カリフォルニア州、マウンテンビューのKLA−TencorからのSURFSCAN 6220およびSURFSCAN SP1、ならびにアメリカ合衆国、ノース・カロライナ州、シャーロットのADE Optical Systems Corp.からのCR80、CR81およびCR82が含まれる。そのようなツールは、シリコンウエハ表面における欠陥(通常は、LPDsと称される)の位置および寸法を測定することができる。レーザー散乱検査ツールを用いてウエハ表面におけるLPDsの寸法を測定する場合には、実際のLPDの寸法を測定しているのではなくて、検出した欠陥は、特定の直径(例えば、約0.95μmよりも大きい直径を有するラテックス球であって、これはSURFSCAN 6220とSURFSCAN SP1などのレーザー散乱検査ツールについて現在での検出限界である)を有するラテックス球(LSE)と等しい光を散乱させるということは、この技術分野においてよく知られている。ボイド−リッチなウエハは、一般に熱処理される前に、ウエハの前方表面上に、約3LPDs/cmを越え、約6LPDs/cmを越え、または場合により約8LPDs/cmを越えることさえあるLPDsの濃度を有している。
【0029】
一般に、熱処理は、1又はそれ以上のウエハを加熱すること、および加熱したウエハの表面からシリコン酸化物の層(例えば、自然な酸化物層)を除去することを含んでなる。ウエハは、少なくとも約1100℃、好ましくは少なくとも約1150℃、更により好ましくは約1200℃〜約1250℃の温度へ加熱することが好ましい。この加熱は、酸化性物質を本質的に含まない雰囲気(例えば、酸化性物質が約0.001重量%より少ないか、好ましくは酸化性物質が約0.0001重量%より少ないか、最も好ましくは酸化性物質が約0重量%である雰囲気)、例えばCO雰囲気に、シリコンウエハの表面をさらすかまたは接触させながら、行われる。更に、雰囲気は、自然な酸化物を有さない(または酸化物フリーな)前方表面から、実質的にシリコンをエッチングしたり除去したりしないこと(例えば、シリコンウエハの表面からシリコンの除去率が約0.1nm/分以下であること)が好ましい。この雰囲気は、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる単原子希ガスを含んでなるものであってよい。炉内の温度が約950℃を越える温度になるまで、水素を導入しないことが好ましい。従って、単原子の希ガスが好ましく、アルゴンは最も好ましい単原子の希ガスである。それは、アルゴンが最も低コストであって、最も広範に入手可能な単原子の希ガスである傾向があるためである。高純度のアルゴンは、種々のグレードで市販されており、例えば、99.999重量%の純度を有する超高純度グレード(UHP 5)や、99.9995重量%の純度を有する超大規模集積回路グレード(VLSI 5.7+)などのグレードのものがある。
【0030】
本発明の熱処理は、商業的に入手可能な熱処理炉もしくはアニーリング炉のどのような数であっても実施することができ、その炉内で、少なくとも1つのウエハ、好ましくは複数のウエハを、1種もしくはそれ以上の制御された雰囲気にさらしながら、加熱する。そのような炉の例には、ASMモデルA412垂直炉があり、その中には、例えばAGエレクトロニック・マテリアルズ(AG Electronic Materials)によって製造されたシリコン・カーバイドのボートの中に、125枚のシリコンウエハが装填される。ウエハがさらされる雰囲気は、約5リットル/分〜約100リットル/分の流量、より好ましくは約10リットル/分〜約20リットル/分の流量で、炉/反応装置の中を通って流れることが好ましい。炉内の雰囲気の圧力は、減圧雰囲気(sub−atmospheric)から加圧雰囲気(super−atmospheric)であってよいが、コストおよび安全性に関して、大気圧が好ましい。
【0031】
ウエハは、スリップ(slip)を生じないような割合(または昇温速度(rate))で加熱することが好ましい。特に、ウエハをあまりにも急速に(例えば、約35℃/秒よりも大きい昇温速度)で加熱する場合には、熱勾配が大きくなり、それによって、ウエハ内に、互いに相対的にシフトする(即ち、スリップする)異なる平面を生じさせるのに十分な内部応力(internal stress)が発生し得る。一般に、ウエハの温度が約750℃を越えるまでは割合の変化はあまり決定的ではないが、約750℃〜約1100℃の範囲の温度では、スリップを防止するために、約40℃/分を越えるように変更しないことが好ましい。約1100℃〜約1150℃の範囲の温度では、スリップを防止するために、約10℃/分を越えないように制御することが好ましい。約1150℃〜約1200℃の範囲の温度では、スリップを防止するために、約5℃/分を越えないように制御することが好ましい。上述の事項を考慮に入れると、ウエハの温度プロファイルは、放物線に似た形状であって、ウエハが冷却される前に、ウエハが実質的に一定の温度に保持される時間に対応して延びる水平部分を有する形状であることが好ましい。
【0032】
少なくとも約1100℃、好ましくは少なくとも約1150℃、さらに好ましくは約1200℃〜約1250℃のアニーリング温度(annealing temperature)に達すると、ウエハの表面から、シリコン酸化物(例えば、自然な酸化物層であって、一般に約20オングストロームを越えない厚さを有する層)が除去される。雰囲気または周囲の雰囲気は、ウエハをアニーリング温度に加熱する場合に用いたものと同じかまたはそれをモディファイした(若干の変更を加えた)ものであってよい。上述したように、ウエハは一般に、アルゴンを含む雰囲気中でアニーリング温度まで加熱される。アニーリング温度に達すると、水素を雰囲気の中に導入することが望ましいこともあり得る。導入する場合には、雰囲気中の水素の濃度は一般に、少なくとも約20%が水素であって、残部はアルゴンなどの単原子希ガスであることが好ましい。一般に、より高い水素濃度が好ましい。従って、雰囲気は、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の水素を含んでおり、順に望ましい。水素ガスは、好ましくは99.99999999%の純度である。少なくとも約1100℃の温度にて、酸化物は約1〜約2ナノメートル/分の割合でウエハ表面から除去される。従って、典型的な自然の酸化物層は約2分未満で除去される。
【0033】
自然な酸化物は迅速に除去されるが、シリコンウエハの表面におけるまたは表面近くのCOPsの寸法を減少させ、および/またはウエハの表面におけるLPDsの濃度を減少させるために少なくとも十分な時間(例えば、少なくとも約10分)で、少なくとも約1100℃の温度にて、ウエハを水素、単原子希ガスまたはそれらの組合せに接触させることが好ましい。凝集空孔欠陥を取り囲む表面および表面の下側の領域から、(欠陥サイトの壁部から酸化物を除去した後に)シリコン原子が欠陥サイトへ移動することによって、凝集空格子点欠陥の縮小が主として生じる。その時間は約30分〜約90分であることが好ましい。さらに好ましくは、清浄化ガスにさらす時間は約60分である。
【0034】
水素、単原子希ガスまたはそれらの組合せを含んでなる雰囲気に、所望する時間でさらした後は、水素が導入されていた場合には、水素流を止めて、加熱したウエハの酸化物フリーな前方表面を、減圧(例えば約5ミリトル(milliTorr)未満)にさらすか、または上述した1種若しくはそれ以上の単原子希ガス(例えばアルゴン)にさらす。一般に、水素の停止またはアルゴン雰囲気の再導入は、ウエハの温度の低下と同時に行い、少なくとも、ウエハが約800℃もしくはそれ以下の温度へ冷却されるまで続行する。シリコン原子の移動は、少なくともウエハが約1100℃まで冷却されるまで続くと考えられている。スリップを防止するため、約1100℃までウエハの温度を低下させることは、一般に少なくとも約10分で行う。約1100℃までの温度の低下は、約30分〜約90分の時間で行われる。さらに好ましくは、所要時間は約60分である。
【0035】
図1を参照すると、シリコンウエハを本発明の熱処理に付することによって、前方表面3から内側へ距離D(例えば、一般に少なくとも約5μmである)で延びる層21が生成している。この層21は、出発物質の全体にわたる凝集空孔欠陥密度と対比して、より低下した凝集空孔欠陥密度を有している。層21と仮想的中央平面7との間では、凝集空孔欠陥20の密度は変化しないと現在では考えられている。特に、層21と仮想的中央平面7との間のウエハ(即ち、ウエハのバルク部)の体積部分は、約1×10欠陥/cm〜約1×10欠陥/cmの範囲、典型的には、約1×10欠陥/cm〜約1×10欠陥/cmの範囲の凝集空孔欠陥密度を有しているが、層21は、ウエハバルク部の凝集空孔欠陥密度の約50%より小さい凝集空孔欠陥密度を有することが好ましい。層21における凝集空孔欠陥密度は、ウエハバルク部の凝集空孔欠陥密度の約30%、20%もしくは10%より小さいことがより好ましい。層21は凝集空孔欠陥密度を実質的に有さないこと、即ち、今日では約10欠陥/cmである、凝集空孔欠陥の検出限界より小さいことが最も好ましい。
【0036】
凝集空孔欠陥の濃度および/もしくは寸法の減少は、ウエハ表面におけるLPDの平均濃度の減少においても同様に達成される。減少は、少なくとも約50%、70%、80%、90%またはそれより大きいことが好ましい。従って、約1LPDs/cm未満のLPDsの平均濃度(約0.095〜0.120μmLSEより大きい)を容易に達成することができる。LPDsの平均濃度は、約0.5LPDs/cm未満であることが好ましく、約0.1LPDs/cm未満であることがより好ましく、約0.05LPDs/cm未満であることが更により好ましく、約0.005LPDs/cm未満であることが更により好ましい。今日のレーザー散乱検査ツールによって検出することができない程度まで、凝集空孔欠陥の濃度および/もしくは寸法を減少させることが更により好ましい。
【0037】
シリコンウエハの表面における凝集空孔欠陥の前述の減少は、熱処理したシリコンウエハの表面における許容できないヘイズの増加を伴わない。「ヘイズ」は、散乱光(光子(photon))の入射光に対する割合と定義されており、少なくとも部分的に、表面の微細な凹凸に依存すると考えられている。例えば、S. Varharerbeke, T. Futatsuki, R. Messousi and T. Ohmi, The Effects of H Annealing on the Si Surface and Its Use in the Study of Roughening During Wet Chemical Cleaning, Electrochem. Soc. Proceedings, Vol. 93−8, p.1170,1993を参照されたい。許容できないヘイズの増加とは、熱処理される前のシリコンウエハ表面におけるヘイズに比べて、約500%より大きいヘイズの増加と定義される。従って、熱処理される前のシリコンウエハ表面におけるヘイズに比べて、ヘイズの許容できる増加は約500%未満である。ヘイズの増加は、好ましくは約350%より少なく、より好ましくは約300%より少なく、更に好ましくは約200%より少ない。
【0038】
ヘイズの程度は、散乱データを収集し、ヘイズプロセッサを用いてフィルタリングしてLPD情報からヘイズ情報を分離するレーザー散乱検査ツールを用いて求められる。各検査ツールはそれ自体の特有の光学式デザインを持っており、結果として、異なる検査ツールによってウエハを検査すると、異なるヘイズ値が得られる。ウエハの前方表面の全体をスキャンするため、ビームが移動する向きに対して直角な向きにウエハが進む際に、SURFSCAN 6220ツールはウエハ表面を横切ってレーザー光線を案内する。従って、走査するレーザー光線に対するウエハの向きがヘイズ値に影響し得る(ここに開示されたすべてのヘイズレベルは、ローディングカセット内で6時のポジションにて配置されたウエハのノッチによって求められた)。対照的に、より新しいSURFSCAN SP1検査ツールは対称的な集光系(collection optics)を有しており、ウエハオリエンテーシヨン(wafer orientation)による影響を受けないヘイズ測定を生じるスパイラル・スキャニング・パターンを使用する。SURFSCAN6220レーザー散乱検査ツールにより測定して、約1.2ppmよりも高い表面ヘイズは、約0.2μmLSEより少ないLPDsを検出する能力を制限し、一般に不適当であると考えられる。同様に、SURFSCAN SP1レーザー検査ツールにより測定して約0.2ppmよりも高い表面ヘイズは、不適当であると考えられる。比較のために、SURFSCAN 6220によって測定されたエピタキシャル・シリコンウエハの表面におけるヘイズは、一般に約0.8ppm〜約1.1ppmである。
【0039】
本発明の方法に従って処理されたシリコンウエハの前方表面は、SURFSCAN 6220レーザー散乱検査ツールにより測定して、約1.2ppmより少ない、好ましくは約0.7ppmより少ない、より好ましくは約0.5ppm〜約0.3ppmの範囲の程度のヘイズを有する。SURFSCAN SP1レーザー散乱検査ツールにより測定して、本発明の方法に従って処理されたシリコンウエハの前方表面は、約0.17ppmより少なく、約0.15ppmより少なく、より好ましくは約0.13ppm〜約0.10ppmの範囲の程度のヘイズを有する。
【0040】
ウエハの表面のCOPsの濃度を減少させることに加えて、アニーリング方法によって、一般にいわゆるデヌーデッドゾーン(denuded zone)と称される領域が形成される。デヌーデッドゾーンは、ウエハ表面から内側へ延びる領域であって、酸化析出物が実質的に存在しない領域である(例えば、典型的なデヌーデッドゾーンは、1cmあたり、約1×10個より少ない酸素析出物またはバルク微小欠陥を有する)。対照的に、デヌーデッドゾーンから内側のウエハの領域は、約1×10〜約5×1010析出物/cmの範囲の濃度の酸素析出物またはバルク微小欠陥を有する。図2を参照すると、この発明によって製造されたウエハの熱処理によって形成することができる酸素析出物分布を有するウエハが示されている。この特定の態様例において、ウエハ基板4は、酸素析出物95を有さない領域93および93’(「デヌーデッドゾーン」)によって特徴付けられる。これらのゾーンは、前方表面3および後方表面5から、それぞれDDzおよびDDz’の深さへ延びている。好ましくは、DDzおよびDDz’はそれぞれ、約10μmから約50μmであり、より好ましくは約20μm〜約30μmの範囲である。酸素析出物を有さない領域93および93’の間に、酸素析出物を実質的に均一な濃度で含む領域94がある。図2の目的は、この発明の属する技術分野における当業者がこの発明の1つの態様例を理解することの手助けとなることである。この発明はこの態様例に限定されるものではない。
【0041】
ウエハからの銅の除去
この出願が主として開示する事項が、本発明の方法を水素−アルゴン・アニールなどのサーマルプロセスに包含させることであるという事項によって、本発明の適用範囲の範囲を限定するものであると解釈されてはならない。本発明の方法は、ウエハ表面の酸化処理に関係するその他の比較的高温でのシリコンウエハ処理と組み合わせて実行することができる。
【0042】
本発明の方法は、好ましくは表面に酸素または酸化物が存在しない1又はそれ以上のポリッシングされたウエハ上で実行される。金属汚染物質の除去を水素−アルゴン・アニールに組み合わせる場合に、この方法は、(一般に、約20オングストローム未満の厚さの)自然な酸化物層が除去されているため、ウエハの表面上またはその近くのCOPsの寸法が減少するかまたは取り除かれるように、むき出しのシリコンウエハ表面上に酸化物層を生成させることを含んでなる。
【0043】
金属汚染物質を減少させるため、ウエハを清浄化した後のバルク銅が所望のレベル以下に低下するように、銅を保持するために十分なウエハ表面またはその近くのシリコンの中に歪み層を形成させるために十分な厚さであることを条件として、酸化物層の厚さはあまり重大ではない。さらに、酸化物層の厚さは、清浄化操作の間での拡散した銅の除去を防止する程度に大きくないことが好ましい。今日までの結果は、拡散した銅を十分に(または満足できるように)保持すること、ならびに標準的SC1およびSC2清浄化操作を用いる拡散した銅を十分に除去することは、約5オングストローム〜約20オングストロームの範囲の厚さの酸化物層を生成させることによって達成することができるということを示している。酸化物層の厚さは、約15オングストローム未満であることが好ましい。酸化物層の厚さは、約7〜約15オングストロームの範囲であることが、より好ましい。酸化物層は約20オングストロームを越えてもよい(即ち、比較的厚い酸化物層)が、一般にあまり好ましいものではない。それは、拡散銅を除去することは、一般に、より長い清浄化操作、より多量の清浄化溶液および/もしくはより活性の高い清浄化溶液を必要とすることになり、その中のいずれかはウエハのコストを上昇させたり、および/もしくはウエハ表面の損傷の程度を大きくさせたりし得るからである。
【0044】
熱処理、例えば水素−アルゴン・アニールは、一般に、多数のウエハに同時に実施することができる。特に、水素−アルゴン・アニールは、単一のバッチにて多数のウエハを処理するように設定されたアニーリング炉において一般に実行される。そのような炉の1つは、上述したASMモデルa412垂直型炉である。一群のウエハから金属汚染物質の効果的な除去を達成するために、ウエハどうしの間での酸化物層厚さの均一性はそれほど重要ではない。即ち、例えば、あるウエハは比較的薄い厚み、例えば5オングストロームの厚みの酸化物層を有することがあるとしても、他のウエハは比較的厚い厚み、例えば20オングストロームの厚みの酸化物層を有し得るというように、処理したウエハの全体について効果的な銅の除去を達成することができる。しかしながら、酸化物層の均一性は、その他のウエハ品質についてのファクターとなる傾向がある。例えば、酸化物層の厚さが、ウエハどうしの間で均一でない場合(例えば、1つの群のウエハの酸化物層厚みの変動が、最も薄い酸化物層と最も厚い酸化物層との間の差が、約5オングストローム以上であるような場合)、その後の清浄化プロセスは、あるウエハ、特に、比較的薄い酸化物層を有するウエハに、表面欠陥(例えば、ピット)を生成させ得る。特に、比較的薄い酸化物層を清浄化する方法によって、ウエハからシリコンが過度に除去され、ピットを生じると考えられる。それらの欠陥は、上述したレーザー散乱検査ツール、例えばTencor 6220またはTencor SP−1などによって検出することができ、LPDsと称される。
【0045】
上述の事項を考慮すると、複数のウエハについて同時に本発明の方法を実施する場合に、(方法を実施する前または方法の間に生成される)酸化物層どうしの間での厚さの変動が最小に保持されることが好ましい。特に、同時に処理されるウエハの群にとって、最も薄い酸化物層と最も厚い酸化物層との差が約5オングストロームより小さいことが好ましい。最も薄い酸化物層と最も厚い酸化物層との差が約3オングストロームより小さいことは、更に好ましい。換言すれば、上述した好ましい範囲のいずれかの範囲内の平均酸化物層厚みを有するウエハの群について、その群の平均的酸化物層厚みからの標準偏差(σ)は、約2.0オングストローム未満、約1.0オングストローム未満、約0.5オングストローム未満、約0.3オングストローム未満、約0.2オングストローム未満、約0.1オングストローム未満もしくはそれ以下であって、順に好ましい。
【0046】
上述したように、本発明の方法を、既存の熱処理方法、例えば水素−アルゴン・アニール方法の一部として実施する場合、表面のいずれかの酸化物は一般的に除去されている(即ち、ウエハの表面は本質的に剥き出しのシリコンである)ため、ウエハの上の酸化物層は一般に方法の一部として形成される。そのような状況において、本発明の方法は、気相酸化によってシリコンウエハ上に酸化物層を生成させることを含んでなることが好ましい。一般に、気相酸化は、1もしくはそれ以上のシリコンウエハを、酸素を含んでなる雰囲気または気体に接触させることを含んでなる。当業者に既知のいずれか適当な酸化的雰囲気または気体(例えば、酸素、オゾン、水蒸気もしくはそれらの組合せ)を用いることもできるが、比較的な低コストにて半導体製造に十分な純度で広範に入手することができる点で、酸素が一般的に好ましい。酸素を用いる場合、酸素は純粋であること(例えば、99.99999999%の純度)が一般に好ましい。そのような程度の純度を達成するために、酸素は一般に、乾燥装置、例えばSAES PURE GASおよびNUPUREから入手可能な装置により処理される。従って、本発明の1つの態様例において、シリコンウエハの表面は、上述した厚さおよび変動範囲に基づいて、ウエハ上の酸化物層を成形することについて十分な所要時間で、酸素を含んでなる雰囲気にさらされるかまたは接触させられる。
【0047】
気相酸化は、一般に、ウエハが高温(例えば、約500℃もしくはそれより高い温度)にある間に少なくとも部分的に実施される。特に、本発明の方法が水素−アルゴン・アニールの一部として実施される場合、ウエハが最高アニーリング温度(例えば、約1200℃〜約1250℃の温度)から冷却される際に、酸化されることが好ましい。ウエハは、いずれかの温度にてもしくはある温度範囲を通って酸化されるが、それらは約1200℃未満の温度で酸化されることが好ましい。より好ましくは、ウエハは約1100℃未満、約1000℃未満もしくは900℃未満の場合さえある温度にて酸化される。ウエハが約800℃以下の温度へ冷却されるまで、ウエハの酸化が始まらないことが、さらに好ましい。ウエハが約775℃以下の温度へ冷却されるまで、ウエハの酸化が始まらないことが、さらにより好ましい。換言すれば、酸化開始温度は、約800℃以下であることが好ましく、約775℃以下であることがより好ましい。約800℃を越えない温度で酸化を行うことによって、酸化物層は、上述した所望の範囲の厚みへと均一に成長する。特に、約800℃より高い温度では、雰囲気中の酸素の拡散率(diffusivity)によって酸化反応が制御され、それによってウエハどうしの間で比較的不均一な酸化物層厚みを生じる傾向があるということが観察されている。特に、気体入口部の近くのウエハは、入口部からより離れたところに位置するウエハよりも厚い酸化物層を有する傾向がある。対照的に、約800℃未満の温度では、酸化反応は、動力学的に制御される傾向がある(即ち、酸化反応は、酸素がウエハ表面に拡散する能力よりも、シリコンと酸素との間の反応によって制御される傾向を有する)。従って、チャンバー内の位置に拘わらず、複数のウエハ上に酸化物は実質的に同様の割合(または速度)で生成し、従って、酸化物層の厚さは実質的に均一であるという傾向がある。
【0048】
約800℃未満の温度で酸化を開始することが一般的に好ましいのであるが、約500℃より高い温度にて気相酸化を開始することが、少なくとも、既存の熱処理プロセスに組み込むことが容易であること、処理時間を最小とすること、およびコストを低減することのために好ましい。より好ましくは、少なくとも約600℃の温度で酸化を開始する。酸化を少なくとも約700℃の温度で開始することは更により好ましい。酸化を少なくとも約750℃の温度で開始することは更により好ましい。
【0049】
酸化温度に加えて、雰囲気中の酸素の濃度が、酸化物層の均一性に影響する傾向があることが見出された。特に、酸化温度が上昇する時に、雰囲気中の酸素の濃度が上昇することが好ましいということが見出された。いずれか特定の理論に結び付けられるのではないが、比較的高い温度(例えば、約1100℃より高い温度)では、ウエハ上に生成した酸化物は表面から蒸発し、それによって不均一な酸化物層が生成して、清浄化の際にウエハ表面にピットを生じさせることになり得ると考えられる。この蒸発の傾向は、比較的低い酸素濃度(例えば、約64ppm未満の濃度)では特に鋭敏である。従って、ウエハが約800℃より高い温度で酸化される場合、雰囲気の中の酸素の濃度を上昇させて、ピット形成の傾向を減少させることが好ましい。酸素濃度の上昇は酸化物層の均一性を向上させる傾向があるが、そのことによって酸化物層厚さを増大させる傾向もある。
【0050】
少なくとも銅濃度を減少させるためには、酸化雰囲気中の酸素濃度はあまり重要ではないが、上述の観察は、ウエハ上の表面欠陥の生成を制限するためには、より低い酸化温度でのより低い酸素濃度が好ましい傾向があるということを示している。例えば、約15000ppmの酸素を含む酸化雰囲気にウエハをさらすことは、銅を除去する際に効果的ではあるが、そうすることはピッティングから過剰な程度のライト・ポイント・デフェクト((LPD)light point defects)を有するウエハを生じ得る(以下の表A中、テストグループ4のウエハを参照されたい)。従って、酸化雰囲気中の酸素濃度は、処理したウエハが過剰な程度(または量)のLPDを有さないようにすることを確保するために、約10,000ppm(即ち、約1パーセント)より小さいことが一般に好ましい。酸素の濃度は、約5000ppm、約1000ppm、約500ppm、約100ppmもしくはそれ以下を越えないことがより好ましい。例えば、約64ppmの酸素を含有する酸化的雰囲気にウエハをさらすことによって、優れた銅除去および低い程度の表面欠陥形成(以下の表A中、テストグループ7のウエハを参照のこと)が得られる。酸化的雰囲気中の酸素の濃度は、下限側では、少なくとも約1ppmであることが一般に好ましい。さらに好ましくは、酸素の濃度は少なくとも約10ppmである。さらにより好ましくは、酸素の濃度は少なくとも約25ppmである。
【0051】
酸化温度および酸素濃度に加えて、酸化の時間は、特に比較的低い酸素濃度において、酸化物層の均一性に関する役割を果たす傾向がある。特に、ウエハを酸化的雰囲気に接触させる時間の長さは、酸化物層が均一な厚さを有するように制御されることが好ましい。特に、酸素濃度が低下すると、ウエハを均一に酸化するために必要とされる時間の長さが増大する傾向があるということが、観察されている。例えば、約15,000ppmの比較的高い酸素濃度では、ウエハは、比較的短い時間、例えば4分間で均一に酸化される傾向がある(表A中、テストグループ3および4のウエハを参照のこと)。しかしながら、実質的により低い酸素濃度(例えば約64ppm)では、約4分間または8分間のことさえある酸化時間によれば、ウエハを不均一に酸化する傾向を示し得る(表A中、テストグループ5および6のウエハを参照のこと)。しかしながら、低濃度の酸化的雰囲気にさらすことまたは接触させることを長引かせると、ウエハの表面品質を好ましくないように低下させることなく、銅を除去することができる(表A中、テストグループ7のウエハを参照のこと)。まとめると、ウエハを酸化的雰囲気にさらすかまたは接触させる時間の長さは広範に変動し得るが(例えば、約1分間〜約1時間であってよい)、(温度および酸素濃度と共に)ポリッシングされたウエハについて一般的なより長いおよび/もしくはより活性の高い清浄化操作が必要とされるように厚くなることなく、効果的な銅ゲッタリングのために十分な厚さを有する均一な酸化物層が得られるように時間を制御することが、一般に好ましい。これらの条件は、チャンバー内でウエハを酸化的雰囲気にさらす時間の長さが少なくとも約10分間である場合に、満足される。好ましくは、時間は少なくとも約20分である。さらに好ましくは、時間は少なくとも約30分である。さらにより好ましくは、時間は少なくとも約40分である。
【0052】
そのような処理時間は、ウエハを典型的な水素−アルゴン・アニールのために冷却する速度または時間を変更することなく、一般に達成されるということに留意されたい。実際に、ウエハは、約750℃〜約700℃の範囲の温度に達すると、それらが熱処理炉から取り出されるまで、酸化的雰囲気にさらされることが好ましく、取り出されるのは、一般にウエハが約600℃未満、約500℃未満、約450℃未満、約400℃またはそれ未満の温度に冷却された後である。約450℃の温度に達した場合に炉からウエハを取り出すことは、スループットを最大化し、従って製造コストを低減させる傾向を有するということが認められている。炉は、一般に、約1000〜900℃未満では、毎分約30℃より小さい割合(または冷却速度)(好ましくは、毎分約10℃〜20℃の冷却速度)にてウエハが冷却されるように制御されるので、少なくとも約10分間(好ましくは、約15分〜約30分間)の時間で、約750℃〜約450℃の範囲であることが好ましい。
【0053】
上述したように、本発明の方法は、ウエハのバルク部からウエハの表面のまたはその近くの歪み領域へ、一般に金属汚染物質、特に銅を拡散させることに関する。特に、ゲッタリングプロセスは、ウエハを少なくとも約500℃(例えば約1100℃〜約1200℃へ)加熱することによって、一般に銅−ホウ素錯体を解離させ、その後ウエハを約500℃以下へ(例えば、約400℃〜約300℃の範囲へ)放出された銅が酸化物誘導歪み領域へ拡散するように冷却することによって、熱的に駆動される。歪み領域において、銅は、標準的な技術水準の清浄化方法および薬品を用いて、ウエハから取り除かれる。銅の拡散は、ウエハが約500℃未満の温度へ冷却される際に、シリコン中における銅の溶解度が劇的に減少する一方で、シリコン中における銅の拡散率(拡散距離(diffusion length))が比較的高くなる(例えば、7.4×10−6 cm/秒)事実に主として起因する。
【0054】
本発明の方法は、銅のバルク濃度を約1×1010原子/cm未満へ、約5×10原子/cm未満へまたは約1×10原子/cm未満へ低下させるのに十分な時間で、放出銅を拡散させるのに適当な温度範囲に、ウエハを留まらせるように実施することが好ましい。一般に、所定の銅濃度について、より高い温度では必要な処理時間はより短い傾向があり、同様に、より長い所要時間はより低い温度に関連する。例えば、ウエハを約500℃に保持する場合、銅拡散に必要な処理時間は約30秒程度であってよい。対照的に、ウエハが、銅濃度の溶解限度の下側である温度から約100℃まで急速に冷却されるか、またはクエンチされた場合、約100℃の処理時間は、約3時間程度の長さであってよい。銅が特に移動性であり、溶解限度がウエハ中の銅濃度よりも著しく低い温度(例えば、約300〜400℃未満であって、約100℃より高い温度)では、十分な所要時間は、数10分(例えば、約10分〜約60分間)の範囲であってよい。熱処理、例えば水素−アルゴン・アニールの一部としての、ウエハの冷却に伴う処理時間および温度は、一般に、バルク銅を所望の程度で減少させることを達成するのに十分である。例えば、銅拡散の許容されるレベルは、ウエハを毎分約10℃〜約20℃の範囲の冷却速度で、約750℃〜約450℃へ(一般に、約15分〜約30分の範囲の時間で)冷却すること、450℃に達すると(一般に約20分間)炉からウエハを取り出すこと、ならびに炉の外側で室温にて冷却すること(一般に約20分間)によって観察されている。それは、そうであることが、酸化的雰囲気にさらすことおよび銅を歪み領域へ拡散させることは、少なくとも部分的に重複してもよいし、逐次的に生じてもよいということに留意されたい。
【0055】
熱処理またはアニーリングが完了した後、1又はそれ以上のウエハを清浄化工程に付して、ウエハから銅を効果的に除去する。典型的な清浄化溶液には、ピラニア混合物(piranha mixtures(硫酸と過酸化水素の混合物))、RCAタイプSC1およびSC2清浄化溶液(例えば、F.Shimura,Semiconductor Silicon Crystal Technology,Academic Press,1989,第188−191頁および付録(Appendix)XIIを参照されたい、参照することによってここに組み込まれる)が含まれる。ウエハは、清浄化溶液に浸漬することもできるし、または別法として、スクラビング・ジェットにさらすこともできる。
【0056】
RCAタイプSC1溶液は、水酸化アンモニウムの溶媒和作用(solvating action)および過酸化水素の強力な酸化作用の両者によって、有機汚染物質および粒子を除去する。典型的なSC1を清浄化溶液は、(水中30〜35重量%のH、および水中28〜30重量%のNHOHとして供給されて)約1000:1:1〜約1:1:1体積部のHO:H:NHOHを有する。即ち、SC1清浄化溶液は、HO、HおよびNHOHを含有しており、HOのH(水中30〜35重量%のHとして供給される)に対する割合は約1000:1〜約1:1の範囲であり、HOのNHOH(水中28〜30重量%のNHOHとして供給される)に対する割合は約1000:1〜約1:1の範囲であり、HOのHに対する割合とHOのNHOHに対する割合とは相互に独立している。好ましいSC1清浄化溶液は、約100:1:1〜約5:1:1体積部の範囲のHO:H:NHOHを有する。好ましくは、SC1清浄化溶液は、約30℃〜約80℃の範囲の温度へ、より好ましくは約60℃〜約80℃の範囲の温度へ加熱する。
【0057】
ウエハは約5分〜約30分間の時間でSC1溶液中で清浄化することができる。それよりも長い時間、ウエハを清浄化溶液に浸漬すると、過度なエッチング、ピッティングおよび粗面化(roughening)が生じ得る。清浄化した後、ウエハを濯ぎ浴に浸漬して反応をクエンチし、ウエハ表面からSC1清浄化溶液を除去する。ウエハの濯ぎは、約3〜約18メガオーム、好ましくは約17メガオームより大きい抵抗率を有する脱イオン水の中で、約2分間〜約60分間の時間で、一般に約5分間〜約45分間の時間で行われる。
【0058】
典型的なSC2浴は、約1:1:5〜約1:1:1000体積部のHCl:H:HOを有する。SC2浴の温度は約10℃〜約90℃の範囲にあることが好ましく、この溶液の流液浴中に少なくとも約0.1分間の時間でシリコンウエハを浸漬することが好ましい。これらの溶液は、アルカリおよび遷移金属を効果的に除去し、可溶性の金属錯体を形成することによって溶液からの再付着を防止する。
【0059】
HF溶液もシリコンウエハを清浄化するために用いることができる。典型的なHF溶液は、約1:1〜約1:10,000体積部でHF:HO(水中49重量%のHFとして供給される)を含有する。金属除去を向上させるため、溶液は追加的に、HCl(1000:1〜1:1000体積部のHF:HCl)、過酸化水素(1:1〜1:1000体積部のHF:H)、イソプロピルアルコール(10,000:1〜1:10のHF:IPA)またはオゾン(約0.05〜約50ppm)を含むことができる。
【0060】
清浄化された後、ウエハは、好ましくは約1×1010原子/cm未満、より好ましくは約5×10原子/cm未満、および更により好ましくは約1×10原子/cm未満の表面銅濃度を有する。更に、清浄化されたウエハは、好ましくは約1×1010原子/cm未満、より好ましくは約5×10原子/cm未満、および更により好ましくは約1×10原子/cm未満のバルク銅濃度を有する。
【0061】
実施例
使用したアニーリング炉は、東芝セラミックスにより製造された高純度TSQ−10石英管および、200mmのウエハを保持する構成の125のスロットの炭化ケイ素ボートが設けられたASMモデルA412垂直型炉であった。炭化ケイ素ボートは、AGエレクトロニック・マテリアルズによって化学気相蒸着された高純度の炭化ケイ素被覆を有している。アニーリング方法を実施した後、ウエハは、詳細に上述したような、サブミクロンシステム(SubMicron Systems)湿式ベンチならびに標準的なSC1およびSC2清浄化溶液によって清浄化された。
【0062】
各テストグループのウエハを、標準的な水素アニーリングに付した。特に、(自然な酸化物層を有する)ウエハを炉に載置し、約1200℃の温度まで加熱し、1200℃の温度に約1時間放置し、その後、冷却した。約450℃から最大温度へと最大温度から約450℃へのアニーリング時間の関数としての温度のプロットは、1200℃保持の時間に対応する延長された水平部分があること以外は、全体として放物線に近似している。ウエハは、約1200℃まで加熱される際および約1200℃から冷却される際に、アルゴンを含む雰囲気にさらされた。しかしながら、ウエハを約1200℃にて約1時間保持する際に、ウエハは約100パーセントの水素を含む雰囲気にさらされた。炉の中を通るアルゴンおよび水素の気体流量は、それぞれ約20リットル/分および12リットル/分であった。
【0063】
冷却される間、アルゴンに加えて、テストグループ3−7のウエハは酸素にさらされた。炉内の酸素の濃度は、これらのウエハの間で変動させた。ウエハを約700℃に冷却した時に、酸素の流れを開始し(即ち、酸素開始温度は約700℃であった)、以下の表Aに示す時間の間、維持した。クールダウンの間、アルゴン流を維持した(即ち、酸素の流れはアルゴン流に加えた)ということに留意されたい。テストグループ3および4についての酸素流量は約300ミリリットル/分であって、これは約15,000ppmの雰囲気酸素濃度に対応していた。テストグループ5−7についての酸素流量は、約2ミリリットル/分であって、これは64ppmの雰囲気酸素濃度に対応していた。テストグループ7についての酸素流の時間は、ウエハを約700℃から約450℃での炉からの取り出しまでに必要とされる時間に対応していた。テストグループ3〜6については、酸素流を終了した後、約450℃に到達してウエハを炉からの取り出すまでアルゴン流を続けた。約700℃から約450℃まで、冷却速度は約15℃/分であって、実質的に一定であった(即ち、時間の関数としての温度降下はほぼリニアであった)。
【0064】
ウエハ上の酸化物層の厚さは、エリプソメトリー(elipsometry)を用いて測定した。(表Aに示す)いくつかのウエハを、SC1およびSC2清浄化に関する上記説明に従って清浄化した。酸化物層厚さを測定した後、および実施する場合には、ウエハを清浄化した後、上述した方法に従って、ウエハについて、銅のバルク濃度または表面濃度を求めた。銅濃度を測定した後、LPDの存在についてウエハの分析を行った。上述の試験の結果を、以下の表Aに示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表Aに示された結果から、いくつかの結論に達するための解釈がなされている。例えば、対照1および対照2からのウエハは、清浄化によって、アニーリングしたウエハの表面における銅の量を減少することを示している。これらの表面銅濃度は、バルク銅測定を実施することなく、ウエハ上に存在するであろう銅の量を示している。テストグループ1および2のウエハについての結果は、その場での酸化物成長を伴わずに、ウエハが許容し得るレベルのLPDを有していたこと、しかし比較的高いバルク銅濃度を有していたことを示している。テストグループ3のウエハについての結果は、方法が歪み領域にかなりの量の銅拡散を生じたことを示している。バルク銅濃度を測定する前に、清浄化ステップを付加したこと以外はテストグループ3のウエハと同様に処理されたテストグループ4のウエハは、アニーリングと清浄化の組合せによって、銅の著しい除去が得られること、および生成したウエハが許容され得るレベルのバルク銅を有することを示している。テストグループ3および4のウエハでは、銅が効果的に減少したが、比較的高いLPDカウント数は、方法がウエハの表面に好ましくない影響を及ぼしたことを示している。いずれか特定の理論に結び付けられるのではないが、酸化物層が比較的厚くおよび比較的速く形成されたために、LPDカウント数が高かったということが考えられる。テストグループ5および6のウエハの試験結果も、方法はバルク銅を有効に減少させたが、そのことは表面の品質に好ましくない影響を及ぼしたことを示している。これらのウエハについて、比較的高い濃度のLPDは、ウエハの不均一な酸化処理によって生じたピッティングによると考えられる。しかしながら、テストグループ7のウエハの試験結果は、銅を減少させることに加えて、本発明の方法を、既存のサーマルプロセス、例えば水素−アルゴン・アニールに組み込むことができるように実施して、凝集空孔欠陥、例えばCOPsなどを効果的に減少させるかまたは除去することができるということを示している。
【0067】
上記の説明は、本発明を限定するものではなく、本発明を説明するためのものであるということに留意されたい。上記の説明を読んだ当業者には、多くの態様例を理解できるであろう。従って、発明の範囲は、上記の説明のみを参照することによって決まるのではなく、特許請求の範囲の記載およびそれによって権利が付与される同等の範囲の全体によって決められるべきである。
【0068】
本発明の態様例またはその要素について、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「前記(said)」という記載は、1又はそれ以上の要素があることを意味している。「含んでなる(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という語句は、包括的な意味であって、言及した要素以外の要素が存在してもよいことを意味することを意図している。
【0069】
エンドポイント(または端点)による数値範囲の記載は、その範囲内のすべての数を含む。例えば、1〜5の範囲であると記載する範囲には、1、1.6、2、2.8、3、3.2、4、4.75および5も含まれている。
【符号の説明】
【0070】
2 外周縁部
3 前方表面
4 ウエハ基板
5 後方表面
7 仮想的中央平面
8 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有するシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれらの組み合わせの中から選ばれる汚染物質を除去するための方法であって、
酸化開始温度またはそれ以上の温度から制御された雰囲気中でシリコンウエハを冷却する工程と、
前記酸化開始温度にて酸素含有雰囲気流を開始して、シリコンウエハ表面の周囲に酸化的雰囲気を形成し、シリコンウエハ表面に酸化物層を生じさせ、および前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の境界に歪み層を生じさせる工程と、
冷却を制御して、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質の原子を拡散させる工程と、
シリコンウエハを清浄化して酸化物層および歪み層を除去し、それによって歪み層へ拡散した汚染物質を除去する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
酸化開始温度が少なくとも約600℃である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化開始温度が少なくとも約800℃である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸化開始温度が、約800℃〜約600℃の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸化開始温度が約775℃である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
冷却を制御することは、酸化開始温度から約500℃〜約400℃の範囲の温度へ冷却する間、毎分約30℃より小さい冷却速度を維持することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸化物層が少なくとも約5オングストロームの厚さを有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸素含有雰囲気がシリコンウエハ表面の周囲に少なくとも約10分間流される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸素含有雰囲気が、約1〜約10000ppmの範囲の酸素濃度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酸化物層と歪み層を除去するための清浄化の後で、シリコンウエハが約1×1010原子/cmより少ないバルク銅濃度を有している請求項1に記載の方法。
【請求項11】
冷却を少なくとも約1100℃の温度から行う請求項1に記載の方法。
【請求項12】
冷却を少なくとも約1100℃の温度から行う請求項4に記載の方法。
【請求項13】
シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有するシリコンウエハから、銅およびニッケルの中から選ばれる汚染物質を除去するための方法であって、
シリコンウエハを少なくとも約1100℃の温度へ加熱し、および前記シリコンウエハ表面を、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの混合物からなる群から選ばれるガスを含んでなる清浄化雰囲気にさらして、前記シリコンウエハ表面からシリコン酸化物を除去し、それによって脱酸素されたシリコンウエハを得る工程と、
脱酸素されたシリコンウエハを酸化的雰囲気にさらして、シリコンウエハ表面に酸化物層を生成させ、それによって前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の境界に歪み層を有する酸化されたシリコンウエハを生じる工程と、
酸化されたシリコンウエハの温度を制御して、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質を拡散させる工程と、
シリコンウエハを清浄化して、シリコンウエハから歪み層へ拡散させた汚染物質を除去し、それによって清浄化されたシリコンウエハを生じる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
酸化的雰囲気が、約10〜約100ppmの範囲の酸素濃度を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸化物層が少なくとも約5オングストロームの厚さを有する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
脱酸素されたシリコンウエハを約800℃を越えない酸化開始温度へ冷却する際に、酸化的雰囲気にさらす請求項13に記載の方法。
【請求項17】
脱酸素されたシリコンウエハを、毎分約30℃よりも小さい速度にて冷却する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
脱酸素されたシリコンウエハを約775℃を越えない酸化開始温度へ冷却する際に、酸化的雰囲気にさらす請求項13に記載の方法。
【請求項19】
脱酸素されたシリコンウエハを、毎分約10〜約20℃の範囲の速度にて冷却する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
シリコンウエハを約30分〜約60分の時間で酸化的雰囲気にさらす請求項13に記載の方法。
【請求項21】
酸化されたシリコンウエハの温度を制御して、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質を拡散させる工程は、清浄化されたシリコンウエハが約5×10原子/cmより小さいバルク銅濃度を有するのに十分な時間で、シリコンウエハの温度を約500℃未満に保持することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項22】
酸化されたシリコンウエハの温度を制御して、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質を拡散させる工程は、清浄化されたシリコンウエハが約1×10原子/cmより小さいバルク銅濃度を有するのに十分な時間で、シリコンウエハの温度を約500℃未満に保持することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項23】
脱酸素されたシリコンウエハを酸化的雰囲気にさらす前に、脱酸素したシリコンウエハをアニーリングして、アニールされたシリコンウエハを生じる工程を更に含み、
該シリコンウエハの脱酸素された表面を、減圧雰囲気に、または水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの組合せからなる群から選ばれるアニーリング雰囲気にさらすことによってシリコンウエハをアニーリングして、該表面に露出した凝集空孔欠陥へのシリコン原子の移動を促進し、それによって前記露出した凝集空孔欠陥の寸法を減少させることを含む請求項13記載の方法。
【請求項24】
アニーリング雰囲気が本質的に水素からなり、シリコンウエハの温度を少なくとも約1100℃にして、シリコンウエハの表面を該アニーリング雰囲気に少なくとも約10分間の時間でさらす請求項23に記載の方法。
【請求項25】
脱酸素されたシリコンウエハが酸化的雰囲気にさらされるまで、前記アニーリングされたシリコンウエハを本質的にアルゴンからなる雰囲気にさらす請求項23に記載の方法。
【請求項26】
シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有する複数のシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれらの組み合わせの中から選ばれる汚染物質を除去するための方法であって、
酸化開始温度またはそれ以上の温度からシリコンウエハを冷却する工程であって、酸化開始温度は約800℃未満である工程と、
前記酸化開始温度にて酸素含有雰囲気流を開始して、シリコンウエハ表面の周囲に酸化的雰囲気を形成し、シリコンウエハ表面に約5オングストロームから約20オングストロームの範囲の酸化物層を生じさせ、前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の境界に歪み層を生じさせることと、
冷却を制御して、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質の原子を拡散させる工程と、
シリコンウエハを清浄化して酸化物層および歪み層を除去し、それによって歪み層へ拡散させた汚染物質を除去することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
酸化物層厚みの標準偏差は約2オングストロームを越えない請求項26に記載の方法。
【請求項28】
酸化物層厚みの標準偏差は約1オングストロームを越えない請求項26に記載の方法。
【請求項29】
酸化物層厚みの標準偏差は約0.1オングストロームを越えない請求項26に記載の方法。
【請求項30】
酸化開始温度は約775℃を越えない請求項26に記載の方法。
【請求項31】
酸化開始温度は約750℃を越えない請求項26に記載の方法。
【請求項32】
酸素含有雰囲気の酸素濃度は約1000ppmより小さい請求項26に記載の方法。
【請求項33】
酸化的雰囲気の酸素濃度は約10〜約100ppmである請求項26に記載の方法。
【請求項34】
清浄化した後、各シリコンウエハは約1×1010原子/cmより小さいバルク銅濃度を有し、および約0.12μmより大きいLPDの濃度であって、約1欠陥/cmより小さいLPDの濃度を有する請求項26に記載の方法。
【請求項35】
清浄化した後、各シリコンウエハは約5×10原子/cmより小さいバルク銅濃度を有し、および約0.12μmより大きいLPDの濃度であって、約0.05欠陥/cmより小さいLPDの濃度を有する請求項26に記載の方法。
【請求項36】
清浄化した後、各シリコンウエハは約1×10原子/cmより小さいバルク銅濃度を有し、および約0.12μmより大きいLPDの濃度であって、約0.005欠陥/cmより小さいLPDの濃度を有する請求項26に記載の方法。
【請求項37】
シリコンウエハ表面およびシリコンウエハ内側部分を有するシリコンウエハから、銅、ニッケルおよびそれらの組合せから選ばれる汚染物質を除去する方法であって、
シリコンウエハを、アルゴンを含む加熱−冷却雰囲気にさらしながら、シリコンウエハの温度を少なくとも約1100℃であるアニーリング温度へ上昇させる工程と、
前記シリコンウエハがアニーリング温度にある間に、前記シリコンウエハを、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびそれらの混合物からなる群から選ばれるアニーリング雰囲気に約30分〜約90分の時間でさらすことによって、シリコンウエハをアニーリングして、前記シリコンウエハ表面からシリコン酸化物を除去し、シリコンウエハ表面に露出した凝集空孔欠陥へのシリコン原子の移動を促進し、それによって前記露出した凝集空孔欠陥の寸法を減少させる工程と、
シリコンウエハを加熱−冷却雰囲気にさらしながら、シリコンウエハの温度をアニーリング温度から約800℃を越えない酸化開始温度へ降下させる工程と、
前記シリコンウエハの温度を酸化開始温度から降下させながら、前記シリコンウエハを約10ppm〜約100ppmの濃度の酸素を含んでなる酸化的雰囲気にさらして、該シリコンウエハ表面に酸化物層を形成し且つ前記酸化物層とシリコンウエハ内側部分との間の境界に歪み層を形成する工程と、
シリコンウエハの温度降下を制御して、シリコンウエハ内側部分から歪み層へ汚染物質の原子を拡散させる工程と、
前記シリコンウエハを清浄化して、該シリコンウエハから歪み層へ拡散させた汚染物質を除去する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
アニーリング温度が約1200℃〜約1250℃であり、ウエハを約60分間アニーリング雰囲気にさらし、酸化開始温度は約775℃を越えず、シリコンウエハ温度が酸化開始温度から約500℃を越えない温度へ約10〜約30℃/分の速度でシリコンウエハ温度が降下するようにシリコンウエハの温度降下を制御することを含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
清浄化した後、シリコンウエハは約1×1010原子/cmより小さいバルク銅濃度を有し、および約0.12μmLSEより大きいLPDの濃度であって、約1欠陥/cmより小さいLPDの濃度を有する請求項37に記載の方法。
【請求項40】
清浄化した後、シリコンウエハは約5×10原子/cmより小さいバルク銅濃度を有し、および約0.12μmLSEより大きいLPDの濃度であって、約0.05欠陥/cmより小さいLPDの濃度を有する請求項37に記載の方法。
【請求項41】
清浄化した後、シリコンウエハは約1×10原子/cmより小さいバルク銅濃度を有し、および約0.12μmLSEより大きいLPDの濃度であって、約0.005欠陥/cmより小さいLPDの濃度を有する請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−58784(P2013−58784A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−250402(P2012−250402)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2007−511422(P2007−511422)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(392026316)エムイーエムシー・エレクトロニック・マテリアルズ・インコーポレイテッド (74)
【氏名又は名称原語表記】MEMC ELECTRONIC MATERIALS,INCORPORATED